2021-017399
セラミックス-金属接合体の製造方法、セラミックス回路基板の製造方法及びセラミックス-金属接合体
- 審判番号
- 2021-017399
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-124986外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年12月16日
- 審決日
- 2022年12月20日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】三菱マテリアル株式会社
- 【請求人代理人】青山 正和
- 分類
- P18 .121-Z (H05K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 9項目
1.手続の経緯
本願は、平成29年6月27日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
2.本願発明
本願の請求項1ないし11に係る発明は、令和3年12月16日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項7に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項7】複数のセラミックス基板を形成可能な大きさを有するとともに、両面に複数のセラミックス基板を分割するためのスクライブラインが形成されたセラミックス母材と、前記セラミックス母材の両面に前記スクライブラインにより区画された複数の領域にまたがって接合され、厚さ寸法が0.4mm以下のアルミニウム合金からなる金属層と、を備え、前記金属層はSiを含有していることを特徴とするセラミックス-金属接合体。」
なお、請求項7については、上記令和3年12月16日の手続補正による補正はされていない。
3.原査定の拒絶の理由の概要
本願の請求項7に対する原査定(令和3年10月7日付け拒絶査定)の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
この出願の請求項7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
4.引用文献の記載及び引用発明
上記引用文献1(特開2015-185606号公報)には、「パワーモジュール用基板の製造方法」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
(1)「【請求項1】セラミックス母材に形成されたスクライブラインに沿って該セラミックス母材を複数のセラミックス基板に分割して、該セラミックス基板に金属層が積層されたパワーモジュール用基板を複数製造する方法であって、前記セラミックス母材にレーザ光を照射して前記スクライブラインを形成するレーザ加工工程と、前記スクライブラインが形成された前記セラミックス母材をアルミニウム用エッチング液で洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程後の前記セラミックス母材に前記金属層を形成する金属板をろう付け接合する接合工程と、前記セラミックス母材に接合された金属板をエッチングすることによりパターンを形成するエッチング工程と、前記エッチング工程後に前記セラミックス母材を前記スクライブラインに沿って分割する分割工程と、前記分割工程後に前記金属層に無電解メッキを施すメッキ工程とを備えることを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。」
(2)「【0016】また、パワーモジュール用基板3は、セラミックス基板2と、セラミックス基板2の一方の面に積層された回路層6と、セラミックス基板2の他方の面に積層された金属層7とを備え、これらセラミックス基板2と回路層6及び金属層7とは、ろう付け接合されている。そして、このパワーモジュール用基板3の回路層6の表面に電子部品4がはんだ付けされ、金属層7の表面にヒートシンク5が接合されている。【0017】セラミックス基板3は、AlN(窒化アルミニウム)、Al2O3(アルミナ)等のアルミニウムを含むセラミックス材料により形成される。また、回路層6、金属層7及びヒートシンク5は、純アルミニウム又はアルミニウム合金、もしくは純銅又は銅合金により形成され、純度99.00質量%以上の純アルミニウム又はアルミニウム合金、無酸素銅やタフピッチ銅等の純銅又は銅合金により形成することが望ましい。そして、セラミックス基板2と回路層6及び金属層7とは、回路層6及び金属層7が純アルミニウム又はアルミニウム合金で形成される場合、Al-Si系、Al-Ge系、Al-Cu系、Al-Mg系またはAl-Mn系等の合金のろう材により、ろう付け接合される。また、回路層6及び金属層7が純銅又は銅合金である場合には、Ag‐Cu‐TiやAg‐Tiろう材を用いた活性金属ろう付けにより接合される。」
(3)「【0019】次に、以上のように構成されるパワーモジュール用基板3の製造方法について説明する。第1実施形態のパワーモジュール用基板の製造方法は、図1に示すように、複数の製造工程により構成される。(レーザ加工工程)まず、図3(a)に示すように、板状のセラミックス母材20の表面にスクライブライン21を形成する。この図3(a)に示すように、スクライブライン21は、レーザ光Lを照射することにより、セラミックス母材20の表面を切削加工して形成される。この際、スクライブライン21上には、レーザ光の熱によってガラス化された熱変性層22が形成される。この熱変性層22は、アモルファス状のアルミニウム酸化物やアルミニウムの遊離物等が混在して形成されたものであり、深さ1μm~40μm程度に形成されている。続きを表示(全21行)なお、レーザ加工工程では、例えばCO2レーザ、YAGレーザ、YVO4レーザ、YLFレーザ等を使用してスクライブライン21の加工を行うことができる。【0020】(洗浄工程)次に、図示は省略するが、スクライブライン21が形成されたセラミックス母材20を、アルミニウム用エッチング液に浸漬させることにより洗浄する。アルミニウム用エッチング液は、塩化鉄、塩化銅又は水酸化ナトリウムを主成分とする水溶液とされ、種々の添加剤が添加されるものを用いることもできる。なお、アルミニウム用エッチング液は、回路層6及び金属層7を純アルミニウム又はアルミニウム合金で形成する場合、後述するエッチング工程で用いられるエッチング液と同じものを用いることができる。そして、セラミックス母材20をアルミニウム用エッチング液に浸漬させることで、図3(b)に示すように、セラミックス母材20のスクライブライン21上に形成された熱変性層22が除去される。この際のアルミニウム用エッチング液の温度や浸漬時間は、深さ1μm~40μm程度の熱変性層22が除去される条件に設定される。【0021】(接合工程)そして、図3(c)に示すように、洗浄工程後のセラミックス母材20に回路層6及び金属層7となる金属板60,70をろう付け接合する。具体的には、セラミックス母材20の両面に、それぞれろう材箔を介在させて金属板60,70を積層し、これらの積層体を加圧した状態のまま真空中で加熱することにより、セラミックス母材20と金属板60,70とをろう付け接合した接合体30を形成する。【0022】(エッチング工程)次に、接合体30のセラミックス母材20に接合された金属板60,70をエッチングすることにより、回路層6及び金属層7のパターンを形成する。これにより、図3(d)に示すように、セラミックス母材20には、スクライブライン21により区画された各領域に回路層6及び金属層7が設けられる。【0023】(分割工程)そして、ダイシング装置や基板分割装置等の切断手段により、セラミックス母材20をスクライブライン21に沿って分割することで、図3(e)に示すように、セラミックス母材20が個片化され、複数のパワーモジュール用基板3が製造される。【0024】(メッキ工程)最後に、図示は省略するが、各パワーモジュール用基板3に金メッキ、銀メッキ、ニッケルメッキ等の無電解メッキ処理を施すことにより、回路層6及び金属層7に無電解メッキが形成されたパワーモジュール用基板3を製造することができる。」
(4)「【0030】次に、本発明の効果を確認するために行った本発明例及び比較例について説明する。本発明例及び比較例として、厚み0.635mmのAlNからなるセラミックス基板2に、厚み0.6mmの4N‐Alからなる回路層6と、厚み0.6mmの4N‐Alからなる金属層7とを、Al‐Si系のろう材により接合したパワーモジュール用基板3の試料を作製した。本発明例及び比較例の試料は、波長10μmのCO2レーザを用いて深さ100μmのスクライブライン21(なお、熱変性層の厚さは30μmであった)を形成したセラミックス母材に、いずれも回路層6となる金属板60及び金属層7となる金属板70のろう付け接合前の段階で、表1に示す主成分の水溶液からなる洗浄液に浸漬させることにより洗浄を行った。各試料の洗浄条件を、表1に示す。」
(5)「【0036】また、セラミックス母材20へのスクライブライン21の加工は、本実施形態のようにセラミックス母材20の片面のみに行う場合に限定されるものではなく、セラミックス母材20の両面にスクライブライン21を設ける場合も含まれる。」
(6)「【図3】[図:0001394688000001.jpg]」
上記(1)ないし(6)から以下のことがいえる。
・上記引用文献1に記載の「パワーモジュール用基板の製造方法」は、上記(1)、(2)の段落【0016】、(3)、(5)の記載、及び(6)(図3)によれば、セラミックス母材20の一方の表面(片面)にスクライブライン21を形成するレーザ加工工程や、スクライブライン21が形成されたセラミックス母材20の両面に、それぞれ回路層6及び金属層7となる金属板60,70をろう付け接合した接合体30を形成する接合工程、スクライブライン21に沿ってセラミックス母材20を複数のセラミックス基板2に分割して、セラミックス基板2に回路層6及び金属層7が積層されたパワーモジュール用基板3を複数製造する分割工程等を備えるものである。
・上記(6)(図3)において、特に図3(c)によれば、金属板60,70は、スクライブライン21により分割されて複数のセラミックス基板2となる複数の領域にまたがって接合されることが見て取れる。
・(2)の段落【0017】、(4)の記載によれば、回路層6と金属層7、すなわち金属板60,70はアルミニウム(4N-Al)からなり、セラミックス基板2にAl-Si系のろう材により接合されてなるものである。また、回路層6と金属層7、すなわち金属板60,70の厚みとしては0.6mmのものが用いられている。
以上のことから、特に図3に示される実施形態において、接合工程で得られた、スクライブライン21に沿ってセラミックス母材20を複数のセラミックス基板2に分割する前の「接合体30」に着目してこれを発明として捉え、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「一方の表面(片面)に複数のセラミックス基板に分割するためのスクライブラインが形成されたセラミックス母材と、前記セラミックス母材の両面に前記スクライブラインにより分割されて複数のセラミックス基板となる複数の領域にまたがってAl-Si系のろう材により接合され、厚さ0.6mmのアルミニウム(4N-Al)からなる金属板と、を備える接合体。」
5.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)セラミックス母材について
引用発明における「複数のセラミックス基板」、「スクライブライン」は、本願発明でいう「複数のセラミックス基板」、「スクライブライン」に相当する。
そして、引用発明における「セラミックス母材」は、複数のセラミックス基板に分割するためのスクライブラインが形成されているのであるから、複数のセラミックス基板を形成可能な大きさを有することは自明なことであり、本願発明でいう「セラミックス母材」に相当するものである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「複数のセラミックス基板を形成可能な大きさを有するとともに、複数のセラミックス基板を分割するためのスクライブラインが形成されたセラミックス母材と」を備えるものである点で共通する。
ただし、スクライブラインについて、本願発明ではセラミックス母材の「両面」に形成されていると特定するのに対し、引用発明では一方の表面(片面)である点で相違する。
(2)金属層について
引用発明における「金属板」は、セラミックス母材の両面にスクライブラインにより分割されて複数のセラミックス基板となる複数の領域、すなわちスクライブラインにより区画された複数の領域にまたがって接合されてなるものであり、本願発明でいう「金属層」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記セラミックス母材の両面に前記スクライブラインにより区画された複数の領域にまたがって接合され、所定の厚さ寸法を有する金属層と」を備えるものである点で共通する。
ただし、金属層の所定の厚さ寸法について、本願発明では「0.4mm以下」と特定するのに対し、引用発明では0.6mmである点で相違する。
また、金属層の素材について、本願発明では「アルミニウム合金」と特定するのに対し、引用発明ではアルミニウム(4N-Al)である点でも相違する。
さらに、金属層について、本願発明では「Siを含有している」ことを特定するのに対し、引用発明ではそのような明確な特定がない点で相違する。
(3)そして、引用発明における「接合体」は、セラミックス母材の両面に金属板を接合してなるものであるから、本願発明でいう「セラミックス-金属接合体」に相当するものである。
よって、上記(1)ないし(3)によれば、本願発明と引用発明とは、
「複数のセラミックス基板を形成可能な大きさを有するとともに、複数のセラミックス基板を分割するためのスクライブラインが形成されたセラミックス母材と、前記セラミックス母材の両面に前記スクライブラインにより区画された複数の領域にまたがって接合され、所定の厚さ寸法を有する金属層と、を備えることを特徴とするセラミックス-金属接合体。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
スクライブラインについて、本願発明ではセラミックス母材の「両面」に形成されていると特定するのに対し、引用発明では一方の表面(片面)である点。
[相違点2]
金属層の所定の厚さ寸法について、本願発明では「0.4mm以下」と特定するのに対し、引用発明では0.6mmである点。
[相違点3]
金属層の素材について、本願発明では「アルミニウム合金」と特定するのに対し、引用発明ではアルミニウム(4N-Al)である点。
[相違点4]
金属層について、本願発明では「Siを含有している」ことを特定するのに対し、引用発明ではそのような明確な特定がない点。
6.判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
例えば原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2005-57031号公報、特に段落【0002】、図10を参照)、さらには特開2008-198635号公報(特に段落【0014】~【0015】、【0035】、図2を参照)、特開2005-129625号公報(特に段落【0014】を参照)に記載されているように、母材となるセラミックス基板を分割して複数の基板を得るために当該母材に設けるスクライブライン(ブレークライン)を、母材の反りの抑制や分割した際の基板の欠けの防止などのために母材の両面に設けるようにすることは周知といえる技術である。さらに、引用文献1の段落【0036】には「また、セラミックス母材20へのスクライブライン21の加工は、本実施形態のようにセラミックス母材20の片面のみに行う場合に限定されるものではなく、セラミックス母材20の両面にスクライブライン21を設ける場合も含まれる。」と記載され、スクライブラインをセラミックス母材の両面に形成し得ることも示唆されていることから、引用発明においても周知の技術を採用し、相違点1に係る構成とすることは当業者であれば容易になし得たことである。
[相違点2]について
例えば原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2009-252971号公報、特に段落【0050】を参照)、さらには上記特開2005-129625号公報(特に段落【0015】~【0017】を参照)、特開2012-138541号公報(特に段落【0082】~【0085】を参照)に記載されているように、セラミックス基板の両面に接合される金属板の厚さとして、本願発明で特定する「0.4mm以下」の厚さはその接合法にかかわらず普通に選択し得る厚さにすぎず、引用発明においても、金属板の厚さ寸法を0.6mmに代えて0.4mm以下のものとすることは当業者であれば適宜なし得たことである。
ここで、請求人は令和3年5月21日に提出した意見書や審判請求書において、引用文献3では金属板を溶湯接合法により接合しており、この溶湯接合法ではろう材を用いないので、本願発明が解決しようとする課題は生じないことや、さらに審判請求書において、溶湯接合法ではSiが拡散するという現象も生じない旨主張している。
しかしながら、溶湯接合法かろう付け法かの接合法にはかかわらず、セラミックス基板の両面に接合される金属板の厚さとして、本願発明で特定する「0.4mm以下」の厚さは普通に選択される周知の厚さにすぎないことは上述したとおりである。
そして、そもそも本願発明においては、セラミックス母材と金属層との接合法については何ら特定がなく(なお、本願発明には「前記金属層はSiを含有している」と特定があるものの、このSiの由来については何ら特定がない)、本願発明は、Al-Si系ろう材による接合法以外の接合法で接合されたものも含まれ得るものであるといえ、請求人の上記主張は必ずしも本願の請求項7の記載に基づかないものである。
以上のことを踏まえると、請求人の上記主張は採用できない。
[相違点3]について
引用文献1の段落【0017】(上記「4.(2)」を参照)には、回路層6及び金属層7、すなわち金属板の素材として、純度99.00質量%以上の純アルミニウム以外にアルミニウム合金も挙げられており、いずれが用いられる場合にもAl-Si系のろう材が用いられ得ることが記載されていることから、引用発明において、金属板の素材としてアルミニウム(4N-Al)、すなわち純アルミニウムに代えてアルミニウム合金を用いるようにすることも当業者であれば適宜なし得たことである。
[相違点4]について
引用発明における金属板は、セラミックス母材の両面に「Al-Si系」のろう材により接合させてなるものである。ここで、引用文献1の段落【0021】(上記「4.(3)」を参照)にも記載のように、ろう材による接合は加圧状態で加熱される。したがって、接合する際の加圧状態での加熱によって、金属板中には多少なりともAl-Si系のろう材中のSi原子が拡散し、Siを含有しているものと解される。
よって、相違点4は実質的な相違ではなく、引用発明は相違点4に係る構成を有しているものと認められる。
7.むすび
以上のとおり、本願の請求項7に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知の技術事項(引用文献2等に記載の技術事項、引用文献3等に記載の技術事項)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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