特許拒絶査定不服審判
2023-007298
リアルタイムのマッピングと位置確認のための方法及び装置
- 審判番号
- 2023-007298
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-085516外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年05月02日
- 審決日
- 2025年01月10日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .4 -Z (G09B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法39条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第39条第2項、特許法第39条第6項、特許法第39条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-85516「リアルタイムのマッピングと位置確認のための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔令和3年9月30日出願公開、特開2021-152662〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)4月11日を国際出願日とする特願2017-567094号(パリ条約による優先権主張2015年(平成27年)4月10日 欧州特許庁(EP))の一部を令和3年5月20日に新たに出願したものであって、令和3年6月18日及び同年10月4日に手続補正書が提出され、令和4年5月18日付けで拒絶理由及び同一出願人による同日出願通知(特許法第39条第6項に基づく。)が通知され、令和4年8月22日に意見書及び手続補正書が提出され、同月24日に手続補正書が提出されたが、同年12月23日付け(送達日令和5年1月5日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされた。
これに対し、令和5年5月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、さらに同年6月9日に手続補正書が提出され、令和6年10月16日付けで審尋がなされたものである。
なお、令和4年5月18日付け同一出願人による同日出願通知に対する特許法第39条7項に規定する届出、及び、令和6年10月16日付け審尋に対する応答はなかった。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明は、令和5年5月2日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されたものであるところ、請求項1、請求項3及び請求項10の記載は、次のとおりである(以下、請求項1に係る発明を「本願発明1」と、請求項1を引用する請求項3に係る発明を「本願発明3」と、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項10に係る発明を「本願発明10」という。各段落冒頭の記号は、分節するために当審にて付した。)。
「 【請求項1】
A1 方法であって、該方法は:
B (A)環境の3D参照マップが存在しない場合、前記環境の3D参照マップを構築する工程であって、該工程は、
B1 (a)3Dのスキャナーデータを提供するために、1秒につき少なくとも5つのフレームの速度でモバイルリアルタイムのレーザーレンジスキャナー(1)により環境を獲得すること、
B2 (b)前記レーザーレンジスキャナー(1)の複数の姿勢の各々に関する3Dのスキャナーデータを使用して、マップ表示を構築することであって、各々の姿勢が前記スキャナーデータにより画定される関連するポイントクラウドを持ち、前記マップ表示はネイティブに3Dポイントを取り扱うように設定されたデータ構造を有し、且つ、前記環境でマップ表示における特徴のコンパクトで密な(compact dense)リストにインデックスを付けるために使用されるスパースボクセル化構造により構成されるハイブリッド(hybrid)構造に基づいており、スケーラビリティでデータのマップサイズ及び効果的な保管とは独立したボクセル座標における一定時間のランダムアクセスを可能にすること、及び
B3 (c)マップ表示を使用して、3Dの同時の位置確認及びマッピング(3D SLAM)のフレームワークを用いる環境のための前記3D参照マップを構築することにより行われ、前記環境のための3D参照マップを構築することは:
B3-1 (i)オドメーターモジュールを使用して、ローカルマップ表示への最後のポイントクラウドの登録に基づいて、前記レーザーレンジスキャナー(1)の現行の姿勢を推定すること、
B3-2 (ii)ローカルマップ表示におけるドリフトを最小化するために、ローカル軌道最適化モジュールを使用して、前記ポイントクラウドのセットの軌道推定を改善すること、及び
B3-3 (iii)軌道のループが閉じたものを考慮する環境の全体のマップを再構築することにより大域的な軌道最適化をオフラインで行ない、それにより前記3D参照マップを形成すること、とを含んでなる、工程と、
C (B)環境の既存の3D参照マップに基づいて、前記環境のリアルタイムのマッピング、位置確認、及び変化の分析を行う工程であって、当該工程は、
C1 (d)3Dの前記スキャナーデータを提供するために、1秒につき少なくとも5つのフレームの速度でリアルタイムの前記レーザーレンジスキャナー(1)により環境を獲得すること、
C2 (e)場所認識中に、リアルタイムでスキャナーを自己位置同定するために、場所認識中の前記レーザーレンジスキャナー姿勢の予備知識無しに、環境の内部の前記レーザーレンジスキャナー(1)の現行の場所を識別することおよび、場面内の減少された探索空間を用いて前記レーザーレンジスキャナー(1)により獲得された場面のシンプル(simple)且つコンパクト(compact)な記述子を事前に計算すること、
C3 (f)環境におけるスキャナーの位置確認の判定後、最近傍情報を含むデータを利用する標準のIterative Closest Point方法を使用して、環境の前記既存の3D参照マップ内部の現行のスキャナーデータを登録することにより、スキャナー姿勢を追跡すること、
C4 (g)現行の前記スキャナーデータにおける各スキャンポイントと前記3D参照マップにおける最も近いポイントとの間の距離を計算することであって、変化の分析はこの距離に閾値を適用することにより実行され、それにより、参照モデルにおいて対応する近傍を持たない現行のスキャナーデータにおける各ポイントは、変化と考慮される、計算すること、
C5 (h)リアルタイムユーザーインターフェース上で前記3D参照マップ及び現行の前記3Dのスキャナーデータに関する情報を表示することであって、前記情報は、情報の変化あり/変化無しといった分類に従い色分けされる、表示すること、により行われる工程、と、を含んでなる、
A2 方法。」
「 【請求項3】
D 前記データ構造は、保存されたデータの5つの異なる表示を維持し、それにより各マップの更新後に内部データ表示の間の一致を認め、前記5つの異なる表示は、
D1 (i)特徴のコンパクトで密な(compact dense)リストL、及び最後の要素に対する指標Llastであって、各要素
【数2】
[図:0001422848000001.jpg]
は、世界座標の位置及び単位法線ベクトルなどの、マップ中の特徴に関連した全ての情報、及び追加情報を含んでいる、特徴のコンパクトで密な(compact dense)リストL、及び最後の要素に対する指標Llast、
D2 (ii)コンパクトで密な(compact dense)有効性マスクMであって、各要素
【数3】
[図:0001422848000002.jpg]
は、その対応するサンプル
【数4】
[図:0001422848000003.jpg]
が有効か否かを示し、mi=0,i>Llastを確かにする、ブール値である、コンパクトで密な(compact dense)有効性マスクM、
D3 (iii)ホールのリストHであって、各要素
【数5】
[図:0001422848000004.jpg]
は、
【数6】
[図:0001422848000005.jpg]
が有効ではないため
【数7】
[図:0001422848000006.jpg]
となることを示している、ホールのリストH、
D4 (iv)パラメーター化可能なセルサイズで構築され、Lにおけるその対応する特徴の指標を各セル
【数8】
[図:0001422848000007.jpg]
に保存する、スパースボクセル表示Vであって、Lにおける特徴及びVにおけるセルは、liの位置及びVのセルサイズに基づいて、1対1の様式で関連付けられる、スパースボクセル表示V、及び
D5 (v)マップ上で最近傍探索を行なうように使用され、且つ、そのメモリフットプリントを低く維持するためにLの要素を使用して構築されるkd木K
である、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載の方法。」
「 【請求項10】
E 特にGPSが繋がらない環境における、リアルタイムのマッピング、位置確認、及び変化の分析のためのモバイルレーザースキャニング装置であって、請求項1乃至9の何れか1つに記載の方法を実行するために配置される、モバイルレーザースキャニング装置。」
第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、下記の理由を含むものである。
(同日出願)この出願の請求項1ないし14に係る発明は、同一出願人が同日出願した下記の出願に係る発明と同一と認められるから、この通知書と同日に発送した特許庁長官名による指令書に記載した届出がないときは、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
1.特願2017-567094号
第4 判断
1 同日発明
原査定の理由において、本願と同一出願人が同日出願したとされた、特願2017-567094号(以下「同日出願」という。)の特許請求の範囲は、特許7270338号(登録日 令和5年4月27日、発行日 同年5月10日)に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1、請求項3、請求項4及び請求項11の記載は、次のとおりである(以下、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4に係る発明を「同日発明4」、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4を引用する請求項11に係る発明を「同日発明11」という。各段落冒頭の記号は、分節するために当審にて付した。)。
「【請求項1】
a1 特にGPSが繋がらない環境において、マッピング、位置確認、及び変化の分析を行うための方法であって、該方法は、
b (A)環境の3D参照マップが存在しない場合、前記環境の3D参照マップを構築する工程であって、当該工程は、
b1 (a)3Dスキャナーデータを提供するために、1秒につき少なくとも5つのフレームの速度でモバイルリアルタイムレーザーレンジスキャナー(1)により環境を獲得する工程、
b2-1 (b)各姿勢に関連する3Dスキャナーデータにより画定されるポイントクラウドを持つ、レーザーレンジスキャナー(1)の複数の姿勢の各々に関する3Dスキャナーデータを使用して、マップ表示を構築する工程であって、マップ表示は、領域にわたる一定時間の少なくとも5フレーム/秒での最近傍探索及びスケーラビリティにおける、データ構造へのランダムアクセスのために構成されるデータ構造を持つ、マップ表示を構築する工程、及び
b3 (c)マップ表示を使用して、3Dの同時の位置確認及びマッピング(3D SLAM)のフレームワークを用いる環境のための3D参照マップを構築する工程であって、前記環境のための3D参照マップを構築する工程は、
b3-1 (i)オドメーターモジュールを使用して、ローカルマップ表示への最後のポイントクラウドの登録に基づいて、レーザーレンジスキャナー(1)の現行の姿勢を推定する工程と
b3-2 (ii)ローカルマップ表示におけるドリフトを最小化するために、ローカル軌道最適化モジュールを使用して、ポイントクラウドのセットの軌道推定を改善する工程と、
b3-3 (iii)軌道のループが閉じたものを考慮する環境の全体のマップを再構築することにより大域的な軌道最適化をオフラインで行ない、前記3D参照マップを形成する工程とを含む、前記環境の3D参照マップを構築する工程と、
c (B)環境の既存の3D参照マップに基づいて、前記環境のリアルタイムのマッピング、位置確認、及び変化の分析を行う工程であって、当該工程は、
c1 (d)3Dスキャナーデータを提供するために、1秒につき少なくとも5つのフレームの速度でリアルタイムレーザーレンジスキャナー(1)により環境を獲得する工程、
c2 (e)場所認識中に、リアルタイムでスキャナーを自己位置特定するために、場所認識中のレーザーレンジスキャナー姿勢の予備知識無しに、場面内の減少された探索空間を用いてレーザーレンジスキャナー(1)により獲得された場面のシンプルな記述子を事前に計算し、環境の内部のレーザーレンジスキャナー(1)の現行の場所を識別する工程、
c3 (f)環境におけるスキャナーの位置確認の判定後、最近傍情報を含むデータを利用する標準のIterative Closest Point方法を使用して、環境の前記既存の3D参照マップ内部の現行のスキャナーデータを登録することにより、スキャナー姿勢を追跡する工程、
c4 (g)現行のスキャナーデータにおける各スキャンポイントと3D参照マップにおける最も近いポイントとの距離を計算する工程であって、変化の分析はこの距離に閾値を適用することにより実行され、それにより、参照モデルにおいて対応する近傍を持たない現行のスキャナーデータにおける各ポイントは、変化と考慮される、工程、
c5 (h)リアルタイムユーザーインターフェース上で3D参照マップ及び現行の3Dスキャナーデータに関する情報を表示する工程であって、前記情報は好ましくは、情報の変化あり/変化無しといった分類に従い色分けされる、工程、によって、
a2 前記環境のリアルタイムのマッピング、位置確認、及び変化の分析を行う工程と、を含んでなる、
a3 特にGPSが繋がらない環境において、マッピング、位置確認、及び変化の分析を行うための方法。」
「【請求項3】
b2-2 データ構造は、ネイティブに3Dポイントを取り扱うように設定され、且つ、マップ表示における密なもののリストにインデックスを付けるために使用されるスパースボクセル化構造により構成されるハイブリッド構造に基づいており、探索された空間にわたるスケーラビリティでデータのマップサイズ及び効果的な保管とは独立したボクセル座標における一定時間のランダムアクセスを可能にする、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。」
「【請求項4】
d データ構造は、保存されたデータの5つの異なる表示を維持し、それにより各マップの更新後に内部データ表示の間の一致を認め、前記5つの異なる表示は、
d1 (i)コンパクトで密なもののリストL、及び最後の要素に対する指標Llastであって、各要素
【数2】
[図:0001422848000008.jpg]
は、世界座標の位置及び単位法線ベクトルなどの、マップ中の特徴に関連した全ての情報、及び好ましくは追加情報を含んでいる、コンパクトで密なもののリストL、及び最後の要素に対する指標Llast、
d2 (ii)コンパクトで密な有効性マスクMであって、各要素
【数3】
[図:0001422848000009.jpg]
は、その対応するサンプル
【数4】
[図:0001422848000010.jpg]
が有効か否かを示し、mi=0,i>Llastを確かにする、ブール値である、コンパクトで密な有効性マスクM、
d3 (iii)ホールのリストHであって、各要素
【数5】
[図:0001422848000011.jpg]
は、
【数6】
[図:0001422848000012.jpg]
が有効ではないため
【数7】
[図:0001422848000013.jpg]
となることを示している、ホールのリストH、
d4 (iv)パラメーター化可能なセルサイズで構築され、Lにおけるその対応する特徴の指標を各セル
【数8】
[図:0001422848000014.jpg]
に保存する、スパースボクセル表示Vであって、Lにおける特徴及びVにおけるセルは、liの位置及びVのセルサイズに基づいて、1対1の様式で関連付けられる、スパースボクセル表示V、及び
d5 (v)マップ上で最近傍探索を行なうように使用され、且つ、そのメモリフットプリントを低く維持するためにLの要素を使用して構築されるkd木Kである、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載の方法。」
「【請求項11】
e 特にGPSが繋がらない環境における、リアルタイムのマッピング、位置確認、及び変化の分析のためのモバイルレーザースキャニング装置であって、請求項1乃至10の何れか1つに記載の方法を実行するために配置される、モバイルレーザースキャニング装置。」
2 対比分析
本願発明10と同日発明11を対比する。
(1)Bとb
Bとbは、互いに一致する。
(2)B1とb1
B1の「環境を獲得すること」は、Bの「工程」に含まれるので、実質的に「獲得する工程」を意味する。以下の項目においても同様に解する。
すると、B1とb1は、互いに一致する。
(3)B1及びB2とb1、b2-1及びb2-2
ア B2は、以下のとおり項番を付しつつ書き下す。
「B2 (b)」
ア-1 「前記レーザーレンジスキャナー(1)の複数の姿勢の各々に関する3Dのスキャナーデータを使用して、マップ表示を構築することであって」、
アー2 「各々の姿勢が前記スキャナーデータにより画定される関連するポイントクラウドを持ち」、
アー3 「前記マップ表示はネイティブに3Dポイントを取り扱うように設定されたデータ構造を有し」、且つ、
アー4 「前記環境でマップ表示における特徴のコンパクトで密な(compact dense)リストにインデックスを付けるために使用されるスパースボクセル化構造により構成されるハイブリッド(hybrid)構造に基づいており」、
アー5 「スケーラビリティでデータのマップサイズ及び効果的な保管とは独立したボクセル座標における一定時間のランダムアクセスを可能にすること」
イ b2-1及びb2-2を以下のとおり書き下す。
「b2-1 (b)」
イー1 「各姿勢に関連する3Dスキャナーデータにより画定されるポイントクラウドを持」ち、
イー2 「レーザーレンジスキャナー(1)の複数の姿勢の各々に関する3Dスキャナーデータを使用して、マップ表示を構築する工程」であって、
イー3 「マップ表示は、領域にわたる一定時間の少なくとも5フレーム/秒での最近傍探索及びスケーラビリティにおける、データ構造へのランダムアクセスのために構成されるデータ構造を持つ、マップ表示を構築する工程」であって、
「b2-2」
イー4 「データ構造は、ネイティブに3Dポイントを取り扱うように設定され」、且つ、
イー5 (前記データ構造は、)「マップ表示における密なもののリストにインデックスを付けるために使用されるスパースボクセル化構造により構成されるハイブリッド構造に基づいており」、
イー6 「探索された空間にわたるスケーラビリティでデータのマップサイズ及び効果的な保管とは独立したボクセル座標における一定時間のランダムアクセスを可能にする」
ウ すると、B2並びにb2-1及びb2-2は、
「レーザーレンジスキャナー(1)の複数の姿勢の各々に関する3Dスキャナーデータを使用して、マップ表示を構築する」(ア-1)、(イー2)、
「各々の姿勢が(各姿勢に関連する)3Dスキャナーデータにより画定される(関連する)ポイントクラウドを持」つ(アー2)、(イー1)、
「前記マップ表示はネイティブに3Dポイントを取り扱うように設定されたデータ構造」を有する(アー3)、(イー3、イ-4)、
マップ表示のためのデータ構造は、「前記環境でマップ表示における特徴のコンパクトで密な(compact dense)リストにインデックスを付けるために使用されるスパースボクセル化構造により構成されるハイブリッド(hybrid)構造に基づ」く(アー4)、(イー5)(後述(16)を参照。)、
「スケーラビリティでデータのマップサイズ及び効果的な保管とは独立したボクセル座標における一定時間のランダムアクセスを可能にする」(ア-5)、(イー6)、
点で、互いに一致している。
エ B2とb2-1及びb2-2を対比すると、上記ウの一致点のほか、以下の点で一応相違している。
(ア)b2-1及びb2-2では、「マップ表示は、領域にわたる一定時間の少なくとも5フレーム/秒での最近傍探索及びスケーラビリティにおける、データ構造へのランダムアクセスのために構成されるデータ構造を持つ」との特定があるが、B2にはこの特定がない点。
(イ)b2-1及びb2-2では、「探索された空間にわたるスケーラビリティ」であるが、B2の「スケーラビリティ」には「探索された空間にわたる」との限定がない点。
オ 上記エ(ア)について
本願発明1のB1に「1秒につき少なくとも5つのフレームの速度でモバイルリアルタイムのレーザーレンジスキャナー(1)により環境を獲得する」ことが特定されており、この環境は空間的な領域であり、最近傍探索を任意の一定時間行うことは自明である。また、上記アー5において、ランダムアクセスがハイブリッド構造に基づくデータ構造に対するものなので、本願発明1に「スケーラビリティで」データ構造への「ランダムアクセスを可能にすること」が特定されている。
したがって、B2の「ランダムアクセスを可能とする」「データ構造」を特定するにあたり、「マップ表示は、領域にわたる一定時間の少なくとも5フレーム/秒での最近傍探索及びスケーラビリティにおける、データ構造へのランダムアクセスのために構成されるデータ構造を持つ」点が特定されるので、上記エ(ア)は、実質的な相違点ではない。
カ 上記エ(イ)について
上記オで検討したとおり、本願発明1のB1に「1秒につき少なくとも5つのフレームの速度でモバイルリアルタイムのレーザーレンジスキャナー(1)により環境を獲得する」ことが特定されており、この環境は空間的な領域であって、レーザーレンジスキャナーで探索される空間であるから、B2に実質的に「探索された空間にわたるスケーラビリティ」が特定されているといえる。
キ したがって、上記(2)のとおりB1とb1が互いに一致することを踏まえると、B1及びB2とb1、b2-1及びb2-2は、互いに一致する。
(4)B3とb3
B3とb3は、互いに一致する。
(5)B3-1とb3-1
B3-1とb3-1は、互いに一致する。
(6)B3-2とb3-2
B3-2とb3-2は、互いに一致する。
(7)B3-3とb3-3
Bの「前記環境の3D環境マップを構築する工程であって」との記載を踏まえると、B3-3の「前記3D参照マップを形成すること、とを含んでなる工程」は、前記3D参照マップを形成することが前記3D参照マップを構築する工程に含まれているといえるので、「前記3D参照マップを形成すること、とを含んでなる」「前記3D参照マップを構築する工程」を意味している。
すると、B3-3とb3-3は、互いに一致する。
(8)C1とc1
C1とc1は、互いに一致する。
(9)C2とc2
ア C2の「(e)場所認識中に、リアルタイムでスキャナーを自己位置同定するために、場所認識中の前記レーザーレンジスキャナー姿勢の予備知識無しに、環境の内部の前記レーザーレンジスキャナー(1)の現行の場所を識別することおよび、場面内の減少された探索空間を用いて前記レーザーレンジスキャナー(1)により獲得された場面のシンプル(simple)且つコンパクト(compact)な記述子を事前に計算すること」と、
c2の「(e)場所認識中に、リアルタイムでスキャナーを自己位置特定するために、場所認識中のレーザーレンジスキャナー姿勢の予備知識無しに、場面内の減少された探索空間を用いてレーザーレンジスキャナー(1)により獲得された場面のシンプルな記述子を事前に計算し、環境の内部のレーザーレンジスキャナー(1)の現行の場所を識別する工程」
を対比する。
イ C2とc2は、ともに「(e)場所認識中に、リアルタイムでスキャナーを自己位置同定するために、場所認識中の前記レーザーレンジスキャナー姿勢の予備知識無しに」、「環境の内部の前記レーザーレンジスキャナー(1)の現行の場所を識別」すること、及び、「場面内の減少された探索空間を用いてレーザーレンジスキャナー(1)により獲得された場面の」「記述子を事前に計算」する点で互いに一致する。
ウ すると、C2では「シンプル(simple)且つコンパクト(compact)な記述子を事前に計算」しているのに対し、c2では「シンプルな記述子を事前に計算」しているが当該「記述子」が「コンパクト(compact)」であるとの限定がない点で、C2とc2は一応相違する。
エ そこで、本願に最初に添付した明細書及び同日出願に最初に添付した明細書の段落【0069】を参照すると、「1)場所認識の間に、システムは、センサー姿勢についての事前知識なしで既知の環境の内部の現在の場所を特定する。それは、リアルタイムでセンサーを自己位置同定するために、場面の簡易且つ圧縮された記述子を予め計算し、探索空間を縮小する(以下のセクションB.2.を参照)。」(下線は当審において付した。以下同じ。)、また、同明細書の段落【0238】を参照すると、「特に、発明者らは、Taddei,P.,Sanchez,C.,Rodriguez,A.L.,Ceriani,S.,Sequeira,V.,2014.Detecting ambiguity in localization problems using depth sensors.In:3DV:によって定義された単純で高速な計算され圧縮された記述子を採用する。」と記載されており、本願発明1のC2の「記述子」と同日発明1の「記述子」は同じ「簡易且つ圧縮された識別子」及び「単純で高速な計算され圧縮された記述子」を示している。
すると、C2の「シンプル(simple)且つコンパクト(compact)な記述子」と「シンプルな記述子」は、同一の記述子を指しているので、両者の記述子は実質的に相違せず、C2とc2は、互いに一致する。
(10)C3とc3
C3とc3は、互いに一致する。
(11)C4とc4
C4とc4は、互いに一致する。
(12)C5とc5
c5の「前記3Dのスキャナーデータに関する情報を表示する工程であって、・・・色分けされる工程」において、色分けされる工程は、表示する工程を前提にしているので、色分けされた情報が表示されていることは明らかである。すると、C5とc5は、互いに一致する。
(13)Dとd
Dとdは、互いに一致する。
(14)D1とd1
D1では「特徴のコンパクトで密な(compact dense)リストL」と記載されている箇所が、d1では「コンパクトで密なもののリストL」と記載されている点でD1とd1は一応相違する。
しかしながら、D1は「コンパクトで密な」の後に同内容の英語表現を付加したことによりd1と表現上の差異が生じているにすぎないこと、及び、d1の数2が「マップ中の特徴に関連した全ての情報」を含む一方で、D1の「リストL」も「特徴」のリストであることから、D1の「特徴のコンパクトで密な(compact dense)リストL」とd1の「コンパクトで密なもののリストL」は、ともに「特徴のコンパクトで密なリストL」である点で一致する。すると、D1とd1は、互いに一致する。
(15)D2とd2
D2では「コンパクトで密な(compact dense)有効性マスクM」と記載されている箇所が、d2では「コンパクトで密な有効性マスクM」と起債されている点でD2とd2は一応相違するが、D2では「コンパクトで密な」の後に同内容の英語表現を付加したことによる表現上の差異にすぎず、D2とd2は、互いに一致する。
(16)D3とd3
D3とd3は、互いに一致する。
(17)D4とd4
D4とd4は、互いに一致する。
(18)D5とd5
D5とd5は、互いに一致する。
(19)A1、A2、C及びEとa1、a2、a3、c及びe
ア A1、A2、C及びEを書き下すと次のとおりである。
「環境の既存の3D参照マップに基づいて、前記環境のリアルタイムのマッピング、位置確認、及び変化の分析を行う工程を含む、請求項3に記載の方法を実行するために配置される、特にGPSが繋がらない環境における、リアルタイムのマッピング、位置確認、及び変化の分析のためのモバイルレーザースキャニング装置。」
イ a1、a2、a3、c及びeを書き下すと次のとおりである。
「特にGPSが繋がらない環境において、マッピング、位置確認、及び変化の分析を行うための方法であって、環境の既存の3D参照マップに基づいて、前記環境のリアルタイムのマッピング、位置確認、及び変化の分析を行う工程と、を含んでなる、請求項4に記載の方法を実行するために配置される、特にGPSが繋がらない環境における、リアルタイムのマッピング、位置確認、及び変化の分析のためのモバイルレーザースキャニング装置。」
ウ 上記アにおいて、「モバイルレーザースキャニング装置」は、「特にGPSが繋がらない環境における、リアルタイムのマッピング、位置確認、及び変化の分析のための」ものであって、「前記環境のリアルタイムのマッピング、位置確認、及び変化の分析を行う工程を含む」方法を実行するものである。
エ すると、上記(1)ないし(18)によれば、本願発明3と同日発明4が同一であることを踏まえると、A1、A2、C及びEとa1、a2、a3、c及びeは、互いに一致する。
3 判断
上記2(1)ないし(19)より、本願発明10の構成A1ないしEと同日発明11の構成a1ないしeは互いに一致している。よって、同日発明11を先願と仮定して本願発明10を後願と仮定した場合に本願発明10と同日出願11は同一であり(本願発明10の発明特定事項のすべてを同日発明11が有する。)、同様に、本願発明10を先願と仮定して同日発明11を後願と仮定した場合に同日発明11と本願発明10は同一(同日発明11の発明特定事項のすべてを本願発明10が有する。)である。
したがって、本願発明10と同日出願11は同一の発明であって、本願と同日出願は、特許法第39条第2項に規定する同一の発明について同日に二以上の特許出願があったときに該当する。
4 まとめ
上述のとおり、本願発明10と同日発明11とは同一の発明である。また、本願の出願日と同日出願の出願日は、同日である。そうすると、本願発明10及び同日発明11という同一の発明について、本願の出願日に2つの特許出願(本願及び同日出願)があったと認められる。
そして、同日出願は既に特許されているため、特許法第39条第2項に定める協議をすることができない。
以上によれば、本願発明は特許法第39条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第5 令和6年10月16日付け審尋について
当審において、審判請求人に対して、本願発明10と同日発明11が同一であるとの心証を開示し、両者が同一ではない理由を示す旨の釈明を、期間を指定して求めたが、審判請求人から何ら応答がなかった。
第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項10に係る発明は、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-007298