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特許拒絶査定不服審判

2021-017861

活性成分を含むマイクロニードルアレイ

審判番号
2021-017861
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-544653外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年12月24日
審決日
2024年01月23日
公報発行日
2024年07月26日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .575-WZ (A61M) / P18 .121-WZ (A61M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-544653「活性成分を含むマイクロニードルアレイ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月23日国際公開、WO2018/151832、令和 2年 3月12日国内公表、特表2020-507422〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2018年(平成30年) 2月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年 2月17日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続きの経緯は以下のとおりである。 令和 1年10月 8日提出:手続補正書 令和 2年10月29日付け:拒絶理由通知書 令和 3年 3月25日提出:意見書及び手続補正書 令和 3年 8月25日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和 3年12月24日提出:審判請求書及び手続補正書 令和 4年 7月27日付け:拒絶理由通知書 令和 5年 1月17日提出:意見書及び手続補正書 令和 5年 3月28日付け:拒絶理由通知書(最後) 令和 5年 9月26日提出:意見書及び手続補正書 第2 令和 5年 9月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和 5年 9月26日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)。 「【請求項1】 ベース層、並びに ベース層から突出する複数のマイクロニードル を含むマイクロニードルアレイであって、 マイクロニードルのそれぞれは、 近位部分と、 ヒアルロン酸、疎水性修飾ヒアルロン酸、又はそれらの任意の組み合わせを含む第1の溶解性ポリマーと、第1の溶解性ポリマーのマトリックス内に組み込まれた、抗原、抗体又は毒素から選択される活性成分と を含む遠位部分と を有する細長い本体を含み、 近位部分とベース層とが、第1の溶解性ポリマーを含みかつ実質的に活性成分を含まない単一の連続層を形成する、 上記マイクロニードルアレイ。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の、令和 5年 1月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 ベース層、並びに ベース層から突出する複数のマイクロニードル を含むマイクロニードルアレイであって、 マイクロニードルのそれぞれは、 近位部分と、 ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水性修飾ヒアルロン酸、又はそれらの任意の組み合わせを含む第1の溶解性ポリマーと第1の溶解性ポリマーのマトリックス内に組み込まれた活性成分とを含む遠位部分と を有する細長い本体を含み、 近位部分とベース層とが、第1の溶解性ポリマーを含みかつ実質的に活性成分を含まない単一の連続層を形成する、 上記マイクロニードルアレイ。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲について補正しようとするものであるところ、本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1に記載された発明の「第1の溶解性ポリマー」について「ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水性修飾ヒアルロン酸、又はそれらの任意の組み合わせを含む」ものから、「架橋ヒアルロン酸」の選択肢を削除するものである。 また、本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1に記載された発明の「活性成分」を、「抗原、抗体又は毒素から選択される活性成分」に限定するものである。 そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献 令和 5年 3月28日付け拒絶理由通知書(最後)の拒絶の理由1で引用され、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1-3は以下のとおりである。 引用文献1.特開2016-83085号公報 引用文献2.特表2016-518868号公報 引用文献3.国際公開第2009/066763号 (3)引用文献の記載事項及び引用発明等 ア 引用文献1について (ア) 記載事項 上記引用文献1には、次の事項と図面が記載されている(下線は当審で付した。以下同様である。)。 a 「【0008】 キトサン等の水溶性高分子の生体適合性材料を用いた針状体は、皮膚に穿刺後に皮膚内部で溶解させることができる。したがって、水溶性高分子の他に皮膚内への送達を目的とした送達物を含有させて針状体を作製することにより、針状体を皮膚に穿刺した際に水溶性高分子の溶解により送達物を皮膚内に送達することができる。」 b 「【0017】 本発明の針状体について説明する。 図1に本発明の針状体の斜視図を示した。本発明の針状体10は、支持基板12上に針状の突起部11を備える。また、本発明の針状体は、少なくとも突起部先端側から順に第1層11Aと第2層11Bを備える。 【0018】 本発明の針状体は、針状の突起部11が皮膚を穿刺する。本発明の針状体において、突起部11は皮膚を穿刺するのに適した形状であればよい。突起部11は、例えば円錐、角錐、円柱、角柱、鉛筆形状(胴体部が柱状であり、先端部が錐形状のもの)等の形状を有する。また、突起部は(1)支持基板上に一本存在する形態、(2)支持基体上に複数本林立した形態、のいずれでもよい。支持基板上に突起部が複数林立した場合、各突起部はアレイ状に配列することが好ましい。ここで、「アレイ状」とは各単位針状体が並んでいる状態を示す。例えば、格子配列、最密充填配列、同心円状配列、ランダム配列、などを含むものとする。」 c 「【0020】 図2に本発明の針状体の外形の模式図を示した。図2(a)は、針状体の突起部側からの上面図であり、図2(b)は、図2(a)における針状体のI-I’面における断面図である。 本発明の針状体10において、針状の突起部11の寸法は皮膚に穿刺孔を形成するのに適した細さと長さを有することが好ましい。具体的には、図2に示す突起部11の高さHは10μm以上1000μm以下の範囲内であることが好ましい。突起部の高さHは、支持基板12から突起部11の先端までの距離である。 突起部の高さHは、前記範囲内で針状体を穿刺した際に形成される穿刺孔を皮膚内のどのくらいの深さまで形成するかを考慮して決定することが好ましい。 特に、針状体を穿刺した際に形成される穿刺孔を「角質層内」に留める場合、針状体の突起部の高さHは例えば10μm以上300μm以下、より好ましくは30μm以上200μm以下、の範囲内にすることが望ましい。 また、針状体を穿刺した際に形成される穿刺孔を「角質層を貫通し、かつ神経層へ到達しない長さ」に留める場合、針状体の突起部の高さHは200μm以上700μm以下、より好ましくは200μm以上500μm以下、さらに好ましくは200μm以上300μm以下、の範囲内にすることが望ましい。 さらに、針状体を穿刺した際に形成される穿刺孔を「穿刺孔が真皮に到達する長さ」とする場合、針状体の突起部の高さHは200μm以上500μm以下の範囲内とすることが好ましい。また、針状体を穿刺した際に形成される穿刺孔を「穿刺孔が表皮に到達する長さ」の場合、針状体の突起部の高さHは200μm以上300μm以下の範囲内とすることが好ましい。」 d 「【0022】 アスペクト比は、1以上10以下の範囲内であることが好ましい。アスペクト比Aとは、突起部の長さHと幅Dを用い、A=H/Dにより定義される。 実施形態に係る針状体において、突起部が錐形状のように先端角を有し、角質層を貫通させる場合、突起部の先端角θは5°以上30°以下、より好ましくは10°以上20°以下、の範囲内であることが望ましい。なお、先端角θは突起部を支持基板面と平行に投影した際の角度(頂角)のうち最大のものを指す。 実施形態に係る針状体において、支持基板は突起部の材料と同じであることが好ましい。支持基板と突起部とを同材料で形成することにより、支持基板と突起部を一体的に成形することが可能になる。」 e 「【0024】 [第1の針状体形成液を調液する工程] まず、第1の針状体形成材料を溶媒に溶解又は分散させた第1の針状体形成液21を調液する。第1の針状体形成材料は、水溶性高分子または多糖を含むことが好ましい。 【0025】 水溶性高分子および多糖としては、キトサン、キトサンサクシナミド、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、コンドロイチン硫酸ナトリウム、カードラン、トレハロース、スクロース、ゼラチン、コラーゲン、プルラン、ペクチン、アルギン酸塩、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸系ポリマー,ポリアクリルアミド(PAM)、ポリエチレンオキシド(PEO)等を用いることができるが、これに限定されるものではない。また、これらの材料を混合しても良い。 【0026】 中でも、第1の針状体形成材料として、キトサン、キトサンサクシナミド、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、コンドロイチン硫酸ナトリウム、カードラン、トレハロース、スクロース、ゼラチン、コラーゲン、プルラン、ペクチン、アルギン酸塩の中から選択されることが好ましい。理由としては、生物学的に安全性が高いことによる。なお、これらの材料を混合しても良い。」 f 「【0028】 また、本発明にあっては、送達物を第1の針状体形成液に含有させてもよい。送達物は、薬理活性物質や、化粧品送達物を含むことができる。このとき、送達物として芳香を有する材料を用いた場合、使用に際して匂いを付与することができ、美容品として用いるのに好ましいものとすることができる。 【0029】 前記薬理活性物質は、用途に応じて適宜選択してよい。例えば、インフルエンザなどのワクチン、癌患者の痛止め向け薬、インスリン、生物製剤、遺伝子治療薬、注射剤、経口剤、皮膚適用製剤等であっても良い。本発明の針状体は皮膚を穿刺することから、従来の経皮投与に用いられる薬理活性物質以外にも、皮下注射が必要な薬理活性物質にも適用することが出来る。特に、注射剤であるワクチンなどは、針状体を用いた場合、投与に際し痛みがないため、小児への適用に適している。また、従来の経口剤の投与では、小児は経口剤を飲むのが困難であるが、針状体を用いた場合、投与に際し薬剤を飲む必要がないため、小児への適用に適している。」 g 「【0031】 [第1の供給工程] 第1の針状体形成材料を溶媒に溶解または分散させた針状体形成液21および凹版22を真空チャンバ23内に配置する(図3(a))。真空チャンバは、ポンプに接続され、真空引きされる。次に、真空チャンバ内を減圧環境下にした後、凹版に第1の針状体形成液を供給する(図3(b))。凹版は、突起部に対応した凹部を備える。なお、凹版は、周縁部に、針状体形成液の凹版上での濡れ広がりを制御するための土手(凸部)22’を備えていてもよい。」 h 「【0035】 [第1の圧力変化工程] 次に、凹版に供給された針状体形成液を0.05MPaより高い圧力環境下に変化させる。本発明にあっては、0.05MPa以下の圧力環境で凹版に針状体形成液を供給し、当該供給工程よりも高い圧力環境に変化させることにより、凹版上に供給された針状体形成液21が凹版の凹部先端に充填される(図4(c))。」 i 「【0036】 [第1の乾燥工程] 次に、凹版上に供給された第1の針状体形成液を乾燥固化し針状体とする。なお、乾燥固化する前に、凹版に供給された第1の針状体形成液の余分な量をスキージー24等により除去してもよい(図4(d))。凹版を大気圧環境下にした後、供給された針状体形成液21をホットプレート25上に配置することにより乾燥することができる(図5(e))。」 j 「【0039】 [第2の針状体形成液を調液する工程] 次に、第2の針状体形成材料を溶媒に溶解又は分散させた第2の針状体形成液26を調液する。第2の針状体形成材料は、が水溶性高分子または多糖を含むことが好ましい。 【0040】 水溶性高分子および多糖としては、キトサン、キトサンサクシナミド、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、コンドロイチン硫酸ナトリウム、カードラン、トレハロース、スクロース、ゼラチン、コラーゲン、プルラン、ペクチン、アルギン酸塩、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸系ポリマー,ポリアクリルアミド(PAM)、ポリエチレンオキシド(PEO)等を用いることができるが、これに限定されるものではない。また、これらの材料を混合しても良い。 【0041】 中でも、第2の針状体形成材料として、キトサン、キトサンサクシナミド、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、コンドロイチン硫酸ナトリウム、カードラン、トレハロース、スクロース、ゼラチン、コラーゲン、プルラン、ペクチン、アルギン酸塩の中から選択されることが好ましい。理由としては、生物学的に安全性が高いことによる。なお、これらの材料を混合しても良い。」 k 「【0044】 [第2の供給工程] 次に、第2の針状体形成材料を溶媒に溶解または分散させた第2の針状体形成液26および凹版22を真空チャンバ内に配置する(図5(f))。真空チャンバは、ポンプに接続され、真空引きされる。次に、真空チャンバ内を減圧環境下にした後、凹版に第1の針状体形成液を供給する(図6(g))。凹版は、突起部に対応した凹部を備える。なお、凹版は、周縁部に、針状体形成液の凹版上での濡れ広がりを制御するための土手(凸部)22’を備えていてもよい。」 l 「【0046】 [第2の圧力変化工程] 次に、凹版に供給された第2の針状体形成液26を0.05MPaより高い圧力環境下に変化させる。本発明にあっては、0.05MPa以下の圧力環境で凹版に針状体形成液を供給し、当該供給工程よりも高い圧力環境に変化させることにより、凹版上に供給された針状体形成液が凹版の凹部先端に充填される(図6(h))。」 m 「【0047】 [第2の乾燥工程] 次に、凹版上に供給された針状体形成液を乾燥固化し針状体とする。凹版を大気圧(0.1MPa)環境下にした後、供給された針状体形成液26をホットプレート25上に配置することにより乾燥することができる(図7(i))。」 n 「【0049】 [剥離工程] 次に、凹版22上に形成された針状体21を剥離する(図7(j))。剥離手段としては、公知の物理的に凹版と針状体を剥離方法を採用することができる。また、凹版を溶解させる等の科学的方法で剥離することも可能である。以上により針状体は作製される(図7(k))。」 o 「【0054】 なお、本発明で作製される針状体の構成例を示す。 針状体形成材料Aと針状体形成材料Bは異なる材料を指す。また、送達物Xと送達物Yは異なる材料を指す。 (構成例1) 第1層:針状体形成材料A+送達物X 第2層:針状体形成材料A (構成例2) 第1層:針状体形成材料A+送達物X 第2層:針状体形成材料B (構成例3) 第1層:針状体形成材料A+送達物X 第2層:針状体形成材料A+送達物Y (構成例4) 第1層:針状体形成材料A+送達物X 第2層:針状体形成材料B+送達物Y (構成例5) 第1層:針状体形成材料A 第2層:針状体形成材料A+送達物X (構成例6) 第1層:針状体形成材料A 第2層:針状体形成材料B+送達物X (構成例7) 第1層:針状体形成材料A+送達物X 第2層:針状体形成材料B+送達物X」 p 「 [図:0001411613000001.jpg] 」(図1) q 「 [図:0001411613000002.jpg] 」(図2) r 「 [図:0001411613000003.jpg] 」(図3) s 「 [図:0001411613000004.jpg] 」(図4) t 「 [図:0001411613000005.jpg] 」(図5) u 「 [図:0001411613000006.jpg] 」(図6) v 「 [図:0001411613000007.jpg] 」(図7) (イ)認定事項 引用文献1の段落【0017】の「本発明の針状体10は、支持基板12上に針状の突起部11を備える」、段落【0018】の「突起部は・・・支持基体上に複数本林立した形態、のいずれでもよい。」(上記(ア)b)、段落【0020】の「図2に示す突起部11の高さHは10μm以上1000μm以下の範囲内であることが好ましい。」(上記(ア)c)との記載を総合すると、針状体10は、支持基板12、並びに、支持基板12上に複数本林立する、高さHが10μm以上1000μm以下の範囲内の針状の突起部11を含む。 引用文献1の段落【0017】(上記(ア)b)、段落【0020】(上記(ア)c)の記載を踏まえて、図1(上記(ア)p)をみると、突起部11のそれぞれは、突起部先端側から順に第1層11Aと第2層11Bを備えた細長い本体を含むことが看取できる。 引用文献1の段落【0017】(上記(ア)b)、段落【0022】(上記(ア)d)、段落【0044】(上記(ア)k)、段落【0046】(上記(ア)l)、段落【0047】(上記(ア)m)、段落【0049】(上記(ア)n)の記載を踏まえて、図6(g)(上記(ア)u)及び図7(k)(上記(ア)v)をみると、支持基板12と第2層11Bとを同材料で形成することにより、支持基板12と第2層11Bとを一体的に成形することが看取できる。 (ウ)引用発明 上記(ア)の記載事項及び(イ)の認定事項から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「キトサンの水溶性高分子の生体適合性材料を用いた針状体は、皮膚に穿刺後に皮膚内部で溶解させることができ、水溶性高分子の他に皮膚内への送達を目的とした送達物を含有させて針状体を作製することにより、針状体を皮膚に穿刺した際に水溶性高分子の溶解により送達物を皮膚内に送達することができるものであり、 支持基板12、並びに、支持基板12上に複数本林立する、高さHが10μm以上1000μm以下の範囲内の針状の突起部11を含む針状体10であって、 突起部11のそれぞれは、 突起部先端側から順に第1層11Aと第2層11Bを備えた細長い本体を含み、 前記第1層は、針状体形成材料A+送達物X 前記第2層は、針状体形成材料Aであり、 前記針状体形成材料Aは、水溶性高分子および多糖としてのキトサンであり、 前記第1層に含有される前記送達物Xは、ワクチン、生物製剤、注射剤等の薬理活性物質であり、 前記支持基板と前記第2層とを同材料で形成することにより、前記支持基板と前記第2層とを一体的に成形する針状体10。」 イ 引用文献2について (ア)記載事項 上記引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。 a 「【0043】 微細構造アレイ 微細構造アレイ組成物 本明細書に提供される調合物および方法と併用するために好適な微細構造アレイの一般的特徴は、米国特許公開第2008/0269685号、米国特許公開第2009/0155330号、米国特許公開第2011/0006458号、および米国特許公開第2011/0276028号に詳細に説明されており、その内容全体は、明示的に参照することによって本明細書に組み込まれる。好ましくは、微細構造アレイは、ほぼ平面の基部を備え、基部に取り付けられるのは、複数の溶解性微細構造物であって、それぞれ、基部への取付点と、被験体の皮膚を穿通するための遠位先端とを有する。例えば、図1を参照されたい。 【0044】 典型的には、微細構造物の少なくとも一部は、生体分解性、生体侵食性、生体吸収性および/または生体適合性ポリマーマトリクス、好ましくは、生体適合性かつ水溶性マトリクスから形成される。マトリクスにおいて使用するために好適な生体適合性、生体分解性、生体吸収性および/または生体侵食性ポリマーとして、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエステルアミド、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、PEG-PLAのブロックコポリマー、PEG-PLA-PEG、PLA-PEG-PLA、PEG-PLGA、PEG-PLGA-PEG、PLGA-PEG-PLGA、PEG-PCL、PEG-PCL-PEG、PCL-PEG-PCL、エチレングリコール-プロピレングリコール-エチレングリコールのコポリマー(PEG-PPG-PEG、商標名Pluronic(登録商標)またはPoloxamer(登録商標))、デキストラン、ヘタスターチ、テトラスターチ、またはペンタスターチ等のヒドロキシエチルスターチ、セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na CMC)、熱感受性HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ポリホスファゼン、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、他の多糖類、多価アルコール、ゼラチン、アルギン酸塩、キトサン、ヒアルロン酸およびその誘導体、コラーゲンおよびその誘導体、ポリウレタン、ならびにこれらのポリマーのコポリマーおよび混成物が挙げられる。」 b 「【0069】 活性剤 前述のように、本明細書に提供される溶解性微細構造物の少なくとも一部は、生体適合性かつ水溶性ポリマーマトリクスおよび活性剤を含む。 【0070】 微細構造物は、1つまたはそれより多くの活性剤を含んでもよい。1つまたはそれより多くの実施形態では、微細構造物の少なくとも一部は、随意に、1つまたはそれより多くの活性剤を含有し得る、コーティングを含んでもよい。 【0071】 一実施形態では、微小突起アレイ内の活性剤は、例えば、ワクチンとして使用するための1つまたはそれより多くのタンパク質またはペプチドである。これらの薬剤として、例えば、炭疽菌、ジフテリア、A型肝炎、B型肝炎、b型インフルエンザ菌、ヒトパピローマウイルス、インフルエンザ、日本脳炎、ライム病、はしか、髄膜炎菌および肺炎球菌疾患、おたふくかぜ、百日咳、ポリオ、狂犬病、ロタウイルス、風疹、帯状疱疹、天然痘、破傷風、結核、腸チフス、水痘、および黄熱に対する使用のために米国で承認されているものが挙げられ得る。活性剤は、弱毒生または死滅細菌、弱毒生ウイルス、サブユニットワクチン、結合型ワクチン、合成ワクチン、ウイルスベクター、多糖類ワクチン、およびDNAワクチンを含んでもよい。炭疽菌ワクチンの中でも、特定の選好が、PA(防御抗原)、特に、組み換え生成された(rPA、すなわち、組み換え防御抗原)である、防御抗原を含む、ワクチンに与えられる。別の実施形態では、活性剤は、組み換えヒト副甲状腺ホルモン(1~34)を含む、副甲状腺ホルモン(PTH)等のホルモンである。 【0072】 付加的薬剤として、トリ(流行性)インフルエンザウイルス、カンピロバクター、クラミジア、ボツリヌス菌、クロストリジウム-ディフィシレ、デング熱ウイルス、大腸菌、エボラウイルス、エプスタイン・バーウイルス、分類不能インフルエンザ菌、C型肝炎、E型肝炎、帯状疱疹を含むヘルペスウイルス、HIV、リーシュマニアおよびマラリア原虫、B群髄膜炎菌、ニコチン、パラインフルエンザ、ブタクサアレルゲン、呼吸系発疹ウイルス(RSV)、リフトバレー熱ウイルス、SARSに関連するコロナウイルス、赤痢菌、黄色ブドウ球菌、A群連鎖球菌(GAS)、B群連鎖球菌(GBS)、ダニ媒介性脳炎、ベネズエラウマ脳炎、およびウエストナイルウイルスを対象とするものが挙げられる。」 c 「 [図:0001411613000008.jpg] 」(図1) (イ)引用文献2に記載された技術的事項 a 上記(ア)a、cの記載事項から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。 「生体適合性、生体分解性、生体吸収性および/または生体侵食性ポリマーから形成される微細構造アレイにおいて、当該ポリマーとしてキトサン又はヒアルロン酸を使用すること。」 b 上記(ア)bの記載事項から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。 「微細構造アレイで送達する物質として、ボツリヌス毒素を採用すること。」 ウ 引用文献3について (ア)記載事項 上記引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている。 a 「[0069] 次に、本発明の体表適用製剤保持シートの実施形態について説明する。図9に示す体表適用製剤保持シート50はパッチ剤に属するものであり、シート状の支持体58と9個の体表適用製剤1a~1iとからなり、支持体58の片面に体表適用製剤1a~1iが保持されている。そして、体表適用製剤保持シート50を皮膚などの体表に押し当てることにより体表適用製剤1a~1iを体表に挿入可能である。体表適用製剤保持シート50は、マイクロニードルアレイとも呼ばれるものである。」 b 「[0070] 次に、基剤と目的物質について説明する。本発明の体表適用製剤で採用される基剤は、生体内溶解性の物質からなるものである。当該物質は高分子物質でもよいし、低分子物質(例:麦芽糖)でもよい。 [0071] 好ましい実施形態では、基剤が高分子物質からなる。さらに好ましい実施形態では、高分子物質が、多糖類、タンパク質、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、及びこれらの共重合体、並びにこれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種である。これらの高分子物質については、1種だけを用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。なお、多糖類、タンパク質、ポリビニルアルコール、及びカルボキシビニルポリマーは、いずれも水溶性かつ曳糸性の高分子物質である。 [0072] 多糖類の例としては、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デキストラン、デキストラン硫酸、アルギン酸、グリコーゲン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、アガロース、キチン、キトサン、ペクチン、及びプルラン、並びにこれらの塩が挙げられる。これらの多糖類については、1種だけを用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。タンパク質の例としては、血清アルブミン、血清α酸性糖タンパク質、及びゼラチン、並びにこれらの塩が挙げられる。これらのタンパク質については、1種だけを用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。もちろん、多糖類とタンパク質をと組み合わせて用いてもよい。」 c 「[0073] 一方、目的物質としては特に限定はなく、高分子物質、低分子物質、化学物質、生理活性物質、タンパク質(組換え型または天然型)、ペプチド、多糖類など、全ての物質が採用可能である。好ましくは、ペプチド、タンパク質、核酸、又は多糖類である。また上述したように、細胞を目的物質として採用することもできる。また用途としては、目的物質が、薬物、ワクチン、栄養素、又は化粧品用成分である構成も好ましい。目的物質が薬物やワクチン(ワクチン用抗原)の場合には、本発明の体表適用製剤を疾病の治療、予防、診断等に使用することができる。また、目的物質が化粧品用成分の場合には、皮膚老化の予防や改善、アンチエイジング、皮膚の美白維持、等の目的に使用できる。栄養素には、例えば健康食品・機能性食品成分が含まれる。以下に、本発明の体表適用製剤における目的物質として採用可能な物質の具体例を挙げるが、本発明における目的物質はこれらに限定されない。 [0074] 〔難・低経皮吸収性高分子の例〕 インスリン;インターフェロン;エリスロポエチン(EPO);腫瘍壊死因子(TNF);顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF);顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF);カルシトニン;絨毛性ゴナドトロピン;酢酸デモプレッシン;成長ホルモン;インフルエンザワクチン、肝炎ワクチン、小児マヒワクチンなどのワクチン;酢酸リュープロレリン;ボツリヌストキシン;グルコセレブロシダーゼ;第VII因子;卵巣刺激ホルモン;グレリン;血小板由来成長因子(PDGF)などの各種成長因子;DNA、RNA、オリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンス用)などの核酸。」 d 「[0088] 2.0gのヒアルロン酸(紀文フードケミファ社、品番:FCH-SU;基剤)に20mLの精製水を加え、ホモジナイザーにて攪拌して均一にした粘性の基剤液を調製した。20mgのアスコルビン酸(ナカライテスク社;目的物質)を50μLの精製水にて溶解した後、2.1gの基剤液を加えてよく混和し、濃厚液(溶液A4)を調製した。また、1mgのハイビスワコー103に1.0gの基剤液を加えてよく混和し、粘着剤(溶液B4)を調製した。 [0089] 実施例1と同様にして、脱気した溶液A4を鋳型の各細孔に塗布しながら詰め、遠心した(3000rpm,5分間)。これにより、溶液A4が細孔内に充填されると共に細孔の奥側(先端側)に寄せられ、細孔の手前側(後端側)にスペースが生じた。ラッピングフィルムを取り除き、鋳型表面の残留物を除去した。溶液B4を鋳型上の各孔の上に置くと共に鋳型の表面全体に塗布した。卓上遠心分離器で鋳型を遠心した(3000rpm,30分間)。これにより、溶液B4が細孔内に充填されると共に溶液A4の上に重層された。同時に、鋳型内の各溶液を乾燥および固化させた。溶液B4を塗布した紙製シート(支持体)を鋳型表面に貼付した後、ゆっくり剥がすことにより、針状の固形物を紙製シート上に保持された状態で鋳型から取り出した。これにより、100個のマイクロニードルを保持したパッチ剤/マイクロニードルアレイが得られた。シート上に保持された100個のマイクロニードルはいずれも図1,2に示すような2つの区分、すなわち、アスコルビン酸を含む先端部と、基剤のみで構成された後端部とを有するものであった。」 e 「[0110] 0.5mgのメチレンブルー(ナカライテスク社)と5.0mgのヒアルロン酸(商品名:FCH-60;紀文フードケミファ社;基剤)に、10μLのスマトリプタン(商品名:イミグラン点鼻剤;目的物質;スマトリプタン2.0mgに相当)と140μLの精製水を加えてよく溶解及び混和し、濃厚液(溶液A11)を調製した。一方、1.0gの高分子デキストラン(ナカライテスク社)に1.0mLの脱気した精製水を加えて溶解及び混和し、濃厚液(溶液B11)を調製した。 [0111] 実施例9と同様にして、溶液A11を鋳型の各細孔に分注し、遠心した(3500rpm、15分間)。これにより、溶液A11が細孔内に充填されると共に細孔の奥側(先端側)に寄せられ、細孔の手前側(後端側)にスペースが生じた。ケースから鋳型を取り出し、鋳型表面の残留物を除去した。さらに遠心した(3500rpm、15分間)。その後、実施例9と同様にして、溶液B11の塗布、紙製シートの貼付と遠心、及び乾燥を行った。乾燥後、紙製シートをゆっくり剥がし、針状の固形物を紙製シート上に保持された状態で鋳型から取り出した。これにより、100個のマイクロニードルを保持したパッチ剤/マイクロニードルアレイが得られた。シート上に保持された100個のマイクロニードルはいずれも図1,2に示すような2つの区分、すなわち、スマトリプタンを含む先端部と、高分子デキストランを含む後端部とを有するものであった。先端部はメチレンブルーの存在によって青色に着色しており、その長さLは約300~350μmであった。」 f 「 [図:0001411613000009.jpg] 」(図9) (イ)引用文献3に記載された技術的事項 a 上記(ア)a、b、d~fの記載事項から、引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。 「生体内溶解性の物質からなるマイクロニードルアレイにおいて、当該生体内溶解性の物質としてキトサン又はヒアルロン酸を使用すること。」 b 上記(ア)cの記載事項から、引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。 「マイクロニードルアレイで送達する物質として、ボツリヌス毒素を採用すること。」 (4)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「支持基板12」は本件補正発明の「ベース層」に相当する。 引用発明の「支持基板12上に複数本林立する、高さHが10μm以上1000μm以下の範囲内の針状の突起部11」は本件補正発明の「ベース層から突出する複数のマイクロニードル」に相当する。 引用発明の「支持基板12、並びに、支持基板12上に複数本林立する、高さHが10μm以上1000μm以下の範囲内の針状の突起部11を含む針状体10」は、本件補正発明の「マイクロニードルアレイ」に相当する。 引用発明の「第2層11B」は本件補正発明の「近位部分」に、同様に、「第1層11A」は「遠位部分」に、それぞれ相当する。 引用発明の「細長い本体」は、本件補正発明の「細長い本体」に相当する。 引用発明の「水溶性高分子および多糖としてのキトサン」と、本件補正発明の「ヒアルロン酸、疎水性修飾ヒアルロン酸、又はそれらの任意の組み合わせを含む第1の溶解性ポリマー」とは、第1の溶解性ポリマーの限りで一致する。 引用発明の「第1層」は「水溶性高分子および多糖」である「針状体形成材料A」から形成されるものであることを踏まえると、「第1層に含有される」「送達物X」の「ワクチン、生物製剤、注射剤等の薬理活性物質」と、本件補正発明の「第1の溶解性ポリマーのマトリックス内に組み込まれた、抗原、抗体又は毒素から選択される活性成分」とは、第1の溶解性ポリマーのマトリックス内に組み込まれた活性成分の限りで一致する。 引用発明において「前記第2層は、針状体形成材料A」であること、「前記針状体形成材料は、水溶性高分子および多糖としてのキトサン」であることを踏まえると、引用発明の「前記支持基板と前記第2層とを同材料で形成することにより、前記支持基板と前記第2層とを一体的に成形する」ことは、本件補正発明の「近位部分とベース層とが、第1の溶解性ポリマーを含みかつ実質的に活性成分を含まない単一の連続層を形成する」ことに相当する。 以上によれば、本件補正発明と引用発明とは、 「ベース層、並びに ベース層から突出する複数のマイクロニードル を含むマイクロニードルアレイであって、 マイクロニードルのそれぞれは、 近位部分と、 第1の溶解性ポリマーと、第1の溶解性ポリマーのマトリックス内に組み込まれた活性成分と を含む遠位部分と を有する細長い本体を含み、 近位部分とベース層とが、第1の溶解性ポリマーを含みかつ実質的に活性成分を含まない単一の連続層を形成する、 上記マイクロニードルアレイ。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 第1の溶解ポリマーについて、本件補正発明は、「ヒアルロン酸、疎水性修飾ヒアルロン酸、又はそれらの任意の組み合わせを含む」のに対して、引用発明は、「キトサン」である点。 <相違点2> 活性成分について、本件補正発明は、「抗原、抗体又は毒素から選択される」のに対して、引用発明は、「ワクチン、生物製剤、注射剤等の薬理活性物質」である点。 (5)判断 ア 相違点1について 上記(3)イ(イ)aに示したとおり、引用文献2に「生体適合性、生体分解性、生体吸収性および/または生体侵食性ポリマーから形成される微細構造アレイにおいて、当該ポリマーとしてキトサン又はヒアルロン酸を使用すること。」が記載され、また、上記(3)ウ(イ)aに示したとおり、引用文献3に「生体内溶解性の物質からなるマイクロニードルアレイにおいて、当該生体内溶解性の物質としてキトサン又はヒアルロン酸を使用すること。」が記載されているように、皮膚穿刺後に皮膚内部で溶解するマイクロニードルの材料として、キトサン又はヒアルロン酸を採用することは、いずれも従来周知の技術である。 そして、引用発明は、マイクロニードルの材料として、皮膚穿刺後に皮膚内部で溶解する材料を使用するものであるから、キトサンに換えて上記周知の技術のヒアルロン酸を適用することは当業者が容易に想到し得たことである。 イ 相違点2について 引用発明には、マイクロニードルに含ませる薬理活性物質を「ワクチン」とすることが記載されている。一般的な「ワクチン」に「抗原」が含まれることは技術常識であり、当該相違点2は、実質的な相違点ではない。 仮にそうとまでいえないとしても、引用発明には、マイクロニードルに含ませる薬理活性物質として「ワクチン」が記載されていることに鑑みれば、引用発明において、マイクロニードルに含ませる薬理活性物質を「抗原」とすることは、当業者にとって容易である。 また、引用発明には、マイクロニードルに含ませる薬理活性物質として「生物製剤」も記載されているところ、「生物製剤」の主な形態の一つが「抗体」であることは一般に知られているから、引用発明において、マイクロニードルに含ませる薬理活性物質を「抗体」とすることも、当業者にとって容易である。 さらに、上記(3)イ(イ)b及び上記(3)ウ(イ)bに示したとおり、マイクロニードルで送達する物質として、ボツリヌス毒素を採用することは従来周知であるから、引用発明において、マイクロニードルに含ませる送達物を「毒素」とすることも、当業者にとって容易である。 ウ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 エ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。 (6)審判請求人の主張について 令和 5年 9月26日提出の意見書における審判請求人の主張について、以下検討する。 ア 審判請求人の主張 (ア)「引例2には、微細構造アレイの微細構造物の少なくとも一部を形成する生体適合性かつ水溶性のマトリックスポリマーとして、ヒアルロン酸およびその誘導体について一度だけ記載されているにとどまり(引例2、段落0044)、ヒアルロン酸およびその誘導体をポリマーとして使用した微細構造アレイについての実施例も記載されておらず、ましてやその特性についても検討されていません。そして、引例2の微細構造アレイを形成するために使用される好ましいポリマーは、デキストランおよびスターチであると記載されています(段落0045等)。」 (イ)「引例3は、段落0072において、マイクロニードルを形成するために使用できる可能なポリマーのリストでヒアルロン酸を挙げています。引例3の実施例4及び11は、ヒアルロン酸からなるマイクロニードルについて記載しています。しかしながら、実施例4及び11は、有効成分としてそれぞれアスコルビン酸及びスマトリプタンを採用しており、このアスコルビン酸とスマトリプタンは、本願補正後の発明に係るマイクロニードルの活性成分である抗原、抗体又は毒素と比較して、分子量が非常に小さい小分子です。よって、この引例3の記載に接した当業者は、ヒアルロン酸は小さな分子量を有する活性成分を含むマイクロニードルの調製のみに使用することができると解し、本願補正後の特許請求の範囲に規定される抗原、抗体又は毒素から選択される活性成分を含むマイクロニードルの調製には使用しないであろうと考えます。」 (ウ)引用文献1と引用文献2、3の組み合わせについて、「本願請求項に規定されているように、「ヒアルロン酸およびその誘導体」を、マイクロニードルとベース層のどちらにも共通して使用しようとは考えないであろうと思料いたします。」 イ 検討 上記ア(ア)及び(イ)の主張について、引用文献2及び3は、皮膚穿刺後に皮膚内部で溶解するマイクロニードルの材料として、キトサン又はヒアルロン酸を採用することが周知技術であることを示す文献である。そして、引用文献2及び3には、特定の活性成分との組み合わせでしかヒアルロン酸を採用し得ないことを示唆する記載は見受けられない。そうすると、引用発明において、皮膚内部で溶解するマイクロニードルの材料として、キトサンに換えて、周知のヒアルロン酸を採用することは、当業者にとって容易である。 上記ア(ウ)の主張について、マイクロニードルとベース層のどちらにも共通して同一の溶解性のポリマーを使用する点は、上記(3)アに示したように、引用文献1に記載されており、引用発明に周知技術を採用したものにおいて、マイクロニードルとベース層のどちらにも共通してヒアルロン酸を使用する構成とすることは当業者によって容易である。 よって、審判請求人の主張を採用することはできない。 3 本件補正についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するので、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和 5年 9月26日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和 5年 1月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-12に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 令和 5年 3月28日付け拒絶理由(最後)通知書における拒絶の理由 令和 5年 3月28日付け拒絶理由(最後)通知書における拒絶の理由1は、次のとおりのものである。 本願の請求項1-12に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1.特開2016-083085号公報 引用文献2.特表2016-518868号公報 引用文献3.国際公開第2009/066763号 引用文献4.韓国公開特許第10-2016-0100265号公報 3 引用文献の記載事項及び引用発明等 令和 5年 3月28日付け拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書における拒絶の理由1で引用された引用文献1の記載事項、認定事項及び引用発明は、上記第2の[理由]2(3)アに記載したとおりである。 当該拒絶の理由1で引用された引用文献2の記載事項、及び技術的事項は、上記第2の[理由]2(3)イに記載したとおりである。 当該拒絶の理由1で引用された引用文献3の記載事項、及び技術的事項は、上記第2の[理由]2(3)ウに記載したとおりである。 当該拒絶の理由1で引用された引用文献4の記載事項は、以下のとおりである。なお、上記刊行物は韓国語による出願であるため、記載事項については合議体において作成した日本語訳のみを示す。 a 「[0011] 本発明で用いられるヒアルロン酸は、N-アセチルグルコサミンとグルクロン酸の二糖単位が繰り返された連結構造を有する生分解性高分子である。」 b 「[0013] 本発明では、低分子のヒアルロン酸を使用しながらも、皮膚透過に適した機械的強度を持ち、皮膚内で容易に溶解または膨潤し、薬物送達や皮膚美容に適したマイクロ構造体を製造するために、架橋されたヒアルロン酸ヒドロゲル及びこれを主成分とするマイクロ構造体の製造方法を開発した。」 c 「[0063] 本発明の他の実施形態によれば、本発明のヒアルロン酸は、平均分子量が100-5000kDaである。本発明のある実施形態によれば、本発明のヒアルロン酸は、平均分子量が100-4500、150-4500、200-4200kDa、220-4200、220-1500、300-1500、350-1500、220-550、240-490、3000-3500、1000-1800、1200-1500、300-400kDaである。」 d 「[0078] 図1aは、本発明の架橋されたヒアルロン酸(HA)ヒドロゲル及びマイクロ構造体の製造方法によって製造されたマイクロ構造体の模式図を示し、 図1bは、本発明の実施例3-1によって製造されたマイクロ構造体の顕微鏡(Nikon Eclipse 80i、70倍)写真を示す。上記マイクロ構造体の2次基部は、非架橋HAを添加して基部の厚さを調節した。 図2は、本発明のマイクロ構造体の製造過程の模式図である。図2aは本発明のマイクロ構造体の製造過程に対する代表模式図であり、図2bは本発明の実施例3-2に対する具体的な模式図である。 図3aは本発明の実施例2-3によって製造された架橋されたヒアルロン酸ヒドロゲルを用いたマイクロ構造体の顕微鏡(Nikon Eclipse 80i、100倍)写真を示す。 図3b及び3cは、本発明の実施例3-2によって製造された架橋されたヒアルロン酸ヒドロゲルを用いたマイクロ構造体の電子顕微鏡(SEM、JEOL JSM-7500F、70倍)写真を示す。」 e 「[0082] 実施例1:架橋されたヒアルロン酸ヒドロゲルの製造 [0083] 実施例1-1:10%ヒアルロン酸(平均分子量360kDa)の利用 [0084] 実施例1-1-1 [0085] 平均分子量360kDa(分子量範囲240-490kDa)のヒアルロン酸(Bloomage Freda Biotech、中国)を10%(w/v)の濃度でアルカリ水(0.25 N NaOH)に完全に溶解した後、ヒドロキシル基との反応で架橋を形成するためにブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE, 1,4-butanediol diglycidyl ether)を添加した。BDDEはHAの繰り返し単位の10モル%で添加した。架橋反応が完全に進行するために25℃で24時間または30℃で20時間反応させた。ヒアルロン酸溶液のpHは約12であった。製造された架橋されたヒアルロン酸ヒドロゲルを精製水または生理食塩水で洗浄して、残留BDDEおよびNaOHを除去した。製造された架橋されたヒアルロン酸ヒドロゲルの架橋度はH1-NMR分析法(核磁気共鳴分光器)で測定したところ、架橋度は19.75%であった。」 f 「[0129] 実施例2-1 [0130] PDMSマイクロモールドに上記実施例1の方法で製造された架橋されたヒアルロン酸ヒドロゲルを供給した後、常温(25℃)で48時間、50℃で6時間または70℃で3時間乾燥させ、上記モールドに形成された穴に注入させた後、モールドを除去して架橋されたヒアルロン酸ヒドロゲルマイクロ構造体を製造した。」 g 「 [図:0001411613000010.jpg] 」(図1) h 「 [図:0001411613000011.jpg] 」(図3) 4 対比・判断 本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明の「ヒアルロン酸、疎水性修飾ヒアルロン酸、又はそれらの任意の組み合わせを含む」に、選択肢として「架橋ヒアルロン酸」を追加するとともに、「活性成分」について「抗原、抗体又は毒素から選択される」という限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]2(5)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-017861

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