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特許拒絶査定不服審判

2021-015879

ゆるみ止めボルトナット

審判番号
2021-015879
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-136506外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年10月14日
審決日
2022年01月17日
公報発行日
2022年04月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .55 -Z (F16B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法17条の2第3項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-136506「ゆるみ止めボルトナット」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 6項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、令和2年6月29日の出願であって、その手続の経緯は、概略 以下のとおりである(カッコ内は受付日である。)。

令和2年8月13日付け(同年8月14日) :手続補正書の提出
令和2年8月13日付け(同年8月20日) :手続補正書の提出
令和2年9月25日付け(同年9月28日) :手続補正書の提出

令和2年10月27日付け(同年10月28日):手続補正書の提出

令和2年11月6日付け(同年11月9日) :手続補正書の提出

令和2年11月17日付け(同年11月18日):手続補正書の提出

令和2年12月4日付け(同年12月7日) :手続補正書の提出
令和3年1月19日付け :拒絶理由通知書
令和3年3月1日付け(同年3月3日) :手続補正書の提出
令和3年3月9日付け(同年3月10日) :手続補正書の提出
令和3年8月17日付け :拒絶査定(以下、「原査

定」という。)

令和3年10月13日付け(同年10月15日):拒絶査定不服審判の請求

令和3年11月16日付け(同年11月17日):上申書の提出

令和3年12月15日付け(同年12月17日):上申書の提出

令和3年12月18日付け(同年12月21日):上申書の提出

第2 原査定の拒絶の理由

1 令和3年8月17日付け拒絶査定の理由は、概略以下のとおりである。

1)令和3年3月9日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

2)この出願は、特許請求の範囲の記載が不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

3)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された次の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(令和3年1月19日付け拒絶理由通知書に記載した理由4)。

刊行物

1.米国特許第2301634号明細書

2.実願昭51-177237号(実開昭53-92551号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献として新たに引用された文献)

2 拒絶査定の理由のうち、理由1)に係る拒絶の理由は、以下のとおりである。

(1)令和3年3月9日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1の「ボルトナットのネジの精密加工により組み立ての際の2つのネジの間隙を減らし,スパイラル接触面積を増やし,ネジの噛み合いを増やすことによりボルトナットのゆるみ止め効果を向上させる。」という事項は、当初明細書等には、ネジの精密加工については記載されておらず、また、当業者にとって記載されていたのも同然と解することもできないから、新規事項に該当する。

(2)同手続補正書における明細書の段落【0006】の参考資料の技術内容と本願との比較に関する事項は、当初明細書等には記載されておらず、また、当業者にとって記載されていたのも同然と解することもできないから、新規事項に該当する。

(3)同手続補正書における明細書の段落【0007】のゆるみ止めの効果の向上に関する事項は、当初明細書等にはネジの精密加工については記載されておらず、また、当業者にとって記載されていたのも同然と解することもできないから、新規事項に該当する。

(4)同手続補正書における明細書の段落【0009】の「(※1)のゆるいテーパー円錐について、BROWN&SHARPE SELF HOLDING TAP-ERSは2.5°~3°これらはSOCKETとSHANKに使用され、SHANKをハンマーで叩けば簡単に外れるが、ねじ込んだ場合、取り外しできなくなるので本図では5°を使用し円錐のソケットにコーンを捩じこんでも確実に固定し脱着も可能とすることも考慮に入れた。」という事項は、当初明細書等にはテーパーの具体的角度については記載されておらず、また、当業者にとって記載されていたのも同然と解することもできないから、新規事項に該当する。

(5)同手続補正書における明細書の段落【0009】の「(※2)の偏芯の値はネジ山の高さの50%以内とする。ボルトとナットのネジの間隔は小さい方がゆるみ止めの効果が大きいので精密ネジ切削加工が望まれる。」という事項は、当初明細書等には、偏芯の値の具体的数値および精密ネジ切削加工については記載されておらず、また、当業者にとって記載されていたのも同然と解することもできないから、新規事項に該当する。

(6)同手続補正書における図面の【図1】では、上ナットに凸、下ナットに凹が配置されているが、当初明細書等における図1では、上ナットに凹、下ナットに凸が配置されており、配置関係が逆転しており、このようには位置関係が逆転したものは、当業者にとって記載されたのも同然と解することもできないから、新規事項に該当する。

第3 当初明細書等の記載

本願の当初明細書等の記載は次のとおりある。

「【書類名】 明細書
【発明の名称】ゆるみ止めボルトナット
【技術分野】
機械要素
続きを表示(全25行)
【0001】
IPC F16B ボルトナットのゆるみ
本発明はあらゆる機械,構造物に使用されるボルト・ナットに関する。
【0002】
IPC F16B 39/284Bで第2ネジ山のピッチをずらしてゆるみを止めるとあるが,実施も実用化されおらず,次の文献1に示すものだけが実施、実用されている。
【0003】
文献1に示すハードロック工業(株)のロックナットは凸凹のナットを作り凸型は外周にテーパーをつけ中心からずらして偏芯加工をする。この部分に凹状のナットを捩じ込むと凸型がボルトを横方向に押すことによりナットの回転を止めている。他にも良い方法がないか模索した結果が本考案である。
【文献1】
鉄道を支える匠の技,交通新聞社新書“緩まないナットが支える,鉄道の安全と快適性”,ハードロック工業.2019年6月14日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ネジ締結体の機能を充分に満たす為には十分な締付け軸力を決め,それを維持しても,ネジの構造上,ボルトナットの滑り接触面にゆるみがあるとナットは軸直角方向の振動に押されゆるいスロープを押し上げられながら戻り回転するのでボルトナットのゆるみが発生する。文献の様にナットでボルトを中心に向って引張らせるよりも,接触面を両方から力を加え密着,一体化した方が有効なのかと考へ,どの様に解決するかが課題であり目的であった。
【問題を解決する為の手段】
【0005】
その為には僅かに偏芯したネジ切削加工したナットをボルトに捩じ込むと,ナットの偏芯で,ボルトはナットを円周方向に押し出すと,反作用でナットはボルトに押し返すから,滑り接触面(ナット内径×偏芯ネジ長さ)が両面から圧力を受け密着,固定すれば軸直角方向と軸中心方向の振動を受けてもナットは戻り回転はおこさず,ボルトナットのゆるみを防止する。
更にショベル,クラッシャー,振動コンベヤー,振動スクリーン等に使用されるボルト.ナットに過大なショック,振動が予想される場合にはナットに小ネジを捩じ込みボルトに当てて,前記の方法と共に,悪條件のもとボルトナットのゆるみを防ぐことが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0006】
ボルトナットは機械部品の中でも最も簡單な部品であり,世界のあらゆる自動車,鉄道,船舶,航空機ばかりではなく橋梁建築物で,組立て,分解,再組立てを必要とする個所には必らず使用され,壊れたりゆるんだりしてはならない重要なエレメントであり,ゆるんだり壊れたりすると,機能不全,能率低下を起こすばかりでなく,事故を起こすと人の命にかかわることもある,重要な機械部品であり,あらゆる人間の生産活動,経済活動とその安全に欠かせないものである。
本考案は構造も製造方法もナットのネジ中心を僅かに偏芯ネジ切削加工するだけで製造コストアップも少さく,大量生産にも適しており,世界で製造,運用される機械と構造物の効率と安全性の向上の一助になり中長期的に我が國の産業の発展に寄与することを願うものである。」
「【図面の簡単な説明】
【図1】
[図:0001383192000001.jpg]
」
「特許請求の範囲
【請求項1】
ボルトナットは軸直角方向の振動を受けて,ナットはネジのゆるいスロープを押し上げられて戻り回転によりゆるむ。ナットの反対側はスロープを下に押されるが,ナットが締まる方向で下方には下がれない,ボルトとナットの間の滑り接触面に隙きがあるとナットはスロープを押し上げられ戻り回転をしてボルトナットはゆるむ。それを防ぐには;
微小に偏芯ネジ切り加工したナットをボルトに捩じ込むと,ボルトは動かないが,ナットは外側に向っておされ,反作用でナットはボルトを押し返すから,ボルトとナットは滑り接触面(ナット内径×偏芯ネジ長さ)が両方から圧力を受け密着,一体化,固定するので,ナットの締め付け位置に拘らず,軸直角方向と軸中心方向の振動を受けても戻り回転はおきず,ボルトナットのゆるみを防止する。
ナットのネジの中心線の偏芯の値は各ボルトナットの寸法,ネジの精度,ネジ山のサイズ,そのボルトの許容最大軸力を考へた上で最適の値を選定する。
またクラッシャー,ショベル,振動コンベヤー/スクリーン等に組み込まれるボルトナットが過大なショックや振動に曝される場合には,ナットに小ネジを捩じ込みボルトを圧迫することにより,上記と共に,悪條件の下でボルトナットのゆるみを防止する。」
「【図1】
[図:0001383192000002.jpg]
」

第4 当審の判断

1 令和3年3月9日付け手続補正書による手続補正によって、特許請求の範囲の請求項1に「ボルトナットのネジの精密加工により組み立ての際の2つのネジの間隙を減らし,スパイラル接触面積を増やし,ネジの噛み合いを増やすことによりボルトナットのゆるみ止め効果を向上させる。」という発明特定事項が追加された点について

ボルトとナットの接触面に関し、当初明細書等の明細書の段落【0005】には、「その為には僅かに偏芯したネジ切削加工したナットをボルトに捩じ込むと,ナットの偏芯で,ボルトはナットを円周方向に押し出すと,反作用でナットはボルトを押し返すから,滑り接触面(ナット内径×偏芯ネジ長さ)が両面から圧力を受け密着,固定すれば軸直角方向と軸中心方向の新道を受けてもナットは戻り回転はおこさず,ボルトナットのゆるみを防止する。」と記載され、また、【図面の簡単な説明】にも同旨の記載がある。

また、当初明細書等の明細書の段落【0004】には、「ボルトナットの滑り接触面にゆるみがあるとナットは軸直角方向の振動に押されゆるいスロープを押し上げられながら戻り回転するのでボルトナットのゆるみが発生する。」と記載され、【図面の簡単な説明】には、「ボルトとナットの間の滑り接触スパイラルの間に隙き(ゆるみ)があると,ナットはゆるいスロープを押し上げられ,戻り回転して,ボルトナットはゆるむ」と記載されている。そして、これらの記載の他に、ボルトとナットの接触面の関係についての記載はない。

上記記載からは、ボルトとナットの間のスパイラル接触面の間の隙間がゆるみの発生原因であることがいえるとしても、ボルトとナットを精密加工し、2つのネジの間隔を減らすことにより、スパイラル接触面積を増やしネジの噛み合いを増やすことを開示しているものということはできない。

したがって、ボルトとナットを精密加工し、2つのネジの間隔を減らすことにより、スパイラル接触面積を増やしネジの噛み合いを増やすという技術的事項については、当初明細書等には一切記載がないし、当業者にとって記載されたのも同然と解することもできない。

してみると、令和3年3月9日付け手続補正書による手続補正によって、特許請求の範囲の請求項1に「ボルトナットのネジの精密加工により組み立ての際の2つのネジの間隙を減らし,スパイラル接触面積を増やし,ネジの噛み合いを増やすことによりボルトナットのゆるみ止め効果を向上させる。」という発明特定事項を追加する補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、「ボルトナットのネジの精密加工により組み立ての際の2つのネジの間隙を減らし,スパイラル接触面積を増やし,ネジの噛み合いを増やす」という新たな技術的事項を発明特定事項として導入するものであるといえる。

2 令和3年3月9日付け手続補正書による手続補正によって、明細書の段落【0007】に「ボルトとナットのネジの精密加工により組み立ての際の2つのネジの間隙を減らしてスパイラル接触面積を増やし,ネジの噛み合いを増やすことによりボルトナットのゆるみ止め効果を向上させる」という事項が追加された点について

当該事項の追加は、上記1での発明特定事項の追加と同旨の追加であるから、上記1と同様の理由により、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるといえる。

3 令和3年3月9日付け手続補正書による手続補正によって、明細書の段落【0009】に「(※1)のゆるいテーパー円錐について、BROWN&SHARPE SELF HOLDING TAP-ERSは2.5°~3°これはSOCKETとSHANKに使用され、SHANKをハンマーで叩けば簡単に外れるが、ねじ込んだ場合、取り外しできなくなるので本図では5°を使用し円錐のソケットにコーンを捩じこんでも確実に固定し脱着も可能とすることも考慮に入れた。」という事項が追加された点について

当初明細書等の図面の【図1】からは、2つのナットの対向面に凹部、凸部が形成さていることは看て取れるが、その凹部、凸部の側面がテーパー円錐となっていること、および、そのテーパーの具体的な角度は、図面からは看て取れないし、明細書及び図面の簡単な説明においても関連する記載がない。

したがって、当該事項に関連する事項については当初明細書等には一切記載がないといえるし、当業者にとって記載されたのも同然と解することもできない。

よって、令和3年3月9日付け手続補正書による手続補正によって、明細書の段落【0009】に「(※1)のゆるいテーパー円錐について、BROWN&SHARPE SELF HOLDING TAP-ERSは2.5°~3°これはSOCKETとSHANKに使用され、SHANKをハンマーで叩けば簡単に外れるが、ねじ込んだ場合、取り外しできなくなるので本図では5°を使用し円錐のソケットにコーンを捩じこんでも確実に固定し脱着も可能とすることも考慮に入れた。」という事項を追加することは、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、「テーパー円錐について、5°とする」という新たな技術的事項を導入するものであるといえる。

4 令和3年3月9日付け手続補正書による手続補正によって、明細書の段落【0009】に「(※2)の偏芯の値はネジ山の高さの50%以内とする。ボルトとナットのネジの間隔は小さい方がゆるみ止めの効果が大きいので精密ネジ切削加工が望まれる。」という事項が追加された点について

当初明細書等には、明細書の段落【0005】に「僅かに偏芯したネジ切削加工したボルト」と記載され、また、【図面の簡単な説明】には、「ナットのネジ中心線を微小に偏芯ネジ切りした」、「微小な偏芯の値は,各ボルトナットの寸法,ネジの精度,ネジ山の高さ,そのボルトの最大許容軸力を考慮し,最適の値を選定する。」と記載されているのみで、「偏芯の値」と「ネジ山の高さ」との寸法関係である「偏芯の値はネジ山の高さの50%以内とする」という点については、一切記載されていないし、当業者にとって記載されたのも同然と解することもできない。

したがって、令和3年3月9日付け手続補正書による手続補正によって、明細書の段落【0009】に「(※2)の偏芯の値はネジ山の高さの50%以内とする。」という事項を追加することは、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、「偏芯の値はネジ山の高さの50%以内とする」という新たな技術的事項を導入するものであるといえる。

5 拒絶査定の理由のうち、理由1)に係る拒絶の理由として指摘されていないものの、令和3年3月9日付け手続補正書による手続補正のうち、特許請求の範囲の【請求項1】に「ナットに作られた偏芯ネジ中心線は円錐コーンとソケットにより支えられたボルトによりその中心線まで押され」という発明特定事項を追加し、また、明細書の段落【0005】に「ナットの偏芯線はボルト中心線まで移動させられ」という事項を追加することは、当初明細書等には、ナットの偏芯線がボルト中心線まで移動させられるということが一切記載されてないこと、また、当業者にとって記載されたのも同然と解することもできないことからすれば(ボルトにナットを捩じ込むことにより、ボルトはナットによってボルト軸と直角方向の力を受けてナットの偏芯線が移動するといえるとしても、ナットの偏芯線が必ずボルトの中心線まで移動させられるということが当業者からみて技術常識であるともいえない)、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、「ナットの偏芯線はボルト中心線まで移動させられる」という新たな技術的事項を導入するものであるといえる。

第5 むすび

以上のとおり、令和3年3月9日付け手続補正書による手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、本願は、原査定の拒絶理由のうちその余の理由2)及び3)について検討するまでもなく、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

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