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特許拒絶査定不服審判

2021-015115

施工用シート及びそれを利用した施工方法

審判番号
2021-015115
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-124107外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年11月06日
審決日
2023年05月18日
公報発行日
2023年08月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (C09J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-124107「施工用シート及びそれを利用した施工方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月17日出願公開、特開2019- 6901〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は、平成29年6月26日の出願であって、令和3年3月15日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内の同年5月19日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月29日付けで拒絶査定がなされ(謄本送達は8月16日)、これに対して、同年11月6日に拒絶査定不服の審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 令和3年11月6日になされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]

令和3年11月6日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「 【請求項1】 電磁誘導加熱用の施工用シートであって、
電磁誘導によって発熱する金属シートと、
該金属シートの両主面に、第一のホットメルト接着剤層と第二のホットメルト接着剤層とが、それぞれ形成されており、
これら第一のホットメルト接着剤層と第二のホットメルト接着剤層に、接合対象もしくは用途を識別するための着色が施されており、
該着色が、第一のホットメルト接着剤層と第二のホットメルト接着剤層とで同一であることを特徴とする施工用シート。
【請求項2】 電磁誘導加熱用の施工用シートであって、
電磁誘導によって発熱する金属シートと、
該金属シートの両主面に、第一のホットメルト接着剤層と第二のホットメルト接着剤層とが、それぞれ形成されており、
これら第一のホットメルト接着剤層と第二のホットメルト接着剤層に、接合対象もしくは用途を識別するための着色が施されており、
該着色が、第一のホットメルト接着剤層と第二のホットメルト接着剤層とで異なることを特徴とする施工用シート。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲

本件補正前の、令和3年5月19日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び3の記載は次のとおりである。

「 【請求項1】
電磁誘導加熱用の施工用シートであって、
金属シートと、
該金属シートの両主面に形成されており、接合対象もしくは用途を識別するための着色
が施されたホットメルト接着剤層と、
を備えることを特徴とする施工用シート。」
「 【請求項3】
前記金属シートの両主面のホットメルト接着剤層のうちの片面が、他方の面と異なる接合対象用の着色が施されていることを特徴とする請求項1記載の施工用シート。」

2 補正の適否

本件補正後の請求項1についての本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「金属シート」に「電磁誘導によって発熱する金属シート」との限定、「ホットメルト接着剤層」に「第一のホットメルト接着剤層と第二のホットメルト接着剤層」との限定、及び、「着色」に「第一のホットメルト接着剤層と第二のホットメルト接着剤層とで同一である」との限定を付加するものである。

また、本件補正後の請求項2についての本件補正は、本件補正前の請求項3に記載された発明を特定するために必要な事項である「金属シート」に「電磁誘導によって発熱する金属シート」との限定、「ホットメルト接着剤層」に「第一のホットメルト接着剤層と第二のホットメルト接着剤層」との限定を付加するものである。

そして、補正前の請求項1及び3に記載された発明と補正後の請求項1及び2に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1及び2に記載される発明(以下、それぞれ、「本件補正発明1」及び「本件補正発明2」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明1及び2は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献及びその記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)
引用文献A:特開2015-136811号公報(原査定の引用文献2)
引用文献B:特開2016-164262号公報(原査定の引用文献4)

A.引用文献A

原査定で引用され本願出願日前に頒布された引用文献Aには、次の記載がある。

(1a)「【請求項1】

金属層の一方の面に、ポリアミド系ホットメルト接着剤、及びポリエステル系ホットメルト接着剤からなる群より選ばれる少なくとも一種のホットメルト接着剤Aを、

前記金属層の他方の面に、ポリアミド系ホットメルト接着剤、ポリエステル系ホットメルト接着剤、及びポリオレフィン系ホットメルト接着剤からなる群より選ばれる少なくとも一種のホットメルト接着剤Bをそれぞれ設けてなる接着シートを、

被着体1と被着体2との間に挟み、ホットメルト接着剤Aとホットメルト接着剤Bとを電磁誘導加熱により、被着体1と被着体2とを貼り合せた積層部材であって、

前記ホットメルト接着剤Aと接する被着体1がコンクリートであり、

前記ホットメルト接着剤Bと接する被着体2が、コンクリート、ポリエステル系部材、塩化ビニル系部材、エポキシ系部材、アクリル系部材、木質部材、石膏ボード、ガラス及び鋼板部材からなる群より選ばれる少なくとも一種の部材である、積層部材。

(但し、被着体2がコンクリートの場合、前記ホットメルト接着剤Bはポリアミド系ホットメルト接着剤又はポリエステル系ホットメルト接着剤である。)

【請求項2】

金属層の一方の面に、ポリアミド系ホットメルト接着剤、及びポリエステル系ホットメルト接着剤からなる群より選ばれる少なくとも一種のホットメルト接着剤Aを、

前記金属層の他方の面に、ポリアミド系ホットメルト接着剤、ポリエステル系ホットメルト接着剤、ポリオレフィン系ホットメルト接着剤、及びエチレン-酢酸ビニル共重合体系ホットメルト接着剤からなる群より選ばれる少なくとも一種のホットメルト接着剤Bをそれぞれ設けてなる接着シートを、

被着体1と被着体2との間に挟み、被着体1または被着体2の外側から、電磁誘導加熱装置によりポリアミド系ホットメルト接着剤Aとホットメルト接着剤Bとを加熱し、被着体1と被着体2とを貼り合せる、積層部材の製造法であって、

前記ホットメルト接着剤Aと接する被着体1がコンクリートであり、

前記ホットメルト接着剤Bと接する被着体2が、コンクリート、ポリエステル系部材、塩化ビニル系部材、エポキシ系部材、アクリル系部材、木質部材、石膏ボード、ガラス及び鋼板部材からなる群より選ばれる少なくとも一種の部材であり、

被着体2がコンクリートの場合、前記ホットメルト接着剤Bはポリアミド系ホットメルト接着剤又はポリエステル系ホットメルト接着剤である、

ことを特徴とする、積層部材の製造方法。

【請求項3】

金属層の一方の面に、ポリアミド系ホットメルト接着剤、及びポリエステル系ホットメルト接着剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の接着剤Aを、

前記金属層の他方の面に、ポリアミド系ホットメルト接着剤、ポリエステル系ホットメルト接着剤、ポリオレフィン系ホットメルト接着剤、及びエチレン-酢酸ビニル共重合体系ホットメルト接着剤からなる群より選ばれる少なくとも一種のホットメルト接着剤Bをそれぞれ設けてなる接着シートを、

被着体1と被着体2との間に挟み、被着体1または被着体2の外側から、電磁誘導加熱装置によりポリアミド系ホットメルト接着剤Aとホットメルト接着剤Bとを加熱し、被着体1と被着体2とを貼り合せる、接着方法であって、

ホットメルト接着剤Aと接する被着体1がコンクリートであり、

前記ホットメルト接着剤Bと接する被着体2が、コンクリート、ポリエステル系部材、塩化ビニル系部材、エポキシ系部材、アクリル系部材、木質部材、石膏ボード、ガラス及び鋼板部材からなる群より選ばれる少なくとも一種の部材であり、

被着体2がコンクリートの場合、前記ホットメルト接着剤Bはポリアミド系ホットメルト接着剤又はポリエステル系ホットメルト接着剤である、

ことを特徴とする、接着方法。

【請求項4】

請求項1記載の積層部材を、被着体1または被着体2の外側から電磁誘導加熱装置により加熱し、固体状態にあるホットメルト接着剤Aおよび/または固体状態にあるホットメルト接着剤Bを、軟化ないし溶融し、被着体1から被着体2をまたは被着体2から被着体1を、剥がす方法。」

(1b)「【0008】

本発明のホットメルト接着剤A及びホットメルト接着剤Bには、発泡剤や発泡させる装置を使用することもできる。その他、公知の添加剤である可塑剤、充填剤、顔料、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、防炎剤、難燃剤などを本発明の効果を損なわない範囲で使用することが出来る。

(1c)「【0012】

電磁誘導加熱とは、一般的に誘導コイルである高周波電流伝達コンダクタから変換される電気的エネルギによって磁性体の金属部分の温度を上げることをいう。かかる電磁誘導加熱の調理器を用いて飲食物を料理する調理容器は、今まで様々に開発されて使用されている。」

(1d)「【0013】

以下に本発明を具体的に示す。

<接着用シートの作成方法>

金属箔の片面に表1~表7記載のポリアミド系ホットメルト接着剤等(ホットメルト接着剤A)を塗工し、もう一方の面に表1~表7記載のポリアミド系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリオレフィン系接着剤(以上、ホットメルト接着剤B)を塗工し接着シートを作成した。

【0014】

<積層部材の作成方法>

金属箔の両面にホットメルト接着剤Aとホットメルト接着剤Bを塗工した接着シートを被着体1と被着体2との間に挟み、入力電圧:200V、消費電力:1500Wの電磁誘導加熱装置により、ホットメルト接着剤A、Bを軟化させ、加熱を終了することにより、ホットメルト接着剤A、Bを固化させ、ホットメルト接着剤Aと被着体1とを、ホットメルト接着剤Bと被着体2とをそれぞれ接着し積層部材(被着体1/ホットメルト接着剤A/金属箔/ホットメルト接着剤B/被着体2)を作成した。

【0015】

<接着強度の測定方法>

電磁誘導加熱後1分経過した積層部材(40mm×40mm)の被着体1、2をそれぞれアタッチメントで保持し、接着界面をほぼ水平になるように状態にて、被着体1、2を上下に引張り、接着強度を23℃雰囲気下で測定した。また、引張強度試験後の積層部材の剥離状態を観察した。

500N/1600mm2以上:○、500N/1600mm2以下:×とした。

引張強度試験機:サンコーテクノ社製テクノスターRT-1000LDII

【0016】

<ホットメルト接着剤A>

(ポリアミド系ホットメルト接着剤)

PA系接着剤-1:アミランCM4000(東レ社製ポリアミド、融点155℃)
PA系接着剤-2:プラタミドH2513(アルケマ社製ポリアミド、融点130℃)
PA系接着剤-3:マクロメルト6239(ヘンケル社製ポリアミド、軟化点140℃)
PA系接着剤-4:ニューマイド947(ハリマ化成社製ポリアミド、軟化点85℃)

【0017】

(ポリエステル系ホットメルト接着剤)

PES系接着剤-1:バイロン200(東洋紡社製非結晶性ポリエステル)
PES系接着剤-2:バイロンGM-913(東洋紡社製結晶性ポリエステル)

【0018】

<ホットメルト接着剤B>

(ポリアミド系ホットメルト接着剤)

PA系接着剤-1:アミランCM4000(東レ社製ポリアミド、融点155℃)
PA系接着剤-2:プラタミドH2513(アルケマ社製ポリアミド、融点130℃)
PA系接着剤-3:マクロメルト6239(ヘンケル社製ポリアミド、軟化点140℃)

【0019】

(ポリオレフィン系ホットメルト接着剤)

PO系接着剤-1:ニュクレルN1108C(三井・デュポンポリケミカル社製エチレン-アクリル酸共重合樹脂、酸含有量11%、MFR8g/10分)
PO系接着剤-2:メルセンMX28(東ソー社製ポリオレフィン系接着性ポリマー)
PO系接着剤-3:アドマーSF725(三井化学社製オレフィン系接着性ポリマー)

【0020】

(ポリエステル系ホットメルト接着剤)

PES系接着剤-1:バイロン200(東洋紡社製非結晶性ポリエステル)
PES系接着剤-2:バイロンGM-913(東洋紡社製結晶性ポリエステル)

【0021】

<エポキシ系接着剤>

EPO:ボンドE250(コニシ社製コンクリート用エポキシ樹脂(2液硬化型))

【0022】

<被着体>

被着体1:コンクリート板(厚さ50mm)
被着体2-1:石膏ボード(厚さ12mm)
被着体2-2:ベニア板(厚さ5mm)
被着体2-3:硬質塩化ビニルシート(厚さ5mm)
被着体2-4:軟質塩化ビニルシート(厚さ3mm)
被着体2-5:ポリエチレンテレフタレート(PET)シート(厚さ3mm)
被着体2-6:コンクリート板(厚さ50mm)

【0023】

【表1】

[図:0001399858000001.jpg]

【0024】

【表2】

[図:0001399858000002.jpg]

」

B.引用文献B

原査定で引用され本願出願日前に頒布された引用文献Bには、次の記載がある。

2a「【請求項1】

手切れ性を有する支持基材と、

前記支持基材の一方の面側に形成される第1アクリル系粘着剤層と、

前記支持基材の他方の面側に形成される第2アクリル系粘着剤層とを備え、

前記第1アクリル系粘着剤層の厚みt1は、5μm以上50μm以下であり、

前記第2アクリル系粘着剤層の厚みt2は、前記第1アクリル系粘着剤層の厚みt1を超え、かつ20μm以上であり、

前記第2アクリル系粘着剤層のゲル分率X2は、20質量%以上75質量%以下であり、

前記第2アクリル系粘着剤層の粘着力が、前記第1アクリル系粘着剤層の粘着力よりも強い手切れ性両面粘着テープ。

・・・

【請求項10】

建築養生用である請求項1~請求項9の何れか一項に記載の手切れ性両面粘着テープ。

【請求項11】

前記第1アクリル系粘着剤層が、被覆対象物に貼り付けられ、前記第2アクリル系粘着剤層が、前記被覆対象物を被覆する養生材に貼り付けられる請求項10に記載の手切れ性両面粘着テープ。」

2b「

【0137】

(用途)

手切れ性両面粘着テープは、接着力の異なる2つの粘着剤層(第1アクリル系粘着剤層及び第2アクリル系粘着剤層)を備えると共に、優れた手切れ性、良剥離性(糊残り性:剥離後に被着体上に糊残りが生じない特性)等を備えている。そのため、手切れ性両面粘着テープは、例えば、建築現場(例えば、新築現場、リフォーム現場)において、養生用、梱包用、養生材等の部材同士の接続用等の様々な用途で好ましく用いられる。また、手切れ性両面粘着テープは、建築現場での作業以外においても、手切れ性が求められる現場等において、好ましく用いられる。なお、手切れ性両面粘着テープの手切れ性は、例えば、後述する手切れ性試験により評価できる。

【0138】

手切れ性両面粘着テープの各粘着剤層(第1アクリル系粘着剤層及び第2アクリル系粘着剤層)は、金属、木材、プラスチック等の様々な材質の被着体に貼り付けることが可能である。

【0139】

例えば、プラスチック製段ボールやプラスチック製シート等からなる養生材を、床や壁等の被覆対象物(保護対象物)で被覆する養生処理において、手切れ性両面粘着テープが利用される。その際、手切れ性両面粘着テープの第1アクリル系粘着剤層が、先ず、被覆対象物に貼り付けられる。そして、養生材が、手切れ性両面粘着テープが貼り付いた状態の被覆対象物に、第2アクリル系粘着剤層が養生材に貼り付く形で宛がわれる。その結果、養生材は、弱粘着力側の第1アクリル系粘着剤層が被覆対象物に貼り付き、かつ強粘着力側の第2アクリル系粘着剤層が養生材に貼り付いた状態で、被覆対象物を被覆することになる。

【0140】

養生処理の後、養生材を被覆対象物から取り外すと、手切れ性両面粘着テープは、養生材側に残ることになる。なお、第1アクリル系粘着剤層は、被覆対象物から糊残り無く剥離することができる。また、養生材側に残った第2アクリル系粘着剤層についても、養生材から糊残り無く剥離することができる。

【0141】

なお、手切れ性両面粘着テープの良剥離性(糊残り性)は、後述する方法により評価される。また、手切れ性両面粘着テープの粘着力は、後述する180°引き剥がし粘着力の測定により、評価できる。手切れ性両面粘着テープにおいて、第1アクリル系粘着剤層の粘着力(対SUS)と、第2アクリル系粘着剤層の粘着力(対SUS)との差は、例えば、5N/25mm以上あることが好ましい。

【0142】

(粘着剤層の識別)

手切れ性両面粘着テープでは、弱粘着力側の第1アクリル系粘着剤層と、強粘着力側の第2アクリル系粘着剤層とを識別し易くするために、例えば、第1アクリル系粘着剤層を保護する剥離ライナーと、第2アクリル系粘着剤層を保護する剥離ライナーとにそれぞれ両者を識別するような文字、記号等の識別情報を印刷等によって付与してもよい。また、両者の剥離ライナーを色分け等して、第1アクリル系粘着剤層と第2アクリル系粘着剤層とを区別してもよい。

【0143】

また、第1アクリル系粘着剤層と第2アクリル系粘着剤層とを識別するために、第1アクリル系粘着剤層と第2アクリル系粘着剤層とを顔料等の着色剤を利用して互い色分けし、両者を区別してもよいし、第1アクリル系粘着剤層及び第2アクリル系粘着剤層に対して、それぞれ直接、文字、記号等の識別情報を印刷してもよい。

【0144】

また、第1アクリル系粘着剤層と第2アクリル系粘着剤層とを識別するために、支持基材の両面を色分けして、両者を区別してもよい。」

(3)引用文献Aに記載された発明

ア 引用発明1

引用文献Aには実施例6の積層部材の作成に用いる接着シートとして「金属箔の両面にホットメルト接着剤Aとホットメルト接着剤Bを塗工した接着シートを被着体1と被着体2との間に挟み、入力電圧:200V、消費電力:1500Wの電磁誘導加熱装置により、ホットメルト接着剤A、Bを軟化させ、加熱を終了することにより、ホットメルト接着剤A、Bを固化させ、ホットメルト接着剤Aと被着体1とを、ホットメルト接着剤Bと被着体2とをそれぞれ接着し積層部材(被着体1/ホットメルト接着剤A/金属箔/ホットメルト接着剤B/被着体2)を作成するものであって、ホットメルト接着剤Aとホットメルト接着剤Bが共にポリアミド系ホットメルト接着剤:PA系接着剤-1:アミランCM4000(東レ社製ポリアミド、融点155℃)であり、被着体1と被着体2が共にコンクリートである接着シート。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている(摘記1d参照)。

イ 引用発明2

引用文献Aには実施例19の積層部材の作成に用いる接着シートとして「金属箔の両面にホットメルト接着剤Aとホットメルト接着剤Bを塗工した接着シートを被着体1と被着体2との間に挟み、入力電圧:200V、消費電力:1500Wの電磁誘導加熱装置により、ホットメルト接着剤A、Bを軟化させ、加熱を終了することにより、ホットメルト接着剤A、Bを固化させ、ホットメルト接着剤Aと被着体1とを、ホットメルト接着剤Bと被着体2とをそれぞれ接着し積層部材(被着体1/ホットメルト接着剤A/金属箔/ホットメルト接着剤B/被着体2)を作成するものであって、ホットメルト接着剤Aがポリアミド系ホットメルト接着剤:PA系接着剤-2:プラタミドH2513(アルケマ社製ポリアミド、融点130℃)であり、ホットメルト接着剤Bがポリエステル系ホットメルト接着剤:PES系接着剤-1:バイロン200(東洋紡社製非結晶性ポリエステル)であり、被着体1がコンクリートであり、被着体2が石膏ボードである接着シート。」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている(摘記1d参照)。

(4)対比・判断

ア 本件補正発明1

(ア)引用発明1との対比

本件補正発明1と引用発明1とを対比する。

引用発明1の「金属箔」は、電磁誘導加熱で温度が上がるものであるから(摘記1c参照)、本件補正発明1の「電磁誘導によって発熱する金属シート」に相当する。

引用発明1の「接着シート」は、被着体1と被着体2との間に挟み、入力電圧:200V、消費電力:1500Wの電磁誘導加熱装置により、ホットメルト接着剤A、Bを軟化させ、加熱を終了することにより、ホットメルト接着剤A、Bを固化させ、ホットメルト接着剤Aと被着体1とを、ホットメルト接着剤Bと被着体2とをそれぞれ接着するものであるから、本件補正発明1の「電磁誘導加熱用の施工用シート」に相当する。

引用発明1の「金属箔の両面にホットメルト接着剤Aとホットメルト接着剤Bを塗工した」は本件補正発明1の「該金属シートの両主面に、第一のホットメルト接着剤層と第二のホットメルト接着剤層とが、それぞれ形成されており」に相当する。

そうすると、本件補正発明1と引用発明1は「電磁誘導加熱用の施工用シートであって、

電磁誘導によって発熱する金属シートと、

該金属シートの両主面に、第一のホットメルト接着剤層と第二のホットメルト接着剤層とが、それぞれ形成されている、施工用シート。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>

本件補正発明1は、第一のホットメルト接着剤層と第二のホットメルト接着剤層に、接合対象もしくは用途を識別するための着色が施されており、

該着色が、第一のホットメルト接着剤層と第二のホットメルト接着剤層とで同一であるのに対し、引用発明1はそのような着色が施されていない点。

(イ)相違点の検討

<相違点1>について

引用文献Aには引用発明1の接着シートのホットメルト接着剤A及びホットメルト接着剤Bに顔料を使用できることが記載されている(摘記1b参照)。

そして、引用文献Bには、接着力の異なる2つの粘着剤層(第1アクリル系粘着剤層及び第2アクリル系粘着剤層)を備える両面粘着テープにおいて、被覆対象物に貼り付く弱粘着力側の第1アクリル系粘着剤層と養生材に貼り付く強粘着力側の第2アクリル系粘着剤層とを識別するために、第1アクリル系粘着剤層と第2アクリル系粘着剤層とを顔料等の着色剤を利用して互い色分けし、両者を区別してもよいことが記載されており(摘記2b、特に【0143】参照)、粘着剤層を識別することによって、被覆対象物又は養生材である接合対象も識別していることから、引用文献Bには、粘着剤層に接合対象を識別するための着色が施されていることが記載されているといえる。

そうすると、様々な接着剤及び様々な被着体を用いるものである引用文献Aに記載のものにおいて、接着剤の識別及びそれに応じた接合対象である被着体の識別を行うことは当然に必要となるといえるところ、その識別をするために、引用文献Bに記載のように顔料等の着色剤を利用して識別できるように色分けすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

ここで、引用発明1の接着シートは、ホットメルト接着剤Aとホットメルト接着剤Bが共にPA系接着剤-1:アミランCM4000(東レ社製ポリアミド、融点155℃)で同じであり、接合対象が共にコンクリートで同じであるところ、ホットメルト接着剤Aとホットメルト接着剤Bとを識別する必要はない一方、ポリエステル系ホットメルト接着剤等の他の接着剤による接着シートを用いた他の積層部材とは区別する必要があるといえるから、引用発明1において、ホットメルト接着剤Aとホットメルト接着剤Bに、接合対象もしくは用途を識別するための着色を施すこととし、接着剤が同一のため、該着色のために顔料として同じものを使用することで、ホットメルト接着剤Aとホットメルト接着剤Bとで着色が同一であるものとすることも、当業者が容易に想到し得ることである。

(ウ)本件補正発明1の効果について

引用文献Bの両面粘着テープも粘着剤層の着色により接合対象を識別できるものであって、「一見して、どの施工用シートがどの接合対象用なのか見分けがつき、常に適切な施工用シートを使用して施工を行うことができ、施工効率が向上する。また、施工に使用する度に施工用シートのサイズが小さくなっていった場合でも、着色してあるため、用途が判別でき、無駄なく使いきることができる」という本件補正発明1の効果は、引用文献Bの両面粘着テープが奏する効果と同等の効果といえるものであるから、当業者が予測し得ない顕著なものであるとはいえない。

(エ)審判請求人の主張及び当審の判断について

折りたたみ中(クリックで表示)

請求人は、令和3年11月6日付け審判請求書において、「次に、上記補正後の請求項1と、ご指摘の引用文献4(前記(1)のとおり、引用文献Bに同じ。)を対比すると、請求項1では、表裏の接着剤層に同一の着色が施されているのに対し、引用文献4は、第1・第2のアクリル系粘着剤層に異なる着色が施されていることから、両者は全く異なります。

そもそも、引用文献4は、両面粘着テープに関するものであり、本願発明の電磁誘導加熱で使用する施工用シートとは技術分野が全く異なり、電磁誘導によって発熱する金属シートは、引用文献4には存在しません。従って、引用文献4は、本願発明についての先行技術としては不適切なものであると思料します。」と主張する。

しかし、前記(イ)のとおり、引用文献Bには、粘着剤層に接合対象を識別するための着色が施されていることが記載されているといえるから、それによれば、引用発明1の接着シートのようにホットメルト接着剤A及びホットメルト接着剤Bの接合対象が同じであれば、それを識別するために同一の着色を施すこととなるといえる。

そして、引用文献Bは、両面粘着テープに関するものであるが、着色による識別容易化という効果は、接合対象に応じた種類の接着剤層を両面に有する本件補正発明1や引用発明1のような電磁誘導加熱で使用する施工用シートと共通するものであるから、技術分野が全く異なるとはいえない。

以上から、引用文献Bは本件補正発明1についての先行技術としては不適切なものであるとはいえない。

(オ)小括

したがって、本件補正発明1は、引用文献Aに記載された発明及び引用文献Bに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

イ 本件補正発明2

(ア)引用発明2との対比

本件補正発明2と引用発明2とを対比する。

引用発明2の「金属箔」は、電磁誘導加熱で温度が上がるものであるから(摘記1c参照)、本件補正発明2の「電磁誘導によって発熱する金属シート」に相当する。

引用発明2の「接着シート」は、被着体1と被着体2との間に挟み、入力電圧:200V、消費電力:1500Wの電磁誘導加熱装置により、ホットメルト接着剤A、Bを軟化させ、加熱を終了することにより、ホットメルト接着剤A、Bを固化させ、ホットメルト接着剤Aと被着体1とを、ホットメルト接着剤Bと被着体2とをそれぞれ接着するものであるから、本件補正発明2の「電磁誘導加熱用の施工用シート」に相当する。

引用発明2の「金属箔の両面にホットメルト接着剤Aとホットメルト接着剤Bを塗工した」は本件補正発明2の「該金属シートの両主面に、第一のホットメルト接着剤層と第二のホットメルト接着剤層とが、それぞれ形成されており」に相当する。

そうすると、本件補正発明2と引用発明2は「電磁誘導加熱用の施工用シートであって、

電磁誘導によって発熱する金属シートと、

該金属シートの両主面に、第一のホットメルト接着剤層と第二のホットメルト接着剤層とが、それぞれ形成されている、施工用シート。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点2>

本件補正発明1は、第一のホットメルト接着剤層と第二のホットメルト接着剤層に、接合対象もしくは用途を識別するための着色が施されており、

該着色が、第一のホットメルト接着剤層と第二のホットメルト接着剤層とで異なるのに対し、引用発明1はそのような着色が施されていない点。

(イ)相違点の検討

<相違点2>について

引用文献Aには引用発明1の接着シートのホットメルト接着剤A及びホットメルト接着剤Bに顔料を使用できることが記載されている(摘記1b参照)。

そして、引用文献Bには、接着力の異なる2つの粘着剤層(第1アクリル系粘着剤層及び第2アクリル系粘着剤層)を備える両面粘着テープにおいて、被覆対象物に貼り付く弱粘着力側の第1アクリル系粘着剤層と養生材に貼り付く強粘着力側の第2アクリル系粘着剤層とを識別するために、第1アクリル系粘着剤層と第2アクリル系粘着剤層とを顔料等の着色剤を利用して互い色分けし、両者を区別してもよいことが記載されており(摘記2b、特に【0143】参照)、粘着剤層を識別することによって、被覆対象物又は養生材である接合対象も識別していることから、引用文献Bには、粘着剤層に接合対象を識別するための着色が施されていることが記載されているといえる。

そうすると、引用発明2の接着シートは、ホットメルト接着剤Aがポリアミド系ホットメルト接着剤:PA系接着剤-2:プラタミドH2513(アルケマ社製ポリアミド、融点130℃)であり、ホットメルト接着剤Bがポリエステル系ホットメルト接着剤:PES系接着剤-1:バイロン200(東洋紡社製非結晶性ポリエステル)として異なる接着剤であって、被着体1がコンクリートであり、被着体2が石膏ボードであって、異なる接着剤によるそれぞれの接合対象が異なるところ、引用文献Bに接した当業者は、引用発明2において、ホットメルト接着剤A及びホットメルト接着剤Bの識別をするために、両者に顔料として異なる着色剤を使用し、ホットメルト接着剤Aとホットメルト接着剤Bに、接合対象もしくは用途を識別するための着色を施すこととし、該着色のための顔料として異なるものを使用することで、ホットメルト接着剤層Aとホットメルト接着剤層Bとで着色が異なるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(ウ)本件補正発明2の効果について

引用文献Bの両面粘着テープも粘着剤層の着色により接合対象を識別できるものであって、「一見して、どの施工用シートがどの接合対象用なのか見分けがつき、常に適切な施工用シートを使用して施工を行うことができ、施工効率が向上する。また、施工に使用する度に施工用シートのサイズが小さくなっていった場合でも、着色してあるため、用途が判別でき、無駄なく使いきることができる」という本件補正発明2の効果は、引用文献Bの両面粘着テープが奏する効果と同等の効果といえるものであるから、当業者が予測し得ない顕著なものであるとはいえない。

(エ)審判請求人の主張及び当審の判断について

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請求人は、令和3年11月6日付け審判請求書において、「次に、上記補正後の請求項2とご指摘の引用文献4(前記(1)のとおり、引用文献Bに同じ。)を対比すると、表裏の接着剤層の着色が異なる点で引用文献4と共通しますが、そもそも、引用文献4は、両面粘着テープに関するものであり、本願発明の電磁誘導加熱で使用する施工用シートとは技術分野が全く異なり、電磁誘導によって発熱する金属シートは、引用文献4には存在しません。従って、引用文献4は、本願発明についての先行技術としては不適切なものであると思料します。」と主張する。

しかし、引用文献Bは、両面粘着テープに関するものであるが、着色による識別容易化という効果は、接合対象に応じた種類の接着剤層を両面に有する本件補正発明2や引用発明2のような電磁誘導加熱で使用する施工用シートと共通するものであるから、技術分野が全く異なるとはいえない。

以上から、引用文献Bは本件補正発明2についての先行技術としては不適切なものであるとはいえない。

(オ)小括

したがって、本件補正発明2は、引用文献Aに記載された発明及び引用文献Bに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび

以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

上記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年5月19日提出の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1及び3に係る発明((以下、それぞれ、「本願発明1」及び「本願発明2」という。))は、前記第2 1(2)に示したとおりのものである。

2 原査定の拒絶理由

原査定の拒絶の理由は、「令和3年3月15日付け拒絶理由通知書に記載した理由1」であり、要するに、この出願の請求項1~9、11及び13に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

そして、該拒絶の理由において引用された引用文献は次のとおりである。

<引用文献等一覧>

1.特開2002-21299号公報

2.特開2015-136811号公報

3.特開2002-371252号公報

4.特開2016-164262号公報

5.特開平3-217475号公報

6.国際公開第2014/142169号

3 引用文献

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2及び引用文献4は、ぞれぞれ、前記第2 2(2)の引用文献A及び引用文献Bであって、引用文献A及び引用文献Bの記載事項は、前記第2 2(2)A及びBに記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明1は、前記「第2 2」で検討した本件補正発明1の「金属シート」なる事項について「電磁誘導によって発熱する金属シート」との限定がなく、本件補正発明1の「ホットメルト接着剤層」なる事項について「第一のホットメルト接着剤層と第二のホットメルト接着剤層」との限定がなく、本件補正発明1の「着色」について「第一のホットメルト接着剤層と第二のホットメルト接着剤層とで同一である」又は「第一のホットメルト接着剤層と第二のホットメルト接着剤層とで異なる」との限定がないものであり、本願発明2は、前記「第2 2」で検討した本件補正発明1の「金属シート」なる事項について「電磁誘導によって発熱する金属シート」との限定がなく、本件補正発明1の「ホットメルト接着剤層」なる事項について「第一のホットメルト接着剤層と第二のホットメルト接着剤層」との限定がないものである。

そうすると、本願発明1及び2の発明特定事項を全て含み、さらに前記事項によって限定したものに相当する本件補正発明1及び2が、前記「第2 2(4)ア」及び前記「第2 2(4)イ」に記載したとおり、当該引用文献Aに記載された発明及び当該引用文献Bに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1及び2も、当該引用文献A(引用文献2)に記載された発明及び当該引用文献B(引用文献4)に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2021-015115

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