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特許拒絶査定不服審判

2021-011036

電気化学エネルギー貯蔵装置

審判番号
2021-011036
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-190979外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年08月19日
審決日
2023年04月13日
公報発行日
2023年09月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (H01G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第50条の2
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-190979「電気化学エネルギー貯蔵装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月16日出願公開、特開2020- 10068〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 10項目
理 由

1.手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、平成27年6月29日(パリ条約に基づく優先権主張 平成26年6月30日 米国 平成27年6月25日 米国)に出願した特願2015-130346号の一部を令和1年10月18日に新たな出願としたものであって、同年11月15日に手続補正がなされ、令和2年10月27日付けの特許法第50条の2の通知を伴う拒絶理由通知に対する応答時、令和3年1月29日に手続補正がなされたが、当該手続補正について、同年4月12日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、令和3年8月19日に拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされ、当審による令和4年7月29日付け拒絶理由通知に対する応答時、令和5年2月1日に手続補正がなされたものである。

2.本願発明

本願の請求項1ないし24に係る発明は、令和5年2月1日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし24に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
電気化学エネルギー貯蔵装置であって、
それぞれの内部電極の対と、
前記それぞれの電極の間の、固体の導電性のポリマーを含む電解質と、
それぞれの集電体の対であって、前記集電体の各1つがそれぞれ、前記電極のそれぞれの外側にある、集電体の対と、
前記集電体を囲み、前記集電体とそれぞれ接続された端子のそれぞれの対を有するケースと、を備え、前記ケースの内容物は、最小0.5ミリメートル未満の厚さを有する、
電気化学エネルギー貯蔵装置。」

3.拒絶の理由の概要

本願の請求項1に対して令和4年7月29日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由3(進歩性)の概要は次のとおりである。

本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び周知の技術事項(引用文献2、3に記載された技術事項)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記

引用文献1:特開2004-319097号公報
引用文献2:特開2003-217646号公報
引用文献3:特開2010-3773号公報

4.引用文献の記載及び引用発明

(1)引用文献の記載

当審による拒絶の理由に引用された上記引用文献1(特開2004-319097号公報)には、「電気化学セル」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。

ア.「【請求項1】

金属集電体に担持され、正電極又は負電極として機能する一対の電極と、イオン導電性の電解質とを有する電気化学セル素子と、

前記電気化学セル素子を内部に収納し、密封封止される外装体と、

前記外装体の封止部から引き出され、前記電気化学セル素子と外部回路とを電気的に接続する外部リード端子と、を備え、

前記外装体は、樹脂フィルムまたは内面側に樹脂層が設けられたフィルムと、金属箔とのラミネートフィルムで構成され、

前記外部リード端子は前記金属集電体から延長された金属リードであることを特徴とする電気化学セル。

【請求項2】

前記外装体の封止部の前記外部リード端子が引き出される部分に、前記外装体の少なくとも一方の面に窓部を設け、この窓部から前記金属リードを露出させ、この露出部を外部リード端子または外部リード端子の接続部とする構造としたことを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル。」

イ.「【0016】

この電極体Aには、外装体に収納後または予め収納前に、イオン導電性の電解液が含浸吸蔵され、電気化学セル素子が構成される。電解質としては、例えば有機電解質電池の場合には、γ-ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルフォーメイト、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジメチルフォルムアミド、スルホラン等の有機溶媒の単独又は混合溶媒に支持電解質としてLiClO4、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3等のリチウムイオン解離性塩を溶解した非水(有機)電解液、ポリエチレンオキシドやポリフォスファゼン架橋体等の高分子に前記リチウム塩を固溶させた高分子固体電解質あるいはLi3N、LiI等の無機固体電解質等々のリチウムイオン導電性の非水電解質を用いることができる。また、電気二重層キャパシタの場合には、上述した支持電解質の代りに、あるいはそれに加えて(C2H5)4N)BF4、(C2H5)4N)PF4、(C2H5)4N)ClO4、(C2H5)3CH3N)BF4、(CH3)4N)BF4等のアンモニウム塩やホスフォニウム塩等が用いられる。電解質としてゲル状電解質、高分子固体電解質や無機固体電解質等の固体状電解質が用いられる場合には、セパレータの代わりにこれらの固体状電解質を単独もしくはセパレータと併用して用いることが出来る。」

ウ.「【0017】

(実施の形態2)

図2は本発明による電気化学セルの構成の他の一例を示す概略断面図である。電極体Bは、実施の形態1と同様な電極組成の一対の電極11、12が金属集電体13、14に、実施の形態1と同様にシート状に一体に積層形成され、この電極間にセパレータを配して平板状に積層されている。この実施の形態2の電極体Bでは、一対の電極-金属集電体とセパレータの積層体は、平板状に積層されるのみで、捲回されていない例であり、特にセルの厚さが1mm以下の薄型電気化学セルの場合に適する。この様な一対の電極-金属集電体とセパレータの積層体をユニットとして複数個積層し同極同士を接続した多積層セルとすることも出来る。また、金属集電体13、14には、実施の形態1と同様に、セル組み立て後セル内電極と外部回路とを電気的に接続するための外部リード端子となるように、金属集電体への電極層の積層形成に際し電極を形成しない露出部分を残し、所定のリード形状に打ち抜きプレスやカッティング等により形成され、金属集電体の一部分が延長された金属リード部15、16を設けている。この電極体Bと電解質が外装体18に収納され、外装体周縁部がヒートシール、圧着または接着剤による接着等により密封封止されている。本実施の形態に用いられる外装体は、材質としては実施の形態1に記載したものと同様な樹脂フィルムまたは樹脂と金属箔のラミネートフィルムが使用できるが、予め外装体周縁の封止部となる部分(すなわち、図4、5の封止部B)の外部リード端子が引き出される部分に、該外装体フィルムの少なくとも一方の面に、予め切り欠け窓部を設け、外装体の周縁部の封止に際し、この窓部から金属集電体13、14の一部が延長された金属リード15、16の少なくとも一方の面を露出させて密封封止し、この金属リードの露出部を外部リード端子または外部リード端子の接続部とする構成とする。窓部の形状は矩形、長円形、半円、半長円等任意の多角形や円形やその他の形状が可能であり、例えば、図4に示す窓部の外側辺がカットされてラミフィルムの除去された構造、図5に示す窓部の周囲にラミネートフィルムが残された構造、ラミネートフィルムの両面が除去された構造等が可能である。また、窓部の形成は外装体ラミネートフィルムの該当部分をナイフ等による裁断や抜き型によるプレス抜き等で行うことができる。」

エ.「【0020】

(実施例1)

・・・・(中 略)・・・・

次に、外装フィルムの折り返し辺に対向する辺の開口部から、プロピレンカーボネートに1mol/lのテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートを溶解した電解液を注入し、減圧して電解液を電極及びセパレータに含浸した後、開口部周縁部をヒートシールして密封封止し、電気化学セルを作製した。

・・・・(中 略)・・・・

【0023】

(実施例2)

本実施例は、図2で示した基本構造で電気二重層キャパシタを構成した例である。電極11、12には実施例1と同様な混練合剤を厚さ80μmに圧延成形したものを用い、厚さ30μmの硬質アルミニウム箔からなる金属集電体13、14の片面にリード部となる露出部分を残して、炭素を導電性フィラーとする導電性接着剤によって接着し積層一体化する。これを、電極積層部が幅30mm、長さ50mm、電極の形成されていないリード部が長さ10mm、幅6mmになるように打ち抜きプレスにより切断し、一対の電極11、12と金属集電体13、14の積層体を作製した。この一対の電極と集電体の積層体を、電極形成面を対向させて、間にセパレータを介して積層しただけで、捲回していない平板状のものを電極体Bとした。外装体には実施例1と同様なラミネートフィルムを用い、折り返して袋状とする上側のラミネートフィルムの折り返し辺に対向する1辺の封止部の金属リードを引き出す部分に図4のように打ち抜きプレスにより穴をあけ窓部を設けた。窓部の形状は幅6mm、奥行き3mmの四角形とした。この外装体内に、金属リード15、16が上記の切り欠け窓部に露出するように位置合わせして収納し、外装体周縁部の金属リードの引き出し辺及びそれに直交する1辺をヒートシールした。その後、実施例1と同様な方法で電解液注入、減圧-電解液含浸、開口部のヒートシールを行い幅40mm、長さ60mm、厚さ約0.5mmの平板型電気化学セルを作製した。本実施例の平板型電気化学セルでは、外部リード端子として僅か30μm厚のアルミニウム箔からなる金属集電体の一部を引き出した金属リードが用いられているにもかかわらず、外装体窓部の金属リードの露出部周囲及び下面がラミネートフィルムに接着保護されているため、製造時及びその後の充放電試験、内部抵抗測定等の評価検査の過程でリードの切れや破れ等の不良の発生は無かった。また静電容量は平均値3.8F、セルの厚さは平均値0.46mmであった。」

オ.「

[図:0001400910000001.jpg]

」

(2)引用文献の記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)

上記(1)の「ア.」ないし「オ.」から以下のことがいえる。

・引用文献1に記載の「電気化学セル」は、上記「ア.」、「ウ.」、「エ.」の記載、及び上記「オ.」(図2)によれば、一対の電極(正電極と負電極)11、12と、一対の電極11、12における各電極がそれぞれ積層形成される一対の金属集電体13、14と、一対の電極と金属集電体の積層体を電極形成面を対向させてその電極間に配されたセパレータと、セパレータと当該セパレータを介して積層した積層体とからなる電極体Bと電解質とを収納し、密封封止されてなる外装体18と、を備えるものである。そして、外装体18の封止部における一対の金属集電体13、14からそれぞれ延長された金属リード15、16である外部リード端子が引き出される部分に、外装体18の少なくとも一方の面に外部リード端子を露出させる窓部を設け、その露出部を外部リード端子の接続部としてなるものである。

・上記「イ.」、「エ.」の記載によれば、実施例2に係るものでは、電解質は、プロピレンカーボネートを含む有機電解質である。

・上記「エ.」の記載によれば、実施例2に係る「電気化学セル」は、電気二重層キャパシタを構成する平板型電気化学セルであり、幅40mm、長さ60mm、厚さ約0.5mmである。

(3)引用発明

特に図2に示される構造の実施例2に係るものに着目し、上記(2)の記載事項を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「電気二重層キャパシタを構成する平板型電気化学セルであって、
一対の電極(正電極と負電極)と、
前記一対の電極における各電極がそれぞれ積層形成される一対の金属集電体と、
前記一対の電極と金属集電体の積層体を電極形成面を対向させ、その電極間に配されたセパレータと、
前記セパレータを介して積層した前記積層体とからなる電極体と、プロピレンカーボネートを含む有機電解質とを収納し、密封封止されてなる外装体であって、その封止部の前記金属集電体から延長された金属リードである外部リード端子が引き出される部分に、当該外装体の少なくとも一方の面に前記外部リード端子を露出させる窓部を設け、その露出部を前記外部リード端子の接続部としてなる、外装体と、を備え、
幅40mm、長さ60mm、厚さ約0.5mmである、電気二重層キャパシタを構成する平板型電気化学セル。」

5.対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明における「一対の電極」(正電極と負電極)は、本願発明でいう「それぞれの内部電極の対」に相当する。

(2)引用発明におけるプロピレンカーボネートを含む「有機電解質」は、本願発明でいう「電解質」に対応するものである。

ただし、当該電解質について、本願発明では「前記それぞれの電極の間の、固体の導電性のポリマーを含む」ことを特定するのに対し、引用発明ではプロピレンカーボネートを含むものである点で相違する。

(3)引用発明における「一対の金属集電体」は、本願発明でいう「集電体の対」に相当する。ここで、引用発明における「一対の金属集電体」にあっても、各電極との積層体が電極形成面を対向させてセパレータを介して積層されることから、各電極のそれぞれ外側にあるものである。

したがって、本願発明と引用発明とは、「それぞれの集電体の対であって、前記集電体の各1つがそれぞれ、前記電極のそれぞれの外側にある、集電体の対と」を備えるものである点で一致する。

(4)引用発明における「外装体」は、電極体を収納するのであるから、当然、電極体に含まれる金属集電体を囲んでなるものであり、本願発明でいう「ケース」に相当するものである。そして、引用発明における一対の金属集電体からそれぞれ延長された金属リードである「外部リード端子」は、本願発明でいう集電体とそれぞれ接続された「端子」に相当するものであるところ、引用発明における「外装体」にあっても、封止部の外部リード端子が引き出される部分に、当該外装体の少なくとも一方の面に外部リード端子を露出させる窓部を設け、その露出部を外部リード端子の接続部としてなる構成を有することを踏まえると、外部リード端子のそれぞれの対を有するものであるとみることができる。

したがって、本願発明と引用発明とは、「前記集電体を囲み、前記集電体とそれぞれ接続された端子のそれぞれの対を有するケースと」を備えるものである点で一致する。

(5)引用発明における電気二重層キャパシタを構成する「平板型電気化学セル」は、厚さ約0.5mmであるから、これに収納されている電極体(本願発明でいう「内容物」に相当)の厚さは0.5mm未満であることは明らかである。ここで、本願発明で特定する「前記ケースの内容物は、最小0.5ミリメートル未満の厚さ」とは、ケースの内容物の厚さの最小値が0.5ミリメートル未満であることを特定しているだけであるから、ケースの内容物の厚さが0.5ミリメートル以上であることを妨げているわけでもない。

したがって、本願発明と引用発明とは、「前記ケースの内容物は、最小0.5ミリメートル未満の厚さを有する」ものである点で一致する。

(6)そして、引用発明における電気二重層キャパシタを構成する「平板型電気化学セル」は、本願発明でいう「電気化学エネルギー貯蔵装置」に相当するものである。

よって上記(1)ないし(6)によれば、本願発明と引用発明とは、

「電気化学エネルギー貯蔵装置であって、
それぞれの内部電極の対と、
電解質と、
それぞれの集電体の対であって、前記集電体の各1つがそれぞれ、前記電極のそれぞれの外側にある、集電体の対と、
前記集電体を囲み、前記集電体とそれぞれ接続された端子のそれぞれの対を有するケースと、を備え、前記ケースの内容物は、最小0.5ミリメートル未満の厚さを有する、
電気化学エネルギー貯蔵装置。」

である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]

電解質について、本願発明では「前記それぞれの電極の間の、固体の導電性のポリマーを含む」ことを特定するのに対し、引用発明ではプロピレンカーボネートを含むものである点。

6.判断

上記相違点について検討する。

引用文献1の段落【0016】には、電解質について、プロピレンカーボネートを有機溶媒として含む有機電解質以外に、高分子固体電解質を用いることができること、高分子固体電解質が用いられる場合には、セパレータの代わりに固体状電解質を単独もしくはセパレータと併用して用いることができることが記載されている。これらのことは、例えば特開2002-334683号公報(段落【0022】を参照)や特開2007-129229号公報(段落【0019】を参照)にも記載のように電気二重層キャパシタにおいて周知といえる技術事項であり、引用発明の電気二重層キャパシタを構成する平板型電気化学セルにおいても、電解質として、プロピレンカーボネートを含む有機電解質に代えて、セパレータの代わりにあるいはセパレータと併用して高分子固体電解質(固体の導電性ポリマーからなる電解質)を用い、相違点に係る構成とすることは当業者であれば適宜なし得たことである。

そして、本願発明が奏する効果についてみても、引用発明及び周知の技術事項から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

7.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2021-011036

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