審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2021-016816

ロータコアの製造装置及びロータコアの製造方法、並びにロータ構造

審判番号
2021-016816
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-018604外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年12月07日
審決日
2023年01月23日
公報発行日
2023年04月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (H02K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第5項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-18604号「ロータコアの製造装置及びロータコアの製造方法、並びにロータ構造」拒絶査定不服審判事件〔令和2年8月20日出願公開、特開2020-127293号〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 10項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は、平成31年2月5日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和3年 6月 2日付け 拒絶理由通知書

令和3年 7月14日 意見書、手続補正書の提出

令和3年 8月31日付け 拒絶査定

令和3年12月 7日 審判請求書、手続補正書の提出

令和4年 7月11日付け 拒絶理由通知書

令和4年 8月 9日 意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1及び2に係る発明は、令和4年8月9日付けで提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項2】
磁石挿入孔に磁石を挿入した積層鉄心の軸線方向一端部から他端部に貫通する磁石挿入孔、又は外周側に磁石と外装部材を取り付けた積層鉄心と前記外装部材の間に、第1金型に設けられた突起部を挿入しつつ、前記第1金型の嵌合凹部に前記積層鉄心を前記一端部側から嵌合して配設する第1金型取付工程と、
第2金型を前記第1金型に係合させ、前記第1金型とともに前記積層鉄心を型締めして封止する第2金型取付工程と、
前記第2金型に設けられた樹脂注入部を通じて前記磁石挿入孔、又は前記外装部材と前記積層鉄心の間に樹脂材を注入する樹脂注入工程とを備え、
前記第1金型取付工程は、前記突起部を前記磁石挿入孔、又は前記外装部材と前記積層鉄心の間に挿入する際に、前記磁石挿入孔、又は前記外装部材と前記積層鉄心の間への挿入量を調節することにより、前記積層鉄心の前記一端部からの前記磁石の離間量を自在に調節する、ロータコアの製造方法。」

第3 当審において通知した拒絶の理由の概要

当審において、本願発明に対して、令和4年7月11日付けで通知した拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。

本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知の技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>

引用文献1 特開2001-157394号公報

引用文献2 特開2014-46553号公報

第4 引用文献

1 引用文献1

(1) 引用文献1に記載された事項

引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、板状磁性部材を積層して形成された積層鉄心の外周部に設けられた穴部に永久磁石で形成された複数の磁極が装着され、回転電機の回転子として機能する磁石埋込型回転子に係り、特に永久磁石を穴部内に固定するための構造に関するものである。」
イ 「【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の磁石埋込型回転子は以上のように構成され、永久磁石を打抜き穴に装着する際に、割れや欠けが発生するのを防止するために、特開平7-322538号公報に示されるものでは、永久磁石を押圧する線状の部位を柔軟に変形可能としているので、固定が十分でなく回転電機の回転時に振動を発生して、信頼性の低下を招き、又、特開平9-163649号公報に示されるものでは、永久磁石の外周部に接着剤を含浸または塗布した接着シートを配置しているので、各打抜き穴内における永久磁石の位置が一定せず、磁気的バランスおよび重量バランスが悪くなり、性能の低下を招くとともに接着剤の使用により自動化が困難となる等の問題点があった。
【0004】この発明は上記のような問題点を解消するために成されたもので、永久磁石をバランス良く確実に固定することにより、信頼性の向上を図ることが可能な磁石埋込型回転子を提供することを目的とするものである。」
ウ 「【0012】
【発明の実施の形態】実施の形態1.以下、この発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1はこの発明の実施の形態1における磁石埋込型回転子の構成を示し、(A)は正面図、(B)は(A)における線B-Bに沿う断面を示す断面図、図2は図1における磁石埋込型回転子の積層鉄心の構成を示し、(A)は正面図、(B)は(A)における線B-Bに沿う断面を示す断面図、図3は図1における磁石埋込型回転子の製造に適用される注入金型の構成を示す断面図、図4は図3における注入金型に積層鉄心が嵌挿された状態を示す断面図である。」

エ 「【0015】6は積層鉄心3の軸用穴部1c、2cに嵌合された回転子軸、7は積層鉄心3に樹脂部材5を注入するための注入金型で、図3に示すように樹脂供給穴部8a、この樹脂供給穴部8aから分岐する分岐穴部8b、およびこの分岐穴部8bから積層鉄心3の各注入用穴部1b、2bと対応する位置でそれぞれ開口される複数の注入穴部8cを有する上型8と、積層鉄心3が嵌挿可能な有底穴部9aおよび、この有底穴部9aの底部の積層鉄心3の各磁石用穴部1a、2aと対応する位置にそれぞれ突設され、各磁石用穴部1a、2aと嵌合可能な複数の突起部9bを有する下型9で構成されている。」

オ 「【0016】次に、上記のように構成される実施の形態1における磁石埋込型回転子の製造方法について説明する。まず、打抜き加工により磁石用穴部1a、注入用穴部1b、軸用穴部1cを有する第1の板状磁性部材1、および磁石用穴部2a、注入用穴部2b、軸用穴部2c、スリット部2dを有する第2の板状磁性部材2をそれぞれ形成する。次いで、図2に示すように、第2の板状磁性部材2を永久磁石A4aと対応する位置に2枚、永久磁石B4bおよび永久磁石C4cと対応する位置にはそれぞれ1枚ずつを配置するとともに、残りの部分には第1の板状磁性部材1を配置し、お互いの磁石用穴部1a、2a、注入用穴部1b、2b、および軸用穴部1c、2cがそれぞれ一致するように積層して、例えば抜きかしめ等により固着一体化することにより積層鉄心3を形成する。
【0017】次に、上記のようにして形成された積層鉄心3を、図4に示すように各磁石用穴部1aが各突起部9bと一致するように下型9の有底穴部9a内に嵌挿する。次いで、積層鉄心3の各磁石用穴部1a、2a内に永久磁石A4a、永久磁石B4b、永久磁石C4cの順に挿入する。そして、上型8を各注入穴部8cが積層鉄心3の注入用穴部1bの位置と一致するように下型9の上部に載置し、図示はしないが締付治具により上型8および下型9を固着させた後、所定の圧力により樹脂供給穴部8aから樹脂部材5を供給する。
【0018】すると、この樹脂部材5は上型8の分岐穴部8b、各注入穴部8cおよび積層鉄心3の各注入用穴部1b、2b内を順に流れて、図1に示すようにスリット部2dを介して磁石用穴部1a、2a内に導かれ、各永久磁石A4a、B4b、C4cを外周側に押圧した状態で充填される。次に、この状態で加熱することにより樹脂部材5を硬化させて積層鉄心3内に一体化する。次いで、締付治具を緩めて上型8を外し、積層鉄心3を下型9から取り出し軸用穴部1c、2cに回転子軸6を嵌合させて固着することにより磁石埋込型回転子が完成する。」
カ 「【図2】
[図:0001395812000001.jpg]
」
キ 「【図3】
[図:0001395812000002.jpg]
」
ク 「【図4】
[図:0001395812000003.jpg]
」

(2) 引用文献1から理解できる事項

前記ア~クの記載から、引用文献1には、以下の事項が記載されていることが理解できる。

ケ 前記オの【0016】、【0017】の記載、及び図2の図示内容から、積層鉄心3が、積層鉄心3の軸線方向一端部から他端部に貫通する各磁石用穴部1a、2aを有することが理解できる。

コ 前記エ、前記オの【0016】、【0017】の記載、及び図4の図示内容から、磁石埋込型回転子の製造方法が、積層鉄心3の各磁石用穴部1a、2aが下型9に突設された各突起部9bと一致するようにして各磁石用穴部1a、2aに各突起部9bを嵌合させつつ、下型9の有底穴部9aに積層鉄心3を下型9の上部側から嵌挿する積層鉄心嵌挿工程を備えることが理解できる。

サ 前記エ、前記オの【0017】の記載、及び図4の図示内容から、磁石埋込型回転子の製造方法が、上型8を上型8の各注入穴部8cが積層鉄心3の注入用穴部1bの位置と一致するように下型9の上部に載置し、上型8および下型9を締付治具により固着させる上型固着工程を備えることが理解できる。

シ 前記エ、前記オの【0017】、【0018】の記載、及び図3の図示内容から、磁石埋込型回転子の製造方法が、上型8の樹脂供給穴部8a、分岐穴部8b、各注入穴部8c及び積層鉄心3の各注入用穴部1b、2b内を順に流れて各磁石用穴部1a、2aに樹脂部材5を注入する樹脂部材注入工程を備えることが理解できる。

(3) 引用文献1に記載された発明

前記ア~シの事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)

「積層鉄心3の軸線方向一端部から他端部に貫通する各磁石用穴部1a、2aが下型9に突設された各突起部9bと一致するようにして前記各磁石用穴部1a、2aに前記各突起部9bを嵌合させつつ、前記下型9の有底穴部9aに前記積層鉄心3を前記下型9の上部側から嵌挿する積層鉄心嵌挿工程と、
上型8を前記上型8の各注入穴部8cが前記積層鉄心3の注入用穴部1bの位置と一致するように前記下型9の上部に載置し、前記上型8および前記下型9を締付治具により固着させる上型固着工程と、
前記上型8の樹脂供給穴部8a、分岐穴部8b、各注入穴部8c及び前記積層鉄心3の各注入用穴部1b、2b内を順に流れて前記各磁石用穴部1a、2aに樹脂部材5を注入する樹脂部材注入工程とを備え、
前記上型8を外し、前記積層鉄心3を前記下型9から取り出し軸用穴部1c、2cに回転子軸6を嵌合させて固着することにより磁石埋込型回転子が完成する、磁石埋込型回転子の製造方法」

2 引用文献2

(1) 引用文献2に記載された事項

引用文献1には、以下の事項が記載されている

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば磁石を内蔵したモータコアを樹脂モールドするモールド金型及びモータコアの樹脂モールド方法に関する。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に示すトランスファ成形による樹脂モールド装置は、モータコアの磁石収納孔に挿入された磁石を位置決めする構造を有しない。このため、磁石と磁石収納孔の内壁面とのクリアランスがばらついた状態で樹脂モールドされるおそれがあった。この結果、複数の磁束作用面から生じる磁力線の磁束バランスが乱れからモータ特性が低下するおそれがある。
また、ロータコアには、磁石収納孔と磁石の隙間に樹脂を注入する際にカル底面となるカル座が形成されているため、コアの製造段階から、積層コアの端部に相当する鋼板だけカル座を設ける加工が必要となり、コアの製造コストが嵩むうえに、樹脂モールド金型へのセットにも方向性が生じるため、製造上も取り扱い難くなる。
【0006】
本発明の目的は上記従来技術の課題を解決し、モータコアの貫通孔に挿入された磁石が高精度に位置決めした状態モールドすることが可能なモールド金型及びこれを用いてモータ特性を向上させることが可能なモータコアの樹脂モールド方法を提供することにある。」
ウ 「【0027】
図4に実施例2に係る中間型に載置されるロータコアに対する磁石の位置決め構造を示す。本実施例も相対的に接離動可能なモールド金型(上型及び下型)間に、ロータコア1の貫通孔2に磁石3が挿入された当該ロータコア1と中間型8とが挟み込まれて磁石3が貫通孔2内で樹脂モールドされるモールド金型について説明する。
【0028】
図4(A)において、一対の中間型8(上中間型8B,下中間型8A)には、ロータコア1に両面から各々当接するコア当接部8aと、前記各コア当接部8aに複数箇所に突設されロータコア1の貫通孔2に挿入される磁石3を挟み込んで位置決めを行う位置決めピン9(位置決め部材)が設けられている。位置決めピン9は、上下中間型8B,8Aのコア当接部8aよりコイルばね8cにより常時突出する向きに付勢されている。この上下一対の位置決めピン9で磁石3を上下に挟み込むことで、磁石3と貫通孔2の孔壁面との間に所定のクリアランスを設けて位置決めするようになっている。また、下中間型6Aと対向する図示しない下型との間に形成される樹脂路に連通し当該下中間型6Aを板厚方向に貫通し貫通孔2に連絡するゲート8bが形成されている。
続きを表示(全16行)
【0029】
ここで、ロータコア1の樹脂モールド工程について説明する。図4(A)に示す一対の中間型8を用意し、図4(B)に示すようにロータコア1を下中間型8Aのコア当接部8aに位置合わせして載置する。また、ロータコア1の貫通孔2には磁石3が挿入される。そして、ロータコア1を下中間型8Aと上中間型8Bとで挟み込む。このとき、上下一対の位置決めピン9は貫通孔2内に向けて各々挿入されて磁石3の上下面に各々突き当たってコイルばね8cの付勢に抗して押し戻され、貫通孔2内で磁石3の外周面と孔壁面との間に所定のクリアランスを設けて位置決めされる。
【0030】
次に図5(C)において、磁石3がロータコア1に対して位置決めされたままモータコア1及び中間型8を相対的に接離動可能なモールド金型(上型及び下型)に搬入してクランプする。そして、図示しない下型と下中間型8Aとの間に形成された樹脂路を経て中間型8に設けられたゲート8bを介して貫通孔2内にモールド樹脂11が充填されて加熱硬化され、磁石3がロータコア1に対して一体に樹脂モールドされる。
【0031】
樹脂モールド後、モールド金型より中間型8を取り出して、図5(D)に示すように一対の中間型8を取り外すと、磁石3が貫通孔2内にモールドされたロータコア1が得られる。ロータコア1には、モールド樹脂11に位置決めピン9が挿入されていたピン穴10が貫通孔2の両端に形成される。
【0032】
尚、各実施例において、中間型、ロータコア、モールド樹脂(樹脂タブレット)は、モールド金型に搬入される前に予め予熱されており、ローダー若しくはロボット等の搬送手段によってプレス部に備えたモールド金型に搬入搬出されるようになっている。また、モールド後にロータコアを取り出された中間型はクリーニングされて再度次のロータコアのモールドに使用される。
また、一対の中間型を用いた場合、下中間型にゲートが設けられていたが、上中間型にゲートが設けられていてもよい。
【0033】
上記構成によれば、モータコアを中間型のコア当接部に載置し、貫通孔に磁石を挿入すると、貫通孔に挿入された位置決めピンにより磁石を位置決めしたままモールドすることができる。
モータコアの貫通孔に挿入される磁石がモータコアに対して位置決めされたまま樹脂モールドされるので、磁束作用面から生じる磁力線の磁束バランスが乱れることなくモータ特性を向上させることができる。」
エ 「【0035】
また、位置決めピン5と位置決めピン9とを併用してもよい。この場合、貫通孔2内における平面位置(図3参照)及び貫通孔2の延在方向における位置を任意の位置に留めるように封止することもできる。また、位置決めピン5と位置決めピン9は、上型や下型に配置される金型に設けた駆動源(例えばエアシリンダやサーボモータ)に連結可能に構成し、外部から昇降させてもよい。これにより、磁石3を任意の高さに固定したり、モールド樹脂11が充填されたら引き抜くことで位置決めピン5と位置決めピン9の孔がモールド樹脂11に残らないようにしたり、モールド樹脂11の流動制御に用いることもできる。これによれば、磁石3を露出させないようにしたり、モールド樹脂11の強度を高めたり、未充填を防止したりすることもできる。」
オ 「【図4】
[図:0001395812000004.jpg]
」
カ 「【図5】
[図:0001395812000005.jpg]
」

(2) 引用文献2に記載された技術的事項

前記ア、前記ウの【0028】、【0029】、【0031】、及び前記エの記載から、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

(引用文献2記載の技術的事項)

「ロータコア1に両面から各々当接するコア当接部8aと、前記コア当接部8aに複数箇所に突設されロータコア1の貫通孔2に挿入される磁石3を挟み込んで位置決めを行う位置決めピン9が設けられている、ロータコア1の樹脂モールド用の上下中間型8B、8Aにおいて、
前記位置決めピン9を上型や下型に設けた駆動源に連結して昇降可能に構成することで、前記磁石3を前記ロータコア1の前記貫通孔2内の任意の高さに固定できるようにすること」

第5 対比・判断

1 対比

本願発明は、「磁石挿入孔に磁石を挿入した積層鉄心の軸線方向一端部から他端部に貫通する磁石挿入孔、又は外周側に磁石と外装部材を取り付けた積層鉄心と前記外装部材の間」と選択肢で記載されているところ、前者の選択肢を選択した場合に係る発明について検討する。

本願発明と引用発明を対比すると、引用発明における「積層鉄心3」は本願発明における「磁石挿入孔に磁石を挿入した積層鉄心」あるいは「積層鉄心」に相当し、以下同様に、「各磁石用穴部1a、2a」は「磁石挿入孔」に、「嵌合させ」は「挿入し」に、「下型9」は「第1金型」に、「各突起部9b」は「突起部」に、「突設された」は「設けられた」に、「各磁石用穴部1a、2aが下型9に突設された各突起部9bと一致するようにして前記各磁石用穴部1a、2aに前記各突起部9bを嵌合させつつ」は「磁石挿入孔に、第1金型に設けられた突起部を挿入しつつ」に、「有底穴部9a」は「嵌合凹部」に、「前記下型9の上部側」は「前記一端部側」に、「嵌挿する」は「嵌合して配設する」に、「積層鉄心嵌挿工程」は「第1金型取付工程」に、それぞれ相当する。

引用発明における「上型8」は本願発明における「第2金型」に相当し、引用発明における「上型8を前記上型8の各注入穴部8cが前記積層鉄心3の注入用穴部1bの位置と一致するように前記下型9の上部に載置し」は、本願発明における「第2金型を前記第1金型に係合させ」に相当する。また、引用発明における「前記上型8および前記下型9を締付治具により固着させる」は、それより前の「積層鉄心嵌挿工程」で下型9の有底穴部9aに積層鉄心3が嵌挿されていることを踏まえると、本願発明における「第2金型を」「前記第1金型とともに前記積層鉄心を型締めして封止する」に相当し、引用発明における「上型固着工程」は本願発明における「第2金型取付工程」に相当する。

引用発明における「樹脂部材5」は本願発明における「樹脂材」に相当し、以下同様に、「前記上型8の」は「前記第2金型に設けられた」に、「樹脂供給穴部8a、分岐穴部8b、各注入穴部8c」は「樹脂注入部」に、「樹脂部材注入工程」は「樹脂注入工程」に、それぞれ相当する。また、引用発明における「樹脂供給穴部8a、分岐穴部8b、各注入穴部8c及び前記積層鉄心3の各注入用穴部1b、2b内を順に流れて前記各磁石用穴部1a、2aに樹脂部材5を注入する」ことと、本願発明における「樹脂注入部を通じて前記磁石挿入孔に樹脂材を注入する」こととは、「樹脂注入部を経由して前記磁石挿入孔に樹脂材を注入する」ことである限りにおいて一致する。

引用発明の「磁石埋込型回転子の製造方法」は、「前記上型8を外し、前記積層鉄心3を前記下型9から取り出し軸用穴部1c、2cに回転子軸6を嵌合させて固着することにより磁石埋込型回転子が完成する」ものではあるが、回転子軸6が嵌合される前の磁石埋込型回転子を製造する一連の工程を含むものであるから、本願発明の「ロータコアの製造方法」に相当するといえる。

そうすると、本願発明と引用発明とは、

「磁石挿入孔に磁石を挿入した積層鉄心の軸線方向一端部から他端部に貫通する磁石挿入孔に、第1金型に設けられた突起部を挿入しつつ、前記第1金型の嵌合凹部に前記積層鉄心を前記一端部側から嵌合して配設する第1金型取付工程と、
第2金型を前記第1金型に係合させ、前記第1金型とともに前記積層鉄心を型締めして封止する第2金型取付工程と、
前記第2金型に設けられた樹脂注入部を経由して前記磁石挿入孔に樹脂材を注入する樹脂注入工程とを備える、ロータコアの製造方法。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>

本願発明では、「樹脂注入部を通じて前記磁石挿入孔に樹脂材を注入する」のに対して、

引用発明では、「樹脂供給穴部8a、分岐穴部8b、各注入穴部8c及び前記積層鉄心3の各注入用穴部1b、2b内を順に流れて前記各磁石用穴部1a、2aに樹脂部材5を注入する」点。

<相違点2>

本願発明では、「前記第1金型取付工程は、前記突起部を前記磁石挿入孔に挿入する際に、前記磁石挿入孔への挿入量を調節することにより、前記積層鉄心の前記一端部からの前記磁石の離間量を自在に調節する」のに対して、

引用発明では、下型9に突設された各突起部9bは高さが調節可能なものではなく、積層鉄心嵌挿工程で前記各突起部9bを前記各磁石用穴部1a、2aに嵌合させる際に、前記各突起部9bの高さが調節されない点。

2 判断

以下、相違点について検討する。

(1) 相違点1について

本願発明における「樹脂注入部を通じて前記磁石挿入孔に樹脂材を注入する」との事項は、文言上、樹脂注入部から直接磁石挿入孔に樹脂を注入する構成以外の構成も包含するものである。そうすると、引用発明における「樹脂供給穴部8a、分岐穴部8b、各注入穴部8c及び前記積層鉄心3の各注入用穴部1b、2b内を順に流れて前記各磁石用穴部1a、2aに樹脂部材5を注入する」ことは、本願発明における「樹脂注入部を通じて前記磁石挿入孔に樹脂材を注入する」ことに相当するといえるから、相違点1は実質的な相違点ではない。

また、仮に本願発明における「樹脂注入部を通じて前記磁石挿入孔に樹脂材を注入する」との事項が、樹脂注入部から直接前記磁石挿入孔に樹脂材を注入する構成を意味するとしても、電動回転機の技術分野において、磁石挿入孔に直接樹脂材を注入する方式でも磁石をバランス良く積層鉄心に固定することができることは、例えば、引用文献2(前記「第4」2(1)ウ、オ及びカ)に示されるように、従来周知の技術的事項であり、引用発明において、「樹脂供給穴部8a、分岐穴部8b、各注入穴部8c及び前記積層鉄心3の各注入用穴部1b、2b内を順に流れて各磁石用穴部1a、2aに樹脂部材5を注入する」ことに代えて、周知の技術的事項を採用し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2) 相違点2について

引用文献2には、前記「第4」2(2)のとおり、「ロータコア1に両面から各々当接するコア当接部8aと、前記コア当接部8aに複数箇所に突設されロータコア1の貫通孔2に挿入される磁石3を挟み込んで位置決めを行う位置決めピン9が設けられている、ロータコア1の樹脂モールド用の上下中間型8B、8Aにおいて、前記位置決めピン9を上型や下型に設けた駆動源に連結して昇降可能に構成することで、前記磁石3を前記ロータコア1の前記貫通孔2内の任意の高さに固定できるようにすること」(引用文献2記載の技術的事項)が記載されている。

そして、引用文献2の段落【0006】に記載された「モータコアの貫通孔に挿入された磁石が高精度に位置決めした状態モールドすること」(前記「第4」2(1)イ)という課題を踏まえると、この引用文献2記載の技術的事項に接した当業者であれば、引用文献2には、モータコアの貫通孔に挿入された磁石が高精度に位置決めした状態モールドするために、位置決めピンを昇降可能に構成することで、磁石3をロータコア1の貫通孔2内の任意の高さに固定できるようにするという技術思想が開示されていると理解できる。

一方、引用発明も、引用文献1の段落【0003】~【0004】の記載(前記「第4」1(1)イ)からみて、各磁石用穴部(各打抜き穴)内における永久磁石を位置が一定となるようにバランスよく確実に固定することを課題としている。

そうすると、引用発明において、各磁石用穴部1a、2a内における永久磁石を、位置が一定となるようにバランスよく確実に固定することを可能とするために、引用文献2に記載された技術思想を参考にして、下型9に突設された各突起部9bを昇降可能に構成して、積層鉄心嵌挿工程で各突起部9bを各磁石用穴部1a、2aに嵌合させる際に、永久磁石を任意の高さに固定可能とすること、すなわち、挿入量を調節可能とすることや、それにより積層鉄心3の軸先方向端部からの永久磁石の離間量を自在に調節することを可能とすることは、当業者が容易に想到し得たことにすぎない。

(3) 請求人の主張について

請求人は、令和4年8月9日に提出した意見書において、「引用文献2の「特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載(特許法第36条第5項)」している特許請求の範囲の[請求項1]には、「・・・一方の金型と他方の金型間に、モータコアの貫通孔に磁石が挿入された当該モータコアと中間型とが挟み込まれて前記磁石が貫通孔内で樹脂モールドされるモールド金型であって、前記中間型には、・・・複数箇所に突設され前記モータコアに設けられた貫通孔に挿入されて前記磁石の位置決めを行う位置決めピン・・・を有することを特徴とするモールド金型。」が記載され、同じく[請求項4]には、「・・・一方の金型と他方の金型間に、モータコアの貫通孔に磁石が挿入された当該モータコアと中間型とが挟み込まれて前記磁石が貫通孔内で樹脂モールドされるモールド金型であって、前記一対の中間型には、・・・複数箇所に突設され前記モータコアに設けられた貫通孔に挿入される磁石を挟み込んで位置決めを行う位置決め部材・・・が形成されていることを特徴とするモールド金型。」が記載されています。したがって、引用文献2に記載された発明は、中間型が位置決めピンを有すること又は中間型に位置決め部材を形成することを必須の構成とする発明ですので、当該位置決めピン又は位置決め部材を中間型に設けることから切り離して、位置決めピン又は位置決め部材の貫通孔への挿入量を調節可能とする技術だけを、引用文献1(特開2001-157394号公報)に記載された発明に適用することは容易想到ではありません。すなわち、引用文献2の段落[0035]の「位置決めピン9は、上型や下型に配置される金型に設けた駆動源(例えばエアシリンダやサーボモータ)に連結可能に構成し、外部から昇降させてもよい」との記載のうち、位置決めピン9を駆動源に連結して昇降させるとの事項を、駆動源を金型に設けること及び(中間型の)外部から位置決めピン9を昇降させることから切り離して、単独で他の引用文献に記載された発明に適用することは、後知恵というべきです。・・・したがって、本件補正後の請求項1及び2に係る発明は、引用文献1~6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではありません。」と主張する。

しかしながら、まず、本願発明における相違点2に係る発明特定事項について、「前記磁石挿入孔への挿入量を調節」するための具体的な装置の構成や、「前記積層鉄心の前記一端部からの前記磁石の離間量を自在に調節する」ための具体的な装置の構成は、発明の詳細な説明には、一切開示がなく、本願明細書には「前記第1金型取付工程は、前記突起部を前記磁石挿入孔に挿入する際に、前記磁石挿入孔への挿入量を調節することにより、前記積層鉄心の前記一端部からの前記磁石の離間量を自在に調節する」という事項が開示されるのみである。

そして、前記(2)に示したとおり、引用文献2の段落【0006】に記載された課題を踏まえると、引用文献2記載の技術的事項に接した当業者であれば、引用文献2には、モータコアの貫通孔に挿入された磁石が高精度に位置決めした状態モールドするために、位置決めピンを昇降可能に構成することで、磁石3をロータコア1の貫通孔2内の任意の高さに固定できるようにするという技術思想が開示されていると理解できる。

また、引用文献2には、「位置決めピン9は、上型や下型に配置される金型に設けた駆動源(例えばエアシリンダやサーボモータ)に連結可能に構成し、外部から昇降させてもよい」(「第4」2(1)エ)と記載されており、位置決めピン9を金型に設けたエアシリンダやサーボモータなどの駆動源に連結するという、引用発明において、引用文献2に開示された技術思想を具現化するための構成も示されている。

そうすると、引用文献2記載の技術的事項に接した当業者であれば、引用発明において、下型9に突設された各突起部9bを昇降可能に構成するとともに、積層鉄心嵌挿工程で前記各突起部9bを前記各磁石用穴部1a、2aに嵌合させる際に、前記各突起部9bを任意の高さに固定できるようにすることができることを認識し、その適用を試み得るものである。

そして、本願発明は、本願明細書の開示内容に照らして、引用文献1及び引用文献2に記載された事項を超える技術的貢献は見いだせず、本願発明の相違点2に係る発明特定事項は、引用発明と引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるといわざるを得ない。

よって、請求人の前記主張は採用できない。

(4) 本願発明の作用効果について

本願発明の奏する効果をみても、引用発明、引用文献2記載の技術的事項及び周知の技術的事項から予測される範囲内のものであって、格別顕著なものではない。

(5) まとめ

したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2記載の技術的事項及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2021-016816

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決183件(ファナック株式会社)
  • 2025-014730拒絶査定不服審判 / 2026-08-19 / 原査定取消(特許/登録すべき)加工面推定装置およびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体
    同じ当事者: ファナック株式会社
  • 2025-013812拒絶査定不服審判 / 2026-08-10 / 原査定取消(特許/登録すべき)制御装置及び制御方法
    同じ当事者: ファナック株式会社
  • 2024-016446拒絶査定不服審判 / 2026-07-30 / 原査定取消(特許/登録すべき)産業機械システム
    同じ当事者: ファナック株式会社
  • 2025-010423拒絶査定不服審判 / 2026-06-30 / 原査定取消(特許/登録すべき)数値制御装置
    同じ当事者: ファナック株式会社
  • 2025-013161拒絶査定不服審判 / 2026-06-23 / 原査定取消(特許/登録すべき)ロボットの動作判定装置、動作判定方法および動作判定プログラム
    同じ当事者: ファナック株式会社
検索でもっと見る →
同じ根拠条文の審決7,656件(特許法29条2項)
  • 2025-006580拒絶査定不服審判 / 2026-02-16 / 請求不成立ロータおよびロータの製造方法
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-018835拒絶査定不服審判 / 2025-09-24 / 請求不成立積層コア
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-005178拒絶査定不服審判 / 2025-08-01 / 請求不成立電気モータで使用するためのステータ
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-013890拒絶査定不服審判 / 2025-04-16 / 請求不成立スイッチドリラクタンスモータ
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2022-019621拒絶査定不服審判 / 2024-05-13 / 請求不成立回転電機
    共通の条文: 特許法29条2項
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)479件(121・H02K)
  • 2025-006451拒絶査定不服審判 / 2026-07-13 / 原査定取消(特許/登録すべき)ラジアルギャップ型同期機および電動発電システム
    共通の審決分類: 121・H02K
  • 2025-008226拒絶査定不服審判 / 2026-06-30 / 原査定取消(特許/登録すべき)固定子、及び固定子の製造方法
    共通の審決分類: 121・H02K
  • 2025-000672拒絶査定不服審判 / 2026-06-24 / 原査定取消(特許/登録すべき)開放スロット内における分布巻2重リッツ線巻線
    共通の審決分類: 121・H02K
  • 2025-008296拒絶査定不服審判 / 2026-06-24 / 原査定取消(特許/登録すべき)モータシステム及び該モータシステムを備えた車両
    共通の審決分類: 121・H02K
  • 2025-006191拒絶査定不服審判 / 2026-05-13 / 原査定取消(特許/登録すべき)トレーラー用回生制動発電システム
    共通の審決分類: 121・H02K

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存