2021-010198
磁極ハウジングの製作方法、電動機用磁極ハウジング、および、電動機
- 審判番号
- 2021-010198
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-510750外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年07月30日
- 審決日
- 2022年10月03日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ブローゼ ファールツォイクタイレ エスエー ウント コンパニ コマンディートゲゼルシャフト バンベルク
- 【請求人代理人】土井 健二
- 【請求人代理人】林 恒徳
- 【請求人】シュルホルツ ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー スタンツテヒニク
- 【請求人代理人】土井 健二
- 【請求人代理人】林 恒徳
- 分類
- P18 .121-WZ (H02K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 14項目
第1 手続の経緯
折りたたみ中(クリックで表示)
この出願は、2017年(平成29年)4月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年(平成28年)5月4日、独国)を国際出願日とする出願であって、平成30年12月26日に手続補正がされ、令和元年11月19日付けの拒絶理由の通知に対し、令和2年2月25日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ、令和2年7月20日付けの拒絶理由の通知(いわゆる「最後の拒絶理由通知」)に対し、令和3年1月25日に意見書が提出されたが、令和3年3月24日付けで拒絶査定がされ、これに対して令和3年7月30日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その後、当審において、令和4年2月25日付けで拒絶理由が通知され、令和4年5月31日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。
第2 本願発明
この出願の請求項に係る発明は、令和4年5月31日に手続補正がされた特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「予め亜鉛メッキされた金属薄板材料からなる管外周壁(4)が用意され、管縦方向(L)に延在する前記管外周壁(4)の直線状の外周壁縦方向エッジ(6)が互いに向き合うように、金属薄板材料からなる前記管外周壁(4)が円筒状磁極管(2)に変形され、前記管外周壁(4)が溶接装置(28)に供給され、前記管外周壁(4)の前記外周壁縦方向エッジ(6)がレーザー溶接継目(10)によって互いに材料結合式に連結され、周方向に閉じた前記円筒状磁極管(2)を形成し、前記外周壁縦方向エッジ(6)間の流体封止的な突き合わせエッジ連結が実現され、前記円筒状磁極管(2)の一方の端面を閉鎖するカバー(14)が設けられている、電動機用磁極ハウジング(16)を製作するための方法において、前記円筒状磁極管(2)がプレス装置(34)に供給され、前記円筒状磁極管(2)の前記一方の端面側の管端部(12a)の内壁側に、前記カバー(14)を支持するための半径方向の載置面(36)と軸方向の環状壁区間(38)を有する段付き部(32)が全周にわたって形成され、前記カバー(14)が前記載置面に配置され、前記カバー(14)を越えて突出する軸方向の前記環状壁区間(38)の領域が前記カバー(14)を保持しつつ全周にわたって前記一方の端面側の管端部(12a)の塑性変形によって半径方向内側に変形され、それにより前記カバー(14)が端板として、前記カバー(14)と前記円筒状磁極管(2)の間に流体封止的連結を形成するように前記円筒状磁極管(2)の前記一方の端面側の前記管端部(12a)にかみ合い結合式に固定されることを特徴とする方法。」
第3 拒絶の理由
令和4年2月25日付けで当審が通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうち、理由1(進歩性)は、概略、次のとおりのものである。
この出願の請求項1~5,7~10に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2~引用文献4に記載されているような周知の事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
この出願の請求項6に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2~引用文献4に記載されているような周知の事項及び引用文献5に記載されているような周知の事項に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
なお、本願発明は、当審拒絶理由の通知時における請求項1を引用する請求項6に係る発明に発明特定事項を追加する等の補正をしたものといえ、該請求項6に係る発明に対応するものである。
第4 引用文献の記載及び引用発明
1.引用文献1の記載及び引用発明
(1)当審拒絶理由で引用された、この出願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、前記引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付加した。以下、同様である。)。
ア.「
[図:0001406984000001.jpg]
」(第1ページ第3行~第4行)[当審仮訳:この発明は、電気モーターのためのポールケーシング製造方法に関連している。]
イ.「
[図:0001406984000002.jpg]
」(第2ページ第1行~第10行)[当審仮訳:このような機械による接合は、通常、方法によって制限され、幾何学的かつ構造上の凹凸の原因となる、圧着またはフランジングにおいて、かみ合う要素は、立体的な形態によって互いに接続される。その結果、バリが生じる。このバリは、追加の加工を必要とする。このような接続は、通常、流入する液体に対する十分な保護を提供することはない。
この発明の根底には、ポールケーシングの製造及び特に適した方法の確立という課題がある。特に方法は、ポールケーシングの容易な、時間を節約でき、また費用対効果のよい製造を可能にする。]
ウ.「
[図:0001406984000003.jpg]
[図:0001406984000004.jpg]
[図:0001406984000005.jpg]
」(第2ページ第14行~第4ページ第9行)[当審仮訳:まず予め亜鉛メッキを施された素材から形成される原材料表面は、そのために供給される。次にチューブ・シースとして示される原材料表面の供給のために、特に予め亜鉛メッキを施された金属素材は、メタルロール(メタルコイル)によって展開され、チューブ・シースの分離のために打ち抜き装置へ移される。
亜鉛メッキ素材から形成されるチューブ・シースは、シリンダー状のポールチューブに形成される。この形成は、チューブの縦方向に延びるチューブの縦に関する指示が、チューブ・シースの末端に互いに向けられるように行われる。その際、まずチューブ・シースは、より丸くシリンダー状の形態にあらかじめ形成するために供給され、次にシリンダー状のポールチューブの円形の形態を提供するためにキャリブレーション装置に供給される。
最初の方法の段階において、チューブ・シースの外被における縦方向のエッジは、周辺のポールチューブの形成のために互いに接続される。その際、回転対称に(例えばリードインな斜角伴う、またはリードインな斜角を伴わないシリンダー状に)曲げられたチューブ・シースは、適切な場合に溶接装置へ供給される。この溶接装置は、亜鉛メッキを施されたチューブ・シースの外被における縦方向のエッジをレーザーによる溶接の継ぎ目を用いて素材に合うように互いに接続する。レーザーによる溶接の継ぎ目を用いたこのような接続は、許容される継ぎ目エッジ接続及び特に液体を透過させない継ぎ目エッジを保証する。これは、外被における縦方向のエッジのそれによって軽減される部分的一致に基づく。また特に、これは材料を接続する。
レーザー溶接された末端接続のさらなる利点は、ポールチューブへの比較的に僅少かつ集積されたエネルギー入力である。また利点は、エネルギー入力による僅少な最小限の熱による反りである。それによって基本的にポールチューブの狭い許容差は、迅速かつ容易に生み出され、遵守される。
さらに方法のこのさらなる形成は、その後の加工を必要とせず、表面の性質を維持し、特に亜鉛メッキによる腐食保護を維持し、高い圧縮強度を伴う材料にあった接続を特に費用を抑えて許容する。それ故、次のことが強調される。レーザー溶接の経過において亜鉛メッキを施された素材は、末端接続の範囲で溶かして接合される。また溶かして接合された亜鉛メッキを施された素材、特にその際に加えられた溶接素材は、同様に溶接の継ぎ目に亜鉛メッキを施される。それによって、腐食保護は生じる。これは、両方の互いに導かれる外被における縦方向のエッジの間における比較的に狭い接続範囲への目的に適った熱のエネルギー入力に還元される。
同様に接続は、圧着時のような個々に生じるのではなく、ポールチューブの外被における縦方向のエッジに沿って均等に生じる。それ故、幾何学的かつ構造上の凹凸は、レーザーによる溶接の継ぎ目によって軽減され、特に液体及びガスを透過させないポールチューブの製造は保証される。
目的に適ったさらなる方法の段階において、チューブ・シース側で溶接されたポールチューブは、正面のチューブエッジの側面で分割された幾つかのマウンティングブラケットの角度のある屈曲ために打ち抜き装置及び曲げ装置に供給される。その際、螺旋接合面または螺旋金属環及び/またはブラシ・クリンプフックが問題となる。
さらに方法の段階において、特にリッドは、正面のチューブ末端に固定される。即ちリッドは、対置するチューブ末端の固定接合板に固定される。その際、溶接は再び目的に適っている。電気モーターのためのポールケーシングのベアリング保護板として役立つリッドは、特に既製部品として供給される。これは、深絞りされたポールケーシングにおけるこの可変性が与えられないのに対して、異なるベアリングリッドの供給を可能にする。]
エ.「
[図:0001406984000006.jpg]
[図:0001406984000007.jpg]
[図:0001406984000008.jpg]
」(第5ページ第18行~第7ページ第16行)[当審仮訳:図2から図5において示されたポールチューブ1は、亜鉛メッキを施された薄鋼板から製造されている。ポールチューブ1のチューブ・シース2は、2つの対置しチューブ縦方向Lに延びる外被における縦方向のエッジ3を形成する。この外被における縦方向のエッジは、互いに向き合っている。その際、チューブ・シース2の両方の外被における縦方向のエッジ3の間で、放射状のチューブのスリット4は軸方向に延びている。軸方向に延びるレーザーによる溶接の継ぎ目5によって、チューブのスリット4及びそれによって互いに向き合った外被における縦方向のエッジ3は、素材に合うように、液体を透過させないように、及び/またはガスを透過させないように互いに接続する。
ポールチューブ1の正面またはチューブ末端6aの1つは、ベアリング保護板7と接続されている。これは、電気モーター及びその回転子のシャフトを受けるベアリングの製造にベアリング保護板として役立つ。それによって容易かつ可変性のある方法及び形態において、少なくとも片方を閉ざされている電気モーターのポールケーシングは製造される。あらかじめ永久磁石は、これによって製造されたポールケーシングの内面に電気モーターの固定子として取り付けられる。特に電気モーターは、原動機付車両の調節部分のためのコンパクトな調節駆動装置、例えば座席調節のための調節駆動装置またはウィンドージャッキのための調節駆動装置として利用可能である。
図1は、亜鉛メッキを施された素材から形成されるポールケーシングの製造法の工程を図式的に示している。出発点は、厚さ1.0mmから3.0mmの予め亜鉛メッキを施された数回巻かれた金属板を伴うメタルロール(メタルコイル)10である。このメタルコイル10は解かれ、そしてストレートナ11での最初の方法の段階において継続的に調整される。その際、その都度調整される金属板の部分は、常にメタルロール10の無限の金属板ベルトの部分である。メタルロール10のベルト幅は、その後のポールチューブの長さに一致する。
次の方法の段階において、必要とされるチューブ・シースの大きさは、打ち抜き装置を用いて、メタルロール11によって縮小される。その際生み出される金属板の部分は、既にその後のポールチューブ1のチューブ・シース2に一致する。最終的にその都度縮小されたチューブ・シース2は及び金属板の部分は、曲げ装置13において少なくとも後のシリンダー状の形態へと粗めに曲げられる。打ち抜き装置12及び曲げ装置13は、適切な場合に組み合わせられた曲げ自動装置及び打ち抜き自動装置の構成要素である。
次の方法の段階において、自動矯正装置14を用いた理想的かつ円形のシリンダー状の形状へのチューブ・シース2の精密な形成は生じる。ここで後のポールチューブ1におけるチューブ輪郭のキャリブレーションは、実践的に適切な円形の形態のために生じる。
次の方法の段階においてレーザー溶接は、溶接装置15を用いて、回転対称に(例えばリードインな斜角伴う、またはリードインな斜角を伴わないシリンダー状に)曲げられたチューブ・シースから、チューブ・シース2の共に一列に並んだ軸方向の外被における縦方向のエッジ3に沿って生じる。溶接前及び溶接時にチューブ・シース2は、相応する支持力Fがチューブ・シース2の複数個所に影響を及ぼすことによって、キャリブレーションされたシリンダー状の理想的な形態で維持される。
次の方法の段階において、詳細に示されていない曲げ自動装置または曲げ/打ち抜き自動装置を再び用いることによって、固定点及び/またはブラシ・クリンプフックの形成は、溶接されたポールチューブ1の正面6aに対置する正面(チューブ末端)6bで生じる。これは、相応する接合板16または同様な物がチューブ・シース表面2の周辺から暴露された位置へ曲げられることによって生じる。
さらなる方法の段階において、再び溶接装置17を用いたレーザー溶接または圧着によって、溶接されたポールチューブ1を伴うベアリングリッド及びベアリング保護板7の継ぎ合わせは、固定面及びブラシ固定接合板16に対置するポールチューブ1の正面(チューブ末端)6aで生じる。その際にベアリング保護板7は、例えば既製部品または中間材料として製造される。]
オ.FIG.1、FIG.3、FIG.4、FIG.5には、次の事項が図示されている。
[図:0001406984000009.jpg]
[図:0001406984000010.jpg]
[図:0001406984000011.jpg]
カ.前記ウによると、予め亜鉛メッキを施された素材から形成され、チューブ・シースとして示される原材料表面が供給され、前記エによると、該亜鉛メッキが施された素材は薄鋼板であるといえる。すると、予め亜鉛メッキを施された薄鋼板から形成されるチューブ・シース2が供給されることが把握できる。
キ.前記ウによると、チューブ・シースがシリンダー状のポールチューブに形成されるといえ、前記エによると、ポールチューブ1において、チューブ縦方向Lに延びるチューブ・シース2の縦方向のエッジ3が互いに向き合っているといえる。すると、チューブ縦方向Lに延びるチューブ・シース2の縦方向のエッジ3が互いに向き合うように、チューブ・シース2がシリンダー状のポールチューブ1に形成されることが把握できる。
ク.前記ウによると、チューブ・シースが溶接装置に供給され、チューブ・シースの縦方向のエッジがレーザーによる溶接の継ぎ目を用いて接続され、液体及びガスを透過させない継ぎ目エッジを保証するといえる。また、該レーザーによる溶接の継ぎ目を用いた接続により、溶接されたポールチューブが形成されるといえる。すると、前記エも考慮すると、チューブ・シース2が溶接装置15に供給され、チューブ・シース2の縦方向のエッジ3がレーザーによる溶接の継ぎ目5を用いて接続され、溶接されたポールチューブ1を形成し、液体及びガスを透過させない継ぎ目エッジが保証されることが把握できる。
ケ.前記ウ及びエによると、ポールチューブ1のチューブ末端6aにベアリング保護板7が固定されていること、及び溶接装置17を用いたレーザー溶接又は圧着によって、ベアリング保護板7が、ポールチューブ1のチューブ末端6aに固定されることが把握できる。
(2)引用文献1の前記ア~ケの記載及び図面の図示内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「予め亜鉛メッキを施された薄鋼板から形成されるチューブ・シース2が供給され、チューブ縦方向Lに延びる前記チューブ・シース2の縦方向のエッジ3が互いに向き合うように、薄鋼板から形成される前記チューブ・シース2がシリンダー状のポールチューブ1に形成され、前記チューブ・シース2が溶接装置15に供給され、前記チューブ・シース2の前記縦方向のエッジ3がレーザーによる溶接の継ぎ目5を用いて接続され、溶接された前記ポールチューブ1を形成し、液体及びガスを透過させない継ぎ目エッジが保証され、前記ポールチューブ1のチューブ末端6aにベアリング保護板7が固定されている、電気モーターのためのポールケーシング製造方法において、溶接装置17を用いたレーザー溶接又は圧着によって、前記ベアリング保護板7が、前記ポールチューブ1の前記チューブ末端6aに固定される電気モーターのためのポールケーシング製造方法。」
2.引用文献2の記載
当審拒絶理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、前記引用文献2には、図面とともに、次の記載がある。
(1)「【0004】また図4の構造では、モータカバー1の端部にエンドカバー3の外周部を嵌合させた後、モータカバー1の端部を全周に亘ってエンドカバー3の外周部側にてシーミング加工することにより、エンドカバー3をモータカバー1に固定する。図4の1bはシーミング加工部を示している。」
(2)「【0005】【考案が解決しようとする課題】上記従来の電動機の内、モータカバーの端部をエンドカバーの外周部の複数箇所でかしめて該エンドカバーをモータカバーに固定するようにしたものでは、かしめられていない他の大部分の箇所でエンドカバーとモータカバーとの嵌合部の僅かな隙間を通して水分などが電動機の内部に浸入することがあった。また、エンドカバーの外周部の全周にわたってモータカバーの端部をシーミング加工して該エンドカバーをモータカバーに固定するようにしたものでは、電動機本体はモータカバーとエンドカバーとにより完全に密閉されるので、外部から水分などが電動機の内部に浸入する恐れはないが、電動機内の空気の温度が下って結露して水滴が生じた場合に、この水滴が電動機の外部へ流出できない。そのため、従来の電動機では電動機内の湿度が多くなって絶縁が低下するという問題があった。本考案の目的は、電動機内部へ水分などが浸入しにくく、かつ結露などにより電動機内に水滴が溜ってもこれが外部へ流出可能なようにした電動機を提供することにある。」
(3)「【0010】モータカバー1とエンドカバー2とは鉄板をプレスで絞り加工することにより一体に形成され、エンドカバー2の中央部には内側に軸受が嵌装される膨出部2aが設けられて、該膨出部に設けられた貫通孔を通して電動機の出力軸6が外部に導出されている。」
(4)「【0011】後軸側のエンドカバー3は、同じく鉄板をプレス加工することにより円板状に形成され、その中央部には内側に軸受4が嵌装される膨出部3aが設けられている。円筒状のモータカバー1の後軸側の端部には、他の部分よりも内径を大きくして板厚を薄くした薄肉部1aが形成されており、この薄肉部1aがエンドカバー3の外周部側にシーミング加工されて、エンドカバー3がモータカバー1の端部に固定されている。図中1bはシーミング加工部を示している。モータカバー1の薄肉部1aの周方向の一部の箇所にシーミング加工が施されない部分1cが残され、シーミング加工が施されない部分の薄肉部1aの内周面とエンドカバー3の外周面との嵌合部に形成される小間隙により電動機の内外を連通させるドレン孔7が形成されている。」
(5)図1、図4には、次の事項が図示されている。
[図:0001406984000012.jpg]
[図:0001406984000013.jpg]
3.引用文献3の記載
当審拒絶理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、前記引用文献3には、図面とともに、次の記載がある。
(1)「〔産業上の利用分野〕本考案は、直流機等におけるブラシ保持装置に関し、特に、そのブラシホルダステーの支持構造の改良に係り、例えば、直流モータに利用して有効なものに関する。」(明細書第1ページ第20行~第2ページ第4行)
(2)「本実施例において、このブラシ保持装置は、モータの実体部(開示せず)が内臓されるヨークと、ヨークに被せ着けられるブラケットと、ヨークとブラケットとの間に挟持されるベースと、ベースに固装されるステーと、ステーにかしめ着けられる一対のブラシホルダとを備えている。ヨーク5はプレス加工により略円筒形状(一部のみが図示されている。)に形成されている。ヨーク5にはその一端開口に巻かしめ部6が内径が若干大きくなるように環帯状に切設されており、これにより、段付部7が形成されている。ヨーク5の内周には位置決め凸部8が段付部7近傍の適当箇所(以下、前側とする。)に配されて径方向内向きに突設されている。ブラケット9は薄鉄板等を用いてプレス加工により略円形の皿形状に形成されており、ヨーク5にその開口端面を閉塞するように組み付けられる。ブラケット9の外周辺部には被挟持代部10が環状に形成されており、その内側には低い側壁11が同一高さで適当な傾斜をもって環状に屈曲形成されている。」(明細書第4ページ第5行~第5ページ第5行)
(3)「ブラケット9が嵌入された巻かしめ部6は適当な手段により内側に巻かしめられ、これにより、ブラケット9およびベース46の被挟持代部10、47は巻かしめ部6と段付部7との間で共締めされて強力に挟持固定される。」(明細書第14ページ第5行~第9行)
(4)第1図、第2図には、次の事項が図示されている。
[図:0001406984000014.jpg]
[図:0001406984000015.jpg]
4.引用文献4の記載
当審拒絶理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、前記引用文献4には、図面とともに、次の記載がある。
(1)「第1図に示すように、断面U字状の金属製モータケース1の開口端1aに、金属製エンドブラケットを係止させる段部1bを、組付すべきブラケットの厚みよりわずかに深く配設する。前記断面U字状の金属製モータケース1に回転子等を格納しこのモータケース1の段部1bに、軸受3、ブラシ基板4およびブラシ5を配した金属製エンドブラケット2をはめこみ、モータ本体を回転させながら、前記開口端1aの全周をローリングによりかしめる。」(明細書第3ページ第16行~第4ページ第9行)
(2)第1図、第2図には、次の事項が図示されている。
[図:0001406984000016.jpg]
5.引用文献5の記載
当審拒絶理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、前記引用文献5には、図面とともに、次の記載がある。
(1)「(産業上の利用分野)この発明は、例えば電動式シート装置においてシートを自動的に作動させるのに利用される小型モータに関する。」(第1ページ右欄第8行~第11行)
(2)「ここで、第4図ないし第9図に基いて、ヨーク2の成形工程を説明すると、・・・・。その後、第6図,第8図(b)に示すように、成形体21の図中の左方側である開口端部21a側から、この成形体21の前記開口端部21aの開口断面積よりもわずかに大きい断面積を有し且つ近似形状をなす形押し用治具30を成形体21の長さ方向に沿ってバーリング加工をする。治具30によりバーリング加工をすることによって、成形体21が長さ方向と同方向に押圧されるので、前記凸側円弧20fと前記凹側円弧20gが強固に密着した状態で、成形体21の開口端部21aの相対向位置で前記凸部20aが薄肉状となって第8図(b)中において左方側に突出するエンドキャップ加締め片2a6と、このエンドキャップ加締め片2a6の第8図(b)中において右側に薄肉状をなす壁部2a4を有するエンドキャップ支持面2a5と、開口端部21aの内周側に向って環状形をなして突出していて筒状体側平坦面2a2を有するエンドキャップ当接突起2a3を設けて筒状体2aとする。そして、第7図,第8図(c),第9図に示すように、前記開口端部21aに対してエンドキャップ2bを挿入して、エンドキャップ2bの取付部2b2に設けたエンドキャップ側平坦面2b1をエンドキャップ当接突起2a3に有する筒状体側平坦面2a2に当接させる。このとき、エンドキャップ2bの前記取付部2b2がエンドキャップ支持面2a5により支持されており、この状態で、エンドキャップ2bに取付けた軸受4の芯出しを所定の位置に調整するようになっている。前記軸受4の芯出しを調整したところで、エンドキャップ2bの前記取付部2b2の相対向する側に対してエンドキャップ加締め片2a6を加締めることによってエンドキャップ2bを筒状体2aに組み付けてヨーク2を得るようになっている。ここで、エンドキャプ2bが前記エンドキャップ当接突起2a3の環状形をなす筒状体側平坦面2a2に当接しているので、エンドキャップ加締め片2a6により相対向する側からの加締めによってエンドキャップ2bが筒状体2aに対して容易に且つ確実に組み付けられるようになっている。」(第4ページ右上欄第16行~第5ページ左上欄第15行)
(3)第6図、第7図、第8図、第9図には、次の事項が図示されている。
[図:0001406984000017.jpg]
[図:0001406984000018.jpg]
[図:0001406984000019.jpg]
[図:0001406984000020.jpg]
第5 対比・判断
1.対比
以下、本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「薄鋼板」及び「チューブ・シース2」は、それぞれ本願発明の「金属薄板材料」及び「管外周壁(4)」に相当する。すると、引用発明の「予め亜鉛メッキを施された薄鋼板から形成されるチューブ・シース2が供給され」るという事項は、本願発明の「予め亜鉛メッキされた金属薄板材料からなる管外周壁(4)が用意され」るという事項に相当する。
(2)引用発明の「チューブ縦方向L」は、本願発明の「管縦方向(L)」に相当し、引用発明の「シリンダー状のポールチューブ1」あるいは「ポールチューブ1」は、本願発明の「円筒状磁極管(2)」に相当する。また、引用発明の「縦方向のエッジ3」は、前記第4 1(1)エによると、その間にスリット4が軸方向に延びるものであり、引用文献1のFIG.4及びFIG.5の図示内容(前記第4 1(1)オ参照。)も考慮すると、直線状に設けられているといえるから、本願発明の「直線状の外周壁縦方向エッジ(6)」あるいは「外周壁縦方向エッジ(6)」に相当する。すると、引用発明の「チューブ縦方向Lに延びる前記チューブ・シース2の縦方向のエッジ3が互いに向き合うように、薄鋼板から形成される前記チューブ・シース2がシリンダー状のポールチューブ1に形成され」るという事項は、本願発明の「管縦方向(L)に延在する前記管外周壁(4)の直線状の外周壁縦方向エッジ(6)が互いに向き合うように、金属薄板材料からなる前記管外周壁(4)が円筒状磁極管(2)に変形され」るという事項に相当する。
(3)引用発明の「溶接装置15」及び「レーザーによる溶接の継ぎ目5」は、それぞれ本願発明の「溶接装置(28)」及び「レーザー溶接継目(10)」に相当する。
また、引用発明の「前記チューブ・シース2の前記縦方向のエッジ3がレーザーによる溶接の継ぎ目5を用いて接続され」るという事項は、レーザーによる熱で該エッジ3の材料が溶融した後、該溶接の継ぎ目5が形成されることで、該エッジ3同士が接続されると解されるから、材料結合式であるといえ、本願発明の「前記管外周壁(4)の前記外周壁縦方向エッジ(6)がレーザー溶接継目(10)によって互いに材料結合式に連結され」るという事項に相当する。
さらに、引用発明の「溶接された」ポールチューブ1は、該溶接により、縦方向のエッジ3の間に延びるスリット4(前記第4 1(1)エ参照。)が閉じられると解されるから、本願発明の「周方向に閉じた」円筒状磁極管(2)に相当する。
そして、引用発明の「液体及びガスを透過させない継ぎ目エッジが保証され」るという事項は、縦方向のエッジ3の間に液体及びガスを透過させないものであり、引用文献1のFIG.4及びFIG.5の図示内容(前記第4 1(1)オ参照。)も考慮すると、該エッジ3同士が突き合わせられた状態で連結されているといえるから、本願発明の「前記外周壁縦方向エッジ(6)間の流体封止的な突き合わせエッジ連結が実現され」るという事項に相当する。
(4)引用発明の「チューブ末端6a」は、本願発明の「一方の端面側の管端部(12a)」あるいは「一方の端面側の前記管端部(12a)」に相当し、引用発明の「ベアリング保護板7」は、本願発明の「カバー(14)」に相当する。そして、引用文献1のFIG.1及びFIG.3の図示内容(前記第4 1(1)オ参照。)も考慮すると、ベアリング保護板7が、ポールチューブ1のチューブ末端6aにある端面を閉鎖しているといえるから、引用発明の「前記ポールチューブ1のチューブ末端6aにベアリング保護板7が固定されている」という事項は、本願発明の「前記円筒状磁極管(2)の一方の端面を閉鎖するカバー(14)が設けられている」という事項に相当する。
(5)引用発明の「電気モーター」及び「ポールケーシング」は、それぞれ本願発明の「電動機」及び「磁極ハウジング(16)」に相当し、引用発明の「電気モーターのためのポールケーシング製造方法」は、本願発明の「電動機用磁極ハウジング(16)を製作するための方法」あるいは「方法」に相当する。
(6)引用発明の「溶接装置17を用いたレーザー溶接又は圧着によって、前記ベアリング保護板7が、前記ポールチューブ1の前記チューブ末端6aに固定される」という事項は、ベアリング保護板7をポールケーシングの端板として機能させるものであるから、本願発明の「前記円筒状磁極管(2)がプレス装置(34)に供給され、前記円筒状磁極管(2)の前記一方の端面側の管端部(12a)の内壁側に、前記カバー(14)を支持するための半径方向の載置面(36)と軸方向の環状壁区間(38)を有する段付き部(32)が全周にわたって形成され、前記カバー(14)が前記載置面に配置され、前記カバー(14)を越えて突出する軸方向の前記環状壁区間(38)の領域が前記カバー(14)を保持しつつ全周にわたって前記一方の端面側の管端部(12a)の塑性変形によって半径方向内側に変形され、それにより前記カバー(14)が端板として、前記カバー(14)と前記円筒状磁極管(2)の間に流体封止的連結を形成するように前記円筒状磁極管(2)の前記一方の端面側の前記管端部(12a)にかみ合い結合式に固定される」という事項と、カバーが端板として、円筒状磁極管の一方の端面側の管端部に固定される点において共通する。
(7)そうすると、本願発明と引用発明とは、
「予め亜鉛メッキされた金属薄板材料からなる管外周壁が用意され、管縦方向に延在する前記管外周壁の直線状の外周壁縦方向エッジが互いに向き合うように、金属薄板材料からなる前記管外周壁が円筒状磁極管に変形され、前記管外周壁が溶接装置に供給され、前記管外周壁の前記外周壁縦方向エッジがレーザー溶接継目によって互いに材料結合式に連結され、周方向に閉じた前記円筒状磁極管を形成し、前記外周壁縦方向エッジ間の流体封止的な突き合わせエッジ連結が実現され、前記円筒状磁極管の一方の端面を閉鎖するカバーが設けられている、電動機用磁極ハウジングを製作するための方法において、前記カバーが端板として、前記円筒状磁極管の前記一方の端面側の前記管端部に固定される方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
カバーの管端部への固定について、本願発明は、「前記円筒状磁極管(2)がプレス装置(34)に供給され、前記円筒状磁極管(2)の前記一方の端面側の管端部(12a)の内壁側に、前記カバー(14)を支持するための半径方向の載置面(36)と軸方向の環状壁区間(38)を有する段付き部(32)が全周にわたって形成され、前記カバー(14)が前記載置面に配置され、前記カバー(14)を越えて突出する軸方向の前記環状壁区間(38)の領域が前記カバー(14)を保持しつつ全周にわたって前記一方の端面側の管端部(12a)の塑性変形によって半径方向内側に変形され、それにより」、「前記カバー(14)と前記円筒状磁極管(2)の間に流体封止的連結を形成するように」、「かみ合い結合式に」固定されるのに対し、引用発明は、圧着により固定されることを選択肢の一つとするものであるが、圧着の具体的な方法が明確でなく、チューブ末端6aが「半径方向内側に変形され」、「かみ合い結合式」に固定されているといえるかや、ベアリング保護板7とポールチューブ1の間に「流体封止的連結」を形成しているといえるかが明確でなく、そのため、プレス装置に供給され、段付き部が形成されているかも明確でない点。
2.判断
(1)相違点について
以下、<相違点>について検討する。
ア.引用発明は、「前記チューブ・シース2の前記縦方向のエッジ3がレーザーによる溶接の継ぎ目5を用いて接続され、溶接された前記ポールチューブ1を形成し、液体及びガスを透過させない継ぎ目エッジが保証され」るものであり、引用文献1の前記第4 1(1)イによると、「流入する液体に対する十分な保護を提供」することを課題とするものである。そして、この引用文献1に記載された課題を解決するためには、引用発明において、縦方向のエッジ3における溶接箇所だけでなく、「溶接装置17を用いたレーザー溶接又は圧着によって」固定される、ベアリング保護板7とポールチューブ1のチューブ末端6aとの固定箇所においても、液体及びガスを透過させないように構成しなければならないことは明らかである。すると、引用文献1の記載から、引用発明のベアリング保護板7とポールチューブ1のチューブ末端6aとの固定箇所においても、液体及びガスを透過させないように、つまり「流体封止的連結」を形成するように、レーザー溶接又は圧着を行うことが把握できる。
イ.そして、電動機のハウジングに、端板としてカバーを取り付ける際、ハウジングの内壁に、カバーを支持するための載置面と軸方向に延びる環状薄肉部を全周にわたって形成し、カバーを該載置面に配置し、該環状薄肉部をハウジングの全周にわたって半径方向内側に変形させ、カバーを圧着して固定することは、例えば、引用文献2(前記第4 2(1)、(4)及び(5)参照。)、引用文献3(前記第4 3(1)~(4)参照。)及び引用文献4(前記第4 4(1)~(2)参照。)等に記載されているように、この出願の優先日前より周知の事項(以下「周知の事項1」という。)であって、該周知の事項1により、環状薄肉部をハウジングの全周にわたって半径方向内側に変形させて、カバーを圧着しても、引用文献2の段落【0005】(前記第4 2(2)参照。)に記載されているように「流体封止的連結」を形成することは可能といえる。
ウ.また、管状部材の管端部に段付き部を形成する際、プレス装置を用いることも、例えば、引用文献5(前記第4 5(1)~(3)参照。)等に記載されているように、この出願の優先日前より周知の事項(以下「周知の事項2」という。)であって、この引用文献5の記載を踏まえると、該周知の事項2は、電動機のハウジングに端板としてカバーを取り付けるための段付き部を形成する際にも用いられているといえる。
エ.そして、引用発明において、ベアリング保護板7を、ポールチューブ1のチューブ末端6aに固定する方法として、圧着を選択する際、引用文献1には、その具体的な方法が明示されていないが、前記周知の事項1及び前記周知の事項2を踏まえると、引用発明における圧着の具体的な方法として、前記周知の事項1に基づいて、ポールチューブ1のチューブ末端6aの内壁側に、ベアリング保護板7を支持するための半径方向の載置面と軸方向の環状薄肉部を有する段付き部を全周にわたって形成し、ベアリング保護板7を該載置面に配置し、ベアリング保護板7を越えて突出する該環状薄肉部の領域を、ベアリング保護板7を保持しつつ全周にわたってチューブ末端6aの塑性変形によって半径方向内側に変形させる方法を採用するとともに、前記周知の事項2に基づいて、前記段付き部を、ポールチューブ1をプレス装置に供給することにより形成することは、当業者が容易に想到し得たものである。
オ.その場合、この環状薄肉部のベアリング保護板7を越えて突出する領域を全周にわたって半径方向内側に変形させることによる、ベアリング保護板7の固定は、「かみ合い結合式」に固定されているということができる。また、このような固定の方法を採用しても、前記イに記載したように、「流体封止的連結」を形成することは可能であり、前記アに記載したように、引用文献1の記載から、ベアリング保護板7とポールチューブ1のチューブ末端6aとの固定箇所においても、「流体封止的連結」を形成することが把握できることを踏まえると、引用発明における圧着の具体的な方法として、前記エに記載した固定の方法を採用し、それによりベアリング保護板7を端板として、ベアリング保護板7とポールチューブ1の間に「流体封止的連結」を形成するようにポールチューブ1のチューブ末端6aに「かみ合い結合式」に固定することにも格別の困難性はない。
カ.そうすると、引用発明、前記周知の事項1及び前記周知の事項2に基いて、本願発明の前記相違点に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(2)請求人の主張について
ア.請求人は、令和4年5月31日に提出した意見書(以下、単に「意見書」という。)の2(1)<引用文献1(国際公開第2012/113432号)との相違について>において、「したがって、引用文献1は、圧着を介したカバーの流体封止的な連結について開示するものではありません。」と主張している。
確かに、請求人が主張するように、引用文献1には、圧着によって、ベアリング保護板7をポールチューブ1のチューブ末端6aに固定する際、この固定が流体封止的な連結となっているかについて明示されていないが、前記(1)アに記載したように、引用発明のベアリング保護板7とポールチューブ1のチューブ末端6aとの固定箇所においても、「流体封止的連結」を形成することが引用文献1の記載から把握でき、これらを踏まえると、前記(1)オに記載したように、引用発明において、ベアリング保護板7を、ポールチューブ1のチューブ末端6aに固定する方法として、圧着を選択しても、該圧着により、「流体封止的連結」を形成することに格別の困難性はない。
したがって、請求人の前記主張は採用できない。
イ.請求人は、意見書の2(1)<引用文献2(実開平5-50962号公報)との組合せについて>において、「当業者は、引用文献1と引用文献2を組み合わせることはしないと思料されます。まず、引用文献1は、従来の磁極管の深絞り加工(絞り加工)について開示していますが、深絞り加工は複雑でコストがかかることを課題として開示し(第1頁第3段落)、深絞り加工ではない加工方法を提案するものです。これは,技術的齟齬であり、引用文献1と引用文献2の組合せを阻害するものと考えられます。第二に、引用文献1と引用文献2を組み合わせることに技術的な意味がありません。すなわち、変形・溶接によって製作された円筒状磁極管に段付き部を形成するのに、深絞り加工を行うことは意味がありません。」と主張し、同様に、2(1)<引用文献3(実開昭61-165058号公報)との組合せについて>において、「絞り加工に関する技術的齟齬により、引用文献1と引用文献3を組み合わせることを考えません。」と主張し、2(1)<引用文献4(実開昭52-75009公報との組合せについて>において、「絞り加工に関する技術的齟齬のために、引用文献1と引用文献4を組み合わせることは考慮しません。」と主張している。
ここで、引用文献2の段落【0010】(前記第4 2(3)参照。)には、モータカバー1とエンドカバー2を絞り加工により形成することが記載され、引用文献3の明細書第4ページ第11行~第12行(前記第4 3(2)参照。)には、ヨーク5がプレス加工により形成されることが記載され、引用文献4の明細書第3ページ第16行~第4ページ第1行(前記第4 4(1)参照。)には、断面U字状の金属製モータケース1と記載されている。すると、引用文献2に記載されたモータカバー1及びエンドカバー2は絞り加工により形成されているといえ、引用文献3に記載されたヨーク5、引用文献4に記載されたモータケース1も同様に絞り加工により形成されていると解する余地がある。
しかしながら、引用文献2~引用文献4に記載された事項について、仮に、ハウジングが絞り加工により形成され、ハウジングの軸方向両側の端部のうち、一方の端部が該絞り加工によりハウジングと一体に形成されているとしても、他方の端部はハウジングと別体の端板が取り付けられるものであって、この取り付け方法自体、ハウジングが絞り加工により形成されていることとは技術的に直接は関連のないものであるから、この取り付け方法に接した当業者であれば、ハウジングが絞り加工により形成されているか否かによらず、該絞り加工とは切り離して、ハウジングと端板との取り付け方法に関する技術を認識し、その採用を試み得るものである。
そうすると、引用文献1に、深絞り加工(絞り加工)は複雑でコストがかかることが課題として記載されており、引用文献2~引用文献4から把握されるハウジングが絞り加工により形成され、あるいは絞り加工により形成されていると解する余地があるとしても、そのことをもって、引用文献2~引用文献4から前記周知の事項1を認識できないとはいえないし、引用発明におけるベアリング保護板7を、ポールチューブ1のチューブ末端6aに圧着するための具体的な方法として、前記周知の事項1の採用が妨げられるものではない。
したがって、請求人の前記主張は採用できない。
ウ.請求人は、意見書の2(1)<引用文献5(特開平4-112640号公報)との組合せについて>において、「したがって、引用文献5のエンドキャップ加締め片2a6は、全周にわたってエンドキャップ2bと完全に重なることはありません(第9図)。引用文献1では、機械的接合部分に幾何学的、構造上の凹凸が生じると、浸透する液体に対して十分な保護が得られない旨記載され(引用文献1の第2頁第1段落)、その記載に対する技術的齟齬のため、当業者は引用文献1と引用文献5を組み合わせるとは考えません。」と主張している。
しかしながら、引用文献5に記載されたエンドキャップ加締め片2a6が、全周にわたってエンドキャップ2bと完全に重なることがなく、「流体的封止的連結」を形成していないとしても、引用文献5(特に前記第4 5(2)参照。)の記載から、ヨーク2の成形工程において、治具30によりバーリング加工をすることによって、成形体21にエンドキャップ加締め片2a6及びエンドキャップ支持面2a5とエンドキャップ当接突起2a3とを設けること、つまりプレス装置により段付き部を形成することが把握でき、この段付き部の形成方法は、エンドキャップ2bとヨーク2との間に「流体封止的連結」を形成しているか否かとは技術的に直接は関連のないものであるから、この段付き部の形成方法に接した当業者であれば、前記「流体封止的連結」がされているか否かとは切り離して、段付き部の形成方法に関する技術を認識し、その採用を試み得るものである。
そうすると、引用文献1に、浸透する液体に対して十分な保護を得ることが課題として記載されており、引用文献5に記載されたエンドキャップ加締め片2a6が、全周にわたってエンドキャップ2bと完全に重なることがないとしても、そのことをもって、引用文献5から前記周知の事項2を認識できないとはいえないし、引用発明におけるベアリング保護板7を、ポールチューブ1のチューブ末端6aに圧着するにあたり、前記周知の事項1とともに、段付き部の形成方法として、前記周知の事項2を採用することが妨げられるものではない。
したがって、請求人の前記主張は採用できない。
エ.請求人は、意見書の2(1)<引用文献1、引用文献5と引用文献2~引用文献4のいずれかの組合わせについて>において、「引用文献5は、エンドキャップ加締め片2a6により、エンドキャップ2bをハウジング(筒状体)2aに容易に中心を合わせることができることを明示的に開示している。したがって、引用文献5は、エンドキャップ加締め片2a6の明確な利点を教示し、エンドキャップ加締め片2a6の設計上不利な点は開示されていません。それゆえ,当業者が,なぜエンドキャップ加締め片2a6の利点を放棄してまで、引用文献5の技術事項を改変して本願請求項1の発明にまで至るように発展させる理由が明らかではありません。したがって、引用文献1及び引用文献5に基づけば、当業者は、引用文献5で述べられた利点および規格を無視しないで、液体封止手段という技術的タスクに対する解決策を模索することになり、当業者は、2つのエンドキャップ加締め片2a6を全周にわたる環状壁にして圧着する構成に変更するために、引用文献5の発明思想を放棄することはないと考えられます。」と主張している。
しかしながら、引用文献5は、管状部材の管端部に段付き部を形成する際、プレス装置を用いることが周知の事項(前記周知の事項2)であることを示し、段付き部をプレス装置に供給することにより形成することが容易に想到できることを示すために引用したものであって、引用文献1の記載から「流体封止的連結」を形成することが把握できる、引用発明のベアリング保護板7とポールチューブ1のチューブ末端6aとの固定箇所における圧着に、引用文献5に記載されたエンドキャップ加締め片2a6を用いることや、該エンドキャップ加締め片2a6を用いた上で更にその改変を行うことが容易であることを根拠に、本願発明の進歩性を否定するものではない(前記(1)に記載したように、引用発明におけるベアリング保護板7とポールチューブ1のチューブ末端6aとの固定箇所における圧着に、前記周知の事項1及び前記周知の事項2を採用することを根拠に、本願発明の進歩性を否定するものである。)。
したがって、請求人の前記主張は、その前提に誤りがあり、採用できない。
オ.請求人は、意見書の2(1)<引用文献1、引用文献5と引用文献2~引用文献4のいずれかの組合わせについて>において、「引用文献5は、段部を生成するためにプレス装置(型押し用治具30)の使用を開示している唯一の文献です。しかしながら、D5は、絞り加工が不均一な表面をもたらす問題点について開示しています(第2頁右下欄)。一方、引用文献2、3及び4はすべて、絞り加工により形成されたハウジングについて開示しています。したがって、引用文献5は、当業者が引用文献5を引用文献2、3及び4のいずれかと組み合わせることを検討することを妨げる阻害要因を開示しています。したがって、絞り加工により形成されたハウジングと別個のプレス装置(型押し治具)の組み合わせについては、いずれの引用文献にも言及または示唆しておらず、組み合わせの動機づけがありません。引用文献2、3及び4は、ハウジングに段部を生成するための絞り加工と切削加工を開示しているだけです。引用文献5は、ハウジング(筒状体)の機械的相互接続を固定する役割も果たすため、プレス装置(型押し治具)を使用します(「成形体21が長さ方向と同方向に押圧されるので、前記凸側円弧20fと前記凹側円弧21gが強固に密着した状態で」(第4頁左下欄~右下欄))。したがって、絞り加工と切削加工で段部を生成する引用文献2,3及び4の開示事項が、プレス装置(型押し治具)による加工に容易に置き換えられることができることは明らかではありません。よって、絞り加工で形成されたハウジングを検討する場合、プレス装置(型押し治具)の使用は容易に考えられません。」と主張している。
しかしながら、前記イに記載したように、引用文献2~引用文献4に記載されたハウジングと別体の端板との取り付け方法に接した当業者であれば、ハウジングが絞り加工により形成されているか否かによらず、ハウジングと端板との取り付け方法に関する技術を認識し、その採用を試み得るものである。
そうすると、引用文献5に絞り加工の問題点が記載されており、引用文献2~引用文献4から把握されるハウジングが絞り加工により形成され、あるいは絞り加工により形成されていると解する余地があるとしても、そのことをもって、引用文献5から認識される前記周知の事項2と、引用文献2~引用文献4から認識される前記周知の事項1とがともに用いられることが妨げられるものではない。
したがって、請求人の前記主張は採用できない。
(3)本願発明の作用効果について
本願発明の作用効果は、引用発明、前記周知の事項1及び前記周知の事項2から当業者が予測できる範囲のものである。
3.まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、前記周知の事項1及び前記周知の事項2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、この出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2021-010198