特許拒絶査定不服審判
2021-018098
不織布シート
- 審判番号
- 2021-018098
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-531838外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年12月27日
- 審決日
- 2023年03月28日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】王子ホールディングス株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人谷・阿部特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (D04H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-531838「不織布シート」拒絶査定不服審判事件〔2018年(平成30年)2月8日国際公開、WO2018/025676〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、2017年7月21日(優先権主張2016年8月5日、日本国)を国際出願日とする特許出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和3年 2月 4日付け:拒絶の理由の通知
令和3年 4月 9日 :意見書及び手続補正書の提出
令和3年 9月21日付け:拒絶査定
令和3年12月27日 :審判請求及び手続補正書の提出
令和4年 6月 1日 :上申書の提出
第2 令和3年12月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年12月27日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所。)。
「エアレイド法により形成されたウェブ層および通水性または吸水性シートからなる不織布シートであって、
前記不織布シートは、水分と接触した際に酸性を呈する粉末を含み、
前記ウェブ層は、吸水性材料を主体としてなり、
前記通水性または吸水性シートは、前記ウェブ層に隣接し、天然繊維、再生繊維、ポリ乳酸またはナイロンから選択される繊維状の吸水性材料を含む不織布シート。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和3年4月9日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「エアレイド法により形成されたウェブ層を含む不織布シートであって、
前記不織布シートは、水分と接触した際に酸性を呈する粉末を含み、
前記ウェブ層は、吸水性材料を主体としてなり、
前記ウェブ層に隣接し、天然繊維、再生繊維、ポリ乳酸またはナイロンから選択される繊維状の吸水性材料を含む通水性または吸水性シートを含む、不織布シート。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「不織布シート」について、「ウェブ層を含む」と共に、「通水性または吸水性シートを含む」としていたものを、「ウェブ層および通水性または吸水性シートからなる」ものとするものである。
すなわち、本件補正は、「不織布シート」について、「ウェブ層」と「通水性または吸水性シート」を含むものであって、他の層が含まれることが排除されていないものから、「ウェブ層」および「通水性または吸水性シート」のみ「からなる」ものに限定するものである。
そして、本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用発明
ア 原査定の拒絶の理由で「引用文献1」として示された国際公開第2007/086162号には、以下の記載がある。
(ア) 「請求の範囲
[1] (イ)繊度が1.5~50dtexの熱接着性繊維を主体とし、目付け10~250g/m2のエアレイド法によるウェブ層の上に、(ロ)(a)繊度が1~4.4dtexの熱接着性繊維を20~100重量%と、(b)セルロース系パルプを80~0重量%[ただし、(a)+(b)=l00重量%]を主体とし、目付けが10~400g/m2のエアレイド法によるウェブ層を積層し、さらに、必要に応じて、(ロ)ウェブ層の上に、(ハ)上記(イ)ウェブ層と同様のウェブ層を積層し、これらの熱接着性繊維の熱結合によって全体として一体シート化してなるとともに、(イ)層と(ロ)層との間、(ロ)層中、あるいは、(ロ)層と(ハ)層との間の 少なくとも1層に、(c)(c1)洗浄作用を有するアルカリ性無機塩類の粉末、あるいは、(c2)水酸基を有し、融点が70℃以上の粉末状の有機酸からなる添加剤を、それぞれ、5~300g/m2添加してなり、総目付が40~1,500g/m2の、洗浄作用を有する不織布シート。」
(イ) 「技術分野
[0001] 本発明は、洗浄作用を有する不織布シートに関し、さらに詳細には、洗浄剤として非界面活性剤である無機塩類あるいは有機酸を用いているので、人や地球環境に対して安全で、実用上十分な洗浄作用を有する不織布シートに関する。」
(ウ) 「発明が解決しようとする課題
[0005] 本発明は、キッチンシンク、レンジ、洗面台、風呂、トイレなどのアルカリ性汚れや石鹸カス汚れが多く存在する部分や、タタミ、フローリングの洗浄、払拭、掻取りの作用に優れ、従来のウエット状クリーナーと較べて、水分なしで重量が軽くカビ発生のリスクがなく防カビ剤、抗菌剤が不要であり、清掃能力に優れる洗浄用不織布シーを提供することにある。
課題を解決するための手段
[0006] 本発明は、(イ)繊度が1.5~50dtexの熱接着性繊維を主体とし、目付け10~250g/m2のエアレイド法によるウェブ層の上に、(ロ)(a)繊度が1~4.4dtexの熱接着性繊維を20~100重量%と、(b)セルロース系パルプを80~0重量%[ただし、(a)+(b)=100重量%]を主体とし、目付けが10~400g/m2のエアレイド法によるウェブ層を積層し、さらに、必要に応じて、(ロ)ウェブ層の上に、(ハ)上記(イ)ウェブ層と同様のウェブ層を積層し、これらの熱接着性繊維の熱結合によって全体として一体シート化してなるとともに、(イ)層と(ロ)層との間、(ロ)層中、あるいは、(ロ)層と(ハ)層との間の少なくとも1層に、(c)(c1)洗浄作用を有するアルカリ性無機塩類の粉末、あるいは、(c2)水酸基を有し、融点が70℃以上の粉末状の有機酸からなる添加剤を、それぞれ、5~300g/m2添加してなり、総目付が40~1,500g/m2の、洗浄作用を有する不織布シートに関する。」
(エ) 「発明の効果
[0007] 本発明では、(ロ)層中に(c)添加剤を添加する場合、(a)熱接着性繊維を主体とする(ロ)ウェブ層を形成させるに際し、エアレイド法を採用しているので、気流中で(a)熱接着性繊維、必要に応じて用いられる(b)セルロース系パルプ、および(c)添加剤の粉末が絡み合って、これらが絡合する。この結果、形成される(ロ)ウェブ層からの(c)添加剤の粉末の脱落が少なくなる。また、(ロ)ウェブ層中に(b)セルロース系パルプや、さらにこれに加えて(d)ポリオレフイン系合成パルプを併用することにより、水の保持性が向上し、洗浄作用が向上する。
また、あらかじめエアレイド法により(イ)ウェブ層を形成させ、この上に上記(ロ)ウェブ層を積層させることにより、仮に(c)添加剤の粉末が生成した(ロ)ウェブ層から脱落しても、この(イ)ウェブ層に捕集されて、系外に脱落することもない。また、得られる不織布シートは、柔軟性に富み、洗浄作用に優れる。
また、上層として、さらに(ハ)ウェブ層を積層させた本発明の不織布シートは、表裏ともに、(c)添加剤の粉末の脱落がない。
さらに、基材シートとなる(イ)ウェブ層や、上層となる(ハ)ウェブ層の繊度を選定することにより、例えば、粗で硬めの汚れが多い場合は太い繊維、微細な、あるいはヌメリ状の汚れが多い場合は細い繊維、を適宜選択することにより、用途別の洗浄用不織布シートを得ることができる。
一方、(イ)層/(ロ)層間、あるいは(ロ)層/(ハ)層間に(c)添加剤を添加する場合でも、エアレイド法により、(イ)層を形成したのち、(ロ)層を形成する前に、あるいは、(ロ)層を形成したのち、(ハ)層を形成する前に、エアレイド法によって、(c)添加剤を、それぞれのウェブ層上に散布すれば、容易に(c)添加剤が各層間に積層された洗浄用不織布シートを得ることができる。
さらに、〔(ハ)ウェブ層〕/(ロ)ウェブ層/(イ)ウェブ層からなる不織布シートの片面または両面に、(ニ)通気性シートを積層一体化することにより、得られる洗浄作用を有する不織布シートの取り扱い性が向上し、さらに強度も補強される。
また、本発明の洗浄作用を有する不織布シートは、熱風処理あるいは熱ロールによるカレンダー加工などの熱処理により、一体化されているので、層間剥離や(c)添加剤の粉末の脱落を抑えることができる。
以上の本発明の洗浄用不織布シートは、ドライ状で、水分なしなので、重量が軽く、流通・保管にコストがかからず、また、カビ発生のリスクがないので、防カビ剤・抗菌剤の添加が不要である。
また、重曹などのアルカリ性無機塩類、あるいは、クエン酸などの有機酸を清掃剤として含有し、界面活性剤を含有していないので、人体や環境にやさしく安全である。
さらに、本発明のクリーナーを実際に使用する場合において、重曹や有機酸は水に溶解し、家庭内の器具、機器類の表面にこびりついた汚れ(風呂、洗面台などの石酸カスや油脂状カス、水アカ(主に炭酸カルシウム類の硬い白色結晶)、トイレの排泄物のカス(主にリン酸カルシウム類からなる比較的硬い褐色結晶)、キッチンシンクなどの食品カスなど)に対して、浸透・剥離・溶解の作用、還元作用(錆び取り)、酸性汚れあるいはアルカリ性汚れの中和作用として働くばかりか、抗菌や、酸性悪臭、もしくはアルカリ性悪臭の消臭効果も期待できる。
さらに、本発明の洗浄用不織布シートは、用いられる熱接着性繊維の熱結合によって一体化されているので、乾・湿における強度が大きく上記のような汚れのひどい箇所にも使用可能である。」
(オ) 「[0008] (イ)ウェブ層(基材シート):
本発明に用いられる(イ)ウェブ層は、繊度が1.5~50dtexの熱接着性繊維を主体とし、目付が10~250g/m2のエアレイド法による不織布から構成される。 ・・・
・・・
[0014] また、これらの熱接着性繊維以外の繊維として、例えばPE(ポリエチレン)繊維、PP(ポリプロピレン)繊維、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、PBT(ポリブチレンテレフタレート)繊維、ナイロン6繊維、ナイロン6,6繊維、芳香族ポリアミド繊維、アクリル繊維、合成パルプ(例えば、三井化学(株)製SWPのような、PEやPPを素材とする多分岐フィブリル状繊維)、木材パルプ、麻、レーヨン、ビスコース繊維などを本発明の趣旨、効果を阻害しない範囲で混合しておいても良い。この場合、他の繊維の比率は30重量%未満に留めるのが好ましい。30重量%以上であると、不織布強力やヒートシール性に影響が出るばかりか、熱接着性のない繊維は実使用中に脱落し易くなる。」
(カ) 「[0019] また、(ロ)ウェブ層に用いられることのある(b)セルロース系パルプは、(c)添加剤の粉末を把持するとともに、洗浄時に水を保持する役割を担う。
(b)セルロース系パルプとしては、木材パルプ以外に、リンターパルプ、バガスなどの非木材系パルプなどを粉砕したものが挙げられる。
(b)セルロース系パルプの(ロ)ウェブ層中における混合率は、0~80重量%、好ましくは0~40重量%である。80重量%を超えると、(ロ)ウェブ層としての引張り強力や層間剥離強力、特に湿潤時のこれらの強力が低下するので好ましくない。」
(キ) 「[0025] 一方、(ロ)ウェブ層中に用いられることのある(c2)粉末状の有機酸は、家庭内の汚れ(風呂、洗面台などの石酸カスや油脂状カス、水アカ(主に炭酸カルシウム類の硬い白色結晶)、トイレの排泄物のカス(主にリン酸カルシウム類力からなる比較的硬い褐色結晶)、キッチンシンクなどの食品カスなど)に対する、浸透・剥離・溶解の作用、還元作用(錆び取り)、アルカリ性汚れの中和作用、抗菌作用、消臭作用として働く成分である。」
(ク) 「[0033] (ハ)ウェブ層(上層シート)
本発明の洗浄作用を有する不織布シートは、上記(ロ)ウェブ層上、あるいは、(ロ)ウェブ層中に存在する(c)添加剤の粉末の脱落を一層防止し、また表面耐磨耗性などの機能を強化するために、この(ロ)ウェブ層の上に、さらに、(ハ)繊度が1.5~50dtexの熱接着性繊維を主体とする目付け10~250g/m2のエアレイド法によるウェブ層を積層することが好ましい。
この上層シートとなる(ハ)ウェブ層としては、上記基材シートとなる(イ)ウェブ層と同様のものを挙げることができる。
(ハ)ウェブ層には、表面の親水性を上げて掃除作用をスムースにするために、木材パルプ、リンターパルプ、レーヨンなどの親水性繊維を混合しておいても良い。」
(ケ) 「[0038] (ニ)通気性シート
本発明の不織布シートは、本発明の意図を損なわない限り、他のシートと一体化してもよい。例えば、通気性シートと一体化するのであれば、本発明の不織布シートをエアレイド法で作るにあたり、通気性シートをネットコンベア上に置いておき、この上に繊維を堆積させていくことで、容易に複合シート化することができる。
また、一体化するシートとしては、一般に知られている乾式不織布、湿式不織布、紙、スパンボンド、メルトブロー、プラスチックネット、穴あきフィルム、スプリットヤーンクロス、目の粗い織編み物、寒冷紗などが挙げられるが、熱接着性で、かつ耐水性のある材料で構成されているシートが好ましくかつ通気性は大きい方が好ましい。」
(コ) 「[0045] 実施例1
(イ)ウェブ層(基材シート)として、PP(ポリプロピレン)/PE(ポリエチレン)系複合繊維11dtex×5mm(チッソ(株)製)を20g/m2となるようエアレイド法でネット上に形成した。次に、PP/PE系複合繊維1.7dtex×5mm(チッソ(株)製)を17.5g/m2、木材パルプ(Weyerhaeuser社製NB416)の粉砕品を17.5g/m2、重曹[(株)トクヤマ製]を100g/m2となるよう混合し、合計135g/m2の(ロ)ウェブ層をエアレイド法で上記(イ)ウェブ層の上に形成した。さらに、この上に、(ハ)ウェブ層としてPP/PE系複合繊維1.7dtex×5mmを25g/m2、木材パルプを10g/m2となるよう混合し、合計35g/m2をエアレイド法で形成した。全体190g/m2のエアレイドウェブを140℃の熱風サクション加熱炉で加熱し、一体化した。得られた厚さ4mmの不織布を水に濡らして家庭用風呂の掃除に用いたところ、合成洗剤無しでも内部のヌメリ、汚れをきれいに掃除することができた。頑固な汚れには(イ)ウェブ層の太繊度の11dtexの面を用い、ヌメリなどの汚れには親水性繊維を含んでいる(ハ)ウェブ層の面を用い、風呂掃除用シートとして有用であった。なお、含有されている重曹の粉末は、保管・輸送などの取扱いにおいて、脱落は極めて少なかった。」
(サ) 「実施例7
(イ)ウェブ層(基材シート)として、PP/PE系熱接着性芯鞘型複合繊維(チッソ(株)製、11dtex×5mm)を50g/m2となるようエアレイド法でネット上に形成した。次に、PET/PE系熱接着性芯鞘型複合繊維(帝人ファイバー(株)製、2.2dtex×5mm)を35重量%(60g/m2)、粉砕木材パルプを41重量%(70g/m2)、実施例1で用いたと同じ粉末状の有機酸を24重量%(40g/m2)となるよう混合し、合計170g/m2の(ロ)ウェブ層をエアレイド法で上記(イ)ウェブ層の上に形成した。さらに、この上に、(ハ)ウェブ層としてPP/PE系熱接着性芯鞘型複合繊維(チッソ(株)製、1ldtex×5mm)を70g/m2となるようにエアレイド法で形成した。全体290g/m2のエアレイドウェブを137℃の熱風サクション加熱炉で加熱し、一体化した。得られた厚さ6mmの不織布を水に濡らして洗面台の掃除に用いたところ、石酸カス、歯磨きカスをきれいに掃除することができた。
なお、含有されている粉末状の有機酸は、保管・輸送などの取扱いにおいて、脱落は極めて少なかった。」
(シ) 「[0053] 実施例8
PET/PE系複合繊維(2.2dtex×51mm、帝人ファイバー(株)製)をカード法でウェブ化し、136℃の熱風サクション加熱炉で加熱一体化して、目付15g/m2のサ一マルボンドタイプの乾式不織布を得た。この乾式不織布をネットコンベア上に載置し、この上に、(イ)ウェブ層(基材シート)としてPET/PE系複合繊維(2.2dtex×5mm、帝人ファイバー(株)製)を10g/m2となるようエアレイド法で形成した。次に、この上に粉末状の有機酸として精製クエン酸・無水タイプ(扶桑化学工業(株)製)を40g/m2になるように散布した。次に、PP/PE系複合繊維1.7dtex×5mmを75g/m2、木材パルプを300g/m2となるよう混合し、合計375g/m2の(ロ)ウェブ層をエアレイド法で上記散布したクエン酸の上に形成した。さらに、この上に重曹120g/m2を散布し、さらにこの上に(ハ)ウェブ層として PET/共重合PET系複合繊維(22dtex×5mm、帝人ファイバー(株)製・C2タイプ)を75g/m2となるようエアレイド法で形成した。全体635g/m2の複合エアレイドウェブを140℃の熱風サクション加熱炉で加熱し、一体化した。得られた厚さ8mmの複合エアレイド不織布を水に濡らしてキッチンの調理汚れの掃除用として使用した。油汚れ、煮汁汚れ、洗剤汚れ、焦げなどの掃除に有用であった。」
イ 上記記載、特に実施例7(前掲ア(サ)参照)に着目すると、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。
「エアレイド法で形成されたPP/PE系熱接着性芯鞘型複合繊維の(イ)ウェブ層(基材シート)、
当該(イ)ウェブ層の上にエアレイド法で形成されたPET/PE系熱接着性芯鞘型複合繊維35重量%、粉砕木材パルプ41重量%、粉末状の有機酸24重量%の(ロ)ウェブ層、
及び、
当該(ロ)ウェブ層の上にエアレイド法で形成されたPP/PE系熱接着性芯鞘型複合繊維の(ハ)ウェブ層からなる不織布シート。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「粉砕木材パルプ」は、本件補正発明の「吸水性材料」、「天然繊維」、「繊維状の吸水性材料」に相当するから、引用発明の「(ロ)ウェブ層」は、吸収性材料たる「粉砕木材パルプ」を「主体」とするものといえる。したがって、引用発明の「(ロ)ウェブ層」は、本件補正発明の「ウェブ層」に相当する。
引用発明の「粉末状の有機酸」は、本件補正発明の「水分と接触した際に酸性を呈する粉末」に相当する。
また、引用発明の「(イ)ウェブ層」及び「(ハ)ウェブ層」は、引用発明に係る「不織布シート」が水に濡らして用いるもの、すなわち外部の水が(ロ)ウェブ層に達し、その(ロ)ウェブ層内の粉末状の有機酸が水に溶解した状態となって不織布シートの外部に流出するものであることから、引用発明の「(イ)ウェブ層」及び「(ハ)ウェブ層」が本件補正発明における「通水性または吸水性シート」に相当することは自明である。
そうすると、両発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
エアレイド法により形成されたウェブ層および通水性または吸水性シートからなる不織布シートであって、
前記不織布シートは、水分と接触した際に酸性を呈する粉末を含み、前記ウェブ層は、吸水性材料を主体としてなり、
前記通水性または吸水性シートは、前記ウェブ層に隣接する不織布シート。
<相違点>
「通水性または吸水性シート」について、本件補正発明では「天然繊維、再生繊維、ポリ乳酸またはナイロンから選択される繊維状の吸水性材料を含む」とされているのに対して、引用発明ではそのような吸収性材料が含まれていない点。
(4)相違点の検討
ア 引用発明を開示する引用文献1には、「(イ)ウェブ層」に関して、次の説明がある。
「(イ)ウェブ層(基材シート):・・・また、これらの熱接着性繊維以外の繊維として、・・・ナイロン6繊維、ナイロン6,6繊維、芳香族ポリアミド繊維・・・木材パルプ、麻、レーヨン、ビスコース繊維などを本発明の趣旨、効果を阻害しない範囲で混合しておいても良い。」(前掲(2)ア(オ)参照)と記載され、ナイロンを採用することが開示されている。
また、引用文献1には、(ハ)ウェブ層に関して、次の記載がある。「(ハ)ウェブ層には、表面の親水性を上げて掃除作用をスムースにするために、木材パルプ、リンターパルプ、レーヨンなどの親水性繊維を混合しておいても良い。」(前掲(2)ア(ク)参照)
そうすると、引用発明において、掃除作用をスムーズにすることが好ましいことは、当業者にとって当然に認識される事項であるから、その「(イ)ウェブ層」及び「(ハ)ウェブ層」に例えば「木材パルプ」を含め他の親水性材料を混合させることは、当業者が容易に想到し得た範囲内の事項といえる(ちなみに、実施例1では、そのような構成が採用されている(前掲(2)ア(コ)参照))。
イ 請求人は、本件補正発明と引用文献1に記載の発明を対比して「本願発明は、熱融着性繊維の剛性による問題を解決するために、これを含まないウェブ層および通気性または吸水性シートからなる不織布シートを提供するというものである。これに対し、引用文献1を参照すると、引用文献1は熱融着性繊維を必須の構成要素としており、本願発明の課題とする先行技術そのものといえる。」(審判請求書【本願発明が特許されるべき理由】(d)(請求項1~8について)。上申書にも同趣旨の記載がある。)と主張する。
しかし、本願の明細書の記載全体をみても、不織布シートに熱融着性繊維を含ませない、というような事柄は、読み取れず、かえって、実施例でも必ず熱融着性繊維が含まれているものである。
そうすると、本件補正発明の技術内容として、熱融着性繊維を含まないものと理解するのは相当ではなく、熱融着性繊維の点で本件補正発明と引用発明との間に相違点をとらえることはできない。
したがって、請求人のこのような主張は、採用し得ない。
ウ さらに本願の明細書の記載を検討しても、本件補正発明においてその「通水性または吸水性シート」に「天然繊維、再生繊維、ポリ乳酸またはナイロンから選択される繊維状の吸水性材料」を含ませたことによって、格別顕著な効果がもたらされるとは認められない。
エ したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明
1 本願発明
本件補正が上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶理由は、本願発明について、概略以下のとおりである。
本願発明1は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものであった。
1.国際公開第2007/086162号
3 引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及びそれに記載された引用発明は、前記第2の[理由]2(2)イに記載したとおりである。
4 対比・判断
前記第2の[理由]2で検討したとおり、本件補正発明は、本願発明を限定するものであった。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2021-018098