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特許拒絶査定不服審判

2021-011327

ヒートポンプ及びヒートポンプの運転方法

審判番号
2021-011327
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-550719外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年08月25日
審決日
2022年05月27日
公報発行日
2022年11月25日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (F25B) / P18 .575-Z (F25B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-550719「ヒートポンプ及びヒートポンプの運転方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 9月20日国際公開、WO2018/166740、令和 2年 4月 2日国内公表、特表2020-510185〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、2018年2月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年3月14日、(DE)ドイツ)を国際出願日とする出願であって、その手続の主な経緯は以下のとおりである。

令和元年12月13日に手続補正書の提出

令和2年12月22日付けで拒絶理由通知

令和3年4月2日に意見書及び手続補正書の提出

令和3年5月26日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。;令和3年5月31日発送)

令和3年8月25日に拒絶査定不服審判の請求及びその請求と同時に手続補正書の提出

令和4年1月12日に上申書の提出

第2 令和3年8月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和3年8月25日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)

本件補正は、本件補正前に下記(2)のとおりであった特許請求の範囲の記載を、下記(1)のとおり補正するものである。

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

「【請求項1】
流体回路(21、28)を有するヒートポンプ(12、26)であって、前記流体回路が、熱源(4)の熱エネルギーを流体(2)に伝達するための少なくとも1つの蒸発器(10)と、下流に続く前記流体を圧縮するための少なくとも1つの圧縮機(7a、7b、7)と、前記熱源(4)よりも高い温度レベルにおいて前記流体の熱エネルギーをヒートシンク(20)に放出するための、下流に続く少なくとも1つの凝縮器(8)と、前記流体を膨張させるための、下流に続く少なくとも1つの膨張装置(9a、9b、9)と、を含んでいるヒートポンプにおいて、
前記流体回路に沿って、前記凝縮器(8)と前記蒸発器(10)との間には少なくとも2つの膨張装置(9a、9b)が一列に配置されており、かつ前記蒸発器と前記凝縮器との間には、少なくとも2つの圧縮機(7a、7b)及び/又は少なくとも2つの圧縮機段が一列に配置されており、気相及び液相を分離するための分離器(30)が、両方の前記膨張装置(9a、9b)の間に接続され、両方の前記圧縮機の間、又は両方の前記圧縮機段の間において前記流体回路に合流する気相導入管(36)を有しており、前記蒸発器から流れる流体(2)を、少なくとも1つの前記圧縮機に流入する前に過熱するための手段(34)が配置されており、前記手段(34)が熱交換器(32)を含み、前記熱交換器(32)が、前記凝縮器(8)からの流体を過冷却して、凝縮状態に移行させ、前記流体は、圧縮の終点における凝縮曲線に対する距離が、少なくとも10ケルビンとなるように過熱されることを特徴とするヒートポンプ(12、26)。
【請求項2】
続きを表示(全30行)
前記ヒートポンプ(12、26)が、少なくとも70℃の前記ヒートシンク(20)の温度レベルに合わせて設計されていることを特徴とする、請求項1に記載のヒートポンプ。
【請求項3】
前記流体(2)が、温度エントロピー線図(42)において概ねプラスの傾きを有する凝縮曲線(18)を有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載のヒートポンプ。
【請求項4】
前記ヒートポンプ(12、26)が、概ね等温の熱源(4)に合わせて設計されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒートポンプ。
【請求項5】
少なくとも1つの膨張装置(9a、9b、9)が絞り弁(35a、35b)であること、及び/又は、少なくとも1つの圧縮機(7a、7b、7)がターボ圧縮機であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のヒートポンプ。
【請求項6】
前記熱交換器(32)は、前記蒸発器から流れる流体(2)を過熱するために、前記膨張装置(9)に流入する前の、前記凝縮器(8)から流れる流体を、前記圧縮機(7)に流入する前の、前記蒸発器(10)から流れる流体と、熱的に接続するように構成されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のヒートポンプ。
【請求項7】
前記蒸発器から流れる流体を過熱するための前記手段が、外部のエネルギー源(40)で加熱可能である、接続可能な加熱装置(38)を含んでいることを特徴とする、請求項6に記載のヒートポンプ。
【請求項8】
前記分離器(30)が、気相及び液相を分離するための圧力タンクを含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のヒートポンプ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のヒートポンプを運転するための方法であって、流体が連続的に流体回路内で誘導され、その際に、熱エネルギーが、熱源から蒸発器内の前記流体に伝達され、前記流体は、少なくとも部分的に蒸発し(VS5)、次に、前記流体は圧縮され(VS7、VS8)、次に、前記熱源よりも高い温度レベルで熱エネルギーをヒートシンクに放出するために、少なくとも部分的に液化され(VS9)、次に、冷却のために膨張させられる(VS10、VS12)方法において、
前記流体は、熱エネルギーの伝達後、かつ圧縮の前に過熱され(VS6)、圧縮は、少なくとも2つの圧縮ステップにおいて行われ、膨張は、少なくとも2つの膨張ステップにおいて行われ、少なくとも2つの膨張ステップの間で、前記流体の気相が、前記流体の液相から分離され、気体状の流体が、少なくとも部分的に、少なくとも2つの圧縮ステップの間の前記流体に供給される(VS11)ことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記ヒートポンプが、前記ヒートシンクの少なくとも70℃の高温領域において運転されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
温度エントロピー線図において概ねプラスの傾きを示す凝縮曲線を有する流体が使用される(VS1)ことを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
動作状態における、前記蒸発器を離れる流体の過熱のために、凝縮器を離れる流体の熱エネルギーが、膨張の前に取り出され、前記蒸発器を離れた流体に、圧縮の前に伝達される(VS6)ことを特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
運転の始動段階において、前記流体の過熱のために、加熱装置が接続される(VS4)ことを特徴とする、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
熱源として、略等温の熱源が用いられる(VS3)ことを特徴とする、請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載

本件補正前の、令和3年4月2日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
流体回路(21、28)を有するヒートポンプ(12、26)であって、前記流体回路が、熱源(4)の熱エネルギーを流体(2)に伝達するための少なくとも1つの蒸発器(10)と、下流に続く前記流体を圧縮するための少なくとも1つの圧縮機(7a、7b、7)と、前記熱源(4)よりも高い温度レベルにおいて前記流体の熱エネルギーをヒートシンク(20)に放出するための、下流に続く少なくとも1つの凝縮器(8)と、前記流体を膨張させるための、下流に続く少なくとも1つの膨張装置(9a、9b、9)と、を含んでいるヒートポンプにおいて、
前記流体回路に沿って、前記凝縮器(8)と前記蒸発器(10)との間には少なくとも2つの膨張装置(9a、9b)が一列に配置されており、かつ前記蒸発器と前記凝縮器との間には、少なくとも2つの圧縮機(7a、7b)及び/又は少なくとも2つの圧縮機段が一列に配置されており、気相及び液相を分離するための分離器(30)が、両方の前記膨張装置(9a、9b)の間に接続され、両方の前記圧縮機の間、又は両方の前記圧縮機段の間において前記流体回路に合流する気相導入管(36)を有しており、前記蒸発器から流れる流体(2)を、少なくとも1つの前記圧縮機に流入する前に過熱するための手段(34)が配置されており、前記手段(34)が熱交換器(32)を含み、前記熱交換器(32)が、前記凝縮器(8)からの流体を過冷却して、凝縮状態に移行させることを特徴とするヒートポンプ(12、26)。
【請求項2】
続きを表示(全32行)
前記ヒートポンプ(12、26)が、少なくとも70℃の前記ヒートシンク(20)の温度レベルに合わせて設計されていることを特徴とする、請求項1に記載のヒートポンプ。
【請求項3】
前記流体(2)が、温度エントロピー線図(42)において概ねプラスの傾きを有する凝縮曲線(18)を有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載のヒートポンプ。
【請求項4】
前記ヒートポンプ(12、26)が、概ね等温の熱源(4)に合わせて設計されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒートポンプ。
【請求項5】
少なくとも1つの膨張装置(9a、9b、9)が絞り弁(35a、35b)であること、及び/又は、少なくとも1つの圧縮機(7a、7b、7)がターボ圧縮機であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のヒートポンプ。
【請求項6】
前記熱交換器(32)は、前記蒸発器から流れる流体(2)を過熱するために、前記膨張装置(9)に流入する前の、前記凝縮器(8)から流れる流体を、前記圧縮機(7)に流入する前の、前記蒸発器(10)から流れる流体と、熱的に接続するように構成されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のヒートポンプ。
【請求項7】
前記蒸発器から流れる流体を過熱するための前記手段が、外部のエネルギー源(40)で加熱可能である、接続可能な加熱装置(38)を含んでいることを特徴とする、請求項6に記載のヒートポンプ。
【請求項8】
前記分離器(30)が、気相及び液相を分離するための圧力タンクを含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のヒートポンプ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のヒートポンプを運転するための方法であって、流体が連続的に流体回路内で誘導され、その際に、熱エネルギーが、熱源から蒸発器内の前記流体に伝達され、前記流体は、少なくとも部分的に蒸発し(VS5)、次に、前記流体は圧縮され(VS7、VS8)、次に、前記熱源よりも高い温度レベルで熱エネルギーをヒートシンクに放出するために、少なくとも部分的に液化され(VS9)、次に、冷却のために膨張させられる(VS10、VS12)方法において、
前記流体は、熱エネルギーの伝達後、かつ圧縮の前に過熱され(VS6)、圧縮は、少なくとも2つの圧縮ステップにおいて行われ、膨張は、少なくとも2つの膨張ステップにおいて行われ、少なくとも2つの膨張ステップの間で、前記流体の気相が、前記流体の液相から分離され、気体状の流体が、少なくとも部分的に、少なくとも2つの圧縮ステップの間の前記流体に供給される(VS11)ことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記ヒートポンプが、前記ヒートシンクの少なくとも70℃の高温領域において運転されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
温度エントロピー線図において概ねプラスの傾きを示す凝縮曲線を有する流体が使用される(VS1)ことを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
動作状態における、前記蒸発器を離れる流体の過熱のために、凝縮器を離れる流体の熱エネルギーが、膨張の前に取り出され、前記蒸発器を離れた流体に、圧縮の前に伝達される(VS6)ことを特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
過熱が、圧縮機の終点における凝縮曲線に対する距離が、少なくとも10Kになるように選択される(VS2)ことを特徴とする、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
運転の始動段階において、前記流体の過熱のために、加熱装置が接続される(VS4)ことを特徴とする、請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
熱源として、略等温の熱源が用いられる(VS3)ことを特徴とする、請求項9から14のいずれか一項に記載の方法。」

2 補正の適否

本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された、「前記蒸発器から流れる流体(2)を、少なくとも1つの前記圧縮機に流入する前に過熱するための手段(34)」により加熱される「流体(2)」について、本件補正後の請求項1において、「前記流体は、圧縮の終点における凝縮曲線に対する距離が、少なくとも10ケルビンとなるように過熱される」ことを限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

<特許法第29条第2項(進歩性)について>

(1)本件補正発明

本件補正発明は、上記1(1)の請求項1に記載した事項により特定されるとおりのものである。

(2)引用文献

ア 引用文献2

(ア)引用文献2の記載

原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用された文献であって、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表2016-520187号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。(なお、下線は当審において付したものである。以下同様。)

「【0001】
本発明は、ヒートポンプ及びヒートポンプ内での冷媒の使用に関する。
【0002】
これまでヒートポンプにおいて使用されてきた冷媒は、毒性であるか、又は環境を損なうものであり、つまりそれらの冷媒は高い地球温暖化係数を有する。他の冷媒は可燃性であるか、又は最も問題がないものであっても、少なくとも健康を害する虞のあるものである。毒性がない環境親和性のある冷媒を用いて動作させるようにした、従来より知られていたアプローチは、これまで失敗に終わっており、その理由は、それらの動作媒体ではヒートポンプの適正なパワーを供給できない、或いは従来のヒートポンプ構造では使用できない、ということによる。
続きを表示(全25行)
【0003】
ヒートポンプにおいて冷媒を使用することで特徴的なのは、いわゆる温度上昇である。温度上昇は、凝縮温度と蒸発温度との差である。つまり温度上昇によって表されるのは、ヒートシンクにおいて利用するために熱源の温度レベルがどのくらい上昇したのか、ということである。問題点を表すため、図1には、環境親和性のある適切な冷媒の相境界線が示されており、この冷媒に特徴的なのは、露点線が大きく張り出していることである。このことに加え、75℃の蒸発温度から125℃の凝縮温度までの50ケルビンの温度上昇に関する温度プロセスが示されている。この種の冷媒を用いてヒートポンプを稼動できるようにするためには、圧縮点を露点線から最小間隔で維持し、そのまま気相領域内にあるようにしなければならない。温度上昇が例えば20ケルビンだけであり、つまり凝縮温度が図3に示されているように95℃しかなければ、圧縮点は相境界線内に位置することになり、つまり混合相領域内に位置することになる。これによって圧縮器内で液体が衝突することになり、ヒートポンプの安定稼働が妨げられてしまう。
【0004】
上述のような特別な熱力学的特性を備えたこの種の新規な動作流体を使用するために、これまで知られているアプローチは、ヒートポンプの非定常的な始動手順をターゲットにしたものだけである。独国特許出願公開第102013203243.9号明細書には、内部熱交換器が設けられたヒートポンプについて記載されており、この熱交換器は、図2のグラフに描かれているように、凝縮物が状態点4から状態点5にサブクーリングされると、その際に発生した熱を状態点7に伝達し、したがって圧縮の前に吸入ガスがスーパーヒートする。状態点4から状態点5までの間隔及び状態点7から状態点1までの間隔は、等しいエンタルピー差となっており、このことは圧力とエンタルピーのグラフ1~4から読み取ることができる。しかしながら、同様に図3から読み取ることができるように、内部熱交換器を用いたアプローチは、どのような温度上昇にも適しているというわけではない。例えば20ケルビンの温度上昇の場合、内部熱交換器が吸引ガスのスーパーヒートのために供給可能な熱量は不十分であり、圧縮最終点はやはり相境界線内にあり、このことは問題である。
【0005】
これまでヒートポンプ及び冷却器で用いられてきた流体、例えばR134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)は、圧縮最終点が二相領域内にあるという問題点をまったく有しておらず、したがって従来技術で知られているヒートポンプ及び冷却器とともに稼動させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の課題は、環境親和性のある動作流体を利用することができ、かつ安定した定常動作を保証するヒートポンプ及びヒートポンプの運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1記載のヒートポンプ、及び請求項9記載の運転方法、並びに請求項8記載の新規な動作流体の、本発明による使用によって解決される。従属請求項には、本発明の実施形態が記載されている。
【0008】
本発明によるヒートポンプは、圧縮器と、凝縮器と、内部熱交換器と、膨張弁と、蒸発器と、制御装置とを備えており、この制御装置は、圧縮器の出口における動作流体の温度を、露点よりも上で予め定められた最小間隔にするように構成されている。温度最小間隔は、圧力が同じまま維持された動作流体に関するものであり、少なくとも1ケルビンであり、有利には少なくとも5ケルビンである。これによって得られる利点とは、環境親和性のある毒性のない安全な動作媒体を使用することができ、安定した定常的なヒートポンプ稼働を実現できることである。そのような動作媒体の多くは、温度とエントロピーのグラフにおいて1000(kg K2)/kJよりも下で、露点線の勾配が著しく小さいといった、極めて特別な熱力学的特性を有する点で優れている。
【0009】
本発明の1つの有利な実施形態によれば、制御装置は温度制御装置であり、この温度制御装置は、圧縮器の入口における動作流体の温度を上昇させるように構成されている。例えば温度制御装置はパイプ加熱ユニットであり、このパイプ加熱ユニットは、内部熱交換器と圧縮器との間に配置されていて、このパイプ加熱ユニットにより、内部熱交換器から圧縮器へ流れる動作流体をスーパーヒート可能である。この場合、温度制御装置は、パイプ加熱ユニットを圧縮器出口における動作流体の温度によって制御するように構成されている。圧縮器出口において温度制御装置によりどのような温度が測定されるのかに応じて、パイプ加熱ユニットがオン又はオフにされ、或いはその温度が変更される。したがってパイプ加熱ユニットを、例えば熱源又はヒートシンク温度が変動したときに、短期間だけ始動させてもよいし、持続動作させてもよい。これによって、僅かな温度上昇を補償調整できる、という利点が得られる。温度上昇に対する限界温度は、使用される冷媒例えば動作流体に左右される。温度上昇は、ヒートポンプの種々の特性及びパラメータに依存する。
【0010】
ヒートポンプに関するさらに別の有利な実施例によれば、温度制御装置は、弁を備えたバイパス路を備えており、このバイパス路によって、圧縮器出口における高圧領域が圧縮器入口における低圧領域と接続されていて、このバイパス路を介して再循環可能なホットガスによって、内部熱交換器から圧縮器へ流れる動作流体をスーパーヒート可能である。この場合、温度制御装置は、バイパス路の弁を通過する流量を圧縮器出口における動作流体の温度を介して制御するように構成されている。ヒートポンププロセスに対する付加的な介入がなければ圧縮最終点が二相領域内に入るような温度上昇が発生した場合、この実施形態の場合も、使用される動作流体によってヒートポンプを定常状態で安定して稼働できるように制御される、という利点が得られる。ここで使用されるバイパス弁を、例えばサーモスタット制御弁としてもよいし、又は電子制御弁としてもよい。
【0011】
ヒートポンプの択一的な有利な実施形態によれば、制御装置は圧力制御装置であり、これは圧縮器入口における動作流体の圧力を低下させるように構成されている。この目的で、圧力制御装置に例えば自動膨張弁を含めることができ、この弁は、内部熱交換器と蒸発器との間のヒートポンプ循環路中に膨張弁として配置されている。この場合、自動膨張弁は純然たる蒸発器圧力制御弁であって、この弁によって、蒸発温度ひいては蒸発圧力を調整できるようになる。」
「【0015】
ヒートポンプにおいて自動膨張弁を使用することにより得られる付加的な利点とは、温度上昇が限界温度より低い事例ではなく、限界温度よりも著しく高い適用事例に対しても制御を行えることである。温度上昇がそれよりも過度に大きい場合には、圧縮器下流の圧力ガス温度T2が、露点に対し維持すべき最小間隔よりも著しく大きくなる。例えば圧縮器が動作温度上限を有する場合には、さらに別の問題が発生する虞がある。圧縮器の動作温度上限は例えば、潤滑剤の温度安定性であったり、圧縮器内の適合度に対する過度の膨張などに起因する可能性がある。ただし自動膨張弁によって、動作流体がごく僅かにスーパーヒートする程度に、或いは部分的に蒸発する程度に、蒸発器内の圧力を高めることもできる。露点線からの最小間隔のために必要とされるスーパーヒートは、内部熱交換器によって生じさせることができる。限界温度よりも上で温度上昇が発生した場合の自動膨張弁を備えた実施形態により、圧力上昇によってヒートポンプの効率全体を高めることができる、という付加的な利点が得られる。その理由は、蒸発器内の温度差の低減によって圧力比が小さくなり、圧縮器出力に対する要求が小さくなるからである。これと同時に流体密度が上昇し、それによって圧縮器内の出力密度が高まる。これらに加え、圧縮ガス温度が下がることで、圧縮器の耐用期間を確実に長くすることができる。
【0016】
この目的で有利にはヒートポンプは、温度とエントロピーのグラフにおいて、露点線の勾配が1000(kgK2)/kJよりも小さい動作流体を有する。この種の動作流体を使用することの利点は、優れた環境特性及び安全性の特性を有することにある。例えばこの種の動作流体として、フルオロケトンの系統から成る動作流体を使用することができる。それらのうち特に有利であるのは、動作流体Novec649(ドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オン)及びNovec524(デカフルオロ-3-メチルブタン-2-オン)である。Novec649は、601(kgK2)/kJの露点線勾配を有し、Novec524は、630(kgK2)/kJの露点線勾配を有する。さらに別の適切な例は、R245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン)であり、これはT-Sグラフにおいて1653(kgK2)/kJの勾配を有する。ただしこれらの勾配は、飽和温度がそれぞれ75℃の場合について記載した。
【0017】
本発明によれば、温度とエントロピーのグラフにおいて、1000(kgK2)/kJよりも小さい露点線の勾配を有する動作流体がヒートポンプにおいて用いられる。」
「【0021】
図1~図4には、圧力とエンタルピーのグラフが示されており、ここでは圧力Pが対数スケール上に書き込まれている。図1、図3及び図4には、一点鎖線で等温線が書き込まれており、点線で等エントロピー線が書き込まれている。この場合、等温線ITに対する温度は摂氏で表されており、等エントロピー線IEに対するエントロピー値はkJ/(kg・K)で表されている。実線の曲線は、新規の動作媒体例えば流体Novec649の相境界線PGをそれぞれ表している。この流体は、169℃のところで臨界点を有している。露点線は、この温度とエントロピーのグラフでは、601(kgK2)/kJだけ傾斜している。動作媒体についてさらに別の適切な具体例はNovec524であり、これは148℃のところで臨界点を有する。
【0022】
さらに図1には、ヒートポンププロセスWPが破線で示されている。状態点1から出発し圧縮を経て、状態点2もしくは3に到達する。これらの状態点は、純然たる理論的考察では一致するので、以下では状態点2だけを挙げることにする。凝縮過程によって状態点4に達する。状態点4から状態点5まで、サブクーリングが行われる。状態点5から膨張過程を経て状態点6に到達し、状態点6から蒸発過程を経て状態点7に到達する。状態点7から状態点1へ戻る経路は、動作媒体のスーパーヒートである。図示されているヒートポンププロセスWPは、75℃の蒸発温度と125℃の凝縮温度を有し、つまり50ケルビンの温度上昇を有している。状態点4から状態点5へのサブクール、もしくは状態点7から状態点1へのスーパーヒートは、図2に示されているように、内部熱交換器IHXを介して結合される。この熱交換器は、サブクールの際に生じる熱を利用しており、その熱を状態点7に伝達する。そのつど一定の圧力であれば、エンタルピーはサブクールによって、スーパーヒートが上昇したときと同じ絶対値だけ低減する。状態点2と、ヒートポンププロセスWPの露点線TLとの距離は、即ち、状態点2とその露点との温度差は、圧力が同じであれば10ケルビンになる。この最小間隔は、液体の衝突により圧縮器11を危険に晒すことなく、ヒートポンプ10の安定稼働を保証するために十分なものである。圧縮最終点即ち状態点2を、確実に混合相領域l+gの外側つまり相境界線PGの外側に位置させるために、最小間隔を遵守するようにし、この最小間隔は、動作流体とヒートポンプ10から成るシステム各々について、可能な変動パラメータに応じて設定する必要がある。ただし特に、1ケルビンの最小間隔を遵守すべきであり、有利には5ケルビンの最小間隔を遵守すべきである。
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【0023】
図3及び図4に示されているように、圧縮器11の手前で吸気ガスをスーパーヒートさせるために内部熱交換器IHXによって交換された熱量QIHXが、圧縮最終点2を気相領域g内に位置させるのに十分であるか否かに応じて、ヒートポンププロセスWPの温度上昇が変化する。
【0024】
図3には、例えば図1と同様に動作媒体Novec649によるヒートポンププロセスWPが示されている。ただしこの場合、凝縮温度は95℃しかない。つまり、20ケルビンというこのような温度上昇は、このシステムに対する限界値よりも小さい。内部熱交換器IHXは、この実施例では0.64kWで動作することになる。
【0025】
図4に示されているヒートポンププロセスWPは、135℃の凝縮温度に至るまでの60ケルビンの著しく大きい温度上昇を有している。このヒートポンププロセスWPの場合、内部熱交換器IHXは例えば5.9kWの電力で動作する。この場合、圧縮最終点2は露点線TLから著しく隔たっており、つまり温度上昇は、ヒートポンプ10と動作媒体とから成るこのシステムの温度上昇の限界値を著しく上回っている。
【0026】
内部熱交換器IHXによって伝達される熱出力QIHXの具体的な値は、10kWという凝縮器出力に関連づけられる。つまりこの実施例の場合、20ケルビンという小さい温度上昇の場合には、このシステムに対する例えば5ケルビンという最小間隔を遵守するために十分な熱を伝達することができない。これに対し、60ケルビンという温度上昇の場合、内部熱交換器IHXにより伝達された熱QIHXは、この最小間隔に対し十分である。つまり60ケルビンという温度上昇は、このシステムに対する限界温度上昇よりも大きい。Novec649を用い、蒸発温度が70℃のときに10kWの凝縮器出力を有するヒートポンプ10から成る、ここで具体例として述べたシステムであれば、限界温度上昇は37ケルビン付近にある。その他のパラメータが同じ場合に例えばNovec524を動作流体として用いたならば、限界温度上昇は31ケルビン付近になる。
【0027】
したがって、ヒートポンプと動作流体とから成るいずれのシステムであっても、同様に限界温度上昇を定めることができ、この限界温度上昇よりも大きければ、内部熱交換器IHXは、圧縮最終点2と露点線TLとの最小間隔を遵守するのに必要とされる熱を維持することができる。温度上昇が限界温度上昇よりも小さければ、露点線TLに対する最小間隔に圧縮最終点2が確実に位置するように、本出願で説明しているシステムによって動作させる必要がある。このようにするだけで、露点線勾配が小さい流体による安定した定常動作を、ヒートポンプ10において実現することができる。
【0028】
図5~図7には、新規の動作媒体を使用するための種々の制御手法によるヒートポンプ10の実施形態が示されている。これによれば、限界温度上昇よりも小さく温度上昇が過度に僅かであっても、ヒートポンプWPを安定して定常的に動作させることができる。この場合、蒸発温度は70℃付近、凝縮温度は100℃付近にそれぞれあるものとし、つまり30ケルビンという温度上昇であるとする。このような温度上昇は、Novec649の場合にもNovec524の場合にも、2つの実施例とも限界温度上昇よりも小さいことになる。凝縮器出力は、例えば10kWである。図5及び図6には、2つの択一的な温度制御が示されている。これらの実施例の場合、ヒートポンプ10は慣用の膨張弁14によって駆動され、この膨張弁を、例えばサーモスタット制御又は電子制御による膨張弁14とすることができる。この膨張弁14は、動作流体の貫流と蒸発器15下流のスーパーヒートを制御する。内部熱交換器13と圧縮器11との間において、内部の熱交換器13と圧縮器11との間のパイプセクションの周囲に、パイプ加熱ユニット20が配置されている。このパイプ加熱ユニット20によって、その中を流れる動作媒体を加熱することができる。パイプ加熱ユニット20が動作媒体を状態点1においてどの程度の強さで加熱するのかは、状態点2つまり圧縮器11の出口における温度T2によって、制御される。この目的で温度T2が測定され、温度T1に関して最小間隔との比較によって、加熱ユニットがオン又はオフされ、もしくはその熱出力が低く又は高くされる。」
「
[図:0001390213000001.jpg]
[図:0001390213000002.jpg]
[図:0001390213000003.jpg]
[図:0001390213000004.jpg]
[図:0001390213000005.jpg]
」

(イ)上記(ア)及び図面の記載から認められる事項

上記(ア)及び図面の記載から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

a 上記(ア)の段落0001~0011、0015及び0021~0028並びに図1~5の記載によれば、引用文献2には、ヒートポンプ循環路を有するヒートポンプ10が記載されている。

ここで、段落0011及び図5によれば、ヒートポンプ10がヒートポンプ循環路を有することが認められる。

b 上記(ア)の段落0008、0022及び0028並びに図5の記載によれば、ヒートポンプ10において、ヒートポンプ循環路は、蒸発器15と、下流に続く動作流体を圧縮するための圧縮機11と、下流に続く凝縮器12と、前記動作流体を膨張させるための、下流に続く膨張弁14と、を含んでいることが認められる。

c ヒートポンプ10において、膨張弁14を経て低温となった動作流体は蒸発器15で吸熱し、圧縮機11を経て昇温した前記動作流体は凝縮器12で放熱するところ、上記(ア)の段落0003の「ヒートポンプにおいて冷媒を使用することで特徴的なのは、いわゆる温度上昇である。温度上昇は、凝縮温度と蒸発温度との差である。つまり温度上昇によって表されるのは、ヒートシンクにおいて利用するために熱源の温度レベルがどのくらい上昇したのか、ということである。」との記載及び段落0009の「したがってパイプ加熱ユニットを、例えば熱源又はヒートシンク温度が変動したときに、短期間だけ始動させてもよいし、持続動作させてもよい。」との記載を合わせてみると、蒸発器15は熱源の熱エネルギーを動作流体に伝達すること、及び、凝縮器12は、熱源よりも高い温度レベルにおいて動作流体の熱エネルギーをヒートシンクに放出することが認められる。

d 上記(ア)の段落0004、0008、0009,0015、0022、0023及び0026~0028並びに図1、2及び5の記載によれば、ヒートポンプ10において、蒸発器15から流れる動作流体を、圧縮機11に流入する前にスーパーヒートするための手段が配置されており、前記スーパーヒートするための手段が内部熱交換器13を含み、前記内部熱交換器13が、前記凝縮器12からの動作流体をサブクーリングして、凝縮状態に移行させることが認められる。

ここで、段落0022並びに図1、図2及び図5の記載、特に、段落0022の「状態点4から状態点5へのサブクール、もしくは状態点7から状態点1へのスーパーヒートは、図2に示されているように、内部熱交換器IHXを介して結合される。この熱交換器は、サブクールの際に生じる熱を利用しており、その熱を状態点7に伝達する。」との記載及び図5の記載によれば、内部熱交換器13により、凝縮器12を出た状態点4の高温の動作流体と蒸発器15を出た状態点7の低温の動作流体との間で熱交換をし、蒸発器15を出た状態点7の低温の動作流体は圧縮機に流入する前に加熱されて状態点1の動作流体にスーパーヒートされること、及び、凝縮器12を出た状態点4の高温の動作流体は冷却されて状態点5にサブクーリングされ、凝縮状態に移行されることが認められる。

また、段落0009、0022及び0028並びに図5の記載によれば、内部熱交換器13とパイプ加熱ユニット20とにより動作流体を圧縮機11に流入する前にスーパーヒートするための手段が構成されており、スーパーヒートするための手段が内部熱交換器13を含んでいることが認められる。

e 上記(ア)の段落0022及び図1の記載によれば、ヒートポンプ10において、動作流体は、圧縮最終点2と、50ケルビンの温度上昇を有するヒートポンププロセスWPの露点線TLとの距離、即ち、圧縮最終点2とその露点との温度差が、圧力が同じであれば10ケルビンにとなるようにスーパーヒートされることが認められる。

(ウ)引用発明

上記(ア)及び(イ)から、本件補正発明に倣って整理すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ヒートポンプ循環路を有するヒートポンプ10であって、前記ヒートポンプ循環路が、熱源の熱エネルギーを動作流体に伝達するための蒸発器15と、下流に続く前記動作流体を圧縮するための圧縮機11と、前記熱源よりも高い温度レベルにおいて前記動作流体の熱エネルギーをヒートシンクに放出するための、下流に続く凝縮器12と、前記動作流体を膨張させるための、下流に続く膨張弁14と、を含んでいるヒートポンプ10において、
前記蒸発器15から流れる動作流体を、前記圧縮機11に流入する前にスーパーヒートするための手段が配置されており、前記スーパーヒートするための手段が内部熱交換器13を含み、前記内部熱交換器13が、前記凝縮器12からの動作流体をサブクーリングして、凝縮状態に移行させ、前記動作流体は、圧縮最終点2と、50ケルビンの温度上昇を有するヒートポンププロセスWPの露点線TLとの距離、即ち、圧縮最終点2とその露点との温度差が、圧力が同じであれば10ケルビンとなるようにスーパーヒートされるヒートポンプ10。」

イ 引用文献3

原査定の拒絶の理由で周知技術の例証として引用された文献であって、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2009-186031号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。

「【0002】
従来より、ビルや工場等の大型設備の冷却に用いられるターボ冷凍機として、エコノマイザ(中間冷却器)が設けられて二段圧縮二段膨張冷凍サイクルを行うものが知られている。例えば特許文献1に開示されているターボ冷凍機は、二段式の遠心圧縮機(ターボ圧縮機)と、凝縮器と、高圧膨張弁と、エコノマイザと、低圧膨張弁と、蒸発器とが順に接続されている。このターボ冷凍機では、凝縮器からの冷媒が高圧膨張弁で減圧された後エコノマイザに流入し、液冷媒とガス冷媒とに分離される。エコノマイザの液冷媒は、低圧膨張弁で減圧され後蒸発器で蒸発して、遠心圧縮機の低段側に吸入される。一方、エコノマイザのガス冷媒は、遠心圧縮機の中間段に導入されて高段側に吸入される。このように、エコノマイザ付きの二段圧縮二段膨張冷凍サイクルでは、冷凍機の成績係数(COP)が向上する。」
「【0014】
〈冷媒回路の構成および動作〉
上記冷媒回路(20)は、ターボ圧縮機(21)(遠心圧縮機ともいう。)と、凝縮器(22)と、高段側膨張弁(23)と、中間冷却器(24)(エコノマイザともいう。)と、低段側膨張弁(25)と、蒸発器(26)とが順に接続されている。冷媒回路(20)は、冷媒が循環して二段圧縮二段膨張冷凍サイクルを行うように構成されている。
【0015】
上記凝縮器(22)および蒸発器(26)は、いわゆる満液式のものである。凝縮器(22)は、冷却塔との間で水配管(a)が接続されている。凝縮器(22)では、冷媒が水配管(a)の冷水へ放熱して凝縮する。蒸発器(26)は、室内機との間で水配管(b)が接続されている。蒸発器(26)では、冷媒が水配管(b)の水から吸熱して蒸発する。
【0016】
上記中間冷却器(24)は、流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離する気液分離器を構成している。中間冷却器(24)には、分離されたガス冷媒がターボ圧縮機(21)へ導入される導入配管(27)が接続されている。
【0017】
図2に示すように、上記ターボ圧縮機(21)は、二段式(二段圧縮式)のものである。ターボ圧縮機(21)は、ケーシング(30)を備え、該ケーシング(30)内に低段圧縮機構(31)および高段圧縮機構(32)と、動力伝達機構(33)と、電動機(34)とを備えている。」
「【0028】
先ず、上記電動機(34)を起動してターボ圧縮機(21)を駆動させると、高段圧縮機構(32)で圧縮された冷媒が吐出路(45)から吐出される(図3のD点の状態)。この状態では、冷媒の圧力が冷凍サイクルにおける高圧PHとなっている。吐出された冷媒は、凝縮器(22)へ流れ、水配管(a)の水へ放熱して凝縮する(図3のE点の状態)。凝縮した液冷媒は、高段側膨張弁(23)で減圧された後、中間冷却器(24)へ流れて液冷媒(図3のF点)とガス冷媒(図3のG点)とに分離される。この液冷媒およびガス冷媒の圧力は、共に冷凍サイクルにおける中間圧PMとなっている。
【0029】
上記中間冷却器(24)のガス冷媒は、導入配管(27)を通ってターボ圧縮機(21)へ流れる。一方、中間冷却器(24)の液冷媒は、低段側膨張弁(25)で減圧される(図3のH点の状態)。減圧された冷媒は、蒸発器(26)へ流れ、水配管(b)の水から吸熱して蒸発し(図3のA点の状態)、水が冷却される。蒸発した冷媒の圧力は、冷凍サイクルにおける低圧PLとなっている。なお、冷却された水は室内機へ送られて室内空気と熱交換し、室内空気が冷却される。
【0030】
上記蒸発器(26)で蒸発したガス冷媒は、ターボ圧縮機(21)の吸入路(41)から低段圧縮機構(31)へ吸入されて圧縮される(図3のB点の状態)。低段圧縮機構(31)で圧縮された冷媒は、連通路(43)へ流れて導入配管(27)のガス冷媒と合流する(図3のC点の状態)。合流した冷媒は、高段圧縮機構(32)へ流れて再び圧縮される(図3のD点の状態)。」
「
【図1】
[図:0001390213000006.jpg]
」

ウ 引用文献4

原査定の拒絶の理由で周知技術の例証として引用された文献であって、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-161499号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。

「【0002】
従来、冷凍空調装置などに利用されるターボ冷凍機は、冷媒を封入したクローズドシステムで構成され、被冷却流体から熱を奪って冷媒が蒸発して冷凍効果を発揮する蒸発器と、前記蒸発器で蒸発した冷媒ガスを圧縮して高圧の冷媒ガスにする圧縮機と、高圧の冷媒ガスを冷却流体で冷却して凝縮させる凝縮器と、前記凝縮した冷媒を減圧して膨張させる膨張弁(膨張機構)とを、冷媒配管によって連結して構成されている。そして、圧縮機として冷媒ガスを多段の羽根車によって多段に圧縮する多段圧縮機を用いた場合は、凝縮器と蒸発器の間の冷媒配管中に設置した中間冷却器であるエコノマイザで生じる冷媒ガスを圧縮機の中間段(多段の羽根車の中間部分)に導入することが行われている。」
「【0018】
図1は、本発明に係るターボ冷凍機の一実施形態を示す模式図である。本実施形態においては、ターボ冷凍機は、ブライン用ターボ冷凍機やヒートポンプ用ターボ冷凍機のいわゆる高ヘッド仕様のターボ冷凍機について説明する。図1に示すように、ターボ冷凍機は、冷媒を圧縮する多段ターボ圧縮機TCと、圧縮された冷媒ガスを冷却水(冷却流体)で冷却して凝縮させる凝縮器4と、ブライン(被冷却流体)から熱を奪って冷媒が蒸発し冷凍効果を発揮する蒸発器5と、凝縮器4と蒸発器5との間に配置される中間冷却器であるエコノマイザ6と、エコノマイザ6の前後に設置され凝縮冷媒を減圧して膨張させる膨張機構8,8とを備え、これら各機器を冷媒が循環する冷媒配管9によって連結して構成されている。
【0019】
図1に示す実施形態においては、多段ターボ圧縮機TCは、二段ターボ圧縮機からなり、一段目羽根車1と、二段目羽根車2と、これらの羽根車1,2を回転させる圧縮機モータ3と、圧縮機モータ3を駆動するインバータ14とから構成されている。圧縮機モータ3およびこれに連結された羽根車1,2の回転速度は、インバータ14によって変速可能となっている。さらに、インバータ14は制御装置20に接続されており、圧縮機モータ3および羽根車1,2の回転速度は、インバータ14を介して制御装置20によって制御される。
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【0020】
一段目羽根車1の吸込側には、冷媒ガスの羽根車1,2への吸込風量を制御するIGVが設けられている。このIGVは放射状に配置されており、各IGVが自身の軸心を中心として互いに同期して所定の角度だけ回転することにより、IGVの開度が変更される。多段ターボ圧縮機TCのサージング防止のためにIGVの最小開度は0°ではなく、IGVが完全に閉じないようになっている。IGVの最小開度は、通常、一定値である(後述する)。
【0021】
一段目羽根車1の吐出側と二段目羽根車2の吸込側とは、流路10によって接続されている。多段ターボ圧縮機TCにおいては、蒸発器5から一段目羽根車1に導入された冷媒ガスは一段目羽根車1により一段目の圧縮が行われ、次に流路10によって二段目羽根車2に導入された冷媒ガスは二段目羽根車2により二段目の圧縮が行われ、その後、凝縮器4に送られる。
【0022】
エコノマイザ6と前記流路10とは流路11によって接続されており、エコノマイザ6で分離された冷媒ガスは多段ターボ圧縮機TCの多段の圧縮段(この例では2段)の中間部分(この例では一段目と二段目の間の部分)に導入されるようになっている。エコノマイザ6と多段ターボ圧縮機TCとを接続する流路11には、電動式のエコノマイザ蒸気弁7が設けられており、エコノマイザ6から多段ターボ圧縮機TCの圧縮段への冷媒ガスの供給および供給停止が制御できるようになっている。エコノマイザ蒸気弁7は制御装置20により開閉制御される。
【0023】
図1に示すように構成されたターボ冷凍機の冷凍サイクルでは、多段ターボ圧縮機TCと凝縮器4と蒸発器5とエコノマイザ6とを冷媒が循環し、蒸発器5で得られる冷熱源でブラインが製造されて負荷に対応し、冷凍サイクル内に取り込まれた蒸発器5からの熱量および圧縮機モータ3から供給される多段ターボ圧縮機TCの仕事に相当する熱量が凝縮器4に供給される冷却水に放出される。一方、エコノマイザ6にて分離された冷媒ガスは多段ターボ圧縮機TCの多段圧縮段の中間部分に導入され、一段目羽根車1からの冷媒ガスと合流して二段目羽根車2により圧縮される。2段圧縮単段エコノマイザサイクルによれば、エコノマイザ6による冷凍効果部分が付加されるので、その分だけ冷凍効果が増加し、エコノマイザ6を設置しない場合に比べて冷凍効果を増加させることができる。」
「
【図1】
[図:0001390213000007.jpg]
」

(3)引用発明との対比

本件補正発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。

ア 後者の「ヒートポンプ循環路」は、前者の「流体回路」に相当し、以下同様に、「ヒートポンプ10」は「ヒートポンプ」に、「熱源」は「熱源」に、「動作流体」は「流体」に、「蒸発器15」は「少なくとも1つの蒸発器」に、「圧縮機11」は「少なくとも1つの圧縮機」に、「圧縮機11」は「少なくとも1つの圧縮機」に、「ヒートシンク」は「ヒートシンク」に、「凝縮器12」は「少なくとも1つの凝縮器」に、「膨張弁14」は「少なくとも1つの膨張装置」に、「スーパーヒートするための手段」は「過熱するための手段」に、「内部熱交換器13」は「熱交換器」に、「サブクーリング」は「過冷却」に、「圧縮最終点2」は「圧縮の終点」に、「スーパーヒート」は「過熱」に、それぞれ相当する。

イ 後者の「圧縮最終点2と、50ケルビンの温度上昇を有するヒートポンププロセスWPの露点線TLとの距離、即ち、圧縮最終点2とその露点との温度差」は、前者の「圧縮の終点における凝縮曲線に対する距離」に相当する。

そして、後者の「前記動作流体は、圧縮最終点2と、50ケルビンの温度上昇を有するヒートポンププロセスWPの露点線TLとの距離、即ち、圧縮最終点2とその露点との温度差が、圧力が同じであれば10ケルビンにとなるようにスーパーヒートされる」ことは、前者の「前記流体は、圧縮の終点における凝縮曲線に対する距離が、少なくとも10ケルビンとなるように過熱される」ことに、「前記流体は、圧縮の終点における凝縮曲線に対する距離が、所定値となるように過熱される」という限りにおいて一致する。

以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]

「流体回路を有するヒートポンプであって、前記流体回路が、熱源の熱エネルギーを流体に伝達するための少なくとも1つの蒸発器と、下流に続く前記流体を圧縮するための少なくとも1つの圧縮機と、前記熱源よりも高い温度レベルにおいて前記流体の熱エネルギーをヒートシンクに放出するための、下流に続く少なくとも1つの凝縮器と、前記流体を膨張させるための、下流に続く少なくとも1つの膨張装置と、を含んでいるヒートポンプにおいて、
前記蒸発器から流れる流体を、少なくとも1つの前記圧縮機に流入する前に過熱するための手段が配置されており、前記手段が熱交換器を含み、前記熱交換器が、前記凝縮器からの流体を過冷却して、凝縮状態に移行させ、前記流体は、圧縮の終点における凝縮曲線に対する距離が、所定値となるように過熱されるヒートポンプ。」

[相違点1]

本件補正発明では、「前記流体回路に沿って、前記凝縮器(8)と前記蒸発器(10)との間には少なくとも2つの膨張装置(9a、9b)が一列に配置されており、かつ前記蒸発器と前記凝縮器との間には、少なくとも2つの圧縮機(7a、7b)及び/又は少なくとも2つの圧縮機段が一列に配置されており、気相及び液相を分離するための分離器(30)が、両方の前記膨張装置(9a、9b)の間に接続され、両方の前記圧縮機の間、又は両方の前記圧縮機段の間において前記流体回路に合流する気相導入管(36)を有して」いるのに対して、

引用発明では、そのような構成を備えていない点。

[相違点2]

「前記流体は、圧縮の終点における凝縮曲線に対する距離が、所定値となるように過熱される」ことに関し、本件補正発明では、「少なくとも10ケルビン」となるように過熱されるのに対して、引用発明では、「圧力が同じであれば10ケルビン」となるように過熱される点。

(4)判断

ア 相違点1について

例えば引用文献3及び4の上記(1)イ及びウの記載から理解できるように、蒸発器、圧縮機、凝縮器及び膨張装置を含む流体回路を有する冷凍サイクルを利用した装置において、流体回路に沿って、前記凝縮器と前記蒸発器との間には少なくとも2つの膨張装置が一列に配置されており、かつ前記蒸発器と前記凝縮器との間には、少なくとも2つの圧縮機及び/又は少なくとも2つの圧縮機段が一列に配置されており、気相及び液相を分離するための分離器が、両方の前記膨張装置の間に接続され、両方の前記圧縮機の間、又は両方の前記圧縮機段の間において前記流体回路に合流する気相導入管を有することは、本願の優先日前に周知の技術(以下「周知技術」という。)である。

ここで、周知技術は冷凍サイクルに関するものであるところ、冷凍サイクルと引用発明のヒートポンププロセスWP(即ち、ヒートポンプサイクル)とは、蒸発器と凝縮器とのいずれか一方を熱源として、他方を熱源より低い温度とするか高い温度にするかの違いがあるのみで、基本構成及び動作原理は同じであり、互換が可能なものであるから、引用発明に周知技術を適用する動機付けは存在するといえる。

そして、周知技術は、冷凍サイクルを利用した装置の冷凍効果が増加して成績係数(冷凍サイクルで消費された動力と冷凍能力の比)が向上し、高効率が期待できるものであるから(引用文献3の段落0002及び引用文献4の段落0023)、引用発明において周知技術を適用し、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2について

本件補正発明の「前記流体は、圧縮の終点における凝縮曲線に対する距離が、少なくとも10ケルビンとなるように過熱される」こと(以下「相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項」という。)は、本願明細書の段落0048の「熱交換器32の面積を適切に寸法設計することによって、流体の十分な過熱が可能になり、これによって、膨張状態6aにおける膨張した流体の気相の、両方の圧縮機7a、7bの間への導入にも関わらず、圧縮の間の湿り蒸気の生成が確実に回避される。」との記載及び段落0050の「準備段階の方法ステップVS2では、流体回路内の流体の過熱は、例えば熱交換器面積の設計を通じて、圧縮機の終点における凝縮曲線に対する距離が、少なくとも10K、特に10Kから20Kになるように選択される。」との記載によれば、湿り蒸気の生成を確実に回避するためのものである。

一方、引用発明の「前記動作流体(流体)は、圧縮最終点2と、50ケルビンの温度上昇を有するヒートポンププロセスWPの露点線TLとの距離、即ち、圧縮最終点2とその露点との温度差(圧縮の終点における凝縮曲線に対する距離)が、圧力が同じであれば10ケルビンにとなるようにスーパーヒートされる」こと(以下「相違点2に係る引用発明の事項」という。)は、引用文献2の段落0022の「状態点2と、ヒートポンププロセスWPの露点線TLとの距離は、即ち、状態点2とその露点との温度差は、圧力が同じであれば10ケルビンになる。この最小間隔は、液体の衝突により圧縮器11を危険に晒すことなく、ヒートポンプ10の安定稼働を保証するために十分なものである。」との記載によれば、液体の衝突により圧縮器11を危険に晒すことなく、ヒートポンプ10の安定稼働を保証するためのものである。

そうすると、相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項と相違点2に係る引用発明の事項のいずれも、圧縮機を危険に晒すことなく、ヒートポンプサイクルの安定稼働を保証するなどのために、圧縮機が液体の流体を吸入することを回避するように過熱が行われることを特定するものといえ、相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項が相違点2に係る引用発明の事項に比べて格別な技術的意義を有するものとは認められない。

そして、引用文献2の段落0016には、動作流体(流体)の種類に応じて露点線勾配が異なることが記載されており、動作流体の露点線勾配が小さい場合は圧縮最終点2がその変化により液相に近づきやすいこと、また、蒸発器15、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁14及びそれらを接続する配管の構造や動作流体(流体)の種類などのヒートポンプ循環路(流体回路)の仕様によっては圧縮最終点2の変化がしやすいことが想定されることから、引用発明において、動作流体の種類及びヒートポンプ循環路の仕様などに応じて、圧縮最終点2とその露点との温度差(圧縮の終点における凝縮曲線に対する距離)を、圧縮機が液体の流体を吸入することを確実に回避できるように「圧力が同じであれば10ケルビン」に限らず、該「10ケルビン」を含むような数値範囲である「少なくとも10ケルビン」となるように設定し、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

ウ 請求人の主張について

請求人は、審判請求書の3.「(d)本願発明と引用発明との対比」(8ページ18行~同ページ28行)において、「引用文献2の段落[0022]には、「状態点2とその露点との温度差は、圧力が同じであれば10ケルビンになる」ことが開示されているが、同段落には、『特に、1ケルビンの最小間隔を遵守すべきであり、有利には5ケルビンの最小間隔を遵守すべきである』と記載されている。すなわち、引用文献2は、圧縮の終点における凝縮曲線に対する距離が、『最大でも10ケルビン』であることを意味している。

これに対して、本願請求項1に係る発明においては、圧縮の終点における凝縮曲線に対する距離が、『少なくとも10ケルビン』となるように過熱されるものであり、引用文献2とは異なっている。このような特徴は、引用文献2だけでなく、他の引用文献にも開示または示唆されていない。したがって、本願請求項1に係る発明は進歩性を有すると思料する。」と主張し、

また、令和4年1月12日提出の上申書の「3.本願発明と引用発明との対比」において、「引用文献2には、「状態点2とその露点との温度差は、圧力が同じであれば10ケルビンになる」ことが開示されていますが、「圧縮の終点における凝縮曲線に対する距離が、少なくとも10ケルビンとなるように過熱される」ことは開示または示唆されていません。本願請求項1に係る発明のこの特徴は、引用文献2だけでなく、引用文献1から5のいずれの文献にも開示または示唆されていません。」と主張する。

しかしながら、引用文献2の段落0022に請求人の摘記した記載があるとしても、上記ウで検討したとおり、引用発明において、動作流体の種類及びヒートポンプ循環路(流体回路)の仕様などに応じて、圧縮最終点2とその露点との温度差(圧縮の終点における凝縮曲線に対する距離)を、圧縮機が液体の流体を吸入することを確実に回避できるように「少なくとも10ケルビン」となるように設定することは、当業者が適宜なし得たことであるから、請求人の上記主張は採用できない。

エ 効果について

そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ まとめ

したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし15に係る発明は、令和3年4月2日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由の一部は、以下のとおりである。

<理由(特許法第29条第2項)について>

本願の請求項1に係る発明は、その出願前(優先日前)に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前(優先日前)にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記

引用文献2:特表2016-520187号公報
引用文献3:特開2009-186031号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2015-161499号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2ないし4、それらの記載並びに引用発明は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明と引用発明とは、前記第2の[理由]2(3)の対比を踏まえると、前記相違点1で相違し、その余の点で一致する。

そうすると、前記第2の[理由]2(4)の判断を踏まえると、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2021-011327

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