2021-006424
電子デバイス内のガラス構造の内部コーティング
- 審判番号
- 2021-006424
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-013767外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年05月19日
- 審決日
- 2023年01月20日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アップル インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人大塚国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (G09F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 18項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成30年6月13日に出願した特願2018-113066号の一部を令和2年1月30日に新たな特許出願とした外国語書面出願(パリ条約による優先権主張 2017年6月20日及び2018年6月5日、いずれも米国)であって、出願後の手続の経緯の概略は、次のとおりである(以下、2017年6月20日を「優先日」という。)。
同年 3月 3日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月 8日 :査定の謄本の送達)
同年 5月19日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 6月29日付け:前置報告書
同年10月 7日 :上申書の提出
同年 6月10日付け:拒絶理由通知書
同年 8月24日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~20に係る発明は、令和4年8月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~20に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は、次のとおりである(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。
「【請求項1】電子デバイスであって、ガラス部を有するハウジングと、前記ガラス部上のコーティングと、を備え、前記コーティングは、前記ガラス部上の第1の層と、第2の層と、前記第1の層と前記第2の層の間に配置され、前記第1の層又は前記第2の層のうちの少なくとも1つと異なる材料から形成された第3の層と、を含み、前記第1の層は前記ガラス部に対する前記第3の層の接着を促進する金属層であり、前記第1の層は前記ガラス部に直接配置されている、電子デバイス。」
第3 令和4年6月10日付けで通知した拒絶の理由の概要
令和4年6月10日付けで通知した拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由通知書」という。)における請求項1についての拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
<進歩性の欠如>
この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない(ただし、本願の請求項1に係る発明との対比の基礎となる発明は、引用文献1、引用文献12,引用文献13又は引用文献9に記載された発明である。)。
記
1.特表2013-519151号公報
9.登録実用新案第3208984号公報
10.特開2002-350610号公報
11.特表2002-530712号公報
12.特開2009-78458号公報
13.特表2013-515285号公報
14.特表2015-535804号公報
15.特表2015-512057号公報
16.特表2014-534456号公報
17.特表2016-537740号公報
第4 当審の判断
1 各引用文献に記載された事項並びに引用発明、技術常識及び周知技術の認定
(1) 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
ア 引用文献1に記載された事項
当審拒絶理由通知書において引用した、本願の優先日前に発行された引用文献1(特表2013-519151号公報)には、以下の記載がある。なお、下線は、当審が付したものであり、後記イにおいて引用発明の認定に直接用いるところに付してある。
(ア) 【0001】~【0036】、【図2A】~【図2D】
「【技術分野】【0001】本発明は、ハンドヘルド装置のエンクロージャーに係る。(中略)続きを表示(全18行)【0019】電子装置のハウジング部材は、例えば、構造的貢献、機能的貢献、化粧的貢献、又はそれらの組み合わせを含む種々の貢献を電子装置に与えることができる、あるケースでは、ハウジング部材は、電子装置の外部コンポーネントを形成することができ、それ故、装置の機械的構造体をなすことができる。ハウジング部材は、適当な形態で設けることができる。ある実施形態では、ハウジング部材は、外周部材を含む。図2Aは、本発明の一実施形態により装置の巾に沿って切り取られた外周部材を有する例示的電子装置構造体の断面図である。図2Bは、本発明の一実施形態により装置の長さに沿って切り取られた外周部材を有する例示的な電子装置の分解断面図である。図2Cは、本発明の一実施形態による外周部材を有する例示的電子装置の上面図である。図2Dは、本発明の一実施形態による外周部材を有する例示的電子装置の下面図である。電子装置200は、適当な形式の電子装置を含み、例えば、装置10(図1)に関連して上述した1つ以上のタイプの電子装置を含む。【0020】電子装置200は、例えば、前面210、後面212、左面214、右面216、上面218、及び下面219(図2A及び2Bの断面図には示されていない)により画成された形状を含む適当な形状を有する。各面は、実質的に平坦であるか、カーブしているか、又はそれらの組合せである。それらの表面は、1つ以上の面取り部、止め部、開口、くぼみ、延長部、又は表面の滑らかさを変更する他の特徴を含む。【0021】電子装置200は、例えば、外周部材220を使用することを含めて、適当な構造体を使用して構成することができる。外周部材220は、電子装置のある部分又は全部を取り囲む又は取り巻くループを形成することができる。外周部材220により形成されたループは、電子装置コンポーネントを入れることのできる内部容積部222を画成する。例えば、外周部材220は、その外周部材220の外面が、装置の左面214、右面216、上面218及び下面219のある部分又は全部を画成するように、装置の周りに巻き付けることができる。ユーザに希望の機能を与えるため、電子装置は、装置内、例えば、容積部222内に入れられる多数のコンポーネントを含むことができる。(中略)【0033】電子装置200は、その前面及び後面を各々画成する前部カバーアッセンブリ250及び後部カバーアッセンブリ260を備えている。これら前部及び後部カバーアッセンブリは、1つ以上のコンポーネントを含むか、或いは装置の外側前面及び後面の幾つか又は全部を形成する少なくとも前部部材及び後部部材を含む。前部及び後部カバーアッセンブリ250及び260は、外周部材220の前面及び後面に対して平らであるか、くぼんでいるか、又は突出している。図2A及び2Bの例において、前部カバーアッセンブリ250及び後部カバーアッセンブリ260は、外周部材220の前縁及び後縁より盛り上がり又はその上に突出する(例えば、カバーアッセンブリの内面が外周部材の前面又は後面と平らになるように)。(中略)【0035】ある実施形態では、電子装置の種々のコンポーネントを実質的にガラスで作ることができる。例えば、電子装置ハウジングの部分は、その外部の少なくとも75%がガラスである。1つの具現化において、カバーアッセンブリの一方又は両方が、カバーアッセンブリの実質的な部分をなすガラス要素を含む。特に、装置の前面及び後面は、実質的な量のガラスを含み、一方、装置の左面、右面、上面及び下面は、実質的な量の金属(例えば、スチール)を含む。【0036】ある実施形態では、ポータブル電子装置のハウジングは、種々の表面に対してたたかれ又は擦られる。プラスチック又は柔軟な金属のハウジング面が使用されたときには、それらの面にスクラッチ傷が生じる傾向がある。他方、ガラスのハウジング面(例えば、ガラスカバーアッセンブリ)は、耐スクラッチ性が高い。更に、ガラスのハウジング面は、高周波透過性を呈し、一方、金属のハウジング面は、高周波通信を妨げ又は妨害する。1つの実施形態では、電子装置ハウジングは、電子装置ハウジングの前面及び後面にガラスハウジング部材(例えば、ガラスカバーアッセンブリ)を使用する。例えば、ガラスハウジング部材から形成される前面は、前面のガラスハウジング部材の後方に位置するディスプレイ装置への視覚アクセスを与えるように透明であり、一方、ガラスハウジング部材から形成される後面は、透明又は不透明でよい。不透明が望まれる場合には、電子装置ハウジング内の内部コンポーネントを隠すことができる。一実施形態において、不透明性又は少なくとも部分的半透明性を与えるためにガラスハウジング部材に表面コーティング又はフィルムを施すことができる。そのような表面コーティング又はフィルムは、ガラスハウジング部材の内面又は外面に施すことができる。」
「[図:0001398635000001.jpg][図:0001398635000002.jpg]」
(イ) 【0037】~【0064】、【図3A】~【図3C】
「【0037】図3Aは、本発明の一実施形態による例示的電子装置の概略斜視図である。図3Bは、本発明の一実施形態による図3Aの電子装置の分解図である。図3Cは、本発明の一実施形態による図3Aの電子装置の断面図である。図3A-3Cの電子装置は、図2A-2Dの電子装置の特徴の幾つか又は全部を含む。特に、同様の番号をもつコンポーネントは、幾つかの又は全ての特徴を共有する。外周部材320は、電子装置300の周囲を取り巻き、電子装置の最も外側の側部、上面及び下面(例えば、前面310、後面312、左面314、右面316、上面318及び下面319)の幾つか又は全部を形成する。外周部材320は、例えば、リングを形成するように結合される1つ以上の要素を含めて、適当な形状を有する。リング状の外周部材320は、電子装置コンポーネントをアッセンブルして保持することのできる容積部322を包囲する。外周部材320の形状は、容積部322の境界を画成し、それ故、容積部322内に入れられるコンポーネントのサイズ及びタイプに基づいて決定される。容積部322の境界(例えば、外周部材320の形状により決定される)は、例えば、実質的に長方形状(例えば、まっすぐの又は丸み付けされた縁又は角を有する)、円形状、楕円形状、多角形状、又は容積部を画成できる他の閉じた形状を含めて、適当な形状をもつことができる。(中略)【0054】続きを表示(全11行)図3A-3Cに戻ると、容積部332内にコンポーネントを保持するために、電子装置300は、電子装置の後面及び前面を各々形成する後部カバーアッセンブリ350及び前部カバーアッセンブリ360を備えている。各カバーアッセンブリは、例えば、接着剤、テープ、機械的固定具、フック、タブ、又はその組み合わせを使用することを含めて、適当な解決策を使用して、外周部材320に結合される。ある実施形態では、例えば、電子装置コンポーネント(例えば、バッテリ)を修理し又は交換するために、カバーアッセンブリ350及び360の一方又は両方を除去することができる。ある実施形態では、前部及び後部カバーアッセンブリ350及び360は、例えば、固定部及び可動部を含めて、多数の異なる部分を含むことができる。前部カバーアッセンブリ350及び後部カバーアッセンブリ360の内面は、外周部材320上でカバーを保持するか又はカバーの適切な整列を保証するために、例えば、1つ以上の峰、フック、タブ、延長部、又はその組み合わせを含めて、適当な特徴部を含むことができる。前記及び後部カバーアッセンブリ350及び360の特徴部は、カバーの適切な配置を保証するために、外周部材320の対応する特徴部又は電子装置の他のコンポーネントと相互作用する。(中略)【0060】電子装置300(図3A-3C)に戻ると、前部カバーアッセンブリ350及び後部カバーアッセンブリ360は、適当な材料又は材料の組合せから構成することができる。ある実施形態では、カバーアッセンブリ350及び360の各々は、多数の異なる要素を結合することで構成することができる。例えば、一方又は両方のカバーアッセンブリは、透明又は半透明のプレート(例えば、長方形のガラスプレート)を含む。別の例として、一方又は両方のカバーアッセンブリは、1つ以上の金属又はプラスチック(例えば、アルミニウム)から構成されたベース又は支持構造体を備え、これに透明要素をアッセンブルすることができる。透明要素は、例えば、透明要素を通して1つ以上の電子装置コンポーネント(例えば、ディスプレイ回路又は画像捕獲のためのフラッシュ)を見ることができるようにすることを含めて、適当な解決策を使用してアッセンブルすることができる。別の例として、透明要素は、(例えば、センサ又はカメラを使用して)透明要素を通して信号を受信し又はユーザの環境を検出するために設けることができる。或いは又、透明要素が主として化粧用コンポーネントとして働くように、透明要素の1つ以上の部分を不透明とすることができる(例えば、インクを使用するか又は透明要素の後方に支持構造体を配置することにより)。例えば、接着剤、固定具、テープ、インターロックコンポーネント、オーバーモールド、又は製造プロセス、或いはそれらの組合せの1つ以上を使用することを含めて、適当な解決策を使用して、各カバーアッセンブリの異なるコンポーネントをアッセンブルすることができる。(中略)【0064】電子装置300の化粧又は審美的魅力を向上させるために、外周部材320、前部カバーアッセンブリ350及び後部カバーアッセンブリ360の1つ又は全部を、適当なプロセスを使用して仕上げることができる。例えば、ポリシング、コーティング(例えば、染料又は着色材料や、光学的効果を与える材料を使用)、グレージング、薄膜堆積、グラインディング、スーパー仕上げ、又は他の適当なプロセスの1つ以上を電子装置コンポーネントに適用することができる。ある実施形態では、1つ以上のガラス面(例えば、前部カバーアッセンブリ350又は後部カバーアッセンブリ360の)は、例えば、1つ以上のマスク、コーティング(例えば、調光又は二色性コーティング)、インク層、又はそれらの組み合わせを使用して、審美的に満足な見掛けを与えるように仕上げられる。前部カバーアッセンブリ350及び後部カバーアッセンブリ360のガラス面に適用される特定の仕上げは、前面及び後面310及び312が同様の見掛け又は異なる見掛けを有するように選択される。ある実施形態では、ガラス面は、摩耗又は衝撃に耐え(例えば、耐スクラッチ性)、オイルの接触を防止し、又は他の外力が装置に加わるのを防止するように処置することができる。」
「[図:0001398635000003.jpg][図:0001398635000004.jpg][図:0001398635000005.jpg]」
イ 引用発明の認定
(ア) 引用文献1の【0054】の「図3A-3Cに戻ると、容積部332内にコンポーネントを保持するために、電子装置300は、電子装置の後面及び前面を各々形成する後部カバーアッセンブリ350及び前部カバーアッセンブリ360を備えている。」との記載は、図3A-3Cの内容を参酌すると「図3A-3Cに戻ると、容積部332内にコンポーネントを保持するために、電子装置300は、電子装置の前面及び後面を各々形成する前部カバーアッセンブリ350及び後部カバーアッセンブリ360を備えている。」の誤記であることは明らかである(下線は合議体による)。
(イ) 前記(ア)の点も踏まえ、前記(1)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「電子装置300であって、電子装置300は、電子装置の前面310及び後面312を各々形成する前部カバーアッセンブリ350及び後部カバーアッセンブリ360を備えており、各カバーアッセンブリは、例えば、接着剤、テープ、機械的固定具、フック、タブ、又はその組み合わせを使用することを含めて、適当な解決策を使用して、外周部材320に結合されており(【0054】)、両方のカバーアッセンブリは、透明又は半透明の長方形のガラスプレートを含み(【0060】)、前部カバーアッセンブリ350と後部カバーアッセンブリ360のガラス面は、二色性コーティングを使用して、審美的に満足な見掛けを与えるように仕上げられている(【0064】)、電子装置300」
(2) 引用文献13に記載された事項及び技術常識の認定
ア 引用文献13に記載された事項
当審拒絶理由通知書において引用した、本願の優先日前に発行された引用文献13(特表2013-515285号公報)には、以下の記載がある。
「【技術分野】【0001】本発明は、電子装置に化粧的魅力をもたせる二色性ガラスに係る。(中略)続きを表示(全22行)【発明の概要】【0004】電子装置のガラスコンポーネントに多数のコーティングを被覆してガラスコンポーネントに二色性光学特性を与えるためのシステム及び方法が提供される。より詳細には、ガラスコンポーネントの異なる位置に異なる材料を異なる量で被覆して、審美的に満足なガラスコンポーネント、例えば、電子装置の窓を形成することができる。【0005】電子装置の審美的な見掛けを向上させるため、ガラスコンポーネントに異なるプロセスを適用して、審美的に満足なカラーコーティングを設けることが望まれる。例えば、装置のガラス窓に異なる材料を薄い膜で設けて、着色ガラス面を形成することができる。別の例として、ディスプレイがターンオフされたときにはガラスコンポーネントが高い反射性となるが、ディスプレイがターンオンされたときにはそれが透明となるように、ガラスコンポーネントにコーティングを施すことができる。更に別の例として、ロゴや他の透かしがコンポーネント上に現れるようにコーティングを施すこともできる。ある実施形態では、二色性コーティングを使用して、これらのカラーベースの審美的効果を発揮させることができる。【0006】適当な材料を、1つ以上の層において、異なる厚み及び順序で、コンポーネントに付着して、望ましい審美的効果を発揮させることができる。例えば、異なる材料層は、特定の望ましいカラープロフィール、色合い、飽和、カラー勾配、又は他の視覚特性に一致するように選択することができる。別の例として、各層又は積層体(例えば、二色性層の積層体又は物理的蒸着(PVD)層の積層体)の不透明さ又は他の光学的特性を変えることができる。ある実施形態では、異なる形式の層又は材料の積層体を二色性層と結合して、特定の審美的効果を発揮させることができる。1つの具現化では、光が反射して二色性層を透過する仕方を制御するために、コンポーネントは、二色性積層体の下にインク積層体を含むことができる。(中略)【0008】二色性積層体を生成するための特定の材料及び層構成を、適当な解決策を使用して選択することができる。ある実施形態では、ソフトウェアを使用して、材料及び層構成を定義することができる。例えば、各波長において特定の角度で透過、反射又はその両方がなされる光の量を定義する望ましいカラーパワー曲線をソフトウェアに与えることができる。その定義されたカラーパワー曲線から、ソフトウェアは、ガラス表面に付着されたとき、その定義されたカラーパワー曲線を与える材料及び層の最も適した組み合わせを計算することができる。1つの具現化では、使用する材料は、TiO2及びSiO2の組合せを含むことができる。(中略)【0013】二色性材料は、可視光を、異なるカラーの個別のビーム(即ち、透過光及び反射光)に分割させる。特に、二色性仕上げをカバー窓に適用して、カバー窓がユーザにとって鮮やかな色に見える(光彩を放つ効果、豪華な色、及び/又は光沢又は輝く見掛け)ようにすることができる。(中略)【0019】適当な解決策を使用して窓200の1つ以上のエリアの表面に二色性コーティングを施すことができる。あるケースでは、異なる金属(例えば、金又は銀)或いは金属酸化物(例えば、チタン、クロム、アルミニウム、ジルコニウム又はマグネシウム)の多数の薄い層を表面に付着することにより二色性コーティングを設けることができる。例えば、SiO2及びTiO2の多数の薄い層(例えば、10ないし70枚の層、20ないし60枚の層、30ないし50枚の層、又は20枚の層)を窓の表面に堆積して二色性積層体を形成することにより、二色性コーティングを施すことができる。例えば、物理的蒸着(PVD)プロセスを含む適当な解決策を使用して薄い層を付着することができる。【0020】達成される特定の光学的効果は、堆積される層の枚数、各層に堆積される材料の形式、及び材料上の各層の位置又はパターンにより決定され又は定義される。特に、材料及び層厚みの各組み合わせを、光が二色性コーティングを通して表面から反射するときの特定の色又は効果と関連付けることができる。ある実施形態では、二色性層に代わって又はそれに加えて材料及び層を付着して他の光学的効果を発揮させることができる。コーティング内に特定の形状又はロゴを画成するために、コーティングの異なる層に対して1つ以上のマスクを使用することができる。」
イ 技術常識の認定
引用文献13の例示をするまでもなく、次の技術事項は技術常識である。
<技術常識>
「二色性(ダイクロイック)の光学効果を与えるコーティングは、屈折率の異なる(したがって、材料の異なる)複数の薄膜からなる光学多層薄膜で構成されていること。」
(3) 引用文献10、14に記載された事項と周知技術の認定
ア 引用文献10
(ア) 引用文献10に記載された事項
当審拒絶理由通知書において引用した、本願の優先日前に発行された引用文献10(特開2002-350610号公報)には、以下の記載がある。
a 【請求項5】
「【請求項5】 基板と、この基板上に、密着層を介して形成される光学多層体とを備えたことを特徴とする薄膜型NDフィルタ。」
b 【0015】~【0025】及び【図1】
「【0015】[第1の実施の形態]図1は、本発明の第1の実施の形態に係る薄膜型NDフィルタの概略構成を表している。この薄膜型NDフィルタ10は、ハードコート層1aがコーティングされた基板1の上に光学多層体5を設けたものである。【0016】基板1は、材質を特に限定しないが、透明であるものが好ましい。また、量産性を考慮する場合には、後述するロールコーティングが可能となる可撓性を有する基板であることが好ましい。可撓性のある基板は、従来のガラス基板等に比べて廉価・軽量・変形性に富むといった点においても優れている。ここでは、基板1として、厚みが188μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを用いている。この他、基板1としては、PC(ポリカーボネート),PO(ポリオレフィン),PES(ポリエチレンサルファイド)などの高分子ポリマー系材料、薄膜ガラス等を用いてもよく、着色された基板あるいは可撓性を有しない基板であっても構わない。また、ハードコート層1aは、基板1をコーティングして基板強度を向上させるためのものであり、例えば、6μmの厚みのアクリル樹脂を用いる。但し、ハードコート層1aは必ずしも設けられる必要はない。【0017】光学多層体5は、基板1の上に設けられており、Nb層3および誘電体層4が交互に積層されたものである。その層数は任意であるが、ここではNb層3,誘電体層4が各2層、合計4層としている。(後略)」
「【図1】[図:0001398635000006.jpg]」
c 【0026】~【0029】及び【図3】
「【0026】[第2の実施の形態]図3は本発明の第2の実施の形態に係る薄膜型NDフィルタの概略構成を表している。この薄膜型NDフィルタ20は、第1の実施の形態と同様の基板1の上に、密着層2を介して光学多層体7を設けたものである。なお、ここでは、第1の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付すことにする。【0027】本実施の形態においても、基板1には厚みが188μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを用いており、ハードコート層1aによりコーティングされている。【0028】この基板1の上には、光学多層体7が密着層2を介して設けられている。光学多層体7はNDフィルタとして機能する多層膜であればよく、その構成や材質を問わないが、ここではその一例として、金属層6および誘電体層4が交互に積層されたものについて説明する。金属層6は、例えばCr,Tiなどの金属により構成され、DCスパッタリング等により形成される。誘電体層4は、金属層6に対してできるだけ低い屈折率を有する誘電体材料で構成され、例えばArおよびO2 雰囲気中のACスパッタリング法により形成される。また、金属層6と誘電体層4の各層の厚みと層数は、総体としての光学多層体7における所望の光学特性との兼ね合いによって決定されるが、その層数はおおむね7層以上であり、層数が多いほど良好な光学特性が得られる場合が多い。【0029】また、ここでは、基板1と光学多層体7との間に、両者の密着性を向上させると共に光学多層体7に生じる応力を緩和するための密着層2が設けられている。密着層2は、例えば厚みが2nmのケイ素(Si)から構成される。密着層2の構成材料としてはSiが最も好ましいが、その他にもTiなどの化学的活性を発揮することができる材料を用いてもよい。また、その厚みは1nm以上10nm以下の範囲内とすることが好ましい。厚みが1nm未満では、十分な密着性が得られずに、両者の界面に膜はがれやクラックを生じる虞がある。逆に、厚みが10nmより大きな値の場合には、透過率が減少し、可視光領域で平坦な光学的特性を得られない虞があるためである。こうした密着性、光学的特性を考慮すると、密着層2の厚みは2nm程度であることがより好ましい。なお、密着層2は、例えばDCスパッタにより形成される。」
「【図3】[図:0001398635000007.jpg]」
d 【0042】~【0044】及び【図5】
「【0042】[第3の実施の形態]図5は本発明の第3の実施の形態に係る薄膜型NDフィルタの概略構成を表している。この薄膜型NDフィルタ30は、基板1と光学多層体5との間に密着層2を設けたことを除いて第1の実施の形態に係るNDフィルタ10と同様に構成されている。よって、第1の実施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。【0043】本実施の形態においても、基板1には厚みが188μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを用いており、ハードコート層1aによりコーティングされている。また、基板1の上に設けられる光学多層体5は、Nb層3および誘電体層4が交互に各2層、合計4層積層されたものである。第1の実施の形態で説明したように、Nb層3は比較的厚く成膜されるので、容易に所定の厚みに形成され、ばらつきも少ないものとなる。よって、この光学多層体5は、Nb層3において膜厚と同時に光学特性が良好に制御されるため、4層と少ない層数であっても、充分に平坦な透過率分光特性を有している。【0044】また、ここでは、基板1と光学多層体5との間に、両者の密着性を向上させると共に光学多層体5に生じる応力を緩和するための密着層2が設けられている。これにより、両者の界面に膜はがれやクラックが生じることが防止される。」
「【図5】[図:0001398635000008.jpg]」
(イ) 引用文献10に記載の技術事項の認定
a 前記(ア)に摘記した事項の確認
(a) 【請求項5】には、次の事項が記載されている。
「基板と、この基板上に、密着層を介して形成される光学多層体とを備えたことを特徴とする薄膜型NDフィルタ。」
(b) そして、【0029】には、「基板と光学多層体との間に設けられる密着層は、両者の密着性を向上させるとともに光学多層体に生じる応力を緩和するためのものであること」が記載されている。
(c) また、【0016】には、「基板は薄膜ガラス等を用いてもよいこと」及び「基板をコーティングして基板強度を向上させるためのものであるハードコート層1aは必ずしも設けられる必要はないこと」が記載されている。
b 引用文献10に記載の技術事項
前記aをまとめると、引用文献10には、次の技術事項(以下「引用文献10記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献10に記載の技術事項>
「薄膜ガラスからなり、ハードコート層が設けられていない基板に、密着層を介して光学多層体を形成することにより、基板と光学多層体の密着性を向上させるとともに光学多層体に生じる応力を緩和すること。」
イ 引用文献14
(ア) 引用文献14に記載された事項
当審拒絶理由通知書において引用した、本願の優先日前に発行された引用文献14(特表2015-535804号公報)には、以下の記載がある。
a 【0013】、【0014】、【図1】
「【0013】ガラス物品は、反対の主面を有するガラス本体、および第1の主面の大半を覆って設けられた層を備えている。この層は、下にあるガラスに耐引掻性を提供することがあり、該層は、少なくとも10GPaのバーコビッチ圧子硬度およびその厚さの少なくとも一部に沿ったx線非晶構造を有する。この層は、必要に応じて、少なくとも70%の光透過率および/または少なくとも10MPaの圧縮応力を示すことがある。【0014】この層は、ガラス基板に耐引掻性を与える、光透過性の硬質被膜を構成することがある。実施の形態において、ガラス基板は化学強化ガラスから構成される。その層は、ガラスの全体の光学的透明度を維持しながら、基板の表面の耐引掻性を相当向上させることができる。ガラス本体120の主面を覆って設けられた層110を備えた耐引掻性ガラス基板100が図1に概略示されている。」
「【図1】[図:0001398635000009.jpg]」
b 【0034】~【0056】
「【0034】前記層は、転写層またはその場で堆積された薄膜であってもよい。転写層は、一般に、ソースウェハー(例えば、Al2O3)を、このソースウェハー中へのイオン注入により画成される劈開面に沿って劈開させる工程を含む層転写法により設けてよい。通常は、イオン注入種として、水素が使用される。層転写法の利点の1つは、水素注入により誘発した剥離が何度も繰り返され、よって初期の自立ウェハーから多くの層を収穫できることである。収穫した層は、ガラス基板の表面に結合することができる。【0035】さらに別の実施の形態において、前記層は、適切な出発材料のガラス基板上への直接のまたは先に表面改質したガラス基板上への化学蒸着(例えば、プラズマ支援化学蒸着)、物理蒸着(例えば、スパッタ堆積またはレーザアブレーション)または熱蒸発によって形成することができる。続きを表示(全22行)スパッタ法は、反応性スパッタリングまたは非反応性スパッタリングを含んでもよい。そのような層を形成するための単槽スパッタ堆積装置200が図2に概略示されている。この装置200は、1つ以上のガラス基板212をその上に搭載できる基板ステージ210、およびマスクステージ220を有する真空室205を備えており、このマスクステージは、基板の規定領域上への層のパターン付き堆積のためのシャドーマスク222を搭載するために使用できる。真空室205には、内圧を制御するための真空ポート240、並びに水冷ポート250およびガス入口ポート260が設けられている。この真空室は、クライオポンプ(CTI-8200/Helix;米国、マサチューセッツ州)で操作することができ、蒸発プロセス(~10-6トル)およびRFスパッタ堆積プロセス(~10-3トル)の両方に適した圧力で作動することができる。(中略)【0040】前記層(転写層または堆積層)は、その化学的性質、機械的性質および/または光学的性質によって特徴付けられるであろう。様々な実施の形態によれば、耐引掻性ガラス基板は、低質量、高い耐衝撃性、および高い光透過率を含むことがある、一連の性質を有することがある。組成的には、前記層は、金属酸化物層、金属窒化物層、金属炭化物層、金属ホウ化物層、またはダイヤモンド状炭素層から構成されることがある。そのような酸化物層、窒化物層、炭化物層またはホウ化物層の例の金属としては、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、チタン、バナジウム、クロム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、スズ、ハフニウム、タンタルおよびタングステンが挙げられる。前記層は無機材料から構成されても差し支えない。非限定的な例の無機層としては、酸化アルミニウム層および酸化ジルコニウム層が挙げられる。【0041】前記層は、化学量論的組成(例えば、Al2O3)または非化学量論的組成(例えば、Al2O3-x、0.05<x<0.3)から構成されることがある。さらに、2種類以上の金属添加物を含む複合酸化物を使用してもよい。例えば、層の全体的な組成は、アルミナなどの基礎酸化物に加え、CaOまたはMgOなどのアルカリ土類酸化物を5~40質量%含んでもよい。【0042】実施の形態において、前記層は、使用中に剥離したり剥がれたりしないように、下にあるガラス基板に適切に付着している。その層がガラス基板と直接物理的に接触している実施の形態において、層とガラス基板との間の付着は、10から100J/m2以上の範囲、例えば、100または150J/m2超の界面エネルギーにより特徴付けることができる。(中略)【0044】前記層の厚さは、10nmから2マイクロメートルに及び得る。例えば、層の平均厚は、約10、20、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500または2000nmであり得る。実施の形態において、層の厚さは50から200nmに及び得る。例えば、約100nm厚と200nm厚の間の転写層は、転写法に適した機械的適合性であって、ガラス基板に結合可能な機械的適合性を有するであろう。単結晶(すなわち、一層転写)層について、結晶材料内の転位密度は、108/cm2未満、すなわち、・・、約105/cm2と108/cm2の間であり得る。【0045】その層は、基板の硬度より大きい(例えば、それより少なくとも10%大きい)硬度を有し得る。例えば、層の硬度は、基板の硬度より少なくとも10、20、30、40または50%大きいことがあり得る。例の層は、少なくとも10GPaの、100nmより浅い圧痕のバーコビッチ圧子硬度、例えば、10GPaと30GPaの間のバーコビッチ圧子硬度を有し得る。【0046】その層のヤング率は、50から200GPaの範囲、例えば、60から100GPa、または100から200GPaの範囲にあり得る。さらに別の実施の形態において、この層のヤング率は200GPa超であり得る。(中略)【0056】上述したように、その層は、ガラス基板の表面に直接設けてもよい。あるいは、その層は、先に表面改質したガラス基板上に設けてもよい。その層とガラス基板との間に1つ以上の介在層が含まれる場合、その層としては、反射防止層、きらめき防止(anti-sparkle)層、防眩層および接着促進層が挙げられるであろう。」
(イ) 引用文献14に記載の技術事項
前記(ア)に摘記した事項から、引用文献14には、次の技術事項(以下「引用文献14記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献14記載の技術事項>
「ガラス本体120の主面に接着促進層を介して金属酸化物からなる層110を形成すること。」
ウ 周知技術の認定
前記ア(イ)bの引用文献10に記載の技術事項である「薄膜ガラスからなり、ハードコート層が設けられていない基板に、密着層を介して光学多層体を形成することにより、基板と光学多層体の密着性を向上させるとともに光学多層体に生じる応力を緩和すること」及び、前記イ(イ)の引用文献14記載の技術事項である「ガラス本体120の主面に接着促進層を介して金属酸化物からなる層110を形成すること」に例示されるように、次の技術事項は周知技術であると認められる。
<周知技術>
「ガラス基板上に堆積層を設けるに際して、接着促進層又は密着層を介在させる、又は、当該機能を有する層を備えるようにすること。」
2 本願発明と引用発明の対比
(1) 対比分析
以下、請求項1の記載に沿って、本願発明と引用発明を対比する。
ア 「電子デバイス」の発明である本願発明と「電子装置300」の発明である引用発明は、「電子デバイス」の発明である点で一致する。
イ(ア)a 本願発明における「ハウジング」の意味について把握するために、本願の明細書及び図面の記載を参酌すると、次の記載がある。
「【0010】(前略)画素アレイを損傷から保護するために、ディスプレイはディスプレイカバー層として機能するガラスの層で覆われていてもよい。電子デバイスの他の部分は、ガラス構造も含むことができる。例えば、電子デバイスの後面は、ガラスの層で覆われていてもよい。このタイプの配置では、ガラスは、タッチに心地良い筐体表面を形成する。ガラス構造は、電子デバイス内の光学窓、ボタン、及び/又は他の構造としても使用され得る。」
「【0013】図1の例では、デバイス10は、筐体12に搭載されたディスプレイ14などのディスプレイを含む。エンクロージャ又はケースと呼ばれることもある筐体12は、プラスチック、ガラス、セラミック、繊維複合材、金属(例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、金など)、他の適切な材料、又はこれらの材料のうちの任意の2つ以上の組み合わせから形成され得る。筐体12は、筐体12の一部又は全部が単一の構造として機械加工又は成形された単体構成を用いて形成されてもよく、又は複数の構造(例えば、内部フレーム構造、外部筐体表面を形成する1つ以上の構造、など)を用いて形成されてもよい。」
「【0016】ディスプレイ14は、1つ以上のガラスの層を含むことができる。例えば、ディスプレイカバー層と呼ばれることがあるディスプレイ14の最外層は、ガラスなどの硬い透明な材料から形成されて、ディスプレイ14を損傷から保護するのに役立つことができる。筐体12の一部及び/又は他の構造などのデバイス10の他の部分も、ガラスから形成され得る。例えば、後部筐体壁などの筐体12内の壁は、ガラスから形成され得る。」
「【図1】[図:0001398635000010.jpg]」
「【0017】図2は、図1のデバイス10などのガラス構造を含む例示的なデバイスの断面側面図である。図2のデバイス10の例示的な構成では、デバイス10の筐体12は、デバイス10の側壁を画定する部分を有する。筐体12のこれらの側壁部分は、金属(一例として)などの材料から形成され得る。ディスプレイ14は、ディスプレイカバー層16(例えば、ガラスの層)及びディスプレイモジュール18(例えば、デバイス10の前面上にユーザーにイメージを提示する画素のアレイを形成するディスプレイ層)を含むことができる。ディスプレイモジュール18は、液晶ディスプレイ構造、有機発光ダイオードディスプレイ構造、又は他の適切なディスプレイであってもよい。動作中、モジュール18は、ディスプレイカバー層16を通して見ることができる画像を提示することができる。デバイス10の筐体の後部は、ガラス層24などのガラス構造から形成され得る。部品22(例えば、集積回路、センサー、などの電気部品)などのデバイス10内の内部部品は、プリント回路20などの1つ以上の基板上に実装され得る。」
「【図2】[図:0001398635000011.jpg]」
b 前記aを踏まえると、明細書の発明の詳細な説明においては、本願発明における「ハウジング」に相当するものが、「筐体」として説明され、「筐体」には、本願の図2における斜線部分であって「12」で示された「側壁を画定する部分」と同図において「24」で示された「ガラス層」が含まれることが理解される。
(イ) 前記(ア)bを踏まえると、引用発明において、「電子装置」の後面を形成する「後部カバーアッセンブリ360」と、「各カバーアッセンブリ」が結合された「外周部材320」は、本願発明の「ハウジング」に相当する。
(ウ) 引用発明においては、「両方のカバーアッセンブリは、透明又は半透明の長方形のガラスプレートを含[む]」ものであるところ、「両方のカバーアッセンブリ」のうち「後部カバーアッセンブリ360」に含まれる「ガラスプレート」は、本願発明の「ガラス部」に相当する。
(エ) したがって、前記(イ)も踏まえると、本願発明と引用発明は、「ガラス部を有するハウジング」を備える点で一致する。
ウ(ア) 引用発明においては、「前部カバーアッセンブリ350と後部カバーアッセンブリ360のガラス面は、二色性コーティングを使用して、審美的に満足な見掛けを与えるように仕上げられている」ところ、この「後部カバーアッセンブリ360のガラス面」の「二色性コーティング」は、本願発明における「前記ガラス部上のコーティング」に相当する。
(イ)a ここで、「二色性(ダイクロイック)の光学効果を与えるコーティングは、屈折率の異なる(したがって、材料の異なる)複数の薄膜からなる光学多層薄膜で構成されていること」は技術常識であるから(前記1(2)イ参照)、引用発明における「二色性コーティング」が少なくとも材料の異なる二つの層を有することは明らかである。
b 引用発明において、二色性コーティングにおけるガラス面寄りの層をA層とし、A層の上の層をB層と呼ぶこととすると、引用発明における「二色性コーティング」のうちのガラス面寄りのA層は、本願発明における「第3の層」に相当し、引用発明における「二色性コーティング」のうちのA層の上のB層は、本願発明における「第2の層」に相当する。
(ウ) 前記(ア)及び(イ)を踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記ガラス部上のコーティングを備え、前記コーティングは、前記ガラス部上の第2の層と、ガラス部と前記第2の層の間に配置され、前記第2の層と異なる材料から形成された第3の層を含む」点で一致する。
(2) 本願発明と引用発明の一致点及び相違点
上記(1)の対比分析の検討結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
ア 一致点
「 電子デバイスであって、ガラス部を有するハウジングと、前記ガラス部上のコーティングと、を備え、前記コーティングは、前記ガラス部上の第2の層と、前記ガラス部と前記第2の層の間に配置され、前記第2の層と異なる材料から形成された第3の層と、を含む、電子デバイス」である点。
イ 相違点
本願発明においては、
「前記ガラス部上の第1の層」を備え、「前記第1の層は前記ガラス部に対する前記第3の層の接着を促進する金属層であり、前記第1の層は前記ガラス部に直接配置されている」のに対して、
引用発明においては、「二色性コーティング」のうちのガラス面寄りのA層(「第3の層」に相当する。)と後部カバーアッセンブリ360の長方形のガラスプレート(「ガラス部」に相当する。)のガラス面との間にガラスプレートのガラス面に対するA層の接着を促進する金属層であって、前記ガラス面に直接配置されている第1の層を備えることの特定がない点。
3 本願発明の想到容易性についての判断
(1) 相違点の想到容易性についての判断
前記1(3)ウにおいて認定したように、「ガラス基板上に堆積層を設けるに際して、接着促進層又は密着層を介在させる、又は、当該機能を有する層を備えるようにすること」は、周知技術である。
したがって、引用発明において、「二色性コーティング」のうちのガラス面寄りのA層と後部カバーアッセンブリ360の長方形のガラスプレートのガラス面との間に、ガラスプレートのガラス面に対するA層の接着を促進する機能を有する層を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。その際、かかる接着促進機能を有する層の材料を好適化して適切な材料を選択することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないことであり、また、金属材料である「Ti」は引用文献10において密着層の構成材料として開示されていることから、接着促進機能を有する層として金属材料を選択して「金属層」とすることも、当業者の通常の創作活動により到達できるものであると認められる。
したがって、引用発明において、「二色性コーティング」のうちのガラス面寄りのA層(「第3の層」に相当する。)と後部カバーアッセンブリ360の長方形のガラスプレート(「ガラス部」に相当する。)のガラス面との間にガラスプレートのガラス面に対するA層の接着を促進する金属層であって、前記ガラス面に直接配置されている第1の層を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
なお、本願発明の奏する効果としては、引用発明、周知技術及び技術常識から予測困難であって、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
(2) 請求人の主張について
ア 請求人の主張の内容
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請求人は、令和4年8月24日に提出した意見書において、次の点を主張している。
引用文献10及び14は、「接着を促進させる第1の層がガラス部に直接配置されている」という、特徴的な構成を記載も示唆もしていない。
特に、引用文献10は、基板とNb層との間の接着層を示しているが、金属がガラス上に「直接配置」されることを開示していない。その代わりに、引用文献10は、Nb層3と基板1との間にハードコート層1aが存在することを開示している。引用文献10は、ハードコート層1aを「必ずしも」設ける必要がないと開示しているが、引用文献10は、補正後の請求項1に記載されているような、金属層がガラス表面に直接配置されることを開示していない。
イ 請求人の主張についての判断
折りたたみ中(クリックで表示)
引用文献10の【0016】には、基板1としては、薄膜ガラスを用いてもよいことが開示されており、ハードコート層1aは必ずしも設けられる必要はないことも開示されている。その上で、【0029】には、基板1と光学多層体7との間に、両者の密着性を向上させると共に光学多層体7に生じる応力を緩和するための密着層2が設けられていることが開示されている。したがって、引用文献10には、「接着を促進させる第1の層がガラス部に直接配置されていること」が開示されているというべきである。
また、引用文献14の段落【0056】には、「上述したように、その層は、ガラス基板の表面に直接設けてもよい。あるいは、その層は、先に表面改質したガラス基板上に設けてもよい。その層とガラス基板との間に1つ以上の介在層が含まれる場合、その層としては、反射防止層、きらめき防止(anti-sparkle)層、防眩層および接着促進層が挙げられるであろう。」と記載されているのであるから、接着促進層がガラス基板に直接配置されていると読むのが妥当である。
以上のとおりであるから、請求人の前記主張は採用することができない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-006424