2021-009125
粘着剤組成物及び表面保護フィルム
- 審判番号
- 2021-009125
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-556595外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年07月08日
- 審決日
- 2022年07月05日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (C09J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)7月25日(優先権主張 平成30年11月6日)を国際出願日とする出願であって、令和2年11月24日に手続補正がされ、令和3年2月19日付けで拒絶理由が通知され、同年3月25日に意見書の提出と共に手続補正がされ、同年4月30日付けで拒絶査定がされ(謄本発送は同年5月18日)、同年7月8日に本件審判請求がされたものである。
第2 本願発明など
1 本願の請求項1~7に係る発明は、令和3年3月25日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~7の記載により特定されるものであるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「水酸基を有するウレタン樹脂(A)、硬化剤(B)及び酸化防止剤を含み、前記ウレタン樹脂(A)が、ポリオール(a1)及びポリイソシアネート(a2)の反応物であり、 前記ポリイソシアネート(a2)が、イソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネート(a2-2)を含むものであり、前記ポリオール(a1)は、炭素原子数が4以上であるオキシアルキレン単位を10質量%以上の割合で有するポリエーテルポリオールを含み、前記酸化防止剤の含有量は、前記ウレタン樹脂(A)100質量部に対して、0.5質量部以上3質量部以下であることを特徴とする粘着剤組成物。」
2 本件明細書の記載
本件明細書には、次の記載がある。
(1)「【0057】前記粘着剤組成物は、さらに酸化防止剤を含むことが好ましい。前記酸化防止剤としては、1種又は2種類以上を用いることができ、例えば、ヒンダードフェノール化合物等の一次酸化防止剤;リン化合物、イオウ化合物等の二次酸化防止剤等が挙げられる。【0058】前記ヒンダードフェノール化合物としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ベンゼンプロパン酸-3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-C7-C9側鎖アルキルエステル、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、N-フェニルベンゼンアミンと2,4,4-トリメチルペンテンとの反応生成物、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、3,9-ビス[2-〔3-(t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,5-ジ-tert-アミルハイドロキノン等が挙げられる。続きを表示(全12行)【0059】前記リン化合物としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、トリフェニルホスフィン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)=エチル=ホスフィット、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジブチル-5-メチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2-第三ブチル-4-(3-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル〕ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4’-n-ブチリデンビス(2-ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4-ジブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10-ジハイドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、2,2’-メチレンビス(4,6-ブチルフェニル)-2-エチルヘキシルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ブチルフェニル)-オクタデシルホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2-〔(2,4,8,10-テトラキスブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ〕エチル)アミン、2-エチル-2-ブチルプロピレングリコールと2,4,6-トリブチルフェノールのホスファイト等が挙げられる。【0060】前記イオウ化合物としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、ジドデシル-3,3’-チオプロピオネート、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ラウジリルチオジチオネート、ジトリデシル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート、テトラキス-メチレン-3-ラウリルチオプロピオネートメタン、ジステアリル-3,3’-メチル-3,3’-チオジプロピオネート、ラウリルステアリル-3,3’-チオジプロピオネート、ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル]スルフィド、β-ラウリルチオプロピオネート、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプト-5-メチルベンゾイミダゾール、ジオクタデシル-3,3’-チオジプロチオネート等が挙げられる。【0061】なかでも、ヒンダードフェノール化合物等の一次酸化防止剤が好ましい。【0062】前記酸化防止剤の含有量は、前記ウレタン樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。」
(2)「【0080】(製造例1:ウレタン樹脂(I)の製造)撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量:1,971.9、水酸基価:56.9)488.84質量部を加え、均一に混合した後、イソシアネート基を3つ有するビウレット(旭化成株式会社製「デュラネート24A-100」、NCO%;23.5質量%、以下「24A-100」と略記する。)10.64質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.06質量部を加え、攪拌しながら100℃で約4時間反応させ、イソシアネート基の消失を確認することによって、分子末端に水酸基を有する分岐したウレタンプレポリマー(固形分100%)を得た。【0081】続きを表示(全52行)次いで、前記方法で得られたウレタンプレポリマーを50℃まで冷却し、メチルエチルケトン131.85質量部を加え、均一に混合した後、イソシアネート基を2つ有するヘキサメチレンジイソシアネート28.35質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.12質量部を加え、攪拌しながら75℃で約8時間反応させ、イソシアネート基の消失を確認後に、メチルエチルケトン395.86質量部を加え、室温まで冷却し、ウレタン樹脂(I)のメチルエチルケトン溶液(固形分50%)を得た。このウレタン樹脂(I)のGPCによる分子量分布は、重量平均分子量が63,836に極大値を有する1つのピークのみが検出され、数平均分子量(Mn)は9,105、重量平均分子量(Mw)は63,836、分子量分散度(Mw/Mn)は7.01であった。また、モル比(NCO/水酸基)は、0.80であった。【0082】(製造例2:ウレタン樹脂(II)の製造)撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量:1,971.9、水酸基価:56.9)575.37質量部を加え、均一に混合した後、イソシアネート基を2つ有するヘキサメチレンジイソシアネート34.31質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.13質量部を加え、攪拌しながら90℃で約2時間反応させ、イソシアネート基の消失を確認することによって、分子末端に水酸基を有する直鎖のウレタンプレポリマー(固形分100%)を得た。【0083】次いで、前記方法で得られたウレタンプレポリマーを50℃まで冷却し、メチルエチルケトン155.55質量部を加え、均一に混合した後、「24A-100」12.91質量部を加え、攪拌しながら75℃で約8時間反応させ、イソシアネート基の消失を確認後に、メチルエチルケトン259.46質量部を加え、室温まで冷却し、ウレタン樹脂(II)のメチルエチルケトン溶液(固形分50%)を得た。このウレタン樹脂(II)のGPCによる分子量分布は、重量平均分子量が1,190,946に極大値を有するピークAと重量平均分子量が56,129に極大値を有するメインピークBの2つのピークが検出され、メインピークBの数平均分子量(Mn)は7,524、重量平均分子量(Mw)は56,129、分子量分散度(Mw/Mn)は7.46であった。またモル比(NCO/水酸基)は、0.83であった。【0084】(製造例3:ウレタン樹脂(III)の製造)攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量:1,971.9、水酸基価:56.9)493.10質量部、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量:1,011.8、水酸基価:110.9)142.85質量部、メチルエチルケトン125.68質量部を加え、均一に混合した後、イソシアネート基を3つ有するイソシアヌレート(旭化成株式会社製「デュラネートTUL-100」、NCO%;23.0質量%)78.28質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.36質量部を加え、攪拌しながら75℃で約6時間反応させた。イソシアネート基の消失を確認後、メチルエチルケトン535.24質量部を加え、室温まで冷却し、ウレタン樹脂(III)のメチルエチルケトン溶液(固形分50%)を得た。このウレタン樹脂のGPCによる分子量分布は、重量平均分子量が74,504に極大値を有する1つのピークのみが検出され、数平均分子量(Mn)は4,331、重量平均分子量(Mw)は74,504、分子量分散度(Mw/Mn)は17.2であった。またモル比(NCO/水酸基)は、0.55であった。【0085】(製造例4:ウレタン樹脂(IV)の製造)攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み官を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、ポリエステルポリオール(株式会社クラレ製「クラレポリオールP1010」、数平均分子量;1002.8、水酸基価:111.9、以下「P1010」と略記する。)211.83質量部、酢酸エチル275.73質量部を加え、均一に混合した後、ヘキサメチレンジイソシアネート63.96質量部を加え、次いでジオクチル錫ジネオデカネート0.01質量部を加え、70℃で約4時間反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの酢酸エチル溶液(固形分)を得た。【0086】次いで、前記方法で得られたウレタンプレポリマーの酢酸エチル溶液を40℃まで冷却し、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリオール(三洋化成株式会社製「サンニックスGL-3000」、モル比[EO/PO]=25/75、数平均分子量;3,077.1、水酸基価:54.7)605.71質量部、酢酸エチル198.62質量部を加え、均一に混合した後、ジオクチル錫ジネオデカネート0.01質量部を加え、70℃で約6時間反応させ、NCO%が0.05%以下になった時点で末端停止剤である1,3-ブタンジオールを2.20質量部添加し、70℃で約2時間反応させ、NCOが消失したことを確認して、酢酸エチル406.84質量部を加え、室温まで冷却し、ウレタン樹脂(IV)の酢酸エチル溶液(固形分50%)を得た。【0087】このウレタン樹脂(IV)のGPCによる分子量分布は、重量平均分子量が208,190に極大値を有するメインピークAと重量平均分子量が2,383に極大値を有するピークBの2つのピークが検出され、メインピークAの数平均分子量(Mn)は26,096、重量平均分子量(Mw)は208,190、分子量分散度(Mw/Mn)は7.98であった。ピークBの面積比は10.16%であった。また、モル比(NCO/水酸基)は、0.75であった。【0088】(製造例5:ウレタン樹脂(V)の製造)撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量:1,971.9、水酸基価:56.9)489.09質量部、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量:1,011.8、水酸基価:110.9)142.25質量部を加え、メチルエチルケトン420.42質量部を加え、均一に混合した後、イソシアネート基を2つ有するイソホロンジイソシアネート79.91質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.47質量部を加え、攪拌しながら75℃で約6時間反応させた。イソシアネート基の消失を確認後、メチルエチルケトン535.24質量部を加え、室温まで冷却し、ウレタン樹脂(III)のメチルエチルケトン溶液(固形分50%)を得た。このウレタン樹脂のGPCによる分子量分布は、重量平均分子量が32,640に極大値を有する1つのピークのみが検出され、数平均分子量(Mn)は7,336、重量平均分子量(Mw)は32,640、分子量分散度(Mw/Mn)は4.4であった。またモル比(NCO/水酸基)は、0.93であった。【0089】(実施例1:ウレタン樹脂(I))製造例1で得られたウレタン樹脂(I)のメチルエチルケトン溶液(固形分50%)100質量部に、シートを製造する直前に、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(旭化成株式会社製「デュラネートTKA-100」、NCO%;21.7質量%、以下「TKA-100」と略記する。)3.62質量部、硬化触媒としてジオクチル錫ジネオデカネートの1%メチルエチルケトン溶液を1.00質量部、酸化防止剤として「Irganox1010」(BASFジャパン株式会社製、以下「Ir1010」と略記する。)の20%メチルエチルケトン溶液を2.50質量部、メチルエチルケトン27.68質量部を配合し、粘着剤組成物(A)(固形分40%)を得た。厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、得られた粘着剤組成物(A)を、乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗工し、80℃で3分間乾燥させた。これに表面が離型処理された厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合せ、40℃で3日間養生することで、実施例1の粘着シートを得た。【0090】原料を表1に記載された種類・量に置き換えた以外は、実施例1と同様の方法で行うことで、それぞれ実施例2~3ならびに比較例1~2の粘着テープを得た。【0091】【表1】[図:0001387995000001.jpg]【0092】[接着力の測定方法]実施例及び比較例で得られた表面保護フィルムを幅20mmに裁断したものを試験片とした。試験片から離型フィルムを剥離し、ガラス板に対し、接着面積が20mm×60mmとなるように2kgロールで2往復して貼り付けた。貼り付けして24時間後に23℃、湿度50%の雰囲気下で180度剥離強度を行い、接着力(N/25mm)とした。接着力は以下のように評価した。○:0.05以上0.50未満△:0.50以上1.00未満×:1.00以上【0093】[汚染性の評価方法]実施例及び比較例で得られた粘着シートを30mm×60mmの大きさに裁断したものを試験片とし、これから離型フィルムを剥離し、ガラス板に貼り付けた。その時、シートとガラス板との間に気泡を入れるようにした。該試験片を85℃、湿度85%の条件下で72時間放置した。その後、23℃環境下で1時間放置した後に、ガラス板からシートを手で剥離し、ガラス板の下部よりLEDライトを照射し、汚染状況を目視観察して以下のように評価した。「○」:ガラス板に汚染が全くない。「△」:ガラス板の一部に汚染が確認される。「×」:ガラス板の前面に汚染、又は粘着剤組成物の硬化物の脱落が確認される。【0094】以上の評価結果を表1に示す。【0095】【表2】[図:0001387995000002.jpg]【0096】以上、本発明の粘着剤組成物は、優れた接着力、及び耐被着体汚染性を有することが分かった。【0097】一方、比較例1は、イソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネート(a2-2)の代わりに、トリオールでウレタン樹脂を分岐させているため、耐被着体汚染性が不良であった。また比較例2は、直鎖のウレタン樹脂であるが、接着力、及び耐被着体汚染性が不良であった。」
第3 原査定の概要
令和3年4月30日付けの拒絶査定(以下「原査定」という。)は、次の理由を含むものである。
「●理由2(進歩性:特許法第29条第2項)について・請求項 1、5-7・引用文献等 1引用文献1には、実施例2として、続きを表示(全19行)(A)ウレタンポリオール 100重量部(B)ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体 4.2重量部(c)可塑剤 8.8重量部(d)フェノール系酸化防止剤 0.3重量部を含有するウレタン粘着剤及び粘着シートについて記載されている([0069]-[0081]を参照)。そして、引用文献1には、当該(A)ウレタンポリオールは、(a1)ポリプロピレングリコール 68.6重量部(a3)ポリテトラメチレンエーテルグリコール 13.7重量部(a5)ポリエチレングリコール 2.1重量部(b1)1,6-ジイソシアナトヘキサンのイソシアヌレート体 6.5重量部の反応生成物であることも記載されている([0069]-[0081]を参照)。また、引用文献1には、当該粘着シートが表面保護フィルムに使用されることも記載されている([0001]を参照)。ここで、本願請求項1、5-7に係る発明と引用文献1記載の発明を対比すると、両者は、酸化防止剤の含有量について、相違する。しかしながら、表面保護フィルム用のウレタン系粘着剤において、酸化防止剤の含有量を本願請求項1に記載されるような範囲で調整することは、一般的に行われており(要すれば、特開2017-155249号公報の請求項1-5、[0055]を参照)、引用文献1記載の発明において、所望の酸化防止性能を得るため、酸化防止剤の含有量を調整することは、当業者が適宜なし得る事項である。<引用文献等一覧>1.特開2017-222746号公報」
第4 当審の判断
1 引用文献の記載
前記第3の原査定に引用された引用文献1には、次の記載がある。
(1)「【請求項1】ウレタンポリオール、ポリイソシアネート、可塑剤及び安定化剤を含有するウレタン粘着剤であって、ウレタンポリオールが、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールと、イソシアネートモノマーとの重合体であり、可塑剤がヒマシ油系化合物を含む、ウレタン粘着剤。・・・【請求項4】請求項1~3のいずれかに記載のウレタン粘着剤が塗布された粘着フィルム。【請求項5】請求項4に記載の粘着フィルムで保護された部材。」
(2)「【0001】本発明は、粘着テープ、粘着フィルム及び粘着ラベル等の粘着製品、特に、窓ガラス、及び携帯電話、スマートフォン、タブレット及びテレビのディスプレイ等を覆う保護フィルムに塗布されるウレタン粘着剤に関する。」
(3)「【0009】本発明の目的は、基材(例えばプラスチック)に形成された粘着剤層は、被着体(好ましくはガラス)表面への濡れ性に優れ、被着体に粘着後、高温状態及び/又は高湿状態で時間が経過しても、再剥離性が十分に維持され、各々の成分の相溶性に優れる粘着剤を提供することである。」
(4)「【0016】尚、本発明のウレタン粘着剤は、可塑剤や安定化剤等の添加剤との相溶性にも優れているため、ブリードが発生することもなく、ガラス等との濡れ性に優れているため、ガラス等からフィルムが浮いてしまうこともない。本発明のウレタン粘着剤は、ガラス及び液晶ディスプレイ用偏光板などからの再剥離性が良好なので、窓ガラス及び携帯電話等の表面保護フィルム用粘着剤として有用である。」
(5)「【0017】本発明に係るウレタン粘着剤は、(A)ウレタンポリオール、(B)ポリイソシアネート、(c)可塑剤および(d)安定化剤を有する。更に、本発明は、本発明に係るウレタン粘着剤を得るための、成分(A)、(B)、(c)及び(d)の一式(又はキット)を含む。成分(A)、(B)、(c)及び(d)は、4成分の各々が分離された状態であっても、例えば、成分(A)、(c)及び(d)を含む第1液と、成分(B)を含む第2液を含む、いわゆる2液型粘着剤であってもよい。続きを表示(全13行)また、本発明は、成分(A)と(B)が反応したウレタンプレポリマーを含む粘着剤も提供する。【0018】<(A)ウレタンポリオール>本発明に係る(A)ウレタンポリオールは、その鎖中に(末端を除く化合物の内部に)ウレタン結合を有し、その末端に水酸基を有する化合物をいう。(A)ウレタンポリオールは、(a)ポリオールと(b)イソシアネートモノマーの反応で得ることができる。本発明において、(a)ポリオールは、ポリエーテルポリオールを含む。【0019】ポリエーテルポリオールとして、公知のポリエーテルポリオールを使用できる。ポリエーテルポリオールは、例えば、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の低分子量ポリオールを開始剤として使用して、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド及びテトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物を重合させることにより得ることができる。具体的には、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)等の官能基数が2以上のポリエーテルポリオールが用いられる。」
(6)「【0042】<(B)ポリイソシアネート>(B)ポリイソシアネートは、上述の(b)イソシアネートモノマーの重合体(ポリメリックイソシアネート、又はイソシアネート二量体及び三量体等)である。ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの重合体(二量体、三量体、・・・)を例示でき、特に、ヘキサメチレンジイソシアネートの重合体であることが好ましい。ポリイソシアネートとしては、イソシアヌレート体、ビュレット体及びアダクト体であることが好ましく、特にイソシアヌレート体が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体であることが最も望ましい。」
(7)「【0044】<(c)可塑剤>本明細書では、可塑剤とは、ポリマー組成物に添加され、ポリマー組成物に柔軟性を付与する物質をいう。本発明において、可塑剤はヒマシ油系化合物を含む。ヒマシ油系化合物として、ヒマシ油及びヒマシ油誘導体を例示できる。ヒマシ油及び/又はヒマシ油誘導体が可塑剤に含まれることによって、本発明のウレタン粘着剤は、相溶性に優れ、高温高湿の過酷な条件下でも優れた再剥離性を有することができる。」
(8)「【0052】<(d)安定化剤>本明細書において、安定化剤とは、ウレタン粘着剤の安定性を向上して、ウレタン粘着剤の熱による分子量低下、ゲル化、着色、及び臭気の発生等を防止するために配合されるものであり、本発明が目的とするウレタン粘着剤を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。「安定化剤」としては、例えば、酸化防止剤及び光安定剤を例示することができる。本明細書では、光安定剤は、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系安定剤(HALS)に大別される。【0053】「酸化防止剤」は、ウレタン粘着剤の酸化劣化を防止するために使用される。酸化防止剤として、例えばフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、及びリン系酸化防止剤を例示できる。」
(9)「【0067】本発明に係る粘着製品は、例えば、上述のウレタン粘着剤が、紙及びプラスチック等のフィルム又はシート等の基材に塗布されて、基材上に形成された粘着剤層を有し、例えば、粘着テープ、粘着シール、粘着フィルム、ラベル、化粧用シート及び滑り止めシート等として、電子部品、木工、建築材料、及び衛生材料等に幅広く利用される。粘着製品は、ガラス板及び偏光板等の表面保護フィルムとして好適に使用できる。」
(10)「【実施例】【0069】以下、本発明を更に詳細に、より具体的に説明することを目的として、実施例及び比較例を用いて本発明を説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら制限するものではない。【0070】続きを表示(全58行)ウレタン粘着剤を合成するための原料を以下に示す。(a)ポリオール・ポリエーテルポリオール(a1)ポリプロピレングリコール(三洋化成工業社製のプライムポールFF3320(商品名)、数平均分子量(Mn):3000、3官能性、水酸基価:56mgKOH/g、25℃溶融粘度:600mPa.s)(a2)ポリプロピレングリコール(三洋化成工業社製のプライムポールPX1000(商品名)、Mn:1000、2官能性、水酸基価:112mgKOH/g、25℃溶融粘度:200mPa.s)(a3)ポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱化学社製のポリテトラメチレンエーテルグリコール850(商品名)、Mn:850、2官能性、水酸基価:132mgKOH/g、25℃溶融粘度:320mPa.s)(a4)ポリエチレングリコール(日油社製のPEG400(商品名)、Mn:400、2官能性、水酸基価:280mgKOH/g、100℃動粘度:7mm2/s)(a5)(a5)ポリエチレングリコール(日油社製のPEG600(商品名)、Mn:600、2官能性、水酸基価:192mgKOH/g、100℃動粘度:11mm2/s)【0071】・ポリエステルポリオール(a6)3-メチル-1,5-ペンタンジオール/アジピン酸から製造されるポリエステルポリオール(クラレ社製のクラレポリオールP-1000(商品名)、Mn:1000、2官能性、水酸基価:112mgKOH/g、25℃溶融粘度:1500mPa.s)(a7)アジピン酸/ヘキサンジオール/ネオペンチルグリコールから製造されるポリエステルポリオール(豊国製油社製のHS2F-231AS(商品名)、Mn:2000、2官能性、水酸基価:56mgKOH/g、75℃溶融粘度:600mPa.s)(a8)3-メチル-1,5-ペンタンジオール/1,6-ヘキサンジオールから製造されるポリカーボネートポリオール(クラレ社製のクラレポリオールC-1090(商品名)、Mn:1000、2官能性、水酸基価:112mgKOH/g、25℃溶融粘度:1800mPa.s)【0072】(b)イソシアネートモノマー(b1)脂肪族イソシアネート(1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)のイソシアヌレート体:旭化成ケミカルズ社製のデュラネート50M-HDI(商品名))(b2)脂環式イソシアネート(イソホロンジイソシアネート(IPDI)のイソシアヌレート体:住化バイエルウレタン社製のVESTANAT T1890/100(商品名))(b3)脂肪族イソシアネート(キシリレンジイソシアネート(XDI):三井化学社製のタケネート500(商品名))【0073】(c)可塑剤(c1)脂肪酸エステル(日油社製のIPM-R(商品名)、酸価:0.5mgKOH/g以下、屈折率:1.434ND25、溶融粘度:6・6mPa・s(20℃))(c2)ヒマシ油系二塩基酸エステル(伊藤製油社製のリックサイザーS-4(商品名)、酸価:1.00mgKOH/g以下、屈折率:1.442ND25、溶融粘度:9mPa・s(25℃))(c3)ヒマシ油系脂肪酸エステル(伊藤製油社製のリックサイザーC-101(商品名)、酸価:1.7mgKOH/g以下、屈折率:1.454ND25、溶融粘度:17mPa・s(25℃))(c4)ヒマシ油系脂肪酸グリセリンエステル(伊藤製油社製のリックサイザーGR-301(商品名)、酸価:2.0mgKOH/g以下、屈折率:1.468ND25、溶融粘度:215mPa・s(25℃))【0074】(d)安定化剤(d1)フェノール系酸化防止剤(アデカ社製のアデカスタブAO-50(商品名)、融点:52℃、重量平均分子量(Mw):531)(d2)フェノール系酸化防止剤(BASF社製のイルガノックス1330(商品名)、融点:52℃、Mw:775.22)(d3)リン系酸化防止剤(城北化学社製のJP-650(商品名)、融点:180℃、Mw:647)(d4)ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製のチヌビン479(商品名)、Mw:678)(d5)ヒンダードアミン系光安定剤(BASF社製のチヌビン123(商品名)、Mw:737)【0075】<ウレタン粘着剤の製造>成分(a)と成分(b)とを反応させて(A)ウレタンポリオールを合成し、(A)ウレタンポリオール、(B)ポリイソシアネート、(c)可塑剤および(d)安定化剤を混合してウレタン粘着剤を得ることができる。尚、成分(d)は、成分(a)と(b)の反応の際に予め含ませても良い。ウレタン粘着剤の具体的な製法を以下に示す。下記の数値は、全て固形分換算値である。【0076】[実施例1]表1に示されるように、68.6重量部の(a1)ポリプロピレングリコール、13.7重量部の(a2)ポリプロピレングリコール、2.1重量部の(a4)ポリエチレングリコール、0.3重量部の(d1)フェノール系酸化防止剤をセパラブルフラスコに入れ、減圧しながら110℃で120分間攪拌して脱水した。その後、6.5重量部の(b1)HDIをフラスコに投入し、フラスコ内を110℃で5時間維持することで各成分を反応させ、(A1)ウレタンポリオールと(d1)成分を含む混合物を得た。混合物に含まれる(A1)ウレタンポリオールの100重量部当たり、8.8重量部の(c2)ヒマシ油系二塩基酸エステル、50重量部の酢酸エチルを混合物に添加し、常温下で攪拌し、溶解して、(A1)ウレタンポリオール、(c2)成分及び(d1)成分を含む溶液を得た。このウレタンポリオール溶液の100重量部当たり、(B)ポリイソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(東ソー社製のコロネートHX(商品名))4.2重量部を配合して、ウレタンプレポリマー、成分(c2)および成分(d1)を含有する、実施例1のウレタン粘着剤を得た。【0077】【表1】[図:0001387995000003.jpg]【0078】【表2】[図:0001387995000004.jpg]【0079】【表3】[図:0001387995000005.jpg]【0080】[実施例2~20および比較例1~6]表1~3に示す組成で、(A)ウレタンポリオール((A2)~(A’26))を生成し、その(A)ウレタンポリオールに(B)ポリイソシアネートを配合し、ウレタンプレポリマーを含む、実施例2~20及び比較例1~6のウレタン粘着剤を調製した。各々のウレタン粘着剤を調製する具体的な方法は、実施例1に記載の方法と同様である。【0081】<評価用粘着シートの作製>実施例1~20及び比較例1~6のウレタン粘着剤の各々を非剥離型ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基材)上に10μmの厚さになるように塗工して粘着剤層を形成した。塗工終了後、80℃で5分間乾燥させ、離型PETフィルムを貼り合せて、各々の粘着剤の評価用粘着シートを作製した。」
(11)「【0084】2.ガラスへの再剥離性(耐熱性)ガラスへの(常温)で記載した方法と同様の方法で得た、非剥離型PETフィルムとガラス板との積層体を、150℃雰囲気下で24時間保管した。その後、さらに23℃、50%雰囲気下で24時間保管した。23℃、50%雰囲気下で、引張試験機(島津社製)を用い、引張速度300mm/分でPETフィルムを180度方向に剥離し、剥離強度を測定した。評価基準は以下のとおりである。◎:界面剥離(AF)かつ剥離強度が100g/25mm未満〇:界面剥離(AF)かつ剥離強度が100g/25mm以上△:界面剥離/凝集破壊(AF/CF)×:凝集破壊(CF)」
2 特開2017-155249号公報の記載
特開2017-155249号公報には、次の記載がある。
(1)「【請求項1】ポリオールとポリイソシアネートとを反応してなるウレタン樹脂、硬化剤、エステル化合物(ただし、ウレタン樹脂である場合は除く)、および変質防止剤を含み、前記ポリオールが、ポリオール100重量%中、ポリエステルポリオールを50重量%以上含有することを特徴とする再剥離型粘着剤。・・・【請求項3】前記変質防止剤が、酸化防止剤、耐加水分解剤、紫外線吸収剤、および光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2記載の再剥離型粘着剤。・・・【請求項5】基材と、請求項1~4いずれか1項記載の再剥離型粘着剤から形成されてなる粘着剤層とを備えた表面保護フィルム。」
(2)「【0046】<変質防止剤>本発明における再剥離型粘着剤は、変質防止剤を含む。これにより、再剥離型粘着剤の高温高湿雰囲気下での変質ないし劣化防止、再剥離性の低下抑制、被着体汚染の低下等を抑制できる。【0047】変質防止剤は、耐加水分解剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、または光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。単独で用いても、同じ種類の変質防止剤を2つ以上用いても、異なる種類の変質防止剤を2種類以上組み合わせ用いてもよいが、異なる種類の変質防止剤を2種類以上用いることで、エステル化合物の高温高湿雰囲気下での変質ないし劣化防止が可能となり、粘着剤の再剥離性の低下抑制、被着体汚染の低下等をより抑制できる。」
(3)「【0055】[酸化防止剤]酸化防止剤は、例えばラジカル補足剤、過酸化物分解剤などが挙げられる。ラジカル補足剤としてはフェノール系化合物、アミン系化合物が挙げられ、過酸化物分解剤としては硫黄系化合物、リン系化合物が挙げられる。特に安定性と酸化防止効果の点でラジカル補足剤としての役割をもつフェノール系化合物が好ましく、さらにフェノール系化合物と過酸化物分解剤としての役割を持つリン系化合物を併用することで熱安定性が向上するためより好ましい。より好ましくは、フェノール系化合物とリン系化合物の酸化防止剤、および耐加水分解剤を併用する場合である。これにより、ウレタン樹脂の熱劣化を防ぎ、エステル化合物のブリードをより抑制できる。酸化防止剤は、ウレタン樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01~2.0重量部であり、より好ましくは0.1~1.5重量部であり、さらに好ましくは0.2~1.0重量部である。【0056】フェノール系化合物としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、ステアリン-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-S-トリアジン-2,4,6-(1H、3H、5H)トリオン、トコフェノールなどが挙げられる。【0057】リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジフォスファイト、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-デシロキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイトなどが挙げられる。」
(4)「【実施例】【0077】以下に、本発明を実施例によって、より具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお以下、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を意味する。・・・続きを表示(全16行)【0086】[実施例1]得られた合成例1のウレタン樹脂1溶液中のウレタン樹脂100重量部に対して、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(日本ポリウレタン(株)製、商品名コロネートHX、不揮発分100重量%、NCO%=21.0)を5.4重量部、エステル化合物としてアジピン酸ビス(2-ブトキシエチル)(ジェイ・プラス(株)製、商品名D931、不揮発分100重量%、分子量346)を30重量部、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤(BASFジャパン(株)製、商品名IRGANOX1010、不揮発分100重量%)とリン系酸化防止剤(BASFジャパン(株)製、商品名IRGAFOS168、不揮発分100重量%)をそれぞれ0.8重量部と0.05重量部トルエンに溶解して加え、耐加水分解剤としてカルボジイミド(日清紡(株)製、商品名カルボジライトV―09GB、不揮発分75重量%)を固形分換算で0.1重量部、紫外線防止剤としてトリアジン系紫外線吸収剤(BASFジャパン(株)製、商品名チヌビン477、不揮発分80重量%)を固形分換算で0.5重量部、光安定剤として、ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン(株)製、商品名チヌビン123、不揮発分100重量%)を0.2重量部、溶剤として酢酸エチルを5重量部配合し、ディスパーで攪拌することでウレタン粘着剤1を得た。【0087】このウレタン粘着剤1を、乾燥後の厚さが50μmになるよう50μm厚みのPET基材(ルミラーT60、東レ製)に塗工し、100℃で4分間乾燥した後、25μmの剥離ライナー(250010BD、藤森工業製)を貼り合わせた。次いで23℃-50%で1週間放置し、表面保護フィルム1を得た。【0088】[実施例2~25、比較例1~4]実施例1の原料・配合量を表2に示した通りに変更した以外は実施例1と同様に行うことでそれぞれ実施例2~25、比較例1~4の表面保護フィルム2~29を得た。【0089】【表2】[図:0001387995000006.jpg]」
3 Donatas Satas編著、粘着技術ハンドブック、1997年、日刊工業新聞社、p.253及びp.272~275の記載
Donatas Satas編著、粘着技術ハンドブック、1997年、日刊工業新聞社、p.253及びp.272~275には、次の記載がある。
(1)「粘着剤に使用される酸化防止剤13)は,ゴム配合に使用されているものと同種のものであり,これには芳香族アミン,置換フェノール,ハイドロキノン,亜鉛塩のような金属ジチオカルバメート,n-プロピル没食子酸塩や銅8キノリノレートのような金属キレート剤などがある.」(p.253第6~9行)
(2)「老化防止剤は,粘着剤の処方で使用される未加硫ゴムを老化から保護するために,有効な手段を与える.老化防止剤として有用な種々の薬品には,以下のものが見い出されている.すなわち,第二アミン,ジアミンおよびそれらの誘導体キノリンの化合物ジチオカルバメート類アルキルフェノール類りん酸エステル類」(p.272第5~12行)
(3)「福沢,根本,および小坂4)によって種々の老化防止剤の有効性が評価された.この粘着剤試料は天然ゴム(50重量部),水添ロジンのグリセリンエステル(50部)および老化防止剤(2部)から構成されていた.この粘着剤はカレンダー法によって布上に塗布された.全厚さは0.07 mmであった.この試料は種々の時間おきに70℃で老化され,図10.5に示されたT-はく離試験により,凝集力が試験された.試験温度は30℃,試料幅は10mm,つかみの移動速度は20mm/分であった.試験結果が図10.6に示されている.老化防止剤の有効性は,老化防止剤なしの試料の性質とを比較することにより説明される.」(p.273第3行~p.274第3行)
(4)「図10.6 種々の老化防止剤により保護された粘着剤の凝集力の経時変化4)((A)老化防止剤なし,(B)2,6-ジ(ターシャリーブチル)-4-メチルフェノール,(C)4-ブチリデンビス(3-メチル-6-ターシャリーブチル)フェノール,(D)2,5-ジ(ターシャリーブチル)ハイドロキノン,(E)メルカプトベンゾイミダゾール,(F)2-メチレンビス(4-メチル-6-ターシャリーブチルフェノール),使用された配合は:天然ゴム50, Ester Gum H 50, 老化防止剤2)」(p.274)
4 引用発明の認定
引用文献1の実施例2で得られるウレタン粘着剤は、段落【0077】の表1に記載のとおり、(a)ポリオールとして(a1)ポリプロピレングリコール(三洋化成工業社製のプライムポールFF3320(商品名)、数平均分子量(Mn):3000、3官能性、水酸基価:56mgKOH/g、25℃溶融粘度:600mPa.s)68.6重量部、(a3)ポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱化学社製のポリテトラメチレンエーテルグリコール850(商品名)、Mn:850、2官能性、水酸基価:132mgKOH/g、25℃溶融粘度:320mPa.s)13.7重量部及び(a4)ポリエチレングリコール(日油社製のPEG400(商品名)、Mn:400、2官能性、水酸基価:280mgKOH/g、100℃動粘度:7mm2/s)2.1重量部と、(b)イソシアネートモノマーとして(b1)脂肪族イソシアネート(1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)のイソシアヌレート体:旭化成ケミカルズ社製のデュラネート50M-HDI(商品名))6.5重量部との反応で得られる(A)ウレタンポリオール、(c)可塑剤として(c2)ヒマシ油系二塩基酸エステル(伊藤製油社製のリックサイザーS-4(商品名)、酸価:1.00mgKOH/g以下、屈折率:1.442ND25、溶融粘度:9mPa・s(25℃))8.8重量部、(d)安定化剤として(d1)フェノール系酸化防止剤(アデカ社製のアデカスタブAO-50(商品名)、融点:52℃、重量平均分子量(Mw):531)0.3重量部、及び(B)ポリイソシアネート4.2重量部を含有する(前記1の摘記(10)の段落【0077】【表1】及び段落【0070】、【0072】~【0076】参照)。
請求項1に係るウレタン粘着剤(前記1の摘記(1)参照)の一実施態様である、この実施例2に着目すると、引用文献1から次の発明(以下「引用発明」という。)が認定できる。
「(a)ポリオールと(b)イソシアネートモノマーの反応で得られる(A)ウレタンポリオール、(B)ポリイソシアネート、(c)可塑剤及び(d1)フェノール系酸化防止剤を含有するウレタン粘着剤であって、前記(a)ポリオールが(a1)ポリプロピレングリコール68.6重量部、(a3)ポリテトラメチレンエーテルグリコール13.7重量部及び(a4)ポリエチレングリコール2.1重量部から構成され、前記(b)イソシアネートモノマーが(b1)脂肪族イソシアネート(1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)のイソシアヌレート体)であり、前記(d1)フェノール系酸化防止剤の含有量は、前記(A)ウレタンポリオール90.9重量部(=68.6重量部+13.7重量部+2.1重量部+6.5重量部)に対して0.3重量部である、ウレタン粘着剤。」
5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「(a)ポリオールと(b)イソシアネートモノマーの反応で得られる(A)ウレタンポリオール」は、本願発明の「水酸基を有するウレタン樹脂(A)」に相当すると共に、「前記ウレタン樹脂(A)が、ポリオール(a1)及びポリイソシアネート(a2)の反応物であり」にも相当する。
(2)引用発明の「(B)ポリイソシアネート」、「(d1)フェノール系酸化防止剤」はそれぞれ、本願発明の「硬化剤(B)」、「酸化防止剤」に相当する。
(3)引用発明の「(b1)脂肪族イソシアネート(1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)のイソシアヌレート体)」は、イソシアネート基を3個有するポリイソシアネートなので、引用発明の「前記(b)イソシアネートモノマーが(b1)脂肪族イソシアネート(1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)のイソシアヌレート体)であり」は、(b1)がイソシアネート基を3つ有するから、本願発明の「前記ポリイソシアネート(a2)が、イソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネート(a2-2)を含むものであり」を充足する。
(4)本願発明の「前記ポリオール(a1)は、炭素原子数が4以上であるオキシアルキレン単位を10質量%以上の割合で有するポリエーテルポリオールを含み」は、次の2通りの解釈が可能である。
ア ポリオール(a1)が含まれるポリエーテルポリオールのうち少なくとも一種に関し、その全オキシアルキレン単位に占める炭素原子数4以上のオキシアルキレン単位の割合が10質量%以上である。
イ ポリオール(a1)が含まれるポリエーテルポリオール全体に関し、全てのオキシアルキレン単位に占める炭素原子数4以上のオキシアルキレン単位の割合が10質量%以上である。
引用発明の「(a3)ポリテトラメチレンエーテルグリコール」は、オキシアルキレン単位における炭素原子数が4であるポリエーテルポリオールであるから、その全オキシアルキレン単位に占める炭素原子数4以上のオキシアルキレン単位の割合は100質量%といえる。そして、引用発明の「(a)ポリオール」は、この「(a3)ポリテトラメチレンエーテルグリコール」を少なくとも含むので、前記アの意味で解釈した本願発明の「前記ポリオール(a1)は、炭素原子数が4以上であるオキシアルキレン単位を10質量%以上の割合で有するポリエーテルポリオールを含み」を充足する。
また、引用発明の「(a)ポリオール」を構成する「(a1)ポリプロピレングリコール」、「(a3)ポリテトラメチレンエーテルグリコール」、「(a4)ポリエチレングリコール」は、オキシアルキレン単位における炭素原子数がそれぞれ3、4、2であるポリエーテルポリオールであるから、ポリエーテルポリオール全体における全オキシアルキレン単位に占める炭素原子数4以上のオキシアルキレン単位の割合は、(a1)、(a3)、(a4)の各重量部より、{13.7/(68.6+13.7+2.1)}×100=16重量%と算出される。よって、引用発明の「前記(a)ポリオールが(a1)ポリプロピレングリコール68.6重量部、(a3)ポリテトラメチレンエーテルグリコール13.7重量部及び(a4)ポリエチレングリコール2.1重量部から構成され」は、前記イの意味で解釈した本願発明の「前記ポリオール(a1)は、炭素原子数が4以上であるオキシアルキレン単位を10質量%以上の割合で有するポリエーテルポリオールを含み」を充足する。
(5)引用発明における(d1)フェノール系酸化防止剤の含有量は、(A)ウレタンポリオール90.9重量部に対して0.3重量部であるが、(A)ウレタンポリオール100重量部当たりに換算すると、0.33(=0.3×100/90.9)重量部である。
(6)引用発明の「ウレタン粘着剤」は、本願発明の「粘着剤組成物」に相当する。
(7)一致点
以上から、本願発明と引用発明は、次の点で一致する。
「水酸基を有するウレタン樹脂(A)、硬化剤(B)及び酸化防止剤を含み、前記ウレタン樹脂(A)が、ポリオール(a1)及びポリイソシアネート(a2)の反応物であり、 前記ポリイソシアネート(a2)が、イソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネート(a2-2)を含むものであり、前記ポリオール(a1)は、炭素原子数が4以上であるオキシアルキレン単位を10質量%以上の割合で有するポリエーテルポリオールを含む、粘着剤組成物。」
(8)相違点
一方、本願発明と引用発明は、次の点で相違する。
ウレタン樹脂(A)100質量部に対する酸化防止剤の含有量が、本願発明では「0.5質量部以上3質量部以下」であるのに対し、引用発明では「0.33質量部」である点。
6 相違点についての判断
(1)構成上の容易想到性
ア 一般に、粘着剤に酸化防止剤等の各種添加剤を添加するに当たり、粘着剤としての粘着性能に悪影響を及ぼさない範囲で、添加剤に期待される効果(酸化防止剤であれば酸化防止効果)が十分に発揮されるよう、その添加量を調整、最適化することは、通常の創作能力の発揮として当業者間で行われている。
イ そして、添加剤が酸化防止剤の場合でも、例えば特開2017-155249号公報には、ポリオールとポリイソシアネートとを反応してなるウレタン樹脂、硬化剤、及び酸化防止剤等の変質防止剤を含み、表面保護フィルムの粘着剤層を形成する再剥離型粘着剤において(前記2の摘記(1)参照)、酸化防止剤は、ウレタン樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01~2.0重量部であり、より好ましくは0.1~1.5重量部であり、さらに好ましくは0.2~1.0重量部である旨が記載されており(前記2の摘記(3)における段落【0055】参照)、その実施例では、酸化防止剤の含有量がウレタン樹脂100重量部に対して0.85重量部又は0.8重量部である(前記2の摘記(4)における段落【0086】~【0089】及び表2参照)。この特開2017-155249号公報では、使用される酸化防止剤として、例えば2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)等のフェノール系化合物が挙げられている(前記2の摘記(3)における段落【0055】~【0056】参照)。
ウ また、Donatas Satas編著、粘着技術ハンドブック、1997年、日刊工業新聞社、p.253及びp.272~275には、粘着剤に使用される酸化防止剤は、ゴム配合に使用されているものと同種のものであり、これには芳香族アミン、置換フェノール、ハイドロキノン、亜鉛塩のような金属ジチオカルバメート、n-プロビル没食子酸塩や銅8キノリノレートのような金属キレート剤等がある旨(前記3の摘記(1)参照)、粘着剤の処方で使用される未加硫ゴムを老化から保護するために有用な老化防止剤としては、第二アミン、ジアミンおよびそれらの誘導体、キノリンの化合物、ジチオカルバメート類、アルキルフェノール類、りん酸エステル類が見い出されている旨が記載されており(前記3の摘記(2)参照)、酸化防止剤として少なくとも置換フェノール、老化防止剤として少なくともアルキルフェノール類が挙げられている。そして、同文献では、置換フェノールやアルキルフェノール類に該当する(B)2,6-ジ(ターシャリーブチル)-4-メチルフェノール、(C)4-ブチリデンビス(3-メチル-6-ターシャリーブチル)フェノール、(F)2-メチレンビス(4-メチル-6-ターシャリーブチルフェノール)といった種々の老化防止剤の有効性を評価するに当たり、粘着剤試料中の老化防止剤の含有割合を{2/(50+50+2)}×100=2重量%としている(前記3の摘記(3)~(4)参照))。
エ さらに、前記1(10)に摘記した引用文献1における段落【0079】の【表3】の比較例6と段落【0077】の【表1】の実施例1とを比較すると、重量部において、(a1)、(a2)、(a4)、(b1)、(c2)の各々の差が0か0.1か0.2であり、かつ、酸化防止剤(d1)が実施例1において0.3であり、比較例6においては0となっていることが読み取れる。そして、それらの再剥離性(耐熱性)が、それぞれ、○と×になっている。そして、前記1(11)に摘記した引用文献1の【0084】には、ガラスへの再剥離性(耐熱性)の評価基準として、4種類存在し、◎、○、△、×の順に評価が悪くなることが読み取れる。そうすると、酸化防止剤を0から0.3にすることで、評価が×から○となるが、更に◎となるように、酸化防止剤の量を増やそうとすることに動機付けがあるといえる。
オ 加えて、引用文献1には、酸化防止剤の含有量に関し、各実施例、比較例における添加量が段落【0077】~【0079】の表1~3に開示されるのみで、酸化防止剤の好ましい含有量範囲については特に記載されていない。そして、引用文献1の記載を精査しても、前記エで述べた動機付けから酸化防止剤の量を増やそうとすることを妨げるべき格別の事情は何ら見いだせない。
カ 以上の点を勘案すると、引用発明において、酸化防止という酸化防止剤としての十分な添加効果発現や、再剥離性(耐熱性)向上の観点から、(A)ウレタンポリオールに対する酸化防止剤の含有量を変化させ、前記イや前記ウの例示と同程度に調整、最適化すること、その結果として本願発明と重複する含有量とすることは、通常の創作能力の発揮により当業者が適宜なし得ることである。
(2)効果の予測性
ア 判断の枠組み
判例(最高裁平成30年(行ヒ)第69号)によると、「本件各発明の効果,取り分けその程度が,予測できない顕著なものであるかについて,優先日当時本件各発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができなかったものか否か,当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるか否かという観点から十分に検討する」ことを、効果の予測性の検討の際に必要とすると解される。
イ 本願明細書から読み取れることは、段落【0095】【表2】に記載された実施例1~3の汚染性が○であり、比較例1の汚染性が△、比較例2の汚染性が×であるということであるが、この相違は同段落【0080】~【0084】に製法が記載されたウレタン樹脂(I)~(III)を用いるか、同段落【0085】~【0088】に製法が記載されたウレタン樹脂(IV)、(V)を用いるかによるものである。
ウ そして、本願明細書を精査しても、本願発明が、前記5(8)における相違点に係る構成を備えることにより汚染性が良いという予測を超える顕著な効果を奏していると認めることができず、また、それを認めるに足る証拠はない。
エ したがって、前記(1)において検討した構成上の容易想到性が阻害されるということはできない。
7 請求人の主張の検討
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請求人は、令和3年3月25日付け意見書において、酸化防止剤の含有量がウレタン樹脂(A)100質量部に対して0.4質量部である追加比較例1と、6.4質量部である追加比較例2を提示した上で、審判請求書において、「酸化防止剤の含有量を0.5質量部以上3質量部以下に限定することで、0.3質量部で決して達成できない保護フィルム用粘着剤として要求される耐汚染性という本願効果を想到することは困難であるため、進歩性を有します。」(第3頁第21~23行)、「本願発明は、剥離後の被着体汚染性を向上することが目的の発明ゆえ、明細書段落[0062]に特段の事項が記載がなくとも、上記酸化防止剤の含有量の好ましい範囲にすれば前記「剥離後の被着体汚染性」が一層良好なものになるであろうことは、当業者であれば容易に推認できる事項であると考えます。」(第4頁第17~21行)等と主張する。
しかしながら、本願明細書には、酸化防止剤の含有量に関し、段落【0062】に「前記酸化防止剤の含有量は、前記ウレタン樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。」との記載があるのみで、酸化防止剤が具体的にどのような作用機序で耐汚染性に影響を及ぼすのかや、酸化防止剤の含有量が多すぎたり少なすぎたりする場合に、耐汚染性の点でどのような不都合が生じるのかは、本願明細書に何ら記載されていない。そのため、本願明細書の記載をみても、酸化防止剤の含有量が耐汚染性に及ぼす影響を当業者は予測することができず、酸化防止剤の含有量を段落【0062】に記載される好ましい範囲にしたからといって、「剥離後の被着体汚染性」が一層良好なものになると当業者は推認することができない。
そして、本願の実施例、比較例においても、酸化防止剤の含有量がウレタン樹脂(A)100質量部に対して1質量部である実施例1~2と、2質量部である実施例3及び比較例1~2が示されるのみであり(表1参照)、ウレタン樹脂(A)100質量部に対する酸化防止剤の含有量が「0.5質量部以上3質量部以下」の範囲外である追加比較例1~2の結果を仮に参酌したとしても、当該含有量が1質量部又は2質量部である場合に限られた実施例から、「0.5質量部以上3質量部以下」の全範囲において、耐汚染性の点で格別顕著な効果を奏するとまでは推認できない。
したがって、請求人の前記主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-009125