特許拒絶査定不服審判
2021-010610
メタクリル酸メチル及びメタクリル酸のコポリマーを含む組成物を調製する方法
- 審判番号
- 2021-010610
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-529536
- 請求日
- 2021年08月10日
- 審決日
- 2024年04月22日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】トリンゼオ ヨーロッパ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
- 【請求人代理人】園田・小林弁理士法人
- 審判長/審判官
- 審判長 細井 龍史
- 審判官 近野 光知
- 審判官 小出 直也
- 分類
- P18 .121-WZ (C08F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-529536「メタクリル酸メチル及びメタクリル酸のコポリマーを含む組成物を調製する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月15日国際公開、WO2017/097979、平成30年12月13日国内公表、特表2018-536744〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)12月9日(パリ条約による優先権主張 2015年(平成27年)12月19日)を国際出願日とする特許出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和2年 9月11日付け 拒絶理由通知
令和3年 3月11日提出 意見書及び手続補正書
同年 4月 6日付け 拒絶査定
同年 8月10日提出 審判請求書
令和5年 3月 2日付け 拒絶理由通知
同年 9月 1日提出 意見書及び手続補正書
第2 本願発明
本願の請求項1~26に係る発明は、令和5年9月1日提出の手続補正書により補正された請求項1~26に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、請求項1に係る発明は以下のとおりのものである(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。
「成形体を作製するのに適切なポリマー組成物を調製する方法であって、前記組成物が、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸のモノマーをモノマー単位として含む(メタ)アクリル酸コポリマーを含み、
a)反応容器に、90wt%から98wt%の間のメタクリル酸メチル及び2wt%から10wt%のメタクリル酸を含むモノマー混合物を添加する工程、
b)モノマー混合物に対して0.001wt%から1wt%の開始剤を添加する工程、
c)モノマー混合物100重量部に対して0.01重量部から1重量部の連鎖移動剤を添加する工程、
d)モノマー混合物を重合する工程、
e)反応容器から、40wt%から80wt%の間の(メタ)アクリル酸コポリマーを含む組成物を回収する工程
を含む、方法であって、
以下の工程
- 反応容器に添加する前に、90wt%から98wt%の間のメタクリル酸メチル及び2wt%から10wt%のメタクリル酸を含むモノマー混合物を0℃未満の温度に冷却する工程を含み、
重合工程が連続バルク重合であり、
反応容器が連続撹拌タンク反応器であることを特徴とする、方法。」
第3 当審が通知した拒絶理由
令和5年3月2日付けで当審が通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。
(引用文献1を主引用文献とする進歩性)
本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1 特開2008-101203号公報
引用文献2 特開2014-12781号公報
第4 本願明細書に記載された事項
本願明細書には、次の事項が記載されている。
「【0005】
技術的問題
熱可塑性ポリマー及びコポリマー、特に(メタ)アクリル酸のものは、透明性、機械的特性及び加工性などの素晴らしい特徴を有し、自動車部品、電気部品、工業用部品、光学材料、家電製品の種々の部品、審美的部品、雑貨品などの種々の分野で広範に使用される。
【0006】
これらの分野で十分な熱特性を有するか、又は言い換えれば、増大した加熱耐性又はビカット温度を有する(メタ)アクリル酸ポリマーに基づいたポリマー組成物を有することが大いに興味のあることである。これは、特定のコモノマーを用いた共重合により達成されてきた。
【0007】
さらに、特に熱エイジング後により良好な光学特性を有するポリマー組成物を有すること、及びこのようなポリマー組成物を作製するための方法も大いに興味深いものである。
【0008】
本発明の目的は、良好な加熱耐性を有する(メタ)アクリル酸ポリマー組成物を生成するための方法を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、良好な光学特性及び表面特性を有する(メタ)アクリル酸ポリマー組成物を生成するための方法を提供することである。
【0010】
本発明のまたさらなる目的は、モノマーの高変換で(メタ)アクリル酸ポリマー組成物を生成するための方法を提供することである。変換は、モノマー(一又は複数)の少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%であるべきである。
【0011】
本発明のまたさらなる目的は、容易に変形及び成形又は押し出されうる良好な加熱耐性を有する(メタ)アクリル酸ポリマー組成物を生成するための方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、良好な加熱耐性を有する(メタ)アクリル酸ポリマー組成物を含む成形又は押し出された物体を作製するための方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、光学特性の点で良好な熱エイジング性を有する(メタ)アクリル酸ポリマー組成物を生成するための方法を提供することである。
【0014】
本発明によって、高品質を有するポリマー組成物、より具体的には、高加熱安定性を示し、光学特性を満足させるポリマー組成物をさらに有効に生成できるポリマー組成物を生成するための新規方法が提供される。
【背景技術】
【0015】
先行技術
文献GB1437176には、アクリル酸コポリマーが開示されている。メタクリル酸メチル及びメタクリル酸のコポリマーを含む数種のコポリマーが開示されている。それらのコポリマーは、懸濁方法により作製される。
【0016】
文献EP0774471には、部分的に水溶性のコモノマーを用いたアクリル酸懸濁重合の方法が開示されている。その方法は、水及び懸濁剤を使用する。
【0017】
文献EP2065410には、熱可塑性コポリマーの生成のための方法が開示されている。熱可塑性コポリマーは、不飽和カルボン酸から生じるコモノマーを含む。
【0018】
文献米国特許出願第2014/0000801号には、連続バルク重合を使用した光学フィルム用の樹脂組成物を調製する方法が開示されている。実施例に開示される重合は、溶液重合である。
【0019】
先行技術には、懸濁方法により、又は異なる組成物若しくは異なる方法パラメーターを用いたメタクリル酸メチル及びメタクリル酸のモノマーを含む(メタ)アクリル酸コポリマーを含むポリマー組成物を調製するための方法が開示されている。」
「【0058】
モノマー混合物によるメタクリル酸の導入に基づいたモノマー単位は、主鎖を形成するためのメタクリル酸のメタクリル酸基の共重合の後に、カルボン酸基はさらに反応しうることを意味する。共重合したメタクリル酸のカルボン酸基の何れかは、ポリマー鎖での側基としてなお存在し、例えば、2つのカルボン酸基は無水物として形成されたであろう。」
「【0081】
本発明の方法により生成されるポリマー組成物は、成形物品のための材料として使用されるのが好ましく、そこから得られる成形物品は、高い加熱耐性及び加熱安定性を示す利点を有する。例えば、本発明の方法により生成されるポリマー組成物(より具体的には、脱揮後のメタクリル酸コポリマー組成物)は、成形物品を調製するために任意の成形方法、例えば、射出成形及び押出成形により単独で、又は任意の適切な他の成分(一又は複数)と一緒に成形される。」
「【実施例】
【0091】
一連の実施例は、異なる方法によるコポリマーの調製に関する。
【0092】
実施例1
メタクリル酸メチル(95wt%)は、連続バルク又は塊状重合法により、メタクリル酸(5wt%)の存在下で重合される。方法は、相対的に100重量部のモノマーに対して、開始剤(290ppmの1,1-ビス(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサン(Luperox531)60%純度)並びに3300ppmの鎖調節剤(ドデシルメルカプタン)及び50ppmの熱安定剤(DTDDS)を使用する。反応混合物を、-40℃に冷却し、CSTR(連続撹拌タンク反応器)反応器に導入する。温度は、重合から生じるエンタルピーのため、160℃に上昇する。生成物は、50%から60%(モノマー中のポリマー)の変換で反応器から回収される。ポリマー及びモノマーの混合物を、200℃から230℃まで加熱し、脱揮のための脱気用押出機に導入される。メタクリル酸メチルのメタクリル酸とのコポリマーCOPO1が得られる。
【0093】
比較例1: 文献EP0774471、実施例4による懸濁重合により、95.5wt%のメタクリル酸メチル、4.5wt%のメタクリル酸、その2つのモノマーが一緒に100重量部になり、0.26重量部の鎖調節剤、0.005重量部のDTDDS及び最後の成分として、0.225重量部のペルオキシ-2-エチルヘキサン酸t-ブチル(ARKEMAから得られるLuperox(登録商標)26)を含む混合物を使用しつつ、コポリマーCOPO2を調製する。
【0094】
[図:0001414434000001.jpg]
【0095】
[図:0001414434000002.jpg]
【0096】
本発明の方法により調製されたポリマー組成物から変形された成形サンプルは、つねに低い黄色度指数を保有する。」
第5 本願発明の技術的意義
本願明細書の記載によると、本願発明の課題は、良好な加熱耐性(当審注:原文ではheat resistance)を有する(メタ)アクリル酸ポリマー組成物を生成するための方法を提供すること(【0008】)、及び、光学特性の点で良好な熱エイジング性を有する(メタ)アクリル酸ポリマー組成物を生成するための方法を提供すること(【0013】)とされている。ここで、「十分な熱特性を有するか、又は言い換えれば、増大した加熱耐性又はビカット温度を有する(メタ)アクリル酸ポリマーに基づいたポリマー組成物を有することが大いに興味のあること」(【0006】)との記載を参酌すると、上記加熱耐性とは耐熱性のことであると解される。
また、本願明細書には、背景技術として、懸濁重合又は連続バルク重合によるメタクリル酸メチル及びメタクリル酸モノマーを含む(メタ)アクリル酸コポリマーを含むポリマー組成物に関する先行技術が記載され(【0015】~【0019】)、本願発明の方法により生成されるポリマー組成物の成形物品は高い加熱耐性及び加熱安定性を示す利点を有すること(【0081】)、さらに、具体例として、連続バルク重合による実施例1のポリマー組成物は、懸濁重合による比較例1のポリマー組成物と比べて、熱エイジング前後で低い黄色度指数となることが記載されている(【0091】~【0096】)。しかしながら、本願明細書には、本願発明に係る方法により調製されたポリマー組成物が、良好な加熱耐性又はビカット温度を有することは具体例により示されていない。
そうすると、本願発明の技術的意義は、懸濁重合によるポリマー組成物と比べて、加熱安定性に優れるポリマー組成物を生成するための方法を提供することと解される。
第6 引用文献に記載された事項
1 引用文献1に記載された事項及び引用文献1に記載された発明
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
完全混合型反応器とそれに引き続き直列に配置された静的混合用構造部を有する管状反応器を使用して、(i)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位および(ii)不飽和カルボン酸単位を含むカルボキシル基含有アクリル共重合体(A)を製造する方法において、
(前重合工程)完全混合型重合槽に、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体および不飽和カルボン酸単量体を含む単量体混合物、連鎖移動剤、ならびにラジカル重合開始剤からなる原料混合物を連続的に供給し、この反応域におけるカルボキシル基含有アクリル共重合体(A)の含有率が20~55重量%となるように連続重合し、カルボキシル基含有アクリル共重合体(A)と未反応の原料混合物からなる共重合体溶液(a)を製造する工程、
(後重合工程)静的混合用構造部を有する管状反応器において、ラジカル重合開始剤を添加混合して重合させながら反応液を通過させ、静的混合用構造部を有する管状反応器出口における共重合体溶液(a)のカルボキシル基含有アクリル共重合体(A)の含有率が50~90重量%となるように重合を行う工程、
を有するカルボキシル基含有アクリル共重合体(A)の製造方法。
…
【請求項4】
前重合工程における単量体混合物が、単量体混合物の合計を100重量%として、不飽和カルボン酸5~50重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル50~95重量%および、その他共重合可能な単量体成分0~15重量%からなることを特徴とする請求項1~3いずれかに記載のカルボキシル基含有アクリル共重合体(A)の製造方法。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、重合助剤を含まず無色透明性、均一性に優れるカルボキシル基含有アクリル共重合体の高効率的な製造方法を提供することを課題とし、さらには本発明の該カルボキシル基含有アクリル共重合体を環化反応することにより得られる、高度な透明性と熱安定性に優れるグルタル酸無水物単位含有の熱可塑性共重合体の連続的製造方法、および該熱可塑性共重合体からなる樹脂組成物の製造方法を提供することを課題とする。」
「【0046】
カルボキシル基含有アクリル共重合体(A)の製造時に用いられるこれらの単量体混合物の好ましい割合は、該単量体混合物を100重量%として、不飽和カルボン酸系単量体が5~50重量%、より好ましくは5~45重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体は好ましくは50~95重量%、より好ましくは55~95重量%、これらに共重合可能な他のビニル系単量体を用いる場合、その好ましい割合は0~35重量%、特に好ましい割合は0~10重量%である。」
「【0052】
また、本発明においては、分子量を制御する目的で、アルキルメルカプタン、四塩化炭素、四臭化炭素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等の連鎖移動剤を単量体混合物100重量部に対して、0.1~2.0重量部を添加する必要がある。本発明に使用されるアルキルメルカプタンとしては、例えば、n-オクチルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン、n-オクタデシルメルカプタン等が挙げられ、なかでもt-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタンが好ましく用いられる。」
「【0056】
本発明の前重合工程で使用する重合反応槽(1)は、均一混合が可能となり、均質な共重合体溶液(a)が得られる観点から、重合槽内の各部において、重合液の組成及び温度等が撹拌作用で実質的に等しく保持される「完全混合型反応槽」であることが好ましく、さらには、攪拌装置を備えた槽型反応器であり、該攪拌装置が、槽内溶液を実質的に完全混合状態とできる攪拌翼を備えた槽型反応器であることがより好ましい。
…
【0058】
また、当該前重合工程では、重合反応と攪拌による発熱が生じることから、除熱及び場合により加熱することによって、重合温度を制御する。温度制御は、ジャケット、熱媒循環による伝熱除熱または加熱、モノマー混合物の冷却供給、加温供給などの方法が挙げられる。
【0059】
前重合工程の重合温度は、60℃~160℃の範囲であることが好ましい。重合温度を、上記範囲に制御することによりゲル効果による重合速度の加速現象を抑制し、かつ、高温重合時に生成する二量体生成を抑制できることから、熱安定性に優れる熱可塑性共重合体(C)を効率よく製造することができる。」
「【0063】
また、本発明の重合条件で得られた共重合体溶液(a)の溶液粘度は0.1~100Pa・sの範囲にあるため、重合率(φ)が50~80%の高重合率においても、高粘度化による重合の加速反応、いわゆるゲル効果が抑制でき、安定して重合を行うことができ、さらには、溶液粘度が上記範囲にあることから、ポンプにより容易に、脱揮工程の脱揮装置に供給することが可能となる。ここで、本発明における共重合体溶液(a)の溶液粘度とは、振動粘度計(CBCマテリアルズ(株)社製VM-100A)を用いて、共重合体溶液(a)を30℃に保持して測定した数値であり、また、重合率(φ)は、ガスクロマトグラフによって定量した未反応単量体より計算した値を示す。」
「【0067】
本発明においては、静的混合用構造部を有する管状反応器で更に重合を進めることにより、最終重合体含有率(重合率)を高くして、引き続いて行う揮発物除去工程の負担を軽減することが可能となり、経済的に有利な製造方法として工業的メリットが大きいことを見出した。さらに、この静的混合用構造部を内部に有する管状反応器においてさらに重合を進めることで、1段目の完全混合型反応器において重合率を低くできるため、完全混合型反応器の重合温度を低くして重合体の熱変形温度と耐熱分解性を飛躍的に向上させることが可能となる。」
「【0072】
このようなラジカル開始剤としては、例えばtert-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサネート、tert-ブチルパーオキシラウレート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert-ブチルパーオキシアセテート、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、tert-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサネート、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、tert-ヘキシルパーオキシ2-エチルヘキサネート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物、または2-(カルバモイルアゾ)-イソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート、2、2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2、2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス--2,4-ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等から重合温度を考慮して選択することができる。」
「【0136】
また、本発明の製造方法により製造される熱可塑性共重合体(C)は、好ましい態様において、黄色度(YellownessIndex)の値が3以下と着色が抑制され、さらに好ましい態様においては2以下と極めて高度な無色透明性を有する。上記において黄色度はガラス転移温度+140℃で射出成形した厚さ1mm成形品のYI値をJIS-K7103に従い、測定した値である。黄色度の下限は、特に制限はなく、低いほど好ましいが、通常1程度である。」
「【0140】
本発明により製造された熱可塑性共重合体(C)は、その優れた耐熱性、無色透明性および滞留安定性を活かして、電気・電子部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、一般雑貨など種々の用途に用いることができる。
【0141】
また、上記の方法で得られた熱可塑性共重合体(C)は、機械的特性、成形加工性にも優れており、溶融成形可能であるため、押出成形、射出成形、プレス成形などが可能であり、フィルム、シート、管、ロッド、その他の希望する任意の形状と大きさを有する成形品に成形して使用することができる。」
「【0193】
実施例および比較例
(ア)カルボキシル基含有アクリル共重合体(A)および共重合体溶液(a)の製造
〔実施例1:(A-1):連続塊状重合法〕
<1>前重合工程
容量が20リットルで、ダブルヘリカル型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、20L/分の窒素ガスで15分間バブリングした下記処方の単量体混合物を5kg/hの速度で連続的に供給し、50rpmで撹拌し、内温が130℃に制御し、平均滞留時間5時間で、連続重合を行った。重合率は40%であり、共重合体溶液(a)の溶液粘度を30℃で測定した結果、70Pa・sであった。
メタクリル酸 25重量部
メタクリル酸メチル75重量部
1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン0.01重量部
n-ドデシルメルカプタン0.8重量部。
【0194】
<2>後重合工程
続いて、前重合工程で得られた共重合体溶液(a)を連続的に抜き出し、ギアポンプを用い、内径2.5インチ管状反応器(スイス国ゲブリューター・ズルツァー社製SMX型スタティックミキサー・静的ミキシングエレメント30個内蔵)を内装した配管部で、さらに1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン0.005重量部を添加して共重合体溶液(a)と予備混合した後、直列に設置された別の内径2.5インチ管状反応器(スイス国ゲブリューター・ズルツァー社製SMX型スタティックミキサー・静的ミキシングエレメント30個内蔵)に連続的に供給し、重合反応を行った。この時の管型反応器の内壁温度は130℃であり、この内壁温度におけるラジカル重合開始剤の半減期は12分であった。また、当該管状反応器における平均滞留時間は60分であった。また、内圧は25kg/cm2Gとした。後重合工程で得られた共重合体溶液(a)を分析した結果、重合率80%、共重合体溶液(a)の溶液粘度(30℃)70Pa・sであった。また、この共重合体溶液(a)10gを40gのテトラヒドロフランに溶解し、500mLのヘキサンに再沈殿させることで、パウダー状の共重合体(A-1)4.0gを得た。これより重合体含有率(固形分)は80重量%と計算された。この共重合体(A-1)の重量平均分子量は85000、カルボキシル基含有アクリル共重合体(A)中のメタクリル酸単位量は27重量%であった。
【0195】
〔実施例2~4:(A-2)~(A-4):連続塊状重合法〕
原料を表1に示す単量体混合物に変更した以外は、(A-1)と同様の製造方法で共重合体(A-2)~(A-4)を得た。得られた共重合体溶液(a)および共重合体(A-2)~(A-4)の特性を表1、表2に示した。
…
【0202】
【表1】
[図:0001414434000003.jpg]
【0203】
【表2】
[図:0001414434000004.jpg]
【0204】
(イ)熱可塑性共重合体(C)の製造(脱揮工程、環化工程)
〔実施例12~22:(C-1)~(C-11)〕
実施例1~6で得られた共重合体(A-1)~(A-11)を含む共重合体溶液(a)をギアポンプにより44mmφ二軸押出機(TEX-44(日本製鋼所社製、L/D=28.0、ベント部:3箇所)に、供給速度5.0kg/hで供給し、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら、スクリュー回転数75rpm、シリンダ温度250℃、ベント部分より減圧し、圧力20Torrにて脱揮を行った。この時点で、脱揮後のカルボキシル基含有アクリル共重合体(A)をサンプリングし、含有する揮発成分を測定した。続いて、38mmφ二軸・単軸複合型連続混練押出機(HTM38(CTE社製、L/D=47.5、ベント部:2箇所)に供給した。ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら、スクリュー回転数75rpm、原料供給量5.0kg/h、シリンダ温度300℃で分子内環化反応を行い、ペレット状の熱可塑性共重合体(C)((C-1)~(C-11))を得た。
…
【0210】
【表3】
[図:0001414434000005.jpg]
【0211】
【表4】
[図:0001414434000006.jpg]
【0212】
実施例1~22および比較例1~8から、本発明の製造方法は、重合工程において特定の重合条件下で塊状重合または溶液重合し、さらには得られた重合溶液から未反応単量体を除去する脱揮を行った後、特定条件で環化反応を行うことで、滞留時も発生ガス量の少ない高度な耐熱性、熱安定性を有しながら、無色透明性に優れ、とりわけ異物の少ない熱可塑性共重合体(C)を製造することができることがわかる。
【0213】
一方、本発明範囲外の方法で重合を行った場合、他のいずれの条件においても、加熱処理後の熱可塑性共重合体の色調、および異物数の点で劣ることがわかる。」
(2)引用文献1に記載された発明
引用文献1には、実施例4として連続塊状重合法によりカルボキシル基含有アクリル共重合体(A-4)を製造し、実施例15として上記共重合体(A-4)を含む共重合体溶液(a)の脱揮及び環化反応を行って熱可塑性共重合体(C-4)を製造する方法が記載されている。
また、引用文献1には、脱揮及び環化反応により得られた熱可塑性共重合体は、機械的特性及び成形加工性に優れており、フィルム、シート、管、ロッド等の成形品に溶融成形して使用することができることが記載されている(【0141】)。
そうすると、引用文献1には、実施例4及び実施例15に着目して、次の発明が記載されているといえる。
「容量が20リットルで、ダブルヘリカル型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、20L/分の窒素ガスで15分間バブリングした単量体混合物(メタクリル酸20重量部、メタクリル酸メチル80重量部、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン0.01重量部、n-ドデシルメルカプタン0.8重量部)を5kg/hの速度で連続的に供給し、50rpmで撹拌し、内温を130℃に制御し、平均滞留時間5時間で連続塊状重合を行って、重合率40%の共重合体溶液(a)を得る前重合工程と、
前重合工程で得られた共重合体溶液(a)を連続的に抜き出し、ギアポンプを用い、内径2.5インチ管状反応器(スイス国ゲブリューター・ズルツァー社製SMX型スタティックミキサー・静的ミキシングエレメント30個内蔵)を内装した配管部で、さらに1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン0.005重量部を添加して共重合体溶液(a)と予備混合した後、直列に設置された別の上記管状反応器に連続的に供給し、重合反応を行い、共重合体(A-4)を含む共重合体溶液(a)を得る後重合工程と、により連続塊状重合を行い、
上記共重合体(A-4)を含む共重合体溶液(a)をギアポンプにより44mmφ二軸押出機(TEX-44(日本製鋼所社製、L/D=28.0、ベント部:3箇所)に、供給速度5.0kg/hで供給し、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら、スクリュー回転数75rpm、シリンダ温度250℃、ベント部分より減圧し、圧力20Torrにて脱揮を行う工程と、
続いて、38mmφ二軸・単軸複合型連続混練押出機(HTM38(CTE社製、L/D=47.5、ベント部:2箇所)に供給し、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら、スクリュー回転数75rpm、原料供給量5.0kg/h、シリンダ温度300℃で分子内環化反応を行い、揮発成分含有量が1.1重量%である熱可塑性共重合体(C-4)を得る環化工程と、
を含む熱可塑性共重合体(C-4)の製造方法であって、
上記共重合体(C-4)は、押出成形、射出成形などによりフィルム、シート、管又はロッドに溶融成形して使用することができる、上記製造方法。」(以下、「引用発明」という。)
2 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
メタクリル酸メチルを50質量%以上含有する原料モノマーと重合開始剤とを含む原料混合物を完全混合型の反応槽の供給口より供給し、該反応槽において連続重合に付し、これにより得られる重合体組成物を該反応槽の抜き出し口より抜き出すメタクリル系重合体組成物の製造方法であって、
前記反応槽に供給される前記原料混合物の温度が-50℃~-10℃であることを特徴とするメタクリル系重合体組成物の製造方法。
【請求項2】
…
【請求項4】
前記連続重合における重合温度が120℃~150℃である請求項1~3のいずれかに記載のメタクリル系重合体組成物の製造方法。
【請求項5】
前記連続重合が連続塊状重合である請求項1~4のいずれかに記載のメタクリル系重合体組成物の製造方法。
【請求項6】 請求項1~5のいずれかに記載の製造方法により得られるメタクリル系重合体組成物から得られる成形体。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、熱安定性や耐熱性が高い、高品質の樹脂組成物を得るのに適した重合体組成物をより効率的に製造できる重合体組成物の製造方法を提供することにある。」
「【0011】
本実施形態の重合体組成物の製造方法は、完全混合型の反応槽10を用いて実施される。反応槽10は、本実施形態においては、連続重合として連続塊状重合を実施するために用いられる。
より具体的には、反応槽10は、供給口11aと抜き出し口11bとを有し、好ましくは、反応槽の外壁面の温度を調節するための温度調節手段としてジャケット13と、内容物を撹拌するための撹拌機14とを更に有する。抜き出し口11bは、本実施形態において反応槽10の頂部に位置するように設けられるが、これに限定されない。他方、供給口11aは、本実施形態を限定するものではないが、一般的には各反応槽の下方の適切な位置に設けられ得る。更に、反応槽10は、反応槽内の温度を検知する温度検知手段として温度センサTを備える。
【0012】
撹拌機14は、反応槽内を実質的に完全混合状態とするためのものである。これら撹拌機は、任意の適切な撹拌翼を備えていてよく、例えば、ミグ(MIG)翼、マックスブレンド翼(登録商標、住友重機械工業株式会社製)、パドル翼、ダブルヘリカルリボン翼、フルゾーン翼(登録商標、株式会社神鋼環境ソリューション製)などを備えていてよい。反応槽内での攪拌効果を増大させるためには、反応槽内にバッフルを取り付けることが望ましい。しかし、本実施形態はこれに限定されず、反応槽内を実質的に完全混合状態とし得る限り、撹拌機14に代えて任意の適切な構成を有し得る。」
「【0016】
原料モノマータンク1、重合開始剤タンク3、原料モノマー供給ライン4、重合開始剤供給ライン6および原料供給ライン9からなる群より選ばれる少なくとも一つ〔以下、タンクおよび/またはラインということがある。〕は、温度調節手段を備える。原料モノマータンク1および/または重合開始剤タンク3は、温度調節手段として、例えば、タンクの外壁面を少なくとも部分的に被覆するジャケットを備えていてよく、かかる温度調節手段により、原料モノマータンク1および/または重合開始剤タンク3内の原料モノマーの温度を調節することができる。原料モノマータンク1および/または重合開始剤タンク3がジャケットを備える場合には、より効率的に温度調節を行える点で、タンク内の原料モノマーおよび/または重合開始剤を撹拌するための撹拌混合手段を更に備えることが好ましい。また、原料モノマー供給ライン4、重合開始剤供給ライン6および原料供給ライン9からなる群より選ばれる少なくとも一つは、温度調節手段として、例えば、ラインを少なくとも部分的に被覆するジャケットや、ラインを少なくとも部分的に浸漬させることができる熱媒浴や、ラインの一部を置換した加熱/冷却器や、熱媒を通すトレース配管などを備えていてよく(ジャケットを備えるラインは、二重管として理解される)、かかる温度調節手段により、ライン内を流れる原料モノマー、重合開始剤およびそれらの混合物からなる群より選ばれる少なくとも一つの温度を調節することができる。なお、加熱/冷却器としては、温度調節手段と混合手段を兼ね備える加熱/冷却器、具体的には動的混合機能を有するもの(例えば、シリンダーの冷却が可能なスクリュー混合器)や、静的混合機能を有するもの(例えば、スタティックミキサー内蔵型熱交換器など)を使用してよい。原料モノマー供給ライン4、重合開始剤供給ライン6および原料供給ライン9からなる群より選ばれる少なくとも一つが加熱/冷却器を備える場合、加熱/冷却器は、ライン上に任意の適切な態様で設けられ、加熱/冷却器以外のライン部分は、保温材で覆うことにより保温してもよいし、ラインの外壁面を取り囲むジャケットを併用して冷却してもよい。このように、タンクおよび/またはラインに備えられる温度調節手段を用いることにより、反応槽10に供給される原料モノマーと重合開始剤とを含む原料混合物の温度を調節することができる。」
「【0032】
原料モノマーとして、本実施形態では、メタクリル酸メチルを50質量%以上含有する原料モノマーを用いる。
原料モノマーとしては、例えば、
・メタクリル酸メチル単独、または
・メタクリル酸メチル50質量%以上(好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上)と、これと共重合可能な他のビニル単量体50重量%以下(好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下)との混合物(ただし、メタクリル酸メチルと、これと共重合可能な他のビニル単量体との合計は100質量%である。)が挙げられる。
【0033】
共重合可能なビニル単量体としては、例えば、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体や、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体が挙げられる。具体的には、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2-エチルヘキシルなどのメタクリル酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸またはこれらの酸無水物;アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸モノグリセロール、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸モノグリセロールなどのヒドロキシル基含有モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等の窒素含有モノマー;アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有単量体;スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン系単量体が挙げられる。」
「【0060】
本発明の製造方法において、反応槽10へと供給される原料モノマーと重合開始剤とを含む原料混合物の温度は、-50℃~-10℃に温度調節される。該温度は、-40~-15℃が好ましい。この温度が-50℃より低いと、原料モノマー中の水分や原料モノマー自身が凝固するおそれや、重合開始剤、その他添加剤等が析出するおそれがある。この温度が-10℃よりも高いと、重合率を上げるためには重合温度を高くする必要があり、その場合、最終的に得られる樹脂組成物の熱安定性、耐熱性が低下するおそれがある。また、この温度が-10℃よりも高い場合に重合温度を低く抑えようとすると、反応槽をジャケット等で強く冷却する必要があり、その場合、局所的な冷却によるゲル等の発生により、最終的に得られる樹脂組成物の品質が低下するおそれがある。
【0061】
反応槽10へと供給される原料モノマーと重合開始剤とを含む原料混合物の温度の調節は、上述のように、タンクおよび/またはラインに備えられる温度調節手段により行うことができる。-50℃~-10℃の前記原料混合物を反応槽10に供給する方法として、具体的には、(I)原料モノマータンク1に貯留される原料モノマーおよび重合開始剤タンク3に貯留される重合開始剤のそれぞれを-50℃~-10℃に温度調節し、原料モノマー供給ライン4、重合開始剤供給ライン6および原料供給ライン9を温度調節手段および/または保温材により保温し、原料モノマーと重合開始剤とを含む原料混合物を反応槽10に供給する方法、(II)反応槽10の供給口11aにおける前記原料混合物の温度が-50℃~-10℃となるように、原料モノマータンク1に貯留される原料モノマーおよび重合開始剤タンク3に貯留される重合開始剤のそれぞれの温度、ならびに原料モノマーおよび重合開始剤の供給流量を調節する方法、(III)反応槽10の供給口11aにおける前記原料混合物の温度が-50℃~-10℃となるように、原料モノマー供給ライン4、重合開始剤供給ライン6および原料供給ライン9からなる群より選ばれる少なくとも一つに備えられた温度調節手段の温度を調節する方法、(IV)反応槽10の供給口11aにおける前記原料混合物の温度が-50℃~-10℃となるように、原料モノマータンク1に貯留される原料モノマーおよび重合開始剤タンク3に貯留される重合開始剤のそれぞれの温度、ならびに原料モノマー供給ライン4、重合開始剤供給ライン6および原料供給ライン9からなる群より選ばれる少なくとも一つに備えられた温度調節手段の温度を調節する方法などが挙げられる。前記(II)、(III)および(IV)の方法においては、前記原料混合物の温度は、反応槽10の供給口11aの近傍において、原料供給ライン9内の温度を検知する温度検知手段によって実際に測定することが好ましい。
【0062】
以上のようにして反応槽10に供給された原料モノマーと重合開始剤とを含む原料混合物は、連続重合に、本実施形態においては連続塊状重合(換言すれば、溶媒なしでの重合)に付される。この重合は、重合反応を途中まで進行させるものであればよく、反応槽10の抜き出し口11bより重合体組成物(または重合シロップ)が連続的に抜き出される。」
「【0068】
連続重合の温度は、反応槽10内の温度(温度センサTにて検知される)として理解される。連続重合は、例えば120~150℃の範囲以内の温度にて、好ましくは130~150℃の範囲以内の温度にて実施される。但し、反応槽内の温度は、定常状態に至るまでは諸条件に応じて変動し得ることに留意されたい。
【0069】
連続重合の圧力は、反応槽10内の圧力として理解される。この圧力は、反応槽内で原料モノマーの気体が発生しないように、反応槽内の温度における原料モノマーの蒸気圧以上の圧力とされ、通常、ゲージ圧で1.0~2.0MPa程度である。」
「【0072】
重合体組成物における重合率は、本実施形態を限定するものではないが、例えば30~90重量%である。なお、重合体組成物における重合率は、概ね、重合体組成物中の重合体(ポリマー)含有率に相当する。この重合率が高いほど、重合体の生産性が高くなるものの、重合体組成物の粘度が高くなって、大きな撹拌動力が必要となる。また、重合率が低いほど、重合体の生産性が低くなり、未反応の原料モノマーを回収するための負担が大きくなってしまう。よって、適切な重合率を目標または目安として設定することが好ましい。
【0073】
一般的に、重合温度が高いほど、得られる重合体(ポリマー)のシンジオタクティシティーが低くなり、最終的に得られる樹脂組成物の耐熱性が低くなる傾向にある。よって、耐熱性の高い樹脂組成物を得るには、低温で重合させるほうが好ましい。しかしながら、従来の方法(特許文献1および2)を用いて、連続重合を低温にて実施すると、所望の重合率を達成するには長時間を要するため、長い平均滞留時間を実現するのに大きな反応槽、ひいては大きなスペースを要し、効率的でない。また、平均滞留時間が必要以上に長くなると、ダイマー、トリマーなどのオリゴマーの生成量が多くなって、重合体組成物から得られる樹脂組成物の耐熱性が低下するおそれもある。
【0074】
加えて、重合開始剤の量は、重合温度、所望の重合率および平均滞留時間などの他の条件に応じて設定され得、重合温度が低いほど、また、平均滞留時間が短いほど、所望の重合率を達成するには重合開始剤の量が多くなるが、重合開始剤の量が多くなるほど、不安定な不飽和結合からなる重合停止端部(末端ポリマー)が重合体組成物中に多く残存するので、最終的に得られる樹脂組成物の熱安定性が低くなる傾向にある。また、所望の重合率を達成するための重合温度が高すぎても、重合開始剤に起因する不飽和結合からなる重合停止端部(末端ポリマー)が重合組成物中に多く生成することになり、最終的に得られる樹脂組成物の熱安定性が低くなる傾向にある。
【0075】
特に、断熱状態で連続重合を行う場合には、実質的に反応槽の外部からの熱の出入りがないため、重合発熱により重合温度が上がることになる。よって、断熱状態での連続重合では、反応槽に供給される原料混合物の供給温度と重合温度との温度差で重合率が決定され、温度差が大きいほど重合率が高くなる。そのため、反応槽に供給される原料混合物の供給温度が-10℃よりも高いと、所定の重合率を得るためには重合温度を高くせざるを得ず、そのために、最終的に得られる樹脂組成物の熱安定性や耐熱性が低くなる傾向にある。
【0076】
本実施形態によれば、所望の重合率を達成しつつ、反応槽10における重合温度を低く抑えることができるように、反応槽10に供給される原料モノマーと重合開始剤とを含む原料混合物の温度が-50℃~-10℃となるようにタンクおよび/またはラインに備えられる温度調節手段を制御しており、これにより、熱安定性および耐熱性に優れた重合体組成物を生産性良く得ることができる。」
第7 当審の判断
1 対比及び検討
(1)対比
引用発明の「単量体混合物(メタクリル酸20重量部、メタクリル酸メチル80重量部、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン0.01重量部、n-ドデシルメルカプタン0.8重量部)」のうち、「1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン」はラジカル重合開始剤であるから(引用文献1の【0072】)、本願発明の「開始剤」に相当し、上記「n-ドデシルメルカプタン」は連鎖移動剤であるから(同【0052】)、本願発明の「連鎖移動剤」に相当し、上記「メタクリル酸」及び「メタクリル酸メチル」からなる混合物は、本願発明1の「モノマー混合物」に相当する。そして、引用発明の「単量体混合物」は、本願発明における「b)モノマー混合物に対して0.001wt%から1wt%の開始剤」及び「c)モノマー混合物100重量部に対して0.01重量部から1重量部の連鎖移動剤」の各含有量を満たすものである。
引用発明の「前重合工程」は、本願発明の「d)モノマー混合物を重合する工程」に相当する。
引用発明の「前重合工程を行い、重合率40%の共重合体溶液を得て」及び「前重合工程で得られた共重合体溶液(a)を連続的に抜き出」す工程は、本願発明の「e)反応容器から、40wt%から80wt%の間の(メタ)アクリル酸コポリマーを含む組成物を回収する工程」に相当する。
引用発明の「連続塊状重合」は、本願発明の「連続バルク重合」に相当する。
引用発明の「ダブルヘリカル型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブ」は、「単量体混合物を5kg/hの速度で連続的に供給し、50rpmで撹拌し」、「平均滞留時間5時間で連続重合を行って」、「前重合工程で得られた共重合体溶液(a)を連続的に抜き出」すものであるから、本件発明の「連続撹拌タンク反応器」に相当する。
引用発明の「揮発成分含有量が1.1重量%である熱可塑性共重合体(C-4)」は、熱可塑性共重合体(C-4)と揮発成分を含む組成物であるといえるから、上記「熱可塑性共重合体(C-4)」から上記揮発成分を除いたものは本願発明の「(メタ)アクリル酸コポリマー」に相当し、上記「熱可塑性共重合体(C-4)」は本願発明の「ポリマー組成物」に相当するといえる。
また、引用発明の「フィルム、シート、管又はロッド」は、本願発明の「成形体」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「成形体を作製するのに適切なポリマー組成物を調製する方法であって、前記組成物が、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸のモノマーをモノマー単位として含む(メタ)アクリル酸コポリマーを含み、
a)反応容器に、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸を含むモノマー混合物を添加する工程、
b)モノマー混合物に対して0.001wt%から1wt%の開始剤を添加する工程、
c)モノマー混合物100重量部に対して0.01重量部から1重量部の連鎖移動剤を添加する工程、
d)モノマー混合物を重合する工程、
e)反応容器から、40wt%から80wt%の間の(メタ)アクリル酸コポリマーを含む組成物を回収する工程
を含む、方法であって、
重合工程が連続バルク重合であり、
反応容器が連続撹拌タンク反応器であることを特徴とする、方法。」の点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:本願発明は「反応容器に添加する前に」「モノマー混合物を0℃未満の温度に冷却する工程を含」むのに対して、引用発明はそのような特定がない点
相違点2:モノマー混合物が、本願発明は「90wt%から98wt%の間のメタクリル酸メチル及び2wt%から10wt%のメタクリル酸を含む」のに対して、引用発明は、「メタクリル酸メチル80重量部、メタクリル酸20重量部を含む」点
(2)相違点の検討
a 相違点1について
(a1)引用発明は、前重合工程における内温を130℃に制御するものである。そして、引用文献1には、重合温度の制御に関して、「前重合工程の重合温度は、60℃から160℃の範囲であることが好ましい。重合温度を上記範囲に制御することによりゲル効果による重合速度の加速現象を抑制し、かつ、高温重合時に発生する二量体生成を抑制できることから、熱安定性に優れる熱可塑性共重合体(C)を効率よく製造することができる」(【0059】)及び「前重合工程では、重合反応と攪拌による発熱が生じることから、除熱…によって、重合温度を制御する。温度制御は、ジャケット、熱媒循環による伝熱除熱…、モノマー混合物の冷却供給…などの方法が挙げられる」(【0058】)と記載されており、引用発明の「前重合工程における内温」、すなわち重合温度を制御するために、単量体混合物を前重合工程に供給する前に、除熱すること、すなわち冷却することが示されている。
(a2)一方、引用文献2には、メタクリル酸メチルを50質量%以上含有する原料モノマーと重合開始剤とを含む原料混合物を、完全混合型の反応槽に供給して連続塊状重合し、得られる重合体組成物を反応槽より抜き出すメタクリル系重合体組成物の製造方法において、上記反応槽に供給する原料混合物の温度を-50℃~-10℃とすること(請求項1、請求項5)、この温度が-10℃よりも高いと、重合率を上げるために重合温度を高くして最終的に得られる樹脂組成物の熱安定性や耐熱性が低下するおそれや、重合温度を低く抑えるために反応槽をジャケット等で強く冷却し、ゲル等の発生によって樹脂組成物の品質が低下するおそれがあることが記載されており(【0060】)、この記載によると、原料混合物を-10℃以下に冷却して供給することにより、重合温度を制御しているといえる。
そして、引用文献2に記載された方法において、連続重合は、反応槽内の温度を120~150℃、好ましくは130~150℃の範囲内にして行われるものである(【0068】)。
そうすると、引用文献2に記載された方法は、重合温度を120~150℃に制御するために、原料混合物を-10℃以下に冷却して反応槽に供給するものであるといえる。
また、上記完全混合型の反応槽は、「反応槽10は、供給口11aと抜き出し口11bとを有し」、「内容物を撹拌するための撹拌機14とを更に有する」ものであり(【0011】)、これは連続攪拌タンク反応槽であるといえる。
(a3)これらのことから、引用発明と引用文献2に記載された方法は、いずれも、メタクリル酸メチルを50質量%以上含むモノマー混合物を連続攪拌タンク反応槽に供給し、連続塊状重合により共重合体を製造する方法であり、重合方法及びその装置の面で共通するもの同士であり、また、重合温度を130℃近傍に制御する面でも共通するものである。そして、上記(a1)で述べたように、引用文献1には単量体混合物を冷却して重合反応槽に供給することも記載されている(【0058】)。
そうすると、引用発明において、重合温度を130℃近傍に制御するためにモノマー混合物を-10℃以下、すなわち0℃未満の温度に冷却することが動機付けられるといえる。
(b)また、引用発明は、高度な透明性と熱安定性に優れる熱可塑性共重合体の製造方法の提供を課題とするものであり(引用文献1の【0012】)、引用文献2に記載された方法は、熱安定性および耐熱性に優れた重合体組成物を生産性よく得るものであるから(引用文献2の【0008】、【0074】~【0076】)、引用発明と引用文献2に記載された方法は、解決しようとする課題が共通するものであり、このことによっても、引用発明において、引用文献2に記載されたように、モノマー混合物を0℃未満に冷却することが動機付けられるといえる。
(c)したがって、引用発明において、モノマー混合物の温度を0℃未満に冷却することは、当業者が容易に想到し得たことであるといえる。
b 相違点2について
引用文献1には、単量体混合物の好ましい割合は、該単量体混合物を100重量%として、不飽和カルボン酸系単量体が5~50重量%、より好ましくは5~45重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体は好ましくは50~95重量%、より好ましくは55~95重量%、これらに共重合可能な他のビニル系単量体を用いる場合、その好ましい割合は0~35重量%、特に好ましい割合は0~10重量%であることが記載されている(【0046】)。
そうすると、引用発明は、不飽和アルキルエステル系単量体であるメタクリル酸メチルを55~95重量%及び不飽和カルボン酸系単量体であるメタクリル酸を5~45重量%の範囲内で選択するものであるから、モノマー混合物を、本件発明の「90wt%から98wt%の間のメタクリル酸メチル及び2wt%から10wt%のメタクリル酸を含む」ものとすることが動機付けられるといえる。
したがって、引用発明において、反応容器に、90wt%から98wt%の間のメタクリル酸メチル及び2wt%から10wt%のメタクリル酸を含むモノマー混合物を添加することは、当業者が容易に想到し得たことであるといえる。
(3)本願発明の効果について
a 本願明細書には、「生成されるポリマー組成物は、成形物品のための材料として使用されるのが好ましく、そこから得られる成形物品は、高い加熱耐性及び加熱安定性を示す利点を有する」(【0081】)と記載されているが、第5で述べたように、本願明細書には、上記加熱耐性(耐熱性)については具体的な測定結果が示されておらず、唯一の具体例である実施例1において、加熱安定性(熱安定性)について、連続バルク重合で得られたポリマー組成物のシートサンプルを、湿潤雰囲気下の80℃で168時間の加熱、又は、120℃及び150℃の各温度で150時間の加熱により熱エイジングし、熱エイジング前後のいずれにおいても、懸濁重合で得られた比較例1のポリマー組成物よりも低い黄色度指数であったことが示されているのみである(【0092】~【0096】、表1及び表2)。
b そして、引用文献1には、不飽和カルボン酸単位を含有する共重合体を、分散剤や乳化剤などの重合助剤を使用しない塊状重合で製造できれば、光学材料に要求される高度な無色透明性に優れた共重合体を得ることができることが記載され(【0008】)、懸濁重合や乳化重合などの重合助剤を使用する重合方法は、得られた共重合体の透明性や色調に劣ることが示唆されている。
c また、引用文献1には、懸濁重合で得られた比較例1の共重合体(A-12)を用いて脱揮工程及び環化工程を行った比較例5の共重合体(C-12)が記載され、実施例4の塊状重合で得られた引用発明1の共重合体(C-4)と比べて、全光線透過率及び色調において劣ることが具体的に示されており(表4)、熱エイジング後であってもその優劣に変化がないことは、当業者が推察し得ることである。
d そうすると、上記aで述べた本願発明の加熱安定性(熱安定性)の効果は、引用文献1の記載から当業者が予測し得るものであるといえる。
(4)請求人の主張について
請求人は、令和5年9月1日提出の意見書において、引用文献1-3及び5は・・・(当審注:・・・は本願発明1及び21に係る方法)を教示も示唆もしていません。従って、たとえ引用文献1又は3において、引用文献2の記載に基づいて、原料モノマーの温度を「-50℃~-10℃」にすることが動機付けられ、当業者が容易に想到し得たとしても、本願請求項に係る発明を知ることなく、当業者が、引用文献1又は3に基づいて本願請求項に係る発明を想到することは容易ではなかったものと思料致します。」(意見書の3頁29行~4頁22行)と主張する。
しかしながら、上記(2)で説示したように、本願発明は引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして、請求人は、単に、本願発明そのものの方法が、教示も示唆もされていないと述べるのみで、本願発明が、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができないことを何ら具体的に説明していない。
よって、請求人の主張は首肯できない。
(5)小括
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明、並びに、引用文献1及び2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第8 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明、並びに、引用文献1及び2に記載された事項に基づいて、本願優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-010610