特許拒絶査定不服審判
2025-005880
ヒートシンク、電子機器、及び組み立て方法
- 審判番号
- 2025-005880
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-016246
- 請求日
- 2025年04月17日
- 審決日
- 2026年06月08日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】NECプラットフォームズ株式会社
- 【請求人代理人】松沼 泰史
- 【請求人代理人】橋本 隆史
- 審判長/審判官
- 審判長 梶尾 誠哉
- 審判官 緑川 隆
- 審判官 原田 貴志
- 分類
- P18 .113-WZ (H10W) / P18 .121-WZ (H10W)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023- 16246「ヒートシンク、電子機器、及び組み立て方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 6年 8月19日出願公開、特開2024-111629〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和5年2月6日に出願されたものであって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和6年 4月30日付け:拒絶理由通知
同年 7月 2日 :意見書、手続補正書の提出
同年 9月25日付け:拒絶理由通知(最後)
同年11月29日 :意見書、手続補正書の提出
令和7年 1月 9日付け:補正の却下の決定、拒絶査定
同年 4月17日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年12月24日 :拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由」という。)
令和8年 3月 6日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明について
本願の請求項1~8に係る発明は、令和8年3月6日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「電子部品を冷却するヒートシンクであって、
複数の放熱ブロック部と、弾性のある複数の放熱シートと、を備える積層ユニット
を備え、
前記積層ユニットにおいて、前記複数の放熱ブロック部と前記複数の放熱シートとが高さ方向に積層されており、
前記電子部品の上面に沿って、前記積層ユニットが並び、
前記放熱ブロック部は、前記高さ方向を向く面に、溝加工を有し、
前記放熱ブロック部は、水平方向を向く面に、溝加工を有し、
前記放熱ブロック部は、水冷ブロックである、
ヒートシンク。」
なお、本願発明は、補正前の請求項1に係る発明について、補正前の請求項2に記載された事項で限定し、さらに「放熱ブロック部」が「水冷ブロックである」ことを限定するとともに、補正前の「前記放熱ブロック部は、前記上面に沿った方向にある面に、溝加工を有し」との構成を補正後の「前記放熱ブロック部は、前記高さ方向を向く面に、溝加工を有し」との構成に変更したものである。
第3 当審拒絶理由の概要
本願発明に対する当審拒絶理由のうち、理由2(進歩性欠如)は、概略、次のとおりである。
この出願の請求項1、2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2~4に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.特開2022-94454号公報
引用文献2.特開2004-241553号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3.特開平6-5750号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4.実願昭58-93316号(実開昭60-2189号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
(1) 引用文献1の記載
当審拒絶理由において引用した引用文献1には、以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に配置された電子部品等の発熱体を冷却する冷却構造、および、それを用いた電子機器に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、電子部品が生じた熱を外部に放熱する放熱部は、金属板、金属ブロック等の放熱部材を介して、発熱部品に取り付けられているが、直方体状の放熱部材は、発熱部品の周囲に配置された他の電子部品と干渉し易いという問題がある。他の電子部品と干渉するような場合、放熱部材のサイズを大きくすることができず、伝熱経路の断面積を拡大することができないため、十分な放熱を行うことが困難になっている。
・・・
【0011】
そこで、本発明は、基板上に配置された発熱体を周囲との干渉を回避しつつ低コストで効率的に冷却することが可能であり、複数の発熱体の効率的な冷却にも対応することができる冷却構造、および、これを用いた電子機器を提供することを目的とする。
・・・
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る冷却構造の一例を示すプリント回路板の断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る冷却構造は、基板1と、基板1を収容する筐体2と、基板1上に配置された電子部品3,4と、電子部品が生じた熱を筐体2に向けて熱伝導させる放熱部材5,6と、を備えている。
【0018】
図1に示す冷却構造において、電子部品3,4としては、作動時に冷却が必要な熱を生じ、冷却の対象となる発熱部品3と、冷却が必要な熱を実質的に生じず、冷却の対象とならない非冷却部品4と、が基板1上に配置されている。
【0019】
また、図1に示す冷却構造において、放熱部材5,6としては、熱伝導率が高い材料で形成された単純形状の伝熱ブロック5と、熱伝導率が高い材料で形成された薄層状の伝熱材6と、が発熱部品3と筐体2との間に配置されている。
【0020】
筐体2は、中空構造に設けられており、天井面が基板1に対向して配置されている。図1に示す冷却構造において、筐体2は、発熱部品3が生じた熱を外部に放熱する放熱部として機能する。
【0021】
図1には、基板上に配置された発熱体を冷却する冷却構造の一例として、熱を生じる発熱部品3が配置されたプリント回路板を示している。図1に示す冷却構造は、電子部品である発熱部品(発熱体)3が生じた熱を、放熱部材5,6を介して筐体2に伝達し、筐体2から外部に放熱する構造とされている。
・・・
【0028】
伝熱ブロック5は、発熱体である発熱部品3が生じた熱を放熱部に向けて熱伝導させるための部材であり、熱伝導率が高い材料によってブロック状に形成される。伝熱ブロック5は、発熱部品3と筐体2との間に複数配置される。複数の伝熱ブロック5は、発熱部品3の主面に垂直な方向、すなわち、基板1に直交する法線の方向に沿って、互いに積層される。
【0029】
伝熱材6は、発熱体である発熱部品3が生じた熱を放熱部に向けて熱伝導させるための部材であり、熱伝導率が高い材料を用いて薄層状に形成される。伝熱材6は、基板1と筐体2との間において、伝熱ブロック5同士の間や、伝熱ブロック5と基板1との間や、伝熱ブロック5と筐体2との間に配置される。
【0030】
伝熱材6としては、熱伝導率が高い材料がシート状に成形された伝熱シート、熱伝導率が高い材料がシリコーン等の潤滑油と混合された伝熱グリス、熱伝導率が高い材料がバインダ等と混合された伝熱ペースト等の熱伝導性の材料を用いることができる。伝熱材6は、各部材間において、一種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
・・・
【0036】
なお、伝熱ブロック5は、冷却対象である一つの発熱部品3当たりにおいて、少なくとも基板1に直交する方向に積層される限り、その他の方向に積層されてもよい。例えば、上下に積層されている伝熱ブロック5に対して、基板1に平行な方向、例えば、前後、左右等(図1における手前、奥、左右等)に、別の伝熱ブロック5を積層してもよい。
・・・
【0042】
伝熱ブロック5は、アルミニウム、銅、銀等の熱伝導率が高い金属で形成されることが好ましく、アルミニウム合金で形成されることが特に好ましい。アルミニウム合金によると、高い熱伝導率に加え、高い機械的強度や加工性が得られる。そのため、構造が安定しており、低コストで効率的な冷却構造を実現することができる。
・・・
【0044】
伝熱材6としては、弾性を有する伝熱弾性体を、少なくとも用いることが好ましい。伝熱弾性体は、伝熱ブロック5同士の間、伝熱ブロック5と基板1との間、および、伝熱ブロック5と筐体2との間のうち、一箇所以上に配置すればよい。伝熱弾性体としては、常温において、伝熱ブロック5の重量で変形する程度の弾性を有する伝熱シート、伝熱ペースト等を用いることができる。
・・・
【0046】
積層した伝熱ブロック5を固定する方法としては、適宜の方法を用いることができる。伝熱ブロック5は、伝熱ブロック5同士の間、伝熱ブロック5と基板1との間、および、伝熱ブロック5と筐体2との間において、例えば、スクリュ、ボルトとナットや、ブラケット、コーナーブレース、接着剤等を用いて、相互に接合することができる。これらの接合法によると、伝熱ブロック5自体に大きな二次加工を施す必要がないため、低コストで冷却構造を実現することができる。」
「【図1】
[図:0001438017000001.jpg]
」
(2) 引用発明
上記(1)によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。なお、括弧内の段落番号は、引用文献1の引用箇所を示す。
「基板1と、基板1を収容する筐体2と、基板1上に配置された電子部品3,4と、電子部品が生じた熱を筐体2に向けて熱伝導させる放熱部材5,6と、を備えた冷却構造において、(【0017】)
電子部品としては、作動時に冷却が必要な熱を生じ、冷却の対象となる発熱部品3と、冷却が必要な熱を実質的に生じず、冷却の対象とならない非冷却部品4と、が基板1上に配置されており、(【0018】)
放熱部材5,6としては、熱伝導率が高い材料で形成された単純形状の伝熱ブロック5と、熱伝導率が高い材料で形成された薄層状の伝熱材6と、が発熱部品3と筐体2との間に配置されており、(【0019】)
伝熱ブロック5は、発熱体である発熱部品3が生じた熱を放熱部に向けて熱伝導させるための部材であり、アルミニウム、銅、銀等の熱伝導率が高い金属によってブロック状に形成され、伝熱ブロック5は、発熱部品3と筐体2との間に複数配置され、複数の伝熱ブロック5は、発熱部品3の主面に垂直な方向、すなわち、基板1に直交する法線の方向に沿って、互いに積層され、(【0028】、【0042】)
伝熱材6は、発熱体である発熱部品3が生じた熱を放熱部に向けて熱伝導させるための部材であり、熱伝導率が高い材料を用いて薄層状に形成され、伝熱材6としては、弾性を有する伝熱弾性体を、少なくとも用いることが好ましく、伝熱弾性体は、伝熱ブロック5同士の間、伝熱ブロック5と基板1との間、および、伝熱ブロック5と筐体2との間のうち、一箇所以上に配置すればよく、伝熱弾性体としては、常温において、伝熱ブロック5の重量で変形する程度の弾性を有する伝熱シート、伝熱ペースト等を用いることができ、(【0029】、【0044】)
伝熱ブロック5は、冷却対象である一つの発熱部品3当たりにおいて、少なくとも基板1に直交する方向に積層される限り、その他の方向に積層されてもよく、例えば、上下に積層されている伝熱ブロック5に対して、基板1に平行な方向、例えば、前後、左右等に、別の伝熱ブロック5を積層してもよく、(【0036】)
積層した伝熱ブロック5を固定する方法としては、適宜の方法を用いることができ、伝熱ブロック5は、伝熱ブロック5同士の間、伝熱ブロック5と基板1との間、および、伝熱ブロック5と筐体2との間において、例えば、スクリュ、ボルトとナットや、ブラケット、コーナーブレース、接着剤等を用いて、相互に接合することができ、これらの接合法によると、伝熱ブロック5自体に大きな二次加工を施す必要がないため、低コストで冷却構造を実現することができる(【0046】)、放熱部材5,6。」
2 引用文献2
(1) 当審拒絶理由において引用した引用文献2には、以下の記載がある。
「【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品の熱を放熱部に伝えて放熱するようにした電子部品の放熱構造に関する。
・・・
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化したいくつかの実施例について、図面を参照しながら説明する。
(1)第1の実施例
まず、本発明の第1の実施例(請求項1,2に対応)について、図1を参照して述べる。この図1は、本実施例における電子機器(電子回路ユニット)1の要部(本発明に関連する部分)の構成を概略的に示している。
【0016】
ここで、この電子機器1は、筐体2内に、プリント基板3を配設して構成されている。前記プリント基板3の表面(図で下面)のほぼ中央部には、発熱量が大きい例えばパワートランジスタ等の電子部品4が実装されている。尚、図示はしないが、このプリント基板3には、前記電子部品4以外にも、各種部品が実装されて電子回路が構成されている。また、前記筐体2は、熱伝導性の良い金属例えばアルミニウム製であり、本実施例では、この筐体2が放熱部としても機能するようになっている。筐体2の上面開口部には蓋2aが設けられる。
【0017】
さて、この電子機器1にあっては、前記電子部品4の発熱が自身や他の電子部品等に悪影響を及ぼさないように、電子部品4の熱を前記筐体2の外壁面から外部に放熱することが行われる。本実施例では、以下のような放熱構造が設けられている。
【0018】
即ち、本実施例に係る放熱構造では、良熱伝導性を有する金属材料例えばアルミニウム(押出成型品)からなる、複数個この場合2個の伝熱ブロック5,6(第1の伝熱ブロック5、第2の伝熱ブロック6と称する)が用いられる。前記電子部品4の熱は、第1の伝熱ブロック5、第2の伝熱ブロック6を順に介して、放熱部としての前記筐体2の壁面に伝えられるようになっている。
【0019】
このとき、前記第1の伝熱ブロック5は、全体として矩形ブロック状をなし、その下面側には、図で前後方向に延びて、複数本この場合3本の凹溝5aが比較的深く形成されている。従って、前記凹溝5a以外の部分が、下方に凸となるこの場合4本の凸条5bとされ、それら凸条5b及び凹溝5aがほぼ同等の幅で交互(いわば櫛歯状)に設けられていることになる。この第1の伝熱ブロック5の上面は、前記電子部品4の下面(放熱面)に例えばロウ付けにより固着されている。
【0020】
一方、前記第2の伝熱ブロック6は、全体として前記第1の伝熱ブロック5よりも図で左右方向にやや大きい矩形ブロック状をなし、その上面側には、図で前後方向に延びて、5個の凸条6b及び4個の凹溝6aが、交互に且つ前記凸条5b及び凹溝5aとほぼ同等の幅及び深さ(高さ)で形成されている。この第2の伝熱ブロック6の下面は、前記筐体2の内底面に例えばロウ付けにより固着されている。
【0021】
これにて、前記第1の伝熱ブロック5と第2の伝熱ブロック6とは、凸条5bが凹溝6aに、凸条6bが凹溝5aに、夫々相互に嵌合することにより組合わされ、熱的に接続される。この場合、凹溝5a、6aの底部と凸条6b、5bの先端部との間は夫々隙間を有しており、凹溝5a、6aと凸条6b、5bとは、壁面同士が接触するようになっている。さらに本実施例では、伝熱ブロック5、6同士間の接触面、つまり凹溝5a、6a及び凸条6b、5bの側壁面に、熱伝導性及び潤滑性の良い液体、例えばシリコングリス(放熱グリス)が塗布されている。
【0022】
上記構成においては、電子部品4の熱が、良熱伝導性を有する第1及び第2の伝熱ブロック5及び6を順に介して、放熱部としての筐体2に伝えられて放熱が行われるのであるが、このとき、伝熱ブロック5、6間は凹溝5a、6a及び凸条6b、5bの壁面同士が接触して熱を伝えるので、平らな一つの面で接触する場合と比べて接触面積が著しく大きくなり、高い伝熱効率ひいては放熱効率を得ることができる。これと共に、電子部品の放熱面に対して伝熱用の舌片部を押付ける場合と異なり、凹溝5a、6a及び凸条6b、5bの壁面に作用する圧力は各伝熱ブロック5、6内で釣合っており、電子部品4等に余分な応力が作用することはない。
【0023】
そして、伝熱ブロック5、6は凹溝5a、6a及び凸条6b、5bの延びる方向(前後方向)に相互に動くことが可能であり、また凹溝5a、6aの深さ方向(上下方向)についても伝熱ブロック5、6相互間でのずれ動きが可能となる。従って、電子部品に対して伝熱用の舌片部を隙間なく密着させるため各部の組付けに高い寸法精度が必要となる構成とは異なり、伝熱ブロック5、6間における多少の位置ずれを吸収することができるので、組付けにおける各部の高い寸法精度は必要なくなる。しかもこのとき、伝熱ブロック5、6間の接触面に熱伝導性及び潤滑性の良いシリコングリスを塗布するようにしたので、熱を効率的に伝えながらも、伝熱ブロック5、6間でのずれ動きを滑らかにすることができる。
【0024】
この結果、本実施例によれば、従来の放熱構造のような、各部の組付けに高い寸法精度が必要となると共に、電子部品に余分な応力が作用するためその応力に耐え得る構造としなければならなかったものと異なり、効率の良い放熱を行うことができながらも、電子部品4に余分な応力を作用させることなく済ませることができ、また各部の組付けにさほどの高い寸法精度を必要としなくなるという優れた効果を得ることができるものである。特に本実施例では、両伝熱ブロック5、6を、アルミの押出成型品としたことにより、それらの形成を容易に行うことができる利点も得ることができる。」
「【図1】
[図:0001438017000002.jpg]
」
(2) 上記(1)によれば、引用文献2には、「第1の伝熱ブロック5、第2の伝熱ブロック6が用いられる放熱構造において、前記第1の伝熱ブロック5の下面側には、凸条5b及び凹溝5aがほぼ同等の幅で交互に設けられ、前記第2の伝熱ブロック6の上面側には、凸条6b及び4個の凹溝6aが形成され、前記第1の伝熱ブロック5と第2の伝熱ブロック6とは、凸条5bが凹溝6aに、凸条6bが凹溝5aに、夫々相互に嵌合することにより組合わされ、熱的に接続されること」が記載されている。
3 引用文献3
(1) 当審拒絶理由において引用した引用文献3には、以下の記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体素子の冷却機構に関する。
・・・
【0006】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図1により説明する。図示しない一層以上の配線層を有する配線基板6上に半導体ペレット4が、例えば半田材料より成るマイクロ接続部5を介してフェイスダウンで搭載されている。半導体ペレット4背面には片面マイクロフィン3の片面がろう付けされ、さらに、該片面マイクロフィン3の反対面側フィン部が両面マイクロフィン2の一方のフィン部に噛み合されている。一方、冷媒入出口8より水等の冷媒を循環させて熱交換を行う液冷ジャクット7の底面にも片側マイクロフィン1の片面がろう付けされ、該片側マイクロフィン1の反対面側フィン部は、前記両面マイクロフィン2の他方のフィン部に噛み合されている。従って、半導体ペレット4背面にろう付けされた片側マイクロフィン3と両面マイクロフィン2との噛み合わせ方向と、液冷ジャクット7の底面にろう付けされた片側マイクロフィン1と両面マイクロフィン2との噛み合わせ方向とは、それらフィン部の並びが直角に噛み合されていることになる。上記片側マイクロフィン1,両側マイクロフィン2,および片側マイクロフィン3には、半導体ペレット4と熱膨張数が近く、しかも、熱伝導度の高い材料を使用し、例えば半導体ペレット4が単結晶Siの場合は、AlN,SiC等を使用するとよい。また、各フィン部の噛み合せには上下方向にクリアランスを設けるとよい。半導体ペレット1は、例えばシリコン単結晶基板から成り、周知の技術によってその内部には多数の回路素子が形成され、1つの回路機能が与えられている。回路素子の具体例は、例えばバイポーラまたはMOSトランジスタから成り、これらの回路素子によって、例えば論理回路およびメモリの回路機能が形成されている。本実施例によれば、半導体ペレット4から液冷ジャケット7に至る伝熱経路を三軸方向にフレキシブルかつ低熱抵抗で達成できる効果がある。図2は図1の変形例であり、片側マイクロフィン1,両側マイクロフィン2,および片側マイクロフィン3の噛み合せ部分に高熱伝導材例えば高熱伝導性グリース9を充填したものである。上記によれば、各マイクロフィン間の接触熱抵抗を低減できるほか、噛み合せ部がスライドする時の摩擦を低減する潤滑作用の効果もある。図3は、図1において可動伝熱機能を司る主要部品の分解構成図を示している。本発明によれば、片側マイクロフィン1,両側マイクロフィン2,および片側マイクロフィン3を、x,y,zの三軸方向に可動としたことにより、半導体ペレット4から液冷ジャケット7に至る伝熱経路における熱ストレス等を吸収できるので、マイクロ接続部5を長寿命化できる効果がある。また、片側マイクロフィン3を半導体ペレット4に固着し、また、片側マイクロフィン1を液冷ジャケット7に固着したので、接触熱抵抗を低減できる。以上本発明者によってなされた発明を実施例にもとずき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。以上の説明では主として本発明者によってなされた発明をその背景となった利用分野である半導体ペレットに適用した場合について説明したが、それに限定されるものではなく、例えば、半導体パッケージなどにも適用できる。
【0007】
【発明の効果】本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記のとおりである。本発明によれば、熱接続部をx,y,zの三軸方向に可動としたことにより、熱ストレス等を吸収できるので、マイクロ接続部を長寿命化できる効果がある。また、伝熱用接触面積を大きくとることのできるマイクロフィンの噛み合せ以外の伝熱面をろう材を介して固着することにより接触熱抵抗を低減できる効果もある。」
「【図1】
[図:0001438017000003.jpg]
【図2】
[図:0001438017000004.jpg]
【図3】
[図:0001438017000005.jpg]
」
(2) 上記(1)によれば、引用文献3には、「片面マイクロフィン3のフィン部が両面マイクロフィン2の一方のフィン部に噛み合され、片側マイクロフィン1のフィン部は、前記両面マイクロフィン2の他方のフィン部に噛み合される構成により、各マイクロフィン間の接触熱抵抗を低減できること」が記載されている。
4 引用文献4
(1) 当審拒絶理由において引用した引用文献4には、以下の記載がある。
「第2図は、本考案に係る積層型放熱フィンの斜視図を示す。
同図において、積層型放熱フィン11は、複数の放熱フィンユニット12から構成されている。
この放熱フィン11の両側には、嵌合積層部13、13が形成されている。
すなわち、この嵌合積層部13、13は、その一端に長手方向に沿って、開口部より内部の方が拡径するアリ溝14が設けられ、他端には、アリ溝14に嵌合する突条15が同じくその長手方向に沿って設けてある。
なお、このアリ溝14および突条15の形状は、特に限定されるものではないが、例えば、第3図に示すようにそれらアリ溝14および突条15に連なる両端面をテーパ状に形成した方が後述のカシメが確実になされ結合部の信頼性が向上する。
また、第4図に示すように放熱フィンユニット12の一側面のみに積層嵌合部13を設け、放熱フィンの製作および組立原価の低減に寄与することも可能である。
また、上記の放熱フィンユニット12は、一般に複数の放熱ヒレ16が設けられるが、特にこの放熱ヒレ16を設けず、平板状のものであっても良い。
上記の構成により、所定の放熱フィンを組立る場合には、放熱フィンユニット12の突条15を連結すべき他のユニット12のアリ溝14内にその長手方向端部から順次挿入し、所定幅を得るようにすれば良い。
その後、図示、矢印方向から加圧力を加え、嵌合積層部13のカシメ作業を行なうが、この積層部13をロー付することも可能である。
角ユニットを結合後、必要に応じて半導体装置の取付け面を平坦に加工する。
第5図は、本考案の第2の実施例を示し、この実施例では、嵌合積層部13aを放熱フィンユニット12aの中央部に設け、この積層部13aから水平方向に伸びる放熱ヒレ16aを設けたものである。
この実施例でも、所定数の放熱フィンユニット13aをその嵌合部13aにおいて互いに連結し、その両端から加圧力を加えてカシメて全体を一体に強固に結合する。
他の実施例として(図示省略)放熱フィンユニットを所定数連結する時に嵌合部に絶縁性のシート(例えばポリイミド樹脂)を一ケ所もしくは数ケ所挿入することによって、一体的に形成した放熱フィンが互いに電気的に絶縁分離できる。
こうして互いに絶縁され、かつ一体的に形成された放熱フィンには非絶縁型の半導体装置を複数個載置することが可能となり、従来、複数個必要としていた放熱フィンを一個にすることで省スペースが実現できることとなる。
なお、放熱フィンユニット12の長手方向の寸法は、数m程度であり、これらが一体的に押出しあるいは引抜き加工によって形成される。
したがって、長手方向の放熱フィンの寸法は、必要に応じてその長さを決定し、所定の位置で切断して使用すれば良い。
[考案の効果]
上記のように本考案は、放熱フィンユニットに嵌合積層部を設け、この嵌合積層部を互いに一体的に結合することにより、任意の大きさ、すなわち、幅方向のあるいは高さ方向の寸法を変え得る放熱フィンを構成することが可能となる。
したがって、発熱量大きな半導体装置をマウントする場合にもそれに応じた放熱フィンを設計することが可能となり、金型による制限を受けることなく、設計の自由度が増大する。
さらに、本考案は、規格化された複数個の放熱フィンユニットを連結するものであるから、金型自体は上記ユニットを製作し得る大きさがあれば良い。
したがって金型の製作原価を低減できると共にその種類も幅方向あるいは高さ方向いずれかを変え得るものを用意すれば良いと言う効果を有する。」
(第3頁10行目~第7頁第5行)
「
[図:0001438017000006.jpg]
[図:0001438017000007.jpg]
」
(2) 上記(1)によれば、引用文献4には、「複数の放熱フィンユニット12から構成される積層型放熱フィン11において、放熱フィン11の両側に形成される嵌合積層部13、13には、一端に長手方向に沿ってアリ溝14が設けてあり、他端には、アリ溝14に嵌合する突条15が長手方向に沿って設けてあり、放熱フィンユニット12の突条15を連結すべき他のユニット12のアリ溝14内に順次挿入することで、積層型放熱フィン11を組み立てること」が記載されている。
5 引用文献5
(1) 本願の出願前に発行された文献である特開2019-187105号公報(以下「引用文献5」という。)には、以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却機能を備えた交流電力と直流電力の変換を行う電力変換装置に関するものである。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
素子冷却方式として自然空冷方式や、強制空冷、強制水冷方式といった冷却方式がある。強制空冷方式は、例えば半導体素子に接触するヒートシンクに風を強制的に当てることで素子温度を下げる方式である。また、強制水冷方式は半導体素子に接触するヒートシンク内に水路を作り、水路に水を流すことで素子温度を下げる方式である。
・・・
【0010】
そこで、本発明はこの欠点を解決するためになされたものであり、電力変換装置内部に温度センサを配置することなく半導体素子の温度ストレスを低減し、さらに、効率を悪化させることなく電力変換装置を駆動することが可能となる。
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【発明を実施するための形態】
・・・
【0054】
さらに、図8は実施例1に係る冷却装置を示すものであり、半導体素子102は水冷用ヒートシンク103d上に配置され、水冷用ヒートシンク103d内には入水部103eから103fの主力部までの水路に水が流れることで冷却される。水冷ヒートシンクの熱抵抗は、入水部の流量と水路断面積で決定される流速で決まり、流量を増加させることで熱抵抗を下げることが可能となる。このように、強制的にファンで空冷する場合や水冷で冷却する場合、冷却ファンや水冷ポンプを調整することにより冷却風や冷却水の流速を変え、冷却能力を可変にすることが可能になる。この可変冷却能力を周囲温度が高い場合に高く設定し、より半導体素子の接合温度を下げることで、電力変換効率を悪化することなく電力変換装置を駆動することが可能となる。また、周囲温度が低い場合、冷却能力を低く設定することで、冷却システムの電源で発生する損失を抑制することもできる。」
「
[図:0001438017000008.jpg]
」
(2) 上記(1)によれば、引用文献5には、「水冷用ヒートシンク」が記載されている。
第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1) 引用発明の「放熱部材5,6」は、「基板1上に配置された電子部品が生じた熱を筐体2に向けて熱伝導させる」ものである。
そして、引用発明では、「電子部品としては、作動時に冷却が必要な熱を生じ、冷却の対象となる発熱部品3と、冷却が必要な熱を実質的に生じず、冷却の対象とならない非冷却部品4と、が基板1上に配置されて」いるから、「放熱部材5,6」は、電子部品である発熱部品3を冷却するための構成、すなわち、ヒートシンクであるといえる。
そうすると、引用発明の「放熱部材5,6」は、本願発明と同様、「電子部品を冷却するヒートシンク」であるといえる。
(2) 引用発明の「伝熱ブロック5」は、「発熱体である発熱部品3が生じた熱を放熱部に向けて熱伝導させるための部材であ」るから、本願発明と同様、「放熱ブロック部」であるといえる。
(3) 引用発明の「伝熱材6」は、「発熱体である発熱部品3が生じた熱を放熱部に向けて熱伝導させるための部材であ」り、「弾性を有する伝熱シート」であるから、本願発明と同様、「弾性のある」「放熱シート」であるといえる。
(4) 引用発明の「伝熱ブロック5」は、「発熱部品3と筐体2との間に複数配置され」、「複数の伝熱ブロック5は、発熱部品3の主面に垂直な方向、すなわち、基板1に直交する法線の方向に沿って、互いに積層され」ており、「伝熱材6」は、「伝熱ブロック5同士の間、伝熱ブロック5と基板1との間、および、伝熱ブロック5と筐体2との間のうち、一箇所以上に配置」されるものである。
そうすると、引用発明では、発熱部品3と筐体2との間に、複数の伝熱ブロック5が配置され、伝熱ブロック5同士の間に、複数の伝熱材6が配置されているといえる。
そして、引用発明では、「基板1に直交する法線の方向に沿って」、複数の伝熱ブロック5が積層されているのであるから、複数の伝熱ブロック5と複数の伝熱材6は、積層ユニットとして高さ方向に積層されているといえる。
したがって、引用発明の複数の「伝熱ブロック5」及び複数の「伝熱材6」を有する「放熱部材5,6」は、本願発明と同様、「複数の放熱ブロック部と、弾性のある複数の放熱シートと、を備える積層ユニットを備え」、「前記積層ユニットにおいて、前記複数の放熱ブロック部と前記複数の放熱シートとが高さ方向に積層されて」いるといえる。
(5) 以上によれば、本願発明と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
[一致点]
「電子部品を冷却するヒートシンクであって、
複数の放熱ブロック部と、弾性のある複数の放熱シートと、を備える積層ユニット
を備え、
前記積層ユニットにおいて、前記複数の放熱ブロック部と前記複数の放熱シートとが高さ方向に積層されている、
ヒートシンク。」
[相違点1]
本願発明は、「前記電子部品の上面に沿って、前記積層ユニットが並」ぶのに対して、引用発明は、そのような特定はない点。
[相違点2]
放熱ブロック部について、本願発明は、「前記高さ方向を向く面に、溝加工を有し」、さらに「水平方向を向く面に、溝加工を有し」ているのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。
[相違点3]
放熱ブロック部について、本願発明は、「水冷ブロックである」のに対し、引用発明は、そのような特定がない点。
2 判断
(1) 相違点1について
引用発明の「伝熱ブロック5」は、「冷却対象である一つの発熱部品3当たりにおいて、少なくとも基板1に直交する方向に積層される限り、その他の方向に積層されてもよく、例えば、上下に積層されている伝熱ブロック5に対して、基板1に平行な方向、例えば、前後、左右等に、別の伝熱ブロック5を積層してもよ」いものである。
また、引用文献1の図1(上記第4の1(1)参照。)をみると、電子部品である発熱部材3の上面に、伝熱材6と伝熱ブロック5が交互に高さ方向に積層ユニットとして積層されていることが理解できる。
そうすると、引用発明において、電子部品である発熱部材3の上面に沿って、高さ方向に積層された積層ユニットの前後、左右に、別の積層ユニットが並ぶように構成することは、当業者が容易になし得たことである。
(2) 相違点2について
引用発明の「積層した伝熱ブロック5」は、「伝熱ブロック5同士の間」で固定されるものである。
そして、引用発明の「積層した伝熱ブロック5を固定する方法」は、「適宜の方法を用いることができ」、「例えば、スクリュ、ボルトとナットや、ブラケット、コーナーブレース、接着剤等を用いて、相互に接合することができ」るものであるところ、積層される各部材の表面に溝加工を施し、各部材の表面に形成された溝同士を相互に嵌合することで固定することは、上記第4の2(2)、3(2)、4(2)のとおり、周知技術である。
そうすると、引用発明において、前記周知技術を採用し、「伝熱ブロック5」(放熱ブロック部)の「高さ方向を向く面」と「水平方向を向く面」に溝加工を有するように構成することは、当業者が容易になし得たことである。
(3) 相違点3について
引用発明の「伝熱ブロック5」は、「電子部品が生じた熱を筐体2に向けて熱伝導させる放熱部材5,6」の一部であり、電子部品を冷却するためのものである。
そして、水冷用ヒートシンクは、上記第4の5(2)のとおり、本願の出願前に周知技術である。
そうすると、引用発明において、「伝熱ブロック5」(放熱ブロック部)を水冷ブロックとすることは、当業者が容易になし得たことである。
(4) 小括
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2~5に記載された周知技術に基づいて、当業者であれば容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-005880