2021-014120
モリブデン酸金属及びそれを作る方法
- 審判番号
- 2021-014120
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-567499外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年10月18日
- 審決日
- 2022年10月03日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .4 -Z (C01G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法39条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第39条第2項、特許法第39条第6項、特許法第39条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 16項目
第1 手続の経緯
折りたたみ中(クリックで表示)
本願は、2018年(平成30年)2月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年2月24日、アメリカ合衆国、同年11月30日、アメリカ合衆国、2018年2月22日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、令和2年10月16日付けで拒絶の理由が通知されると同時に指令書により協議をしてその結果を届け出るべき旨を出願人に命じ、令和3年4月20日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年6月15日付けで拒絶査定(謄本送達日同年6月17日。以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して同年10月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
第2 本願発明について
1 本願発明
本願請求項1~76に係る発明は、令和3年4月20日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1~76に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、下記の第3の「拒絶の理由の概要」の理由5で対象とされている請求項のうちの請求項29及び30に係る発明(以下、「本願発明29」及び「本願発明30」という。)と、請求項29が引用する請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、以下のとおりである。なお、下線は、当審において付与した。
「 【請求項1】モリブデン酸金属(金属-Mo)を生成するための方法であって、液体媒体中の金属モリブデン-99(Mo-99)材料を第1の酸と反応させて、Mo組成物を得る工程、前記Mo組成物と金属源を合わせて、金属-Mo組成物を得る工程、及び前記金属-Mo組成物を塩基でpH調整して、複数の金属-Mo微粒子を沈殿させる工程を含む、方法。」
「 【請求項29】前記金属源が、アルミニウム、ケイ素、スズ、ゲルマニウム、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、鉄、銅、ニオブ、ロジウム、ガドリニウム、トリウム、セリウム、ウラン、プラセオジム、テルビウム及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。」
「 【請求項30】前記チタンが、塩化チタン(III)(TiCl3)、塩化チタン(II)(TiCl2)、四塩化チタン(TiCl4)及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるチタン塩である、請求項29に記載の方法。」
2 パリ条約による優先権の主張の基礎となる出願の明細書に記載された事項
(1)本願は、上記第1の「手続の経緯」で記載したとおり、2017年2月24日、同年11月30日、2018年2月22日を優先日とする複数の基礎出願を基礎とするパリ条約による優先権を主張するものであるところ、その一つである2018年2月22日を優先日とする優先権主張番号15/902,140の出願の明細書の特許請求の範囲の請求項1、29及び30、並びに[0002]及び[0056]には、次の記載がある。なお、下線は、当審において付与した。
「1. A process for producing a metal-molybdate (metal-Mo), comprising:reacting a metal molybdenum (Mo) material in a liquid medium with a first acid to provide a Mo composition;combining the Mo composition with a metal source to provide a metal-Mo composition; andpH adjusting the metal-Mo composition with a base to precipitate a plurality of metal-Mo particulates.」
(当審訳:モリブデン酸金属(金属-Mo)を生成するための方法であって、
液体媒体中の金属モリブデン(Mo)材料を第1の酸と反応させて、Mo組成物を得る工程、
前記Mo組成物と金属源を合わせて、金属-Mo組成物を得る工程、及び前記金属-Mo組成物を塩基でpH調整して、複数の金属-Mo微粒子を沈殿させる工程を含む、方法。)
「29. The process of claim 1, wherein the metal source is selected from the group consisting of Aluminum, Silicon, Tin, Germanium, Zirconium, Titanium, Hafnium, Vanadium, Chromium, Manganese, Cobalt, Nickel, Iron, Copper, Niobium, Rhodium, Gadolinium, Thorium, Cerium, Uranium, Praseodymium, Terbium, and a combination thereof.」
(当審訳:前記金属源が、アルミニウム、ケイ素、スズ、ゲルマニウム、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、鉄、銅、ニオブ、ロジウム、ガドリニウム、トリウム、セリウム、ウラン、プラセオジム、テルビウム及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。)
「30. The process of claim 29, wherein the titanium is a titanium salt selected from the group consisting of titanium(III) chloride (TiCl3), titanium(II) chloride (TiCl2), titanium tetrachloride (TiCl4), and a combination thereof.」
(当審訳:前記チタンが、塩化チタン(III)(TiCl3)、塩化チタン(II)(TiCl2)、四塩化チタン(TiCl4)及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるチタン塩である、請求項29に記載の方法。)
「 TECHNICAL FIELD[0002] The presently-disclosed invention relates generally to metal-molybdate materials suitable for use in technetium-99m generators (Mo-99/Tc-99m generators) and methods for making the same.」
(当審訳:ここで開示される発明は、全般的に、テクネチウム-99mジェネレータ(Mo-99/Tc-99mジェネレータ)における使用に適しているモリブデン酸金属材料、及び、それを作る方法に関する。)
「[0056] FIG.1 illustrates an example embodiment in accordance with the invention. In particular, FIG.1 illustrates a process including an optional step (as indicated by the broken lines) of irradiating a metal molybdenum target to provide a metal Mo material at operation 10 prior to combination with the metal Mo material (e.g., received from operation 10 or alternatively received from a third party) in a liquid medium with at least a first acid to provide a Mo composition at operation 20.」
(当審訳:図1は、本発明に関する実施例を表している。特に、図1は、操作10で、金属モリブデンターゲットに放射線を照射して、金属Mo材料を得る任意選択の工程(破線により示されている)を含み、その後、操作20で、液体媒体中の金属Mo材料(例えば、操作10から入手した、あるいは第三者から入手した)を少なくとも第1の酸と反応させて、Mo組成物を得る方法を表している。)
(2)その余の基礎出願について
2017年2月24日を優先日とする優先権主張番号62/463,020の出願の明細書の特許請求の範囲の請求項1には「(a) dissolving a metal molybdenum-99 (Mo-99) material in a liquid medium with a first acid to provide a Mo-99 composition」(当審訳:(a)液体媒体中において、金属モリブデン-99(Mo-99)材料を第1の酸とともに溶解させて、Mo-99組成物を得る工程)、2017年11月30日を優先日とする優先権主張番号62/592,737の出願の明細書の特許請求の範囲の請求項1には「(a) dissolving a metal molybdenum (Mo) material in a liquid medium with a first acid to provide a Mo composition」(当審訳:(a)液体媒体中において、金属モリブデン(Mo)材料を第1の酸とともに溶解させて、Mo組成物を得る工程)と記載されており、前者の明細書及び後者の明細書とも、液体媒体中の金属モリブデン(Mo)又は金属モリブデン-99(Mo-99)材料を第1の酸と「反応させる」(reacting)ことについては一切記載されておらず、「溶解させる」(dissolving)ことを「反応させる」(reacting)ことと解することができる記載もない。
3 パリ条約による優先権の主張の効果(特許性の判断の基準日)について
上記1及び2から、本願発明1並びに本願発明29及び30は、2018年2月22日を優先日とする優先権主張番号15/902,140の出願の明細書に記載されており、その前の2017年2月24日を優先日とする優先権主張番号62/463,020の出願の明細書、及び2017年11月30日を優先日とする優先権主張番号62/592,737の出願の明細書には記載されていないことから、特許法第39条第2項の適用にあたっては、本願発明1並びに本願発明29及び30に係る出願は2018年2月22日にされたものとして扱うこととする。
第3 拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、令和2年10月16日付け拒絶理由通知書に記載した理由3~5であるところ、そのうちの理由5の概要は、以下のとおりである。
5.(同日出願)この出願の下記の請求項に係る発明は、同一出願人が同日出願した下記の出願に係る発明と同一と認められるから、この通知書と同日に発送した特許庁長官名による指令書に記載した届出がないときは、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項29~33、35
・引用文献等4
<引用文献等一覧>
1.~3.(省略)
4.特願2019-567498号(特表2020-514244号)
なお、令和2年10月16日付け拒絶理由通知書では、特願2019-567498号(以下、「同日出願4」という。)の請求項1に「モリブデン酸チタン(Ti-Mo)を生成するための方法であって、液体媒体中の金属モリブデン-99(Mo-99)材料を第1の酸と反応させて、Mo組成物を得る工程、前記Mo組成物とチタン源を合わせて、Ti-Mo組成物を得る工程、及び前記Ti-Mo組成物を塩基でpH調整して、複数のTi-Mo微粒子を沈殿させる工程を含む方法。」が記載されているほか、チタン源として塩化チタンを用いること等が同請求項18等に記載されていることを指摘している。
第4 同日出願4の特許請求の範囲の記載について
1 同日発明について
同日出願4の請求項1~69に係る発明は、同日出願4の審査過程において令和3年4月20日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~69に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。そして上記の第3の「拒絶の理由の概要」の理由5で指摘された請求項のうち請求項1、18及び19に係る発明(以下、「同日発明1」、「同日発明18」及び「同日発明19」という。)は、以下のとおりである。なお、下線は当審において付与したものである。
「 【請求項1】モリブデン酸チタン(Ti-Mo)を生成するための方法であって、液体媒体中の金属モリブデン-99(Mo-99)材料を第1の酸と反応させて、Mo組成物を得る工程、前記Mo組成物とチタン源を合わせて、Ti-Mo組成物を得る工程、及び前記Ti-Mo組成物を塩基でpH調整して、複数のTi-Mo微粒子を沈殿させる工程を含む方法。」
「 【請求項18】前記チタン源が、塩化チタンを含む、請求項1に記載の方法。」
「 【請求項19】前記塩化チタンが、塩化チタン(III)(TiCl3)、塩化チタン(II)(TiCl2)、四塩化チタン(TiCl4)、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項18に記載の方法。」
2 同日出願4の基礎出願の明細書に記載された事項
(1)同日出願4は、2017年2月24日、同年11月30日、2018年2月22日を優先日とする複数の基礎出願を基礎とするパリ条約による優先権を主張するものであるところ、その一つである2018年2月22日を優先日とする優先権主張番号15/902,086の出願の明細書の特許請求の範囲の請求項1、18及び19、並びに[0002]及び[0050]には、次の記載がある。
「1. A process for producing a titanium-molybdate (Ti-Mo), comprising:reacting a metal molybdenum (Mo) material in a liquid medium with a first acid to provide a Mo composition;combining the Mo composition with a titanium source to provide a Ti-Mo composition; andpH adjusting the Ti-Mo composition with a base to precipitate a plurality of Ti-Mo particulates.」
(当審訳:モリブデン酸チタン(Ti-Mo)を生成するための方法であって、
液体媒体中の金属モリブデン(Mo)材料を第1の酸と反応させて、Mo組成物を得る工程、
前記Mo組成物とチタン源を合わせて、Ti-Mo組成物を得る工程、及び
前記Ti-Mo組成物を塩基でpH調整して、複数のTi-Mo微粒子を沈殿させる工程を含む方法。)
「18. The process of claim 1, wherein the titanium source comprises a titanium chloride.」
(当審訳:前記チタン源が、塩化チタンを含む、請求項1に記載の方法。)
「19. The process of claim 18, wherein the titanium chloride comprises titanium(III) chloride (TiCl3), titanium(II) chloride (TiCl2), titanium tetrachloride (TiCl4), or any combination thereof.」
(当審訳:前記塩化チタンが、塩化チタン(III)(TiCl3)、塩化チタン(II)(TiCl2)、四塩化チタン(TiCl4)、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項18に記載の方法。)
「 TECHNICAL FIELD[0002] The presently-disclosed invention relates generally to metal-molybdate materials suitable for use in technetium-99m generators (Mo-99/Tc-99m generators) and methods for making the same.」
(当審訳:ここで開示される発明は、全般的に、テクネチウム-99mジェネレータ(Mo-99/Tc-99mジェネレータ)における使用に適しているモリブデン酸チタン材料、及び、それを作る方法に関する。)
「[0050] FIG.1 illustrates an example embodiment in accordance with the invention. In particular, FIG.1 illustrates a process including an optional step (as indicated by the broken lines) of irradiating a metal molybdenum target to provide a metal Mo material at operation 10 prior to reaction of the metal Mo material (e.g., received from operation 10 or alternatively received from a third party) in a liquid medium with at least a first acid to provide a Mo composition at operation 20.」
(当審訳:図1は、本発明に関する実施例を表している。特に、図1は、操作10で、金属モリブデンターゲットに放射線を照射して、金属Mo材料を得る任意選択の工程(破線により示されている)を含み、その後、操作20で、液体媒体中の金属Mo材料(例えば、操作10から入手した、あるいは第三者から入手した)を少なくとも第1の酸と反応させて、Mo組成物を得る方法を表している。)
(2)その余の基礎出願について
2017年2月24日を優先日とする優先権主張番号62/463,020の出願の明細書の特許請求の範囲の請求項1には「(a) dissolving a metal molybdenum-99 (Mo-99) material in a liquid medium with a first acid to provide a Mo-99 composition」(当審訳:(a)液体媒体中において、金属モリブデン-99(Mo-99)材料を第1の酸とともに溶解させて、Mo-99組成物を得る工程)、2017年11月30日を優先日とする優先権主張番号62/592,737の出願の明細書の特許請求の範囲の請求項1には「(a) dissolving a metal molybdenum (Mo) material in a liquid medium with a first acid to provide a Mo composition」(当審訳:(a)液体媒体中において、金属モリブデン(Mo)材料を第1の酸とともに溶解させて、Mo組成物を得る工程)と記載されており、前者の明細書及び後者の明細書とも、液体媒体中の金属モリブデン(Mo)又は金属モリブデン-99(Mo-99)材料を第1の酸と「反応させる」(reacting)ことについては一切記載されておらず、「溶解させる」(dissolving)ことを「反応させる」(reacting)ことと解することができる記載もない。
加えて、前者の明細書には「producing a titanium-molybdate-99 (Ti-Mo-99)」(当審訳:モリブデン酸チタン-99(Ti-Mo-99)を生成する)こと、後者の明細書には「producing a titanium-molybdate (Ti-Mo)」(当審訳:モリブデン酸チタン(Ti-Mo)を生成する)ことがそれぞれ記載されているものの、チタン以外の金属について具体的にモリブデン酸金属(金属-Mo)を生成することについて記載されていない。
3 パリ条約による優先権の主張の効果(特許性の判断の基準日)について
上記1及び2によれば、同日発明1、18及び19は、2018年2月22日を優先日とする優先権主張番号15/902,086の出願の明細書に記載されており、その前の2017年2月24日を優先日とする優先権主張番号62/463,020の出願の明細書、及び2017年11月30日を優先日とする優先権主張番号62/592,737の出願の明細書には記載されていないことから、特許法第39条第2項の規定の適用にあたっては、同日発明1、18及び19に係る出願は2018年2月22日にされたものとして扱うこととする。
第5 当審の判断
1 本願発明30について
(1)対比・判断
本願発明30は、本願発明1における「金属源」を、本願発明29において、複数の選択肢からなる「金属源」のうち、「チタン」を選択した場合を引用して、当該「チタン」が、「塩化チタン(III)(TiCl3)、塩化チタン(II)(TiCl2)、四塩化チタン(TiCl4)及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるチタン塩である」ことを特定した発明である。
一方、同日発明19は、同日発明1における「チタン源」を、同日発明18を引用して「塩化チタン」を含むものとし、さらに当該「塩化チタン」が、「塩化チタン(III)(TiCl3)、塩化チタン(II)(TiCl2)、四塩化チタン(TiCl4)及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるチタン塩である」とした発明である。
ここで、前者の「塩化チタン(III)(TiCl3)、塩化チタン(II)(TiCl2)、四塩化チタン(TiCl4)及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるチタン塩である」ことと、後者の「塩化チタン(III)(TiCl3)、塩化チタン(II)(TiCl2)、四塩化チタン(TiCl4)及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるチタン塩である」こととは、表現上の違いはあるものの、実体は同じである。
また、本願発明1と同日発明1とは、上記第2の1の【請求項1】と上記第4の1の【請求項1】とを対比してわかるとおり、前者で「金属」とされている部分がすべて後者では「チタン」又は「Ti」とされている以外、両者の構成は同じものとなっている。
そうすると、本願発明1と同日発明1とは、「金属」と「チタン」又は「Ti」という「金属源」と「チタン源」についての外形上の違いがあるにせよ、本願発明30と同日発明19では、「金属源」と「チタン源」の具体的な選択肢において一致がみられることから、両者に発明としての構成上の差異を認めることはできない。
よって、本願発明30は同日発明19と同一である。
(2)基準日について
上記第2の3及び上記第4の3で述べたとおり、本願発明30と同日発明19は、両者とも2018年2月22日が特許性の判断の基準日であることから、パリ条約第4条Bの規定を踏まえると、同一である両発明について、特許法第39条第2項に規定する「同日」に特許出願があったものということができる。
(3)請求人の主張について
請求人は、審判請求書の請求の理由において、上記第3で記載した拒絶の理由5について何ら意見を述べていない。
また、令和3年4月20日に提出された意見書では、
「審査官殿は、請求項29-33及び35に係る発明は、同一出願人が同日出願した引用文献4に係る発明と同一と認定されている。しかしながら、本発明がモリブデン酸金属を生成するための方法であるのに対し、引用文献4の発明はモリブデン酸チタンを生成するための方法であるから、本発明は、引用文献4の発明とは異なる。」
と主張しているが、上記(1)で述べたように、同日出願4(上記意見書における「引用文献4」)の特許請求の範囲には、同日発明19として、同日発明1における「チタン源」を、同日発明18を引用して「塩化チタン」を含むものとし、さらに当該「塩化チタン」が、「塩化チタン(III)(TiCl3)、塩化チタン(II)(TiCl2)、四塩化チタン(TiCl4)及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるチタン塩である」とした発明が記載されており、当該発明は、上記本願発明30と同一である。
したがって、請求人の上記「本発明がモリブデン酸金属を生成するための方法であるのに対し、引用文献4の発明はモリブデン酸チタンを生成するための方法であるから、本発明は、引用文献4の発明とは異なる」との主張は、本願の請求項1と同日出願4の請求項1との単なる文言上の差異を述べたにすぎないことから、上記当審の判断を左右するものではない。
(4)小括
以上の検討のとおり、本願発明30と同日発明19とは、同日に特許出願があったものであり、かつ、特許法第39条第2項に規定する「同一の発明」である。
そして、請求人には、令和2年10月16日付けで特許法第39条第6項による指令書が通知されているが、これを受けての協議結果の届出もなされていない。
したがって、本願発明30については、特許法第39条第7項の規定により、同第2項の協議が成立しなかったものとみなされるから、同項の規定により、本願発明30についての特許を受けることができない。
2 本願発明29について
(1)対比・判断
上述のとおり、本願発明1と同日発明1とは、上記第2の1の【請求項1】と上記第4の1の【請求項1】とを対比してわかるとおり、前者で「金属」とされている部分がすべて後者では「チタン」又は「Ti」とされている以外、何ら違いはない。
そして、本願発明29は、本願発明1における「金属源」を「前記金属源が、アルミニウム、ケイ素、スズ、ゲルマニウム、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、鉄、銅、ニオブ、ロジウム、ガドリニウム、トリウム、セリウム、ウラン、プラセオジム、テルビウム及びそれらの組合せからなる群から選択される」ものとした発明である。ここで、本願発明29におけるこの「金属源」の選択肢は、形式上又は事実上の選択肢にあたるものであって、この選択肢において「チタン」のみを選択して発明特定事項と仮定すると、本願発明29と同日発明1とは同一ということになる。
なお、日本特許庁の特許・実用新案「審査基準」の「本願発明が第39条の規定により特許受けることができないものであるか否かの判断」(第III部第4章4.3欄)では、「一方の出願の請求項に係る発明の発明特定事項が選択肢を有する場合において、選択肢中の一の選択肢のみをその選択肢に係る発明特定事項と仮定したときの請求項に係る発明と、他方の出願の請求項に係る発明との対比の結果、両者が「同一」である」場合、第39条の規定により特許を受けることができないものとされている。
(2)基準日について
上記1の(2)で述べたのと同様、本願発明29と同日発明1は、同一である発明について、特許法第39条第2項に規定する「同日」に特許出願があったものといえる。
(3)請求人の主張について
本願発明29と同日発明1についての主張も、上記1の(3)で検討した主張と事情は同じであるから、上記当審の判断を左右するものではない。
(4)小括
以上のとおりであるから、上記1において検討した本願発明30と同様の理由により、本願発明29についても、同日発明1との関係に起因して、特許を受けることができない。
第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項29及び30に係る発明は、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2021-014120