特許拒絶査定不服審判
2021-010159
装置、方法、プログラム、システム、およびコンピュータ可読ストレージ媒体
- 審判番号
- 2021-010159
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-123857
- 請求日
- 2021年07月30日
- 審決日
- 2022年09月06日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】インテル・コーポレーション
- 【請求人代理人】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 須田 勝巳
- 審判官 林 毅
- 審判官 篠原 功一
- 分類
- P18 .121-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-123857「装置、方法、プログラム、システム、およびコンピュータ可読ストレージ媒体」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月31日出願公開、特開2019-192287、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)年12月26日を国際出願日とする特願2016-532604号の一部を、平成29年11月27日に新たな特許出願とした特願2017-226906号の一部を、令和元年7月2日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は次のとおりである。
令和元年 8月 1日 :手続補正書の提出
令和2年 9月10日付け:拒絶理由通知書
令和2年12月11日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 3月24日付け:拒絶査定(原査定)
令和3年 7月30日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和4年 4月27日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知書
令和4年 7月19日 :意見書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和3年3月24日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1ないし17に係る発明は、以下の引用文献AないしCに記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(引用文献等一覧)
A 特開2010-61606号公報
B PCI Express(R) Base Specification Revision 3.0,
2010年11月10日,pp.210-212
C 国際公開第2010/103564号
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
本願請求項1ないし15に係る発明は、以下の引用文献1及び2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(引用文献等一覧)
1 特開2010-61606号公報(原査定の引用文献A)
2 PCI Express(R) Base Specification Revision 3.0,
2010年11月10日,pp.41,42,193,204,205,210-212,314,778
(原査定の引用文献B、ただし、引用箇所が異なる。)
第4 本願発明
本願請求項1ないし15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明15」という。)は、令和3年7月30日に提出された手続補正書に係る手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定される発明であり、このうち、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「 装置であって、
フレーミングトークンを有する物理層シンボルを、複数のレーンを有するリンクによって受信するための受信機であって、前記フレーミングトークンは、前記フレーミングトークンの定義されたレイアウトに従った物理層シンボルの定義されたシーケンスを含み、前記定義されたレイアウトは、前記定義されたシーケンスに含まれる各物理層シンボルに適用される値を定義し、各物理層シンボルは、それぞれの8ビットのデータを含み、前記フレーミングトークンは、STP(start of transaction layer packet)フレーミングトークン、EDB(end bad)フレーミングトークン、SDP(a start of data link layer packet)トークン、またはEDS(an end of data stream)フレーミングトークンのうちの1つである、受信機と、
前記複数のレーンのうちの1つの特定のレーン上で受信される、フレーミングトークンの受信した物理層シンボルが、前記定義されたレイアウトに基づいて前記フレーミングトークンの予期される物理層シンボルと一致しないことを決定し、前記受信した物理層シンボルにおける値が前記予期される物理層シンボルにおける対応する値と一致しないことに基づいて前記特定のレーン上でエラーを識別するためのエラー検出ロジックと、
前記エラー検出ロジックが前記エラーを検出する場合、前記特定のレーンのためのレーンエラー状態(LES)レジスタにおいて前記エラーを報告するためのエラー報告ロジックと、を備える
装置。」
なお、本願発明2ないし6は、本願発明1を減縮するものであり、本願発明7は、本願発明1を方法の発明として特定したものであり、本願発明8は、本願発明1をシステムの発明として特定したものであり、本願発明9は、本願発明1を「ポイントツーポイントシリアル相互接続リンクと、第1のデバイスと、前記ポイントツーポイントシリアル相互接続リンクにより前記第1のデバイスに連結される第2のデバイスと、を備えるシステム」として特定したものであり、本願発明10ないし15は、本願発明9を減縮するものである。
第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
当審拒絶理由に引用された引用文献1(原査定の引用文献A)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は、強調のため当審が付与した。(以降においても同様。)
ア 「【0026】
図2は、PCI Expressバスの階層を示した図である。PCI Expressバスは、物理レイヤ、リンクレイヤ、トランザクションレイヤ、ソフトウェアレイヤを含む。ソフトウェアからのデータを基に、トランザクションレイヤでヘッダ情報を加えたパケットが作られ、データリンクレイヤでそのパケットのシーケンス番号とデータ保障のためのCRC(Cyclic Redundancy Check)コードが付加される。そしてそのパケットは、物理レイヤで8b/10b変換されてシリアルバスでデータ転送される。
【0027】
図3は、PCI Expressバスにおける各レーンへのデータ分配方法を示す図である。図3に示すように、PCI Expressバスは、複数バイトのデータ転送を行う場合、送信側でデータリンクレイヤで各バイトにシーケンス番号を付加し、物理レイヤで各バイトを各レーンに順番に分配する。受信側では、物理レイヤが分配されたデータを受信すると、データリンクレイヤが各バイトに付けられたシーケンス番号に基づき、受信データを元のデータに復元する。」
イ 「【0028】
次に、本発明の第1の実施の形態の構成について図面を参照して説明する。【0029】
図6は、PCIバスシステム100の構成を示す図である。
【0030】
PCIバスシステム100は、PCIカード200と、マザーボード400と、レーン0~7とを含む。
【0031】
PCIカード200は、コントローラ202と、障害検出部203と、切替制御部204と、切替部205と、Port220~227とを含む。
【0032】
コントローラ202は、ファームウェアで制御され、PCIカード200を制御する。コントローラ202は、マザーボード400のPCIコントローラ401と使用するレーンを決定するネゴシエーション及びデータ転送を行う。【0033】
障害検出部203は、レーン毎に、PCI Expressの仕様(PCI Express Base Specification)に基づいた障害検出を行う。例えば、受信したパケットが決められたフォーマットになっていないこと、または、パケットのデータが異常である(Poisoned TLP Recieved等)ことを、レーン障害として検出する。また、受信したパケットでCRCエラーを検出した場合や、要求したパケットに対する応答が規定時間内に無かった場合も、レーン障害として検出する。障害検出部203は、ファームウェア制御により、障害を検出した場合に、切替制御部204にレーン切替の指示を出し、レーンの切替を実施する。」
(当審注:【0033】に記載の「Poisoned TLP Received」は「Poisoned TLP Received」の誤記と認められるので、これ以降は正しい標記に読み替える。)
ウ 「【0037】
切替部205は、送受信回路210~217を含む。」
(2)引用発明
上記(1)イの【0030】等より、引用文献1には、“PCIカード200と、マザーボード400と、レーン0~7とを含むPCIバスシステム100におけるPCIカード200”の発明が記載されているといえる。
よって、上記(1)の特に下線部に着目すれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 PCIカード200と、マザーボード400と、レーン0~7とを含むPCIバスシステム100におけるPCIカード200において、
PCI Expressバスは、物理レイヤ、リンクレイヤ、トランザクションレイヤ、ソフトウェアレイヤを含み、ソフトウェアからのデータを基に、トランザクションレイヤでヘッダ情報を加えたパケットが作られ、データリンクレイヤでそのパケットのシーケンス番号とデータ保障のためのCRCコードが付加され、そのパケットは、物理レイヤで8b/10b変換されてシリアルバスでデータ転送され、
PCI Expressバスは、複数バイトのデータ転送を行う場合、送信側でデータリンクレイヤで各バイトにシーケンス番号を付加し、物理レイヤで各バイトを各レーンに順番に分配し、受信側では、物理レイヤが分配されたデータを受信すると、データリンクレイヤが各バイトに付けられたシーケンス番号に基づき、受信データを元のデータに復元し、
PCIカード200は、コントローラ202と、障害検出部203と、切替制御部204と、切替部205と、Port220~227とを含み、
障害検出部203は、レーン毎に、PCI Expressの仕様(PCI Express Base Specification)に基づいた障害検出を行い、受信したパケットが決められたフォーマットになっていないこと、または、パケットのデータが異常である(Poisoned TLP Received等)ことを、レーン障害として検出し、
障害検出部203は、ファームウェア制御により、障害を検出した場合に、切替制御部204にレーン切替の指示を出し、レーンの切替を実施し、
切替部205は、送受信回路210~217を含む、
PCIカード200。」
2 引用文献2について
当審拒絶理由に引用された引用文献2(原査定の引用文献B)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
a 第193頁Figure 4-3
「
[図:0001388922000001.jpg]
」
(当審訳は省略)
b 第204頁Table 4-2
「
[図:0001388922000002.jpg]
」
(当審訳は省略)
c 第204頁第9~15行
「4.2.2.3.1. Framing Tokens
The Framing Tokens used by the Physical Layer are shown in Table 4-2. Each Framing Token specifies or implies the number of Symbols associated with the Token and therefore the location of the next Framing Token. Figure 4-15 shows an example of TLPs, DLLPs, and IDLs transmitted on a x8 link. The first Framing Token of a Data Stream is always located in Symbol 0 of Lane 0 of the first Data Block of the Data Stream. For the rest of this chapter, the terms Framing Token and Token are used interchangeably.」
(当審訳)
「4.2.2.3.1 フレーミングトークン
物理層で使用されるフレーミングトークンを表4-2に示す。各フレーミングトークンは、トークンに関連するシンボルの数を指定または暗示し、したがって次のフレーミングトークンの位置を示す。図4-15は、x8リンクで伝送されるTLP、DLLP及びIDLの例である。データストリームの最初のフレーミングトークンは、常にデータストリームの最初のデータブロックのレーン0のシン ボル0に配置される。この章の残りの部分では、フレーミングトークンとトークンという用語は互換的に使用される。」
d 第205頁Figure 4-13
「
[図:0001388922000003.jpg]
」
(当審訳は省略)
e 第210頁第18~21行
「4.2.2.3.3. Receiver Framing Requirements
The following requirements apply to the received Data Stream and the Block type transitions that occur at the beginning and end of the Data Stream.
When processing Symbols that are expected to be a Framing Token, receiving a Symbol or sequence of Symbols that does not match the definition of a Framing Token is a Framing Error.」
(当審訳)
「4.2.2.3.3. 受信フレーミング要求
受信したデータストリームと、データストリームの先頭と末尾で発生するブロックタイプ遷移には、以下の要件が適用される。
フレーミングトークンとして期待されるシンボルを処理する場合、フレーミングトークンの定義に合致しないシンボルまたはシンボルのシーケンスを受信するとフレーミングエラーとなる。」
f 第212頁第18~33行
「□ While processing the Data Stream, Receivers must also check the Block type received by each Lane, after accounting for Lane-to-Lane de-skew, for the following conditions:
・Receiving an Ordered Set Block on any Lane immediately following an SDS Ordered Set is a Framing Error.
・Receiving a Block with an undefined Block type (a Sync Header of 11b or 00b) is a Framing Error. The Receiver may optionally report the error in the Lane Error Status register.
・Receiving an Ordered Set Block on any Lane without receiving an EDS token in the preceding Block is a Framing Error. For example, receiving a SKP Ordered Set without a preceding EDS Token is a Framing Error. In addition, receiving a SKP Ordered Set followed immediately by another Ordered Set Block (including another SKP Ordered Set) within a Data Stream is a Framing Error.
・Receiving a Data Block on any Lane when the previous block contained an EDS Token is a Framing Error.
・Receivers may optionally check for different Ordered Sets on different Lanes. For example, Lane 0 receives a SKP Ordered Set and Lane 1 receives an EIOS. If checked, receiving different Ordered Sets is a Framing Error.」
(当審訳)
「□ 受信機は、データストリームを処理する際に、レーン間のデスキューを考慮した上で、各レーンが受信したブロックの種類を以下の条件で確認する必要がある:
・SDSオーダーセットの直後のレーンにオーダーセットブロックを受信した場合、フレーミングエラーとなる。
・未定義のブロックタイプ(11bまたは00bのシンクヘッダ)のブロックを受信することはフレーミングエラーとなる。受信機はオプションでレーンエラー状態レジスタにエラーを報告することができる。
・先行するブロックでEDSトークンを受信せずに、いずれかのレーンでオーダーセットブロックを受信することは、フレーミングエラーとなる。例えば、先行するEDSトークンのないSKPオーダードセットを受信することは、フレーミングエラーとなる。さらに、データストリーム内でSKPオーダードセットに続いて別のオーダードセットブロック(別のSKPオーダードセットを含む)を受信することは、フレーミングエラーとなる。
・直前のブロックにEDSトークンが含まれている場合に、任意のレーンでデータブロックを受信すると、フレーミングエラーとなる。
・受信機はオプションとして、レーンごとに異なるオーダードセットをチェックすることができる。例えば、レーン0がSKPオーダードセットを受信し、レーン1がEIOSを受信する。チェックされた場合、異なるオーダードセットを受信することはフレーミングエラーとなる。」
g 第314頁第17~24行
「The Data Parity bit in Table 4-15 is the even parity of the payload of all the Data Blocks transmitted after scrambling since the last SDS Ordered Set or SKP Ordered Set, whichever Ordered Set was transmitted most recently. The Data Parity bit is calculated for each Lane independently. Receivers are required to calculate the parity using the same method as Transmitters and compare the calculated result with the received Data Parity bit. If the calculated and received values do not match, the bit in the Lane Error Status register, corresponding to the default Lane number where the mismatch was detected, must be set. However, such a mismatch is not a Receiver Error and must not cause a Link retrain.」
(当審訳)
「表4-15のデータパリティビットは、最後に送信されたSDSオーダードセットまたはSKPオーダードセット(いずれか直近のオーダードセット)からスクランブル後に送信されたすべてのデータブロックのペイロードの偶数パリティである。データパリティビットは、各レーンに対して独立して計算される。受信機は、送信機と同じ方法でパリティを計算し、計算結果と受信したデータパリティビットを比較する必要がある。計算値と受信値が一致しない場合、不一致が検出されたデフォルトレーン番号に対応するレーンエラー状態レジスタのビットを設定する必要がある。しかし、このような不一致は受信機エラーではなく、リンクのリトレインを引き起こしてはならない。」
h 第778頁第1~4行
「7.27.3. Lane Error Status Register (Offset 08h)
The Lane Error Status register consists of a 32-bit vector, where each bit indicates if the Lane with the corresponding Lane number detected an error. This Lane number is the default Lane number which is invariant to Link width and Lane reversal negotiation that occurs during Link training.」
(当審訳)
「7.27.3 レーンエラー状態レジスタ(オフセット08h)
レーンエラー状態レジスタは32ビットベクトルで構成され、各ビットは対応するレーン番号のレーンがエラーを検出したかを示す。このレーン番号はデフォルトのレーン番号であり、リンクトレーニング中に発生するリンク幅やレーン反転のネゴシエーションに影響を受けない。」
3 引用文献Cについて
原査定に引用された引用文献Cには、図面とともに、以下の事項が記載されている。
「[0002] 情報処理システムの送受信装置において、Point to Pointで接続されるシリアルインターフェースを複数束ねた送受信ポートの間においてデータ伝送を行う伝送方式が採用されている。Point to Pointで接続されるシリアルインターフェースとしては、例えば、PCI(Peripheral Component Interconnect)-Expressが代表的である。シリアルインターフェースにおける、このようなポート間における接続線は、一般に、レーンと呼ばれる。」
「[0056] 受信ポート20は、送信ポート10から送信されたデータを受信する。このために、受信ポート20は、図3に示すように、受信切替制御部21、受信切替選択部22、エラー検出部23、受信エラーレーンレジスタ24、受信処理部25、受信データ変換部26を備える。
[0057] 受信ポート20が受信したデータは、前述したように、送信データ、又は、テストパターンのいずれかである。送信データは、受信データ変換部26により変換され、受信処理部25により出力される。テストパターンは、エラー検出部23に送信されレーンのエラー検出に用いられる。」
「[0063] エラー検出部23は、受信切替選択部22からテストパターンを受信して、テストパターンとレーンとの対応に従って、複数のグループにおいて相互に対応するレーンを介して受信したテストパターンの同一位置のビットを比較し、比較の結果に基づいて、複数のレーンの中でエラーが発生したレーンであるエラーレーンを示すエラーレーン情報を生成する。エラー検出部23は、エラーレーン情報を、送信デバイス1の送信エラーレーンレジスタ14に送信する。」
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「PCIカード200」は、後述する相違点を除いて、本願発明1の「装置」に相当する。
イ 引用発明において、「PCIカード200」の「切替部205」は、「送受信回路210~217」を含み、少なくとも「受信」機能を備える機能手段であるから、「受信機」といい得るものである。
ウ 引用発明の「物理レイヤ」は、本願発明1の「物理層」に相当する。
エ 上記ウを参酌すれば、引用発明の「物理レイヤ」で各「レーン」に分配されて受信される各「バイト」と、本願発明1の「フレーミングトークンを有する物理層シンボル」とは、「物理層データ単位」である点において共通する。
オ 引用発明の「レーン0~7」は、本願発明1の「複数のレーン」に相当する。
カ 上記イないしオを参酌すれば、引用発明の「切替部205」(受信機)は、各「バイト」(物理層データ単位)を「レーン0~7」(複数のレーン)によって受信するためのものといえる。
キ よって、上記イないしカを参酌すれば、引用発明の「切替部205」と、本願発明1の「フレーミングトークンを有する物理層シンボルを、複数のレーンを有するリンクによって受信するための受信機」とは、「物理層データ単位を、複数のレーンによって受信するための受信機」である点において共通する。
ク 引用発明の「バイト」は、8ビットのデータであることは、本願出願前の技術常識であるところ、各「バイト」は“それぞれの8ビットのデータを含”むものといえる。
よって、上記エを参酌すれば、引用発明において、各「バイト」が“それぞれの8ビットのデータを含”むことと、本願発明1の「各物理層シンボルは、それぞれの8ビットのデータを含」むこととは、「各物理層データ単位は、それぞれの8ビットのデータを含」むことにおいて共通する。
ケ 引用発明において、「PCIカード200」の「障害検出部203」は、「レーン毎に、PCI Expressの仕様(PCI Express Base Specification)に基づいた障害検出」を行うものであり、具体的には、「受信したパケットが決められたフォーマットになっていないこと、または、パケットのデータが異常である(Poisoned TLP Received等)ことを、レーン障害として検出」するものである。
また、引用発明において、「PCI Expressバスは、物理レイヤ、リンクレイヤ、トランザクションレイヤ、ソフトウェアレイヤを含み、ソフトウェアからのデータを基に、トランザクションレイヤでヘッダ情報を加えたパケットが作られ、データリンクレイヤでそのパケットのシーケンス番号とデータ保障のためのCRCコードが付加され、そのパケットは、物理レイヤで8b/10b変換されてシリアルバスでデータ転送され」る構成を備えること、及び、前記カを参酌すれば、「レーン」から受信されるものは「バイト」であるから、引用発明の「受信したパケット」には「バイト」が含まれる。
よって、引用発明の「障害検出部203」は、“複数のレーンのうちの1つの特定のレーン上で受信されるバイト”を対象として「障害検出」する機能を備え、当該機能は、特定のレーン上で障害を検出(認識)するための“ロジック”といい得るものである。
さらに、引用発明における「障害」は“エラー”に含まれるから、引用発明の「障害検出部203」は、“特定のレーン上でエラーを識別するためのエラー検出ロジック”といい得るものである。
以上より、また、上記エを参酌すれば、引用発明の「障害検出部203」と、本願発明1の「前記複数のレーンのうちの1つの特定のレーン上で受信される、フレーミングトークンの受信した物理層シンボルが、前記定義されたレイアウトに基づいて前記フレーミングトークンの予期される物理層シンボルと一致しないことを決定し、前記受信した物理層シンボルにおける値が前記予期される物理層シンボルにおける対応する値と一致しないことに基づいて前記特定のレーン上でエラーを識別するためのエラー検出ロジック」とは、「前記複数のレーンのうちの1つの特定のレーン上で受信される、受信した物理層データ単位について、前記特定のレーン上でエラーを識別するためのエラー検出ロジック」である点において共通する。
コ 引用発明の「障害検出部203」は「ファームウェア制御により、障害を検出した場合に、切替制御部204にレーン切替の指示を出し、レーンの切替を実施」するものであり、ここで、「切替制御部204にレーン切替の指示を出」すことは、「切替制御部204」において前記障害(エラー)を報告することに等しい。
そして、「障害検出部203」は、前記ケで述べたことに加え、前記障害(エラー)を報告するための“ロジック”としても機能しているといえる。
よって、引用発明の「障害検出部203」と、本願発明1の「前記エラー検出ロジックが前記エラーを検出する場合、前記特定のレーンのためのレーンエラー状態(LES)レジスタにおいて前記エラーを報告するためのエラー報告ロジック」とは、「前記エラー検出ロジックが前記エラーを検出する場合、前記エラーを報告するためのエラー報告ロジック」である点において共通する。
(2)一致点、相違点
したがって、本願発明1と引用発明とは、次の点において一致ないし相違する。
・一致点
「 装置であって、
物理層データ単位を、複数のレーンによって受信するための受信機であって、各物理層データ単位は、それぞれの8ビットのデータを含む、受信機と、
前記複数のレーンのうちの1つの特定のレーン上で受信される、受信した物理層データ単位について、前記特定のレーン上でエラーを識別するためのエラー検出ロジックと、
前記エラー検出ロジックが前記エラーを検出する場合、前記エラーを報告するためのエラー報告ロジックと、を備える
装置。」
・相違点
(相違点1)
共通点である「物理層データ単位」が、本願発明1においては「物理層シンボル」であるのに対し、引用発明は「バイト」である点。
(相違点2)
本願発明1は、「複数のレーンを有するリンク」によって受信を行うのに対し 、引用発明は、当該構成を具体的に特定していない点。
(相違点3)
本願発明1は、「物理層シンボル」が「フレーミングトークン」を有するものであり、「前記フレーミングトークン」は「前記フレーミングトークンの定義されたレイアウトに従った物理層シンボルの定義されたシーケンスを含み、前記定義されたレイアウトは、前記定義されたシーケンスに含まれる各物理層シンボルに適用される値を定義」し、「STP(start of transaction layer packet)フレーミングトークン、EDB(end bad)フレーミングトークン、SDP(a start of data link layer packet)トークン、またはEDS(an end of data stream)フレーミングトークンのうちの1つである」のに対し、引用発明は、「フレーミングトークン」についての構成を備えない点。
(相違点4)
「エラー検出ロジック」による「前記特定のレーン上でエラーを識別する」ことが、本願発明1においては、「フレーミングトークンの受信した物理層シンボルが、前記定義されたレイアウトに基づいて前記フレーミングトークンの予期される物理層シンボルと一致しないことを決定し、前記受信した物理層シンボルにおける値が前記予期される物理層シンボルにおける対応する値と一致しないことに基づいて」いるのに対し、引用発明は、当該構成を備えない点。
(相違点5)
「エラー報告ロジック」が、本願発明1においては、「前記特定のレーンのためのレーンエラー状態(LES)レジスタにおいて」なされるのに対し、引用発明は、当該構成を備えない点。
(3)相違点についての判断
事案に鑑みて、先に、エラーの検出及び報告に関連する上記相違点4及び5についてまとめて検討する。
引用文献2には、「PCI expressの仕様」として、上記第5の2のaないしdに記載のように、物理層で受信されるシンボルのレイアウトとして種々の「フレーミングトークン」が規定され、また、同eには、「フレーミングトークンとして期待されるシンボルを処理する場合、フレーミングトークンの定義に合致しないシンボルまたはシンボルのシーケンスを受信するとフレーミングエラーとなる」ことが規定されており、さらに、同gには、「計算値と受信値が一致しない場合、不一致が検出されたデフォルトレーン番号に対応するレーンエラー状態レジスタのビットを設定する」と記載されているように、「レーン障害」を「レーンエラー状態レジスタ」に設定すなわち報告することが規定されている。
ここで、引用発明の「障害検出部203」は「レーン毎に、PCI Expressの仕様(PCI Express Base Specification)に基づいた障害検出を行い、受信したパケットが決められたフォーマットになっていないこと、または、パケットのデータが異常である(Poisoned TLP Received等)ことを、レーン障害として検出」するものであるから、当業者が引用発明を理解又は具体化しようとする場合に、「PCI Expressの仕様」である引用文献2に記載された上記の事項、特に、「障害検出」及び「レーン障害」に関する事項を参酌し、適用することは当然に行うものと認められる。
しかしながら、引用文献2には、上記第5の2のfのとおり、種々の「フレーミングエラー」の事例が規定されているものの、「レーンエラー状態レジスタ」を使用することについては、「未定義のブロックタイプ(11bまたは00bのシンクヘッダ)のブロックを受信することはフレーミングエラーとなる。受信機はオプションでレーンエラー状態レジスタにエラーを報告することができる。」と、「未定義のブロックを受信する」場合に生じる「フレーミングエラー」について、かつ、「オプション」として「レーンエラー状態レジスタ」に報告され得ることが規定されているのみであるから、「フレーミングエラー」全般について「レーンエラー状態レジスタ」に報告することは、少なくとも引用文献2に記載の「PCI Expressの仕様」において必須の構成として想定しているとはいえない。
そして、上記相違点4及び5に係る本願発明1の構成は、要するに、「フレーミングトークン」に関するエラーを検出して、当該エラーを「レーンエラー状態(LES)レジスタ」に報告する、というものであるところ、引用文献2の「オプション」に関する上記記載のみを参酌し、かかる構成を引用発明から想到することは当業者といえども困難であるというべきである。
また、上記相違点4及び5に係る本願発明1の構成は、本願出願前の技術常識であったとも認められない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 本願発明2ないし6について
本願発明2ないし6は、本願発明1を減縮するものであり、上記相違点4及び5に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 本願発明7について
本願発明7は、本願発明1を方法の発明として特定したものであり、上記相違点4及び5に係る本願発明1の構成に対応する技術事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 本願発明8について
本願発明8は、本願発明1をシステムの発明として特定したものであり、上記相違点4及び5に係る本願発明1の構成に対応する技術事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
5 本願発明9について
本願発明9は、本願発明1を「ポイントツーポイントシリアル相互接続リンクと、第1のデバイスと、前記ポイントツーポイントシリアル相互接続リンクにより前記第1のデバイスに連結される第2のデバイスと、を備えるシステム」の発明として特定したものであり、上記相違点4及び5に係る本願発明1の構成に対応する技術事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
6 本願発明10ないし15について
本願発明10ないし15は、本願発明9を減縮するものであり、上記相違点4及び5に係る本願発明1の構成に対応する技術事項を備えるものであるから、本願発明9と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
以上のとおりであるから、当審拒絶理由は、妥当ではない。
第7 原査定についての判断
本願発明1ないし15は、上記相違点4及び5に係る本願発明1の、「フレーミングトークン」に関するエラーを検出して、当該エラーを「レーンエラー状態(LES)レジスタ」に報告する、という構成又はこれに対応する技術事項を有し、当該構成又は技術事項は、原査定における引用文献AないしC(当審拒絶理由における引用文献1及び2を含む。)には記載されておらず、本願出願前における周知技術でもない。
なお、引用文献Cには、PCI-Expressに関して、テストパターンにおいて、複数のレーンの中でエラーが発生したレーンであるエラーレーンを示すエラーレーン情報を、送信エラーレーンレジスタに送信(報告)することが記載されているが、上記「テストパターン」が「フレーミングトークン」であることは、引用文献Cには記載も示唆もなく、引用文献2に記載の「PCI expressの仕様」を参酌してもそのことが自明とはいえない。すなわち、引用文献Cには、「フレーミングトークン」において検出されたエラーを「レーンエラー状態(LES)レジスタ」に報告することは記載されていない。
よって、本願発明1ないし15は、当業者であっても、原査定における引用文献AないしCに記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-010159