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特許拒絶査定不服審判

2021-014461

POSシステム、制御方法及びプログラム

審判番号
2021-014461
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-176405外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年10月26日
審決日
2022年06月07日
公報発行日
2022年08月26日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (G07G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-176405「POSシステム、制御方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 2月 6日出願公開、特開2020- 21500、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 14項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、平成29年11月13日に出願した特願2017-217988号の一部を令和元年9月27日に新たな出願としたものであって、令和2年6月5日付けの拒絶理由の通知に対し、同年7月22日に意見書が提出され、同年12月17日付けの拒絶理由の通知に対し、令和3年2月10日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年7月30日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対して同年10月26日に審判の請求がなされたものである。

第2 原査定の概要

原査定の概要は次のとおりである。

この出願の請求項1ないし5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>

1.特開2015-225408号公報

2.特開2017-36644号公報

第3 本願発明

本願の請求項1ないし請求項5に係る発明(以下、これを「本願発明1」ないし「本願発明5」という)は、令和3年2月10日付けの手続補正により補正された、特許請求の範囲の請求項1ないし請求項5に記載された事項により特定されるものであり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
店員と顧客とが対面するカウンタに設けられたPOS(Point Of Sales)装置と、
前記カウンタに設置された第1の無線送信機及び第2の無線送信機と、
前記第1の無線送信機及び前記第2の無線送信機からそれぞれ送信される信号を受信する受信部と、前記第1の無線送信機及び前記第2の無線送信機の少なくとも一方から送信された信号に基づいて、前記POS装置に対する制御を許可するか否かを判定する判定部と、を備える携帯端末と、
を備え、
前記第1の無線送信機は、前記第2の無線送信機よりも店員側に設置されており、
前記判定部は、前記第1の無線送信機から送信された信号の強度と前記第2の無線送信機から送信された信号の強度との差が閾値よりも大きい場合に、前記POS装置に対する制御を許可する
ことを特徴とするPOSシステム。」

なお、本願発明2ないし3は、本願発明1を減縮した発明である。

また、本願発明4は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明5は、本願発明1に対応するプログラムの発明であるから、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。

第4 引用文献、引用発明等

1.引用文献1について

(1)引用文献1に記載された事項

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2015-225408号公報)には、関連する図面と共に次の事項が記載されている。なお、下線は、強調のため当審が付与した。(以降においても同様。)

ア「【0009】

[第1の実施形態]

タブレット端末10を用いた商品販売データ処理装置1の概略を、図1に示す。図示するように、商品販売データ処理装置1は、タブレット端末10と据置型装置20とからなる。タブレット端末10は、据置型装置20に対して分離自在であり、装着した状態のときだけでなく分離した状態のときでも、商品販売データ処理装置1としての機能を実現できる。

【0010】

タブレット端末10は、携帯可能な矩形板状の筐体を有する。そしてタブレット端末10は、この筐体の一面(表面と称する)にタッチパネル11を配設する。また、筐体の周縁部の図示右側に磁気カードリーダ12を取り付けている。

【0011】

据置型装置20は、据え置き可能な箱型の筐体を有する。そして、据置型装置20は、筐体の上面を正面側に向けて傾斜させており、この上面をタブレット端末10の装着面21とする。」

イ「【0013】

タブレット端末10と据置型装置20との要部構成を、図2のブロック図で示す。図示するように、タブレット端末10は、プロセッサ(Central Processing Unit)31、フラッシュROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)33、時計部34、タッチパネルコントローラ35、USB(Universal Serial Bus)コネクタ36、及び無線部としての無線インターフェース37を搭載する。そしてタブレット端末10は、プロセッサ31と、フラッシュROM32、RAM33、時計部34、タッチパネルコントローラ35、USBコネクタ36及び無線インターフェース37とを、アドレスバス,データバス等のバスライン38で接続する。またタブレット端末10は、駆動電源としてバッテリ39を搭載する。」

ウ「【0020】

据置型装置20は、プロセッサ41、フラッシュROM42、RAM43、無線インターフェース44、ネットワークインターフェース45、複数のデバイスインターフェース46,47、電源ユニット48を搭載する。そして据置型装置20は、プロセッサ41と、フラッシュROM42、RAM43、無線インターフェース44、ネットワークインターフェース45、複数のデバイスインターフェース46,47及び電源ユニット48とを、アドレスバス,データバス等のバスライン49で接続する。」

エ「【0027】

タブレット端末10と据置型装置20との間のデータ通信は無線で行われる。すなわち、据置型装置20の無線インターフェース44は、タブレット端末10の無線インターフェース37と無線通信を行うように設定されている。そして、無線インターフェース44は、一定の周期で無線インターフェース37に対して問合せコマンドを無線送信する。この問合せコマンドを受信した無線インターフェース37は、固有のIDを含む応答コマンドを無線インターフェース44に対して送信する。無線インターフェース44は、応答コマンドに含まれるIDを検出する。そして、同一IDを含む応答コマンドを受信している間、無線インターフェース44は、当該応答コマンド送信元の無線インターフェース37と通信回線を確立する。通信回線が確立されている間、タブレット端末10は、据置型装置20と無線を利用したデータ通信が可能である。

【0028】

無線インターフェース37は、受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)の検出手段371を備える。この検出手段371は、据置型装置20の無線インターフェース44から無線送信される電波をどれだけの強度(dB:デシベル)で受信しているのかを検出するものであり、周知の技術である。前述したしきい値SHLは、この受信信号強度に対するしきい値である。」

オ「【0029】

図3は、店舗60のレイアウト例を示す平面図である。この店舗60は、出入口61の正面に会計カウンタ62が配置され、この会計カウンタ62から店内に向かって複数の商品棚63が配置される。すなわち、出入口61から入店した買物客は、商品棚63に陳列されている商品の中から購買商品を求め、会計カウンタ62にて会計を行った後、出入口61から出店するという運用である。

【0030】

このような店舗60において、商品販売データ処理装置1は、会計カウンタ62の上に据置型装置20が載置され、さらにこの据置型装置20の装着面21にタブレット端末10が装着されて、商品販売データ処理装置1としての機能を実現する。また、例えば店員がタブレット端末10を据置型装置20から持出し、例えば商品棚63が配置されている店内でタッチパネル11を操作しても、商品販売データ処理装置1としての機能を実現可能である。したがって、タブレット端末10と据置型装置20との各無線インターフェース37,44は、タブレット端末10が据置型装置20から持ち出されても店内であれば双方向の無線通信が可能なように電波強度が設定されている。」

カ「【0068】

すなわち、タブレット端末10が据置型装置20から分離され、図3または図4の破線70で示す領域の外側まで持ち出された場合には、電波受信強度がしきい値SHL未満となるので、タッチパネル11が無効化される。タッチパネル11が無効化された場合、ディスプレイの画面が消去される。また、画面をタッチしても、その入力は無効となる。したがって、例えば店員が目を離した隙に第三者がタブレット端末10を持ち去っても、このタブレット端末10を不正に使用することはできない。」

(2)引用発明

ア 上記(1)オによれば、引用文献1からは“店舗60において、買物客が会計を行う会計カウンタ62の上に据置型装置20が載置され、さらにこの据置型装置20の装着面21にタブレット端末10が装着された、商品販売データ処理装置1”が読み取れる。

イ 上記(1)アの段落【0010】によれば、引用文献1からは“タブレット端末10は、携帯可能な矩形板状の筐体を有し”ていることが読み取れる。

ウ 上記(1)イ、ウおよびエの段落【0027】によれば、引用文献1からは“据置型装置20の無線インターフェース44は、タブレット端末10の無線インターフェース37に対して問合せコマンドを無線送信し”ていることが読み取れる。

エ 上記(1)エの段落【0028】によれば、引用文献1からは“無線インターフェース37は、受信信号強度の検出手段371を備え、当該検出手段371は、据置型装置20の無線インターフェース44から無線送信される電波をどれだけの強度で受信しているのかを検出するものであ”ることが読み取れる。

オ 上記(1)ア、エおよびカによれば、引用文献1からは“無線インターフェース37で受信した電波の電波受信強度がしきい値SHL未満となる場合は、タブレット端末10のタッチパネル11が無効化され、画面をタッチしても入力が無効となる“ことが読み取れる。

以上より、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「店舗60において、買物客が会計を行う会計カウンタ62の上に据置型装置20が載置され、さらにこの据置型装置20の装着面21にタブレット端末10が装着された、商品販売データ処理装置1であって、
前記タブレット端末10は、携帯可能な矩形板状の筐体を有し、
前記据置型装置20の無線インターフェース44は、前記タブレット端末10の無線インターフェース37に対して問合せコマンドを無線送信し、
前記無線インターフェース37は、受信信号強度の検出手段371を備え、当該検出手段371は、前記据置型装置20の前記無線インターフェース44から無線送信される電波をどれだけの強度で受信しているのかを検出するものであり、
前記無線インターフェース37で受信した電波の電波受信強度がしきい値SHL未満となる場合は、前記タブレット端末10のタッチパネル11が無効化され、画面をタッチしても入力が無効となる、
商品販売データ処理装置1。」

2.引用文献2について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2017-36644号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア「【0044】

第1の発信機304と第2の発信機305との間に配置される電磁波遮蔽部材306は、電子錠300が部屋の入口に設けられたときに、室外側では第1の発信機304の電波強度がより強く、室内側では第2の発信機305の電波強度がより強くなるように、室外又は室内という計測位置に応じて一方の発信機の電波が遮蔽されるようにする。または、第1の発信機304の電波強度から第2の発信機305の電波強度を引いた差が所定の閾値以上となるようにする。各発信機の電波に部屋の内外方向に強度の不均一性を与えているともいうことができる。このようにすると、後述するように、当該電子錠又はこれが設けられた扉を基準としたユーザー位置を高精度に特定可能になる。」

以上より、引用文献2には、以下の技術事項が記載されていると認められる。

「第1の発信機の電波強度から第2の発信機の電波強度を引いた差が所定の閾値以上となるようにして、電子錠又はこれが設けられた扉を基準としたユーザー位置を高精度に特定可能にすること。」

3.引用文献3について

原査定の拒絶の理由である令和2年12月17日付け拒絶理由において、引用文献2として引用された「中原 蒼太 ほか、BLEビーコンを用いて在離席操作を自動化するビーコン型知的証明システムの提案、2016年度 人工知能学会全国大会(第30回)論文集、日本、一般社団法人 人工知能学会、2016年 6月 6日、1D3-4、p.1-3)」(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア「1.はじめに

(中略)

そこで、ビーコンとスマートフォンを用いて、執務者の位置を特定し、知的照明システムにおける在離席操作を自動化するビーコン型知的照明システムを提案する。ビーコンとスマートフォンを用いて、システムが執務者の在離席を検知し、知的照明システムにおける執務者のシステムの利便性向上を目指す。」

以上より、引用文献3には、以下の技術事項が記載されていると認められる。

「ビーコンとスマートフォンを用いて、執務者の位置を特定すること。」

第5 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明の「会計カウンタ」と、本願発明1の「店員と顧客とが対面するカウンタ」とは、「カウンタ」である点で共通する。

イ 引用発明の「据置型装置20」は、店舗において買物客が会計を行う会計カウンタの上に載置され、商品販売データ処理装置1を構成する装置であるから、本願発明1の「POS(Point Of Sales)装置」に相当する。

ウ 引用発明の「タブレット端末10」は、携帯可能な矩形板状の筐体を有しているから、本願発明1の「携帯端末」に相当する。

エ 引用発明の「無線インターフェース44」は、問合せコマンドを無線送信するから、本願発明1の「無線送信機」に相当する。

ただし、引用発明の「無線インターフェース44」は「会計カウンタ」ではなく「据置型装置20」が備えるものであり、かつ、複数個存在するものでもないから、引用発明は、本願発明1の「カウンタに設置された第1の無線送信機及び第2の無線送信機」や「前記第1の無線送信機は、前記第2の無線送信機よりも店員側」にする構成を備えていない。

オ 引用発明の「無線インターフェース37」は、受信信号強度の検出手段371を備え、当該検出手段371を介して、据置型装置20の無線インターフェース44から無線送信される電波を受信しているといえるから、本願発明1の「受信部」に相当する。

ただし、引用発明の「無線インターフェース37」は、本願発明1の「前記第1の無線送信機から送信された信号の強度と前記第2の無線送信機から送信された信号の強度との差が閾値よりも大きい場合に、前記POS装置に対する制御を許可する」構成を備えていない。

カ 引用発明の「商品販売データ処理装置1」は、据置型装置20およびタブレット端末10より構成されるものであって、商品販売データ処理を行うシステムといい得るものであり、後述する相違点を除き、「POSシステム」である点で、本願発明1と共通する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)

「カウンタに設けられたPOS(Point Of Sales)装置と、
無線送信機と、
前記無線送信機から送信される信号を受信する受信部を備える携帯端末と、
を備えた、
POSシステム。」

(相違点1)

本願発明1の「カウンタ」が「店員と顧客とが対面する」構造であるのに対し、引用発明の「会計カウンタ」がそのような構造のものであるか明確ではない点。

(相違点2)

本願発明1は、「第1の無線送信機」と「第2の無線送信機」が「カウンタに設置」され、「前記第1の無線送信機は、前記第2の無線送信機よりも店員側」にあり、「前記第1の無線送信機から送信された信号の強度と前記第2の無線送信機から送信された信号の強度との差が閾値よりも大きい場合」に、「携帯端末」の「判定部」が、「POS装置に対する制御を許可する」のに対し、引用発明では、そのような構成になっていない点。

(2)相違点についての判断

原査定で引用された引用文献2、ならびに、原査定に係る拒絶理由の通知において引用された引用文献3は、それぞれ、上記第4の2ないし3のとおりの技術事項を開示するが、いずれも、本願発明1の上記相違点1および2に係る構成を開示するものではない。また、上記相違点1および2に係る本願発明1の構成が、当業者にとって周知の技術であると解すべき根拠はなく、当該構成が自明であるともいえない。そして、本願発明1は、上記相違点1および2に係る構成を備えることにより、「店員と顧客とが対面するカウンタに設けられたPOS装置の店員側からの携帯端末の操作により、POS装置に対する制御を許可することにより、POS装置を制御する際のセキュリティをより向上させる」という作用効果を奏するものであるから、本願発明1の上記相違点1および2に係る構成は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に想到し得るものではない。

したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし3に記載の技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし3について

本願発明2ないし3は、本願発明1を直接または間接に引用するものであって、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし3に記載の技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明4ないし5について

本願発明4は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明5は、本願発明1に対応するプログラムの発明であって、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明であるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし3に記載の技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび

以上のとおり、本願発明1ないし5は、当業者が引用発明及び引用文献2ないし3に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

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2021-014461

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