特許拒絶査定不服審判
2021-012088
伝熱管、及び、熱交換器
- 審判番号
- 2021-012088
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-205903
- 請求日
- 2021年09月10日
- 審決日
- 2022年06月08日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ダイキン工業株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 松下 聡
- 審判官 マキロイ 寛済
- 審判官 林 茂樹
- 分類
- P18 .121-Z (F28F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-205903「伝熱管、及び、熱交換器」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 5月27日出願公開、特開2021- 81081〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年11月14日に出願されたものであって、その手続きの経緯は概略以下のとおりである。
令和2年10月30日 手続補正書の提出
令和2年11月12日付け 拒絶理由通知
令和3年 1月14日 意見書及び手続補正書の提出
令和3年 6月 8日付け 拒絶査定
令和3年 9月10日 審判請求書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、令和3年1月14日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
内部に、複数の第1流路(30A)が並べて形成され、
前記各第1流路(30A)の断面形状が、複数の前記第1流路(30A)の並び方向である第1方向(P)に長い長方形であり、
前記第1流路(30A)の内面に複数の突起(31)が形成され、
前記第1流路(30A)の断面形状における長辺の長さ(L1a)と短辺の長さ(L1b)との比率が、1.1以上1.5以下であり、
前記第1流路(30A)の断面形状における長辺の長さ(L1a)に対する、隣接する前記第1流路(30A)の間の距離(t1)の比率が、29%~33%である、伝熱管。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由(拒絶査定における理由)は、本願の請求項1ないし7に係る発明は、本願の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例1ないし6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
<引用例等一覧>
1.特開2000-18867号公報
2.特開2005-90760号公報
3.実願昭57-106482号(実開昭59-13877号)のマイクロフィルム
4.国際公開第2018/008134号
5.特開2013-19596号公報
6.国際公開第2017/141943号
なお、引用例2については、原査定においては、「2.特開20085-90760号公報」と記載されているところ、「2.特開2005-90760号公報」の明らかな誤記であり、また、審判請求書の(2-3)において、「・・・周知技術として引用文献2(特開2005-090760号公報)が挙げられております。・・・」と記載されているように、正しい「2.特開2005-90760号公報」として対応されているので、原査定における引用例2は、「2.特開2005-90760号公報」とした。
第4 引用文献
1.引用例1
(1)引用例1の記載
原査定の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された引用文献である、特開2000-18867号公報(以下、「引用例1」という。)には、「熱交換器用チューブ材」に関して図面とともに以下の記載がある(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下、同様。)。
「【0016】
ここで使用される冷媒チューブ10は、図2に示すように、内部に冷媒流路となる空間部11が複数形成されている偏平の熱交換器用チューブであり、アルミニウムを押し出し成形して製造したものである。図示の冷媒チューブ10は、図3にその詳細を示したように、厚さ(T)が2ミリメートル程度でかつ幅(W)が16ミリメートル程度の偏平であり、その内部には幅方向に合計8個の空間部11が1列に並んで設けられている。また、冷媒チューブ10の両端は半円形状に成形されており、これに伴って両端部に位置する空間部11a,11bの形状は中央部に位置する他の6個の空間部11と異なっている。
【0017】
右側の端部に位置する空間部11aは、おおよそ幅(w)が1.65ミリメートル程度でかつ厚さ(t)が1.2ミリメートル程度のものであり、その断面を形成する壁面12は曲面の凹凸を連続させたものであって直線部分は全く存在しない。すなわち、曲率半径が0.6ミリメートルの第1凹曲面12aと、曲率半径が0.5ミリメートルの第1凸曲面12bと、曲率半径が0.2ミリメートルの第2凹曲面12cと、曲率半径が1.3ミリメートルの第2凸曲面12dと、曲率半径が0.2ミリメートルの第3凹曲面12eと、曲率半径が0.5ミリメートルの第3凸曲面12fとが連続して、一つの閉断面を形成している。なお、左側の端部に位置する空間部11bは、上述した右側の空間部11aと左右対称である。
【0018】
両端部の空間部11a,11bの間に並んでいる6個の空間部11は、いずれも同じ断面形状を有して等ピッチで配列されている。この空間部11は、おおよそ幅(w)が1.6ミリメートル程度でかつ厚さ(t)が1.2ミリメートル程度のものであり、その断面を形成する壁面13は曲面の凹凸を連続させたものであって、やはり直線部分は全く存在していない。すなわち、曲率半径が0.2ミリメートルの第1凹曲面13aと、曲率半径が0.2ミリメートルの第1凸曲面13bと、曲率半径が0.2ミリメートルの第2凹曲面13cと、曲率半径が0.2ミリメートルの第2凸曲面13dと、曲率半径が0.2ミリメートルの第3凹曲面13eと、曲率半径が1.3ミリメートルの第3凸曲面13fと、曲率半径が0.2ミリメートルの第4凹曲面13gと、曲率半径が0.2ミリメートルの第4凸曲面13hと、曲率半径が0.2ミリメートルの第5凹曲面13iと、曲率半径が0.2ミリメートルの第5凸曲面13jと、曲率半径が0.2ミリメートルの第6凹曲面13kと、曲率半径が1.3ミリメートルの第6凸曲面13lとが連続して、一つの閉断面を形成している。」
「【図3】
[図:0001387169000001.jpg]
」
(2)上記(1)から分かること
1a)段落【0016】の「内部に冷媒流路となる空間部11が複数形成されている偏平の熱交換器用チューブ」との記載、及び図3(a)の記載から、熱交換器用チューブは、その内部に、複数の空間部11が並べて形成されるとともに、各空間部11の断面形状が、複数の空間部11の並び方向に長い長方形であることが分かる。
1b)段落【0018】の「両端部の空間部11a,11bの間に並んでいる6個の空間部11は、いずれも同じ断面形状を有して等ピッチで配列されている。この空間部11は、おおよそ幅(w)が1.6ミリメートル程度でかつ厚さ(t)が1.2ミリメートル程度のものであり、」との記載、図3(a)、及び図3(b)の記載から、各空間部11の断面形状が、複数の空間部11の並び方向に長い長方形であり、前記空間部11の断面形状における幅wと厚さtとの比率が、約1.33(≒1.6/1.2)であることが分かる。
1c)段落【0018】の「すなわち、曲率半径が0.2ミリメートルの第1凹曲面13aと、曲率半径が0.2ミリメートルの第1凸曲面13bと、曲率半径が0.2ミリメートルの第2凹曲面13cと、曲率半径が0.2ミリメートルの第2凸曲面13dと、曲率半径が0.2ミリメートルの第3凹曲面13eと、曲率半径が1.3ミリメートルの第3凸曲面13fと、曲率半径が0.2ミリメートルの第4凹曲面13gと、曲率半径が0.2ミリメートルの第4凸曲面13hと、曲率半径が0.2ミリメートルの第5凹曲面13iと、曲率半径が0.2ミリメートルの第5凸曲面13jと、曲率半径が0.2ミリメートルの第6凹曲面13kと、曲率半径が1.3ミリメートルの第6凸曲面13lとが連続して、一つの閉断面を形成している。」との記載、及び図3の記載から、空間部11の内面に第1凸曲面13b、第2凸曲面13d、第3凸曲面13f、第4凸曲面13h、第5凸曲面13j、第6凸曲面13lが形成されていることが分かる。
(3)引用発明
上記(1)及び(2)からみて、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「内部に、複数の空間部11が並べて形成され、
前記各空間部11の断面形状が、複数の前記空間部11の並び方向に長い長方形であり、
前記空間部11の内面に第1凸曲面13b、第2凸曲面13d、第3凸曲面13f、第4凸曲面13h、第5凸曲面13j、及び第6凸曲面13lが形成され、
前記空間部11の断面形状における幅wと厚さtとの比率が、約1.33である、熱交換器用チューブ。」
2.引用例2
(1)引用例2の記載
原査定の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された引用文献である、特開2005-90760号公報(以下、「引用例2」という。)には、「扁平チューブ」に関して、図面とともに以下の記載がある。
「【0003】
図10は、サーペンタインタイプの熱交換器に用いられた扁平チューブの断面を示す。この扁平チューブ1は、両端部に最も近い中柱11aの肉厚t1,tnを他の中柱11bの肉厚t2,・・よりも大きくすることで、扁平チューブ1の配列ピッチを小さくする際に曲げ部に起きる歪みを防ぐようにしている(特許文献2)。」
「【図10】
[図:0001387169000002.jpg]
」
(2)上記記載から、引用例2には、次の技術(以下「引2技術」という。)が記載されていると認められる。
「熱交換器に用いられる扁平チューブ1において、中柱11の肉厚tを大きくすることで必要な強度を確保するという技術。」
第5 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「空間部11」は本願発明における「第1流路(30A)」に相当し、以下同様に、「第1凸曲面13b、第2凸曲面13d、第3凸曲面13f、第4凸曲面13h、第5凸曲面13j、及び第6凸曲面13l」は「複数の突起(31)」に、「幅w」は「長辺の長さ(L1a)」に、「厚さt」は「短辺の長さ(L1b)」に、「熱交換器用チューブ」は「伝熱管」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「空間部11の断面形状における幅wと厚さtとの比率が、約1.33」と本願発明の「第1流路(30A)の断面形状における長辺の長さ(L1a)と短辺の長さ(L1b)との比率が、1.1以上1.5以下」は、「第1流路(30A)の断面形状における長辺の長さ(L1a)と短辺の長さ(L1b)との比率が、約1.33」である限りにおいて一致する。
してみると、本願発明と引用発明との一致点、相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「内部に、複数の第1流路が並べて形成され、
前記各第1流路の断面形状が、複数の前記第1流路の並び方向である第1方向に長い長方形であり、
前記第1流路の内面に複数の突起が形成され、
前記第1流路の断面形状における長辺の長さと短辺の長さとの比率が、約1.33である、伝熱管。」
[相違点1]
第1流路の断面形状における長辺の長さと短辺の長さとの比率が、約1.33であることについて、本願発明は、「1.1以上1.5以下」と数値範囲が限定されているのに対して、引用発明では、数値範囲に含まれる約1.33ではあるが、そのような数値範囲が限定されていない点。
[相違点2]
本願発明は、第1流路(30A)の断面形状における長辺の長さ(L1a)に対する、隣接する前記第1流路(30A)の間の距離(t1)の比率が、29%~33%であるのに対し、引用発明では、そのような数値範囲が示されていない点。
以下、相違点について検討する。
[相違点1]について
第1流路(30A)の断面形状における長辺の長さ(L1a)と短辺の長さ(L1b)との比率であるアスペクト比に関して、本件明細書の段落【0049】に「・・・表1及び図8の結果より、適切な熱交換性能を得ることがアスペクト比として1.1以上1.5以下の値を採用し、・・・」と記載されているが、本件明細書の表1を参照すると、数値範囲内の下限付近であるアスペクト比が1.118の時の熱交換性能比は107%であるのに対して、下限付近の数値範囲外であるアスペクト比が0.940の時の熱交換性能比は106%であり、両者の熱交換性能比に顕著な量的な差異は認められない。同様に数値範囲内の上限付近であるアスペクト比が1.382の時の熱交換性能比は107%であるのに対して、上限付近の数値範囲外であるアスペクト比が1.814の時の熱交換性能比は106%であり、両者の熱交換性能比に顕著な量的な差異は認められない。このように限定された数値範囲である「1.1以上1.5以下」の内と外において、効果について量的に顕著な差異が認められないので、このような数値範囲の限定に臨界的意義は認められない。
してみると、アスペクト比の数値は、引用発明においては約1.33であって「1.1以上1.5以下」の範囲内であり、アスペクト比の数値範囲の下限値を1.1、上限値を1.5と定めて「1.1以上1.5以下」とすることは、当業者が数値範囲を最適化又は好適化したものに過ぎず、当業者が適宜なし得る事項である。
[相違点2]について
上記第4 1.(1)の段落【0016】―【0018】に記載された寸法、図3(a)、及び図3(b)から、引用発明では、空間部11の幅wは約1.6(mm)で合計6つあり、左右端部の空間部11a、11bは、それぞれ幅wが約1.65(mm)であるから、空間部の幅の合計は、1.6×6+1.65×2=12.9(mm)程度であり、熱交換器用チューブ全体の幅Wが約16(mm)であるから、幅方向の肉厚の合計は、16-12.9=3.1(mm)程度であり、熱交換器用チューブの幅方向の肉厚が均一であると仮定すると、空間部11同士の間の距離は、3.1÷9≒0.34(mm)程度であり、断面形状における長辺の長さ(幅w)に対する比率は、0.34÷1.6≒0.21、すなわち約21%であると概算され、本願発明の数値範囲より若干低い値となっている。
しかしながら、そもそも伝熱管において、必要な強度を確保するために、中柱の肉厚、すなわち、本願発明でいうところの隣接する第1流路の間の距離を調節することは、例えば引2技術等から、周知技術(以下「周知技術A」)であるといえる。
そうすると、引用発明において、冷媒の内部圧力や熱交換器組立ての際にかかる負荷応力に応じて決まる設計強度を確保するために、周知技術Aを適用して、隣接する流路の間の距離を好適化すること、具体的には、より強度が必要とされる場合に当該距離をより大きく設定することは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎないと認められる。
また、本願発明において、第1流路の断面形状における長辺の長さに対する、隣接する第1流路の間の距離の比率を29%~33%とすることは、当初明細書には直接記載されておらず、当該比率29%~33%は、隣接する第1流路30A間の距離(壁26bの厚み)t1の値である0.5~0.6mmに基づいて算出されたものである。そして、本願発明では、明細書の段落【0050】で、「なお、第1流路30Aと第1流路30Aとの間の距離(壁26bの厚み)t1は、0.5mm以上0.6mm以下とすることが好適である。」と述べている以外に、隣接する第1流路30A間の距離(壁26bの厚み)t1を0.5~0.6mmとすることの効果や技術的意義について述べた特段の記載(例えば、t1が0.5~0.6mmの数値範囲の内と外を比較した場合、効果において顕著な差が存在する等の記載)は見当たらず、技術常識を考慮しても、当該数値範囲によって、当業者が予測し得ないような顕著な効果がもたらされるとはいえない。また、例えば、特開2013-24472号公報の段落【0118】―【0126】等に記載されているように、そもそも、熱交換器の技術分野において、伝熱管の隣接する流路の間の距離(壁厚)は、冷媒の内部圧力や材質等に応じて様々な値を取り得るものであることから、前述の29%~33%という数値範囲が、冷媒の内部圧力や材質等によらず普遍的に顕著な効果を発揮するとも言い難い。したがって、隣接する第1流路30A間の距離(壁26bの厚み)t1を0.5~0.6mmとすること、そして当該数値範囲によって定まる第1流路の断面形状における長辺の長さに対する隣接する第1流路の間の距離の比率を29%~33%とすることの臨界的意義は認められない。
また、上述の特開2013-24472号公報の段落【0118】―【0126】では、伝熱管のアスペクト比w/h(本願発明における「流路の断面形状における長辺の長さと短辺の長さとの比率」に相当)を本願発明と同様の1.1~1.5に設定した場合において、内部圧力Pを5MPa刻みで増加させた際の流路の断面形状における第1幅h(本願発明における「短辺の長さ」に相当)に対する仕切り部160の厚さt1(本願発明における「隣接する第1流路の間の距離」に相当)の比率t1/hの最適値が、様々な値に変化することが記載されている。このように、当業者が最適な強度及び熱交換性能を実現するために、対象となる伝熱管の設定耐圧、流路の横断面積、及び材質に合わせて、隣接する流路の間の距離の数値範囲を好適化することは、適宜設計し得る設計的事項に過ぎないと認められる。
してみると、引用発明においても同様に、隣接する第1流路の間の距離の数値範囲を好適化することは、当業者が強度及び熱交換性能を実現するために伝熱管の設定耐圧、流路の横断面積、及び材質に応じて適宜設計し得る設計的事項に過ぎず、第1流路の断面形状における長辺の長さに対する、隣接する前記第1流路の間の距離の比率を29%~33%とすることは、当業者にとって特段に困難な事項とはいえない。
したがって、本願発明は、引用発明、引用例2に示された周知技術である周知技術A、及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、前述した特開2013-24472号公報の段落【0118】に記載された表9では、前記アスペクト比w/hが1.1で内部圧力Pが15MPaの場合の前記第1幅hに対する前記仕切り部160の厚さt1の比t1/hが0.325となっていることから、第2幅w(本願発明における「長辺の長さ」に相当)に対する前記仕切り部160の厚さt1の比率t1/w(本願発明における「第1流路の断面形状における長辺の長さに対する、隣接する前記第1流路の間の距離の比率」に相当)は、t1/w=(t1/h)÷(w/h)≒0.30、すなわち約30%となり、本願発明において規定されている数値範囲に含まれている。また、特開2013-24472号公報の表9~13から、内部圧力Pが増加するにつれて前記t1/hも増加することが分かるので、表10~13に記載された前記アスペクト比w/hが1.2~1.5の場合も、内部圧力Pの値次第(具体的には、15MPaよりも僅かに大きな値)では、前記比率t1/wが本願発明において規定されている数値範囲内の値になり得ると推認される。
審判請求人は、令和3年9月10日提出の審判請求書において、次のとおり主張している。
「(2-2) 具体的に引用文献1には、冷媒チューブ10の空間部11における幅wと厚さtとが記載されているものの、隣接する空間部11の間の距離、及び、当該距離の幅wに対する比率は記載されておりません。また、隣接する空間部11の間の距離が記載されていないため、前記比率を求めることもできません。したがって、引用文献1には、本願発明における、第1流路の長辺の長さに対する、隣接する第1流路の間の距離の比率(29%~33%)は開示されておりません。」
しかしながら、上記相違点の検討で記載したとおり、本願発明において、第1流路の長辺の長さに対する隣接する第1流路の間の距離の比率を29%~33%とすることの臨界的意義は認められず、また、引用発明において、隣接する第1流路の間の距離の数値範囲を好適化することは、当業者が強度及び熱交換性能を実現するために伝熱管の設定耐圧、流路の横断面積、及び材質に合わせて適宜設計し得る設計的事項に過ぎない。
また、当該審判請求書では、次のとおりの主張もなされている。
「(2-3)拒絶査定謄本によれば、上記相違点1に関して、熱交換性能および伝熱管の強度を考慮して、隣接する第1流路の間の距離(壁の厚さ)を十分に確保することは周知技術であるとし、この周知技術として引用文献2(特開2005-090760号公報)が挙げられております。しかしながら、引用文献2には、流路と流路との間の中柱11a同士の関係が記載されるのみで(段落0003、図10参照)、流路の長辺と壁の厚さとの関係は一切記載されておりません。つまり、引用文献2は、単に特定の壁同士の厚さの関係を示す周知技術であり、流路の長辺の長さと壁の厚さとの関係を示す周知技術ではありません。
また、引用文献2の流路は、図10に示されるように、流路の並び方向(第1方向)の側面にギザギザの突起が形成されているので、流路の長辺の長さをどの位置で規定するのかも明確ではなく、流路の長辺の長さと壁の厚さとの関係を把握することは極めて困難です。図10において、壁の両端の位置(引き出し線のある位置)を流路の両端と仮定したとしても、流路の長辺の長さと壁との比率は約27%となるため、本願発明における比率の範囲とは異なっております。」
しかしながら、上記第42.(2)に記載したように、引用例2(引用文献2)は、単に熱交換器に用いられる扁平チューブ1において、中柱11の肉厚tを大きくすることで強度を確保するという周知技術を示した文献に過ぎず、引用発明に基いて本願発明を当業者が容易に発明をすることができたものであるとする上述の論理を覆す根拠とはいえない。
よって、審判請求人の上記主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-012088