2021-016860
ショベル及びショベルの診断システム
- 審判番号
- 2021-016860
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-141371外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年12月07日
- 審決日
- 2022年10月17日
- 公報発行日
- 2023年01月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】住友重機械工業株式会社
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 分類
- P18 .121-Z (E02F) / P18 .575-Z (E02F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
折りたたみ中(クリックで表示)
本願は、平成26年7月23日に出願した特願2014-149345号の一部を令和元年7月31日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 令和3年12月 7日付け手続補正書についての補正の却下の決定
[結論]
令和3年12月 7日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の補正を含むところ、特許請求の範囲1についてみると、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和3年2月5日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1へと補正するものである。(下線は審決で付した。以下同じ。)
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】稼働状態に係わる着目物理量を診断用の測定値として測定するセンサと、前記診断用の測定値を外部機器において前記測定値と将来の稼働情報とに基づいて将来におけるメンテナンス推奨時期を求めるようにデータとして送信する通信装置と、前記診断用の測定値をアイドリング状態において測定する制御ユニットとを有するショベル。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】稼働状態に係わる着目物理量を診断用の測定値として測定するセンサと、前記診断用の測定値を、外部機器において前記測定値と将来の稼働情報とを複数のショベルの稼働情報に基づいて作成された予測モデルに当てはめて将来におけるメンテナンス推奨時期を求めるように、データとして送信する通信装置と、前記診断用の測定値をアイドリング状態において測定する制御ユニットとを有するショベル。」
2.補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無について
本件補正は、補正前の請求項1に係る発明の「将来におけるメンテナンス推奨時期」に関して、「外部機器において前記測定値と将来の稼働情報とに基づいて」「求める」ものから「外部機器において前記測定値と将来の稼働情報とを複数のショベルの稼働情報に基づいて作成された予測モデルに当てはめて」「求める」ものへ変更したものであり、補正の前後において発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
また、本件補正により付加された事項は、願書に最初に添付した明細書の段落【0047】ないし【0054】の記載から導かれる事項であり、特許法第17条の2第3項の規定に適合するとともに、同条第4項の規定に違反するところはない。
3.独立特許要件について
上記のとおり、本件補正の請求項1に関する補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるところ、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下検討する。
(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1.(2)に記載したとおりのものと認める。
(2)引用文献1に記載された事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で「引用文献1」として引用され、本願の原出願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2000-55791号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建設機械、例えばダンプトラックのエンジン、変速機、ブレーキ、ホイストシリンダやブルドーザのトルクコンバータ、変速機、ステアリングクラッチ、ブレーキ、油圧機器等の各種機器の性能データを測定する方法及び装置に関する。」
イ.「【0018】
【発明の実施の形態】図1はダンプトラックを示し、車体50に操舵輪51と駆動輪52が取付けてある。車体50にボデイ53がホイストシリンダ54で上昇、下降自在に取付けてある。前記操舵輪51は図示しないステアリングシリンダで操舵される。前記車体50の運転室55には後述するアクセルペダル、ブレーキペダル、リターダレバー、パーキングレバー、エマージェンシレバー、ステアリングハンドル、排土レバー等が設けられている。」
ウ.「【0026】マネジメントコントローラ40には通信手段41とマニアルスイッチ42から測定開始信号が入力される。前記通信手段41は車体側送受信機43と遠隔地側送受信機44を備え、ダンプトラックから離れた場所から無線によって測定開始信号をマネジメントコントローラ40に入力できるようにしてある。」
エ.「【0028】次に測定動作を説明する。マネジメントコントローラ40に測定開始信号が入力されるとエンジンコントローラ2と変速機コントローラ13とブレーキコントローラ26に第1測定信号が入力される。エンジンコントローラ2はエンジン低速アイドリング信号を出力してエンジン3を低速アイドリング状態とする。変速機コントローラ13は変速機ニュートラル信号を出力して変速機11をニュートラル状態とする。ブレーキコントローラ26はパーキングブレーキ作動信号を出力してパーキングブレーキ18を制動状態となる。この状態でエンジン回転数センサ5が検出したエンジン回転数をエンジン低速アイドル回転数としてマネジメントコントローラ40に入力し、エンジン低速アイドリング回転数を測定する。」
オ.「【0044】前述のようにして測定した各機器の性能データは通信手段41で車両と離れた場所に設置されたパソコンやその他のチェッカ等のデータ処理手段に測定年月日時刻、エンジンのトータル稼動時間、車両のトータルの走行距離とともに記憶される。この記憶された性能データは正常値と比較され、正常値とずれている場合には、その旨を表示装置に表示する。」
カ.「【0046】以上の説明ではエンジンコントローラ2、変速機コントローラ13、ブレーキコントローラ26、アクチュエータコントローラ30、マネジメントコントローラ40を別々としたが、1つのコントローラとしても良い。また、以上の説明では、マネジメントコントローラ40は測定信号を出力し、各コントローラが入力された測定信号に基づいた測定条件となるように制御信号を出力するようにしたが、マネジメントコントローラ40が測定信号とともに測定条件となるような制御信号を同時に出力するようにしても良い。また、ダンプトラックに限らずブルドーザ、油圧ショベルなどの建設機械の機器性能データを測定するようにしても良い。
【0047】次にブルドーザの機器性能データを測定する実施の形態を説明する。図3はブルドーザを示し、車体60に左右一対の履帯式走行体61とブレード62とリッパ63が取付けてある。履帯式走行装置61はスプロケット64で履帯65を回転動するものである。車体60に左右のブレード用フレーム66が左右のブレードリフト用シリンダ67で上下揺動自在に取付けてあり、そのブレード用フレーム66にブレード62が左右のブレードチルト用シリンダ68で前後揺動自在に取付けてある。前記左右のブレードリフト用シリンダ67は車体60に左右のヨーク69で揺動自在に取付けてある。」
キ.「【0072】上述の測定開始信号の入力を、定期的(例えば、エンジンのトータル稼動時間で約720時間ごと)に行なうことにより、前記データ処理手段163に付随する記憶手段168に、特定の車両に関する前記測定条件に規定される特定の測定条件下における時を隔てた測定データが記憶される。前記データ処理手段は、前記記憶された測定データを、例えば特願平9-80133号で提示された手法を用いて時系列的に処理し、車両のオーバーホール時期、部品の交換時期等の予測を行なうが、本願で提示される装置による測定データは、同じ測定条件、すなわち測定時の車両状態を強制的に同じ条件にした上で測定されるデータであるため、経時変化を解析するためのデータとして、信頼性が高い。また測定時の車両状態の制御及び測定を人為的に行なう場合に比較して測定に要する時間が飛躍的に短いため、現実的に許容される測定時間の範囲内で、測定条件や測定項目を容易に拡張することができ、その結果、経時変化解析に供するデータ数を増加させ解析の精度を上げることが出来る。」
ク.「【0120】また、図1に示すダンプトラックと図3に示すブルドーザ又は他の建設機械が同一の作業現場で稼動している時には、各ダンプトラック、ブルドーザ、他の建設機械の性能データを前述のようにしてそれぞれ測定し、その測定した性能データを1つのデータ処理部に送って一括してデータ処理・記憶して全ての建設機械を集中管理することも可能である。」
ケ.上記カ.の【0046】の記載及び上記ク.の記載を参酌すれば、「油圧ショベル」を含む「他の建設機械」についてもダンプトラック、ブルドーザの例のようにして測定し、データ処理・管理するものと認められる。
コ.以上より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「マネジメントコントローラには通信手段から測定開始信号が入力され、通信手段は車体側送受信機と遠隔地側送受信機を備え、建設機械から離れた場所から無線によって測定開始信号をマネジメントコントローラに入力できるようにしてあり、マネジメントコントローラに測定開始信号が入力されるとエンジンを低速アイドリング状態とし、エンジン回転数センサが検出したエンジン回転数をエンジン低速アイドル回転数としてマネジメントコントローラに入力し、エンジン低速アイドリング回転数を測定し、測定した各機器の性能データは通信手段で建設機械と離れた場所に設置されたデータ処理手段に記憶され、記憶された性能データは正常値と比較され、正常値とずれている場合には、その旨を表示装置に表示し、データ処理手段は、記憶された測定データを、時系列的に処理し、建設機械のオーバーホール時期、部品の交換時期等の予測を行なう建設機械。」
(3)対比・判断
ア.対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1の「エンジン低速アイドル回転数」、「エンジン回転数センサ」、「データ処理手段」、「車体側送受信機」、「低速アイドリング状態」、「マネジメントコントローラ」は、本願補正発明の「稼働状態に係わる着目物理量」、「センサ」、「外部機器」、「通信装置」、「アイドリング状態」、「制御ユニット」に相当する。
(イ)引用発明1の「測定した各機器の性能データは通信手段で建設機械と離れた場所に設置されたデータ処理手段に記憶され、記憶された性能データは正常値と比較され」たり「時系列的に処理」され、「建設機械のオーバーホール時期、部品の交換時期等の予測」を可能としたりするものであるから、当該「測定した各機器の性能データ」の一つである「エンジン回転数」は、本願補正発明の「診断用の測定値」に相当する。
(ウ)引用発明1の「建設機械」と本願補正発明の「ショベル」とは、「建設機械」である点で共通する。
(エ)引用発明1の「オーバーホール」、「部品の交換」は本願補正発明の「メンテナンス」に相当するから、引用発明1の「データ処理手段は、記憶された測定データを、時系列的に処理し、建設機械のオーバーホール時期、部品の交換時期等の予測を行なう」点は、本願補正発明の「将来におけるメンテナンス推奨時期を求める」点に相当する。
(オ)以上より、本願補正発明と引用発明1とは、
「稼働状態に係わる着目物理量を診断用の測定値として測定するセンサと、診断用の測定値を、外部機器に、データとして送信する通信装置と、診断用測定値をアイドリング状態において測定する制御ユニットとを有し、将来におけるメンテナンス推奨時期を求める建設機械。」
である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
本願補正発明は、診断用の測定値を「外部機器において測定値と将来の稼働情報とを複数のショベル稼働情報に基づいて作成された予測モデルに当てはめて」将来におけるメンテナンス推奨時期を求めるようにデータとして送信するのに対し、引用発明1ではそのように構成されていない点。
(相違点2)
本願補正発明の建設機械は「ショベル」であるのに対し、引用発明1では建設機械の特定がない点。
イ.検討
上記相違点について検討する。
(ア)相違点1について
本願補正発明は「ショベル」の発明であって、本願補正発明において、「外部機器」が「測定値と将来の稼働情報とを複数のショベル稼働情報に基づいて作成された予測モデルに当てはめて」将来におけるメンテナンス推奨時期を求めることは「外部機器」について特定されるものである一方で、「ショベル」あるいはその「センサ」、「通信装置」、「制御ユニット」の構造・機能等を限定するものではない。したがって、「外部機器」が「測定値と将来の稼働情報とを複数のショベル稼働情報に基づいて作成された予測モデルに当てはめて」将来におけるメンテナンス推奨時期を求める点は、「ショベル」を特定するための意味を有しないものとして本願補正発明は認定されるから、相違点1は実質的な相違点とはならない。
(イ)相違点2について
建設機械としてショベルは一般的なものであるから、引用発明1の建設機械をショベルとすることは、当業者が容易になしえたことである。
ウ.小括
以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ.以上より、本願補正発明は、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていないので特許出願の際、独立して特許をうけることができない。
4.補正却下のむすび
以上、上記「3.独立特許要件について」において検討したとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和3年2月5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の1.(1)に記載されたとおりのものである。
2.原査定の理由
令和3年8月31日付け拒絶査定に記載された令和2年9月25日付け拒絶理由通知書に記載した理由は、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
3.引用文献に記載された事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1に記載された事項及び引用発明は、上記第2の3.(2)に記載したとおりである。
4.対比・判断
本願発明は、前記第2の3.で検討した本件補正発明の「将来におけるメンテナンス推奨時期」に関して、「外部機器において前記測定値と将来の稼働情報とを複数のショベルの稼働情報に基づいて作成された予測モデルに当てはめて」「求める」ものから「外部機器において前記測定値と将来の稼働情報とに基づいて」「求める」ものへ変更したものである。
「将来におけるメンテナンス推奨時期」は「外部機器」において行われる制御内容に係るものであるところ、「前記第2の3.(3)イ.(ア)で検討したとおり、「外部機器」において行われる制御内容は、本願補正発明の構成要素である「センサ」、「通信装置」、「制御ユニット」のいずれを限定するものでもないから、将来におけるメンテナンス推奨時期」に係る点は実質的な相違点を構成しない。
したがって、本願発明も、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5.「将来におけるメンテナンス推奨時期」を含む「外部機器」において行われる制御内容が「ショベル」を特定するものとした場合についての予備的判断
仮に、本願発明において、「将来におけるメンテナンス推奨時期」を含む「外部機器」において行われる制御内容が「ショベル」を特定するものとしても、引用発明1の「オーバーホール」、「部品の交換」は本願発明の「メンテナンス」に相当し、また、引用発明1において、「データ処理手段は、記憶された測定データを、時系列的に処理し、建設機械のオーバーホール時期、部品の交換時期等の予測を行なう」には、将来どれぐらい稼働させるものかの推定を置く必要があることは明らかであり、その推定のために将来の稼働に係る情報を用いることは当業者であれば容易に想到しえたことである。したがってこの場合も、本願発明は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、原査定の理由である特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、原査定の他の理由について、また、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2021-016860