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特許拒絶査定不服審判

2021-010983

触覚対応ニューラルインターフェースのためのシステム及び方法

審判番号
2021-010983
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-002732外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年08月18日
審決日
2022年04月27日
公報発行日
2022年05月27日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (G06F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017- 2732「触覚対応ニューラルインターフェースのためのシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月20日出願公開、特開2017-126337、請求項の数(23)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は,平成29年1月11日(パリ条約による優先権主張2016年1月13日,米国)の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 令和2年12月22日付け 拒絶理由通知 令和3年 4月 2日 意見書・手続補正書 提出 令和3年 4月 8日付け 拒絶査定 令和3年 8月18日 審判請求書 提出 令和3年 8月24日 上申書 提出 第2 原査定の概要 原査定(令和3年4月8日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 (進歩性)この出願の請求項1-6,8-14,16-21,23に係る発明は,下記の引用文献1,2および4に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり,この出願の請求項7,15,22に係る発明は,下記の引用文献1ないし4に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,いずれも,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.CHIN et al.,Online performance evaluation of motor imagery BCI with augmented-reality virtual hand feedback, In: 2010 Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology[online],IEEE, 2010年,pp. 3341-3344,(検索日2020年12月22日), doi: 10.1109/IEMBS.2010.5627911, URL,https://ieeexplore.ieee.org/document/5627911 2.LOTTE et al.,Combining BCI with Virtual Reality: Towards New Applications and Improved BCI[online],2012年,pp.197-220, (検索日2020年12月22日),doi:10.1007/978-3-642-29746-5_10, URL,https://www.researchgate.net/publication/278702153_ Combining_BCI_with_Virtual_Reality_Towards_New_Applications_ and_Improved_BCI 3.特開2015-130168号公報 4.特開2015-172943号公報 第3 本願発明 本願の請求項1ないし23に係る発明(以下,「本願発明1」ないし「本願発明23」という。)は,令和3年4月2日提出の手続補正書により補正された以下の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項23に記載された事項により特定されるとおりの発明である。 「【請求項1】 プロセッサを備えるシステムにおいて, 前記プロセッサは, 神経系に関係付けられる電気信号を検出するように構成されるニューラルインターフェースからセンサ信号を受信すること, 前記センサ信号に基づいてオブジェクトとの相互作用を決定すること, 前記オブジェクトとの前記相互作用に少なくとも部分的に基づいて触覚効果を決定すること, 触覚信号を第1の装置に送信することであって,前記第1の装置は,前記触覚信号を受信して,第1の触覚出力装置を介して前記触覚効果を出力するように構成されること,及び 前記触覚信号を,前記第1の装置から遠隔にある第2の装置に送信することであって,前記第2の装置は,前記触覚信号を受信して,第2の触覚出力装置を介して前記触覚効果を出力するように構成されること を行うように構成される,システム。 【請求項2】 前記ニューラルインターフェースは,前記神経系に関係付けられる前記電気信号を検出し且つ前記センサ信号を送信するように構成されるセンサを備え,前記センサは,脳波(EEG)電極,分光センサ,磁気共鳴画像診断装置,又は容量性センサの少なくとも1つを含む,請求項1に記載のシステム。 【請求項3】 前記プロセッサは, 前記センサ信号に少なくとも部分的に基づいて聴覚効果を決定し,且つ 前記聴覚効果をスピーカに出力させるように構成される聴覚信号を送信する ように更に構成される,請求項2に記載のシステム。 【請求項4】 前記プロセッサは, 前記センサ信号に少なくとも部分的に基づいて視覚効果を決定し,且つ 前記視覚効果をディスプレイに出力させるように構成される表示信号を送信する ように更に構成される,請求項3に記載のシステム。 【請求項5】 前記オブジェクトは拡張現実環境における仮想オブジェクトであり,前記プロセッサは,前記拡張現実環境におけるイベントに少なくとも部分的に基づいて前記触覚効果を決定するように更に構成される,請求項1に記載のシステム。 【請求項6】 前記触覚効果は第1の触覚効果であり, 前記プロセッサは, 前記センサ信号に基づいて体の一部の移動を決定し,且つ 前記移動に少なくとも部分的に基づいて第2の触覚効果を決定する ように更に構成される,請求項1に記載のシステム。 【請求項7】 前記第2の触覚効果は,前記体の一部の前記移動を確認する又は前記体の一部により接触される表面の特徴をシミュレートするように構成される,請求項6に記載のシステム。 【請求項8】 前記ニューラルインターフェースは第1のニューラルインターフェースであり,前記プロセッサは,遠隔ユーザにより使用可能な第2のニューラルインターフェースを備える遠隔装置に前記触覚信号を送信するように更に構成され,前記触覚信号は前記遠隔装置に前記触覚効果を出力させるように構成される,請求項1に記載のシステム。 【請求項9】 神経系に関係付けられる電気信号を検出するように構成されるニューラルインターフェースからセンサ信号を受信するステップと, 前記センサ信号に基づいてオブジェクトとの相互作用を決定するステップと, 前記オブジェクトとの前記相互作用に少なくとも部分的に基づいて触覚効果を決定するステップと, 前記触覚効果に関係付けられる触覚信号を第1の装置に送信するステップであって,前記第1の装置は前記触覚信号を受信し且つ第1の触覚出力装置を介して前記触覚効果を出力するように構成されるステップと, 前記触覚効果に関係付けられる前記触覚信号を,前記第1の装置から遠隔にある第2の装置に送信するステップであって,前記第2の装置は前記触覚信号を受信し且つ第2の触覚出力装置を介して前記触覚効果を出力するように構成されるステップと を含む,方法。 【請求項10】 前記ニューラルインターフェースは,前記神経系に関係付けられる前記電気信号を検出し且つ前記センサ信号を送信するように構成されるセンサを備え,前記センサは,脳波(EEG)電極,分光センサ,磁気共鳴画像診断装置,又は容量性センサの少なくとも1つ を含む,請求項9に記載の方法。 【請求項11】 前記センサ信号に少なくとも部分的に基づいて聴覚効果を決定するステップと,前記聴覚効果をスピーカに出力させるように構成される聴覚信号を送信するステップと を更に含む,請求項10に記載の方法。 【請求項12】 前記センサ信号に少なくとも部分的に基づいて視覚効果を決定するステップと, 前記視覚効果をディスプレイに出力させるように構成される表示信号を送信するステップと を更に含む,請求項11に記載の方法。 【請求項13】 前記オブジェクトは拡張現実環境における仮想オブジェクトであり,前記触覚効果は前記拡張現実環境におけるイベントに少なくとも部分的に基づく,請求項9に記載の方法。 【請求項14】 前記触覚効果は第1の触覚効果であり, 前記センサ信号に基づいて体の一部の移動を決定するステップと,前記移動に少なくとも部分的に基づいて第2の触覚効果を決定するステップと を更に含む,請求項9に記載の方法。 【請求項15】 前記第2の触覚効果は,前記体の一部の前記移動を確認する又は前記体の一部により接触される表面の特徴をシミュレートするように構成される,請求項14に記載の方法。 【請求項16】 前記ニューラルインターフェースは第1のニューラルインターフェースであり, 第2のニューラルインターフェースを備える遠隔装置に前記触覚信号を送信するステップであって,前記触覚信号は前記遠隔装置に前記触覚効果を出力させるように構成されるステップ を更に含む,請求項9に記載の方法。 【請求項17】 プロセッサにより実行されると,前記プロセッサに, 神経系に関係付けられる電気信号を検出するように構成されるニューラルインターフェースからセンサ信号を受信すること, 前記センサ信号に基づいてオブジェクトとの相互作用を決定すること, 前記オブジェクトとの前記相互作用に少なくとも部分的に基づいて触覚効果を決定すること, 前記触覚効果に関係付けられる触覚信号を第1の装置に送信することであって,前記第1の装置は前記触覚信号を受信し且つ第1の触覚出力装置を介して前記触覚効果を出力するように構成されること,及び 前記触覚効果に関係付けられる前記触覚信号を,前記第1の装置から遠隔にある第2の装置に送信することであって,前記第2の装置は前記触覚信号を受信し且つ第2の触覚出力装置を介して前記触覚効果を出力するように構成されること を行わせるように構成されるプログラムコードを含む,非一時的なコンピュータ可読媒体。 【請求項18】 前記ニューラルインターフェースは,触覚出力装置を備える,請求項17に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。 【請求項19】 前記プロセッサにより実行されると,前記プロセッサに 前記センサ信号に少なくとも部分的に基づいて聴覚効果を決定すること,及び 前記聴覚効果をスピーカに出力させるように構成される聴覚信号を送信すること を行わせるように構成されるプログラムコードを更に含む,請求項18に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。 【請求項20】 前記プロセッサにより実行されると,前記プロセッサに 前記センサ信号に少なくとも部分的に基づいて視覚効果を決定すること,及び 前記視覚効果をディスプレイに出力させるように構成される表示信号を送信すること を行わせるように構成されるプログラムコードを更に含む,請求項19に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。 【請求項21】 前記オブジェクトは拡張現実環境における仮想オブジェクトであり,前記触覚効果は前記拡張現実環境におけるイベントに少なくとも部分的に基づく,請求項17に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。 【請求項22】 前記触覚効果は第1の触覚効果であり,前記プロセッサにより実行されると,前記プロセッサに 前記センサ信号に基づいて体の一部の移動を決定すること,及び 前記移動に少なくとも部分的に基づいて第2の触覚効果を決定することであって,前記第2の触覚効果は,前記体の一部の前記移動を確認する又は前記体の一部により接触される表面の特徴をシミュレートするように構成されること を行わせるように構成されるプログラムコードを更に含む,請求項17に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。 【請求項23】 前記ニューラルインターフェースは第1のニューラルインターフェースであり,前記プロセッサにより実行されると,前記プロセッサに 第2のニューラルインターフェースを備える遠隔装置に前記触覚信号を送信することであって,前記触覚信号は前記遠隔装置に前記触覚効果を出力させるように構成されること を行わせるように構成されるプログラムコードを更に含む,請求項17に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。」 第4 引用文献 1 引用文献1および引用発明 (1)引用文献1の記載事項 原査定の拒絶理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は,当審が付加した。以下同様。)。 ア 「Abstract-The online performance of a motor imagery-based Brain-Computer Interface (MI-BCI) influences its effectiveness and usability in real-world clinical applications such as the restoration of motor control. The online performance depends on factors such as the different feedback techniques and motivation of the subject. This paper investigates the online performance of the MI-BCI with an augmented-reality (AR) 3D virtual hand feedback. The subject experiences the interaction with 3D virtual hands, which have been superimposed onto his real hands and displayed on the computer monitor from a first person point-of-view. While performing motor imagery, he receives continuous visual feedback from the MI-BCI in the form of different degrees of reaching and grasping actions of the 3D virtual hands with other virtual objects. The AR feedback is compared with the conventional horizontal bar feedback on 8 subjects, of whom 7 are BCI-na?ve. The subjects found the AR feedback to be more engaging and motivating. Despite the higher mental workload involved in the AR feedback, their online MI-BCI performance compared to the conventional horizontal bar feedback was not affected. The results provide motivation to further develop and refine the AR feedback protocol for MI-BCI. I.Introduction Motor imagery involves the imagination of motor movement from the first-person perspective [1], which results in changes in the electroencephalogram (EEG). These changes could be translated into control signals in a non-invasive Motor Imagery-based Brain-Computer Interface (MI-BCI). Potential clinical applications include the restoration of motor control [2], [3] for patients with severe motor disability who could not engage in motor movements without assistance. Motor imagery activates similar brain areas as the motor execution, hence it could form a “backdoor approach” to access the motor system [4] for rehabilitation. Due to the huge inter-subject variability in the brain signal characteristics [5], [6], an important challenge for practical applications of the MI-BCI lies in the processing of the EEG recordings during motor imagery. New signal processing and machine learning approaches are being developed that discriminate different brain states in different subjects to enable a high classification accuracy of the EEG signals [7]. One such approach to overcome the huge inter-subject variability in MI-BCI is the Filter Bank Common Spatial Pattern (FBCSP) algorithm, which has shown effectiveness in performing an autonomous selection of key temporal-spatial discriminative EEG characteristics, specific to the subject [8]. However, the online performance of the FBCSP algorithm has yet to be evaluated extensively. The performance of the MI-BCI depends on its operation during online sessions, which demonstrates its effectiveness and usability [9] for real-world applications. The MI-BCI depends not only on the EEG processing algorithms but also on other real-time factors, such as the intra-subject variability of the brain signals across sessions [6] and motivation [10]. Thus, feedback is an important component of the MI-BCI during online sessions. The MI-BCI translates the motor imagery action from the EEG data to a certain type of feedback shown to the subject. The subject learns EEG control [11] and adapts his brain activity concurrently [9] based on the information received from the BCI. Typically, visual feedback in the form of a moving horizontal bar [7] or cursor control [5], is employed for BCI during online operations. Existing studies have also proposed the use of virtual reality (VR) environments as a type of feedback for the BCI [10], [12]-[13][14] due to its motivational effect when the subject experiences the computer-generated simulation of a real-world environment. In [15], the authors found that 3D virtual hands could induce the feeling of ownership of a virtual limb even in the absence of tactile sensory stimulation. Furthermore, observing hand movements could reinforce the motor imagery process [3]. Recent advances in VR research enable the integration of video and 3D virtual objects in an augmented reality (AR) environment whereby the computer-generated 3D virtual objects are superimposed onto the real world environment in real time [16]. Hence the AR environment could potentially be employed as a type of feedback in MI-BCI. Based on the findings and motivations discussed above, this paper investigates the online performance of the MI-BCI, implemented using the FBCSP algorithm, with an augmented-reality (AR) 3D virtual hand feedback. The visual feedback is displayed on the computer monitor, which shows a real-time video of the subject's real hands. 3D virtual hands have been superimposed onto his real hands in the display. Hence the subject experiences the interaction with the 3D virtual hands in his real environment from a first person point-of-view. While performing single-trial motor imagery of the left hand or right hand, he receives continuous visual feedback from the MI-BCI. The MI-BCI translates his motor imagery action into different degrees of reaching and grasping actions of the 3D virtual hands with other virtual objects. The online performance of the MI-BCI will also be investigated with the conventional horizontal bar feedback.」(3341頁左欄1行~3342頁左欄8行) (当審訳: 要旨-運動イメージに基づくブレインコンピュータインターフェース(MI-BCI)のオンライン性能は,運動制御の回復など実際の臨床応用における効果や使い勝手に影響を与える。オンライン性能は,様々なフィードバック手法や被験者のモチベーションなどの要因に依存する。本論文では,拡張現実感(AR)3D仮想ハンドフィードバックを用いたMI-BCIのオンライン性能について検討する。被験者は,実際の手に重ね合わせた3D仮想ハンドを一人称視点でコンピュータのモニタに表示し,インタラクションを体験する。運動イメージの実行中,被験者はMI-BCIから,3D仮想ハンドが他の仮想オブジェクトに手を伸ばし,把持する動作の度合いを変化させる形で,連続的に視覚フィードバックを受ける。BCI未経験者7名を含む8名の被験者に対して,ARフィードバックと従来の水平バーフィードバックとを比較した。その結果,被験者はARフィードバックがより魅力的であり,モチベーションを高めてくれると感じた。また,ARフィードバックに伴う精神的負荷が高いにもかかわらず,従来の水平バーフィードバックと比較して,オンラインMI-BCIの性能に影響を与えなかった。この結果は,MI-BCIのためのARフィードバックプロトコルをさらに開発し,改良するための動機付けとなる。 I.はじめに 運動イメージは,一人称視点で運動動作を想像するものであり[1],その結果,脳波(EEG)に変化が生じる。これらの変化は,非侵襲的な運動イメージに基づくブレインコンピュータインターフェース(MI-BCI)において制御信号に変換される可能性がある。臨床応用の可能性としては,介助なしでは運動ができない重度運動障害者の運動制御の回復[2],[3]が挙げられる。運動イメージは,運動実行と同様の脳領域を活性化することから,リハビリテーションのために運動システムにアクセスする「バックドアアプローチ」を形成することができる[4]。 脳信号の特性は被験者間で大きく異なるため[5], [6],MI-BCIの実用化にとって重要な課題は,運動イメージ時の脳波記録の処理にある。EEG信号の高い分類精度を実現するために,被験者によって異なる脳の状態を識別する新しい信号処理および機械学習アプローチが開発されていいる[7]。 MI-BCIにおける被験者間の大きなばらつきを克服するためのこうしたアプローチの1つが,FBCSP(Filter Bank Common Spatial Pattern)アルゴリズムであり,被験者に固有の主要な時間-空間識別脳波特性を自律的に選択する有効性が示されている[8]。 しかし,FBCSPアルゴリズムのオンライン性能は,まだ広範囲に評価されていない。MI-BCIの性能はオンラインセッションでの動作に依存し,実世界のアプリケーションにおけるその有効性とユーザビリティを実証している[9]。MI-BCIは,EEG処理アルゴリズムだけでなく,セッション間での脳信号の被験者内変動[6]やモチベーション[10]などの他のリアルタイム要因にも依存する。 このように,オンラインセッション中のMI-BCIでは,フィードバックが重要な要素となっている。MI-BCIは,EEGデータから運動イメージの動作を,被験者に示されるある種のフィードバックに変換する。被験者は脳波制御を学習し[11],BCIから受け取った情報に基づいて自分の脳活動を同時に適応させる[9]。一般に,オンライン操作時のBCIには,移動する水平バー[7]やカーソル制御[5]などの視覚的フィードバックが採用されることが多い。また,既存の研究では,被験者が実世界環境のコンピュータによるシミュレーションを体験することでモチベーションを高める効果があることから,BCIのフィードバックの一種として仮想現実(VR)環境の利用が提案されている[10],[12]-[13][14]。また,[15]では,触覚刺激がない場合でも3次元仮想ハンドが仮想肢の所有感を誘発することを明らかにした.さらに,手の動きを観察することで,運動イメージのプロセスを強化することができた[3]。最近のVR研究の進歩により,ビデオと3D仮想オブジェクトを統合し,コンピュータで生成された3D仮想オブジェクトをリアルタイムで現実世界の環境に重ねる拡張現実(AR)環境を実現することができる[16].したがって,AR環境はMI-BCIにおけるフィードバックの一種として採用される可能性がある。 本論文では,上記の知見と動機に基づき,FBCSPアルゴリズムを用いて実装されたMI-BCIのオンライン性能を,拡張現実(AR)3D仮想ハンドフィードバックとともに調査する。視覚的なフィードバックは,被験者の実際の手のリアルタイム映像を表示するコンピュータのモニタ上に表示される。3D仮想ハンドは,ディスプレイ上で被験者の実際の手の上に重ねられる。そのため,被験者は一人称視点で,実環境における3D仮想ハンドとのインタラクションを体験することができる。左手または右手の単一試行の運動イメージを行っている間,被験者はMI-BCIから連続的な視覚的フィードバックを受ける。MI-BCIは,彼の運動イメージの動作を,3D仮想ハンドの様々な程度の到達動作や他の仮想オブジェクトとの把持動作に変換する。また,MI-BCIのオンライン性能は,従来の水平バーによるフィードバックと比較検討される予定である。) イ 図3 [図:0001383938000001.jpg] ウ 「B. Augmented Reality 3D Virtual Hand Feedback The setup for the AR 3D virtual hand feedback is shown in Fig. 3. The visual feedback is displayed on the monitor, which shows a real-time video of the subject's real environment captured by a webcam. 3D virtual hands are superimposed onto special markers which have been positioned onto the subject's real hands. During each trial, the visual cue that specifies the class of motor imagery to perform is indicated by the appearance of the specific virtual hand. A 3D virtual cube is also displayed on the same side as the virtual hand. The subject receives visual feedback in the form of different degrees of the reaching action by the virtual hand towards the cube, since the distance from the virtual hand to the cube is proportional to 1-p(ω|x). In the event of a misclassification, the virtual hand stays at its original marker position. In addition, the subject does not observe the movement of the other virtual hand as it may cause interference in facilitating the required motor imagery [7]. The MI-BCI translates the motor imagery action continuously and updates the position of the virtual hand every 0.5s till the end of the motor imagery at 4s. If the subject could perform the correct reaching action for at least 1.5s, the visual ‘reward’ is presented, whereby the virtual hand finally grasps the virtual cube and places it onto the top marker shown in Fig. 3. This is also followed by a break period where the system does not receive any input from the user before the next trial begins.」(3342頁右欄下から4行~3343頁左欄24行) (当審訳: B. 拡張現実感3D仮想ハンドフィードバック AR 3Dバーチャルハンドフィードバックのセットアップを図3に示す。 視覚的フィードバックはモニタに表示され,モニタはWebカメラで撮影された被験者の実環境のリアルタイム映像を表示する。3D仮想ハンドは,被験者の実ハンドに配置された特別なマーカーに重ね合わされる。各試行では,どのクラスの運動イメージを行うかを示す視覚的手がかりが,特定の仮想ハンドの出現によって示される。また,仮想ハンドと同じ側に3次元仮想立方体が表示される。 仮想の手から立方体までの距離は 1-p(ω|x) に比例するため,被験者は仮想の手から立方体への到達動作の度合いが異なるという形で視覚フィードバックを受けることになる。誤判定の場合,仮想ハンドは元のマーカー位置に留まる。また,もう一方の仮想ハンドの動きは,必要な運動イメージの促進を妨げる可能性があるため,被験者は観察しない[7]。MI-BCIは運動イメージの動作を連続的に翻訳し,運動イメージが終了する4秒後まで0.5秒ごとに仮想ハンドの位置を更新する。被験者が少なくとも1.5秒間,正しいリーチング動作を行うことができれば,視覚的な「報酬」が提示され,最終的に仮想ハンドが仮想キューブを掴み,図3に示すマーカー上に配置される。この後,次の試行が始まるまで,システムはユーザからの入力を受け取らない休憩時間が設けられる。) (2)引用発明 上記(1)の,特に下線を付加した記載に着目すると,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「運動イメージに基づくブレインコンピュータインターフェース(MI-BCI)であって,拡張現実感(AR)3D仮想ハンドフィードバックを用いたMI-BCIであり, 被験者は,実際の手に重ね合わせた3D仮想ハンドを一人称視点でコンピュータのモニタに表示し,インタラクションを体験するものであり, 運動イメージの実行中,被験者はMI-BCIから,3D仮想ハンドが他の仮想オブジェクトに手を伸ばし,把持する動作の度合いを変化させる形で,連続的に視覚フィードバックを受けるものであり, 運動イメージは,一人称視点で運動動作を想像するものであり,その結果,脳波(EEG)に変化が生じ,これらの変化は,非侵襲的な運動イメージに基づくブレインコンピュータインターフェース(MI-BCI)において制御信号に変換され, 視覚的なフィードバックは,被験者の実際の手のリアルタイム映像を表示するコンピュータのモニタ上に表示され,3D仮想ハンドは,ディスプレイ上で被験者の実際の手の上に重ねられるため,被験者は一人称視点で,実環境における3D仮想ハンドとのインタラクションを体験することができ,左手または右手の単一試行の運動イメージを行っている間,被験者はMI-BCIから連続的な視覚的フィードバックを受けており, MI-BCIは,彼の運動イメージの動作を,3D仮想ハンドの様々な程度の到達動作や他の仮想オブジェクトとの把持動作に変換しており, MI-BCIは運動イメージの動作を連続的に翻訳し,運動イメージが終了する4秒後まで0.5秒ごとに仮想ハンドの位置を更新し,仮想ハンドが仮想キューブを掴み,マーカー上に配置される システム。」 2 引用文献2ないし4 (1)引用文献2の記載事項 原査定の拒絶理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「10.2.2 General Architecture of BCI-Based VR Applications Implementing a BCI control for a VR system can be seen as using the BCI as an input device to interact with the VE. Therefore, it consists in providing the user with a way to act on the virtual world only by means of brain activity, and using the available output devices to provide a meaningful feedback to the user. So far, only visual feedback has been deeply investigated in the context of BCI-based VR applications, but other modalities, in particular audio and haptics, would also be worth studying in the future. A BCI-based VR setup typically involves two independent softwares: (1) a BCI software to record brain signals, process them to extract relevant features and classify mental states in real-time in order to generate commands, and (2) a VR software to simulate and render a virtual world, provide feedback to user and process the received commands. Therefore, these two softwares must be able to communicate in order to exchange information and commands. Figure 10.1 provides a schematic representation of BCI control ofa VR application.」(200頁18行~32行) (当審訳: 10.2.2 BCIを用いたVRアプリケーションの一般的なアーキテクチャ VRシステムにBCI制御を実装することは,VEと対話するための入力デバイスとしてBCIを使用することと見なすことができる。したがって,脳の活動のみによって仮想世界に作用する方法をユーザに提供し,利用可能な出力デバイスを使用してユーザに意味のあるフィードバックを提供することで成り立っている。これまで,BCIを用いたVRアプリケーションの文脈では,視覚フィードバックのみが深く研究されてきたが,今後は他のモダリティ,特に音声や触覚も研究する価値があると思われる。BCIベースのVRのセットアップには,通常2つの独立したソフトウェアが含まれる。(1)脳信号を記録し,その信号を処理して関連する特徴を抽出し,コマンドを生成するためにリアルタイムで精神状態を分類するBCIソフトウェア,(2)仮想世界のシミュレーションとレンダリング,ユーザへのフィードバック,受け取ったコマンドを処理するVRソフトウェアです。したがって,これら2つのソフトウェアは,情報やコマンドをやり取りするために通信可能でなければならない。図10.1にVRアプリケーションのBCI制御を模式的に示す。) イ 図10.1 [図:0001383938000002.jpg] (当審訳: 図10.1 BCIベースVRアプリケーションの一般的なアーキテクチャ:ユーザは特定の脳活動パターンを生成し,BCIシステムで処理されてVRアプリケーションにコマンドとして送信される。応答として、VRアプリケーションはユーザに意味のあるフィードバックを提供する。このフィードバックは,視覚,音声,触覚のあらゆる組み合わせが可能である。このように,「VE上での操作」と「VEからのフィードバック」を組み合わせることで,臨場感を引き出すことができる。) (2)引用文献3の記載事項 原査定の拒絶理由に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【0058】 一実施形態において,触覚効果は,表面の特徴のような,特徴を擬似的に生成(シミュレート)してもよい。例えば,擬似的に生成される表面特徴は,例えば,表面310における,空間パターン(spatial pattern),縁もしくは境界,又はこれら以外の任意の触感(tactile sensation)であり,天然のものであるか人工的なものであるかを問わない。空間パターンには,線グリッド(grid of straight lines),同心円グリッド(grid of concentric circles),点グリッド(grid of points),タイルグリッド(grid of tiles),これらの任意の組み合わせ,又は拡張された制御ボタンに関連する情報を伝達するこれら以外の任意の空間パターンが含まれる。 当該物体と導電層342との間の引力のレベルを変化させることにより,表面310を横切って動く物体の摩擦を変化させることができる。周辺の領域と異なる大きさの摩擦を有する領域は,空間パターン要素,テクスチャ,又はこれら以外の任意の表面特徴を表すことができる。」 (3)引用文献4の記載事項 原査定の拒絶理由に引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【0089】 図10(a)~図10(c)に示した感覚特性のように,ユーザごとの感覚特性は異なる。このため,錯触力覚がはっきりと知覚される人や知覚されにくい人,学習によって知覚されやすさが向上する人がいる。本発明では,この個人差を補正する装置を有する。また,同じ刺激が持続的に提示される場合,その刺激に対して感覚が鈍化してしまうこともある。そのため,刺激の強度・周期や方向に揺らぎを与えたりすることで慣れを防止することは効果的である。 【0090】 図10(d)に錯触力覚を用いた一定方向の力の提示手法の一例を示す。2つの偏心振動子を反対回転方向に回転させて振動成分を合成する方法において,動作点Aでの高速回転数ω1(高周波f1)1002aと動作点Bでの低速回転数ω2(低周波f2)1002bを位相180°毎に交互に提示した場合,錯触力覚強度(II)は,偏心回転子の回転速度である周波数の加減速比Δf/fの対数に比例する(図10(e))。ただし,(f=(f1+f2)/2,Δf=f1-f2)。錯触力覚強度とΔf/fの対数値をプロットした時の傾きnが,個人差を示す。 【0091】 また,振動感強度(VI)は,錯覚による一定方向の力感覚と同時に知覚される振動成分の強度を示し,振動成分の強度と物理量f(対数)とはおおよそ反比例の関係にあり,周波数fを大きくすることで振動感強度(VI)は相対的に低下する(図10(f))。この振動成分の含有強度を制御することにより,錯触力覚を提示したときの力の質感が変わる。対数でプロットした場合の傾きmは個人差を示す。なお,個人差を示すn,mは,学習が進むに従って変化し,学習が飽和した時に一定の値に収束する。」 イ 図10 [図:0001383938000003.jpg] ウ 図35 [図:0001383938000004.jpg] エ 「【実施例】 【0202】 図35は,バーチャルリアリティ環境生成装置を用いた実施例として,遠隔地間において,複数のユーザが協力してバーチャル陶芸を行う場合を示している。 【0203】 VR環境生成装置A及びVR環境生成装置Bのすべての装置類のキャリブレーションが行われた後に,VR環境生成装置間の通信が確保される。それぞれVR環境生成装置に対応した異なる空間にユーザが存在しており,お互いのVR環境の情報は通信装置を介して共有されている。 【0204】 以下,センサによるセンシングは,図1に基づいて,説明する。 【0205】 データコンテンツデータとして,バーチャル粘土塊に関するモデルの初期情報(モデル頂点の位置Po)がコンテンツデータ104から読み込まれる。 【0206】 次に,複数の位置センサ111及び加速度センサ108によってユーザの体の各部に関する情報ベクトル群Mu’(位置Xu’,姿勢Pu’,速度Vu’,角速度Ru’,加速度Au’,角加速度Tu’)が測定される。ここで,位置センサは,姿勢情報も測定できるものを使用する。速度,角速度,加速度,角加速度は位置情報の微分,2階微分により求められると同時に,速い動きに対しては,加速度センサの情報を使用する。また,物理シミュレータ113において,バーチャル粘土の物理モデルの頂点に関する情報ベクトル群Mo(位置Xo,速度Vo,加速度Ao,各頂点間に働く力Fo),ユーザから頂点に働くバーチャルな力ベクトル群Fuo,音源データ,ユーザ・モデル(バーチャル・ユーザ)に関する情報ベクトル群Mu(位置Xu,姿勢Pu,速度Vu,角速度Ru,加速度Au,角加速度Tu),及びバーチャル粘土の頂点からバーチャル・ユーザに働くバーチャルな力ベクトル群Fouを記憶するメモリ空間がコンテンツ作成装置102に確保される。時々刻々と更新されるメモリ空間の情報ベクトル群をもとに,コンテンツであるバーチャル粘土及びバーチャル・ユーザの物理シミュレーションが繰り返され,メモリ空間の情報が更新される。 【0207】 以下,物理シミュレーションは,図5のモデルを用いて説明する。 【0208】 物理シミュレータにおいては,バーチャル・粘土が図5(b)に示されるバネ・ダンパモデルによって表現され,上記情報ベクトル群Mu及びMoが計算・更新される。バーチャル・ユーザの1番目の測定点p1(例えば,指先)の姿勢Pu1,及びこの指に働くバーチャルな力ベクトルFou1から,錯触力覚インタフェースで提示すべき力の方向ベクトルu1は, u1=Fou1/∥Fou1∥-Pu1 と求められる。その他の測定点piにおいても同様に計算される。 【0209】 図12のように,初期位相θiと力を提示すべき方向ベクトルuの間にある関係 u= (cosθi, sinθi, 0) を用いて,初期位相θiが求められる。初期位相遅れθdは最大感覚強度を与える-90°に設定する。なお,初期位相遅れθdは提供したい感覚強度のダイナミックレンジに合わせて調整してもよい。 【0210】 以上は,1組の錯触力覚デバイスを用いて,指先の輪切り断面内において任意の方向に力を提示する場合であったが,これは3組の錯触力覚デバイスを用いることで,全方位の任意の方向に力を提示する方法に拡張することができる。 【0211】 提示すべき物理的強度は,図17(b)の錯触力覚・等感レベル曲線を表す数値表を用いて,提示したい錯触力覚強度IIに対応する物理的強度が参照される。図10(e)の錯触力覚強度の特性グラフから,物理量Δf/fが求められる。質感として,図11(c)の粗さ感覚1111を表す振動感強度VIは,図10(f)の振動感強度の特性グラフから,物理量fが求められる。これら物理量Δf/f及び物理量fから角速度ω1及びω2が求められる。上記の特性曲線から値を求める時には,スプライン関数などの補間関数を用いる。角速度ω1及びω2は,以下のように求められる。 ω1= 2π/f1,ω2= 2π/ f2 ただし,f1= f+Δf/2,f2= f-Δf/2 位相パターンθ(t)は,図12(b)により,初期位相θi,角速度ω1及びω2を用いて表わされる。 【0212】 モータの応答特性Rはオーバーシュートによる振動を起こさず収束応答が良いP,I,Dパラメータが選択される。P,I,Dパラメータによる制御方法は,当該同業者が一般に利用しているサーボモータの制御方法であり,モータ・メーカーが提供する選定方法に従い,P,I,Dパラメータが選定される。粗さ感覚1111を表す振動感強度VIを強調したい場合には,振動が発生するように,P及びDパラメータが大きくなるように加速度センサでモニタしながらモータFB特性制御器においてパラメータがフィードバック的に設定される。 【0213】 以上のように,位相パターンθ(t)は,錯触力覚誘起関数Fからf(t)=F(u,II,VI,R)として求められる。 【0214】 モータ制御の分解能を1.8°にした場合,上記位相パターンθ(t)を用いて,縦軸の位相360°を1.8°刻みで200個に分解して,この200個の点に対応する横軸の時間を求める。この時間が,制御用パルス列を発生させるタイミングとなる。以上,位相パターンθ(t)から制御用パルス列g(t)が求められる。 【0215】 変形型ダンパモデルと図5(b)のバネ・ダンパモデルの相違点は,図5(b)が表面だけの中空モデルなのに対して,本件は,構造バネ及びせん断バネに対応したソリッドモデルを用いる点である。 【0216】 もう一つの相違点は,図5(b)における平衡状態のバネの長さL0が固定値ではなく,物理シミュレーションの計算において,時刻Δt後の格子点間の距離が平衡状態のバネの長さとして更新されていくことである。しかし,この過程を何度も繰り返し,粘土のように複雑に折り重ねられて変形していく場合は,バネの長さが無限に伸びていってしまう。そこで,変形の度に,バネの長さが均等になるように,モデリング時における格子点分割を再度行うことにする。 【0217】 格子点1が隣接する格子点2~格子点4と結合している場合,格子点1が格子点2から受ける力ベクトルf12は f12 =-k×(∥p2-p1∥- L12)×(p2-p1)/∥p2-p1∥-c×(v2-v1) (9) と表わされる。ただし, pi:格子点piの位置ベクトル vi:格子点piの速度ベクトル k:バネの弾性係数, c:ダンパの粘性係数, Lij:格子点iと格子点jの間のバネの自然長 質量m1の格子点1が周囲の格子点2~格子点4から受けた力の合力をf1とすると,格子点1の運動方程式は m1×d2p1/dt2=f1=f12+f13+f14 (10) と表わされる。 【0218】 錯触力覚インタフェース装置が装着された指先がこのバーチャル物体・物理モデルの格子点1(p1)に接触した場合は,格子点1(p1)は指先の位置1(p’1)に変化し,指先に働く反力(-f)は, -f=(f12+f13+f14)-m1×d2p’1/dt2 (11) と表わされる。接触を判定するための指先の動きは,位置センサ,加速度センサによってセンシングされる。 【0219】 実際の数値シミュレーションでは,時刻t’の格子点1の位置p’1,速度v’1,力f’1は,ひと時刻前tの変数p,1 v1, f1から求められる。つまり, 速度ベクトル:v’1=v1+(f1/m1)×Δt (12) 位置ベクトル:p’1=p1+v1×Δt (13) 【0220】 同様に質量m2の格子点2の位置,速度が計算される。 速度ベクトル:v’2=v2+(f2/m2)×Δt (14) 位置ベクトル:p’2=p2+v2×Δt (15) 最後に,格子点1及び格子点2の間に働く力は図5(b)とは異なり f’12=0 (16) と算出される。 【0221】 以上の物理シミュレーションにより,バーチャル・ユーザの指先からバーチャル粘土に働く力が計算され,バーチャル粘土が変形される。また,バーチャル粘土からバーチャル・ユーザの指先へ働く応力も計算される。この応力の計算結果をもとに,提示において,錯触力覚インタフェース装置が錯触力覚誘起装置及び錯触力覚デバイス駆動制御装置によって制御されることで,ユーザ(実体)は視聴覚ディスプレイでの立体映像及び立体音像に合わせてバーチャル粘土の感触を体感するとともに,感触によってバーチャル物体の形状を確認しながらバーチャル粘土の変形を行い,バーチャル花瓶を完成する。この時,バーチャル物体Aとバーチャル物体BがVR空間上で同一物の場合,共同作業によりバーチャル花瓶を完成させることになる。 【0222】 なお,バーチャル物体A及びバーチャル物体Bは実物体でもよく,周辺機器によって実物体の映像及び形状が測定されて,その結果が通信機器を介して,VR環境生成装置A及びVR環境生成装置Bにおいてデータ共有される。バーチャル物体Aが実物体の時は,ユーザAの陶芸体験を,ユーザBが体験共有することになる。 【0223】 毎計算毎に各格子点の位置,速度,力が計算されて,メモリに保存される。この保存された値を用いて,次の時間の位置,速度,力が計算される。これらにより,指先への反力が提示され,バーチャル物体の可触化が実現される。 【0224】 VR環境は,上記のバーチャル物体に関する物理シミュレーションと同様に,周辺機器によってセンシングされた実空間の実物体,及び位置センサ・加速度センサによってセンシングされたユーザの動き情報をもとに,両者が同一のVR環境においてモデル化され,コンテンツの接触・把持力が計算されて,仮想空間及び実空間が融合されたVR空間が生成される。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことが認められる。 引用発明は,「運動イメージは,一人称視点で運動動作を想像するものであり,その結果,脳波(EEG)に変化が生じ,これらの変化は,非侵襲的な運動イメージに基づくブレインコンピュータインターフェース(MI-BCI)において制御信号に変換され,」「運動イメージの実行中,被験者はMI-BCIから,3D仮想ハンドが他の仮想オブジェクトに手を伸ばし,把持する動作の度合いを変化させる形で,連続的に視覚フィードバックを受けるものであり,」「視覚的なフィードバックは,被験者の実際の手のリアルタイム映像を表示するコンピュータのモニタ上に表示され,3D仮想ハンドは,ディスプレイ上で被験者の実際の手の上に重ねられるため,被験者は一人称視点で,実環境における3D仮想ハンドとのインタラクションを体験することができ」る「システム」であるとされている。 ここで,引用発明の「システム」は,「被験者の実際の手のリアルタイム映像を表示するコンピュータのモニタ上に表示」していることから,コンピュータを含んだシステムであり,コンピュータがプロセッサを備えることは,当業者にとって明らかである。 また,引用発明の「脳波(EEG)」は,本願発明1の「神経系に関係付けられる電気信号」に相当し,引用発明も,「脳波(EEG)」を検出する際に,本願発明1と同様に,「センサ信号を受信」していることも,当業者にとって明らかである。 さらに,引用発明では,「3D仮想ハンドが他の仮想オブジェクトに手を伸ばし,把持する動作」を行っていることから,引用発明でも,本願発明1と同様に,「センサ信号に基づいてオブジェクトとの相互作用を決定」しているといえる。 したがって,本願発明1と引用発明とは,「プロセッサを備えるシステムにおいて, 前記プロセッサは, 神経系に関係付けられる電気信号を検出するように構成されるニューラルインターフェースからセンサ信号を受信すること, 前記センサ信号に基づいてオブジェクトとの相互作用を決定すること,」「を行うように構成される,システム」である点で共通しているといえる。 しかし,本願発明1では,「前記オブジェクトとの前記相互作用に少なくとも部分的に基づいて触覚効果を決定」している一方,引用発明では,オブジェクトとの相互作用に基づいて決定しているのが視覚フィードバックであり,触覚も視覚もともに感覚であるから,両者は,「前記オブジェクトとの前記相互作用に少なくとも部分的に基づいて」感覚「効果を決定」しているという限度では共通するものの,本願発明1では,オブジェクトとの相互作用に基づいて決定される感覚効果が「触覚効果」であるのに対して,引用発明では,オブジェクトとの相互作用に基づいて決定される感覚効果が「視覚」効果である点で相違している。 また,本願発明1では,「触覚信号を第1の装置に送信することであって,前記第1の装置は,前記触覚信号を受信して,第1の触覚出力装置を介して前記触覚効果を出力するように構成されること,及び 前記触覚信号を,前記第1の装置から遠隔にある第2の装置に送信することであって, 前記第2の装置は,前記触覚信号を受信して,第2の触覚出力装置を介して前記触覚効果を出力するように構成され」ているのに対して,引用発明では,そのような触覚効果を出力していない点でも相違している。 (2)一致点・相違点 本願発明1と,引用発明とは,以下アの点で一致し,以下イの点で相違する。 ア 一致点 「プロセッサを備えるシステムにおいて, 前記プロセッサは, 神経系に関係付けられる電気信号を検出するように構成されるニューラルインターフェースからセンサ信号を受信すること, 前記センサ信号に基づいてオブジェクトとの相互作用を決定すること, 前記オブジェクトとの前記相互作用に少なくとも部分的に基づいて感覚効果を決定すること, を行うように構成される,システム。」 イ 相違点 (ア) 相違点1 本願発明1では,オブジェクトとの相互作用に基づいて決定される感覚効果が「触覚効果」であるのに対して, 引用発明では,オブジェクトとの相互作用に基づいて決定される感覚効果が「視覚」効果である点。 (イ) 相違点2 本願発明1では,「触覚信号を第1の装置に送信することであって,前記第1の装置は,前記触覚信号を受信して,第1の触覚出力装置を介して前記触覚効果を出力するように構成されること,及び 前記触覚信号を,前記第1の装置から遠隔にある第2の装置に送信することであって, 前記第2の装置は,前記触覚信号を受信して,第2の触覚出力装置を介して前記触覚効果を出力するように構成され」ているのに対して, 引用発明では,そのような触覚効果を出力していない点。 (3)相違点についての判断 事案に鑑みて,まず,相違点2について検討する。 本願発明1の相違点2に係る「触覚信号を第1の装置に送信することであって,前記第1の装置は,前記触覚信号を受信して,第1の触覚出力装置を介して前記触覚効果を出力するように構成されること,及び 前記触覚信号を,前記第1の装置から遠隔にある第2の装置に送信することであって, 前記第2の装置は,前記触覚信号を受信して,第2の触覚出力装置を介して前記触覚効果を出力する」という構成について,引用文献1ないし4には,記載も示唆も無く,当該構成が周知であったとも認められない。 引用文献4には,上記第4の2(3)エで示したように,「物理シミュレーションにより,バーチャル・ユーザの指先からバーチャル粘土に働く力が計算され,バーチャル粘土が変形される。また,バーチャル粘土からバーチャル・ユーザの指先へ働く応力も計算される。この応力の計算結果をもとに,提示において,錯触力覚インタフェース装置が錯触力覚誘起装置及び錯触力覚デバイス駆動制御装置によって制御されることで,ユーザ(実体)は視聴覚ディスプレイでの立体映像及び立体音像に合わせてバーチャル粘土の感触を体感するとともに,感触によってバーチャル物体の形状を確認しながらバーチャル粘土の変形を行い,バーチャル花瓶を完成する。この時,バーチャル物体Aとバーチャル物体BがVR空間上で同一物の場合,共同作業によりバーチャル花瓶を完成させる」(段落0221)という実施例が記載されているが,この場合,共同作業を行う複数のユーザの指先へ働く応力は,それぞれのユーザの指先へのものであり,共同作業を行う相手ユーザの指先へ働く応力がもう一方のユーザの指先へと伝えられることはない。 さらに,引用文献4には,上記第4の2(3)エで示したように,「バーチャル物体A及びバーチャル物体Bは実物体でもよく,周辺機器によって実物体の映像及び形状が測定されて,その結果が通信機器を介して,VR環境生成装置A及びVR環境生成装置Bにおいてデータ共有される。バーチャル物体Aが実物体の時は,ユーザAの陶芸体験を,ユーザBが体験共有することになる。」(段落0222)との記載もあるが,ここで,「通信機器を介して,VR環境生成装置A及びVR環境生成装置Bにおいてデータ共有される」対象は,「周辺機器によって実物体の映像及び形状が測定され」た「結果」であり,ユーザAの指先への応力を,ユーザBの指先への応力として「通機器を介して」伝える旨の記載は無い。 一方,引用文献4には,上記第4の2(3)アで示したように,「ユーザごとの感覚特性は異なる。このため,錯触力覚がはっきりと知覚される人や知覚されにくい人,学習によって知覚されやすさが向上する人がいる。本発明では,この個人差を補正する装置を有する。」との記載があり,上記第4の2(3)イの図10(a)~(c)で示したように,同じ感覚強度を感じ取るために,応力として加えられる必要のある物理量が被験者Aないし被験者Cで互いに相違していることがグラフにより表示されており,「錯触力覚を用いた一定方向の力の提示」において,図10(e)の「錯触力覚強度とΔf/fの対数値をプロットした時の傾きnが,個人差を示」し(段落0090),「錯触力覚を提示したときの力の質感が変わる。対数でプロットした場合の傾きmは個人差を示す。なお,個人差を示すn,mは,学習が進むに従って変化し,学習が飽和した時に一定の値に収束する」(段落0091)とされている。 そして,上記第4の2(3)エで示した実施例においても,「提示すべき物理的強度は,図17(b)の錯触力覚・等感レベル曲線を表す数値表を用いて,提示したい錯触力覚強度IIに対応する物理的強度が参照される。図10(e)の錯触力覚強度の特性グラフから,物理量Δf/fが求められる。」とされているから,当該実施例においても,ユーザAが利用するVR環境生成装置AでユーザAの個人の補正値が学習され,VR環境生成装置Bを利用するユーザBの個人の補正値が学習され,「周辺機器によって実物体の映像及び形状が測定され」た「結果」が,VR環境生成装置AからVR環境生成装置Bへ「通機器を介して」伝えられ,VR環境生成装置Bにおいて,「物理シミュレーションにより,」ユーザB「の指先からバーチャル粘土に働く力が計算され」,学習された補正値により補正されて出力されることにより,ユーザAと同じ感覚強度をユーザBも得ることができ,結果として,「ユーザAの陶芸体験を,ユーザBが体験共有」しているといえる。 よって,引用文献4に接した当業者は,仮に,VR環境生成装置Aで生成したユーザAの指先への応力を,そのまま,VR環境生成装置Bへ「通機器を介して」伝えて,ユーザBの指先への応力として加えてしまうと,感覚の個人差により,かえって同じ感覚強度を共有できないと理解しうるといえる。 したがって,引用発明および引用文献4に基づいて,当業者は本願発明1の相違点2に係る構成を容易に想到することができない。 エ 小括 また,引用文献2は本願発明1の相違点1に係る構成に関するものであり,引用文献3は,引用請求項に係る発明の構成に関するものであって,いずれにも,本願発明1の相違点2に係る構成について記載も示唆もない。 したがって,上記相違点1について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明および引用文献2ないし4に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2ないし本願発明8について 本願発明2ないし本願発明8は,いずれも,本願発明1を減縮したものであって,本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,引用発明および引用文献2ないし4に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 3 本願発明9ないし本願発明16について 本願発明9は,概ね,本願発明1の発明のカテゴリを,単に,システムの発明から方法の発明へと変更したものであり,上記相違点2に係る構成と同様の以下の構成を備えているから,本願発明1と同様に,引用発明および引用文献2ないし4に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 「前記触覚効果に関係付けられる触覚信号を第1の装置に送信するステップであって,前記第1の装置は前記触覚信号を受信し且つ第1の触覚出力装置を介して前記触覚効果を出力するように構成されるステップと, 前記触覚効果に関係付けられる前記触覚信号を,前記第1の装置から遠隔にある第2の装置に送信するステップであって,前記第2の装置は前記触覚信号を受信し且つ第2の触覚出力装置を介して前記触覚効果を出力するように構成されるステップと」 本願発明10ないし本願発明16は,いずれも,本願発明9を減縮したものであって,本願発明9と同一の構成を備えるものであるから,本願発明9と同じ理由により,引用発明および引用文献2ないし4に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 4 本願発明17ないし本願発明24について 本願発明17は,概ね,本願発明1の発明のカテゴリを,単に,システムの発明から「プログラムコードを含む,非一時的なコンピュータ可読媒体」の発明へと変更したものであり,上記相違点2に係る構成と同様の以下の構成を備えているから,本願発明1と同様に,引用発明および引用文献2ないし4に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 「前記触覚効果に関係付けられる触覚信号を第1の装置に送信することであって,前記第1の装置は前記触覚信号を受信し且つ第1の触覚出力装置を介して前記触覚効果を出力するように構成されること,及び 前記触覚効果に関係付けられる前記触覚信号を,前記第1の装置から遠隔にある第2の装置に送信することであって,前記第2の装置は前記触覚信号を受信し且つ第2の触覚出力装置を介して前記触覚効果を出力するように構成されること」 本願発明18ないし本願発明24は,いずれも,本願発明17を減縮したものであって,本願発明17と同一の構成を備えるものであるから,本願発明17と同じ理由により,引用発明および引用文献2ないし4に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。

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2021-010983

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    共通の審決分類: 121・G06F
  • 2025-014602拒絶査定不服審判 / 2026-08-13 / 原査定取消(特許/登録すべき)ペン入力装置用カバー部材、及びペン入力装置
    共通の審決分類: 121・G06F

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