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特許拒絶査定不服審判

2022-014524

熱交換器および熱交換器の製造方法

審判番号
2022-014524
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-192060
請求日
2022年09月14日
審決日
2023年04月10日
公報発行日
2023年05月26日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
  • 【請求人】株式会社デンソー
  • 【請求人代理人】弁理士法人ゆうあい特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 西村 泰英
  • 審判官 槙原 進
  • 審判官 間中 耕治
分類
P18 .121-WY (F28F) / P18 .65 -WY (F28F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法37条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第37条、特許法第29条第2項
データ出所
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特願2018-192060「熱交換器および熱交換器の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月16日出願公開、特開2020- 60326、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年10月10日の出願であって、その手続の主な経緯は以下のとおりである。 令和4年2月18日付け:拒絶理由通知 令和4年4月13日 :意見書及び手続補正書の提出 令和4年8月29日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。) 令和4年9月14日 :拒絶査定不服審判の請求 第2 原査定の概要 原査定の概要は、次のとおりである。 1 理由1(発明の単一性) 本願はこの出願は、下記の点で特許法第37条に規定する要件を満たしていない。 2 理由2(進歩性) 本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ●理由1(発明の単一性)について 請求項1及び3に係る発明は、引用文献1に記載された発明に対して周知技術を付加したものであり、特別な技術的特徴を有しない。 したがって、本願は、特許法第37条の規定に違反している。 請求項2に係る発明及び請求項3~9に係る発明のうち請求項2に従属する発明については、特許法第37条以外の要件についての審査を行っていない。 ●理由2(進歩性)について ・請求項1及び3に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・請求項4~7に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・請求項8に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献3に記載された事項及び周知技術に基いて、又は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項、引用文献3に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・請求項9に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献4に記載された事項及び周知技術に基いて、又は、引用文献1に記載された発明、引用文献3に記載された事項、引用文献4に記載された事項及び周知技術に基いて、又は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項、引用文献3に記載された事項、引用文献4に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 <引用文献等一覧> 1.特開2016-215248号公報 2.国際公開第2015/162911号 3.特開平3-77776号公報 4.特開2008-100283号公報 第3 本願発明 本願の請求項1~9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明9」という。)は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 フラックスが存在しないアルミニウム合金製の熱交換器であって、 内部に流体が流れる流路を形成する流路形成部材(12)と、 前記流路形成部材の表面に接合され、前記表面よりも広い伝熱面を有する伝熱部材(14)と、 前記流路形成部材に接合され、前記流路形成部材の前記流路に連通するタンク空間を形成するためのタンク部材(162)と、 前記タンク部材に接合される接合部材(164、166、18)と、 前記伝熱部材と前記流路形成部材とのろう付け接合部(20)に形成された第1フィレット(22)と、 前記流路形成部材と前記タンク部材とのろう付け接合部(24)に形成された第2フィレット(26)と、 前記タンク部材と前記接合部材とのろう付け接合部(28、32、40)に形成された第3フィレット(30、34、42)とを備え、 前記流路形成部材、前記伝熱部材、前記タンク部材および前記接合部材のそれぞれは、アルミニウム合金で構成され、 前記流路形成部材の平均板厚は、0.100mm以上0.400mm以下であり、 前記伝熱部材の平均板厚は、0.025mm以上0.150mm以下であり、 前記タンク部材の平均板厚は、0.500mm以上2.000mm以下であり、 前記接合部材の平均板厚は、0.500mm以上2.000mm以下であり、 前記第1フィレット、前記第2フィレットおよび前記第3フィレットのそれぞれのフィレットは、マグネシウムと、ビスマスと、シリコンとを含むアルミニウム合金で構成され、 前記それぞれのフィレットのマグネシウムの濃度は、0.2質量%以上2.0質量%以下であり、 前記流路形成部材と前記伝熱部材との少なくとも一方は、表面側にろう材層(122、142)を有し、 前記流路形成部材が前記ろう材層(122)を有する場合、前記流路形成部材の板厚中央部でのマグネシウムの濃度は、0.1質量%以上1.0質量%以下であり、 前記伝熱部材が前記ろう材層(142)を有する場合、前記伝熱部材の板厚中央部でのマグネシウムの濃度は0.2質量%以上1.0質量%以下である、熱交換器。 【請求項2】 フラックスが存在しないアルミニウム合金製の熱交換器であって、 流体が流れる流路を形成する流路形成部材(52、54)と、 前記流路形成部材の表面に接合され、前記表面よりも広い伝熱面を有する伝熱部材(56、58)と、 前記流路形成部材に接合され、前記流路形成部材を補強する補強部材(60、62)と、 前記補強部材に接合される接合部材(64)と、 前記伝熱部材と前記流路形成部材とのろう付け接合部(66a、66b)に形成された第1フィレット(68a、68b)と、 前記流路形成部材と前記補強部材とのろう付け接合部(70)に形成された第2フィレット(72)と、 前記補強部材と前記接合部材とのろう付け接合部(74)に形成された第3フィレット(76)とを備え、 前記流路形成部材、前記伝熱部材、前記補強部材および前記接合部材のそれぞれは、アルミニウム合金で構成され、 前記流路形成部材の平均板厚は0.200mm以上0.600mm以下であり、 前記伝熱部材の平均板厚は0.025mm以上0.150mm以下であり、 前記補強部材の平均板厚は、0.600mmより大きく、2.000mm以下であり、 前記接合部材の平均板厚は、0.600mmより大きく、2.000mm以下であり、 前記第1フィレット、前記第2フィレットおよび前記第3フィレットのそれぞれのフィレットは、マグネシウムと、ビスマスと、シリコンとを含むアルミニウム合金で構成され、 前記それぞれのフィレットのマグネシウムの濃度は、0.2質量%以上2.0質量%以下であり、 前記流路形成部材と前記伝熱部材との少なくとも一方は、表面側にろう材層(522、562、563)を有し、 前記流路形成部材が前記ろう材層(522)を有する場合、前記流路形成部材の板厚中央部でのマグネシウムの濃度は、0.1質量%以上1.0質量%以下であり、 前記伝熱部材が前記ろう材層(562、563)を有する場合、前記伝熱部材の板厚中央部でのマグネシウムの濃度は0.2質量%以上1.0質量%以下である、熱交換器。 【請求項3】 前記それぞれのフィレットのマグネシウムの濃度は、0.3質量%以上である、請求項1または2に記載の熱交換器。 【請求項4】 前記流路形成部材は、心材層(121)と、前記心材層の片側に位置する前記ろう材層(124、126)と、前記心材層に対して前記ろう材層側の反対側に位置する、ろう材ではないクラッド層(125、127)とを有し、 前記流路形成部材の一部の前記ろう材層と、前記流路形成部材の他の一部の前記クラッド層とが接合されており、 前記クラッド層の表層でのマグネシウムの濃度は、前記流路形成部材の板厚中央部でのマグネシウムの濃度よりも低い、請求項1に記載の熱交換器。 【請求項5】 前記流路形成部材は、心材層(121)と、前記心材層の片側に位置する、ろう材ではないクラッド層(127)とを有し、 前記伝熱部材は、前記ろう材層(142、143)を有し、 前記クラッド層と前記ろう材層とが接合されており、 前記クラッド層の表層でのマグネシウムの濃度は、前記流路形成部材の板厚中央部でのマグネシウムの濃度よりも低い、請求項1または2に記載の熱交換器。 【請求項6】 前記流路形成部材は、心材層(121)と、前記心材層の片側に位置する、ろう材ではないクラッド層(127)とを有し、 前記伝熱部材は、前記ろう材層(142、143)を有し、 前記クラッド層と前記ろう材層とが接合されており、 前記クラッド層の表層でのマグネシウムの濃度は、0以上0.1質量%以下である、請求項1または2に記載の熱交換器。 【請求項7】 前記流路形成部材と前記伝熱部材との一方の部材は、心材層(121、141)と、前記ろう材層(122、142、143)とを有し、 前記流路形成部材と前記伝熱部材との他方の部材は、心材が露出したベア材(141、121)で構成されており、 前記ろう材層と前記ベア材とが接合されており、 前記他方の部材の板厚中央部でのマグネシウム濃度は0以上0.1質量%以下である、請求項1または2に記載の熱交換器。 【請求項8】 前記流路形成部材の表面側部分には、亜鉛が添加されており、 前記流路形成部材には、前記流路形成部材の板厚方向に、50mV以上の電位差が形成されている、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の熱交換器。 【請求項9】 請求項1ないし8のいずれか1つに記載の熱交換器を製造する熱交換器の製造方法であって、 大気よりも低酸素濃度とされた環境下、かつ、大気圧下または大気圧よりも高い圧力下で、フラックスが塗布されていない状態でのろう付けによって前記熱交換器を製造する、熱交換器の製造方法。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について (1)引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の記載がある。(なお、下線は理解の一助として当審において付したものである。以下、同様。) 「【0001】 本発明は、中空構造体と、該中空構造体に差し込まれた管状部材とを有するアルミニウム構造体の製造方法に関する。 ・・・ 【0005】 また、例えば熱交換器においては、アルミニウム構造体の外表面に表面処理を施す工程があり、この工程において酸等を用いてフラックス残渣を洗い落とす作業のコスト負担が問題視されている。更に、近年では、特に自動車用の熱交換器において、熱交換器の一層の小型化、軽量化が強く望まれており、これに伴って熱交換器内部の冷媒流路が微細化している。そのため、ろう付を行った後に、冷媒流路がフラックス残渣で目詰まりを起こすという問題が生じている。 ・・・ 【0007】 そこで、酸化皮膜を破壊する作用を有するMg等をろう材に添加し、フラックスを用いることなく不活性ガス雰囲気下でろう付を行う、いわゆるフラックスレスろう付法が提案されている。例えば特許文献2には、Al-Si-Mg系合金ろう材を用い、非酸化性ガス雰囲気でフラックス無しでろう付を行う方法が提案されている。」 「【0031】 上記中空構造体を構成するクラッド板は、上記心材層と、上記ろう材層とを含む複層構造を有している。即ち、上記クラッド板は、心材層の片面にろう材層が配置された2層クラッド板であってもよく、心材層とろう材層との間にこれらとは異なる化学成分を有する中間材層が配置された3層以上の複層クラッド板であってもよい。 ・・・ 【0033】 上記心材層は、Mg:0.2~1.3%(質量%、以下同じ)を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる化学成分を有するアルミニウム合金より構成されていてもよい。心材層に含まれるMgは、ろう付処理においてろう中に溶出する。それ故、心材層から溶出したMgにより中空構造体や筒状部材等の表面に存在する酸化皮膜を破壊することができる。その結果、健全なフィレットをより容易に形成することができる。 【0034】 Mgの含有量が0.2%未満の場合には、酸化皮膜を破壊する効果が不十分となるおそれがある。一方、Mgの含有量が1.3%を超える場合には、ろう付処理の際に、心材層へろうが浸透する「エロージョン」と呼ばれる現象が発生し、ろう付性が低下するおそれがある。また、この場合には、ろうに溶出するMgの量が多くなることにより、ろうの表面張力が低下し、フィレットを形成する能力の低下を招くおそれがある。 【0035】 また、上記ろう材層は、Si:6~13%を必須に含有し、更にMg:0.2~1.2%、Li:0.004~0.1%、Be:0.004~0.1%及びCa:0.005~0.03%からなる群より選ばれる1種または2種以上を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金より構成されていてもよい。Siの含有量を上記特定の範囲とすることにより、中空構造体の外表面に存在する被接合部に十分な量のろうを供給し、ろう付性を向上させることができる。 【0036】 また、Mg、Li、Be、Ba及びCaの含有量を上記特定の範囲とすることにより、ろう付処理においてこれらの元素をろう中に溶出させ、被接合部に存在する酸化皮膜を破壊することができる。その結果、健全なフィレットを容易に形成することができる。 ・・・ 【0039】 上記ろう材層を構成するアルミニウム合金は、更にBi(ビスマス):0.004~0.2%を含有していてもよい。Biは、ろう中に存在することにより表面張力を低下させ、結果としてろう付性を向上させることができる。Biの含有量が0.004%未満の場合には、表面張力を低下させる効果が不十分となる。また、Biの含有量が0.2%を超える場合には、ろう材の圧延の際に割れが生じ易くなる。更に、この場合には、ろうの表面張力が過度に低下し、かえってフィレットを形成する能力が低下するおそれがある。」 「【0057】 (実施例) 上記アルミニウム構造体の製造方法の実施例について、図を用いて説明する。本例のアルミニウム構造体1は、パラレルフロー型熱交換器を模擬した構造を有しており、図1及び図2に示すように、中空構造体2と、中空構造体2に挿入された複数の筒状部材3と、隣り合う筒状部材3の間に配置されたアウターフィン4とを有している。中空構造体2、筒状部材3及びアウターフィン4はフラックスレスろう付法により互いに接合されている。 【0058】 図1及び図2に示すように、中空構造体2は筒状を呈しており、筒状部材3を挿入する貫通穴211を備えたヘッダ部21と、ヘッダ部21に対面して配置されたタンク部22とを有している。ヘッダ部21及びタンク部22は、アルミニウム材よりなる心材層と、Al-Si系合金よりなり、心材層の片面側に配置されたろう材層とを含む複層構造を有するクラッド板から作製されている。また、ヘッダ部21及びタンク部22は、クラッド板のろう材層が中空構造体2の外表面に配置されるように作製されている。クラッド板の複層構造における少なくとも1層には、酸化皮膜を破壊する元素が含まれている。 【0059】 筒状部材3はアルミニウム材から構成されている。なお、図1にはアルミニウム材を押出成形してなる押出多穴管の例を示したが、押出多穴管に代えて、板材を筒状に加工してなる成形板材を用いることも可能である。成形板材を用いる場合には、その外表面にろう材として機能しないアルミニウム材を配置する必要がある。 【0060】 また、図1に示すように、本例においては、隣り合う筒状部材3の間にアルミニウム材よりなるアウターフィン4が配置されている。アウターフィン4は、心材の両面にろう材が配置された両面ブレージングシートより構成されている。本例のアウターフィン4は、両面ブレージングシートを波型に成形したコルゲートフィンである。 【0061】 上述のように準備したヘッダ部21及びタンク部22から中空構造体2を組み立てた後、中空構造体2の貫通穴211に筒状部材3を挿入する。そして、隣り合う筒状部材3の間にアウターフィン4を配置して図1に示すアルミニウム構造体1を組み立てる。 【0062】 その後、アルミニウム構造体1を不活性ガス雰囲気中で加熱して、クラッド板のろう材層によってヘッダ部21、タンク部22及び筒状部材3を同時に接合するろう付処理を行う。 【0063】 上述したように、ヘッダ部21及びタンク部22のろう材層は、中空構造体2の外表面に配置されている。また、筒状部材3の外表面にはろう材が配置されていない。それ故、ろう付処理が完了した後、筒状部材3とヘッダ部21との被接合部24における外表面に、図3に示すように、クラッド板のろう材層に由来するフィレットF1が形成される。また、ヘッダ部21とタンク部22との被接合部25における外表面にも、図4に示すようにクラッド板のろう材層に由来するフィレットF2が形成される。なお、図1及び図2におけるフィレットF1及びフィレットF2の記載は便宜上省略した。 【0064】 また、図には示さないが、本例においては、上記のろう付処理により、アウターフィン4が筒状部材3に接合される。以上により、各構成部品がろう付により接合されたアルミニウム構造体1を得ることができる。」 「【0068】 <構成部品の準備> ・ヘッダ部21及びタンク部22 表1~表7に示すように、複層構造の層構成を種々変更したクラッド板を準備した後、クラッド板にプレス加工を施して図1及び図2に示すヘッダ部21及びタンク部22を作製した。材料A1~A15(表1参照)は、心材層と、心材層の片面に積層されたろう材層とからなる2層構造を有している。材料B1~B50(表2~表6参照)は、心材層と、中間材層と、ろう材層とが順次積層された3層構造を有している。材料C1~C2、D1~D6及びE1(表7参照)は、心材層の両面にろう材層が設けられた3層以上の複層構造を有している。即ち、材料C1~C2、D1~D6及びE1を用いて組み立てられた中空構造体2は、外表面及び内表面の両方にろう材層を有している。 【0069】 クラッド板の板厚は、いずれも1.2mmである。ろう材層のクラッド率、即ちクラッド板の全板厚に対するろう材層の厚みの比は、いずれも5%とした。また、中間材層のクラッド率は、表2~表7に示すように、1%または2.5%のいずれかとした。 【0070】 ・筒状部材3 筒状部材3としては、表8~表10に示すように、押出多穴管または片面ブレージングシートからなる成形板材のいずれかを用いた。 【0071】 押出多穴管は、Cu(銅):0.4%及びMn(マンガン):0.1%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる化学成分を有する1000系合金より作製した。また、押出多穴管の壁部の厚みは0.25mmとした。 【0072】 成形板材は、心材と、心材の片面に積層されたろう材とからなり、0.25mmの板厚を有する片面ブレージングシートより作製した。成形板材は筒状を呈しており、外表面にろう材が配置されている。 【0073】 片面ブレージングシートの心材は、Si:0.15%、Cu:0.1%、Mn:1.2%及びMg:0.3%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる化学成分を有する3000系合金である。また、片面ブレージングシートのろう材は、Si:10%、Mg:0.1%及びBi:0.05%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる化学成分を有するAl-Si系合金である。ろう材のクラッド率は10%とした。 【0074】 ・アウターフィン4 アウターフィン4は、心材と、心材の両面に積層されたろう材とからなり、0.1mmの板厚を有する両面ブレージングシートより作製した。 【0075】 両面ブレージングシートの心材は、Mn:1.2%、Mg:0.4%及びZn:0.1%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる化学成分を有するアルミニウム合金である。また、両面ブレージングシートのろう材は、いずれも、Si:10%及びBi:0.05%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる化学成分を有するAl-Si系合金である。ろう材のクラッド率は、いずれの面も10%とした。」 「【0087】 【表6】 [図:0001397087000001.jpg] 【0088】 【表7】 [図:0001397087000002.jpg] 」 「 [図:0001397087000003.jpg] [図:0001397087000004.jpg] [図:0001397087000005.jpg] [図:0001397087000006.jpg] 」 (2)上記(1)から認められること ア 段落【0005】及び【0057】並びに図1~3の記載によれば、筒状部材3は、冷媒流路のような内部に流体が流れる流路を形成することが認められる。 イ 段落【0018】及び【0058】並びに図1及び2の記載によれば、ヘッダ部21は、筒状部材3の流路に連通する中空構造体2の内部を形成するためのものであることが認められる。 ウ 段落【0068】、表6(材料NoがB45、B47及びB48のものを参照。)及び表7(材料NoがD5のものを参照。)の記載によれば、ヘッダ部21及びタンク部22を作製するのに用いられたクラッド板は、ろう材層と中間層を合わせた材料とされ、ろう材層はマグネシウムと、ビスマスと、シリコンと、アルミニウムとを含むことが示されている。 また、段落【0072】及び【0073】の記載によれば、筒状部材3を作製するのに用いられる片面ブレージングシートのろう材は、マグネシウムと、ビスマスと、シリコンと、アルミニウムとを含むことが示されている。 そうすると、筒状部材3とヘッダ部21との被接合部24に形成されたフィレットF1と、ヘッダ部21とタンク部22との被接合部25に形成されたフィレットF2とは、マグネシウムと、ビスマスと、シリコンとを含むアルミニウム合金で構成されたものであることが認められる。 (3)引用発明 上記(1)及び(2)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「フラックスレスろう付け法により製造されたアルミニウム合金製のパラレルフロー型熱交換器であって、 内部に流体が流れる流路を形成する筒状部材3と、 隣り合う前記筒状部材3の間に配置されて前記筒状部材3に接合され、波型に成形したコルゲートフィンであるアウターフィン4と、 前記筒状部材3に接合され、前記筒状部材3の前記流路に連通する中空構造体2の内部を形成するためのヘッダ部21と、 前記ヘッダ部21に対面して配置されて接合されるタンク部22と、 前記筒状部材3と前記ヘッダ部21との被接合部24に形成されたフィレットF1と、 前記ヘッダ部21と前記タンク部22との被接合部25に形成されたフィレットF2とを備え、 前記筒状部材3、前記アウターフィン4、前記ヘッダ部21および前記タンク部22のそれぞれは、アルミニウム合金で構成され、 前記筒状部材3を作製するのに用いられた片面ブレージングシートの板厚は、0.25mmであり、 前記アウターフィン4を作製するのに用いられた両面ブレージングシートの板厚は、0.1mmであり、 前記ヘッダ部21を作製するのに用いられたクラッド板の板厚は、1.2mmであり、 前記タンク部22を作製するのに用いられたクラッド板の板厚は、1.2mmであり、 前記フィレットF1および前記フィレットF2のそれぞれのフィレットは、マグネシウムと、ビスマスと、シリコンとを含むアルミニウム合金で構成され、 前記アウターフィン4は、心材と、心材の両面に積層されたろう材とからなる前記両面ブレージングシートより作製されたものである、パラレルフロー型熱交換器。」 2 引用文献2について (1)引用文献2の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の記載がある。 「[0059] 本発明に係る熱交換器用アルミニウム製クラッド材を、熱交換器用ヘッダー材に用いた例を図2に示す。この例は、心材1の外面に犠牲陽極材層2を、内面にろう材層3をクラッドした三層クラッド板と、心材1の外面に犠牲陽極材層2をクラッドした二層クラッド板を組み合わせてヘッダーを形成したものである。これに代わって、三層クラッド板及び二層クラッド板共に、心材の内面側に犠牲陽極材を配置したものを用いても良い。」 「[0063] (a)犠牲陽極材層 犠牲陽極材層は、Si:0.10%以上1.50%未満、Mg:0.10~2.00%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる。すなわち、これらSi及びMgを必須元素とする。Si及びMgは、犠牲陽極材層中にMgとSiを主成分とするMg-Si系晶出物及び微細なMg-Si系析出物を形成する。Mg-Si系晶出物は、鋳造時に晶出する。Mg-Si系析出物は、ろう付前に分布していたものはろう付によっていったん溶解し、ろう付後の冷却中に再析出する。更に、室温、175℃で5時間の増感処理においても析出する。」 「[0116] 本発明例1-1~1-52及び比較例1-1~1-19 まず、本発明のアルミニウム合金クラッド材の第1実施例を示す。 アルミニウム合金クラッド材は、図1に示すような押出材の2層クラッド管とした。犠牲陽極材層には、表1、2に示す組成の合金を用いた。これらの合金を表6に示す鋳塊表面冷却速度で半連続鋳造法により鋳造し面削を施した後に、表6に示す均質化処理を行った。心材には、表3に示す組成の合金を用いた。・・・なお、表1~3において「-」は、0.04%以下の不純物として含有する場合、或いは、不純物としての測定も困難な測定限界未満の場合を示す。」 「[0119] [図:0001397087000007.jpg] 」 「 [図:0001397087000008.jpg] 」 3 引用文献3について (1)引用文献3の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、次の記載がある。 「また本発明ブレージングシートの他の一つは、はろう付け後に100μm以上の再結晶粒度を有し、0.3wt%以上のCuを含有するAl合金を芯材とし、その片面に芯材より電位の卑なAl合金ろう材をクラッドし、他面に芯材より電位の卑な純Al、Al-Zn合金、Al-Zn-Mg合金からなる皮材をクラッドしたことを特徴とするものである。 〔作 用〕 本発明は、ろう付加熱時のろう材側へのCu拡散挙動を種々調査した結果、芯材の再結晶粒径が100μm以上の場合、ろう溶融までの間のCu拡散が抑制されると共に、ろう材の芯材側への拡散が抑制され、芯材の溶融ろう中への溶出が少なくなり、芯材中のCuのろう材への拡散がある程度抑制されることを見い出し、腐食試験によっても優れた耐孔食性を示した。しかして結晶粒度が100μm以下では、ろうの拡散が大きく、芯材の溶出が大となり、Cuの拡散が大となる。またCu量は0.3wt%以上添加されてないと、ろう材層を犠牲腐食させるに足りる電位を芯材に与えることができない。 ろう材はフラックスろう付用のAl-Si合金、Al-Si-Zn合金等、フラックスレスろう付用のAl-Si-Mg合金、Al-Si-Mg-Zn合金等のろう材であればよい。 芯材とろう材の電位差は30mV以上芯材が貴となるようにとれば優れた耐食性を示す。犠牲フィン材等を併用する場合には、10mV程度の電位差でも十分である。」(第2ページ左下欄第15行~第3ページ左上欄第4行) 4 引用文献4について (1)引用文献4の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、次の記載がある。 「【0014】 以下、本発明について詳細に説明する。 本発明における無フラックスろう付けのメカニズムは以下の通りである。 前述の通り、従来技術の高真空中にて行われる真空ろう付け法は、ブレージングシートのろう材中のMgがろう付加熱によりブレージングシートから蒸発する際に、ろう材の強固な酸化皮膜を破壊する。また蒸発したMgが炉内の残留酸素および水分を除去するゲッターとしての役割を果たす。これらにより、熱交換器部材のろう付けが可能となる。 これに対し、本発明では、例えば大気圧下でろう付けを行う場合にはMgの蒸発はほとんど起きず、Mgの蒸発による炉内の酸化雰囲気低減の作用はほとんど起こらない。そのため、Mgの添加されたブレージング構成層に接するろう材表面ごく近傍のみがろう付けするのに可能な非酸化性雰囲気になっている。大気圧下でろう付けを行うにはろう付け中のろう材の再酸化を防ぐためにこの状態を保つ必要があり、例えばチューブ内部のように中空構造を為して外部雰囲気の影響を受けにくくする必要がある。 【0015】 このように、Mgの作用にはろう付け中のろう材の再酸化を防ぐのに必要な最小限の非酸化性雰囲気を作り出すことが挙げられるが、もうひとつ重要な作用がある。それはろう材表面のアルミニウム酸化物のMgによる還元作用である。すなわち、下式 3Mg+Al2O3→3MgO+2Al で表される還元反応により、ろう材表面のアルミニウムの酸化皮膜は破壊され、ろう付けが可能となる。本発明では上記還元反応を利用して中空構造内部の無フラックスろう付けを可能としている。」 第5 理由2(進歩性)について当審の判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 ア 後者の「パラレルフロー型熱交換器」は、前者の「熱交換器」に相当する。 また、後者の「パラレルフロー型熱交換器」が「フラックスレスろう付け法により製造された」ことは、前者の「熱交換器」が「フラックスが存在しない」ことに相当する。 そして、後者の「フラックスレスろう付け法により製造されたアルミニウム合金製のパラレルフロー型熱交換器」は、前者の「フラックスが存在しないアルミニウム合金製の熱交換器」に相当する。 イ 後者の「内部に流体が流れる流路を形成する筒状部材3」は、前者の「内部に流体が流れる流路を形成する流路形成部材(12)」に相当する。 ウ 後者の「アウターフィン4」は、前者の「伝熱部材(14)」に相当する。 また、後者の「アウターフィン4」が「隣り合う前記筒状部材3の間に配置されて前記筒状部材3に接合され」ることは、前者の「伝熱部材(14)」が「前記流路形成部材の表面に接合され」ることに相当する。 さらに、後者の「アウターフィン4」が「波型に成形したコルゲートフィンである」ことは、それにより筒状部材3の表面よりも広い熱交換する表面(伝熱面)を有することがその構造上明らかであるから、前者の「伝熱部材(14)」が「前記表面よりも広い伝熱面を有する」ことに相当する。 そして、後者の「隣り合う前記筒状部材3の間に配置されて前記筒状部材3に接合され、波型に成形したコルゲートフィンであるアウターフィン4」は、前者の「前記流路形成部材の表面に接合され、前記表面よりも広い伝熱面を有する伝熱部材(14)」に相当する。 エ 後者の「中空構造体2の内部」は、前者の「タンク空間」に相当し、同様に、後者の「ヘッダ部21」は、前者の「タンク部材(162)」に相当する。 そして、後者の「前記筒状部材3に接合され、前記筒状部材3の前記流路に連通する中空構造体2の内部を形成するためのヘッダ部21」は、前者の「前記流路形成部材に接合され、前記流路形成部材の前記流路に連通するタンク空間を形成するためのタンク部材(162)」に相当する。 オ 後者の「前記ヘッダ部21に対面して配置されて接合されるタンク部22」は、前者の「前記タンク部材に接合される接合部材(164、166、18)」に相当する。 カ 後者の「前記筒状部材3と前記ヘッダ部21との被接合部24」は、前者の「前記流路形成部材と前記タンク部材とのろう付け接合部(24)」に相当し、同様に、後者の「フィレットF1」は、前者の「第2フィレット(26)」に相当する。 そして、後者の「前記筒状部材3と前記ヘッダ部21との被接合部24に形成されたフィレットF1」は、前者の「前記流路形成部材と前記タンク部材とのろう付け接合部(24)に形成された第2フィレット(26)」に相当する。 キ 後者の「前記ヘッダ部21と前記タンク部22との被接合部25」は、前者の「前記タンク部材と前記接合部材とのろう付け接合部(28、32、40)」に相当し、同様に、後者の「フィレットF2」は、前者の「第3フィレット(30、34、42)」に相当する。 そして、後者の「前記ヘッダ部21と前記タンク部22との被接合部25に形成されたフィレットF2」は、前者の「前記タンク部材と前記接合部材とのろう付け接合部(28、32、40)に形成された第3フィレット(30、34、42)」に相当する。 ク 後者の「前記筒状部材3、前記アウターフィン4、前記ヘッダ部21および前記タンク部22のそれぞれは、アルミニウム合金で構成され」ることは、前者の「前記流路形成部材、前記伝熱部材、前記タンク部材および前記接合部材のそれぞれは、アルミニウム合金で構成され」ることに相当する。 ケ 後者の「前記筒状部材3を作製するのに用いられた片面ブレージングシートの板厚は、0.25mmであ」ることは、ろう付け後においても、片面ブレージングシートの板厚に大幅な変化があるとはいえないから、前者の「前記流路形成部材の平均板厚は、0.100mm以上0.400mm以下であ」ることに相当する。 コ 後者の「前記アウターフィン4を作製するのに用いられた両面ブレージングシートの板厚は、0.1mmであ」ることは、ろう付け後においても、両面ブレージングシートの板厚に大幅な変化があるとはいえないから、前者の「前記伝熱部材の平均板厚は、0.025mm以上0.150mm以下であ」ることに相当する。 サ 後者の「前記ヘッダ部21を作製するのに用いられたクラッド板の板厚は、1.2mmであ」ることは、ろう付け後においても、クラッド板の板厚に大幅な変化があるとはいえないから、前者の「前記タンク部材の平均板厚は、0.500mm以上2.000mm以下であ」ることに相当する。 シ 後者の「前記タンク部22を作製するのに用いられたクラッド板の板厚は、1.2mmであ」ることは、ろう付け後においても、クラッド板の板厚に大幅な変化があるとはいえないから、前者の「前記接合部材の平均板厚は、0.500mm以上2.000mm以下であ」ることに相当する。 ス 後者の「前記フィレットF1および前記フィレットF2のそれぞれのフィレットは、マグネシウムと、ビスマスと、シリコンとを含むアルミニウム合金で構成され」たことは、前者の「前記第1フィレット、前記第2フィレットおよび前記第3フィレットのそれぞれのフィレットは、マグネシウムと、ビスマスと、シリコンとを含むアルミニウム合金で構成され」に、「前記第2フィレットおよび前記第3フィレットのそれぞれのフィレットは、マグネシウムと、ビスマスと、シリコンとを含むアルミニウム合金で構成され」という限りにおいて一致する。 セ 後者の「前記アウターフィン4は、心材と、心材の両面に積層されたろう材とからなる前記両面ブレージングシートより作製されたものである」ことは、アウターフィン4がろう材層を有するものといえるから、前者の「前記流路形成部材と前記伝熱部材との少なくとも一方は、表面側にろう材層(122、142)を有」していることに相当する。 以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「フラックスが存在しないアルミニウム合金製の熱交換器であって、 内部に流体が流れる流路を形成する流路形成部材と、 前記流路形成部材の表面に接合され、前記表面よりも広い伝熱面を有する伝熱部材と、 前記流路形成部材に接合され、前記流路形成部材の前記流路に連通するタンク空間を形成するためのタンク部材と、 前記タンク部材に接合される接合部材と、 前記流路形成部材と前記タンク部材とのろう付け接合部に形成された第2フィレットと、 前記タンク部材と前記接合部材とのろう付け接合部に形成された第3フィレットとを備え、 前記流路形成部材、前記伝熱部材、前記タンク部材および前記接合部材のそれぞれは、アルミニウム合金で構成され、 前記流路形成部材の平均板厚は、0.100mm以上0.400mm以下であり、 前記伝熱部材の平均板厚は、0.025mm以上0.150mm以下であり、 前記タンク部材の平均板厚は、0.500mm以上2.000mm以下であり、 前記接合部材の平均板厚は、0.500mm以上2.000mm以下であり、 前記第2フィレットおよび前記第3フィレットのそれぞれのフィレットは、マグネシウムと、ビスマスと、シリコンとを含むアルミニウム合金で構成され、 前記流路形成部材と前記伝熱部材との少なくとも一方は、表面側にろう材層を有する、熱交換器。」 [相違点1] 「フィレット」に関して、本願発明1では、「前記伝熱部材と前記流路形成部材とのろう付け接合部(20)に形成された第1フィレット(22)」を備え、「前記第1フィレット、前記第2フィレットおよび前記第3フィレットのそれぞれのフィレットは、マグネシウムと、ビスマスと、シリコンとを含むアルミニウム合金で構成され」るのに対して、引用発明では、アウターフィン4と筒状部材3とのろう付け接合部に形成されたフィレットを備えることの特定はされていない点。 [相違点2] 本願発明1では、「前記それぞれのフィレットのマグネシウムの濃度は、0.2質量%以上2.0質量%以下であ」るのに対して、引用発明では、それぞれのフィレットF1、F2のマグネシウムの濃度について特定されていない点。 [相違点3] 本願発明1では、「前記流路形成部材が前記ろう材層(122)を有する場合、前記流路形成部材の板厚中央部でのマグネシウムの濃度は、0.1質量%以上1.0質量%以下であ」るのに対して、引用発明では、筒状部材3がろう材を有するものの、筒状部材3の板厚中央部でのマグネシウムの濃度について特定されていない点。 [相違点4] 本願発明1では、「前記伝熱部材が前記ろう材層(142)を有する場合、前記伝熱部材の板厚中央部でのマグネシウムの濃度は0.2質量%以上1.0質量%以下である」のに対して、引用発明では、アウターフィン4がろう材層を有するものの、アウターフィン4の板厚中央部でのマグネシウムの濃度について特定されていない点。 (2)判断 ア 相違点1について 引用発明において、アウターフィン4を作製するのに用いられる両面ブレージングシートには、両面にろう材が配置されていること、また、伝熱部材と流路形成部材とのろう付け接合部にフィレットを形成することが文献を示すまでもなく本願の出願前に周知技術であることを考慮すると、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることは,当業者が適宜なし得たことである。 イ 相違点2~4について 引用文献1の段落【0035】において、中空構造体を構成するクラッド板のろう材層にMg:0.2~1.2%を含有すること(以下、「引用文献1の記載事項」という。)が記載されているとしても、ろう付けによりマグネシウムが拡散や蒸発をするため、ろう付け後のろう付け接合部におけるフィレットのマグネシウム濃度、筒状部材3(流路形成部材)の板厚中央部でのマグネシウムの濃度及びアウターフィン4(伝熱部材)の板厚中央部でのマグネシウムの濃度がどの程度になるかは不明であり、フィレットのマグネシウム濃度、流路形成部材の板厚中央部でのマグネシウムの濃度及び伝熱部材の板厚中央部でのマグネシウムの濃度をどの程度にすれば良好なろう付け接合部になるかを示すものではない。 してみると、引用発明において、筒状部材3とヘッダ部21との被接合部24に形成されたフィレットF1と、ヘッダ部21とタンク部22との被接合部25に形成されたフィレットF2との各フィレットについて、マグネシウム濃度が0.2質量%以上2.0質量%以下であるとは認めることができず、また、マグネシウム濃度を0.2質量%以上2.0質量%以下にする動機付けがあるともいえない。 また、引用発明において、筒状部材3の板厚中央部でのマグネシウムの濃度についても、マグネシウム濃度が0.1質量%以上1.0質量%以下であるとは認めることができず、マグネシウム濃度を0.1質量%以上1.0質量%以下にする動機付けがあるともいえない。 そして、相違点2~4に係る本願発明1の発明特定事項は、それぞれがアルミニウム合金で構成された、平均板厚が0.100mm以上0.400mm以下の流路形成部材、平均板厚が0.025mm以上0.150mm以下の伝熱部材、平均板厚が0.500mm以上2.000mm以下のタンク部材及び平均板厚が0.500mm以上2.000mm以下の接合部材という複数の特定の部材を備えた、フラックスが存在しないアルミニウム合金製の熱交換器において、複数の特定の部材間のろう付け接合部における、マグネシウムと、ビスマスと、シリコンとを含むアルミニウム合金という特定の材料で構成された第1~3フィレットについて、マグネシウムの濃度を規定すること、さらに、流路形成部材がろう材層を有する場合の流路形成部材の板厚中央部でのマグネシウムの濃度を規定することや、伝熱部材がろう材層を有する場合の伝熱部材の板厚中央部でのマグネシウムの濃度を規定することにより、各部材間のろう付け接合部がすべて良好に形成されることを可能とするものであり、本願の出願前に技術常識を考慮しても、当業者が適宜なし得る設計的事項と認めることはできない。 なお、上記第4の2~4における記載を参酌したが、引用文献2~4のいずれにも、相違点2~4に係る本願発明1の発明特定事項は、記載も示唆もされていない。 してみると、引用発明において、相違点2~4に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 イ 効果について、 本願発明1は、相違点2~4に係る発明特定事項を備えることにより、「薄い部材同士のろう付け接合部と、薄い部材と厚い部材のろう付け接合部と、厚い部材同士のろう付け接合部との3種類のろう付け接合部を良好に形成できる。すなわち、良好にろう付け接合された熱交換器を製造できる。」(段落【0009】)との所期の効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、本願発明1は引用発明、引用文献1の記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 審査の対象とされていない本願発明2について 本願発明2は、「前記それぞれのフィレットのマグネシウムの濃度は、0.2質量%以上2.0質量%以下であ」ること(以下、「発明特定事項A」という。)、「前記流路形成部材が前記ろう材層(522)を有する場合、前記流路形成部材の板厚中央部でのマグネシウムの濃度は、0.1質量%以上1.0質量%以下であ」ること(以下、「発明特定事項B」という。)及び「前記伝熱部材が前記ろう材層(562、563)を有する場合、前記伝熱部材の板厚中央部でのマグネシウムの濃度は0.2質量%以上1.0質量%以下である」こと(以下、「発明特定事項C」という。)を含むものである。 そして、本願発明2の発明特定事項A、発明特定事項B及び発明特定事項Cは、「前記伝熱部材と前記流路形成部材とのろう付け接合部(66a、66b)に形成された第1フィレット(68a、68b)」、「前記流路形成部材と前記補強部材とのろう付け接合部(70)に形成された第2フィレット(72)」及び「前記補強部材と前記接合部材とのろう付け接合部(74)に形成された第3フィレット(76)」に関して、複数のろう付け接合部を良好に形成するための事項であって、上記1(1)で示した相違点2~4に係る本願発明1の発明特定事項と同様の事項であるから、本願発明1についての上記1(2)イの相違点2~4の検討を踏まえると、引用発明において、本願発明2の発明特定事項A、発明特定事項B及び発明特定事項Cとすることは、同様の理由により、当業者が容易になし得たものとはいえない。 そして、本願発明2は、発明特定事項A、発明特定事項B及び発明特定事項Cを備えることにより、「薄い部材同士のろう付け接合部と、薄い部材と厚い部材のろう付け接合部と、厚い部材同士のろう付け接合部との3種類のろう付け接合部を良好に形成できる。すなわち、良好にろう付け接合された熱交換器を製造できる。」(段落【0011】)との所期の効果を奏するものである。 したがって、本願発明2は、引用発明、引用文献1の記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 本願発明3~9について 本願発明3~9は、本願発明1又は本願発明2の全ての発明特定事項を置き換えることなく備えるものである。 そうすると、本願発明3~9は、上記1又は2の検討を踏まえると、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 4 小括 上記1~3のとおりであるから、本願発明1~9は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。 第6 理由1(単一性)について当審の判断 上記第5の1の検討によると、本願発明1は、特別な技術的特徴を有するものである。 そして、上記第5の2の検討によると、本願発明2は、本願発明1の特別な技術的特徴と共通する特別な技術的特徴を有するものである。 そうすると、本願発明1~9は、発明の単一性の要件を満たす一群の発明ということができる。 したがって、本願は、特許法第37条に規定する要件を満たすものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1~9は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。 また、本願は、特許法第37条に規定する要件を満たすものである。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-014524

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