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特許拒絶査定不服審判

2021-005269

タイヤ用ゴム組成物

審判番号
2021-005269
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2016-144806外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年04月23日
審決日
2022年12月15日
公報発行日
2023年03月31日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (C08L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2016-144806「タイヤ用ゴム組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月25日出願公開、特開2018- 12818〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は、平成28年7月22日を出願日とする出願であって、令和2年5月13日付けの拒絶理由に対し、同年7月15日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月2日付けの拒絶理由に対し、令和3年1月8日に意見書及び手続補正書が提出され、同年1月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月23日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 令和3年4月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和3年4月23日にされた手続補正を却下する。

[理由]

1 本件補正の内容

令和3年4月23日提出の手続補正(以下「本件補正」という。また、この出願の本件補正後の明細書を「本願明細書」という。))の前後における特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである。

<本件補正前>

「【請求項1】
ハロゲン化ブチルゴム60~90質量%と、天然ゴムとからなるジエン系ゴム100質量部に、窒素吸着比表面積が20~50m2/gであるカーボンブラックを25~75質量部、C9系樹脂を1~30質量部配合してなると共に、前記C9系樹脂100%のうち、α-メチルスチレンを40%以上含むことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。」

<本件補正後>

「【請求項1】
ハロゲン化ブチルゴム80~90質量%と、天然ゴムとからなるジエン系ゴム100質量部に、窒素吸着比表面積が20~50m2/gであるカーボンブラックを25~75質量部、C9系樹脂を1~30質量部配合してなると共に、前記C9系樹脂100%のうち、α-メチルスチレンを40%以上含むことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。」(当審注:下線は当審にて付与した。以下、同様。)

2 本件補正の適法性の検討

上記1のとおり、本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ハロゲン化ブチルゴム」と、「天然ゴムとからなる」「ジエン系ゴム」について、「ハロゲン化ブチルゴム60~90質量%」を、「ハロゲン化ブチルゴム80~90質量%」と限定するものであり、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明1」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明1

本件補正発明1は、上記1に記載したとおりのものである。

(2)本件補正発明1の技術的意義

ア 本願明細書の段落【0005】には、本件補正発明1の課題として、「耐空気透過性および低温環境での耐クラック性を従来レベル以上に向上させるようにしたタイヤ用ゴム組成物を提供すること」と記載されており、段落【0012】には「本発明のタイヤ用ゴム組成物のゴム成分はジエン系ゴムであり、ハロゲン化ブチルゴムを含む。・・・ハロゲン化ブチルゴムの含有量を50質量%以上にすることにより、耐空気透過性および低温脆化性を高いレベルで確保することができる。」と記載され、段落【0014】には、「タイヤ用ゴム組成物は、カーボンブラックを配合することにより、ゴム硬度および耐クラック性を高くする。・・・カーボンブラックの配合量が25質量部未満であると、ゴム組成物のゴム硬度が十分に得られず、耐空気透過性が低下する。またカーボンブラックの配合量が75質量部を超えると、低温脆化性が悪化し耐クラック性が低下する。」と記載され、段落【0016】には「本発明のタイヤ用ゴム組成物は、C9系樹脂を含む。C9系樹脂を配合することにより、耐空気透過性を確保しながら、低温脆化性を改良することができる。また意外にもタイヤ用ゴム組成物のタック性を改良し加工性を優れたものにすることができる。・・・C9系樹脂の配合量が1質量部未満であると、耐空気透過性および低温脆化性を改良することができない。またC9系樹脂の配合量が30質量部を超えると、転がり抵抗が大きくなる。」と記載され、段落【0018】には、「本発明のタイヤ用ゴム組成物は、C9系樹脂100%のうち、α-メチルスチレンを40%以上含むことが好ましい。α-メチルスチレンを40%以上含むC9系樹脂を配合することにより、耐空気透過性および低温脆化性をより優れたものにすることができる。またタック性を改良し加工性をより優れたものにすることができる。」と記載されている。

すなわち、ハロゲン化ブチルゴム、カーボンブラック、α-メチルスチレンを40%以上含むC9系樹脂を特定量配合することで、耐空気透過性および低温脆化性改良を高いレベルで確保するとともに、タック性を改良し加工性をより優れたものにして、ゴム硬度、耐クラック性を高くすることができると解される。

イ また、本願明細書の段落【0013】には「ジエン系ゴムは、ハロゲン化ブチルゴム以外の他のジエン系ゴムを含有することができる。他のジエン系ゴムとして、例えば・・・天然ゴム・・・等が挙げられ、単独又は複数のブレンドとして使用することができる。なかでも天然ゴムが好ましく、ハロゲン化ブチルゴムおよび天然ゴムにより、ジエン系ゴム100質量%にすることができる。」と記載され、実施例1~4及び比較例1~5のすべてにおいて、ハロゲン化ブチルゴム80質量部、天然ゴム20質量部配合されたタイヤ用ゴム組成物を用いた例しか示されていない。

すなわち、本願明細書には、ジエン系ゴムとして、天然ゴムを配合してもよいことは記載されているものの、「ハロゲン化ブチルゴム80~90質量%と、天然ゴムとからなる」ことによる効果については記載されておらず、また、意見書や審判請求書においても、「ハロゲン化ブチルゴム80~90質量%と、天然ゴムとからなる」ものとその範囲外のものとの効果の比較検討もされていない。

(3)引用文献等

引用文献5:特表2004-505153号公報
参考文献6:特開平10-130453号公報
引用文献7:特開2015-218321号公報
引用文献8:特開平10-87884号公報
引用文献9:特開2012-255066号公報
引用文献10:特開2010-31118号公報
引用文献11:特開2011-111595号公報
引用文献12:特開2015-101712号公報
引用文献13:特開2015-52031号公報
引用文献14:特開2013-43916号公報
引用文献15:特開2012-76679号公報
参考文献A:特開2019-104850号公報(当審が新たに引用した文献)

(4)進歩性についての検討

ア 引用文献5に記載されている事項及び引用文献5に記載された発明

(ア)引用文献5に記載されている事項

引用文献5には、以下の事項が記載されている。

「【請求項1】
改良された常温流動特性を有するブチルポリマー組成物であって、ブチルポリマーおよびスチレン樹脂を含んでなり、スチレン樹脂がα-メチルスチレンおよび他のスチレン性モノマーの第一コポリマーを含むブチルポリマー組成物。」
「【0003】
ハロゲン化ブチルポリマーも従来から知られ、長年市販されている。前記のようなブチルポリマーの持つ満足できる本質的特性に加えて、ハロゲン化ブチルポリマーは、より高度に不飽和のゴムとの硬化適合性および加硫後の他のゴムへの優れた接着性も有し、そのことにより、ハロゲン化ブチルポリマーは、空気タイヤインナーライナーにおける使用に十分に適する。これまでの技術進歩にかかわらず、まだ改良の余地がある。」
「【0027】
(実施例)
本発明の態様を、以下の実施例を参照して説明するが、これら実施例は、本発明の範囲を解釈または限定するために使用されてはならない。
実施例中、以下の材料を用いた:
続きを表示(全29行)
BB2030:BayerInc.からPOLYSER(登録商標)Bromobutyl2030の商品名で入手可能なハロゲン含量2.0質量%の臭素化ブチルゴム;
N-660:Sterling-Vから入手可能なカーボンブラック;
Sunper2280:SunRefining&MarketingCo.から入手可能なパラフィン油;
HCR#1:HerculesInc.からKristalex(登録商標)1120の商品名で入手可能なα-メチルスチレン-スチレンコポリマー(Mw=2950;Tg=56℃;軟化点=120℃);
HCR#2:HerculesInc.からPiccotex(登録商標)120の商品名で入手可能なα-メチルスチレン-ビニルトルエンコポリマー(Mw=3800;Tg=68℃;軟化点=118℃);
Pentalyn ”A”:粘着付与剤として用いられるロジンのペンタエリトリトールエステル;
ステアリン酸:活性剤/加工助剤として使用;
MBTS:Vulcacit(登録商標)DM/Cの商品名で入手可能な、促進剤として用いられるメルカプトベンゾチアジルジスルフィド;
硫黄:硬化剤;および
ZnO:Kadox(登録商標)の商品名で入手可能な、加硫剤として用いられる酸化亜鉛。
実施例中の成分の量は、別段の記載がない限り、質量部を意味する。
【0028】
実施例1~3
これら実施例で使用された臭素化ブチルゴムの処方を表1に示す。当業者により理解されるように、実施例1はスチレン樹脂を含んでおらず、従ってこの実施例を比較の目的でのみ提示する。実施例2および3において、実施例1で用いたエキステンダー油を、特定したスチレンポリマーに置き換えた。
【0029】
硫黄および酸化亜鉛を除く全ての成分を、バンバリーミキサー中で3分間混合した。冷却水の温度を約30℃にしながら反応混合物を冷却した。その後、混合物を10”×20”の冷却ロールへ移した。硫黄および酸化亜鉛を加え、得られた混合物を、添加剤が取りこまれるまでロール練りした。この時点で、混合物の以下の非加硫ゴム特性を測定し、結果を添付図に示した:
コンパウンドムーニー粘度(ML1,4、100℃における)-図1;生強度(23℃における)-図2、および
硬化速度-図3。
【0030】
その後、加硫性混合物を166℃で30分間硬化した。加硫物の以下の特性を測定し、結果を添付図に示した:
応力/歪(ダイC、23℃において試験)-図4;
硬度(ショアーA)-図5;
応力/歪(熱オーブンエージング:168時間、120℃における)-図6;
空気透過性(65.5℃において試験)-図7;、および
ゴム接着試験-図8。」
「【0032】
図6によれば、実施例2および3で製造される加硫物の熱空気エージング特性が、実施例1のそれと類似している(すなわち、ブチルポリマー組成物へのスチレンポリマーの添加の結果として、この特性の明白な劣化はない)ことが分かる。
図7によれば、実施例1の加硫物と比べた場合、実施例2および3の加硫物において空気透過性が減少していることが分かる(すなわち、本発明のブチルポリマー組成物中のスチレンポリマー添加剤の使用が、得られる加硫ゴムの空気不透過性を増している)。
図8によれば、実施例2および3の加硫物の接着特性が、実施例1の加硫物と比べた場合、増加していることが分かる(タイヤカーカスへのインナーライナーの接着により測定)。」
「【0040】
【表1】
[図:0001394387000001.jpg]
」

(イ)引用文献5に記載された発明

引用文献5には、請求項1に係るブチルポリマー組成物が記載されており、この組成物の具体例として、実施例2が記載されている。また、引用文献5の段落【0003】には「ハロゲン化ブチルポリマーは、空気タイヤインナーライナーにおける使用に十分に適する」と記載され、【0032】には「実施例2・・・の加硫物の接着特性が、実施例1の加硫物と比べた場合、増加していることが分かる(タイヤカーカスへのインナーライナーの接着により測定)」と記載されている。これらの記載から、実施例2に記載されたブチルポリマー組成物は空気タイヤインナーライナー用組成物を想定したものであると解される。

以上を踏まえて、引用文献5の実施例2に注目して整理すると、以下の発明が記載されていると認める。

「BB2030:BayerInc.からPOLYSER(登録商標)Bromobutyl2030の商品名で入手可能なハロゲン含量2.0質量%の臭素化ブチルゴム100質量部、
Kristalex(登録商標)1120:HerculesInc.から入手可能なα-メチルスチレン-スチレンコポリマー(Mw=2950;Tg=56℃;軟化点=120℃)10質量部、
N-660:Sterling-Vから入手可能なカーボンブラック60質量部、
Pentalyn ”A”:粘着付与剤として用いられるロジンのペンタエリトリトールエステル1質量部、
ステアリン酸1質量部、
MBTS:Vulcacit(登録商標)DM/Cの商品名で入手可能な、促進剤として用いられるメルカプトベンゾチアジルジスルフィド1.3質量部、
を、バンバリーミキサー中で3分間混合し、冷却水の温度を約30℃にしながら反応混合物を冷却し、その後、混合物を10”×20”の冷却ロールへ移し、硫黄0.5質量部およびZnO:Kadox(登録商標)の商品名で入手可能な、加硫剤として用いられる酸化亜鉛3質量部を加え、得られた混合物を、添加剤が取りこまれるまでロール練りした空気タイヤインナーライナー用ブチルポリマー組成物。」(以下、「引用発明1」という。)

イ 参考文献6に記載された事項

「【0019】流動促進剤即ち末端ブロック樹脂を加えてもよい。流動促進剤により、熱可塑性エラストマーの湿潤性が高くなり、従ってエラストマーと支持体との接触が良好になって接着力が増大する。流動促進剤はスチレン樹脂であるのが好ましく、主成分(即ち、50重量%以上)がα-メチルスチレン樹脂であればなお好ましい。良好な結果を得た流動促進剤の例は、KRISTALEX(TM)1120である。KRISTALEX1120は、主成分がα-メチルスチレン由来の水白色の低分子量熱可塑性炭化水素樹脂である。KRISTALEX1120は、25/25℃での比重が1.07、引火点が236℃、25℃での粘度が50cm2/秒(ストークス)である。0~10重量%、好ましくは3~10重量%の流動促進剤を添加して良好な結果を得た。」

ウ 引用文献7に記載された事項

「【請求項1】
ブチルゴムおよび/またはハロゲン化ブチルゴムを70~100重量%、天然ゴムを0~30重量%含むジエン系ゴム100重量部に対し、窒素吸着比表面積N2SAが25~95m2/gであるカーボンブラックを40~80重量部、板状無機充填剤を15~85重量部、ファルネセン重合体を2~10重量部、石油系樹脂および/または芳香族系樹脂を5~15重量部配合したことを特徴とするインナーライナー用ゴム組成物。」
「【0013】
本発明において、天然ゴムの含有量は、ジエン系ゴム重量%中0~30重量%、好ましくは0~20重量%である。天然ゴムを含むことにより、ゴム組成物の耐クラック成長性を改良することができる。天然ゴムの含有量が30重量%を超えると、空気透過防止性能が低下する。」

エ 引用文献8に記載された事項

「【請求項1】ブチルゴム50重量部以上及びジエン系ゴム50重量部以下を含むゴム成分100重量部に対し、窒素比表面積が60m2/g以下のカーボンブラック20~120重量部及び下記アルコキシシリル基(I)またはアシルオキシシリル基(II):
≡Si-OR1(I)
≡Si-OCOR2(II)
(式中、R1は炭素数1~18の置換または非置換の1価の炭化水素基もしくはエーテル結合含有有機基であり、R2は水素または炭素数1~21の炭化水素基である)を含む平均重合度が3~10000のポリシロキサン10重量部以下を配合してなるタイヤのインナーライナー用ゴム組成物。」
「【0005】
【発明の実施の形態】本発明のタイヤのインナーライナー用ゴム組成物に配合されるゴム成分としては汎用のジエン系ゴム(例えば天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)など)にブチルゴム(IIR)を配合して用いられる。本発明においてはインナーライナー(フィルム)の空気保持性を保つためブチルゴムの配合量をゴム成分100重量部のうち50重量部以上、好ましくは70重量部以上とする必要があり、他のゴム成分としては耐屈曲性のためジエン系ゴム、特に天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合ゴム(SBR)等を使用するのが好ましい。」
「【0032】実施例1~7及び比較例1~5
本発明において使用したポリシロキサンは以下の方法で合成した。
ポリシロキサン1
ポリメチルハイドロジェンシロキサン(KF99、信越化学工業社製)100g、メタノール60gを混ぜ、塩化白金酸1%イソプロピルアルコール溶液40μlを添加、80℃で10時間反応させ合成した。この化合物の推定構造は以下の通りである。
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ポリシロキサン2
ポリメチルハイドロジェンシロキサン(KF99、信越化学工業社製)100g、エタノール72gを混ぜ、塩化白金酸1%イソプロピルアルコール溶液40μlを添加、80℃で10時間反応させ合成した。この化合物の推定構造は以下の通りである。
【0033】
【化5】
[図:0001394387000002.jpg]
【0034】以下の実施例及び比較例の各例の配合に用いたその他の配合成分(表III 参照)は以下の市販品を用いた。
【0035】
【表3】
[図:0001394387000003.jpg]
【0036】
【表4】
[図:0001394387000004.jpg]
【0037】
【表5】
[図:0001394387000005.jpg]
【0038】ブチルゴムIIR:臭素化イソブチレンイソプレンゴム(EXXONBROMOBUTYLRUBBER2244)
天然ゴムNR:SIR-20
カーボンブラック
CB-1:シーストV(東海カーボン、N2SA27m2/g)
CB-2:シースト300(東海カーボン、N2SA84m2/g)
シリカ:ニプシルAQ(日本シリカ)
シランカップリング剤:Si69(デクサ)(化学名:ビス-〔3-(トリエトキシシリル)-プロピル〕テトラスルフィド)
シリコンオイル:KF99(信越化学工業)
アロマチックオイル:プロセスオイルX-140(共同石油)
酸化亜鉛:亜鉛華3号(正同化学)
ステアリン酸:ルナックYA(花王石鹸)
イオウ:油処理イオウ
加硫促進剤:サンセラーDM(三新化学)(ジベンゾチアジルジスルフィド)」

オ 引用文献9に記載された事項

「【請求項1】
ブチル系ゴムを50質量部以上含むゴム成分100質量部に対し、香料を含有するマイクロカプセルを0.5~15質量部配合してなることを特徴とするタイヤインナーライナー用ゴム組成物。」
「【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(ゴム成分)
本発明で使用されるゴム成分は、全体を100質量部としたとき、ブチル系ゴムを50質量部以上含有する。
ブチル系ゴムとしては、インナーライナー用として使用されている任意のブチル系ゴム、例えばブチルゴム(IIR)やハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)等を挙げることができる。ブチル系ゴムの市販品としては、例えば臭素化ブチルゴムである日本ブチル(株)製、商品名BROMOBUTYL2255等が挙げられる。
また、ブチル系ゴム以外のゴム成分としては、タイヤ用ゴム組成物として使用されるジエン系ゴムをいずれも使用することができるが、天然ゴム(NR)が好適である。なおジエン系ゴムの配合割合が50質量部を超えると、空気透過防止性能が悪化する。」
「【0023】
実施例1~3および比較例1~6
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、硫黄および加硫促進剤を除く配合成分を秤量し、1.7Lのバンバリーミキサーで4分間混練し、155±5℃に達したときにマスターバッチを放出し室温冷却した。このマスターバッチを1.7Lのバンバリーミキサーに供し、硫黄、加硫促進剤、加硫遅延剤を加え混合し、ゴム組成物を調製した。
続きを表示(全27行)
次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃で20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を調製した。得られた加硫ゴム試験片について以下に示す試験法で物性を測定した。
【0024】
・空気透過係数
得られたゴム組成物の加硫試験片を用いて、JISK7126「プラスチックフィルム及びシートの気体透過度試験方法」のA法(差圧式)に準拠して、試験気体を空気相当(窒素:酸素=8:2)とし、試験温度30℃で空気透過係数を測定した。得られた結果は、比較例1を100とする指数として表1に示した。指数が小さいほど、空気透過係数が小さく空気透過防止性能に優れることを意味する。
・耐疲労性
JISK6251に準拠して、JIS3号ダンベル状サンプルを用いて、歪率60%にて繰返し歪を与え、破断に至るまでの回数を測定した。表中の数値は、比較例1の値を100とした指数で示す。数値が大きい程、耐屈曲性が高い、すなわち耐疲労性に優れることを示す。
・臭気官能評価
表1に示した加硫後の所定時間において、得られた加硫ゴム試験片の匂いを10名で嗅ぎ、香料の匂いがすると答えた人数が6名以上で「香料の匂い」、5名以下で「加硫ゴム臭」と判定した。
結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
[図:0001394387000006.jpg]
【0026】
*1:IIR(臭素化ブチルゴム、日本ブチル(株)製ブロモブチル2255)
*2:NR(RSS#3)
*3:カーボンブラック(新日化カーボン(株)製ニテロン#55SGPF(窒素吸着比表面積=28m2/g)
*4:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*5:樹脂(芳香族系石油樹脂、エアウォーター社製FR-120)
*6:オイル(昭和シェル石油(株)製エキストラクト4号)
*7:硫黄(鶴見化学工業(株)製油処理イオウ)
*8:加硫促進剤(三新化学工業(株)製サンセラーDM-PO)
*9:香料(レモン系香料)
*10:香料を含有するマイクロカプセル(芯物質の上記レモン系香料を、厚さ8μmのアクリル系樹脂からなる壁材で包んだ、平均粒径30μmの球状物質)」

カ 引用文献10に記載された事項

「【請求項1】
ブチル系ゴムを主成分として含むジエン系ゴム100重量部に対し、アスペクト比4~100の短繊維状の有機充填材を3~15重量部配合したゴム組成物であり、前記有機充填材が熱可塑性樹脂を連続相にすると共にエラストマーを分散相としてブレンドした熱可塑性エラストマー組成物からなる空気透過防止部材用ゴム組成物。」
「【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の空気透過防止部材用ゴム組成物によりインナーライナーを構成したチューブレス空気入りタイヤ。」
「【0009】
本発明の空気透過防止部材用ゴム組成物によれば、ブチル系ゴムを主成分として含むジエン系ゴム100重量部に対し、アスペクト比4~100の短繊維状の有機充填材を3~15重量部配合したゴム組成物であり、この有機充填材は熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物から、熱可塑性樹脂が連続相、エラストマーが分散相になるように形成されるので、ゴム組成物の空気透過防止性を向上し、インナーライナーやチューブなどの空気透過防止部の厚さを薄くしても優れた空気透過防止性を確保する。同時に、ジエン系ゴムと有機充填材との弾性率等の機械的物性の差が小さいのでタイヤ耐久性を低下させることがないため、空気透過防止性及び耐久性を維持しながら、タイヤ重量を軽量化し燃費を向上することができる。」
「【0029】
熱可塑性エラストマー組成物の調製及び有機充填材の成形
ナイロン6/66共重合体(東レ社製アラミンCM6001)を40重量部、イソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物(エクソンモービルケミカル社製MDX90-10)を60重量部、亜鉛華(正同化学工業社製酸化亜鉛3種)を1重量部、ステアリン酸(日油社製ビーズステアリン酸)を1重量部を秤量した混合物を溶融混練しペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を調製した。
【0030】
続きを表示(全37行)
得られた熱可塑性エラストマー組成物を溶融紡糸し、直径15μmの長繊維を成形した。この長繊維を所定の長さに細断することにより短繊維状の有機充填材1及び有機充填材2を得た。得られた有機充填材1のアスペクト比は54、有機充填材2のアスペクト比は127であった。
【0031】
実施例1~4、比較例1~5
表1に示す配合からなる9種類のゴム組成物(実施例1~4、比較例1~5)を、それぞれ硫黄、加硫促進剤、加硫遅延剤を除く配合成分を秤量し、1.7Lのバンバリーミキサーで4分間混練し、155±5℃に達したときにマスターバッチを放出し室温冷却した。このマスターバッチを1.7Lのバンバリーミキサーに供し、硫黄、加硫促進剤、加硫遅延剤を加え混合し、空気透過防止部材用ゴム組成物を調製した。
【0032】
得られた9種類のゴム組成物(実施例1~4、比較例1~5)を使用し、所定の厚さの未加硫ゴムシートを成形した。得られた未加硫ゴムシートを所定形状の金型中で170℃、10分間の条件で加硫し、加硫ゴムシートの弾性率及び空気透過係数を下記の試験方法により測定した。
【0033】
また、9種類の未加硫ゴムシート(厚さ1mm)でインナーライナーをそれぞれ構成したタイヤサイズ195/65R15のチューブレス空気入りタイヤを加硫成形した。得られた9種類の空気入りタイヤの高速耐久性を下記の試験方法により評価した。
【0034】
弾性率
得られた加硫ゴムシートの弾性率として、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzで測定し、温度20℃における貯蔵弾性率E′を測定した。得られた結果は、それぞれ比較例1の値を100とする指数で表わし表1に示した。この指数が大きいほど弾性率が高いことを意味する。
【0035】
空気透過係数
得られたゴム組成物の加硫試験片を用いて、JISK7126「プラスチックフィルム及びシートの気体透過度試験方法」のA法(差圧式)に準拠して、試験気体を空気相当(窒素:酸素=8:2)とし、試験温度30℃で空気透過係数を測定した。得られた結果は、比較例1を100とする指数として表1に示した。指数が小さいほど、空気透過係数が小さく空気透過防止性能に優れることを意味する。
【0036】
高速耐久性
得られた空気入りタイヤをリム(15×6J)にリム組みしてドラム径1707mmのドラム試験機に装着し、JISD4230に準拠する条件で高速耐久試験を行なった後、速度を30分毎に10km/hずつ増速し、タイヤが破壊したときの速度を測定した。得られた結果は、比較例1を100とする指数として表1に示した。この指数が大きいほど高速耐久性が優れることを意味する。
【0037】
【表1】
[図:0001394387000007.jpg]
【0038】
なお、表1において使用した原材料の種類を下記に示す。
IIR:臭素化ブチルゴム、日本ブチル社製ブロモブチル2255
NR:天然ゴム、RSS#3
有機充填材1及び2:上記により得られた短繊維状有機充填材
有機充填材3:ナイロン樹脂からなる有機繊維、繊維径0.3μm、アスペクト比100、大和化学工業社製大和SHP-HA1060
CB:カーボンブラック、新日化カーボン社製ニテロン#55SGPF(窒素吸着比表面積=28m2/g)
亜鉛華:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
樹脂:芳香族系石油樹脂、エアウォーター社製FR-120
オイル:昭和シェル石油社製エキストラクト4号
硫黄:鶴見化学工業社製油処理イオウ
加硫促進剤:三新化学工業社製サンセラーDM-PO
加硫遅延剤:東レファインケミカル社製リターダーCTP」

キ 引用文献11に記載された事項

「【請求項1】
ブチル系ゴム80~100質量部および天然ゴム0~20質量部からなるゴム成分(ただし、前記ブチル系ゴムおよび前記天然ゴムの合計は100質量部である)に対し、分子量が1,000,000~4,000,000の超高分子量ポリエチレンを3~7質量部およびよう素吸着量が27~40mg/gであるカーボンブラックを50~65質量部配合してなることを特徴とするタイヤインナーライナー用ゴム組成物。」
「【0012】
(ゴム成分)
本発明で使用されるゴム成分は、ブチル系ゴム80~100質量部および天然ゴム0~20質量部からなる(ただし、前記ブチル系ゴムおよび前記天然ゴムの合計は100質量部である)。
なお、天然ゴム(NR)の配合割合が20質量部を超えると、空気透過性が悪化する。
ブチル系ゴムとしては、インナーライナー用として使用されている任意のブチル系ゴム、例えばブチルゴム(IIR)やハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)等を挙げることができる。ブチル系ゴムの市販品としては、例えばLANXESS社製、商品名BROMOBUTYL2030等が挙げられる。」
「【0021】
実施例1~6および比較例1~12
サンプルの調製
表1および2に示す配合(質量部)において、加硫系(加硫促進剤、硫黄)を除く成分を1.8リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物を同バンバリーミキサーに再度入れ、加硫系を加えて混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃で30分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を調製した。得られた未加硫のゴム組成物あるいは加硫ゴム試験片について以下に示す試験法で物性を測定した。
続きを表示(全33行)
【0022】
高温破断伸び:JISK6251に準拠し、2mm厚の3号ダンベルを雰囲気温度100℃下で500mm/分の引張速度にて切断時の伸びを測定した。比較例1で得られた値を100として指数表示した。指数が大きいほど高温破断伸びに優れることを示す。
粘度:JISK6300に準拠し、100℃にてL形ローターを用いてムーニー粘度を測定した。比較例1で得られた値を100として指数表示した。指数が小さいほど粘度が低く、加工性が良好であることを示す。
圧縮永久歪率:JISK6262に準拠し、処理温度70℃、処理時間22時間、圧縮率25%の条件で圧縮させ、圧縮永久歪を測定した。比較例1で得られた値を100として指数表示した。指数が小さいほど圧縮永久歪が小さく、良好であることを示す。
空気透過性:JISK7126A法に準拠し、30℃の空気透過係数を測定した。比較例1で得られた値を100として指数表示した。指数が小さいほど空気透過性が抑制され、良好であることを示す。
比重:JISK6268に準拠して測定した。比較例1で得られた値を100として指数表示した。指数が小さいほど低比重であることを示す。
結果を表1および2に示す。
【0023】
【表1】
[図:0001394387000008.jpg]
【0024】
【表2】
[図:0001394387000009.jpg]
【0025】
*1:IIR(LANXESS社製BROMOBUTYL2030)
*2:NR(タイ製STR20)
*3:カーボンブラック(THAICARBONBLACKPUBLIC製THAIBLACLN660、よう素吸着量=38mg/g)
*4:カーボンブラック(新日化カーボン株式会社製HTC#SL、よう素吸着量=25mg/g
*5:カーボンブラック(キャボットジャパン株式会社製ショウブラックN326、よう素吸着量=85mg/g
*6:カオリンクレー(kentuckyTennesseeClayCompany製SUPREXCLAY)
*7:オイル(昭和シェル石油(株)製プロセスオイル123)
*8:超高分子量ポリエチレン(三井化学(株)製ハイゼックスミリオン030S、分子量=500,000、平均粒子径160-170μm)
*9:超高分子量ポリエチレン(三井化学(株)製ミペロンXM-220、分子量=2,000,000、平均粒子径30μm)
*10:超高分子量ポリエチレン(三井化学(株)製ハイゼックスミリオン320MU、分子量=3,000,000、平均粒子径140-150μm)
*11:超高分子量ポリエチレン(三井化学(株)製ハイゼックスミリオン630M、分子量=5,500,000、平均粒子径120-130μm)
*12:ステアリン酸(千葉脂肪酸(株)製ビーズステアリン酸桐)
*13:亜鉛華(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*14:硫黄(アクゾノーベル(株)製クリステックスHSOT20)
*15:加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製ノクセラーDM-P0)」

ク 引用文献12に記載された事項

「【請求項1】
ブチル系ゴムを60質量部以上含むゴム成分100質量部に対し、窒素吸着比表面積が20~50m2/gのカーボンブラックを40~80質量部およびガラス転移温度(Tg)が-70~-50℃の植物油を5~15質量部配合してなることを特徴とするタイヤインナーライナー用ゴム組成物。」
「【0016】
試験A
標準例1、実施例1~3および比較例1~7
サンプルの調製
続きを表示(全28行)
表1に示す配合(質量部)において、加硫系(加硫促進剤、硫黄)を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物を同バンバリーミキサーに再度入れ、加硫系を加えて混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃で20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を調製した。得られたゴム組成物および加硫ゴム試験片について以下に示す試験法で物性を測定した。
【0017】
脆化温度:JISK6261に準拠して、ゴムの脆化温度を測定した。結果は、標準例1で得られた値を100として指数表示した。指数が小さいほど脆化温度が低下していることを示す。
空気透過防止性能:JISK7126A法に準拠し、30℃の空気透過係数を測定した。結果は、標準例1で得られた値を100として指数表示した。指数が小さいほど空気透過防止性能に優れることを示す。
耐クラック性:JISK6260に準拠して、DeMattia型屈曲試験機を用いて、亀裂成長長さを測定し、その逆数をもって耐クラック性を評価した。結果は、標準例1で得られた値を100として指数表示した。指数が大きい程、耐クラック性が良好であることを示す。
結果を表1に示す。
【0018】
【表1】
[図:0001394387000010.jpg]
【0019】
*1:Br-IIR(Exxonmobil chemical社製Exxon bromobutyl 2255)
*2:NR(SIR20)
*3:カーボンブラック-1(新日化カーボン(株)製ニテロン#GN、N2SA=30m2/g)
*4:カーボンブラック-2(キャボットジャパン(株)製ショウブラックN330、N2SA=70m2/g)
*5:ステアリン酸(千葉脂肪酸(株)製ビーズステアリン酸)
*6:樹脂-1(エアウォーター(株)製芳香族炭化水素系樹脂FR-120)
*7:樹脂-2(トーネックス(株)製石油樹脂エスコレッツ1102)
*8:アロマオイル(昭和シェル石油(株)製エキストラクト4号S、Tg=-45~-40℃)
*9:パラフィンオイル(昭和シェル石油(株)製プロセスオイル123、Tg=-85~-80℃)
*10:ナタネ油((株)カネカ製新規ナタネ油)
*11:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*12:硫黄(細井化学工業(株)製油処理イオウ)
*13:加硫促進剤(三新化学工業(株)製サンセラーDM-P0)
*14:比較植物油(ヤシ硬化油、Tg=-45~-30℃)」

ケ 引用文献13に記載された事項

「【請求項1】
ブチル系ゴムを60質量部以上含むゴム成分100質量部に対し、窒素吸着比表面積が20~50m2/gのカーボンブラックを40~80質量部およびBET比表面積が0.1~1.0m2/gの酸化マグネシウムを0.5~5.0質量部配合してなることを特徴とするタイヤインナーライナー用ゴム組成物。」
「【0018】
実施例1~3および比較例1~8
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫系(加硫促進剤、硫黄)を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物を同バンバリーミキサーに再度入れ、加硫系を加えて混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃で20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を調製した。得られたゴム組成物および加硫ゴム試験片について以下に示す試験法で物性を測定した。
続きを表示(全28行)
【0019】
脆化温度:JISK6261に準拠して、ゴムの脆化温度を測定した。結果は、比較例1で得られた値を100として指数表示した。指数が小さいほど脆化温度が低下していることを示す。
空気透過性能:JISK7126A法に準拠し、30℃の空気透過係数を測定した。結果は、比較例1で得られた値を100として指数表示した。指数が小さいほど空気透過防止性能に優れることを示す。
耐疲労性:JISK6251に準拠して、JIS3号ダンベル状サンプルを用いて、歪率60%にて繰返し歪を与え、破断に至るまでの回数を測定した。結果は、比較例1で得られた値を100として指数表示した。指数が大きいほど耐疲労性に優れることを示す。
耐クラック性:JISK6260に準拠して、DeMattia型屈曲試験機を用いて、亀裂成長長さを測定し、その逆数をもって耐クラック性を評価した。結果は、比較例1で得られた値を100として指数表示した。指数が大きい程、耐クラック性が良好であることを示す。
結果を表1に示す。
【0020】
【表1】
[図:0001394387000011.jpg]
【0021】
*1:Br-IIR(Exxonmobil chemical社製Exxon bromobutyl 2255)
*2:NR(SIR20)
*3:カーボンブラック-1(新日化カーボン(株)製ニテロン#GN、N2SA=32m2/g)
*4:カーボンブラック-2(キャボットジャパン(株)製ショウブラックN330、N2SA=75m2/g)
*5:酸化マグネシウム-1(宇部マテリアルズ(株)製RF-10C、BET比表面積=0.8m2/g)
*6:酸化マグネシウム-2(協和化学工業(株)製キョーワマグ30、BET比表面積=40m2/g)
*7:酸化マグネシウム-3(協和化学工業(株)製パイロキスマ5Q、BET比表面積=4.8m2/g)
*8:ステアリン酸(千葉脂肪酸(株)製ビーズステアリン酸)
*9:樹脂-1(エアウォーター(株)製芳香族炭化水素系樹脂FR-120)
*10:樹脂-2(トーネックス(株)製石油樹脂エスコレッツ1102)
*11:オイル(昭和シェル石油(株)製エキストラクト4号S)
*12:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*13:可溶性硫黄(細井化学工業(株)製油処理イオウ)
*14:加硫促進剤(三新化学工業(株)製サンセラーDM-P0)」

コ 引用文献14に記載された事項

「【請求項1】
ブチル系ゴム60~100質量部およびジエン系ゴム0~40質量部からなるゴム成分100質量部に対し、カーボンブラックを30~50質量部、板状無機充填剤を10~30質量部、およびナトリウムと亜鉛のアセトメタレート塩を含む被覆剤で被覆されたシリカを0.5~4質量部配合してなることを特徴とするタイヤインナーライナー用ゴム組成物。」
「【0030】
実施例1~3および比較例1~6
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫系(加硫促進剤、硫黄)を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物を同バンバリーミキサーに再度入れ、加硫系を加えて混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃で20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を調製した。得られた加硫ゴム試験片について以下に示す試験法で物性を測定した。
続きを表示(全24行)
【0031】
空気透過性:JIS K7126 A法に準拠し、30℃の空気透過係数を測定した。結果は、比較例1で得られた値を100として指数表示した。指数が大きいほど空気透過防止性能に優れることを示す。
耐疲労性:JIS K6251に準拠して、JIS 3号ダンベル状サンプルを用いて、歪率60%にて繰返し歪を与え、破断に至るまでの回数を測定した。結果は、比較例1で得られた値を100として指数表示した。指数が大きいほど耐屈曲性に優れることを示す。
分散性:ISO11345に準拠し、加硫ゴムの切断面をディスパグレーターで観察することにより、試験を行なった。結果は、比較例1で得られた値を100として指数表示した。指数が大きいほど分散性に優れることを示す。
発熱性:(株)東洋精機製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪=10%、振幅=±2%、周波数=20Hzの条件下でtanδ(60℃)を測定し、この値をもって発熱性を評価した。結果は、比較例1の値を100として指数表示した。指数が大きいほど、低発熱性であることを示す。
結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
[図:0001394387000012.jpg]
【0033】
*1:NR(STR20)
*2:Br-IIR(EXXON MOBILE社製BROMOBUTYL2255)
*3:カーボンブラック(THAI CARBON BLACK PUBLIC製、THAIBLACL N660、N2SA=35m2/g)
*4:板状タルク(RIO TINTO MINERALS社製MISTRON HAR)
*5:ステアリン酸(千葉脂肪酸(株)製、ビーズステアリン酸桐)
*6:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製、酸化亜鉛3種)
*7:被覆シリカ(ラバーナノプロダクツ社製RNPX-ZR6、上記被覆シリカの製造例に準じて製造された被覆シリカ。)
*8:オイル(JX Nippon Oil & Energy Corporation製プロセスP200)
*9:硫黄(アクゾノーベル(株)製、クリステックスHS OT 20)
*10:加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製、ノクセラーDM-P0)」

サ 引用文献15に記載された事項

「【請求項1】
30℃における空気透過係数が25×10-12cm3・cm/cm2・sec・cmHg以下の熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂成分中にエラストマー成分が分散した熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルム片が、ゴム100質量部に対し0.02質量部以上15質量部未満の範囲で配合されたゴム組成物からなる空気入りタイヤ用インナーライナー。」
「【0026】
(1)熱可塑性樹脂フィルムおよび熱可塑性エラストマー組成物フィルムの作製
(E1フィルム)
エチレン-ビニルアルコール共重合体(株式会社クラレ製エバール(登録商標)E171B)を、インフレーション成形装置にてチューブ状に押し出し、直径610mmにブロー成形し、厚さ10μmのフィルムを作製した。このフィルムを「E1フィルム」という。E1フィルムの空気透過係数を測定したところ、0.005×10-12cm3・cm/cm2・sec・cmHgであった。
続きを表示(全33行)
(E2フィルム)
エチレン-ビニルアルコール共重合体(株式会社クラレ製エバール(登録商標)L171B)を、インフレーション成形装置にてチューブ状に押し出し、直径610mmにブロー成形し、厚さ2μmのフィルムを作製した。このフィルムを「E2フィルム」という。E2フィルムの空気透過係数を測定したところ、0.01×10-12cm3・cm/cm2・sec・cmHgであった。
(E3フィルム)
エチレン-ビニルアルコール共重合体(株式会社クラレ製エバール(登録商標)L171B)を、インフレーション成形装置にてチューブ状に押し出し、直径610mmにブロー成形し、厚さ20μmのフィルムを作製した。このフィルムを「E3フィルム」という。E3フィルムの空気透過係数を測定したところ、0.005×10-12cm3・cm/cm2・sec・cmHgであった。
(Y1フィルム)
臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合体(エクソンモービル・ケミカル社(ExxonMobil Chemical Company)製Exxpro(登録商標)MDX89-4)100質量部、酸化亜鉛(正同化学工業株式会社製亜鉛華3種)0.5質量部、ステアリン酸(日油株式会社製ビーズステアリン酸)0.2質量部、およびステアリン酸亜鉛(堺化学工業株式会社製ステアリン酸亜鉛)1質量部を、密閉型バンバリーミキサー(神戸製鋼所製)にて100℃で2分間混合してゴムコンパウンドを作製し、ゴムペレタイザー(森山製作所製)によりペレット状に加工した。得られたゴムコンパウンドのペレット101.7質量部、ナイロン6/66(宇部興産株式会社製「UBEナイロン」5033B)100質量部および無水マレイン酸変性エチレン-エチルアクリレート共重合体(三井・デュポンケミカル株式会社製HPRAR201)10質量部を2軸混練機(日本製鋼所製)にて250℃で3分間混練して熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを、インフレーション成形装置にてチューブ状に押し出し、直径610mmにブロー成形し、厚さ110μmのフィルムを作製した。このフィルムを「Y1フィルム」という。Y1フィルムの空気透過係数を測定したところ、20×10-12cm3・cm/cm2・sec・cmHgであった。
(Y2フィルム)
臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合体(エクソンモービル・ケミカル社(ExxonMobil Chemical Company)製Exxpro(登録商標)MDX89-4)100質量部、酸化亜鉛(正同化学工業株式会社製亜鉛華3種)0.5質量部、ステアリン酸(日油株式会社製ビーズステアリン酸)0.2質量部、およびステアリン酸亜鉛(堺化学工業株式会社製ステアリン酸亜鉛)1質量部を、密閉型バンバリーミキサー(神戸製鋼所製)にて100℃で2分間混合してゴムコンパウンドを作製し、ゴムペレタイザー(森山製作所製)によりペレット状に加工した。得られたゴムコンパウンドのペレット101.7質量部、ナイロン6/66(宇部興産株式会社製「UBEナイロン」5033B)90質量部および無水マレイン酸変性エチレン-エチルアクリレート共重合体(三井・デュポンケミカル株式会社製HPRAR201)10質量部を2軸混練機(日本製鋼所製)にて250℃で3分間混練して熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを、インフレーション成形装置にてチューブ状に押し出し、直径610mmにブロー成形し、厚さ2μmのフィルムを作製した。このフィルムを「Y2フィルム」という。Y2フィルムの空気透過係数を測定したところ、25×10-12cm3・cm/cm2・sec・cmHgであった。
【0027】
(2)フィルム片の作製
上記(1)で作製したフィルムを冷凍破砕し、破砕品を分級機を使用して分級し、平均主面面積の異なるフィルム片を作製した。得られたフィルム片の平均主面面積および平均最大長さを、表1に示す。
【0028】
(3)ゴム組成物の調製
臭素化ブチルゴム(日本ブチル株式会社製EXXON BROMOBUTYL 2255)80質量部、天然ゴム(TECK BEE HANG社製STR-20)20質量部、カーボンブラック(三菱化学株式会社製ダイアブラック(登録商標)G)60質量部、酸化亜鉛(正同化学工業株式会社製亜鉛華3種)3質量部、ステアリン酸(日油株式会社製ビーズステアリン酸)0.5質量部、硫黄(細井化学工業株式会社製油処理イオウ)1質量部、および加硫促進剤(三新化学工業株式会社製サンセラーDM-PO)1質量部をバンバリーミキサー(神戸製鋼所製)に投入し、130℃で3分間混練し、ゴムベースコンパウンドを調製した。このゴムベースコンパウンドの空気透過係数を測定したところ、30℃において115×10-12cm3・cm/cm2・sec・cmHgであった。
調製したゴムベースコンパウンド165.5質量部に、上記(2)で作製したフィルム片またはエチレン-ビニルアルコール共重合体(以下「EVOH樹脂」ともいう。)(株式会社クラレ製エバール(登録商標)L171B)を表1に示す量(質量部)で配合してバンバリーミキサー(神戸製鋼所製)に投入し、130℃で3分間混練し、ゴム組成物を調製した。
【0029】
(4)インナーライナー用シートの作製
上記(3)で調製したゴム組成物を、圧延装置を用いて、1mmまたは3mmの厚さのシートに押出成形し、インナーライナー用シートを作製した。作製したインナーライナー用シートの厚さを表1に示す。
【0030】
(5)評価
上記(4)で作製したインナーライナー用シートについて、初期および疲労後の空気遮断性を評価した。評価結果を表1に示す。なお、空気遮断性の評価方法は、次のとおりである。
【0031】
[空気遮断性]
インナーライナー用シートから、試験片を切り出し、その試験片の空気透過度をJIS K7126に従って測定し、10-12cm3/cm2・sec・cmHgで表わした空気透過度の値が、90未満のときは◎、90以上100未満のときは○、100以上110未満のときは△、110以上のときは×とした。
ここで、疲労後の空気遮断性とは、試験片に、25℃で定歪試験機により40%歪の変形を100万回繰返し与えた後に測定した空気遮断性をいい、初期の空気遮断性とは、定歪繰返し変形を与える前に測定した空気遮断性をいう。
【0032】
【表1】
[図:0001394387000013.jpg]
」

シ 参考文献Aに記載された事項

「【0033】
(1)ゴム成分
ブチルゴム:臭素化ブチルゴム、エクソン社製、「ブロモブチル2222」
(2)カーボンブラック
カーボンブラック1:N660、CABOT社製、「STERLINGV」(窒素吸着法比表面積=26m2/g、算術平均粒子径=60nm)
カーボンブラック2:N234、CABOT社製、「Vulcan7H」(窒素吸着法比表面積=125m2/g、算術平均粒子径=25nm)
特定カーボンブラック:SAF、旭カーボン社製、「旭#150」(窒素吸着法比表面積=200m2/g、算術平均粒子径=16nm)
(3)鉱物:カオリンクレー、J.M.Huber社製、商品名PolyfilDL(アスペクト比=25、平均粒子径=3500nm)」

ス 本件補正発明1との対比及び判断

(ア)対比

引用発明1の「BB2030:BayerInc.からPOLYSER(登録商標)Bromobutyl2030の商品名で入手可能なハロゲン含量2.0質量%の臭素化ブチルゴム」は、本件補正発明1の「ハロゲン化ブチルゴム」に相当する。

引用発明1の「空気タイヤインナーライナー用ブチルポリマー組成物」と、本件補正発明1の「タイヤ用ゴム組成物」は、「タイヤ用ゴム組成物」である限りにおいて一致する。

引用発明1の「N-660:Sterling-Vから入手可能なカーボンブラック」は、本件補正発明1の「カーボンブラック」に相当する。加えて、引用発明1の「N-660:Sterling-Vから入手可能なカーボンブラック」の配合量は、臭素化ブチルゴム100重量部に対して「60重量部」であり、本件補正発明1における「25~75質量部」を満たす。

そうすると、両者は、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点1>~<相違点3>で一応相違する。

<一致点>

ハロゲン化ブチルゴムを含むジエン系ゴム100質量部に、カーボンブラックを25~75質量部配合してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。

<相違点1>

カーボンブラックが本件補正発明1では、「窒素吸着比表面積が20~50m2/gであるカーボンブブラック」であるのに対して、引用発明1では「N-660: Sterling-Vから入手可能なカーボンブラック」である点

<相違点2>

本件補正発明1では、「C9系樹脂を1~30質量部配合してなると共に、前記C9系樹脂100%のうち、α-メチルスチレンを40%以上含む」のに対して、引用発明1では「Kristalex(登録商標)1120:HerculesInc.から入手可能なα-メチルスチレン-スチレンコポリマー(Mw=2950;Tg=56℃;軟化点=120℃)」10質量部を含むものであり、「C9系樹脂を1~30質量部配合してなると共に、前記C9系樹脂100%のうち、α-メチルスチレンを40%以上含む」か不明である点

<相違点3>

ジエン系ゴムが、本件補正発明1では「ハロゲン化ブチルゴム80~90質量%と、天然ゴムとからなる」のに対して、引用発明1では「BB2030:BayerInc.からPOLYSER(登録商標)Bromobutyl2030の商品名で入手可能なハロゲン含量2.0質量%の臭素化ブチルゴム」である点

(イ)判断

そこで、<相違点1>について検討する。

参考文献Aの段落【0033】には「カーボンブラック1:N660、CABOT社製、「STERLINGV」(窒素吸着法比表面積=26m2/g、算術平均粒子径=60nm)」と記載されており、この記載から引用発明1の「N-660:Sterling-Vから入手可能なカーボンブラック」の窒素吸着法比表面積は26m2/gであり、本件補正発明1の「窒素吸着比表面積が20~50m2/gである」を満たす。

よって、<相違点1>は実質的な相違点ではない。

次に、<相違点2>について検討する。

本願明細書の段落【0017】には、「本明細書において、C9系樹脂とは、原油を蒸留、分解、改質などの処理をして得られた成分を重合して製造される芳香族系炭化水素樹脂であり、炭素数が9であるC9成分を主原料にした重合体および共重合体をいう。「C9成分を主原料」にするとは、芳香族系炭化水素樹脂を構成するモノマーのうち、C9成分が50%以上…であることをいう。」と記載されており、C9系樹脂とは、C9成分が50%以上含むことが必要であるといえる。

参考文献6の段落【0019】には、「流動促進剤はスチレン樹脂であるのが好ましく、主成分(即ち、50重量%以上)がα-メチルスチレン樹脂であればなお好ましい。…KRISTALEX1120は、主成分がα-メチルスチレン由来の水白色の低分子量熱可塑性炭化水素樹脂である」と記載されており、この記載から、引用発明1の「Kristalex(登録商標)1120:HerculesInc.から入手可能なα-メチルスチレン-スチレンコポリマー(Mw=2950;Tg=56℃;軟化点=120℃)」は、主成分(即ち、50重量%以上)としてα-メチルスチレンを含み、スチレンを50重量%未満含むC9系樹脂であることが分かる。すなわち、引用発明1の「Kristalex(登録商標)1120:HerculesInc.から入手可能なα-メチルスチレン-スチレンコポリマー(Mw=2950;Tg=56℃;軟化点=120℃)」を10質量部含むことは、「C9系樹脂を1~30質量部配合してなると共に、前記C9系樹脂100%のうち、α-メチルスチレンを40%以上含む」ことを満足するといえる。

よって、<相違点2>は実質的な相違点ではない。

さらに、<相違点3>について検討する。

耐空気透過性が要求されるインナーライナーにおいて、空気透過の原因となるクラックの発生を防止するという課題は、本願出願時点での自明の課題であり、また、引用文献7の段落【0013】には、「天然ゴムの含有量を、ジエン系ゴム重量%中0~30重量%、好ましくは0~20重量%含むことにより、ゴム組成物の耐クラック成長性を改良することができる。」こと、引用文献8の段落【0005】には、「ブチルゴムの配合量をゴム成分100重量部のうち50重量部以上、好ましくは70重量部以上とする必要があり、他のゴム成分としては耐屈曲性のためジエン系ゴム、特に天然ゴム(NR)…等を使用するのが好ましい。」ことが記載されていることから、ハロゲン化ブチルゴムを用いるタイヤのインナーライナー用ゴム組成物において、「ハロゲン化ブチルゴムに加えて、0~30重量%の天然ゴムを含むこと」及び、それにより「ゴム組成物の耐クラック成長性が改良されること」は本願出願日前の周知技術といえる。そして、実際にゴム成分を「ハロゲン化ブチルゴム80~90質量%と、天然ゴム10~20質量%」の割合とした例も存在する(引用文献11~15の実施例を参照)。

そうすると、引用発明1において、クラックの発生を防止するために、上記周知技術を適用することは、当業者が容易に想到し得ることである。また、その際に、天然ゴムの配合量は当業者の設計事項であり、引用文献11~15の例を参照して、「ハロゲン化ブチルゴム80~90質量%と、天然ゴムとからなる」ものとすることは当業者が容易に想到し得たことである。

本件補正発明1の効果について検討する。

2(2)アで述べたように、ハロゲン化ブチルゴム、カーボンブラック、α-メチルスチレンを40%以上含むC9系樹脂を特定量配合することで、耐空気透過性および低温脆化性改良を高いレベルで確保するとともに、タック性を改良し加工性をより優れたものにして、ゴム硬度、耐クラック性を高くすることができるものと解される。

一方、引用発明1は、上記で述べたように、ジエン系ゴムのうちハロゲン化ブチルゴムを80~90質量%含み、ジエン系ゴム100質量部に対して、窒素吸着比表面積が20~50m2/gであるカーボンブラックを25~75質量部含み、C9系樹脂を1~30質量部配合してなると共に、前記C9系樹脂100%のうち、α-メチルスチレンを40%以上含むように配合するという点において、本件補正発明1と同じ組成となっているのであるから、耐空気透過性、低温脆化性、タック性、ゴム硬度、耐クラック性について、本件補正発明1と同じ効果を奏するといえる。

また、2(2)イで述べたように、本願明細書には、ジエン系ゴムとして、天然ゴムを配合してもよいことは記載されているものの、「ハロゲン化ブチルゴム80~90質量%と、天然ゴムとからなる」ことによる効果については記載されておらず、また、意見書や審判請求書においても、「ハロゲン化ブチルゴム80~90質量%と、天然ゴムとからなる」ものとその範囲外のものとの効果の比較検討もされていない。

なお、上記でも述べたように、ハロゲン化ブチルゴムを用いるインナーライナー用ゴム組成物において、ゴム成分として、「ハロゲン化ブチルゴムに加えて、0~30重量%の天然ゴムを含むこと」、及び、それにより「ゴム組成物の耐クラック成長性が改良されること」は、本願出願日前の周知技術である。

そうすると、本件補正発明1が、<相違点3>に係る「ハロゲン化ブチルゴム80~90質量%と、天然ゴムとからなる」ことにより、格別顕著な効果を奏すると評価することはできない。

したがって、本件補正発明1は、引用発明1及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(ウ)審判請求人の主張について

審判請求人は、「引用文献5および7~10は、ジエン系ゴムがハロゲン化ブチルゴム80~90質量%と天然ゴムとからなるジエン系ゴム100質量部を全く教示しませんから、引用文献5および7~10に記載された発明では、タック性(加工性)、耐空気透過性および低温脆化性の性能バランスを従来レベル以上に向上させることは困難です。」と主張する。

しかしながら、上記(イ)で述べたように、ハロゲン化ブチルゴムを用いるインナーライナー用ゴム組成物において、ゴム成分として、「ハロゲン化ブチルゴムに加えて、0~30重量%の天然ゴムを含むこと」、及び、それにより「ゴム組成物の耐クラック成長性が改良されること」は、本願出願日前の周知技術であって、その含有割合は空気透過防止性能と耐クラック成長性に応じ、適宜設定し得る事項である。また、上記(イ)で述べたように、引用発明1は、ジエン系ゴムのうちハロゲン化ブチルゴムを80~90質量%含み、ジエン系ゴム100質量部に対して、窒素吸着比表面積が20~50m2/gであるカーボンブラックを25~75質量部含み、C9系樹脂を1~30質量部配合してなると共に、前記C9系樹脂100%のうち、α-メチルスチレンを40%以上含むように配合するという点において、本件補正発明1と同じ組成となっているのであるから、耐空気透過性、低温脆化性、タック性、ゴム硬度、耐クラック性について、本件補正発明1と同じ効果を奏するといえる。すなわち、本件補正発明1が、<相違点3>に係る「ハロゲン化ブチルゴム80~90質量%と、天然ゴムとからなる」ことにより、格別顕著な効果を奏すると評価することはできない。

したがって、審判請求人の主張は採用できない。

3 補正の却下の決定についてのむすび

以上のとおりであるから、本件補正発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項の規定により準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

上記第2のとおり、令和3年4月23日にされた手続補正は却下されたので、本願の請求項1~3に係る発明は、令和3年1月8日にされた手続補正後の特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるとおり(上記第2の1を参照。)のものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、要するに「この出願については、令和 2年11月 2日付け拒絶理由通知書に記載した理由2((特許法第29条第2項))によって、拒絶をすべきものです。」というものである。また、その対象とする請求項を、請求項1~3とするものを含むものである。

3 引用文献

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5、参考文献6、引用文献7~10の記載事項は、上記第2の2(4)ア(ア)及び、第2の2(4)イ~カに記載したとおりである。

そして、引用文献5には、第2の2(4)ア(イ)に記載されたとおり、引用発明1が記載されている。

4 判断

本願発明1は、上記第2の2(4)スで検討した本件補正発明1の「ハロゲン化ブチルゴム80~90質量%と、天然ゴムとからなるジエン系ゴム」を、本件補正前の「ハロゲン化ブチルゴム60~90質量%と、天然ゴムとからなるジエン系ゴム」にしたものである。

そして、本願発明1の発明特定事項を全て含む本件補正発明1が、上記第2の2(4)スで述べたように、引用文献5に記載された発明及び、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、引用文献5に記載された発明及び、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2021-005269

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