2021-012220
タンクの付帯設備
- 審判番号
- 2021-012220
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-113328外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年09月13日
- 審決日
- 2022年08月30日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】特許業務法人真菱国際特許事務所
- 【請求人代理人】弁理士法人真菱国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 8項目
1 手続の経緯
本願は、平成29年6月8日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、本願出願当初の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】タンクに対し、津波対策用に設けられるタンクの付帯設備であって、前記タンクを囲繞するように、前記タンクの基礎上に立設された固定止水壁と、前記固定止水壁を囲繞するように沿わせて設けられた可動止水壁と、来襲した津波により、前記可動止水壁を浮上させるフロート部と、前記固定止水壁の上端部と前記可動止水壁の下端部との間に介設され、前記可動止水壁の浮上による上動端位置を位置規制すると共に、前記固定止水壁と前記可動止水壁との間隙をシールする環状シール部と、を備えたことを特徴とするタンクの付帯設備。」
3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、次のとおりである。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.特開2013-032179号公報
引用文献2.特開2013-194403号公報
4 当審の判断
(1)引用文献の記載及び引用発明
ア 引用文献1
(ア)引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審が付した。)。
a「【請求項1】
鋼製タンクが地震や津波、洪水などによって、座屈変形や流出の被害を受けないように、側板の近傍に円筒形又は多角形プレハブコンクリート構造の連続した防液堤兼用のコンクリート側壁を立設形成することを特徴とする鋼製タンクのプレハブコンクリート防液堤。」
b「【技術分野】
【0001】
この発明は、石油など危険物の液体を貯蔵する鋼製タンクのプレハブコンクリート防液堤に関するものである。」
c「【0018】
この発明は上述のような従来技術が有する問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、地震や津波、洪水などによってタンク側板が変形や座屈を生じることがなく、津波や洪水によってタンクが浮いたり流されたりするなどの被害を生ずることのない、鋼製タンクのプレハブコンクリート防液堤を提供することにある。」
d「【0027】
図1は本発明に係る鋼製タンク1のプレハブコンクリート防液堤の第1の実施形態例を示す全体側面説明図で、2は側板、3は基礎、4は底板、5は屋根である。
この発明による鋼製タンクのコンクリート補強範囲は、地震や津波、洪水などで被害を受けないように、タンク側板2の外面に当接させて防液堤兼用のコンクリート側壁6を立設して補強形成する。
この側板2の外周面に当接させて立設するコンクリート壁6は、基礎3外周縁に打込んだ杭7と、この杭7の上から底板4外周縁上に架けた底部フーチングユニット6aと、その上の側壁下部ユニット6bと、さらにその上の側壁上部ユニット6c、6dとでプレハブコンクリート構造に形成する。
このように、側板2の外周面に当接させてコンクリート側壁6を設ける場合は、側板2の外周にメンテナンス空間を設ける必要のないタンクに適用する。
また、防液堤を必要としない水タンクやサイロなどの貯槽においても、メンテナンス用の空間を設けることなく、鋼製タンク1の側板2に当接させてコンクリート側壁6を設けて補強することは有効である。
【0028】
このように、平底円筒形鋼製タンクの側板2に当接させて防液堤兼用のコンクリート壁6で補強形成するので、耐震強度が不足する中小規模の既設タンク1の耐震強度を向上することができる。
また、地震や津波などの災害や経年劣化による側板2の変形防止や底板4の浮き上がり防止を図り、この耐震補強によってタンク設備を長く使い続けることができる。」
e「【図1】
[図:0001390229000001.jpg]
」
f 図1を参照すると、コンクリート側壁6は、鋼製タンク1の基礎3上に立設されていることが看取できる。
(イ)上記(ア)より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「津波、洪水などで被害を受けないように、タンク側板2の外面に当接させて防液堤兼用のコンクリート側壁6を立設して補強形成する鋼製タンク1のプレハブコンクリート防液堤であって、タンク側板2の外面に当接させて、前記鋼製タンク1の基礎3上に、円筒形又は多角形プレハブコンクリート構造の連続した防液堤兼用のコンクリート側壁6を立設形成するプレハブコンクリート防液堤。」
イ 引用文献2
(ア)引用文献2には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審が付した。)。
a「【請求項1】
堤防の前面に取付けられ、水位の変動に追従するフロート体で昇降して、水位の異常上昇時に、前記堤防の上面から上方に突出する堤防用フローティング防潮ゲートにおいて、
堤防の前面に取付けられる上下方向のガイドレールと、
前記ガイドレールの前方に、前記堤防の前面と一定の隙間を隔てて配置され、浮力を有するフロート体が下部に設けられた略四角形状のゲート板と、
前記フロート体の背面に取付けられ、前記ガイドレールで上下方向に転動しながらガイドされるローラと、
前記堤防の前面上部と前記ゲート板の背面上部との前記隙間の間に、上面が前記堤防の上面とほぼ揃う高さ位置に着脱可能に配置されるボックス体とを含み、
前記ボックス体の上面は、堤防の前面とゲート板の背面との間の隙間の内部空間をカバーするゴミ除けと、前記堤防の上面に連なる通路とを兼ね、前記ボックス体の前面は、前記ゲート板の背面のガイドとなり、前記ボックス体の下面は、前記ゲート板の最大上昇位置を規制するストッパーとなることを特徴とする堤防用フローティング防潮ゲート。」
b「【請求項5】
前記ボックス体の下面は、前記フロート体の上面を当て止めることで、ゲート板の最大上昇位置を規制するストッパーとなり、前記ボックス体の下面若しくはフロート体の上面には、シール材が設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の堤防用フローティング防潮ゲート。」
c「【0023】
請求項5によれば、ゲート板の最大上昇位置でフロート体がシール材を介してボックス体の下面に当て止められる。これにより、ゲート板を越波した水がボックス体の前面とゲート板の背面との間の僅かの隙間から内部空間に浸入することが阻止されるようになる。」
d「【0029】
海底に設置されたコンクリート製の堤防(防波堤)1は、平常時には波が堤防1の上面1aを越えない(越波)ように、通常の水位(NWL)よりも高く(高さH1)設定されている。この堤防1の前面1bは、ほぼ垂直面に形成されている。なお、この前面1bは、後述するH型鋼4を埋め込んで補強した後付けコンクリートの前面である。
【0030】
堤防1の前面1bの前方には、この前面1bと一定の隙間Fを隔てて、浮力を有するフロート体2が下部に設けられた略四角形状のゲート板3が配置されている。堤防1の長さや高さにもよるが。ゲート板3とフロート体2の幅Wは、例えば10m、高さH2は、例えば4mである。
【0031】
そして、ゲート板3は、水位の変動に追従するフロート体2で昇降して、水位の異常上昇時(HWL)に、堤防1の上面1aから上方に突出して(突出高さは、例えば1.5m程度)、高波の越波を阻止するようになっている(図1の二点鎖線参照)。」
e「【0038】
堤防1の前面1bの上部とゲート板3の背面3aの上部との隙間Fの間には、滑り止めの凹凸加工を施した上面9aが堤防1の上面1aとほぼ揃う高さ位置に、側面視で横向きU字形状のボックス体9が上下方向に着脱可能に配置されている。
【0039】
ボックス体9の偏平な上面9aは、堤防1の前面1bとゲート板3の背面3aとの間の隙間Fの内部空間Sをカバーするゴミ除けと、堤防1の上面1aに連なる通路とを兼ねている。ボックス体9は、ゲート板3とフロート体2の幅Wと略同じ幅に設定されている。
【0040】
また、ボックス体9の略垂直な前面9bの突起部9cは、ゲート板3の背面3aのガイドとなる。さらに、ボックス体9の傾斜した下面9dは、フロート体2の傾斜した上面2cのシール材10を当て止めることで、ゲート板3の最大上昇位置((図1の二点鎖線参照))を規制するストッパーとなる。
【0041】
ゲート板3の最大上昇位置でフロート体2のシール材10がボックス体9の下面9dに当て止められる。これにより、ゲート板3を越波した海水がボックス体9の前面9bとゲート板3の背面3aとの間の僅かの隙間から内部空間Sに浸入することが阻止されるようになる。」
f「【0044】
ゲート板3とフロート体2とガイドレール6とローラ7とボックス体9は、一定の幅W毎にユニット化されている。そして、このユニット体Uは、堤防1の前面1bに沿うように、堤防1の長さ方向に、必要な長さに応じて複数組みが横並びで配列されている。」
g「【0047】
前記のような堤防用フローティング防潮ゲートであれば、フロート体2が下部に設けられたゲート板3は、フロート体2の背面2aのローラ7が堤防1の前面1bのガイドレール6で上下方向に転動しながらガイドされる。したがって、ゲート板3に高潮等の波力が作用しても傾くことがなく、ゲート板3が常に無動力でスムーズに上昇できるので、越波(河川の堤防であれば洪水)を確実に阻止できるようになる。」
h「【0055】
前記実施形態において、堤防1の前面1bが平面視で湾曲している場合には、図4のように、ユニット体Uは、堤防1の前面1bの湾曲に沿うように複数組みを横並びで配列することができる。
【0056】
このようにすれば、堤防1の前面1bが平面視で湾曲している現場であっても、図4(a)のように、湾曲が大きい(曲率半径が大きい)と、同図に1組みだけを拡大して抽出したように、直線状のゲート板3とフロート体2を有するユニット体Uを横並びで配列すればよい。また、図4(b)のように、湾曲が小さい(曲率半径が小さい)と、同図に1組みだけを拡大して抽出したように、湾曲させたゲート板3とフロート体2を有するユニット体Uを横並びで配列すればよい。このようにすることで、堤防1の湾曲形状に適合させることができる。」
i「【図1】
[図:0001390229000002.jpg]
」
j「【図4】
[図:0001390229000003.jpg]
」
(イ)上記(ア)より、引用文献2には、次の技術(以下「引用文献2に記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「ゲート板3を含むユニット体Uは、堤防1の前面1bの湾曲に沿うように複数組みを横並びで配列することができ、ゲート板3は、水位の変動に追従するフロート体2で昇降して、水位の異常上昇時(HWL)に、堤防1の上面1aから上方に突出して、高波の越波を阻止するようになっており、上面9aが堤防1の上面1aとほぼ揃う高さ位置に、ボックス体9が配置され、ボックス体9の下面9dのシール材10は、フロート体2の上面2cを当て止めることで、ゲート板3の最大上昇位置を規制するストッパーとなり、ゲート板3を越波した海水がボックス体9の前面9bとゲート板3の背面3aとの間の僅かの隙間から内部空間Sに浸入することが阻止されるようになる、コンクリート製の堤防1を越波することを阻止するための堤防用フローティング防潮ゲート。」
(2)対比
ア 本願発明と引用発明を対比する。
(ア)引用発明は、地震や津波、洪水などによってタンク側板が変形や座屈を生じることがなく、津波や洪水によってタンクが浮いたり流されたりするなどの被害を生ずることのないことを課題とした、鋼製タンクのプレハブコンクリート防液堤に係る技術であり、本願発明と、技術分野及び課題が共通する。
(イ)引用発明の「津波、洪水などで被害を受けないように、タンク側板2の外面に当接させて防液堤兼用のコンクリート側壁6を立設して補強形成する鋼製タンク1のプレハブコンクリート防液堤」は、鋼製タンク1に対し、津波、洪水などで被害を受けないように対策するために形成されるものであるから、本願発明の「タンクに対し、津波対策用に設けられるタンクの付帯設備」に相当する。
(ウ)引用発明の「タンク側板2の外面に当接させて、前記鋼製タンク1の基礎3上に、」「立設形成」される「円筒形又は多角形プレハブコンクリート構造の連続した防液堤兼用のコンクリート側壁6」は、タンク側板2の外面を筒形のコンクリート側壁6で取り囲んでいるから、本願発明の「前記タンクを囲繞するように、前記タンクの基礎上に立設された固定止水壁」に相当する。
イ 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「タンクに対し、津波対策用に設けられるタンクの付帯設備であって、前記タンクを囲繞するように、前記タンクの基礎上に立設された固定止水壁を備えたタンクの付帯設備。」
【相違点】
本願発明では、
「前記固定止水壁を囲繞するように沿わせて設けられた可動止水壁と、来襲した津波により、前記可動止水壁を浮上させるフロート部と、前記固定止水壁の上端部と前記可動止水壁の下端部との間に介設され、前記可動止水壁の浮上による上動端位置を位置規制すると共に、前記固定止水壁と前記可動止水壁との間隙をシールする環状シール部と、」を備えているのに対して、引用発明では、そのような構成を備えていない点。
(3)判断
ア 相違点について
津波、洪水などの規模やこれらの現象が観測される地域の地形などに応じて、地上の建造物に到達する水位が変動することは周知の事項であり、想定される最大高さの津波、洪水などが来襲した場合であっても被害を受けないようにすることは、津波、洪水などの対策をする際の周知の課題である。そして、引用発明のタンクにおいても、発生する津波、洪水などの規模や、鋼製タンク1を設置する地域の地形などによっては、到達する水位がコンクリート側壁6を越えるようなケースも想定され得る。これらのことから、コンクリート側壁6が立設された引用発明において、コンクリート側壁6を越えるような水位の異常上昇時であっても鋼製タンク1が被害を受けないようにするという課題を内在するものであるといえる。よって、引用発明には、固定されたコンクリート側壁6に加えて、コンクリート側壁6を越えるような水位の異常上昇時に上昇可能な可動止水壁の技術を採用する動機があるといえる。
他方、引用文献2に記載の堤防用フローティング防潮ゲートは、固定されたコンクリート製の堤防1を越波することを阻止するために、水位の異常上昇時にフロート体2で上昇するゲート板3を設けたものである。
引用発明と、引用文献2に記載の技術的事項とは、いずれも、水位の異常上昇によって内側が被害を受けないようにするために設けられる堤防である点で共通するものであり、引用発明においても、固定されたコンクリート側壁6を越えるような水位の異常上昇時であっても被害を受けないように可動止水壁を設ける動機があるから、引用発明において、その解決のために、引用文献2に記載の技術的事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。その際、引用文献2に記載の技術的事項のゲート板3(可動止水壁)やシール材10(シール部)を、引用発明の鋼製タンク1を囲繞するコンクリート側壁6(固定止水壁)に沿わせて設けることになるから、ゲート板3がコンクリート側壁6を囲繞するようにすると共にシール材10を環状にすることは容易である。
よって、上記相違点に係る本願発明の構成は、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 効果について
本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載の技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
ウ よって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2021-012220