意匠拒絶査定不服審判
2021-014998
血液ポンプ用吐出ケージ
- 審判番号
- 2021-014998
- 法域
- 意匠
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 意願2020-015114外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 1716474
- 請求日
- 2021年11月04日
- 審決日
- 2022年04月15日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】アビオメド,インク.
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】林 美和
- 【請求人代理人】茜ヶ久保 公二
- 分類
- D18 .113-WY (J7-4)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 意匠法3条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 意匠法第3条第1項第3号、意匠法第10条の2第1項、意匠法第14条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
意願2020- 15114「血液ポンプ用吐出ケージ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由
理 由
第1 事案の概要
1 手続の経緯
本願は,意匠法第10条の2第1項の規定により意願2020-12401から分割された新たな意匠登録出願とし,意匠法第14条第1項の規定により秘密にすることを請求する期間を3年とした,令和2年(2020年)7月20日(原出願の出願日:令和2年6月22日,パリ条約による優先権主張:2019年12月31日,アメリカ合衆国)の意匠登録出願であって,その後の主な手続の経緯は,以下のとおりである。
令和2年(2020年) 11月11日付け:拒絶理由通知(1回目)の送付
令和3年(2021年) 2月18日 :手続補正書(補正対象書類:願書及び添付図面)の提出
同 年 3月22日付け:拒絶理由通知(2回目)の送付
同 年 6月21日 :拒絶理由通知(2回目)に対する意見書の提出
同 年 8月 2日付け:拒絶査定
同 年 11月 4日 :審判請求書の提出
2 本願意匠の願書及び添付図面の記載
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり,その意匠は,意匠に係る物品を「血液ポンプ用吐出ケージ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり(以下「本願意匠」という。),部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を,「実線で表された部分が,意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界を示す。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。
3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の令和3年3月22日付け拒絶理由通知における拒絶の理由は,本願意匠が,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当する,というものである。
上記の拒絶理由通知において引用された意匠は,「この意匠登録出願前,2017年8月3日,国際事務局において発行された国際公開第2017/132652号,FIG.1に記載の『the blood pump assembly 100』を構成する『the outlet area 106』のうち,本願意匠に該当する部分の意匠」(以下「引用意匠」という。)である(別紙第2参照)。
以下,本審決では,引用意匠において本願部分と対比,判断する部分,すなわち,本願部分に相当する部分を,「引用部分」という。
第2 当審の判断
1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも血液の循環補助を行うための内留置型血液ポンプを構成する,血液排出口部分の部品である「血液ポンプ用吐出ケージ」と認められるものであるから一致するものである。
(2)本願部分と引用部分の用途及び機能の対比
本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)の用途は,血液ポンプ組立体の先端部分から吸い込んだ血液を,血液ポンプ組立体の末端部分から排出する機能を有する心臓ポンプ組立体における,血液排出口部分の構成部品として用いられるものであり,その機能は,患者の血管系へのストレスを軽減し,溶血と血液への損傷を軽減するようにして血液を排出する機能を有するものと認められるから,両部分の用途及び機能は一致する。
(3)両部分の位置,大きさ及び範囲の対比
両部分は,いずれも血液ポンプ組立体を構成する中央の管状部分(以下「カニューレ」という。)の血液排出側端部に位置するものであり,カニューレと直径がほぼ等しい血液ポンプ用吐出ケージにおける,開口部が形成された略円筒形状の血液ポンプ用吐出ケージの上下端部を除く部分をその範囲とするから,両部分の位置,大きさ及び範囲は一致する。
(4)両部分の形状等の対比
両部分の形状等を対比する(以下,対比のため,引用部分も本願部分の図面の向きに合わせることとする。)と,その形状等には,主として以下の共通点及び相違点が認められる。
ア 形状等の共通点
(共通点)両部分は,部分全体の形状等を,略円筒形状の側面部分に,略縦長U字形状の開口部を,その側面下端部分が連結した態様で複数形成したものであって,開口部の左右柱状部分(以下「柱状部」という。)の先端部分が,破線で示された略半球状の吐出ケージの上端部分(以下「キャップ部」という。)の外周部分に接するようにして形成したものである点が共通する。
イ 形状等の相違点
(相違点1)本願部分の支柱部の数及び配置態様は,5本を等間隔に配置したものであり,開口部が5箇所であるのに対し,引用部分の支柱部の数及び配置態様は,その配置が不明な4本からなり,開口部が4箇所である点で,両部分は相違する。
(相違点2)本願部分の支柱部先端部分の形状等は,その外周面部分を左右に拡がる略ラッパ状に形成し,その内側折曲部分をなだらかに湾曲させてその横幅を拡げた側面視略レの字状に形成し,キャップ部下方部分の傾斜面となだらかに接合しているのに対し,引用部分の支柱部先端部分の形状等は,その外周面部分を支柱部と同じ幅とし,その先端部分を側面視略三角形状に形成し,キャップ部下方部分の傾斜面と鋭角的に接合している点で,両部分は相違する。
(相違点3)本願部分の略縦長U字状の開口部には,U字状の縁部全体に面取りが施されたなだらかな開口部としているのに対して,引用部分の略縦長U字状の開口部には,そのような面取りが認められない点で,両部分は相違する。
(相違点4)本願部分のケージ本体部下端部分から開口部下端部分までの長さを,ケージ本体部全長の約1/6の長さに形成しているのに対し,引用部分のケージ本体部下端部分から開口部下端部分までを僅かな長さに形成している点で,両部分は相違する。
2 両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品についての判断
両意匠の意匠に係る物品は,一致するものであるから同一である。
(2)両部分の用途及び機能についての判断
両部分の用途及び機能は,一致するものであるから同一である。
(3)両部分の位置,大きさ及び範囲の評価
両部分の位置,大きさ及び範囲は,物品全体の形態の中における位置,大きさ及び範囲が一致するから同一である。
(4)両部分の形状等についての判断
両意匠の意匠に係る物品は,人体の心臓に埋設して使用する血液ポンプ用吐出ケージに係るものであって,この物品における需要者は,心臓外科手術を実施するための高度な医学的専門知識を有する医療従事者等である。
そうすると,これらの医学の専門知識を有する需要者は,患者の血管系へのストレスの軽減や,血液吐出時における溶血の減少といった専門的な観点から両意匠に係る物品を観察するものであって,具体的には,血液ポンプ用吐出ケージの血液と接する部分の形状等が,赤血球等の血液成分をできるだけ破壊しないで血液の吐出が可能であるのかといった観点で,血液ポンプ用吐出ケージの具体的な形状等を注視して観察することとなる。
したがって,両部分の類否判断にあたっては,血液ポンプ用吐出ケージにおいて注視される血液吐出部分の具体的な形状等が,需要者の注意を惹く部分であるとの前提に基づいて,両部分の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響について以下評価することとする。
ア 共通点の評価
(共通点)は部分全体の形状等に係るケージ本体部の形状等についてであるが,この種物品分野において,本願部分の出願前に既に見られるもの(特表2018-527129参照)にすぎず,両部分のみに認められる格別の特徴であるとはいえないから,この(共通点)が部分全体の美感に与える影響は小さい。
イ 相違点の評価
(相違点1)の支柱部の数及び配置態様の相違については,該部位は,血液吐出時に赤血球等の血液成分が接する部分の形状等であって,需要者が注視して観察するものであって,支柱部の数が5本からなり,開口部が5箇所設けられた本願部分の形状等と,支柱部の数が4本で,開口部が4箇所の引用部分のものとでは,その基本的な構成態様が共通するとしても,該部位の強度や,血液の流速抵抗といった点において相違する該部位の形状等は,これを重視する需要者に別異の印象を与えるから,この(相違点1)が部分全体の美感に与える影響は一定程度ある。
(相違点2)の支柱部先端部分の形状等,及び(相違点3)の開口部の面取りの有無の相違については,該部位は微細なものではあるものの,需要者が特に注視する血液吐出時に血液成分が接する部分であって,各構成部分を面取りしつつなだらかな形状等に形成した本願部分のものと,そのような加工を施したことが認められない引用部分のものとでは,需要者に与える印象が大きく異なるから,たとえ微細な部位に係る相違であっても,これらの相違は部分全体の形状等の共通性に完全に埋没するものとはいえず,この(相違点2)及び(相違点3)が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。
(相違点4)のケージ本体部下端部分から開口部下端部分までの長さの相違については,血液の吐出に影響を与える部位ではなく,その相違も部分全体としてみれば僅かなものであるから,この(相違点4)が部分全体の美感に与える影響は小さい。
ウ 両部分の形状等の類否判断
両部分の形状等における各共通点及び相違点についての個別評価に基づき,両部分の全ての共通点及び相違点を総合的に観察した場合,両部分は,需要者が強い関心を持って観察する支柱部先端部分の形状等や開口部の面取りの有無の相違が部分全体の美感に与える影響が大きく,支柱部の数及び配置態様の相違も両部分の類否判断に一定程度の影響を及ぼすものであるから,部分全体の形状等の共通性が両部分の類否判断に与える影響を考慮しても,部分全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえるから,両部分の形状等は類似しないものである。
(5)小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が同一であり,両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲も同一であるが,両部分の形状等において類似しないものであるから,本願意匠と引用意匠が類似するということはできない。
第3 むすび
上記のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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