特許拒絶査定不服審判
2020-008223
ハプティックサラウンド機能
- 審判番号
- 2020-008223
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-196456外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年06月15日
- 審決日
- 2021年10月19日
- 公報発行日
- 2022年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】イマージョン コーポレーション
- 【請求人代理人】藤田 和子
- 分類
- P18 .121-WZ (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-196456「ハプティックサラウンド機能」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月21日出願公開、特開2018- 97850〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は,平成29年10月6日(パリ条約による優先権主張 平成28年12月8日,米国)に出願された特願2017-196456号であり,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
令和元年10月30日付け:拒絶理由通知
令和2年 2月 4日 :意見書・手続補正書
令和2年 2月14日付け:拒絶査定
令和2年 6月15日 :審判請求
令和3年 5月25日付け:拒絶理由通知
令和3年 9月 1日 :意見書・手続補正書
第2 本願発明
令和3年9月1日提出の手続補正書によって補正(以下,「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項1(以下,「本願発明」という。)は,以下のとおりである。(下線部が補正箇所であり,本願発明は,本件補正前の請求項1を引用する請求項2に基づいて,本件補正前の請求項1に技術的な限定を付加したものである。)
「命令が格納された非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記命令は、プロセッサにより実行されると、前記プロセッサにハプティックサラウンド機能を提供させ、前記提供することは、
仮想環境における仮想イベントの位置を判断するステップと、
ユーザの第一身体領域の位置に基づいて前記仮想環境における仮想ユーザの第一仮想身体領域の位置を判断するステップであって、前記第一身体領域は前記第一仮想身体領域に対応する、ステップと、
前記仮想イベント、前記仮想環境における前記仮想イベントの前記位置、および前記仮想環境における前記仮想ユーザの前記第一仮想身体領域の前記位置に基づいて第一ハプティック効果を判断するステップと、
第一ハプティック出力デバイスにより前記ユーザの前記第一身体領域に前記第一ハプティック効果を出力するステップであって、前記第一ハプティック出力デバイスは、アプリケーションプログラミングインタフェース(API;application programming interface)により前記ユーザの前記第一身体領域に割り当てられる、ステップと
を含む、非一時的コンピュータ可読媒体。」
第3 拒絶の理由
令和3年5月25日付けで当審が通知した拒絶理由の理由1は,次のとおりのものである。
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし20に係る発明は,本願の出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項ならびに引用文献3に記載された事項に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
特に,本願の本件補正前の特許請求の範囲の請求項2に係る発明は,本願の優先日前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
引用文献1:特開2008-134990号公報
引用文献2:廣瀬通孝 他,触覚用共通ソフトウェア(HIP)の開発,
日本バーチャルリアリティ学会論文誌,Vol.3,No.3,1998,
日本バーチャルリアリティ学会,pp.111-119.
引用文献3:特開2012-187148号公報
第4 引用文献
1 引用文献1の記載及び引用発明
ア 引用文献1には,以下の記載がある(下線は,当審が付加した。以下同様。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、人体と仮想物体との接触に基づいた刺激を人体に対して与えるための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バーチャルリアリティの分野では、仮想物体に触れたり、操作したりするために触覚ディスプレイの検討が行われている。触覚ディスプレイは大きく分類して、人体に物体からの反力を提示する力覚ディスプレイ(フォース・フィードバック・ディスプレイ)と、物体の手触り感を提示するタクタイルディスプレイに分類される。しかし、従来の力覚ディスプレイは、大型で可搬性に乏しい物が多く、また構成が複雑で高価になりやすい。タクタイルディスプレイについても装置の構成が複雑になりやすく、また現状の技術では十分に手触り感を提示するまでに至っていない。
【0003】
そこで、仮想物体からの十分な反力や、物体表面の正確な手触り感を提示するのではなく、単純に仮想物体に「接触したかどうか」を提示する接触提示装置が検討されている。係る技術では、振動モータを人体に複数装着し、仮想物体と触れた時に適切な位置の振動モータを振動させ、仮想物体との接触をユーザに知覚させる。振動モータの振動により、ユーザは身体のどの部分が仮想物体に触れているかを知覚することができる。また、振動モータは小型、安価、軽量であることから、人体の全体に装着することも比較的容易で、移動自由度の高いバーチャルリアリティシステムでの仮想物体とのインタラクションには特に有効である。
(中略)
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、従来の接触提示装置では、仮想物体との衝突点のみに刺激を発生させていたので、仮想物体と衝突したときの衝突感の提示が十分でなかった。人体と実際の物体とが衝突する場合には、物体との衝突点のみならず、衝突時の衝撃が伝搬することで周囲の人体も振動する。従来では、衝突時の波形で振動モータを駆動しているが、1つの振動モータしか動作させていないので、周囲の振動を模倣して刺激を発生させることが考慮されていなかった。また、複数の振動モータが有効に活用されておらず、接触した仮想物体の表面の向きの提示、衝突した仮想物体の形状の提示、仮想物体に人体が侵入した時に干渉から離脱する方向の提示等が十分に行えていなかった。
【0017】
本発明は以上の問題に鑑みてなされたものであり、人体と仮想物体との衝突に起因する刺激を人体に対して提示する際に、刺激の広がりの提示や、接触した時の仮想物体についての情報の提示をも考慮した刺激提示に係る技術を提供することを目的とする。
(中略)
【発明の効果】
【0026】 本発明の構成により、人体と仮想物体との衝突に起因する刺激を人体に対して提示する際に、刺激の広がりをも考慮した刺激提示を行うことができる。【0027】 また、本発明の構成により、人体と仮想物体との衝突に起因する刺激を人体に対して提示する際に、接触した時の仮想物体についての情報をも考慮した刺激提示を行うことができる。」
(イ)「【0029】
[第1の実施形態] <システムの構成について> 本実施形態は、ユーザに対して仮想空間を提示するためのシステムであって、仮想空間中の仮想物体とユーザの人体との衝突が発生した場合には、係る衝突の感触を、衝突時における刺激の広がりをも考慮して、ユーザの人体に提示するためのものである。
【0030】
図1は、本実施形態に係るシステムの機能構成を示すブロック図である。
【0031】
100は仮想空間を体感するユーザであり、ユーザ100の頭部には、HMD130が装着されている。ユーザ100はこのHMD130が有する表示部に表示されている画像を眼前に見ることで、仮想空間を体感する。
【0032】
なお、仮想空間の体感のための具体的な構成については以下の説明における趣旨ではないので、簡単に説明しておく。情報処理装置105は、HMD130に備わっているセンサにより計測されたHMD130の位置姿勢を取得する。そしてこの取得した位置姿勢を有する視点から見える仮想空間の画像を生成する。そして、生成した仮想空間画像を画像出力部113を介してHMD130が有する表示部に出力する。なお、HMD130の位置姿勢の取得方法や、仮想空間画像を生成するための具体的な方法については様々なものがあるし、以下の説明の趣旨ではないので、これ以上の説明は省略する。
【0033】
1は、ユーザ100の手であり、この手1には、1以上のマーカ199が配されていると共に、装着部104が取り付けられている。この装着部104には、複数の刺激発生部110が装着されている。この刺激発生部110は、刺激を人体(図1の場合、手1)に対して与えるものである。刺激発生部110で発生する刺激は、機械的な振動刺激であることが好ましい。また、刺激発生部110としては、例えば振動モータが、小型・軽量で複数個を装着することが比較的容易であることや、人体が知覚するために十分な刺激を発生することにより、好ましい。
【0034】
機械的な振動刺激を与える刺激発生部110には様々なものが考えられる。例えば、機械的な振動刺激を発生するボイスコイル型の刺激発生部110を用いても良いし、圧電素子や高分子アクチュエータ等のアクチュエータにより人体に接触したピンを動作させて刺激を与える刺激発生部110を用いても良い。また、空気圧力により皮膚表面を圧迫する刺激発生部110を用いても良い。
【0035】
また、刺激は機械的刺激に限らず、皮膚感覚を刺激するものであれば、電気的刺激や温度刺激などを刺激発生部110として用いても良い。電気的刺激では、微小電極アレイを用いて刺激を与えるものなどがあり、温度刺激では、熱電素子を用いるものなどがある。
【0036】
このように、装着部104には、装着部104を装着する部位に対して刺激を提供することができる刺激発生部110が複数配される。この装着部104は、例えば手袋やバンド形状のような着脱容易なものであるが、刺激発生部110から発生する刺激が人体に伝わるように適切に装着できるものであれば、何を用いても良い。また、同図では、装着部104は手1に対して装着するものとして説明したが、他の部位(腕、胴回り、脚等)に対して装着部104を装着するようにしても良い。また、装着部104に配する刺激発生部110の数についても、特に限定するものではない。本実施形態では、ユーザの各部位には、複数の刺激発生部110が取り付けられているものとして説明する。
【0037】
なお、ここで「部位」とは、単に腕や足などのものをさすが、場合よっては、腕と胴体というように、複数の部位を含めたものを総称して「部位」と解釈しても良い。
【0038】
カメラ106は、現実空間中の所定の箇所に複数配置されているものであり、ユーザの各部位に取り付けられたマーカを撮像するものである。カメラ106の配置位置については特に限定するものではないし、その位置姿勢は適宜変更しても良い。カメラ106により撮像された各フレームの画像(現実空間画像)は情報処理装置105が有する位置検出部107に出力される。
【0039】
記録装置109は、仮想空間を構成する各仮想物体の形状情報や位置姿勢情報を保持するものである。例えば、仮想物体がポリゴンでもって構成されている場合には、各ポリゴンの法線ベクトルや色のデータ、ポリゴンを構成する各頂点の座標値データ、テクスチャデータ、仮想物体の配置位置姿勢などのデータが記録装置109に保持されている。また、記録装置109には、ユーザの人体(各部位)を模した仮想物体(以下仮想人体と呼称する)の形状情報や、各部位間の相対的な位置姿勢関係を示す情報も保持されている。
【0040】
位置検出部107は、カメラ106から入力された現実空間画像中におけるマーカ199を検出し、検出したマーカを用いて、手1を含むユーザの各部位の位置姿勢を求める。そして、求めた各部位の位置姿勢に、人体の各部位を模した仮想人体を配置する処理を行う。これにより、仮想空間中には、ユーザの各部位を模した仮想人体が、実際の各部位と同じ位置姿勢でもって配置されていることになる。係る技術には、例えば、モーションキャプチャ技術があり、周知の技術である。なお、各部位を模した仮想人体については表示しなくても良い。
【0041】
尚、ここで仮想人体を設定した理由は、人体、例えば、手の形状データを予め用意し、現実の手にその形状データを重畳させれば、後に示す情報処理装置上において、手と仮想物体との干渉(接触)を計算することができる。これにより、マーカを設置した以外の人体の部位において仮想物体との干渉が生じても、人体のどの部分で干渉が生じたかが判明する。
【0042】
マーカの位置でのみ干渉を検出する場合もしくはマーカを多数配置する場合においては、必ずしも仮想人体を設定する必要は無い。しかしながら、人体のさまざまな場所において仮想物体との干渉が検出できる、または、マーカ数を減らすために、仮想人体を設定して仮想物体との干渉を判定することがより望ましい。
【0043】
位置判定部108は、仮想人体と、それ以外の仮想物体(人体以外の仮想物体であり、以下では単に、仮想物体と呼称する)との干渉判定処理を行う。係る処理については周知の技術であるので、係る処理についての説明は省略する。なお、以下の説明では、「人体と仮想物体との衝突」という表現を行う場合があるが、実質的には「人体の部位を模した仮想物体とその他の仮想物体との衝突」である。
【0044】
制御部3は、仮想物体と干渉(衝突)している仮想人体が模している部位に配されている刺激発生部110を駆動させる制御処理を行う。
【0045】
図14は、情報処理装置105に適用可能なコンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0046】
1401はCPUで、RAM1402やROM1403に格納されているプログラムやデータを用いて本コンピュータ全体の制御を行うと共に、情報処理装置105が行うものとして説明する後述の各処理を実行する。即ち、図1に示した位置検出部107、位置判定部108、制御部103、画像出力部113のそれぞれをソフトウェアでもって実装した場合、CPU1401がこのソフトウェアを実行することで、CPU1401はこれら各部の機能を実現することになる。なお、これら各部を実現するソフトウェアのプログラムは、例えば、後述する外部記憶装置1406に保存されている。
【0047】
1402はRAMで、外部記憶装置1406からロードされたプログラムやデータを一時的に記憶するためのエリアや、I/F(インターフェース)1407を介して外部から受信した各種の情報を一時的に記憶するためのエリアを有する。また、RAM1402は、CPU1401が各種の処理を実行する際に用いるワークエリアも有する。即ち、RAM1402は各種のエリアを適宜提供することができる。
【0048】
1403はROMで、設定データやブートプログラムなどを格納する。
【0049】
1404は操作部で、キーボードやマウスなどにより構成されており、本コンピュータの操作者が操作することで、各種の指示をCPU1401に対して入力することができる。
【0050】
1405は表示部で、CRTや液晶画面等により構成されており、CPU1401による処理結果を画像や文字などでもって表示することができる。
【0051】
1406は外部記憶装置で、ハードディスクドライブに代表される大容量情報記憶装置である。ここにはOS(オペレーティングシステム)や、情報処理装置105が行うものとして説明する後述の各処理をCPU1401に実行させるためのプログラムやデータが保存されている。また、上記記録装置109が保持しているものとして説明した各種の情報もまた、この外部記憶装置1406に保存されている。また、既知の情報として説明している情報についてもまた、この外部記憶装置1406に保存されている。
【0052】 外部記憶装置1406に保存されているプログラムやデータは、CPU1401による制御に従って適宜RAM1402にロードされる。そして、CPU1401が、このロードされたプログラムやデータを用いて処理を実行することで、本コンピュータは、情報処理装置105が行うものとして後述する各処理を実行することになる。」
(ウ)「【0103】
<情報処理装置105が行う処理全般について> 上述の通り、情報処理装置105は、HMD130に対して仮想空間画像を提示する処理を行うと共に、このHMD130を頭部に装着しているユーザの仮想人体と仮想物体との衝突による刺激を刺激発生部110によってユーザに与える処理を行っている。
【0104】
図15は、情報処理装置105が仮想空間画像を提示している処理と並行して行う、刺激発生部110の駆動制御処理のフローチャートである。なお、同図のフローチャートに従った処理をCPU1401に実行させるためのプログラムやデータは、外部記憶装置1406に保存されている。このプログラムやデータは、CPU1401による制御に従って適宜RAM1402にロードされる。そしてCPU1401はこのロードされたプログラムやデータを用いて処理を実行するので、情報処理装置105は、以下説明する各処理を実行することになる。
【0105】
先ずステップS1501では、CPU1401は、ユーザの人体の各部位に対応する仮想人体と、仮想物体との衝突があったか否かをチェックする。係る処理は、位置判定部108が行うものとして上述した処理に相当する。そして衝突がなかった場合には、同図のフローチャートに従った処理は終了し、仮想空間画像を提示する処理にリターンする。一方、衝突があった場合には、衝突点の位置を特定し、処理をステップS1502に進める。
【0106】
なお、一般に触覚用デバイスの制御は視覚デバイスの制御よりも高速レートが必要である。従って上述したように図15のフローチャートに従った処理を終える度に仮想空間画像を提示する処理にリターンするのではなく、一定回数又は所定時間図15のフローチャートの処理を行った後に仮想空間画像を提示する処理にリターンするようにしても良い。また、図15の処理と、仮想空間画像の処理を並列処理するようにしても良い。
【0107】
ステップS1502では、衝突点の位置と、衝突した部位に装着されている複数の刺激発生部との距離を求める。上述の例では、手1に配されたそれぞれの刺激発生部の、手1を模した仮想人体上における各位置と、手1を模した仮想人体上における衝突点の位置との距離を求める。
【0108】
次にステップS1503では、距離に応じた刺激の提示を行うべく、各刺激発生部の駆動制御を行う。係る制御は、上述の例では、衝突点からの距離が長いほど、刺激開始タイミングを遅らせたり、刺激の強度を弱めたりする制御である。」
イ 引用発明
上記ア(イ)および(ウ)より,特に,下線部に着目すると,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ユーザに対して仮想空間を提示するためのシステムであって、仮想空間中の仮想物体とユーザの人体との衝突が発生した場合には、係る衝突の感触を、衝突時における刺激の広がりをも考慮して、ユーザの人体に提示するためのものであり,
ユーザ100の頭部には、HMD130が装着されており,ユーザ100はこのHMD130が有する表示部に表示されている画像を眼前に見ることで、仮想空間を体感しており,
ユーザ100手1には、1以上のマーカ199が配されていると共に、装着部104が取り付けられており,この装着部104には、複数の刺激発生部110が装着されており,この刺激発生部110は、刺激を人体(手1)に対して与えるものであり,刺激発生部110で発生する刺激は、機械的な振動刺激であることが好ましく,また、刺激は機械的刺激に限らず、皮膚感覚を刺激するものであれば、電気的刺激や温度刺激などを刺激発生部110として用いても良く,
ユーザの各部位には、複数の刺激発生部110が取り付けられており,ここで「部位」とは、腕や足などのものをさす,
カメラ106は、現実空間中の所定の箇所に複数配置されているものであり、ユーザの各部位に取り付けられたマーカを撮像するものであり,カメラ106により撮像された各フレームの画像(現実空間画像)は情報処理装置105が有する位置検出部107に出力され,
記録装置109は、仮想空間を構成する各仮想物体の形状情報や位置姿勢情報を保持するものであり,ユーザの人体(各部位)を模した仮想物体(以下仮想人体と呼称する)の形状情報や、各部位間の相対的な位置姿勢関係を示す情報も保持されており,
位置検出部107は、カメラ106から入力された現実空間画像中におけるマーカ199を検出し、検出したマーカを用いて、手1を含むユーザの各部位の位置姿勢を求め、求めた各部位の位置姿勢に、人体の各部位を模した仮想人体を配置する処理を行い,これにより、仮想空間中には、ユーザの各部位を模した仮想人体が、実際の各部位と同じ位置姿勢でもって配置されていることになり,人体、例えば、手の形状データを予め用意し、現実の手にその形状データを重畳させれば、情報処理装置上において、手と仮想物体との干渉(接触)を計算することができ,これにより、マーカを設置した以外の人体の部位において仮想物体との干渉が生じても、人体のどの部分で干渉が生じたかが判明し,
位置判定部108は、仮想人体と、それ以外の仮想物体(人体以外の仮想物体であり、以下では単に、仮想物体と呼称する)との干渉判定処理を行い,
制御部3は、仮想物体と干渉(衝突)している仮想人体が模している部位に配されている刺激発生部110を駆動させる制御処理を行い,
情報処理装置105に適用可能なコンピュータのハードウェア構成において,CPUは、RAM1402やROM1403に格納されているプログラムやデータを用いて本コンピュータ全体の制御を行うと共に、情報処理装置105が行う処理を実行しており,即ち、位置検出部107、位置判定部108、制御部103、画像出力部113のそれぞれをソフトウェアでもって実装した場合、CPU1401がこのソフトウェアを実行することで、CPU1401はこれら各部の機能を実現することになり、これら各部を実現するソフトウェアのプログラムは、例えば、後述する外部記憶装置1406に保存されており,
外部記憶装置は、ハードディスクドライブに代表される大容量情報記憶装置であり,ここにはOS(オペレーティングシステム)や、情報処理装置105が行う各処理をCPU1401に実行させるためのプログラムやデータが保存されており,外部記憶装置1406に保存されているプログラムやデータは、CPU1401による制御に従って適宜RAM1402にロードされ、CPU1401が、このロードされたプログラムやデータを用いて処理を実行することで、本コンピュータは、情報処理装置105が行う各処理を実行することになり,
情報処理装置105は、HMD130に対して仮想空間画像を提示する処理を行うと共に、このHMD130を頭部に装着しているユーザの仮想人体と仮想物体との衝突による刺激を刺激発生部110によってユーザに与える処理を行っており,
情報処理装置105が仮想空間画像を提示している処理と並行して行う、刺激発生部110の駆動制御処理において,
CPU1401は、ユーザの人体の各部位に対応する仮想人体と、仮想物体との衝突があったか否かをチェックし,衝突があった場合には、衝突点の位置を特定し、
衝突点の位置と、衝突した部位に装着されている複数の刺激発生部との距離を求め,例えば、手1に配されたそれぞれの刺激発生部の、手1を模した仮想人体上における各位置と、手1を模した仮想人体上における衝突点の位置との距離を求め,
距離に応じた刺激の提示を行うべく、各刺激発生部の駆動制御を行い,係る制御は、上述の例では、衝突点からの距離が長いほど、刺激開始タイミングを遅らせたり、刺激の強度を弱めたりする制御である
刺激発生部110の駆動制御処理を実行するためのプログラムが保存されているハードディスクドライブに代表される大容量情報記憶装置である外部記憶装置。」
2 引用文献2の記載及び技術的事項
ア 引用文献2の記載
引用文献2には,以下の記載がある。
「様々な方式の触覚ディスプレイで、ソフトウェアを共通に記述できるライブラリが整備されれば、
(1)触覚ディスプレイ間に互換性が成立する
(2)異種デバイス間での協調作業が可能になる
(3)作成した触覚コンテンツを遠方に送信したり、保存蓄積したり、再利用できる
(4)研究者はアプリケーションを容易に効率良く開発でき、生産性を高めることができる
という利点が生まれる。(中略)本研究では、ソフトウェアの汎用性に主眼を置き、触覚ディスプレイに依存しない触覚用共通ソフトウェアHIPの開発を行うことを目的とした。 HIPとは、Haptic Interface Platformの略で、様々な方式の触覚ディスプレイで共通に触覚情報を扱うための汎用ライブラリである。」(111頁右欄4~12行,17~22行)
イ 引用文献2に開示された技術的事項
上記アの記載の特に下線部に着目すると,引用文献2には,以下の技術的事項が開示されているといえる。
「様々な方式の触覚ディスプレイで、ソフトウェアを共通に記述できるライブラリであって,
アプリケーションを容易に効率良く開発でき、
ソフトウェアの汎用性に主眼を置き、触覚ディスプレイに依存しない触覚用共通ソフトウェアHIP(HIPとは、Haptic Interface Platformの略で、様々な方式の触覚ディスプレイで共通に触覚情報を扱うための汎用ライブラリ)。」
ウ 技術用語
上記イの技術的事項を理解するにあたり,必要と思われる技術用語を念のため以下に記載する。
(ア)「ライブラリー
Library
プログラムで使われる関数やサブルーチン,データなどの集まり。プログラムを開発する際に,決まりきった処理や高度なプログラミング技術が必要な場合,ライブラリーを使用すると短期間で作成できる。」(日経パソコン新語辞典99年版-パソコンの基礎知識と最新動向-,1998年10月1日初版,日経BP社,810頁左欄1~8行)
(イ)「API
Application Programming Interface
ほかのプログラムから利用できる関数の集まりのこと。OSなどに用意されている。アプリケーションのプログラムはAPIを経由して,OSなどが持っている様々な機能を利用できる。
(中略)
アプリケーションはプログラム中にAPIで定義された関数を記述することで,各種の機能を利用する。」(日経パソコン新語辞典99年版-パソコンの基礎知識と最新動向-,1998年10月1日初版,日経BP社,39頁左欄下から8~同頁右欄11行)
エ 引用文献2に開示された技術的事項の解釈
上記イの技術的事項を上記ウ(ア)の技術用語「ライブラリー」の定義をふまえて解釈すると,引用文献2の「触覚用共通ソフトウェアHIP」は,「様々な方式の触覚ディスプレイで、ソフトウェアを共通に記述できるライブラリであ」るから,「プログラムで使われる関数やサブルーチン,データなどの集まり」であるといえる。
また,引用文献2の「触覚用共通ソフトウェアHIP」は,「アプリケーションを容易に効率良く開発でき」ることから,「アプリケーションのプログラム」を開発する際に用いられる「ライブラリ」(関数やサブルーチン,データなどの集まり)であるといえる。
そして,上記ウ(イ)の技術用語「API」の定義を参照すると,「API」は,「プログラムから利用できる関数の集まり」であり,「アプリケーションのプログラムAPIを経由して,(中略)様々な機能を利用でき」,「アプリケーションはプログラム中にAPIで定義された関数を記述することで,各種の機能を利用」しているとされている。
したがって,引用文献2の「触覚用共通ソフトウェアHIP」も,「アプリケーションのプログラム」を開発する際に「使用」される,「アプリケーション」「プログラムから利用できる関数の集まり」であるから,上記ウ(イ)の技術用語「API」の定義を満たしているといえる。
第5 当審の判断
1 対比
ア 本願発明と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。
(ア)引用発明は,「ユーザに対して仮想空間を提示するためのシステムであって、仮想空間中の仮想物体とユーザの人体との衝突が発生した場合には、係る衝突の感触を、衝突時における刺激の広がりをも考慮して、ユーザの人体に提示するためのものであり,」「外部記憶装置1406に保存されているプログラムやデータは、CPU1401による制御に従って適宜RAM1402にロードされ、CPU1401が、このロードされたプログラムやデータを用いて処理を実行することで、本コンピュータは、情報処理装置105が行う各処理を実行することになり,」「刺激発生部110の駆動制御処理を実行するためのプログラムが保存されているハードディスクドライブに代表される大容量情報記憶装置である外部記憶装置」である。
ここで,引用発明の「プログラム」,「ハードディスクドライブに代表される大容量情報記憶装置である外部記憶装置」および「CPU」は,それぞれ,本願発明の「命令」,「非一時的コンピュータ可読媒体」および「プロセッサ」に相当する。
また,引用発明において,「仮想空間中の仮想物体とユーザの人体との衝突が発生した場合には、係る衝突の感触を、衝突時における刺激の広がりをも考慮して、ユーザの人体に提示する」ことについて,一般に,音声の広がりを考慮してユーザに提示することを「オーディオサラウンド機能」と呼んでおり,刺激をユーザに提示することをハプティック出力と言うことから,引用発明において,「刺激の広がりをも考慮して、ユーザの人体に提示する」ことは,本願発明の「ハプティックサラウンド機能」に対応するものであるといえる。
したがって,本願発明と引用発明とは,「命令が格納された非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記命令は、プロセッサにより実行されると、前記プロセッサにハプティックサラウンド機能を提供」する「非一時的コンピュータ可読媒体」である点で共通しているといえる。
(イ)引用発明において,「仮想空間中の仮想物体とユーザの人体との衝突が発生した場合には、係る衝突の感触を、衝突時における刺激の広がりをも考慮して、ユーザの人体に提示するためのものであり,」「情報処理装置105が仮想空間画像を提示している処理と並行して行う、刺激発生部110の駆動制御処理において,CPU1401は、ユーザの人体の各部位に対応する仮想人体と、仮想物体との衝突があったか否かをチェックし,衝突があった場合には、衝突点の位置を特定し」ている。
ここで,引用発明の「仮想空間」,「衝突点の位置」および「刺激発生部110の駆動制御処理」は,それぞれ,本願発明の「仮想環境」,「仮想イベントの位置」および「ハプティックサラウンド機能」に相当する。
したがって,本願発明と引用発明とは,「ハプティックサラウンド機能を」「提供すること」が,「仮想環境における仮想イベントの位置を判断するステップ」「を含」んでいる点で共通しているといえる。
(ウ)引用発明は,「位置検出部107は、カメラ106から入力された現実空間画像中におけるマーカ199を検出し、検出したマーカを用いて、手1を含むユーザの各部位の位置姿勢を求め、求めた各部位の位置姿勢に、人体の各部位を模した仮想人体を配置する処理を行い,これにより、仮想空間中には、ユーザの各部位を模した仮想人体が、実際の各部位と同じ位置姿勢でもって配置されていることになり,人体、例えば、手の形状データを予め用意し、現実の手にその形状データを重畳させれば、情報処理装置上において、手と仮想物体との干渉(接触)を計算することができ,これにより、マーカを設置した以外の人体の部位において仮想物体との干渉が生じても、人体のどの部分で干渉が生じたかが判明し,位置判定部108は、仮想人体と、それ以外の仮想物体(人体以外の仮想物体であり、以下では単に、仮想物体と呼称する)との干渉判定処理を行い,」「位置検出部107、位置判定部108、制御部103、画像出力部113のそれぞれをソフトウェアでもって実装した場合、CPU1401がこのソフトウェアを実行することで、CPU1401はこれら各部の機能を実現することになり、これら各部を実現するソフトウェアのプログラムは、例えば、後述する外部記憶装置1406に保存されて」いる。
ここで,引用発明の「手1を含むユーザの各部位の位置」,「仮想空間中」および「人体の各部位を模した仮想人体」は,それぞれ,本願発明の「ユーザの第一身体領域の位置」,「仮想環境」および「仮想ユーザの第一仮想身体」に相当する。
また,引用発明において,「カメラ106から入力された現実空間画像中におけるマーカ199を検出し、検出したマーカを用いて、手1を含むユーザの各部位の位置姿勢を求め、求めた各部位の位置姿勢に、人体の各部位を模した仮想人体を配置する処理を行い,これにより、仮想空間中には、ユーザの各部位を模した仮想人体が、実際の各部位と同じ位置姿勢でもって配置されていること」ることは,本願発明の「ユーザの第一身体領域の位置に基づいて前記仮想環境における仮想ユーザの第一仮想身体領域の位置を判断する」ことに対応し,引用発明も,本願発明と同様に「第一身体領域は前記第一仮想身体領域に対応」しているといえる。
したがって,本願発明と引用発明とは,「非一時的コンピュータ可読媒体」に「格納された」「命令」が「ユーザの第一身体領域の位置に基づいて前記仮想環境における仮想ユーザの第一仮想身体領域の位置を判断するステップであって、前記第一身体領域は前記第一仮想身体領域に対応する、ステップ」「を含む、非一時的コンピュータ可読媒体」である点で共通するといえる。
しかし,本願発明では,「非一時的コンピュータ可読媒体」に「格納された」「命令」の内,「プロセッサにハプティックサラウンド機能を提供すること」に,「ユーザの第一身体領域の位置に基づいて前記仮想環境における仮想ユーザの第一仮想身体領域の位置を判断するステップであって、前記第一身体領域は前記第一仮想身体領域に対応する、ステップ」を含んでいるのに対し,引用発明では,「プロセッサにハプティックサラウンド機能を提供」する「刺激発生部110の駆動制御処理」「と並行して行う」「仮想空間画像を提示している処理」において,「ユーザの第一身体領域の位置に基づいて前記仮想環境における仮想ユーザの第一仮想身体領域の位置を判断するステップであって、前記第一身体領域は前記第一仮想身体領域に対応する、ステップ」を含んでいる点で相違している。
(エ)引用発明において,「ユーザの人体の各部位に対応する仮想人体と、仮想物体との衝突」「があった場合に」,「衝突点の位置と、衝突した部位に装着されている複数の刺激発生部との距離を求め,例えば、手1に配されたそれぞれの刺激発生部の、手1を模した仮想人体上における各位置と、手1を模した仮想人体上における衝突点の位置との距離を求め,距離に応じた刺激の提示を行うべく、各刺激発生部の駆動制御を行い,係る制御は、上述の例では、衝突点からの距離が長いほど、刺激開始タイミングを遅らせたり、刺激の強度を弱めたりする制御である」とされている。
ここで,引用発明の,「ユーザの人体の各部位に対応する仮想人体と、仮想物体との衝突」,「衝突点の位置」,「手1に配されたそれぞれの刺激発生部の、手1を模した仮想人体上における各位置」および「刺激発生部」は,それぞれ,本願発明の「仮想イベント」,「仮想環境における前記仮想イベントの前記位置」および「前記仮想環境における前記仮想ユーザの前記第一仮想身体領域の前記位置」および「第一ハプティック出力デバイス」に相当する。
また,引用発明において,「手1に配されたそれぞれの刺激発生部の、手1を模した仮想人体上における各位置と、手1を模した仮想人体上における衝突点の位置との距離を求め,距離に応じた刺激の提示を行うべく、各刺激発生部の駆動制御を行い,係る制御は、上述の例では、衝突点からの距離が長いほど、刺激開始タイミングを遅らせたり、刺激の強度を弱めたりする制御」を行うことは,本願発明と同様に,「前記仮想イベント、前記仮想環境における前記仮想イベントの前記位置、および前記仮想環境における前記仮想ユーザの前記第一仮想身体領域の前記位置に基づいて第一ハプティック効果を判断」し,「第一ハプティック出力デバイスにより前記ユーザの前記第一身体領域に前記第一ハプティック効果を出力」しているといえる。
したがって,本願発明と引用発明とは,「ハプティックサラウンド機能を」「提供すること」が,「前記仮想イベント、前記仮想環境における前記仮想イベントの前記位置、および前記仮想環境における前記仮想ユーザの前記第一仮想身体領域の前記位置に基づいて第一ハプティック効果を判断するステップと、第一ハプティック出力デバイスにより前記ユーザの前記第一身体領域に前記第一ハプティック効果を出力するステップとを含」んでいる点で共通しているといえる。
2 一致点および相違点
本願発明と,引用発明とは,以下(1)の点で一致し,以下(2)の点で相違する。
(1)一致点
「 命令が格納された非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記命令は、プロセッサにより実行されると、前記プロセッサにハプティックサラウンド機能を提供させ、前記命令は、
仮想環境における仮想イベントの位置を判断するステップと、
ユーザの第一身体領域の位置に基づいて前記仮想環境における仮想ユーザの第一仮想身体領域の位置を判断するステップであって、前記第一身体領域は前記第一仮想身体領域に対応する、ステップと、
前記仮想イベント、前記仮想環境における前記仮想イベントの前記位置、および前記仮想環境における前記仮想ユーザの前記第一仮想身体領域の前記位置に基づいて第一ハプティック効果を判断するステップと、
第一ハプティック出力デバイスにより前記ユーザの前記第一身体領域に前記第一ハプティック効果を出力するステップと
を含む、非一時的コンピュータ可読媒体。」
(2)相違点
ア <相違点1>
本願発明では,「非一時的コンピュータ可読媒体」に「格納された」「命令」の内,「プロセッサにハプティックサラウンド機能を提供すること」に,「ユーザの第一身体領域の位置に基づいて前記仮想環境における仮想ユーザの第一仮想身体領域の位置を判断するステップであって、前記第一身体領域は前記第一仮想身体領域に対応する、ステップ」を含んでいるのに対し,引用発明では,「プロセッサにハプティックサラウンド機能を提供」する「刺激発生部110の駆動制御処理」「と並行して行う」「仮想空間画像を提示している処理」において,「ユーザの第一身体領域の位置に基づいて前記仮想環境における仮想ユーザの第一仮想身体領域の位置を判断するステップであって、前記第一身体領域は前記第一仮想身体領域に対応する、ステップ」を含んでいる点。
イ <相違点2>
本願発明では,「第一ハプティック出力デバイスにより前記ユーザの前記第一身体領域に前記第一ハプティック効果を出力するステップ」が,「前記第一ハプティック出力デバイスは、アプリケーションプログラミングインタフェース(API;application programming interface)により前記ユーザの前記第一身体領域に割り当てられる、ステップ」であるのに対して,引用発明では,APIをもちいているか否か特定されていない点。
3 相違点について
上記相違点について,判断する。
(1)<相違点1>について
本願の優先日前に,プロセッサは,複数のプログラムステップを並行して実行可能であり,複数のステップから構成される命令(プログラム)を実行する際に,複数のステップの内の一部のステップを,並行して実行可能な場合に,当該複数のステップを並行して実行するか,順次実行するかは,当業者が必要に応じて,選択的すべき設計的事項に過ぎないことは,技術常識であったといえる。
引用発明において,各刺激発生部の駆動制御(ハプティック効果を判断し,ハプティック効果を出力する)以前に,「仮想環境における仮想イベントの位置を判断するステップと、」「ユーザの第一身体領域の位置に基づいて前記仮想環境における仮想ユーザの第一仮想身体領域の位置を判断するステップであって、前記第一身体領域は前記第一仮想身体領域に対応する、ステップと」が実行されていれば,「前記仮想イベント、前記仮想環境における前記仮想イベントの前記位置、および前記仮想環境における前記仮想ユーザの前記第一仮想身体領域の前記位置に基づいて第一ハプティック効果を判断するステップ」が実行可能となるのであるから,「仮想環境における仮想イベントの位置を判断するステップと、」「ユーザの第一身体領域の位置に基づいて前記仮想環境における仮想ユーザの第一仮想身体領域の位置を判断するステップであって、前記第一身体領域は前記第一仮想身体領域に対応する、ステップと」を順次実行するか,「仮想環境における仮想イベントの位置を判断するステップと、」「ユーザの第一身体領域の位置に基づいて前記仮想環境における仮想ユーザの第一仮想身体領域の位置を判断するステップであって、前記第一身体領域は前記第一仮想身体領域に対応する、ステップと」を並行して実行するかは,当業者が必要に応じて,選択的すべき設計的事項に過ぎない。
したがって,引用発明において,「仮想環境における仮想イベントの位置を判断するステップ」を含んだ「プロセッサにハプティックサラウンド機能を提供」する「刺激発生部110の駆動制御処理」と,「仮想空間画像を提示している処理」すなわち「ユーザの第一身体領域の位置に基づいて前記仮想環境における仮想ユーザの第一仮想身体領域の位置を判断するステップであって、前記第一身体領域は前記第一仮想身体領域に対応する、ステップ」を並行して実行する構成に代えて,「プロセッサにハプティックサラウンド機能を提供」する「刺激発生部110の駆動制御処理」の内の「仮想環境における仮想イベントの位置を判断するステップ」を実行した後に,「仮想空間画像を提示している処理」すなわち「ユーザの第一身体領域の位置に基づいて前記仮想環境における仮想ユーザの第一仮想身体領域の位置を判断するステップであって、前記第一身体領域は前記第一仮想身体領域に対応する、ステップ」を順次実行する構成とし,本願発明の<相違点1>に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものである。
(2)<相違点2>について
上記第4の2イで述べたように,引用文献2には,以下の技術的事項が開示されているといえる。
「様々な方式の触覚ディスプレイで、ソフトウェアを共通に記述できるライブラリであって,
アプリケーションを容易に効率良く開発でき、
ソフトウェアの汎用性に主眼を置き、触覚ディスプレイに依存しない触覚用共通ソフトウェアHIP(HIPとは、Haptic Interface Platformの略で、様々な方式の触覚ディスプレイで共通に触覚情報を扱うための汎用ライブラリ)。」
そして,上記第4の2エで述べたように,引用文献2の「触覚用共通ソフトウェアHIP」も,「アプリケーションのプログラム」を開発する際に「使用」される,「アプリケーション」「プログラムから利用できる関数の集まり」であるから,上記ウ(イ)の技術用語「API」の定義を満たしているといえる。
したがって,引用発明において,「第一ハプティック出力デバイスにより前記ユーザの前記第一身体領域に前記第一ハプティック効果を出力する」際に,引用文献2に開示された「触覚用共通ソフトウェアHIP」を採用して,「前記第一ハプティック出力デバイスは、アプリケーションプログラミングインタフェース(API;application programming interface)により前記ユーザの前記第一身体領域に割り当て」る本願発明の<相違点2>に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものである。
(3)作用効果について
本願発明の作用効果も,当業者が容易に想到しうる範囲内のものに過ぎない。
(4)請求人の主張について
ア 請求人は,令和3年9月1日提出の意見書において,上記2(2)イで述べた<相違点2>に係る構成について,概ね以下のように主張している。
「第一ハプティック出力デバイスが、アプリケーションプログラミングインタフェース(API)によりユーザの第一身体領域に割り当てられることを含む」点について,引用文献1には,「ハプティック出力デバイスを、ユーザの身体領域に割り当てるアプリケーションプログラミングインタフェース(API)の使用についての教示や示唆は」ない旨主張している。
イ 上記請求人の主張について検討する。
上記第2で述べたように,本件補正後の請求項1に記載された本願発明は,本件補正前の請求項2の記載に基づいて,本件補正前の請求項1に記載された発明を技術的に限定したものであり,上記第3で述べたように,本件補正前の請求項2に係る発明について,令和3年 5月25日付けで当審が通知した拒絶理由では,引用文献1および2に基づいて,当業者が容易に発明し得た旨説示しているから,引用文献1には,「ハプティック出力デバイスを、ユーザの身体領域に割り当てるアプリケーションプログラミングインタフェース(API)の使用についての教示や示唆は」ない旨の上記請求人主張は,引用文献2に開示の技術的事項を考慮していない点で失当である。
そして,上記3(2)で述べたように,「第一ハプティック出力デバイスが、アプリケーションプログラミングインタフェース(API)によりユーザの第一身体領域に割り当てられることを含む」点について,引用発明において,「第一ハプティック出力デバイスにより前記ユーザの前記第一身体領域に前記第一ハプティック効果を出力する」際に,引用文献2に開示された「触覚用共通ソフトウェアHIP」を採用して,「前記第一ハプティック出力デバイスは、アプリケーションプログラミングインタフェース(API;application programming interface)により前記ユーザの前記第一身体領域に割り当て」る本願発明の<相違点2>に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものであるから,引用文献1のみに基づいて進歩性を主張する,請求人の主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおり,本願発明は,その優先日前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,その余の請求項について論及するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2020-008223