特許拒絶査定不服審判
2021-016969
ビデオ通話センター
- 審判番号
- 2021-016969
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-184039外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年12月09日
- 審決日
- 2022年10月03日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ウォルジエン エルエルシー
- 【請求人代理人】石川 徹
- 分類
- P18 .121-Z (H04N) / P18 .56 -Z (H04N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-184039「ビデオ通話センター」拒絶査定不服審判事件〔平成31年2月28日出願公開、特開2019-33503〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)8月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年8月20日 米国)を国際出願日とする特願2015-528524号の一部を平成30年9月28日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年10月25日 :手続補正書の提出
令和 元年 6月25日 :手続補正書の提出
令和 元年 9月26日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 4月 1日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 2年 9月 4日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 3月 8日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 3年 8月 5日付け:拒絶査定
令和 3年12月 9日 :審判請求書及び手続補正書の提出
第2 令和3年12月9日の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年12月9日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲について補正するものであり、本件補正前の請求項36(令和3年3月8日の手続補正により補正された請求項36)の記載が、下記(1)のとおりであったところ、本件補正後の請求項35である下記(2)のとおりの記載への補正を含むものである。なお、下記(2)における下線は、補正箇所を示す。また、本件補正前の請求項36及び本件補正後の請求項35のそれぞれについて、当審において(A)ないし(I)に分説し、以下それぞれ「構成A」ないし「構成I」という。
(1)本件補正前の請求項36
(A)視聴者参加テレビジョン放映方法であって:
(B)複数のビデオ通話をインターネットを介して異なる発信者から受信して審査すること;
(C)各ビデオ通話及び発信者の文字識別又はビデオ通話文字オーバーレイを決定して入力すること;及び
(D)放映される少なくとも1つのビデオ通話を出演タレントが選択すること;を含み、
(E)前記出演タレントのために、出演可能な発信者の画像及び前記文字識別又は前記ビデオ通話文字オーバーレイを生成すること;
(F)生成された前記文字識別又は前記ビデオ通話文字オーバーレイを、タッピング可能な前記画像の一部としてタッチスクリーン上に表示すること;
(G)前記出演タレントが、前記画像のうちの一つをタッピングすることにより、タッピングされた画像に対応するビデオ通話を放映されるビデオ通話として選択すること;及び
(H)選択されたビデオ通話に、放映されるビデオ通話を切り替えることをさらに含む、
(A)前記視聴者参加テレビジョン放映方法。
(2)本件補正後の請求項35
(A)視聴者参加テレビジョン放映方法であって:
(I)インターネットを介した異なる発信者からの複数のビデオ通話を接続するための2つ以上のビデオ通話中央処理ユニットであって、各ビデオ通話中央処理ユニットがビデオ通話専用である前記2つ以上のビデオ通話中央処理ユニットを利用して、
(B)複数のビデオ通話をインターネットを介して異なる発信者から受信して審査すること;
(C)各ビデオ通話及び発信者の文字識別又はビデオ通話文字オーバーレイを決定して入力すること;及び
(D)放映される少なくとも1つのビデオ通話を出演タレントが選択すること;を含み、
(E)前記出演タレントのために、出演可能な発信者の画像及び前記文字識別又は前記ビデオ通話文字オーバーレイを生成すること;
(F)生成された前記文字識別又は前記ビデオ通話文字オーバーレイを、タッピング可能な前記画像の一部としてタッチスクリーン上に表示すること;
(G)前記出演タレントが、前記画像のうちの一つをタッピングすることにより、タッピングされた画像に対応するビデオ通話を放映されるビデオ通話として選択すること;及び
(H)選択されたビデオ通話に、放映されるビデオ通話を切り替えることをさらに含む、
(A)前記視聴者参加テレビジョン放映方法。
2 本件補正の適否
本件補正のうち、本件補正後の請求項35に係る補正は、本件補正前の請求項36の構成Bの「複数のビデオ通話をインターネットを介して異なる発信者から受信して審査すること」に対して、構成Iの「インターネットを介した異なる発信者からの複数のビデオ通話を接続するための2つ以上のビデオ通話中央処理ユニットであって、各ビデオ通話中央処理ユニットがビデオ通話専用である前記2つ以上のビデオ通話中央処理ユニットを利用して、」という事項(以下「補正事項1」という。)の限定を付加するものである。
ここで、本件補正前の請求項36に記載された発明と本件補正後の請求項35とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項35は、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正後の請求項35に係る発明(以下「本件補正発明35」という。)は、上記1(2)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献
ア 引用文献1(特開2009-100193号公報)
(ア)引用文献1の記載事項
原査定において引用された引用文献1には、次の記載がある。なお、下線は、当審が引用箇所を明示するために付した。
「【0019】
選択支援装置1のハードウエアの構成について、図2を用いて説明する。図2は、選択支援装置1のハードウエアの構成を示すブロック図である。CPU(Central Processing Unit)11は、記憶部12に記憶されたプログラムをRAM(Random Access Memory)13にロードして実行する。これにより、CPU11が、バス10を介して、選択支援装置1の各部について制御する。また、RAM13は、CPU11が各データの加工などを行う際のワークエリアとして機能する。」
「【0039】
このような表示映像データに基づいて行われる表示部15における表示は、図4に示すような表示となる。このとき、図4に示すように、それぞれの端末映像データに対応する識別データに基づいて、端末映像データに係る映像に対応するように、その端末映像データが生成された通信端末2の端末番号などの表示を行なってもよい。なお、各端末映像データに係る映像が表示される画面内の位置については、CPU11によって決定されるが、この表示位置はどのように決定されてもよく、各映像が表示されない領域が最小になるように、各映像が表示される位置および表示領域の大きさを決定することが望ましい。」
「【図4】
[図:0001394671000001.jpg]
」
「【0041】
次に、本発明の実施形態に係る選択支援システムの動作について説明する。以下の説明においては、選択支援装置1は、テレビ局などにおけるスタジオに設置され、その選択支援装置1の利用者である司会者について、映像入力部17、音声入力部18によって、それぞれ撮影、収音し、生成されたストリーミング形式の映像データ(以下、配信映像データという)、音声データ(以下、配信音声データという)を各通信端末2に送信することにより、生放送番組を提供する。」
「【0043】
この生放送番組において、司会者が視聴者とコミュニケーションをとる際には、その旨を会話により伝えるとともに、選択支援装置1の操作部14を操作して、コミュニケーション候補者を募集することを示す募集情報を各通信端末2に送信する。また、CPU11は、記憶部12に記憶された選択支援機能に係るプログラムを実行する。そして、通信端末2は、募集情報を受信すると、CPU21は、コミュニケーション候補者を募集していることを示す内容を表示部25に表示させる。
【0044】
視聴者は、コミュニケーション候補者となることを希望すると、通信端末2の操作部24を操作して、映像入力部27による撮影を開始して端末映像データを生成する。そして、通信端末2は、端末映像データと記憶部22に記憶されている識別データとを含む端末データを通信部29から選択支援装置1に対して送信する。
【0045】
一方、選択支援装置1において、通信部19は、各通信端末2から送信された端末データを受信し、特徴量抽出部101、表示制御部103に出力する。特徴量抽出部101は、上述したようにして各端末データに含まれる端末映像データから特徴量を抽出し、識別データと特徴量とを対応付けた特徴量データを評価部102に出力する。そして評価部102は、所定期間における特徴量データに含まれる特徴量に基づいて評価点を算出し、識別データと評価点を対応付けた評価データを表示制御部103に出力する。」
「【0048】
司会者は、選択支援装置1の表示部15に表示される内容を確認しながら、操作部14を操作してポインタPを動かし、表示されている端末映像データに係る映像を選択することにより、その端末映像データに係る端末データを送信する通信端末2を特定する。これにより、表示されている複数の候補者の中からコミュニケーションの相手を選択する。ここでは、司会者は、識別データが端末番号123に対応する映像を選択し、識別データが端末番号123である通信端末2を特定する。
【0049】
そして、選択支援装置1は、特定した通信端末2(以下、通信端末2Aという)に特定した旨を送信し、選択支援装置1と通信端末2Aとの間で双方向通信を開始する。通信端末2Aは、双方向通信が開始されたことを認識すると、映像入力部27において生成した端末映像データと、音声入力部28において生成した音声データ(以下、端末音声データという)について、通信部29を介して選択支援装置1に送信する。一方、選択支援装置1は、これまで同様、配信映像データ、配信音声データについて、通信部19を介して各通信端末2に送信する。これにより司会者と通信端末2の視聴者とがコミュニケーションをとることが可能となる。」
(イ)引用文献1に記載された発明
上記(ア)で示した引用文献1の段落【0041】には「選択支援装置1は、テレビ局などにおけるスタジオに設置され、」「ストリーミング形式の映像データ、音声データを各通信端末2に送信することにより、生放送番組を提供する。」と記載されていることから、引用文献1には、「テレビ局などにおけるスタジオに設置された選択支援装置1を用いて、ストリーミング形式の映像データ、音声データを各通信端末2に送信することにより、生放送番組を提供する方法」が記載されているものと認められる。
また、上記(ア)で示した引用文献1の【図4】からは、「端末映像データの表示に端末番号が重畳して表示される」ことが読み取れる。
よって、上記(ア)で示した引用文献1の摘記事項及び図面について、上述の点を含め、総合して勘案すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、当審において引用発明を(a)ないし(i)に分説し、以下それぞれ「構成a」ないし「構成i」という。
(引用発明)
(a)テレビ局などにおけるスタジオに設置された選択支援装置1を用いて、ストリーミング形式の映像データ、音声データを各通信端末2に送信することにより、生放送番組を提供する方法(【0041】)であって、
(b)CPU11が、選択支援装置1の各部について制御し(【0019】)、
(c)生放送番組において、司会者が視聴者とコミュニケーションをとる際には、コミュニケーション候補者を募集し(【0043】)、
(d)視聴者は、コミュニケーション候補者となることを希望すると、端末映像データを含む端末データを選択支援装置1に対して送信し(【0044】)、
(e)選択支援装置1において、通信部19は、各通信端末2から送信された端末データを受信し(【0045】)、
(f)それぞれの端末映像データに対応する識別データに基づいて、端末映像データに係る映像に対応するように、その端末映像データが生成された通信端末2の端末番号などの表示を行い(【0039】)、
(g)端末映像データの表示に端末番号が重畳して表示され(【図4】)、
(h)司会者は、選択支援装置1の表示部15に表示される内容を確認しながら、操作部14を操作してポインタPを動かし、表示されている端末映像データに係る映像を選択することにより、その端末映像データに係る端末データを送信する通信端末2を特定し、これにより、表示されている複数の候補者の中からコミュニケーションの相手を選択し(【0048】)、
(i)選択支援装置1は、特定した通信端末2Aとの間で双方向通信を開始し、通信端末2Aは、双方向通信が開始されたことを認識すると、映像入力部27において生成した端末映像データと、音声入力部28において生成した音声データについて、通信部29を介して選択支援装置1に送信する(【0049】)、
(a)方法(【0041】)。
イ 引用文献2(特開2005-39598号公報)
(ア)引用文献2の記載事項
原査定において引用された引用文献2には、次の記載がある。なお、下線は、当審が引用箇所を明示するために付した。
「【0011】
図1は本発明の一実施形態のインタラクティブ映像配信システムの構成図である。」
「【0020】
図8は、番組主催者が番組に参加を希望する視聴者を番組内で呼びかけることで募集し、それに応じて番組視聴者が参加を希望する場合、番組主催者が番組参加者を選択する場合のシーケンス図である。視聴者端末3-1は管理サーバ5に対して参加要求30を送信する。管理サーバ5は、受信した参加要求30を参加要求31としてモニタ端末4に転送する。モニタ端末4は、受信した参加要求30の中から任意の一人の視聴者を任意にもしくはランダムに選び、管理サーバ5に対して参加要請32を送信する。参加要請32を受けた管理サーバ5は、図6の手順に従い、許可した視聴者からの映像を配信させる。」
「【0025】
図12はモニタ端末4のディスプレイの画面90の構成を示している。番組主催者は、メイン映像ウィンドウ92により番組のメイン映像を受信し、視聴者映像ウィンドウ91により、参加を許可した視聴者の映像を表示する。視聴者の選択の仕方は、図9に示した視聴者制御機能部68により自動的に決定する場合は、ランダム視聴者選択ボタン95を押下し、任意に選択する場合は、視聴者選択ボタン93を押下する。」
「【図12】
[図:0001394671000002.jpg]
」
(イ)引用文献2に記載された技術
上記(ア)で示した引用文献2の【図12】及び段落【0025】によれば、視聴者を選択する構成として、「モニタ端末のディスプレイに表示された視聴者選択ボタンを押下する」構成が読み取れる。
そして、上記(ア)によれば、引用文献2には次の技術(以下「文献2技術」という。)が記載されている。
(文献2技術)
「インタラクティブ配信システムにおいて、番組主催者が番組への参加を希望する視聴者を選択する方法として、番組主催者が、モニタ端末のディスプレイに表示された視聴者選択ボタンを押下する技術。」
(3)対比
本件補正発明35と引用発明を対比する。
ア 構成Aについて
本件補正発明35のテレビジョン放映における「テレビジョン」は、本件明細書の【0006】を参照すると、ビデオストリーミングによるもの、インターネットを介した放送を含んでいる。
そして、引用発明は、構成aによれば「テレビ局などにおけるスタジオに設置された選択支援装置1を用いて、ストリーミング形式の映像データ、音声データを各通信端末2に送信することにより、生放送番組を提供する方法」であり、構成cによれば「生放送番組において、司会者が視聴者とコミュニケーションをとる」ものであるから、引用発明は、視聴者が参加するテレビジョン放映が実現される方法と言える。
よって、引用発明の構成a及び構成cは、本件補正発明35の構成Aである「視聴者参加テレビジョン放映方法」に相当する。
イ 構成Iについて
引用発明は、構成dによれば「視聴者は、コミュニケーション候補者となることを希望すると、端末映像データを含む端末データを選択支援装置1に対して送信」するものであるから、引用発明のコミュニケーション候補者となることを希望する「視聴者」は、複数いることが想定されていると認められる。よって、引用発明の構成dにおける、複数の「視聴者」から送信される「端末映像データ」は、本件補正発明35の構成Iにおける「異なる発信者からの複数のビデオ通話」に相当する。
また、引用発明は、構成dによれば「端末データ」が「端末映像データを含む」ものであるから、引用発明の構成eにおいて、各通信端末2から送信された端末データを受信する処理は、本件補正発明35の構成Iにおける「ビデオ通話を接続する」処理に相当する。そして、引用発明は、構成bによれば「CPU11が、選択支援装置1の各部について制御」するものであるから、通信部19は、「CPU」すなわち「中央処理ユニット」により制御されるものである。よって、引用発明の構成bにおけるCPU11は、本件補正発明35の構成Iにおける「ビデオ通話を接続するための」「ビデオ通話中央処理ユニット」に相当する。
また、引用発明は、構成aによれば「各通信端末2」が「ストリーミング形式」によって映像データ及び音声データの送信を行っている。ここで、ストリーミング形式の通信を担う通信網が「インターネット」であることは、引用発明の属する技術分野の当業者にとって自然なことであるから、引用発明の通信部19における通信は、「インターネットを介して」行われるものと認められる。
よって、引用発明の構成bにおけるCPU11と、本件補正発明35の構成Iとは、「インターネットを介した異なる発信者からの複数のビデオ通話を接続するための」「ビデオ通話中央処理ユニット」である点で共通する。
一方で、本件補正発明35の構成Iは、ビデオ通話中央処理ユニットが、「2つ以上」備えられ、かつ、「ビデオ通話専用」であるのに対し、引用発明の選択支援装置1のCPUは、そのような構成ではない点で相違する。
ウ 構成Bについて
上記イのとおり、引用発明の「端末映像データ」は、本件補正発明35の「各ビデオ通話」に係る映像に相当する。また、引用発明の構成hにおいて、複数の候補者の中からコミュニケーションの相手を選択する動作は、司会者によって複数の候補者の中から適切な出演者を選択する動作と認められるから、引用発明の構成hにおける「選択する」動作は、本件補正発明35の構成Bにおける「審査する」動作に相当する。
よって、引用発明の構成hに係る上述の動作は、本件補正発明35の構成Bである「複数のビデオ通話をインターネットを介して異なる発信者から受信して審査する」動作に相当する。
エ 構成Cについて
本件補正発明35の構成Cには「発信者の文字識別又はビデオ通話文字オーバーレイ」との記載があるが、この用語に関連して本願の発明の詳細な説明を参照すると、段落【0027】には「各ビデオ通話及び発信者の文字識別、例えば、ビデオ通話文字オーバーレイを決定して入力すること」と記載されていることから、「文字識別」に「ビデオ通話文字オーバーレイ」が含まれるものと認められ、また、段落【0061】に「出演タレントは、自身のタッチスクリーン上の出演可能な発信者及びビデオ通話文字オーバーレイを見て、望ましい発信者の画像をタッピングして出演が望ましい次のビデオ発信者を選択する。」と記載されていることから、「文字識別又はビデオ通話文字オーバーレイ」は、出演タレントが自身のタッチスクリーン上で見ることができるように発信者の映像にオーバーレイされて表示される情報であると認められる。
ここで、引用発明は、構成fによれば「それぞれの端末映像データに対応する識別データに基づいて、端末映像データに係る映像に対応するように、その端末映像データが生成された通信端末2の端末番号など」を「表示」する処理を行うものであり、構成gによれば「端末映像データの表示に端末番号が重畳して表示され」る処理を行うものであるから、引用発明の「重畳」は、本件補正発明35の「オーバーレイ」に相当し、引用発明の「端末映像データ」は、上記ウで述べたとおり、本件補正発明35の「各ビデオ通話」に係る映像に相当する。また、引用発明の「端末番号」は、端末映像データを通信端末2から発信する発信者に関連した情報であると言える。そして、引用発明において表示される情報、すなわち端末映像データに端末番号が重畳されたものは、表示を行う前に、装置を制御する構成または装置の操作者により「決定され入力される」処理または動作と認められる。
よって、引用発明の構成f及び構成gに係る上述の処理または動作と、本件補正発明35の構成Cとは、「各ビデオ通話及び」発信者に関連した情報の「オーバーレイを決定して入力する」処理または動作である点で共通する。
一方で、引用発明と本件補正発明35の構成Cとは、発信者に関連した情報のオーバーレイが、本件補正発明35の構成Cでは「文字識別又はビデオ通話文字オーバーレイ」であるのに対し、引用発明では「端末番号」である点で相違する。
オ 構成Dについて
引用発明は、構成cによれば「生放送番組において、司会者が視聴者とコミュニケーションをとる」際に用いられる方法であるから、司会者がコミュニケーションをとる視聴者は生放送番組おいて「放映される」ものと認められる。そして、引用発明は、構成hによれば「司会者」が「複数の候補者の中からコミュニケーションの相手を選択」する動作を含むものであるから、引用発明の構成hの上述の動作は、本件補正発明35の構成Dにおける「少なくとも1つのビデオ通話を」「選択する」動作に相当する。また、一般に、生放送番組の「司会者」には「出演タレント」も含まれるから、引用発明の「司会者」は、本件補正発明35の「出演タレント」に相当する。
よって、引用発明の構成hの上述の動作は、本件補正発明35の構成Dである「放映される少なくとも1つのビデオ通話を出演タレントが選択する」動作に相当する。
カ 構成Eについて
引用発明は、動作hによれば「司会者」が「選択支援装置1の表示部15に表示される内容を確認しながら、」「表示されている端末映像データに係る映像を選択する」ものであり、引用発明の「司会者」は、上記オで述べたとおり、本件補正発明35の「出演タレント」に相当するから、構成hの選択支援装置1おいて表示する処理は、本件補正発明35の構成Eの「前記出演タレントのために」表示される処理である点で共通する。
また、引用発明は、構成e、構成f及び構成gによれば、選択支援装置1により「端末映像データの表示に端末番号が重畳して表示され」る処理を含み、構成dによれば、端末映像データは、「視聴者」の映像であるから、表示する画面として、視聴者の映像に情報を重畳した画像を生成しているものである。
よって、引用発明の構成gの上述の処理と、本件補正発明35の構成Eとは、「前記出演タレントのために、出演可能な発信者の画像及び」発信者に関連する情報の「オーバーレイを生成する」処理である点で共通する。
一方で、引用発明と本件補正発明35の構成Eとは、上記エで述べたとおり、生成する発信者に関連した情報のオーバーレイが、本件補正発明35の構成Eでは「文字識別又はビデオ通話文字オーバーレイ」であるのに対し、引用発明では「端末番号」である点で相違する。
キ 構成Fについて
引用発明は、構成gによれば、選択支援装置1により「端末映像データの表示に端末番号が重畳して表示され」る処理を行うから、引用発明の構成gの上述の処理と、本件補正発明35の構成Eとは、上記エでの検討と同様に、「生成された」発信者に関連した情報を、「画像の一部として表示する」処理である点で共通する。
一方で、引用発明と本件補正発明35の構成Fとは、上記エで述べたとおり、生成された発信者に関連した情報のオーバーレイが、本件補正発明35の構成Fでは「文字識別又はビデオ通話文字オーバーレイ」であるのに対し、引用発明では「端末番号」である点で相違する。
また、本件補正発明35は、構成Fの「表示」する処理が、「タッピング可能な」ものとして「タッチスクリーン上に」行うものであるのに対し、引用発明の構成gに係る処理は、表示が「タッピング可能な」ものとして「タッチスクリーン上に」行われているかについて特定がない点で相違する。
ク 構成Gについて
引用発明の構成hにおける「表示されている複数の候補者の中からコミュニケーションの相手を選択」する動作は、生放送番組で放送される端末映像データを選択していると言えるから、本件補正発明35の構成Gにおける「画像のうちの一つ」である「画像に対応するビデオ通話を放映されるビデオ通話として選択」する動作に相当する。
そして、引用発明の構成hの映像の選択に係る処理は、「操作部14を操作してポインタPを動か」して対象となる「映像」を選択し、その後、クリックなどを行うものと認められ、当該映像の選択に係る処理と、本件補正発明35の構成Gにおける「タッピングする」動作を検出して「放映されるビデオ通話として選択する」処理とは、「放映されるビデオ通話として選択する」際の具体的な動作が異なるものの、それぞれの動作によって「放映されるビデオ通話として選択する」処理であるから、両者は、それぞれの動作によって処理対象を指定する処理である点で共通する。
よって、引用発明の構成hの上述の処理と、本件補正発明35の構成Gとは、「前記出演タレントが、前記画像のうちの一つを」指定「することにより、」指定「された画像に対応するビデオ通話を放映されるビデオ通話として選択する」処理である点で共通する。
一方で、本件補正発明35は、構成Gの「選択」する処理において処理対象を指定する動作が、「タッピングする」動作であるのに対し、引用発明の構成hにおいて処理対象を指定する動作は、「操作部14を操作してポインタPを動か」して選択した後にクリックなどを行う動作である点で相違する。
ケ 構成Hについて
引用発明は、構成iによれば「選択支援装置1は、特定した通信端末2Aとの間で双方向通信を開始」する処理を行うものであるから、引用発明の構成iの処理は、本件補正発明35の構成Hにおける「選択されたビデオ通話に、放映されるビデオ通話を切り替える」構成に相当する。
コ まとめ
上記アないしケから、本件補正発明35と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
(A)視聴者参加テレビジョン放映方法であって:
(I’)インターネットを介した異なる発信者からの複数のビデオ通話を接続するためのビデオ通話中央処理ユニットであって、ビデオ通話中央処理ユニットを利用して、
(B)複数のビデオ通話をインターネットを介して異なる発信者から受信して審査すること;
(C’)各ビデオ通話及び発信者に関連した情報のオーバーレイを決定し入力すること;及び
(D)放映される少なくとも1つのビデオ通話を出演タレントが選択すること;を含み、
(E’)前記出演タレントのために、出演可能な発信者の画像及び発信者に関連した情報のオーバーレイを生成すること;
(F’)生成された発信者に関連した情報のオーバーレイを、前記画像の一部として表示すること;
(G’)前記出演タレントが、前記画像のうちの一つを指定することにより、指定された画像に対応するビデオ通話を放映されるビデオ通話として選択すること;及び
(H)選択されたビデオ通話に、放映されるビデオ通話を切り替えることをさらに含む、
(A)前記視聴者参加テレビジョン放映方法。
[相違点]
・相違点1
本件補正発明35の構成Iは、ビデオ通話中央処理ユニットが、「2つ以上」備えられ、かつ、「ビデオ通話専用」であるのに対し、引用発明の選択支援装置1のCPUは、そのような構成ではない点。
・相違点2
本件補正発明35の構成C、構成E及び構成Fは、発信者に関連した情報のオーバーレイが「文字識別又はビデオ通話文字オーバーレイ」であるのに対し、引用発明では「端末番号」である点。
・相違点3
本件補正発明35の構成Fは、表示する処理が「タッピング可能な」ものとして「タッチスクリーン上に」行うものであり、また、構成Gは、指定する動作が「タッピングする」動作であるのに対し、引用発明の構成g及び構成hは、表示する処理が「タッピング可能な」ものとして「タッチスクリーン上に」行うとの特定がなく、指定する動作が「操作部14を操作してポインタPを動か」して選択した後にクリックなどを行う動作である点。
(4)判断
ア 上記(3)コで示した相違点について
(ア)相違点1について
電子機器において、CPUを複数設けること、及び、CPUを機能毎に設けることは、周知技術(必要であれば、特開平4-323948号公報の段落【0006】及び【図3】、国際公開第2006/115012号の[0104]を参照されたい。以下「周知技術1」という。)である。したがって、引用発明に対して、周知技術1を適用して、相違点1に係る構成である、CPUが「2つ以上」備えられ、かつ、「ビデオ通話専用」である構成とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。
(イ)相違点2について
引用発明の構成f及び構成gによれば、「端末番号」は表示される各端末映像データを識別するための表示であり、司会者が選択する際に参照するものであると認められることから、司会者による選択を容易にするために、オーバーレイされる表示を、司会者が認識しやすい表示にすることは、当業者が発明を実施する際に適宜に想到しうる設計的な事項である。
そして、映像に関連した人名等の文字情報を当該映像に重畳する技術は、周知技術(必要であれば、特開平7-162822号公報(原査定の引用文献3)の段落【0028】、【0029】及び【0040】並びに【図5】を参照されたい。以下「周知技術2」という。)であるから、引用発明における「端末番号」、すなわち映像に重畳される発信者に関連した情報について、周知技術2を適用して、映像に関連した人名等の文字情報、すなわち本件補正発明35の「文字識別又はビデオ通話文字オーバーレイ」とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。
(ウ)相違点3について
引用文献2には、上記(2)イ(イ)で示した「(文献2技術)」のとおり、「インタラクティブ配信システムにおいて、番組主催者が番組への参加を希望する視聴者を選択する方法として、番組主催者が、モニタ端末のディスプレイに表示された視聴者選択ボタンを押下する技術」が記載されている。
ここで、引用発明と文献2技術とは、番組放送中に番組に参加する視聴者を番組提供側が選択する点で技術分野が共通であるから、引用発明に文献2技術を適用することで、相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
(エ)相違点についてのまとめ
上記(ア)ないし(ウ)のとおり、引用発明、文献2技術、周知技術1及び周知技術2に基づいて本件補正発明35に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
イ 効果等について
本件補正発明35の構成は、上記アのとおり、引用発明、文献2技術、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に想到できたものである。そして、本件補正発明35が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測し得る範囲内のものであり、同範囲を超える格別顕著なものがあるとは認められない。
ウ まとめ
上記ア及びイのとおりであるから、本件補正発明35は、引用発明、文献2技術、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 補正の却下の決定についての理由のまとめ
上記1及び2のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しておらず、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和3年12月9日の手続補正は、上記「第2」のとおり却下されたので、本願の請求項36に係る発明(以下「本願発明36」という。)は、同年3月8日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項36に記載されたものであり、上記「第2」の1(1)に示したとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明36について、上記引用文献1及び引用文献2並びに周知技術に基づいて、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものを含むものである。
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び引用文献2に記載された事項、並びに、引用発明及び文献2技術は、上記「第2」の2(2)で示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明36は、本件補正発明35から上記「第2」の2の冒頭で示した補正事項1の限定を省いたものである。そうすると、本願発明36と引用発明の相違点は、上記「第2」の2(3)において相違点2及び3としたものである。そして、上記「第2」の2(4)において判断したとおり、本件補正発明35の当該相違点2及び3に係る構成は、引用発明、文献2技術及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に想到できたものであるから、本願発明36における引用発明との相違点に係る構成についても、引用発明、文献2技術及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に想到できたものである。
したがって、本願発明36は、引用発明、文献2技術及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明36は、引用発明、文献2技術及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2021-016969