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意匠拒絶査定不服審判

2021-008804

蓄電池用筐体

審判番号
2021-008804
法域
意匠
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
意願2019-028643外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
1704703
請求日
2021年07月02日
審決日
2021年11月15日
公報発行日
2022年01月28日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
D18 .113-WY (H1-8)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
意匠法3条1項3号
条文(本文から自動抽出・参考)
意匠法第3条第1項第3号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

意願2019- 28643「蓄電池用筐体」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。

結論

結 論
原査定を取り消す。
本願の意匠は,登録すべきものとする。

理由

目次 ▾ 8項目
理 由

第1 事案の概要

1 手続の経緯

本願は,令和1年(2019年)12月24日の意匠登録出願であって,令和2年(2020年)10月22日付けの拒絶理由の通知に対し,同年12月14日に意見書が提出されたが,令和3年(2021年)3月31日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年7月2日に拒絶査定不服審判の審判請求がなされ,同年8月11日に手続補正書(補正対象書類:審判請求書)が提出されたものである。

2 本願意匠の願書及び添付図面の記載

本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり,その意匠は,意匠に係る物品を「蓄電池用筐体」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり(以下「本願意匠」という。),部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界のみを示す線である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定の拒絶の理由は,本願意匠が,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当する,というものである。

拒絶理由通知において引用された意匠は,日本国特許庁発行の意匠公報(公報発行日:平成30年(2018年)3月19日)に記載された,意匠登録第1599711号(意匠に係る物品,鉛蓄電池)の意匠(以下「引用意匠」という。)である(別紙第2参照)。

以下,本審決では,引用意匠において本願部分と対比,判断する部分,すなわち,本願部分に相当する部分を,「引用部分」という。

第2 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比

(1)意匠に係る物品の対比

本願意匠の意匠に係る物品は,「蓄電池用筐体」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「鉛蓄電池」であって一致しないものであるが,いずれもその使用時には,主として自動車用の蓄電池として用いられ,充電及び放電が可能な電源としての機能を有するものであるから,本願意匠が蓄電池内部に電解液が注入される前の状態であるとしても,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,その用途及び機能が共通するものであると認められる。

(2)本願部分と引用部分の用途及び機能の対比

本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は,いずれも蓄電池を固定するための係止金具を当着するために,蓄電池下端部分に形成された突出部分(以下「突設部」という。)であり,この突設部を係止金具で挟着することにより,蓄電池を車両に固定することができる部分であるから,両部分の用途及び機能は一致するものである。

(3)両部分の位置,大きさ及び範囲の対比

両部分は,いずれも蓄電池本体部の正面側の側面部下端部分に左右に余地を残して形成された,側面視略直角台形状に突出した突設部における正面側やや左寄りの部分であり,正面視において蓄電池本体部分の約1/18の高さの略横長長方形の範囲からなる部分であるから,両部分の位置,大きさ及び範囲は一致する。

(4)両部分の形状等の対比

両部分の形状等を対比する(以下,対比のため,引用意匠も本願意匠の図面の向きに合わせることとする。)と,その形状等には,主として以下の共通点及び相違点が認められる。

ア 形状等の共通点

(共通点1)両意匠は,全体を,蓄電池本体部の正面側の側面部下端部分(以下「本体側面部」という。),本体側面部の上方から斜め下方に傾斜して形成された板状突出部分(以下「傾斜板部」という。),及び傾斜板部の下端部から連続して略垂直に形成された略長方形板状体部分(以下「前面板部」という。)からなる断面視略鈎状の突設部における,本体側面部の前面部分,傾斜板部の下面側部分,並びに前面板部の背面部分,底面部分及び前面部分からなる本体側面部と前面板部を繋ぐ3つのリブを除く断面視略横乙状の表面部分の形態である点が共通する。

イ 形状等の相違点

(相違点1)本願部分の前面板部下端部分の形状等は,その正面側角部に底面部の背面側部分にまで及ぶ大きなR面取りを施し,前面板部が僅かに接地するような形状等としているのに対し,引用部分の前面板部下端部分の形状等が,その正面側及び背面側角部に僅かなR面取りを施し,前面板部の底面部分全体が接地するような形状等としている点で,両部分は相違する。

(相違点2)本願部分の本体側面部下端部分の形状等は,その正面側角部に前面板部の正面側角部よりも大きなR面取りを施した形状等としているのに対し,引用部分の本体側面部下端角部の形状等が,その正面側角部に僅かなR面取りを施した形状等としている点で,両部分は相違する。

2 両意匠の類否判断

(1)意匠に係る物品の類否判断

両意匠の意匠に係る物品は,その用途及び機能が共通するものであると認められるから類似する。

(2)両部分の用途及び機能の類否判断

両部分の用途及び機能は,同一である。

(3)両部分の位置,大きさ及び範囲の評価

両部分の位置,大きさ及び範囲は,物品全体の形態の中における位置,大きさ及び範囲が一致するから,同一である。

(4)両部分の形状等の類否判断

両意匠の意匠に係る物品は,自動車用の蓄電池に係るものであって,この物品における主な需要者は,蓄電池を交換のため個人で購入する者や,自動車整備工場等で蓄電池を交換する自動車整備に携わる者であるといえる。そして,これら需要者は,車両との適合性に係る蓄電池自体の外観に加え,蓄電池交換の際にその作業効率が良いか否かといった整備性の観点でも両意匠に係る物品を観察するといえる。

そうすると,蓄電池交換時の整備性を重視する需要者にとってみれば,車両の狭い蓄電池積載スペースに,鉛を格納した重い蓄電池を設置する際に移動がしやすい工夫を凝らした蓄電池の接地部分の形態も,需要者の注意を惹く部分であるということができる。

したがって,両部分の類否判断にあたっては,通常であれば目に付きにくい蓄電池の接地部分の具体的な形態についても,需要者の注意を惹く部分であるとの前提に基づいて,両部分の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響について評価することとする。

ア 共通点の評価

(共通点1)は部分全体の形状等に係るものであるが,これらの形状等は欧州車の自動車用蓄電池の規格として定められたものであり,この種物品においては本願意匠出願前からごく普通にみられる形状等であるから,この共通点が両部分のみに認められる格別の特徴であるということはできず,(共通点1)が部分意匠全体の美感に与える影響は小さい。

イ 相違点の評価

(相違点1)の前面板部下端部分の形状等,及び(相違点2)の本体側面部下端部分の形状等については,この物品の需要者が蓄電池を交換する際に注視するといえる整備性に係る蓄電池の接地部分の形状等であって,車両の僅かな隙間に重たい蓄電池を設置する際に,移動させやすい本願部分の形状等のものと,移動がしにくい引用部分の従来の形状等のものでは,この部分を観察した需要者にとってみれば別異の印象を強く与えるものであるから,これら(相違点1)及び(相違点2)が部分全体の美感に与える影響は大きい。

ウ 両部分の形状等の類否判断

両部分の形状等における共通点及び相違点についての個別評価に基づき,両部分全体として総合的に観察した場合,両部分は,需要者が注視する整備性に係る前面板部下端部分の形状等,及び本体側面部下端部分の形状等の相違点が,部分全体の美感に与える影響が大きいのに対し,欧州車用蓄電池の規格に準じた部分全体の形状等の共通点が部分全体の美感に与える影響は小さいから,これらの共通点が部分全体の美感に与える影響は,相違点が与える影響を覆すには至らず,本願部分の形状等と引用部分の形状等とは類似しないものである。

(5)小括

以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が類似するものであり,両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲も同一であるが,両部分の形状等において類似しないものであるから,本願意匠と引用意匠が類似するということはできない。

第3 むすび

上記のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。

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2021-008804

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