特許拒絶査定不服審判
2021-009430
熱交換器
- 審判番号
- 2021-009430
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-534270
- 請求日
- 2021年07月15日
- 審決日
- 2022年03月18日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アルファ-ラヴァル・コーポレート・アーベー
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 審判長/審判官
- 審判長 林 茂樹
- 審判官 松下 聡
- 審判官 槙原 進
- 分類
- P18 .121-Z (F28F) / P18 .575-Z (F28F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-534270「熱交換器」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月28日国際公開、WO2018/115253、令和2年1月23日国内公表、特表2020-502470〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年12月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年12月23日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、令和2年10月1日付けで拒絶理由が通知され、令和3年1月8日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和3年3月10日付けで拒絶査定がされ、その後、令和3年7月15日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 令和3年7月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年7月15日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)。
「【請求項1】
熱交換プロセスに関係するものである第1の作動流体用の第1の熱交換流路、および前記熱交換プロセスに関係するものである第2の作動流体用の第2の熱交換流路を有する熱交換器コア(2)と、
前記第1の熱交換流路および前記第2の熱交換流路のうちの少なくとも一方に、またはそこから作動流体を運ぶためのダクトを備え、ヘッダ-コア接合部(46)に沿って前記熱交換器コア(2)に溶接される、ヘッダ(3、4、5、6)とを備え、
前記熱交換器コア(2)が、少なくとも部分的に前記ヘッダ-コア接合部(46)に沿って延在する溝(60、60a、60b)を有し、前記溝(60、60a、60b)の断面が、楕円形状の一部をたどる丸みの付いた形状を有し、前記溝(60、60a、60b)の深さ(61)が、前記溝(60、60a、60b)の幅(62)の半分より大きく、前記楕円形状の長半径と短軸の間の関係が、0.6~1.5の範囲である、
熱交換器(1)。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の令和3年1月8日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】 熱交換プロセスに関係するものである第1の作動流体用の第1の熱交換流路、および前記熱交換プロセスに関係するものである第2の作動流体用の第2の熱交換流路を有する熱交換器コア(2)と、
前記第1の熱交換流路および前記第2の熱交換流路のうちの少なくとも一方に、またはそこから作動流体を運ぶためのダクトを備え、ヘッダ-コア接合部(46)に沿って前記熱交換器コア(2)に溶接される、ヘッダ(3、4、5、6)とを備え、
前記熱交換器コア(2)が、少なくとも部分的に前記ヘッダ-コア接合部(46)に沿って延在する溝(60、60a、60b)を有し、前記溝(60、60a、60b)の断面が、丸みの付いた形状を有し、前記溝(60、60a、60b)の深さ(61)が、前記溝(60、60a、60b)の幅(62)の半分より大きい、
熱交換器(1)。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1における「溝(60、60a、60b)の断面」が有する「丸みの付いた形状」に対して、「楕円形状の一部をたどる」ものであって、「楕円形状の長半径と短軸の間の関係が、0.6~1.5の範囲である」との限定を新たに付加する補正であって、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、全体として、特許請求の範囲の請求項1に関する本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。
そこで、本件補正によって補正された請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について、以下に検討する。
(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用例の記載等
ア 引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用例である特開昭62-37687号公報には、図面とともに以下の記載がある(下線は理解の一助のために当審が付与した。以下同様。)。
(ア)引用例1の記載
1a)「2.〔特許請求の範囲〕
1(a) 複数の平坦な金属板を積層状態で配置して拡散接合により面接触状態で互いに接合してコアを形成し、少なくとも一部の複数の板に、板の互いに反対側の第1対の縁部の間を延びる第1群の溝を形成し、少なくとも一部の複数の板に、上記第1群に対して横方向に配置される第2群の溝を形成し、該第2群の溝を板の互いに反対側の第2対の縁部の間で延ばすとともに、第1群の溝と連通しない状態に保ち、各板の溝を板厚よりも小さい深さで形成して、その深さを0.2mmないし1.5mmの範囲内に設定し、
(b) コアの互いに反対側の縁部に第1及び第2のヘッダーを接合して第1群の溝に流体が流れる状態で連通させ、
(c) 第1及び第2のヘッダーを介して第1群の溝に第1流体を流すための手段を設け、
(d) コア及びヘッダーを収容する容器を設け、該容器の内部をコアの第2群の溝に対して流体が流通する状態で連通させ、
(e) コアの第2群の溝及び容器の内部へ第2流体を流入させる手段を設け、容器を通過する第2流体が、容器の内部に於て第1及び第2ヘッダーの外面と接触するようにし、
(f) 第2流体をヘッダーと接触した後に、容器の内部から排出する手段を設けたことを特徴とする熱交換器。」(第1ページ左欄第4行ないし右欄第10行)
1b)「ヘッダーまたはマニフォールド(ヘッダーと総称する)を熱交換器のコアに取り付けると、適当な処置を施さない場合、ヘッダーの温度は、そこを流れる流体の温度に近付くのに対し、コアの温度は両方の流体の入口温度の間の値となる。そのために、コアとヘッダーとの取付部が剛体である場合(例えば溶接やろう付け、半田付で固定した場合)、ヘッダーとコアの間の膨張量の差により、ヘッダーとコアとの取付部の近傍で著しい応力が生じる。このために、延性のある材料を使用した場合には、動作サイクルが増加すると、疲労破壊が生じ、もろい材料を使用した場合には、即時、破損する。
上記問題は、一方の流体の入口温度がコアの温度と離れており、高い流体圧に耐えるためにヘッダーに重い壁部を設ける場合に非常に重大になる。この様な状況は、一方の流体の熱容量が他方の流体よりも非常に低く、そのために、熱交換器を流れる間に大きい温度変化が生じる場合や、一方の流体が、例えば伝熱性が低いために、他方の流体よりもコア内での熱移動係数が非常に低い場合に生じる。」(第2ページ右下欄第17行ないし第3ページ左上欄第18行)
1c)「本発明の熱交換器では、上記問題を解決するために、複数の平坦な金属板を積層状態で配置して拡散接合により面接触状態で互いに接合してコアを形成している。少なくとも一部の複数の板には、板の互いに反対側の第1対の縁部の間を延びる第1群の溝を形成し、少なくとも一部の複数の板には、上記第1群に対して横方向に配置される第2群の溝を形成し、該第2群の溝を板の互いに反対側の第2対の縁部の間で延ばすとともに、第1群の溝と連通しない状態に保っている。各板の溝は板厚よりも小さい深さで形成して、その深さを0.2mmないし1.5mmの範囲内に設定する。コアの互いに反対側の縁部に第1及び第2のヘッダーを接合して第1群の溝に流体が流れる状態で連通させるとともに、第1及び第2のヘッダーを介して第1群の溝に第1流体を流すための手段が設けてある。コアならびに第1及び第2のヘッダーを収容する容器が設けてあり、該容器の内部がコアの第2群の溝に対して流体が流通する状態で連通している。コアの第2群の溝及び容器の内部へ第2流体を流入させる手段を設け、第2流体が、容器の内部に於て第1及び第2ヘッダーの外面と接触するようにし、第2流体をヘッダーと接触した後に、容器の内部から排出するようになっている。」(第3ページ右上欄第12行ないし左下欄第15行)
1d)「第1図及び第1A図に示す如く、熱交換器のコアには多数の平坦なステンレス板からなる積層体20が設けてある。それらの板は互いに面接触状態で接合されており、1対の端板21,22の間に配置されている。上記板は接触面に於て拡散接合により接合されており、上記接合を行う場合、板を互いに圧接させた状態で金属の融点に近い温度まで加熱し、それにより界面結晶成長を促進する。接合処理中は、板の積層体を0.5%~5.0%だけ圧縮し、それにより、接合状態を確実にするとともに、板の平坦度が低い場合に、それを補償する。
積層体20は、2種類の板23,24を交互に績み重ねた構造である。一方の板23には縦方向に延びる複数の溝25が設けてあり、各溝25は板の互いに反対側の1対の(第1対の)縁26a,26bの間を延びている。他方の板24には、横方向に延びる溝27が形成してあり、各溝27は板の他方の対の(第2対の)互いに反対側の縁28a,28bの間を延びている。」(第4ページ左下欄第3ないし20行)
1e)「熱交換器に使用する第1流体が水で、第2図の板の溝を流れ、第2流体が油で、第3図の板の溝を流れる場合、板23,24の寸法は、例えば長さが450mm、幅が70mm、厚さが1.0mmに設定する。溝25,27は、その幅を1.0~2.0mmにし、深さを0.3~0.6mmの範囲にする。端板21,23の厚さは10.0mmのオーダーにする。
第5図に示す如く、コアの互いに反対側の縁部に第1及び第2のヘッダー35,36が溶接されており、流体の入口・出口導管37が各ヘッダーの内部に接続している。コアを完成品の熱交換器に組み込んだ状態では、ヘッダー35から溝25へ流体が流入し、溝25を流れる間に、他方の溝27を流れる第2流体との間で熱交換を行い、コアからヘッダー36を通って排出される。
第6図に示すコア構造は第5図の構造と類似しているが、更に別の(第3の)ヘッダー38をコアの第3の縁部に溶接し、ヘッダー38により横方向に延びる溝へ流体を送り込むようにした点が異なっている。ヘッダー38へは導管39から流体が供給される。」(第5ページ左上欄第17行ないし右上欄第17行)
1f)
[図:0001388004000001.jpg]
[図:0001388004000002.jpg]
[図:0001388004000003.jpg]
(イ)引用発明
上記(ア)の記載を総合すると、引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「第1流体と第2流体との間で熱交換を行うものである、第1流体を流すための第1群の溝25、及び第2流体を流すための第2群の溝27を有するコアと、
第1群の溝25に流体を流入、または排出するためのものであって、コアの互いに反対側の縁部においてコアに溶接される第1及び第2のヘッダー35、36を備えた、熱交換器。」
イ 引用例2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用例である特開昭59-200197号公報には、図面とともに以下の記載がある。
(ア)引用例2の記載
2a)「特許請求の範囲
1. 胴体および水室に溶接によって連結される管板に塑性加工により継手部を形成し、この継手部と前記胴体および前記氷室とを溶接によって連結したことを特徴とする給水加熱器。
2. 前記管板の溶接継手部近傍に塑性加工により環状の窪み部を形成したことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の給水加熱器。」(第1ページ左欄第3ないし10行)
2b)「〔発明の実施例〕
本発明の一実施例を第2図を用いて説明する。
本発明の給水加熱器は管板に塑性加工により継手部を形成しているが、これにより技術的に解決すべき次のような問題点がある。つまり、
1)高温、高圧力下で使用される管板2の熱応力が緩和出来る構造であること。
2)製品重量の低減を含め、歩留りのよくなる形状、構造であること。
3)機械加工費の低減可能な形状、構造であること。
4)開先形状、位置を含め、溶接工数の低減出来る溶接方法が採用可能な構造であること。
そこで、このような問題点を解決するために、それぞれの問題点について、本発明の給水加熱器では次のように解決策を講じている。即ち、第2図において、
1)高温、高圧での使用による管板2と水室1との溶接部近傍での熱応力を緩和するために、管板2側にヘコミr部を設ける。このヘコミrの大きさは、給水加熱器の運転条件(圧力、温度等)を考慮し、有限要素法等の応力解析をもとに決定され、熱応力の緩和が可能となる。
2)塑性加工した管板2の巾Wsは、第1図における従来の管板の巾Wに比べ、水室2との突合せ溶接のフランジ部分および、胴体3との突合せ溶接フランジ部分がないだけ短縮が可能であるため、管板2自体でも重量低減が可能である。
3)上記2)項のように、本発明の管板2の形状では重量低減が可能に加え、従来品のように水室1および胴体3の突合せ溶接フランジ部の機械加工がなくなり、管板加工費の低減が可能である。
4)本発明では管板を塑性加工するため、従来品のような管板側に突合せ溶接フランジ部が不要となる。このため、管板2と水室1との溶接(A’部)に当つては、管板厚方向と開先形状を形成し、極力、溶接量が少なく、かつ、従来品以上の溶接強度を保持出来る溶接方法を採用する必要がある。そこで、本発明では構造上からその溶接方法としてツイストナロウギヤツクウエルディングを適用している。本溶接方法では開先形状が小さく、溶接量が少なくてすむため、必然的に溶接工数の少ない溶接が可能である。」(第1ページ右欄第17行ないし第2ページ右上欄第19行)
2c)
[図:0001388004000004.jpg]
(イ)引用例2記載事項
上記(ア)の記載を総合すると、引用例2には次の事項(以下「引用例2記載事項」という。)が記載されている。
「給水加熱器の管板2と水室1との溶接部近傍における熱応力を緩和するために、管板2側にヘコミr部を設けるとともに、ヘコミr部の大きさは、給水加熱器の運転条件(圧力、温度等)を考慮し、有限要素法等の応力解析をもとに決定されること。」
ウ 引用例3
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用例である特開2013-243232号公報には、図面とともに以下の記載がある。
(ア)引用例3の記載
3a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に開口するキャビティを有するセラミック製のパッケージ本体の該表面に、上記キャビティの平面視が矩形状の開口部を囲むように形成されたメタライズ層の上方にロウ付けされる金属枠体であって、
上記金属枠体は、平面視が矩形枠状の枠本体と、
上記枠本体の表面において金属蓋の周辺部に覆われる内周側の領域を除いた外周側の領域、および上記枠本体の外側面の少なくとも何れか一方に形成され、且つ上記枠本体の平面視における外形に沿って平面視が矩形枠状を呈する単一の枠状溝、あるいは、少なくとも上記枠本体のコーナー部における表面および外側面の何れか一方に形成された単数または複数の部分溝と、を備えている、
ことを特徴とするセラミックパッケージ用金属枠体。」
3b)「【0006】
本発明は、背景技術で説明した問題点を解決し、キャビティが開口するセラミックパッケージの表面に設けたメタライズ層上にロウ付けされ且つ追ってその上に金属蓋が溶接され、該溶接時に上記メタライズ層が剥離し難い金属枠体、および該金属枠体を用いたセラミックパッケージを提供する、ことを課題とする。」
3c)「【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、金属枠体と金属蓋との溶接直後に、これらの部品を構成する材料ごとの熱膨張率の差に起因して、冷却過程における収縮に伴う応力が金属枠体側からセラミック製のパッケージ本体側に伝達しにくくなる溝などを金属枠体の表面などに形成する、ことに着想して成されたものである。
即ち、本発明による第1のセラミックパッケージ用(請求項1)金属枠体は、表面に開口するキャビティを有するセラミック製のパッケージ本体の該表面に、上記キャビティの平面視が矩形状の開口部を囲むように形成されたメタライズ層の上方にロウ付けされる金属枠体であって、該金属枠体は、平面視が矩形枠状の枠本体と、該枠本体の表面において金属蓋の周辺部に覆われる内周側の領域を除いた外周側の領域、および上記枠本体の外側面の少なくとも何れか一方に形成され、且つ上記枠本体の平面視における外形に沿って平面視が矩形枠状を呈する単一の枠状溝、あるいは、少なくとも上記枠本体のコーナー部における表面および外側面の何れか一方に形成された単数または複数の部分溝と、を備えている、ことを特徴とする。」
3d)「【0009】
これらによれば、前記金属枠体は、平面視が矩形枠状の枠本体の表面において金属蓋の周辺部に覆われる内周側の領域を除いた外周側の領域、および上記枠本体の外側面の何れか一方の少なくともコーナー部に形成された枠状溝、部分溝、あるいは、凹部を備えている。一方、かかる金属枠体をセラミック製のパッケージ本体の表面に形成したメタライズ層の上方にロウ付けした場合、キャビティに電子部品を実装した後、金属枠体の表面の内周側に金属蓋の周辺部を載置し且つ該金属蓋において対向する一対の周辺部に沿ってローラ電極を転動させつつ上記金属蓋をシーム溶接する際、溶接熱による膨張後の冷却過程における収縮が各構成部品に生じる。この際に、上記セラミック製のパッケージ本体と、金属製の金属蓋、金属枠体、ロウ材、およびメタライズ層との熱膨張係数の差が大であるため、パッケージ本体の外側面とこれが接触しているメタライズ層の外周側との境界において、上記冷却過程における収縮に伴って生じる応力が集中的に作用しても、前記枠状溝、部分溝、あるいは凹部によって、上記応力の影響を抑制ないし低減することができる。」
3e)「【0010】
更に、金属枠体の前記部分溝や単数または複数の凹部を、枠本体の表面における外周面側の領域の少なくともコーナー部、あるいは外側面の少なくともコーナー部だけに形成した場合であっても、これらのコーナー部は、シーム溶接を1回だけ受ける各辺の中央側に比べて、縦横の各周辺に沿って2回のシーム溶接を受けので、前記メタライズ層とパッケージ本体との境界に顕著に及ぶ応力の影響を低減ないし緩和することが可能となる。 従って、金属蓋の溶接時において、メタライズ層が剥離しにくくなるので、金属蓋によるキャビティの封止性に優れたセラミックパッケージを確実に提供できると共に、金属蓋の溶接時の熱的な条件の範囲を拡大することも可能となる。 【0011】 尚、前記セラミックは、アルミナや窒化アルミニウムなどの高温焼成セラミックまたは低温焼成セラミックの一種であるガラス?セラミックである。 また、前記メタライズ層は、前記パッケージ本体の表面のほぼ全面に形成され、例えば、W、Mo、Cu、Agなどからなる導体である。 更に、前記金属枠は、42アロイ(Fe-42wt%Ni)、コバール(Fe-29wt%Ni-17wt%Co)、あるいは194合金(Cu-2.3wt%Fe-0.03wt%P)などからなる。 また、前記溝は、断面がV字形状、U字形状、半楕円形状、または凹形状を呈し、レーザー加工、あるいは、鋸刃、刃物(型)、凸型の挿入により形成される。
更に、前記部分溝は、長円形や楕円形のほか、コーナー部に専用のほぼL字形状(鈎型)も含んでいる。
加えて、前記凹部は、平面視が円形、長円形、楕円形、あるいは四角形以上の多角形のほか、コーナー部に適した三角形状や円弧形状を呈する有底穴であり、例えば、前記形状と相似形の凸型の挿入によって形成される。」
3f)「【0017】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明による一形態の金属枠体1aを示す平面図、図2は、図1中のX-X線の矢視に沿った部分垂直断面図である。
金属枠体1aは、例えば、コバールなどの金属からなり、図1,図2に示すように、内側に平面視で矩形状の中空部7を有する平面視が矩形枠状の枠本体2と、該枠本体2の表面3において追って金属蓋34の周辺部に覆われる内周側の領域9を除いた外周側の領域10に形成され、且つ上記枠本体2の平面視における外形に沿って平面視が矩形枠状を呈する単一の枠状溝11と、を備えている。
上記枠状溝11は、断面がU字形状を呈するが、例えば、図3に示すように、断面が縦に細長い半楕円形状の枠状溝12や、図4に示すように、断面がV字形状を呈する枠状溝13としても良い。以上のような枠状溝11?14は、例えば、コバール製の枠本体2に対してレーザー加工を施すことにより形成される。」
3g)
[図:0001388004000005.jpg]
(イ)引用例3記載事項
上記(ア)の記載を総合すると、引用例3には次の事項(以下「引用例3記載事項」という。)が記載されている。
「金属枠体の表面の内周側に金属蓋を溶接する際に、断面が縦に細長い半楕円形状の枠状溝を金属蓋の外周部に沿って金属枠体に設けることにより、溶接熱による膨張後の収縮によって生じる応力による影響を抑えること。」
(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「第1流体」は、本願補正発明における「第1の作動流体」に相当し、以下同様に、「第2流体」は「第2の作動流体」に、「第1群の溝25」は「第1の熱交換流路」に、「第2群の溝27」は「第2の熱交換流路」に、「コア」は「熱交換器コア」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明における「第1流体と第2流体との間」の「熱交換」は、本願補正発明における「熱交換プロセス」に相当するから、引用発明における「第1流体と第2流体との間で熱交換を行うものである、第1流体を流すための第1群の溝25、及び第2流体を流すための第2群の溝27」は、本願補正発明における「熱交換プロセスに関係するものである第1の作動流体用の第1の熱交換流路、および前記熱交換プロセスに関係するものである第2の作動流体用の第2の熱交換流路」に相当する。
さらに、引用発明における「第1及び第2のヘッダー35、36」は、本願補正発明における「ヘッダ」に相当し、引用発明における「コアの互いに反対側の縁部においてコアに溶接される」ことは、引用例1におけるFig.5等からみて、第1及び第2のヘッダー35、36は、気密性等を考慮してコアの縁部と接している周縁部に沿って溶接されることは技術常識からみて明らかであるから、本願補正発明における「ヘッダ-コア接合部に沿って熱交換器コアに溶接される」ことに相当する。
また、引用発明における「第1及び第2のヘッダー35、36」は、「第1群の溝25に流体を流入、または排出するためのもの」であって、引用例1におけるFig.5等からみた形状によると内部に一定の領域を画定するものであるから、本願補正発明における「ダクト」を形成するものといえる。
したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
[一致点]
「熱交換プロセスに関係するものである第1の作動流体用の第1の熱交換流路、および前記熱交換プロセスに関係するものである第2の作動流体用の第2の熱交換流路を有する熱交換器コアと、
前記第1の熱交換流路に、そこから作動流体を運ぶためのダクトを備え、ヘッダ-コア接合部に沿って前記熱交換器コアに溶接される、ヘッダとを備えた、熱交換器。」
[相違点]
本願補正発明においては、「前記熱交換器コアが、少なくとも部分的に前記ヘッダ-コア接合部に沿って延在する溝を有し、前記溝の断面が、楕円形状の一部をたどる丸みの付いた形状を有し、前記溝の深さが、前記溝の幅の半分より大きく、前記楕円形状の長半径と短軸の間の関係が、0.6~1.5の範囲である」のに対して、引用発明においては、「コア」が、「第1及び第2のヘッダー35、36」が溶接された部分に沿って設けられた、そのような溝を有するか不明である点。
以下、相違点について検討する。
[相違点について]
引用例2記載事項は、「給水加熱器の管板2と水室1との溶接部近傍における熱応力を緩和するために、管板2側にヘコミr部を設けるとともに、ヘコミr部の大きさは、給水加熱器の運転条件(圧力、温度等)を考慮し、有限要素法等の応力解析をもとに決定されること」であって、給水加熱器(熱交換器)において、管板2(熱交換器本体)と、水室1(ヘッダ)との間の溶接部(ヘッダ-コア接合部)近傍においてヘコミr部(丸みのついた溝)を設けることにより熱応力を緩和することについて開示している。
また、引用例3記載事項は、「金属枠体の表面の内周側に金属蓋を溶接する際に、断面が縦に細長い半楕円形状の枠状溝を金属蓋の外周部に沿って金属枠体に設けることにより、溶接熱による膨張後の収縮によって生じる応力による影響を抑えること」である。
そして、引用例2記載事項、引用例3記載事項、及び特開2010-91174号公報(周知の技術的事項を示すために新たに追加した文献。図3における溶接部8及び溝10、段落【0022】の記載を参照。)の記載によると、「部材間の溶接部分に生じる熱応力による影響を抑えるために、溶接部分の周縁に沿った溝を設けること、及び溝の形状は、溶接部分に加わる応力の程度や温度等に応じて決定しうること」は、周知の技術的事項(以下「周知技術」という。)であって、そのうち、引用例3記載事項は、溶接部分に沿った溝を「断面が縦に細長い半楕円形状」、すなわち、溝の深さ(楕円の長軸の半分)を溝の幅の半分(楕円の短軸の半分)より大きい楕円形状とすることについて開示している。
また、本願補正発明において「溝」の「楕円形状の長半径と短軸の間の関係」が、「0.6~1.5」であることについて、引用例3記載事項にあるように、溶接部分に沿った溝が「断面が縦に細長い半楕円形状」であれば、「楕円形状の長半径と短軸の間の関係」は0.5(完全な円形の場合の値)より大きい範囲となり、0.6~1.5を含み得る。
そして、上記周知技術にあるように、溝の形状は、溶接部分に加わる応力の程度や温度等に応じて決定し得ることであり、本願明細書段落【0064】、【表2】をみても0.6~1.5の数値範囲の上限値及び下限値を境としてその内と外において応力に顕著な差異があることは認められないので、「楕円形状の長半径と短軸の間の関係」の最小値を0.6とし、最大値を1.5とすることについての臨界的意義は認められない。
そうすると、上記(2)ア(ア)1b)に記載されているように、引用発明はヘッダとコアの取付部の近傍で著しい応力が生じるという課題を内在するものであるので、当業者であれば、その課題を解決するために、引用発明に、周知技術及び引用例3記載事項を適用して、引用発明における「コア」と「第1及び第2のヘッダー35、36」とが溶接された部分に沿って溝を設け、溝の形状を、断面が縦に細長い半楕円形状、すなわち、溝の深さが、溝の半分より大きくすることは、容易になし得ることであり、その際に溝の楕円形状の長半径と短軸の間の関係を、0.6~1.5とすることは、上記したように数値限定に臨界的意義が認められないので、必要に応じて適宜決定し得ることである。
そして、本願補正発明は、引用発明、周知技術、及び引用例3記載事項から予想される以上の格別の効果を奏するものではない。
したがって、本願補正発明は、引用発明、周知技術、及び引用例3記載事項に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(4)むすび
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明
1 本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 1(2)に記載したとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし20に係る発明は、本願の出願前(優先日前)に日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
・請求項1ないし20に対し、引用例1ないし3
<引用例一覧>
1.特開昭62-37687号公報
2.特開昭59-200197号公報
3.特開2013-243232号公報
3 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1ないし3の記載事項は、前記第2 2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2 2で検討した本願補正発明における「溝(60、60a、60b)の断面」が有する「丸みの付いた形状」に対する、「楕円形状の一部をたどる」ものであって、「楕円形状の長半径と短軸の間の関係が、0.6~1.5の範囲である」との限定を省いたものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2 3に記載したとおり、引用発明、周知技術、及び引用例3記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、周知技術及び引用例3記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-009430