特許拒絶査定不服審判
2021-015951
イオン伝導性化合物およびそれに関連する使用
- 審判番号
- 2021-015951
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-526705
- 請求日
- 2021年11月19日
- 審決日
- 2022年11月14日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】シオン・パワー・コーポレーション
- 【請求人代理人】山尾 憲人
- 【請求人代理人】佐藤 剛
- 【請求人】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
- 【請求人代理人】山尾 憲人
- 【請求人代理人】佐藤 剛
- 審判長/審判官
- 審判長 山田 正文
- 審判官 山本 章裕
- 審判官 須原 宏光
- 分類
- P18 .113-Z (H01M) / P18 .575-Z (H01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項、特許法第159条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-526705「イオン伝導性化合物およびそれに関連する使用」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月 1日国際公開、WO2017/091341、平成31年 1月31日国内公表、特表2019-503037〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)11月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年11月24日 米国)を国際出願日とする出願であって、令和1年10月31日に手続補正書が提出され、令和2年9月24日付けで拒絶理由が通知され、令和3年2月15日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月7日付けで拒絶査定されたところ、同年11月19日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正書が提出された。その後、令和4年5月9日に上申書が提出されたものである。
第2 令和3年11月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年11月19日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の概要
令和3年11月19日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、令和3年2月15日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載れた発明特定事項により特定される、
「電気化学セルにおける使用のための物品であって、
式(I)の化合物を含んで成り、
Li2xSx+W+5ZMyP2Z (I)
式(I)中、
Mはランタニド、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第12族、第13族および第14族の原子、ならびにそれらの組合せから成る群から選択され、
xは8~12であり、
yは0.1~6であり、
wは0.1~15であり、および
zは0.1~3である、
物品。」
との発明(以下、「本願発明」という。)を、
「電気化学セルにおける使用のための物品であって、
式(I)の化合物を含んで成り、
Li2xSx+W+5ZMyP2Z (I)
式(I)中、
Mはランタニド、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第12族、第13族および第14族の原子、ならびにそれらの組合せから成る群から選択され、
xは8~12であり、
yは1~2であり、
wは2~4であり、および
zは0.5~1である、
物品。」(下線部は、補正箇所を示す。)
との発明(以下、「本件補正発明」という。)とする補正を含むものである。
2 補正の適否
(1)新規事項の有無、シフト補正の有無、補正の目的要件
上記補正は、y、w及びzの範囲をより狭い範囲に限定する補正であり、上記補正の前後で産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
また、本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0039】には「ある態様では、yは・・・、1以上、・・・である。特定の態様では、yは・・・、2.0以下、・・・である。上記範囲の組合せも可能である(例えば、・・・、1.0以上2.0以下)。」と記載されている。段落【0040】には「ある態様では、zは・・・、0.5以上、・・・であってもよい。特定の態様では、zは・・・、1.0以下、・・・である。上記範囲の組合せも可能である・・・。」と記載されている。また、段落【0042】には「ある態様では、wは・・・、2以上、・・・である。特定の態様では、wは・・・、4以下、・・・である。上記範囲の組合せも可能である・・・。」と記載されている。したがって、yを1~2に、wを2~4に、zを0.5~1とする補正は、本願の願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり新規事項を追加するものではなく、さらにシフト補正にも該当しない。
したがって、上記補正は特許法第17条の2第5項第2号(補正の目的)に規定された事項を目的とするものであり、また、同法第17条の2第3項(新規事項)、及び第4項(シフト補正)に違反するところはない。
(2)独立特許要件について
上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、すなわち、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものか否かについて検討する。
ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記「1 補正の概要」の項の「本件補正発明」のとおりのものと認める。
イ 引用発明
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本件優先日前に公開された文献である特開2013-137889号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。
「【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の固体電解質として好適に用いることができる硫化物系の固体電解質に関する。」
「【0016】
本実施形態に係る硫化物系固体電解質(「本固体電解質」と称する)は、Li7PS6の構造骨格を有し、Pの一部をSiで置換してなる、組成式:Li7+xP1-ySiyS6(但し、xは-0.6~0.6、yは0.1~0.6)を含有する硫化物系固体電解質である。」
「【0034】
(実施例2-16)
表1に示した組成式になるように各原料の配合量を変更すると共に、焼成温度を表1に示した温度とした以外の点は、実施例1と同様にして試料を作製した。」
段落【0038】に以下の表1が記載されている。
[図:0001395797000001.jpg]
(イ)上記の記載によれば、引用文献には実施例4に関連して次の事項が記載されている。
・段落【0001】によれば、リチウムイオン電池の固体電解質として用いる硫化物系の固体電解質である。
・【0016】によれば、組成式:Li7+xP1-ySiyS6(但し、xは-0.6~0.6、yは0.1~0.6)を含有する硫化物系固体電解質であり、段落【0034】と表1によれば、実施例4ではx=0.4、y=0.4であるから、上記組成式に当てはめれば、Li7.4P0.6Si0.4S6となる。したがって、引用文献には、実施例4として組成式:Li7.4P0.6Si0.4S6を含有するリチウムイオン電池の固体電解質として用いる硫化物系固体電解質が記載されているといえる。
(ウ)以上から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「組成式:Li7.4P0.6Si0.4S6を含有するリチウムイオン電池の固体電解質として用いる硫化物系固体電解質。」
ウ 対比
(ア)本件補正発明と引用発明とを対比する。
・「リチウムイオン電池」は「電気化学セル」といえるから、引用発明の「リチウムイオン電池の固体電解質として用いる硫化物系固体電解質」は本件補正発明の「電気化学セルにおける使用のための物品」に相当する。
・引用発明のSi(シリコン)は第14族の元素であるから、本件補正発明の「Mはランタニド、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第12族、第13族および第14族の原子、ならびにそれらの組合せから成る群から選択され」る「式(I)」中の「M」に含まれる。
そうしてみると、引用発明と本件補正発明は「Li」「S」「M」「P」を成分と有する化合物である。
しかしながら、本件補正発明の組成式は「Li2xSx+W+5ZMyP2Z、xは8~12であり、yは1~2であり、wは2~4であり、およびzは0.5~1である」のに対して、引用発明の組成式は「Li7.4P0.6Si0.4S6」である点で相違している。
(イ)したがって、本件補正発明と引用発明とは以下の点で一致ないし相違する。
(一致点)
「電気化学セルにおける使用のための物品であって、
Li、S、M、Pを成分として有する化合物を含んで成り、
Mはランタニド、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第12族、第13族および第14族の原子、ならびにそれらの組合せから成る群から選択される、
物品。」
(相違点)
本件補正発明の組成式は「Li2xSx+W+5ZMyP2Z、xは8~12であり、yは1~2であり、wは2~4であり、およびzは0.5~1である」のに対して、引用発明の組成式は「Li7.4P0.6Si0.4S6」である点。
エ 判断
引用発明の「Li7.4P0.6Si0.4S6」は組成式であり、各係数は各元素の構成比を表しているから、全体を3倍しLi22.2P1.8Si1.2S18と表すことができる。
このとき、本件補正発明のようにLi2xSx+W+5ZMyP2Zの形式で表すと、x=11.1、y=1.2、w=2.4、z=0.9で、MはSiである。そうしてみると、本件補正発明の「xは8~12であり、yは1~2であり、wは2~4であり、およびzは0.5~1である」という構成要件を満たしており、上記の相違点とした点は実質的な相違とはいえない。
そうしてみると、本件補正発明は引用発明であるから、本件補正発明は、特許法第29条第1項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合していない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和3年11月19日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし28に係る発明は、令和3年2月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし28に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2」[理由]の「1 補正の概要」の「本願発明」のとおりのものと認める。
2 原査定の拒絶の理由
請求項1に対する原査定の拒絶の理由1の概要は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないというものである。
(引用文献一覧)
1.特開2013-137889号公報
3 引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載事項及び引用発明は、上記「第2」[理由]の「2(2)イ」に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記「第2」で検討した本件補正発明から、「yは1~2であり、wは2~4であり、およびzは0.5~1である」という限定を「yは0.1~6であり、wは0.1~15であり、およびzは0.1~3である」と広げたものである。
そうしてみると、本願発明と引用発明とは上記「第2」の「2 エ」で判断したとおり、本願発明よりもy、w、zの範囲が限定された本件補正発明と引用発明とが同一であるから、y、w、zの範囲が広い本願発明と引用発明も同一である。
したがって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定に適合し、同法第29条第1項の規定により特許を受けることができない。
5 請求人の主張について
請求人は令和4年5月9日に上申書を提出し、請求項1に対してwの範囲を2~3に、zの範囲を0.5~0.8に限定する意向がある旨上申しているので、この点について検討する。
上記「第2」[理由]の「2(2)イ」に記載した引用発明において、組成式「Li7.4P0.6Si0.4S6」の各係数を2.5倍するとLi18.5P1.5Si1S15との組成式となる。これを本件補正発明のようにLi2xSx+W+5ZMyP2Zの形式で表すと、x=9.25、y=1、w=2、z=0.75となり、「xは8~12であり、yは1~2であり、wは2~3であり、およびzは0.5~0.8である」という請求人が上申する本願の構成要件を満たすから、請求人の上申のとおりの補正を行ったとしても、本願の請求項1に係る発明は引用発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定に適合し、同法第29条第1項の規定により特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、請求項1に係る発明は引用発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に適合し、同法第29条第1項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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