審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2021-008242

空調システム

審判番号
2021-008242
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-217391外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年06月23日
審決日
2022年02月25日
公報発行日
2022年05月27日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (F25B) / P18 .537-Z (F25B) / P18 .575-Z (F25B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-217391「空調システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 6月 3日出願公開、特開2021- 85644〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 10項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、令和元年11月29日に出願されたものであって、その手続きの主な経緯は以下のとおりである。

令和2年12月15日付け 拒絶理由通知

令和3年 2月22日 意見書及び手続補正書の提出

令和3年 3月12日付け 拒絶査定

令和3年 6月23日 拒絶査定不服審判の請求、同時に手続補正書 の提出

令和3年 9月24日 上申書の提出

第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和3年6月23日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について

(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)。

「【請求項1】
第1部分(11a、11b、11c、11A、11S)と第2部分(12)とを有する冷媒回路(10)と、
前記第1部分に設けられ、冷媒と空調対象空間の空気とを熱交換させることで前記空調対象空間の空気の冷却又は加熱を行う熱交換器(30a、30b、30c、30S)と、
前記冷媒回路に設けられ、前記第1部分と前記第2部分との連通を遮断する遮断弁(70)と、
続きを表示(全15行)
前記第1部分から漏洩した前記冷媒を検知する冷媒漏洩センサ(50a、50b、50c、50S)と、
を備え、
前記冷媒漏洩センサは、冷媒濃度が第1範囲内にあることを検知し、
前記遮断弁は、前記第1部分に存在する前記冷媒が全て前記空調対象空間に漏洩したと仮定したときに、前記空調対象空間の冷媒濃度が、前記第1範囲よりも大きい範囲である第2範囲内となるように配置され、
前記冷媒の燃焼下限濃度をLFL[kg/m3]としたときに、
前記第1範囲は、LFL/X1~LFL/X2であり、
前記第2範囲は、LFL/Y1~LFL/Y2であり、
X1はY1よりも大きく、X2はY2よりも大きく、
前記冷媒漏洩センサは、前記第1範囲内のある冷媒の濃度である第1濃度を検出可能であり、
前記遮断弁は、前記第1部分に存在する前記冷媒が全て前記空調対象空間に漏洩したと仮定したときに、前記空調対象空間の前記第2範囲内の冷媒濃度が前記第1濃度よりも大きくなるように配置される、
空調システム(100)。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲

本件補正前の令和3年2月22日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
第1部分(11a、11b、11c、11A、11S)と第2部分(12)とを有する冷媒回路(10)と、
前記第1部分に設けられ、冷媒と空調対象空間の空気とを熱交換させることで前記空調対象空間の空気の冷却又は加熱を行う熱交換器(30a、30b、30c、30S)と、
前記冷媒回路に設けられ、前記第1部分と前記第2部分との連通を遮断する遮断弁(70)と、
続きを表示(全13行)
前記第1部分から漏洩した前記冷媒を検知する冷媒漏洩センサ(50a、50b、50c、50S)と、
を備え、
前記冷媒漏洩センサは、冷媒濃度が第1範囲内にあることを検知し、
前記遮断弁は、前記第1部分に存在する前記冷媒が全て前記空調対象空間に漏洩したと仮定したときに、前記空調対象空間の冷媒濃度が、前記第1範囲よりも大きい範囲である第2範囲内となるように配置され、
前記冷媒の燃焼下限濃度をLFL[kg/m3]としたときに、
前記第1範囲は、LFL/X1~LFL/X2であり、
前記第2範囲は、LFL/Y1~LFL/Y2であり、
X1はY1よりも大きく、X2はY2よりも大きい、
空調システム(100)。」

2 補正の適否

本件補正は、本件補正前の請求項1を特定するために必要な事項である「冷媒漏洩センサ」について、「前記冷媒漏洩センサは、前記第1範囲内のある冷媒の濃度である第1濃度を検出可能であり」との限定を新たに付加し、また、「遮断弁」の配置について、「前記遮断弁は、前記第1部分に存在する前記冷媒が全て前記空調対象空間に漏洩したと仮定したときに、前記空調対象空間の前記第2範囲内の冷媒濃度が前記第1濃度よりも大きくなるように配置される」との限定を新たに付加する補正であって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許請求の範囲の請求項1に関する本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

そこで本件補正によって補正された請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について、以下に検討する。

(1)本願補正発明

本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用例の記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)

ア 引用例1

原査定の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された引用文献である、国際公開第2011/099058号(以下、「引用例1」という。)には、「空気調和装置」に関して図面とともに以下の記載がある(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下、同様。)。

(ア)引用例1の記載

「[0003] このようなビル用マルチエアコンの室内機は、人が居る室内空間(たとえば、オフィス空間や居室、店舗等)に配置されて利用されることが通常である。」

「[0010] 本発明に係る空気調和装置は、少なくとも圧縮機、及び、熱源側熱交換器を室外機に備え、少なくとも絞り装置、及び、利用側熱交換器を室内機に備え、前記圧縮機、前記熱源側熱交換器、前記絞り装置、及び、前記利用側熱交換器が配管接続され、超臨界状態に遷移する冷媒または可燃性を有する冷媒が循環する冷媒回路が形成された空気調和装置であって、前記室内機の内部又は前記室内機の設置空間に設けられ、前記冷媒回路から漏れた冷媒の濃度を検出する濃度検出装置と、前記室内機の外側で、かつ、前記室内機の出入口から所定距離以内に設けられ、前記濃度検出装置からの情報に基づいて熱源側冷媒の循環を遮断する遮断装置と、を有しているものである。」

「[0016][室外機200]
室外機200には、圧縮機201と、油分離器202と、四方弁等の流路切替装置203と、熱源側熱交換器204と、アキュムレーター205と、が直列に配管400で接続されて搭載されている。」

「[0018] 熱源側熱交換器(室外側熱交換器)204は、暖房運転時には蒸発器として機能し、冷房運転時には放熱器(ガスクーラー)として機能し、図示省略のファン等の送風機から供給される空気と冷媒との間で熱交換を行なうものである。」

「[0019][室内機300]
室内機300には、絞り装置302と、利用側熱交換器(室内側熱交換器)301 と、が直列に接続されて搭載されている。利用側熱交換器301は、暖房運転時には放熱器として機能し、冷房運転時には蒸発器として機能し、図示省略のファン等の送風機から供給される空気と冷媒との間で熱交換を行ない、空調対象空間に供給するための暖房用空気あるいは冷房用空気を生成するものである。」

「[0020] 実施の形態1では、4台の室内機300が接続されている場合を例に示しており、紙面下側から室内機300a、室内機300b、室内機300c、室内機300dとして図示している。また、室内機300a~室内機300dに応じて、利用側熱交換器301も、紙面下側から利用側熱交換器301a、利用側熱交換器301b、利用側熱交換器301c、利用側熱交換器301dとして図示している。」

「[0021] また、空気調和装置100には、室外機200及び室内機300の外側における配管400aに第1遮断装置303が、室外機200及び室内機300の外側における配管400bに第2遮断装置304が、それぞれ設置されている。第1遮断装置303は、二方弁等で構成されており、配管400aを開閉するものである。第2遮断装置304は、二方弁等で構成されており、配管400bを開閉するものである。」

「[0036] 図4は、空気調和装置100の回路の一部を拡大して示す模式図である。図4に基づいて、実施の形態1に係る空気調和装置100の特徴事項について説明する。室内機300には、上述したように、絞り装置302及び利用側熱交換器301が設けられている。また、図4に示すように、室内機300には、温度センサー306、温度センサー307、圧力センサー308、濃度検出装置305が設けられている。なお、室内機300の外側における配管400aには第1遮断装置303が、配管400bには第2遮断装置304が、それぞれ設けられている。つまり、第1遮断装置303及び第2遮断装置304は、室内機300の出入口側に設けられている。
[0037] 温度センサー306は、第1遮断装置303と利用側熱交換器301との間に設けられ、この部分を流れる冷媒の温度を検出するものである。温度センサー307は、絞り装置302と利用側熱交換器301との間に設けられ、この部分を流れる冷媒の温度を検出するものである。圧力センサー308は、温度センサー307と同様の位置に設けられ、この部分を流れる冷媒の圧力を検出するものである。濃度検出装置305は、冷媒(実施の形態1では二酸化炭素)の濃度を検出ものであり、特に人が存在する空間の冷媒濃度を検出するものである。
[0038] なお、図4では、濃度検出装置305が室内機300の内部における利用側熱交換器301の近傍に設けられている場合を例に示しているが、設置位置をこの位置に限定するものではない。たとえば、濃度検出装置305を室内機300内に設置せずに、室内機300が設置されている空間に設けるようにしてもよい。つまり、濃度検出装置305の設置目的は、人が存在する空間の冷媒濃度を検出することであるため、室内機300が設置されている空間の任意の場所に設置されていればよいのである。また、たとえば、リモコン(図示省略)に濃度検出装置305を組み込んでもよい。」
「[0040] 濃度検出装置305には、所定濃度未満のときはスイッチON状態に、所定濃度以上の時はスイッチOFF状態になるようなスイッチ構造が内蔵されている。この所定濃度は、使用される冷媒の漏洩限界濃度としている。二酸化炭素を冷媒として用いる場合の漏洩限界濃度は0.07[kg/m3](表1参照)であるため、この濃度を所定濃度として濃度検出装置305に内蔵したスイッチのON・OFFを実行するようになっている。言うまでもなく、濃度検出装置305にスイッチ構造が内蔵されておらず、スイッチ(接点)を別部品とした構成でもよい。
[0041] 安全性をより向上させるため、空気調和装置100においては、濃度検出装置305のバラツキや、室内空間の濃度分布等を考慮して、漏洩限界の濃度より低い値(たとえば、漏洩限界濃度の1/10の濃度)を所定濃度として定めてもよい。すなわち、空気調和装置100では、0.007[kg/m3]を閾値(所定濃度)としてスイッチがON・OFFするように設定することも可能になっている。具体的には、0.007[kg/m3]未満ではスイッチON、0.007[kg/m3]以上ではスイッチOFFの状態になる。」
「[0046] 次に、第1遮断装置303及び第2遮断装置304の動作について説明する。濃度検出装置305で所定濃度(たとえば0.07[kg/m3])の二酸化炭素が検出された場合、図示省略の制御装置は、冷媒回路から冷媒漏れが発生したと判断し、濃度検出装置305のスイッチをOFFし、第1遮断装置303及び第2遮断装置304への通電を止める。その結果、第1遮断装置303及び第2遮断装置304は閉状態になり、配管400a、配管400bを伝って、室外機200から流れ込んでくる冷媒を遮断することができ、室内への冷媒漏れを防止することができる。
[0047] 図4に示すように、第1遮断装置303、第2遮断装置304は、室内機300からL[m]の位置に取り付けられている。上述したように、冷媒に二酸化炭素を用いた場合は、漏洩限界濃度を0.07[kg/m3]未満に抑えなければならない。限界漏洩濃度は、室内機300に存在する冷媒量、室内機300に接続している配管400に存在する冷媒量、及び室内機300が設置されている室内空間V[m3]に依存することになる。すなわち、長さL[m]は下記式(1)を満足しなければならない。」

「[0051] 表2に示す各部位の容積を上記式(1)に代入し、長さを求めた結果、L<30[m]となる。すなわち、室内機300から30m未満のところに第1遮断装置303、第2遮断装置304を設置すれば、室内機300と配管400とから冷媒が漏れても室内空間の冷媒濃度を0.07[kg/m3]未満に保つことができる。そのため、冷媒が漏れたとしても、人体に悪影響を及ぼすことはない。」

「[0053] また、可燃性を有する冷媒を用いた場合等は、下記式(3)から求められるL[m]の位置に第1遮断装置303、第2遮断装置304を設ければよい。
式(3)
(室内機接続配管容積[m3]×L[m]×平均冷媒密度[kg/m3])+(室内機容積×平均冷媒密度[kg/m3])=2.5×(下限可燃濃度[kg/m3])1.25×h[m]×(部屋の床面積[m2])0.5
なお、式(3)において、hは室内機300が設置される位置で決定される(下記参照)。たとえば、床置の場合におけるhは0.6[m]、窓取の場合におけるhは1.0[m]、壁掛の場合におけるhは1.8[m]、天井の場合におけるhは2.2[m]である。」
「
[図:0001383880000001.jpg]
」
「
[図:0001383880000002.jpg]
」

(イ)上記(ア)から分かること

1a)段落[0010]、[0019]及び図1の記載から、室内機300には、冷媒と空調対象空間の空気とを熱交換させることで空調対象空間の冷房又は暖房を行う利用側熱交換器301が設けられていることが分かり、段落[0053]の記載から冷媒として、可燃性を有する冷媒を用いることが分かる。

1b)図1の記載から配管400によって室内機300と室外機200とが連通していることが分かり、段落[0021]の記載から、第1遮断装置303及び第2遮断装置304によって配管400a、400bを開閉していることが分かるので、これらの記載から、冷媒回路には室内機300と室外機200との連通を遮断する第1遮断装置303及び第2遮断装置304が設けられていることが分かる。

1c)段落[0021]の記載から、第1遮断装置303及び第2遮断装置304は二方弁で構成されていることが分かる。

1d)段落[0019]、[0036]~[0038]、[0041]及び図1の記載から濃度検出装置305は空調対象空間に漏洩した冷媒を検知することが分かる。

1e)段落[0010]、[0016]、[0018]、[0020]及び図1の記載から、空気調和装置100は、室内機300と室外機200とを有する冷媒回路と、利用側熱交換器301と、第1遮断装置303及び第2遮断装置304と、濃度検出装置305とを備えていることが分かる。

1f)段落[0040]、[0041]の記載から、濃度検出装置305は、冷媒濃度が漏洩限界濃度より低い値にあることを検出可能であることが分かり、段落[0053]には、可燃性を有する冷媒を用いたときは下限可燃濃度を用いて算出することが記載されている。

そうしてみると、可燃性を有する冷媒を用いたときの漏洩限界濃度とは下限可燃濃度であることが分かり、可燃性を有する冷媒を用いる冷媒回路において、濃度検出装置305は冷媒濃度が下限可燃濃度より低い値にあることを検出可能であることが分かる。

1g)図1、図4の記載から、冷媒回路は、室内機300並びに第1遮断装置303と第2遮断装置304とに挟まれて室内機300にそれぞれ接続された配管400(以下、「室内機300側の部分」という。)と、室外機200及び室外機200から第1遮断装置303までの間と室外機200から第2遮断装置304までの間とにそれぞれ接続される配管400(以下、「室外機200側の部分」という。)とを有することが分かる。

1h)段落[0047]、[0051]には室内機300及び配管400に存在する冷媒が全て空調対象空間に漏洩した際の室内空間の室内濃度を漏洩限界濃度未満に保つように、第1遮断装置303及び第2遮断装置304の配置場所を算出して配置していることが記載されており、また、上述したとおり、可燃性を有する冷媒を用いる冷媒回路において、濃度検出装置305は、冷媒濃度が下限可燃濃度より低い値にあることを検出可能であることが分かる。

そして、上記段落[0047]、[0051]の記載と段落[0053]、図4の記載を参酌すると、可燃性を有する冷媒を用いる冷媒回路において、第1遮断装置303及び第2遮断装置304は、室内機300及び室内機300に接続している配管400、すなわち、室内機300側の部分に存在する可燃性を有する冷媒が全て空調対象空間に漏洩したと仮定したときに、空調対象空間の冷媒濃度が下限可燃濃度未満の範囲になるように配置されていることが分かる。

(ウ)引用発明

上記(ア)及び(イ)からみて、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「室内機300側の部分と室外機200側の部分とを有する冷媒回路と、
前記室内機300側の部分に設けられ、可燃性を有する冷媒と空調対象空間の空気とを熱交換させることで前記空調対象空間の冷房又は暖房を行う利用側熱交換器301と、
前記冷媒回路に設けられ、前記室内機300側の部分と前記室外機200側の部分との連通を遮断する第1遮断装置303及び第2遮断装置304と、
空調対象空間に漏洩した前記可燃性を有する冷媒を検知する濃度検出装置305と、
を備え、
前記第1遮断装置303及び第2遮断装置304は、冷媒回路の室内機300側の部分に存在する前記可燃性を有する冷媒が全て前記空調対象空間に漏洩したと仮定したときに、前記空調対象空間の冷媒濃度が、下限可燃濃度未満の範囲となるように配置され、
前記濃度検出装置305は、冷媒濃度が下限可燃濃度より低い値にあることを検出可能である、
空気調和装置100。」

(3)対比・判断

引用発明における「室内機300側の部分」は本願補正発明における「第1部分(11a、11b、11c、11A、11S)」に相当し、以下同様に、「室外機200側の部分」は「第2部分(12)」に、「冷媒回路」は「冷媒回路(10)」に、「可燃性を有する冷媒」は「冷媒」に、「空調対象空間の冷房又は暖房」は「空調対象空間の空気の冷却又は加熱」に、「利用側熱交換器301」は「熱交換器(30a、30b、30c、30S)」に、「第1遮断装置303及び第2遮断装置304」は「遮断弁(70)」に、「濃度検出装置305」は「冷媒漏洩センサ(50a、50b、50c、50S)」に、「下限可燃濃度未満の範囲」は「第2範囲」に、「下限可燃濃度より低い値」は「第1濃度」に、「空気調和装置100」は「空調システム(100)」に、それぞれ相当する。

したがって、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。

[一致点]

「第1部分(11a、11b、11c、11A、11S)と第2部分(12)とを有する冷媒回路(10)と、
前記第1部分に設けられ、冷媒と空調対象空間の空気とを熱交換させることで前記空調対象空間の空気の冷却又は加熱を行う熱交換器(30a、30b、30c、30S)と、
前記冷媒回路に設けられ、前記第1部分と前記第2部分との連通を遮断する遮断弁(70)と、
漏洩した前記冷媒を検知する冷媒漏洩センサ(50a、50b、50c、50S)と、
を備え、
前記遮断弁は、前記第1部分に存在する前記冷媒が全て前記空調対象空間に漏洩したと仮定したときに、前記空調対象空間の冷媒濃度が、第2範囲内となるように配置され、
前記冷媒漏洩センサは、第1濃度を検出可能である、
空調システム(100)。」

[相違点1]

本願補正発明の冷媒漏洩センサは、「第1部分から漏洩した冷媒を検知」しているのに対し、引用発明の濃度検出装置305は、室内機300側の部分から漏洩した冷媒を検知しているのか特定されていない点。

[相違点2]

本願補正発明は、「第1範囲」を「LFL/X1~LFL/X2」として、冷媒漏洩センサが「冷媒濃度が第1範囲内にあることを検知」し、「第1範囲内のある冷媒の濃度である第1濃度を検出可能」とされているのに対し、引用発明は、濃度検出装置305が、冷媒濃度が下限可燃濃度より低い値にあることを検出可能であるものの、「第1範囲」を「LFL/X1~LFL/X2」として、濃度検出装置305が「冷媒濃度が第1範囲内にあることを検知」し、「第1範囲内のある冷媒の濃度である第1濃度を検出可能」とされていることが特定されていない点。

[相違点3]

本願補正発明は、「X1はY1よりも大きく、X2はY2よりも大きく」とした上で、「第2範囲」を「LFL/Y1~LFL/Y2」として、遮断弁は「第1部分に存在する冷媒が全て空調対象空間に漏洩したと仮定したときに、空調対象空間の冷媒濃度が、第1範囲よりも大きい範囲である第2範囲内となるように配置」され、「第1部分に存在する冷媒が全て空調対象空間に漏洩したと仮定したときに、空調対象空間の第2範囲内の冷媒濃度が第1濃度よりも大きくなるように配置される」のに対し、引用発明では、前記第1遮断装置303及び第2遮断装置304は、冷媒回路の室内機300側の部分に存在する前記可燃性を有する冷媒が全て前記空調対象空間に漏洩したと仮定したときに、前記空調対象空間の冷媒濃度が、下限可燃濃度未満の範囲となるように配置され、前記濃度検出装置305は、冷媒濃度が下限可燃濃度より低い値にあることを検出可能であるものの、「X1はY1よりも大きく、X2はY2よりも大きく」とした上で、下限可燃濃度未満の範囲を「LFL/Y1~LFL/Y2」として、第1遮断装置303及び第2遮断装置304は「第1部分に存在する冷媒が全て空調対象空間に漏洩したと仮定したときに、空調対象空間の冷媒濃度が、第1範囲よりも大きい範囲である第2範囲内となるように配置」され、「第1部分に存在する冷媒が全て空調対象空間に漏洩したと仮定したときに、空調対象空間の第2範囲内の冷媒濃度が第1濃度よりも大きくなるように配置される」ことが特定されていない点。

以下、相違点について検討する。

[相違点1について]

上述したとおり、引用発明の濃度検出装置305は空調対象空間に漏洩した冷媒を検知するものであり、また、引用例1には濃度検出装置305は、室内機300が設置されている空間に配置されることが記載されている(段落[0038]参照。)。

そして、前記室内機300側の部分から冷媒の漏洩が生じると、当該漏洩を濃度検出装置305が検出することは明らかであるので、当該濃度検出装置305は室内機300側の部分から漏洩した冷媒を検知するものと認められる。

そうしてみると、冷媒漏洩センサが、「第1部分から漏洩した冷媒を検知」することについて、両者は相違するものではない。

[相違点2、3について]

上述したとおり、引用発明の濃度検出装置305は、冷媒濃度が下限可燃濃度より低い値(上記のとおり「第1濃度」に相当。)にあることを検出可能なものであるが、冷媒濃度が下限可燃濃度より低い値を含む第1範囲内にあることも検出しているのか否か特定されていない。

しかしながら、検出のばらつき等を考慮して、検出対象を特定の値とすることだけでなく、当該値を含む一定の範囲を設定することは単なる設計変更に過ぎない。

そうしてみると、引用発明において、濃度検出装置305によって、冷媒濃度が下限可燃濃度より低い値を含む第1範囲内にあることも検出するように構成することは、当業者が容易になし得たことである。

また、上述したとおり、引用発明において、第1遮断装置303及び第2遮断装置304は、前記室内機300側の部分に存在する冷媒が全て空調対象空間に漏洩したと仮定したときに、空調対象空間の冷媒濃度が、下限可燃濃度未満の範囲(上記のとおり「第2範囲」に相当。)になるように配置されているものである。

そして、下限可燃濃度未満の範囲になる前に冷媒漏れの検出を行わないと、冷媒漏れによる事故等を確実に防止することができないことは技術常識に鑑みて明らかであるので、上述した下限可燃濃度より低い値を含む第1範囲の設定に際して、下限可燃濃度より低い値を含む第1範囲を上記下限可燃濃度未満の範囲よりも小さくなるように設定することは当業者が容易になし得たことである。

また、下限可燃濃度はLFLであることは技術常識であり、安全率等を考慮して、本願補正発明のようにLFLの除算した値から第1範囲及び下限可燃濃度未満の範囲を設定することは、当業者が適宜設定し得た設計的事項に過ぎない。

そして、上述した下限可燃濃度より低い値を含む第1範囲を上記下限可燃濃度未満の範囲よりも小さくなるように設定する際、本願補正発明のように、安全率であるX1、Y1、X2、Y2を用いて「X1はY1よりも大きく、X2はY2よりも大きく」なるように設定することで、第1範囲と上記下限可燃濃度未満の範囲との大小関係を単に数式で表すことに格別の困難性は認められない。

そして、本願補正発明は、引用発明から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

(4)審判請求人の主張

折りたたみ中(クリックで表示)

審判請求人は、令和3年9月24日提出の上申書において、次のとおり主張している。

「引用文献1は、不燃冷媒である「二酸化炭素」を冷媒として用いた場合の遮断弁の配置位置の計算方法を、主として、その段落0047-0051で示しています。二酸化炭素の特有の数値を用いて、室内空間の冷媒濃度が0.07[kg/m3]未満に保たれるように遮断弁を配置する方法が、引用文献1に記載されています。したがって、当業者は、「二酸化炭素」を冷媒として用いた場合の遮断弁の配置位置を、引用文献1を基にして計算、決定することができるかもしれません。
しかし、引用文献1には、確かに段落0053に
「また、可燃性を有する冷媒を用いた場合等は、下記式(3)から求められるL[m]の位置に第1遮断装置303、第2遮断装置304を設ければよい」
と記載があり、式(3)が示され、遮断弁の配置位置であるL[m]が一見求められるように思えますが、“冷媒漏洩センサの検知タイミング”との関係が全く示されておらず、これでは当業者であっても引用文献1を参照して適切な遮断弁の配置位置を決めることは不可能です。可燃性冷媒を用いた場合について、どのような冷媒漏洩センサの検知タイミングを前提にしているのか引用文献1から読み取ることはできず、上記の前置報告の判断4は失当あるいは判断不足だと思慮いたします。たとえ
続きを表示(全13行)
「引用文献1に記載された発明における「漏洩限界濃度」が燃焼下限濃度LFLであることは技術常識である(判断4)」
としても、引用文献1では、どのようなタイミングで遮断弁が作動するのかが明確ではなく、引用文献1の段落0053の式(3)によってL[m]を決めて遮断装置303,304を配置したとしても、それで室内空間にLFLを超過する冷媒が漏洩してしまうことを防止できるか否か分かりません。
以上のように、本願発明の
“冷媒漏洩センサは、第1範囲内のある冷媒の濃度である第1濃度を検出可能であり、”“遮断弁は、
第1部分に存在する冷媒が全て空調対象空間に漏洩したと仮定したときに、空調対象空間の冷媒濃度が、第1範囲よりも大きい範囲である第2範囲内となるように配置され、
第1部分に存在する冷媒が全て空調対象空間に漏洩したと仮定したときに、空調対象空間の第2範囲内の冷媒濃度が第1濃度よりも大きくなるように配置される”
という構成は引用文献1に示されておらず、引用文献1から本願発明の構成に至ることは当業者であっても容易ではなく、また、本願発明の
“空調対象空間の冷媒濃度がLFLを超過することが抑制される”
という効果は、引用文献1が示す遮断弁の配置位置の計算方法では必ずしも得られないと思慮いたします。」

しかしながら、上記「1f)」で上述したとおり、可燃性を有する冷媒を用いる冷媒回路において、濃度検出装置305は冷媒濃度が「下限可燃濃度より低い値」にあることを検出可能であることが分かり、また、段落[0041]には、「漏洩限界の濃度より低い値(たとえば、漏洩限界濃度の1/10の濃度)」と記載されているように、当該「下限可燃濃度より低い値」は「下限可燃濃度」よりもわずかに低いだけの値ではなく、下限可燃濃度に比べて非常に小さい値であることが分かる。

さらに、上記「1h)」で上述したとおり、引用例1の段落[0047]、[0051]の記載と図4の記載から、引用発明では、「可燃性を有する冷媒を用いる冷媒回路において、第1遮断装置303及び第2遮断装置304は、室内機300及び室内機300に接続している配管400、すなわち、室内機300側の部分に存在する可燃性を有する冷媒が全て空調対象空間に漏洩したと仮定したときに、空調対象空間の冷媒濃度が下限可燃濃度未満の範囲になるように配置されている」ことが分かる。

そうしてみると、濃度検出装置305が検出可能な「下限可燃濃度より低い値」は、第1遮断装置303及び第2遮断装置304の調整による「下限可燃濃度未満の範囲」及び「下限可燃濃度(LFL)」を超えるものではないことは明らかである。

そして、上記[相違点2、3について]で上述したとおり、濃度検出装置305によって、冷媒濃度が下限可燃濃度より低い値を含む第1範囲内にあることも検出するように構成すること及び下限可燃濃度より低い値を含む第1範囲の設定に際して、下限可燃濃度より低い値を含む第1範囲を上記下限可燃濃度未満の範囲よりも小さくなるように設定することは当業者が容易になし得たことである。

よって、審判請求人の上記主張は採用できない。

したがって、本願補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび

以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、令和3年2月22日提出の手続補正書により補正された請求項1及び2に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(2)に記載したとおりである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1及び2に係る発明は、本願の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものであるとともに、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶すべきものであるというものである。

・請求項1及び2に対して、引用例1ないし3

<引用例一覧>

1.国際公開第2011/099058号

2.特開2019-45129号公報

3.国際公開第2012/160598号

3 引用例

原査定の拒絶の理由で引用された引用例1、その記載及び引用発明は、前記第2[理由]2(2)アに記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は前記第2[理由]2で検討した本願補正発明から、「前記冷媒漏洩センサは、前記第1範囲内のある冷媒の濃度である第1 濃度を検出可能であり」との限定事項、及び「前記遮断弁は、前記第1部分に存在する前記冷媒が全て前記空調対象空間に漏洩したと仮定したときに、前記空調対象空間の前記第2範囲内の冷媒濃度が前記第1 濃度よりも大きくなるように配置される」との限定事項を省いたものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定による特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2021-008242

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決729件(ダイキン工業株式会社)
  • 2025-000523拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)撥剤
    同じ当事者: ダイキン工業株式会社
  • 2025-000820拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)撥剤
    同じ当事者: ダイキン工業株式会社
  • 2025-002484拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)撥剤
    同じ当事者: ダイキン工業株式会社
  • 2025-002485拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)撥剤
    同じ当事者: ダイキン工業株式会社
  • 2024-007053拒絶査定不服審判 / 2026-08-24 / 原査定取消(特許/登録すべき)機器性能値予測方法、システム、およびプログラム
    同じ当事者: ダイキン工業株式会社
検索でもっと見る →
同じ根拠条文の審決7,656件(特許法29条2項)
  • 2024-007130拒絶査定不服審判 / 2025-11-26 / 請求不成立マルチカスケード冷却システム
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-011277拒絶査定不服審判 / 2026-05-25 / 請求不成立冷媒サイクルシステム
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2023-020426拒絶査定不服審判 / 2025-06-11 / 請求不成立空調装置
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2022-012298拒絶査定不服審判 / 2023-03-06 / 請求不成立膨張弁
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2022-007615拒絶査定不服審判 / 2023-01-20 / 請求不成立アキュムレータおよび空調用圧縮機
    共通の条文: 特許法29条2項
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)261件(121・F25B、537・F25B、575・F25B)
  • 2024-007130拒絶査定不服審判 / 2025-11-26 / 請求不成立マルチカスケード冷却システム
    共通の審決分類: 121・F25B、537・F25B、575・F25B
  • 2024-000308拒絶査定不服審判 / 2026-06-29 / 原査定取消(特許/登録すべき)冷凍装置
    共通の審決分類: 121・F25B、537・F25B
  • 2024-009129拒絶査定不服審判 / 2026-06-02 / 原査定取消(特許/登録すべき)冷凍サイクル装置
    共通の審決分類: 121・F25B、537・F25B
  • 2024-002085拒絶査定不服審判 / 2026-05-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)空気調和装置
    共通の審決分類: 121・F25B、537・F25B
  • 2024-011277拒絶査定不服審判 / 2026-05-25 / 請求不成立冷媒サイクルシステム
    共通の審決分類: 121・F25B、537・F25B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存