審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2021-013604

内視鏡用処置具

審判番号
2021-013604
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-558329外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年10月06日
審決日
2023年01月17日
公報発行日
2023年05月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A61B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-558329「内視鏡用処置具」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月29日国際公開、WO2017/111164〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 17項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、2016年(平成28年)12月26日(優先権主張 平成27年12月24日 日本国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

令和2年9月28日付け(発送日:令和2年10月6日):拒絶理由通知
令和3年2月5日提出:意見書、手続補正書
令和3年6月28日付け(発送日:令和3年7月6日):拒絶査定
令和3年10月6日提出:審判請求、手続補正書
令和4年5月10日付け(発送日:令和4年5月17日):拒絶理由通知
令和4年7月19日提出:意見書、手続補正書

第2 本願発明

本願の請求項1ないし6に係る発明は、令和4年7月19日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「ルーメンが長手方向に沿って形成してあるカテーテルチューブと、
前記カテーテルチューブの遠位端部に具備してあるバルーン部と、を有する内視鏡用処置具であって、
前記バルーン部を構成するバルーン膜は、全体が伸縮性材料により形成された伸縮性の膜であり、全体として筒状であり、遠位端側端部に形成された円筒形の第1接合部、近位端側端部に形成された円筒形の第2接合部およびこれらの間に形成された内部に流体が導入されることにより膨張する膨張部を有し、内部に流体が実質的に導入されない状態における前記膨張部の縦断面が略円形であり、
前記第1接合部では、前記バルーン膜の外側表面に連続する遠位端表面が、前記カテーテルチューブの遠位端側第1外周面に、接着剤を用いる接着、熱融着、溶剤による溶着、および超音波溶着のいずれかにより接合してあり、
前記第2接合部では、前記バルーン膜の内側表面に連続する近位端表面が、前記カテーテルチューブの前記遠位端側第1外周面よりも近位端側に位置する前記カテーテルチューブの遠位端側第2外周面に接合してある内視鏡用処置具。」

第3 当審において通知した拒絶の理由の概要

当審において令和4年5月10日付けで通知した拒絶理由は以下の理由を含むものである。

本願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(進歩性)について

・請求項1

・引用文献等5-8

・備考

請求項1に係る発明は、文献5に記載された発明と、文献6-8に示された周知技術により当業者が容易に想到し得た発明である。

<引用文献等一覧>

5.特開2006-6561号公報

6.特開昭54-66582号公報

7.特開平2-29264号公報

8.特開平6-261951号公報

第4 引用文献の記載、引用発明

1.引用文献5

引用文献5には、以下の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付したものである。)。

(ア)「【請求項1】可撓性材料からなり、遠位端部と近位端部とを有するカテーテルチューブと、伸縮性材料からなり、前記カテーテルチューブの遠位端部に取り付けられた筒状のバルーンとを備えた結石除去用バルーンカテーテルであって、前記バルーンは、前記カテーテルチューブの外周面と接合されている接合部と、内部に流体が導入されることにより膨張可能な膨張部とを有し、前記バルーンの膨張部が、外力を受けない状態において、前記カテーテルチューブの中心軸を回転軸としてカテーテルチューブの外方に向かって凸の曲線を回転させてなる回転体形状に形成されていることを特徴とする結石除去用バルーンカテーテル。」

(イ)「【0002】 胆管内に生じた結石、すなわち、胆石を体外に取り出して除去する方法としては、幾つかの方法が知られているが、その一つとして、バルーンカテーテルを用いる方法が知られている。バルーンカテーテルを用いて胆石を胆管内から除去する際は、まず、内視鏡を介して、バルーンを収縮させた状態のバルーンカテーテルを胆管内に挿入して、バルーンを除去すべき胆石の位置より、奥に位置させる。次いで、バルーンを膨張させてから、バルーンカテーテルを引き戻すと、バルーンで胆石を掻き出すようにして、胆管外に排出することができる。
【0003】 このように胆石を除去するために用いられる結石除去用バルーンカテーテルとしては、例えば、特許文献1、特許文献2に記載された構造を有するものが知られている。これらの文献に記載されたバルーンカテーテルでは、カテーテルチューブの先端部(遠位端部)に、伸縮性材料からなる円筒形状のバルーンが接合されており、このバルーンの内部に流体を導入することにより、バルーンを膨張させることができる。
【0004】 しかしながら、このような円筒形状のバルーンを備える従来の結石除去用バルーンカテーテルにおいては、バルーンを十分な大きさに膨張させることが困難であった。そのため、バルーンを胆管内で最大限に膨張させても、胆管内壁とバルーンとの間に大きな隙間が生じてしまい、その結果、胆石の掻き出しが不十分となり、胆管内に胆石が残留してしまう場合があった。」
(ウ)「【0006】 本発明は、上記したような実情に鑑みてなされたものであり、大きな外径に膨張可能なバルーンを備えており、結石除去性能に優れ、さらに、操作性も良好な結石除去用バルーンカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】 本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、伸縮性材料からなるバルーンを備えた結石除去用バルーンカテーテルにおいて、外力を受けない状態におけるバルーンの形状を、特定の曲線を回転させてなる回転体形状にすることにより、優れた結石除去性能と操作性とを両立できることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0008】 かくして、本発明によれば、可撓性材料からなり、遠位端部と近位端部とを有するカテーテルチューブと、伸縮性材料からなり、前記カテーテルチューブの遠位端部に取り付けられた筒状のバルーンとを備えた結石除去用バルーンカテーテルであって、前記バルーンは、前記カテーテルチューブの外周面と接合されている接合部と、内部に流体が導入されることにより膨張可能な膨張部とを有し、前記バルーンの膨張部が、外力を受けない状態において、前記カテーテルチューブの中心軸を回転軸としてカテーテルチューブの外方に向かって凸の曲線を回転させてなる回転体形状に形成されていることを特徴とする結石除去用バルーンカテーテルが提供される。」
(エ)「【0015】 カテーテルチューブ5の内部には、図2に示すように、バルーンルーメン8と、造影剤ルーメン9と、ガイドワイヤルーメン10とが形成されている。バルーンルーメン8は、バルーン2を膨張させるために用いる空気等の流体をバルーン2内部に送るための流路となるルーメンであり、カテーテルチューブ5の近位端から、カテーテルチューブ5の遠位端部7にバルーン2の内部に位置するように設けられた開口である流体導出口11まで貫通している。
【0016】 造影剤ルーメン9は、結石の位置を確認する等の目的で、体内のX線造影を行う場合に、造影剤の流路として用いるルーメンである。この造影剤ルーメン9は、カテーテルチューブ5の近位端から、カテーテルチューブ5の遠位端部7の噴出口12まで貫通している。噴出口12は、バルーン2の外側、好ましくは、バルーン2より近位端側に位置するように設けられた開口である。また、ガイドワイヤルーメン10は、結石除去用バルーンカテーテル1をガイドワイヤに沿わせて体内に挿入する際に、ガイドワイヤを挿通させるルーメンであり、カテーテルチューブ5の近位端から遠位端まで貫通している。なお、カテーテルチューブ5において、造影剤ルーメン9及びガイドワイヤルーメン10は必ずしも設ける必要はなく、また、上記した機能以外の機能を有する他のルーメンを形成することも可能である。」

(オ)「【0018】 結石除去用バルーンカテーテル1のバルーン2は、カテーテルチューブ5の遠位端部に流体導出口11を覆うように取り付けられている。このバルーン2は伸縮性材料により形成されていて、カテーテルチューブ5のバルーンルーメン8を介して、内部に流体が導入されることにより膨張されるようになっている。この膨張したバルーン2によって、結石を掻き出したり、押し出したりして、体内の結石の除去を行うことができる。」

(カ)「【0020】 図2に示すように、バルーン2は、全体として筒状であり、その両端部にカテーテルチューブ5の外周面と接合される接合部4が形成されていて、その両端の接合部4の間には、内部に流体が導入されることにより膨張する膨張部3が形成されている(図2において、外力を受けない状態の膨張部3は実線で示し、内部に流体が導入されて膨張した膨張部3’は一点鎖線で示してある)。このバルーン2の膨張部3は、外力を受けない状態において、カテーテルチューブ5の中心軸を回転軸としてカテーテルチューブ5の外方に向かって凸の曲線を回転させてなる回転体形状に形成されている。すなわち、カテーテルチューブ5に取り付けられたバルーン2の膨張部3は、その内部と外部とで圧力が釣り合った状態(バルーン2を膨張させるための流体をバルーン2の内部に送り込んでいない状態)において、上述したような回転体形状になっている。バルーン2の膨張部3がこのような形状に形成されることによって、従来の外力を受けない状態において円筒形であるバルーンに比して、バルーン2を大きな外径に膨張させることが可能となる。なお、回転体形状の母線となる曲線は、カテーテルチューブ5の外方に向かって凸の曲線であれば特に限定されず、いかなる曲線であっても良いが、カテーテルチューブ5の中心軸と同一平面上にある曲線であることが好ましい。また、本発明において、「カテーテルチューブの中心軸を回転軸としてカテーテルチューブの外方に向かって凸の曲線を回転させてなる回転体形状」とは、従来の結石除去用バルーンカテーテルにおける円筒形状のバルーンとの差異を表現するために用いた語句であり、厳密な意味で用いるものではない。すなわち、カテーテルチューブの中心軸と回転体形状の回転軸とは完全に一致する必要はなく、また、バルーンの膨張部が完全な回転体形状である必要もない。
【0021】 上述したような大きな外径に膨張可能なバルーン2を備える本発明の結石除去用バルーンカテーテル1では、体内内壁とバルーン2の間に隙間が生じるおそれが小さく、結石除去性能に優れる。また、大きな外径に膨張可能なバルーン2を取り付けるために、カテーテルチューブ5の遠位端部7を太くする必要がないので、操作性にも優れている。」

(キ)「【0023】 本発明の結石除去用バルーンカテーテル1が備えるバルーン2においては、外力を受けない状態においてバルーン2の膨張部3の外径が最大となる位置を変えることによって、膨張時の形状を制御することが可能である。すなわち、外力を受けない状態におけるバルーン2の膨張部3の最大外径の位置を、バルーン2の膨張部3の長手方向における中心位置にすれば、バルーン2を、その中心位置を軸とする対象形に膨張させることができる。一方、外力を受けない状態におけるバルーン2の膨張部3の最大外径の位置を、バルーン2の膨張部3の長手方向における中心位置ではなく、遠位端側か近位端側に偏らせて位置させると、バルーン2を、最大外径の位置を位置させた側に偏らせて膨張させることができる。」

(ク)「【0026】 バルーン2の膨張部3の両端側に位置する接合部4の形状は、カテーテルチューブ5の遠位端部7に接合可能な形状であれば特に限定されないが、円筒形であることが好ましい。バルーン2の接合部4が円筒形である場合、その内径はカテーテルチューブ5の外径とほぼ等しいことが好ましく、長さは、0.5~5mmであることが好ましい。また、バルーン2の接合部4の肉厚は、特に限定されず、例えば、膨張部3と実質的に等しくすれば良い。なお、バルーン2の接合部4とカテーテルチューブ5の遠位端部7とを接合する手法は、特に限定されず、例えば、接着剤による接着、熱融着、溶剤による溶着、超音波溶着などを挙げることができる。」

(ケ)「【0027】 上記したような形状を有するバルーン2を製造する方法は特に限定されず、伸縮性材料の製膜方法として公知の方法を用いればよいが、ディッピング成形法を用いることが好ましい。ディッピング成形法では、伸縮性材料と必要に応じて各種添加剤を溶剤に溶解して溶液あるいは懸濁液とし、この溶液(懸濁液)に所望するバルーンの形状と略等しい外形を有する型を浸漬させて型の表面に溶液(懸濁液)を塗布し、溶剤を蒸発させて型の表面に被膜を形成させる。この浸漬と乾燥を繰り返すことにより所望の肉厚を有するバルーンを製膜することができる。なお、伸縮性材料の種類により、必要に応じて、製膜後、架橋を行う。」

(コ)「【0036】 次いで、シリンジ等により、ハブ15、枝管14、造影剤ルーメン9を介して、造影剤を噴出口12へ送り込んで、造影剤を噴出させて、胆管内のX線造影を行い、胆石の様子を確認する。続いて、バルーン2を膨張させた状態のまま、カテーテル1を引き戻すと、バルーン2によって胆石を十二指腸乳頭から胆管外へ掻き出すことができる。この際、本実施形態のカテーテル1では、バルーン2を十分な大きさに膨張できるので、胆管内壁とバルーン2との間に隙間が生じにくく、胆石の掻き出しを容易に行うことができる。なお、胆管外に掻き出された胆石は、通常、自然に排出される。」

(サ)【図2】

[図:0001396687000001.jpg]

(シ)段落【0015】を考慮すると【図2】より,カテーテルチューブ5には、バルーンルーメン8,造影剤ルーメン9,ガイドワイヤルーメン10が長手方向に沿って形成してある点が看取できる。

(ス)段落【0027】より、バルーン2は、成膜されたバルーンの膜である。

(セ)【図2】、段落【0020】,段落【0026】より、(i)バルーン2がその両端部でカテーテルチューブ5の遠位端部7の外周面と接合され、接合部4は、遠位端側の接合部と近位端側の接合部よりなり、(ii)バルーン2の近位端側の接合部では、カテーテルチューブ5の遠位端部7の近位寄りの外周面に接合され、(iii)バルーン2の遠位端側の接合部では、カテーテルチューブ5の遠位端部7の遠位寄りの外周面に、例えば接着剤による接着、熱融着、溶剤による溶着、超音波溶着のいずれかで接合されるといえる。

2.文献5発明

上記記載を総合し、本願発明の記載に倣って整理すると、引用文献5には、以下の発明(以下、「文献5発明」という。)が記載されている。

[文献5発明]

「バルーンルーメン8,造影剤ルーメン9,ガイドワイヤルーメン10が長手方向に沿って形成してあるカテーテルチューブ5と、
前記カテーテルチューブ5の遠位端部7に取り付けられたバルーン2と、を有する結石除去用バルーンカテーテル1であって、
結石除去用バルーンカテーテル1は、内視鏡を介して用い胆石の除去を行うものであり、
バルーン2は、成膜されたバルーンの膜であり、伸縮性材料からなり、全体として筒状であり、その両端部にカテーテルチューブ5の外周面と接合される接合部4が形成されていて、接合部4は、遠位端側の接合部と近位端側の接合部よりなり、接合部4の形状は円筒形であり、その両端部の接合部4の間には、内部に流体が導入されることにより膨張する膨張部3が形成されていて、
外力を受けない状態すなわちその内部と外部とで圧力が釣り合った状態(バルーン2を膨張させるための流体をバルーン2の内部に送り込んでいない状態)における前記膨張部3が、前記カテーテルチューブ5の中心軸を回転軸として前記カテーテルチューブ5の外方に向かって凸の曲線を回転させてなる回転体形状に形成されており、
バルーン2の前記遠位端側の接合部では、カテーテルチューブ5の遠位端部7の遠位寄りの外周面に、例えば接着剤による接着、熱融着、溶剤による溶着、超音波溶着のいずれかで接合され、
バルーン2の前記近位端側の接合部では、前記カテーテルチューブ5の遠位端部7の近位寄りの外周面に接合される、
結石除去用バルーンカテーテル1。」

第5 対比

本願発明と文献5発明とを対比すると、文献5発明の「バルーンルーメン8,造影剤ルーメン9,ガイドワイヤルーメン10が長手方向に沿って形成してあるカテーテルチューブ5」、「カテーテルチューブ5の遠位端部7に取り付けられたバルーン2」は、それぞれ、本願発明の「ルーメンが長手方向に沿って形成してあるカテーテルチューブ」、「カテーテルチューブの遠位端部に具備してあるバルーン部」に相当する。

文献5発明の「結石除去用バルーンカテーテル1」は、「内視鏡を介して用い胆石の除去を行う」という機能からみて、本願発明の「内視鏡用処置具」に相当する。

文献5発明の「バルーン2」の「成膜されたバルーンの膜」は、本願発明の「バルーン部を構成するバルーン膜」に相当する。

文献5発明の「伸縮性材料」からなる「成膜されたバルーンの膜」は、本願発明の「全体が伸縮性材料により形成された伸縮性の膜」に相当する。

文献5発明において「接合部4の形状は円筒形」であることは、「遠位端側の接合部」及び「近位端側の接合部」の形状が円筒形であることであるから、文献5発明の「遠位端側の接合部」、「近位端側の接合部」は、本願発明の「遠位端側端部に形成された円筒形の第1接合部」、「近位端側端部に形成された円筒形の第2接合部」にそれぞれ相当する。

文献5発明の「その両端部の接合部4の間に」形成される「内部に流体が導入されることにより膨張する膨張部3」は、本願発明の「これらの間に形成された内部に流体が導入されることにより膨張する膨張部」に相当する。

文献5発明の「外力を受けない状態すなわちその内部と外部とで圧力が釣り合った状態(バルーン2を膨張させるための流体をバルーン2の内部に送り込んでいない状態)」は、本願発明の「内部に流体が実質的に導入されない状態」に相当する。

文献5発明の「カテーテルチューブ5の遠位端部7の遠位寄りの外周面に、例えば接着剤による接着、熱融着、溶剤による溶着、超音波溶着のいずれかで接合され」ることは、本願発明の「前記カテーテルチューブの遠位端側第1外周面に、接着剤を用いる接着、熱融着、溶剤による溶着、および超音波溶着のいずれかにより接合してあ」ることに相当する。

文献5発明の「前記カテーテルチューブ5の遠位端部7の近位寄りの外周面に接合される」ことは、本願発明の「前記カテーテルチューブの前記遠位端側第1外周面よりも近位端側に位置する前記カテーテルチューブの遠位端側第2外周面に接合してある」ことに相当する。

そうすると、本願発明と文献5発明は、

「ルーメンが長手方向に沿って形成してあるカテーテルチューブと、
前記カテーテルチューブの遠位端部に具備してあるバルーン部と、を有する内視鏡用処置具であって、
前記バルーン部を構成するバルーン膜は、全体が伸縮性材料により形成された伸縮性の膜であり、全体として筒状であり、遠位端側端部に形成された円筒形の第1接合部、近位端側端部に形成された円筒形の第2接合部およびこれらの間に形成された内部に流体が導入されることにより膨張する膨張部を有し、
前記第1接合部では、前記カテーテルチューブの遠位端側第1外周面に、接着剤を用いる接着、熱融着、溶剤による溶着、および超音波溶着のいずれかにより接合してあり、
前記第2接合部では、前記カテーテルチューブの前記遠位端側第1外周面よりも近位端側に位置する前記カテーテルチューブの遠位端側第2外周面に接合してある内視鏡用処置具。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点

<相違点1>

本願発明では、「内部に流体が実質的に導入されない状態における前記膨張部の縦断面が略円形であ」るのに対して、文献5発明では、外力を受けない状態すなわちその内部と外部とで圧力が釣り合った状態(バルーン2を膨張させるための流体をバルーン2の内部に送り込んでいない状態)における膨張部3がカテーテルチューブ5の中心軸を回転軸としてカテーテルチューブ5の外方に向かって凸の曲線を回転させてなる回転体形状に形成されている点。

<相違点2>

本願発明は、第1接合部では、前記バルーン膜の外側表面に連続する遠位端表面が、前記カテーテルチューブの遠位端側第1外周面に接合してあり、第2接合部では、前記バルーン膜の内側表面に連続する近位端表面が、前記カテーテルチューブの遠位端側第2外周面に接合してあるのに対して、文献5発明は、遠位端側の接合部では、バルーンの膜がカテーテルチューブ5の遠位端部7の遠位寄りの外周面に接合し、近位端側の接合部では、バルーンの膜がカテーテルチューブ5の遠位端部7の近位寄りの外周面に接合する点。

第6 判断

1.相違点1について

引用文献5の段落【0023】には「外力を受けない状態におけるバルーン2の膨張部3の最大外径の位置を、バルーン2の膨張部3の長手方向における中心位置にすれば、バルーン2を、その中心位置を軸とする対象形に膨張させることができる。」という記載がある。

一方、本願発明の「略円形」は、明細書の段落【0042】に、略円形の場合の作用効果の説明について、「全体として略円筒形」との対比において記載されていることや、図2A,図2Bを考慮すると、円形のみでなく、長円形や楕円形も含むと解される。

そうすると、引用文献5の図2を参照すると文献5発明のバルーン2は、略円形と表現できるものである。

仮に実質的な相違点であるとしても、引用文献5の段落【0020】には、「バルーン2を大きな外径に膨張させること」が示唆されているから(段落【0020】-【0021】参照)、文献5発明において「外方に向かって凸の曲線」となっているバルーン膜の縦断面について、使用する用途、大きさ、膨張率等を考慮して、さらに大きく膨張させるために略円形とすることは、当業者が容易になし得た程度の事項である。

2.相違点2について

カテーテルチューブとバルーンの遠位端側の接合部では、バルーン膜の外側表面に連続する遠位端表面がカテーテルチューブ遠位端部の遠位寄りの外周面に接合し、近位端側の接合部では、バルーン膜の内側表面に連続する近位端表面がカテーテルチューブ遠位端部の近位寄りの外周面に接合することは、例えば、引用文献6(図2,図4参照)、引用文献7(図5参照)、引用文献8(図1参照)に示されているように、周知技術である。

そこで、文献5発明における遠位端側の接合部(第1接合部)及び近位端側の接合部(第2接合部)の接合方式として、上記周知技術を採用して、相違点2に係る本願発明とすることは、当業者が適宜になし得た程度の事項である。

さらに、文献5発明に前記周知技術を適用する動機としては、次のものもあり、動機が存在しない旨の主張には到底同意することができない。

文献5発明は、結石除去用バルーンカテーテルの発明であるところ、引用文献6(第1ページ右下欄第8-10行,第3ページ左上欄第1-8行,第3ページ左下欄第18行-第4ページ左上欄第20行,図4,図7参照)に示されるように、上記周知技術の適用対象として、胆管内の胆泥や胆石のかき落とし・摘出に用いる結石除去用バルーンカテーテルがあることはかねて当業者に知られた事項である。してみると、上記周知技術を、結石除去という用途が共通する文献5発明に適用することは、この点からも動機づけられる。

3.効果について

請求人は、審判請求書及び令和4年7月19日付けの意見書の(3)(b)において、明細書の段落[0009],[0042],[0064],[0073],[0074]に記載された優れた効果を発揮する旨主張する。以下、当該主張について検討する。

(a)上記のうち、明細書の段落[0042],[0064]で説明される

「膨張部の内部に実質的に流体が導入されない状態において、膨張部の縦断面が略円形となるように膨張部を形成してある。膨張部がこのような形状を有することによって、バルーン膜が全体として円筒形のバルーン部を用いる場合等に比して、膨張部を大きく膨張させることが可能となり、バルーン部2の結石等の除去性能が良好となる。」、「バルーン部2を十分な大きさに膨張できるので、胆管内壁とバルーン部2との間に隙間が生じにくく、胆石の掻き出しを容易に行うことができる。」という作用・効果について検討する。

上記作用・効果は、外力を受けない状態すなわちその内部と外部とで圧力が釣り合った状態(バルーン2を膨張させるための流体をバルーン2の内部に送り込んでいない状態)における膨張部の形状から当然にもたらされる作用・効果であり(引用文献5の段落【0020】-【0021】参照)、当業者が予測できる範囲内の作用・効果にすぎない。

(b)上記のうち、段落[0009],[0073],[0074]で説明される「バルーン膜を萎ませて、そのバルーンカテーテルを、内視鏡を通して体外に抜き取る際に、バルーン膜の遠位端の接合部において、バルーン膜の遠位端の接合部を引き裂こうとする力が作用しない」ので「内視鏡を通して内視鏡用処置具を抜き取る際に、バルーン部を損傷させること無く抜き取ることが可能になる」、「なかでも、膨張部の縦断面が略円形であるバルーン膜を用いる場合には、膨張部を膨張させていない状態においてもバルーン膜に弛んだ部分が存在するので、バルーン部を損傷させるおそれが特に大きくなるが、そのような不都合を有さない。」という作用・効果について検討する。

上記作用・効果は、内部に流体が実質的に導入されない状態に戻した場合にバルーン部に弛んだ部分が存在することとなる文献5の如き構造のバルーンカテーテルに対して、周知の「遠位端側の接合部では、バルーン膜の外側表面に連続する遠位端表面がカテーテルチューブ遠位端部の遠位寄りの外周面に接合し、近位端側の接合部では、バルーン膜の内側表面に連続する近位端表面がカテーテルチューブ遠位端部の近位寄りの外周面に接合する」技術を適用することにより、構造上生じる自明の作用・効果であって、当業者の予測の範囲内の作用・効果にすぎない。

なお、請求人は、令和4年7月19日付けの意見書の(3)(d)において、「引用文献6~8は、いずれも特有の構造(別途の部材を用いてバルーン膜を締め付ける構造、またはバルーン膜に非伸長部を設ける構造)との組み合わせのみにおいて、バルーン膜を折り返す構造(「前記バルーン膜の外側表面に連続する遠位端表面が、前記カテーテルチューブの遠位端側第1外周面に、・・・接合してあ」る構造に相当する構造)を適用することに技術的意味が生じる技術を開示するものである。してみると、そのような特有の構造を有さない、引用文献5に開示された発明(バルーンカテーテル)に対して、引用文献6~8に開示された「前記バルーン膜の外側表面に連続する遠位端表面が、前記力テーテルチューブの遠位端側第1外周面に、・・・接合してあ」る構造に相当する構造のみを抜き出して適用することに動機となるものはなんら存在せず、当業者といえども、そのような適用を行うことは極めて困難であると思料する。」と主張する。

しかし、例えば、引用文献6の図4の実施例において、上記「2.相違点2について」における前記周知技術の接合方式を採用するのは、カテーテルを引き出しながら、バルーンで胆泥をかき落とし胆石を拘き込んで胆管外に摘出するという結石除去に適しているからであり(第3ページ左上欄第1-8行参照)、また、引用文献6の図5の実施例において、慣用される2通りの接合方式のうち前記周知技術とは別の接合方式を採用するのは、異物を吸引しながら回収するのに適しているからである(第3ページ左上欄第9行-右上欄第7行参照)。一方、引用文献6では、図4、図6のいずれにおいても、固着手段として糸などの部材で締めつける手段を採用していることが看取できる。してみると、引用文献6における接合方式の採用と、固着手段として糸などの部材で締めつける手段を採用していることとは、特段関係がない。

また、引用文献6-8の上記「バルーン膜を折り返す構造」が、「上記特有の構造」と不可分一体であるかどうかについて検討する。

通常、面と面との接合の際に、固着手段として、糸などの部材で締めつける手段や接着等の周知の固着手段は、置換可能であり、このことは、カテーテルチューブ外周面とバルーン膜との接合部における面と面との接合においても該当する。

そして、引用文献6-8のそれぞれの特有の構造における上記「バルーン膜を折り返す構造」による面と面との接合において、接着等の従来周知の固着手段を用いることができないとする特段の理由は認められないから、請求人の上記主張は採用できない。

なお、固着を接着により行うものにおいても、引用文献6-8に示される

上記「バルーンの膜を折り返す構造」(上記「2.相違点2について」における前記周知技術の接合方式)を用いるものは、登録実用新案第3049398号公報(図6,段落[0002]の【従来の技術】の欄参照)、特表2009-537211号公報(段落[0056],段落[0062],図4A,図5参照)、特表2003-521286号公報(図3C,段落[0043]参照)に示されるように周知である点も参照されたい。

5.小括

したがって、本願発明は、文献5発明と周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび

以上のとおりであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。

よって、 結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2021-013604

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決95件(日本ゼオン株式会社)
  • 2024-000475拒絶査定不服審判 / 2026-06-10 / 請求不成立延伸フィルムの製造方法
    同じ当事者: 日本ゼオン株式会社
  • 2024-012243拒絶査定不服審判 / 2026-05-26 / 原査定取消(特許/登録すべき)塩化ビニル樹脂組成物、塩化ビニル樹脂成形体および積層体
    同じ当事者: 日本ゼオン株式会社
  • 2024-016774拒絶査定不服審判 / 2026-02-12 / 原査定取消(特許/登録すべき)重合体およびポジ型レジスト組成物
    同じ当事者: 日本ゼオン株式会社
  • 2024-012753拒絶査定不服審判 / 2025-07-31 / 原査定取消(特許/登録すべき)二次電池電極用バインダー組成物、二次電池電極用導電材ペースト組成物、二次電池電極…
    同じ当事者: 日本ゼオン株式会社
  • 2024-007003拒絶査定不服審判 / 2025-07-02 / 請求不成立誘電エラストマー発電システム
    同じ当事者: 日本ゼオン株式会社
検索でもっと見る →
同じ根拠条文の審決7,656件(特許法29条2項)
  • 2025-013059拒絶査定不服審判 / 2026-07-06 / 請求不成立超音波トランスデューサ、超音波探触子、超音波診断装置および超音波トランスデューサ…
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2025-011631拒絶査定不服審判 / 2026-06-22 / 請求不成立超音波トランスデューサ、超音波探触子、超音波診断装置および超音波トランスデューサ…
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2025-013876拒絶査定不服審判 / 2026-05-19 / 請求不成立医用画像表示装置、医用画像表示方法および医用画像表示プログラム
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2025-000057拒絶査定不服審判 / 2026-03-31 / 請求不成立心不全管理のための感知
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-017922拒絶査定不服審判 / 2026-02-17 / 請求不成立神経活動を検出するための方法及びシステム
    共通の条文: 特許法29条2項
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,956件(121・A61B)
  • 2024-014320拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)生理学的データのモニタリング方法
    共通の審決分類: 121・A61B
  • 2025-010743拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)乳房の病変を同定する方法及びモデル
    共通の審決分類: 121・A61B
  • 2024-019207拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)少なくとも1つの呼吸パラメータを決定するための測定装置及び方法
    共通の審決分類: 121・A61B
  • 2025-016546拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)診断デバイス
    共通の審決分類: 121・A61B
  • 2025-015249拒絶査定不服審判 / 2026-08-24 / 原査定取消(特許/登録すべき)感情推定装置
    共通の審決分類: 121・A61B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存