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特許拒絶査定不服審判

2021-005766

水素流量制御装置

審判番号
2021-005766
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-009418外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年05月06日
審決日
2022年03月30日
公報発行日
2022年06月24日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (G05D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2017-9418「水素流量制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年8月2日出願公開、特開2018-120281〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成29年1月23日の出願であって、その手続きの経緯は以下のとおりである。 令和 2年 8月17日付け:拒絶理由の通知 同 年10月26日 :意見書、手続補正書の提出 令和 3年 1月27日付け:拒絶査定 同 年 5月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出 同 年 6月24日 :手続補正書(請求の理由)の提出 同 年11月30日付け:拒絶理由の通知 令和 4年 2月 4日 :意見書、手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)の提出 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載した以下の事項により特定されるとおりのものである。 「複数の水素ガス供給先に水素ガスを供給可能な複数の水素ガス供給路と、 水素ガス供給路に設置され、水素ガスの流量の調整が可能な流量調整手段と、 水素ガス供給路に設置され、水素ガスの供給の閉止が可能な開閉弁と、 流量調整手段による水素ガスの流量の調整、及び、開閉弁の開閉を制御する制御手段と を備え、 水素ガス供給路のそれぞれは、水素ガス供給先のそれぞれに対応するものであり、 制御手段が、水素ガス供給先の状況に応じて、対応する水素ガス供給路における水素ガスの流量を調整するように流量調整手段を制御する、水素流量制御装置。」 第3 拒絶理由の概要 本願発明に対して、令和3年11月30日付けで当審が通知した拒絶理由のうち理由2の概要は、次のとおりのものである。 理由2 本願発明は、本願の出願日前に頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開平4-154050号公報 引用文献2:特開平6-96787号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1 (1)引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は理解の便のため当審にて付与。以下同様。)。 ア 第1ページ右欄第19-20行 「本発明は、燃料電池発電システムに関するものである。」 イ 第3ページ左下欄第10-16行 「7は燃料供給路、8,9は燃料供給路7先端から枝分れして各燃料電池1,2に燃料10を分配する分岐燃料供給路、11は燃料供給路7途中に設けられた燃料流量調整弁、12,13は分岐燃料供給路8,9途中に設けられた燃料流量調整弁、14,15,16は燃料流量調整弁11,12,13の出側に設けられた燃料流量計である。」 ウ 第3ページ右下欄第5行-第4ページ左上欄第9行 「25は前記負荷調整信号24に基づいて燃料流量調整弁11による燃料必要量26を求める信号変換器、27は信号変換器25で求めた燃料必要量26と燃料流量計14で検出した燃料電池1,2へ実際に供給されている燃料流量28との偏差を取り該偏差に基づいて燃料流量調整弁11へ出力する開度調整信号29を求める引算器である。 30は出力指令19に対する電流計4で検出した燃料電池1の電流値31の比32を求める割算器、33は燃料流量計14で検出した燃料流量28に割算器30で求めた比32を掛けて燃料必要量34を求める掛算器、35は燃料流量計15で検出した燃料電池1への燃料流量36と掛算器33で求めた燃料必要量34との偏差を取り該偏差に基づいて燃料流量調整弁12へ出力する開度調整信号37を求める引算器である。 38は出力指令19に対する電流計5で検出した燃料電池2の電流値39の比40を求める割算器、41は燃料流量計14で検出した燃料流量28に割算器38で求めた比40を掛けて燃料必要量42を求める掛算器、43は燃料流量計16で検出した燃料電池2への燃料流量44と掛算器41で求めた燃料必要量42との偏差を取り該偏差に基づいて燃料流量調整弁13へ出力する開度調整信号45を求める引算器である。」 エ 第4ページ左上欄第13-19行 「可変負荷3による負荷を所望の発電量に見合う値に設定しておき、燃料電池1,2に燃料10と酸化剤を供給すると、燃料電池1,2内部で可変負荷3の大きさに見合った分だけ燃料10中の水素と酸化剤中の酸素が水の電気分解の逆反応を起こし、これにより所望の量だけ発電が行なわれる。」 オ 第4ページ左下欄第15行-第5ページ左上欄第11行 「先ず、燃料電池1では、割算器30により出力指令19に対する電流計4で検出した燃料電池1の電流値31の比32が求められる。ここで、燃料電池1,2が劣化していない時には、燃料電池1,2と直列に接続した各電流計4,5の電流値31,39が等しくなるので、前記比32は1/2となる。そして、掛算器33により燃料流量計14で検出した燃料流量28に割算器30で求めた比32を掛けて燃料必要量34を求める。該燃料必要量34は燃料流量28の1/2となる。燃料必要量34は引算器35を通され、そのまま開度調整信号37として燃料流量調整弁12へ送られて、分岐燃料供給路8を流れる燃料10の流量が燃料供給路7からの燃料10の流量の1/2となるよう燃料流量調整弁12の開度を設定する。この際、燃料流量計15で検出した燃料電池1への実際の燃料流量36がフィードバック信号として引算器35へ送られ、分岐燃料供給路8を流れる燃料10の流量が開度調整信号37に基づく流量と一致するよう制御される。 又、燃料電池2では、割算器38により出力指令19に対する電流計5で検出した燃料電池2の電流値39の比40が求められる。ここで、燃料電池1,2が劣化していない時には、電流値31,39が等しい値となるので、前記比40は1/2となる。そして、掛算器41により燃料流量計14で検出した燃料流量28に割算器38で求めた比40を掛けて燃料必要量42を求める。該燃料必要量42は燃料流量28の1/2となる。燃料必要量42は引算器43を通され、そのまま開度調整信号45として燃料流量調整弁13へ送られて、分岐燃料供給路9を流れる燃料10の流量が燃料供給路7からの燃料10の流量の1/2となるよう燃料流量調整弁13の開度を設定する。この際、燃料流量計16で検出した燃料電池2への実際の燃料流量44がフィードバック信号として引算器43へ送られ、分岐燃料供給路9を流れる燃料10の流量が開度調整信号45に基づく流量と一致するよう制御される。」 カ 第1図 [図:0001384863000001.jpg] キ 第2図 [図:0001384863000002.jpg] (2)上記(1)の記載から以下の事項が理解できる。 ア 上記(1)ウ、オ、カ、キから、燃料流量調整弁12,13は、燃料必要量34,42に応じて、分岐燃料供給路8,9に流れる燃料10の流量を調整が可能であること。また、当該調整を制御する制御手段を有していること。 イ 上記(1)イ、カから、分岐燃料供給路8,9のそれぞれは、燃料電池1,2のそれぞれに対応していること。 ウ 上記(1)エから、燃料電池1,2に供給される燃料10は、燃料中に水素を含有していること。 (3)引用発明 上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献1には、以下の発明が記載されているものと認められる。 「燃料電池1,2に燃料10を分配する分岐燃料供給路8,9と、 分岐燃料供給路8,9に設けられ、燃料10の流量の調整が可能な燃料流量調整弁12,13と、 燃料流量調整弁12,13による燃料10の流量の調整を制御する制御手段と を備え、 分岐燃料供給路8,9のそれぞれは、燃料電池1,2のそれぞれに対応するものであり、 制御手段が、燃料必要量34,42に応じて、対応する分岐燃料供給路8,9における燃料10の流量を調整するように燃料流量調整弁12,13を制御する、燃料電池発電システム。」 (以下、「引用発明」という。) 2 引用文献2 (1)引用文献2には、以下の事項が記載されている。 ア 【0007】 「図中、一点鎖線で囲った1の部分が燃料電池発電プラントである。天然ガス等の原燃料は、原燃料制御弁2によりその流量が制御されて改質器3に入り、触媒の下で加熱されて水素含有率の高い改質燃料となる(以下、かかる作用を改質と称する)。」 イ 【0071】 「また、燃料電池7,8,9に燃料入口遮断弁35,36,37と燃料出口遮断弁38,39,40と空気入口遮断弁41,42,43と空気出口遮断弁44,45,46とを設けている。・・・」 ウ 【0080】 「まず、異常燃料電池切離し手段34では、燃料電池判定手段23から燃料電池故障信号として判定出力データを読み込む(201)。この判定出力データは、どの燃料電池が異常なのかを異常フラグ形式で作成されている。」 エ 【0081】 「判定出力データが入力すると、燃料電池7のフラグが異常フラグか否かの判定がされ、異常フラグの場合、対応する燃料入口遮断弁35と燃料出口遮断弁38と空気入口遮断弁41と空気出口遮断弁44とを遮断する信号が出力される(201)(202)(203)。」 オ 【0082】 「続いて、燃料電池8のフラグが異常フラグか否かの判定がされ、異常フラグの場合、対応する燃料入口遮断弁36と燃料出口遮断弁39と空気入口遮断弁42と空気出口遮断弁45とを遮断する信号が出力される(204)(205)。」 カ 【0083】 「同様に、燃料電池9についても異常の判定がされ、異常フラグの場合、対応する遮断弁で遮断する信号が出力される(206)(207)。」 キ 【0084】 「ここで、並列に接続された三本の燃料電池7,8,9のうち、燃料電池7について異常が発生したものとして上記異常燃料電池切離し手段34の処理を具体的に説明する。」 ク 【0086】 「次に、異常燃料電池切離し手段34は、判定出力データを入力して異常データから燃料入口遮断弁35と燃料出口遮断弁38と空気入口遮断弁41と空気出口遮断弁44とを全閉とする。」 ケ 【0098】 「燃料電池7が異常となり、他の燃料電池8,9の二本でプラントが運転されなければならなくなった場合でも、異常の発生した燃料電池7をプラントの運転から切り離すことにより、即座にプラントを発電状態に移行させ、プラントの運転を安全、かつ、効率的に行うことができる。」 コ 図5 [図:0001384863000003.jpg] (2)上記(1)の記載から以下の事項が理解できる。 ア 上記(1)イ、コから、燃料を供給する供給路に、燃料の供給の遮断が可能な燃料入口遮断弁35,36,37が設けられていること。 イ 上記(1)ウないしクから、異常燃料電池切離し手段34は、燃料入口遮断弁35,36,37の遮断を制御すること。 ウ 上記(1)ク、ケから、異常燃料電池切離し手段34は、異常の発生した燃料電池7の燃料入口遮断弁35を全閉し、燃料電池発電プラントの運転から切り離すことで、プラントの運転を安全に行うこと。 エ 上記(1)アから、燃料電池に供給される燃料は、水素含有率の高いガスであること。 (3)引用文献2記載の技術的事項 上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献2には、以下の技術的事項が記載されているものと認められる。 「燃料を供給する供給路に設けられ、燃料の供給の遮断が可能な燃料入口遮断弁35,36,37と、燃料入口遮断弁35,36,37の遮断を制御する異常燃料電池切離し手段34を備えることで、異常の発生した燃料電池を燃料電池発電プラントの運転から切り離し、プラントの運転を安全に行うこと。」 (以下、「引用文献2記載の技術的事項」という。) 第5 対比 1 本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。 (1)引用発明の「燃料10」は、燃料中に水素を含有していることから(上記第4の1(2)ウ)、本願発明の「水素ガス」に相当し、以下同様に、「燃料電池1,2」は、「複数の水素ガス供給先」に相当し、「分配する分岐燃料供給路8,9」は、「供給可能な複数の水素ガス供給路」に相当する。 (2)引用発明の「分岐燃料供給路8,9に設けられ、燃料10の流量の調整が可能な燃料流量調整弁12,13」は、本願発明の「水素ガス供給路に設置され、水素ガスの流量の調整が可能な流量調整手段」に相当し、以下同様に、「燃料流量調整弁12,13による燃料10の流量の調整を制御する制御手段」は、「流量調整手段による水素ガスの流量の調整」「を制御する制御手段」に相当し、「分岐燃料供給路8,9のそれぞれは、燃料電池1,2のそれぞれに対応するもの」であることは、「水素ガス供給路のそれぞれは、水素ガス供給先のそれぞれに対応するもの」であることに相当する。 (3)引用発明の「燃料必要量34,42に応じて」は、燃料必要量34,42が、出力指令19と燃料電池1,2の劣化の程度に応じて決まるものであることから、本願発明の「水素ガス供給先の状況に応じて」に相当し、引用発明において「制御手段が、燃料必要量34,42に応じて、対応する分岐燃料供給路8,9における燃料10の流量を調整するように燃料流量調整弁12,13を制御する」ことは、本願発明において「制御手段が、水素ガス供給先の状況に応じて、対応する水素ガス供給路における水素ガスの流量を調整するように流量調整手段を制御する」ことに相当する。 また、引用発明の「燃料電池発電システム」は、本願発明の「水素流量制御装置」に相当する。 2 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 【一致点】 「複数の水素ガス供給先に水素ガスを供給可能な複数の水素ガス供給路と、 水素ガス供給路に設置され、水素ガスの流量の調整が可能な流量調整手段と、 流量調整手段による水素ガスの流量の調整を制御する制御手段と を備え、 水素ガス供給路のそれぞれは、水素ガス供給先のそれぞれに対応するものであり、 制御手段が、水素ガス供給先の状況に応じて、対応する水素ガス供給路における水素ガスの流量を調整するように流量調整手段を制御する、水素流量制御装置。」 【相違点】 本願発明は、「水素ガス供給路に設置され、水素ガスの供給の閉止が可能な開閉弁」を備え、制御手段が「開閉弁の開閉を制御する」のに対し、引用発明は、そのような構成を有してない点。 第6 判断 以下、上記相違点について検討する。 引用文献2記載の技術的事項は、「燃料を供給する供給路に設けられ、燃料の供給の遮断が可能な燃料入口遮断弁35,36,37と、燃料入口遮断弁35,36,37の遮断を制御する異常燃料電池切離し手段34を備えることで、異常の発生した燃料電池を燃料電池発電プラントの運転から切り離し、プラントの運転を安全に行うこと。」である(上記第4の2(3))。 引用発明の「燃料電池1,2」と、引用文献2に記載された「燃料電池7,8,9」は、供給された水素ガスと空気中の酸素との触媒反応によって電気エネルギーを発生させるものであるところ、燃料電池に供給される水素ガスは、引火性の高いガスであり、通常の使用時においても、漏洩が生じないように特に注意する必要があることが技術常識である。 そして、燃料電池に異常が生じるような、非常時の対策を事前に考慮することは当業者が当然に行うべきものであるといえるから、燃料電池の異常時に水素ガスが漏洩しないように対策を施すことは、引用発明においても必然的に内在する課題であるということができ、引用発明に引用文献2記載の技術的事項を適用する動機付けは十分にあるといえる。 したがって、引用発明において、引用文献2記載の技術的事項を適用し、相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 第7 請求人の主張について (1)請求人の主張の概要 請求人は、令和4年2月4日提出の意見書において、概ね以下のように主張する。 引用文献1と引用文献2の課題には共通性がないし、引用文献1には、本願発明の「異常を検知した場合の水素ガスの供給停止」に関する課題についての記載も示唆もないから、引用文献1に引用文献2を適用する動機付けはない。 本願発明が、当業者にとって容易に想到し得るものと判断されるためには、引用文献1において、「水素ガスの供給の閉止が可能な開閉弁」が水素供給路に配置され、制御手段が「開閉弁の開閉を制御する」という構成を採用したであろうという推測が成り立つのみでは十分ではなく、該構成を採用したはずである、という動機付けが必要になるが、引用文献1において、そのような動機づけや示唆等は存在しないから本願発明は、引用文献1及び引用文献2に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。(意見書第3ページ第6-37行) (2)請求人の主張の検討 上記第6で示したように、引用文献1及び引用文献2に記載されているような燃料電池発電システムは、いずれも引火性の高い水素ガスを用いることから、通常時においても、漏洩対策に注意を払う必要があり、とりわけ、異常時の漏洩対策が求められることが技術常識といえる。この技術常識を考慮すれば、引用文献1に動機付けに関する明示的な記載が無いとしても、燃料電池を並列に接続した引用発明の燃料電池発電システムに対して、同じく燃料電池を並列に接続した燃料電池発電システムの漏洩対策である引用文献2記載の技術的事項を適用する動機があるというほかない。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-005766

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