特許拒絶査定不服審判
2021-004300
電力変換装置
- 審判番号
- 2021-004300
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-546605外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年04月02日
- 審決日
- 2021年11月24日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【請求人代理人】宗田 悟志
- 分類
- P18 .113-Z (H02M) / P18 .121-Z (H02M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-546605「電力変換装置」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月11日国際公開,WO2019/069654〕について,次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は,2018年9月13日を国際出願日(優先権主張 平成29年(2017年)10月6日 日本国)とする出願であって,令和2年9月7日付けで拒絶理由が通知され,これに対して令和2年11月12日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,令和2年12月25日付けで拒絶査定がなされた(以下,「原査定」という。)。これに対して,令和3年4月2日に審判請求がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明は,令和2年11月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されたものであるところ,請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
直流電源と並列に直列接続された第1のフライングキャパシタ回路及び第2のフライングキャパシタ回路と、
前記直流電源及び前記直列接続された第1のフライングキャパシタ回路及び第2のフライングキャパシタ回路と並列に直列接続された第3のフライングキャパシタ回路及び第4のフライングキャパシタ回路と、
前記第1のフライングキャパシタ回路及び前記第2のフライングキャパシタ回路の出力端子間に直列接続された第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子と、
前記第3のフライングキャパシタ回路及び前記第4のフライングキャパシタ回路の出力端子間に直列接続された第3のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子と、
前記直列接続された第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子の中点に設けられた第1の出力端子と、
前記直列接続された第3のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子の中点に設けられた第2の出力端子と、
を備え、
前記第1のフライングキャパシタ回路と第2のフライングキャパシタ回路の接続点、及び前記第3のフライングキャパシタ回路と第4のフライングキャパシタ回路の接続点は、直流電源電圧の中点に接続され、
前記第1のフライングキャパシタ回路は、
直列接続された第S5aスイッチング素子、第S5bスイッチング素子、第S5cスイッチング素子、及び第S5dスイッチング素子と、
前記第S5aスイッチング素子と第S5bスイッチング素子との接続点と、第S5cスイッチング素子と第S5dスイッチング素子との接続点との間に接続された第1キャパシタFC1と、を含み、
前記第2のフライングキャパシタ回路は、
直列接続された第S6aスイッチング素子、第S6bスイッチング素子、第S6cスイッチング素子、及び第S6dスイッチング素子と、
前記第S6aスイッチング素子と第S6bスイッチング素子との接続点と、第S6cスイッチング素子と第S6dスイッチング素子との接続点との間に接続された第2キャパシタFC2と、を含み、
前記第3のフライングキャパシタ回路は、
直列接続された第S7aスイッチング素子、第S7bスイッチング素子、第S7cスイッチング素子、及び第S7dスイッチング素子と、
前記第S7aスイッチング素子と第S7bスイッチング素子との接続点と、第S7cスイッチング素子と第S7dスイッチング素子との接続点との間に接続された第3キャパシタFC3と、を含み、
前記第4のフライングキャパシタ回路は、
直列接続された第S8aスイッチング素子、第S8bスイッチング素子、第S8cスイッチング素子、及び第S8dスイッチング素子と、
前記第S8aスイッチング素子と第S8bスイッチング素子との接続点と、第S8cスイッチング素子と第S8dスイッチング素子との接続点との間に接続された第4キャパシタFC4とを含み、
前記第1の出力端子と前記第2の出力端子から交流電力を出力することを特徴とする電力変換装置。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は,以下のとおりである。
(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
1.特開2015-091179号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献の記載
(1)本願の国際出願日前に頒布され,原査定の理由において引用された,特開2015-091179号公報(以下,「引用文献」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は,当審において付加した。以下,同じ。)
A 「【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。図1~図4は本発明のマルチレベル電力変換装置の一実施形態例を示している。
【0024】
本実施形態例は、直流キャパシタ1(共通の直流電圧源)に対して三相分の交直変換回路4-1,4-2,4-3を並列に接続した例を示しているが、これに限らず、単相の構成(1つの直流キャパシタ1と2つの交直変換回路(4)による構成)であっても、4相以上の構成であってもよい。」
B 「【0025】
図1において、直流キャパシタ1は第1および第2のキャパシタCDC1,CDC2の直列体により構成され、該直列体の共通接続点を中性点端子NPとし、正極側を正極端子Pとし、負極側を負極端子Nとしている。
【0026】
交直変換回路4は、図4に示すように共通回路2、電圧選択回路3.1(第1の電圧選択回路)および電圧選択回路3.2(第2の電圧選択回路)を備え、この交直変換回路4が図1に示すように三相分(4-1,4-2,4-3)直流キャパシタ1に並列に接続されている。
【0027】
図2、図4において、共通回路2は、第1のスイッチング素子S1、第1のフライングキャパシタCFC1、第2のスイッチング素子S2、第3のスイッチング素子S3、第2のフライングキャパシタCFC2および第4のスイッチング素子S4を順次直列接続した回路であって、スイッチング素子S1の非接続側端は端子15を介して前記直流キャパシタ1の正極端子Pに接続され、スイッチング素子S4の非接続側端は端子11を介して前記負極端子Nに接続され、スイッチング素子S2,S3の共通接続点は端子13を介して前記中性点端子NPに接続されている。
【0028】
また、スイッチング素子S1およびフライングキャパシタCFC1の共通接続点を端子14’とし、フライングキャパシタCFC1およびスイッチング素子S2の共通接続点を端子14とし、スイッチング素子S3およびフライングキャパシタCFC2の共通接続点を端子12’とし、フライングキャパシタCFC2およびスイッチング素子S4の共通接続点を端子12としている。
【0029】
図2の共通回路2は、図1において三相分が共通回路2-1,2-2,2-3として設けられ、スイッチング素子S1~S4、フライングキャパシタCFC1,CFC2および端子11~15、12’、14’には、末尾に_1、_2、_3を各々付している。
【0030】
電圧選択回路3は、図4のように1つの共通回路2に対して、同様に構成された2つの電圧選択回路3.1(第1の電圧選択回路)および電圧選択回路3.2(第2の電圧選択回路)が並列に接続されるものであり、図3は1つの電圧選択回路を示している。
【0031】
図4において、電圧選択回路3.1は、前記第1のフライングキャパシタCFC1の両端間(端子14’、14間)に第5および第6のスイッチング素子S5.1,S6.1を直列に接続し、前記フライングキャパシタCFC2の両端間(端子12’、12間)に第7および第8のスイッチング素子S7.1,S8.1を直列に接続し、前記第5および第6のスイッチング素子S5.1,S6.1の共通接続点(16.1)と前記第7および第8のスイッチング素子S7.1,S8.1の共通接続点(17.1)との間に第9および第10のスイッチング素子S9.1,S10.1を直列に接続して構成されている。
【0032】
前記スイッチング素子S9.1,S10.1の共通接続点を第1の交流出力端子18.1としている。
【0033】
また電圧選択回路3.2は、前記第1のフライングキャパシタCFC1の両端間(端子14’、14間)に第11および第12のスイッチング素子S5.2,S6.2を直列に接続し、前記フライングキャパシタCFC2の両端間(端子12’、12間)に第13および第14のスイッチング素子S7.2,S8.2を直列に接続し、前記第11および第12のスイッチング素子S5.2,S6.2の共通接続点(16.2)と前記第13および第14のスイッチング素子S7.2,S8.2の共通接続点(17.2)との間に第15および第16のスイッチング素子S9.2,S10.2を直列に接続して構成されている。
【0034】
前記スイッチング素子S9.2,S10.2の共通接続点を第2の交流出力端子18.2としている。
【0035】
図4の第1の電圧選択回路3.1は図1において三相分が電圧選択回路3.1-1、3.1-2、3.1-3として設けられ、スイッチング素子S5.1~S10.1および端子16.1、17.1、18.1には各々末尾に_1、_2、_3を各々付している。
【0036】
図4の第2の電圧選択回路3.2は図1において三相分が電圧選択回路3.2-1、3.2-2、3.2-3として設けられ、スイッチング素子S5.2~S10.2および端子16.2、17.2、18.2には各々末尾に_1、_2、_3を各々付している。
【0037】
前記第1の交流出力端子18.1_1、18.1_2、18.1_3は、後述する図7のように、例えば三相電圧源VsのR,S,T相に各々リアクトルLを介して接続され、第2の交流出力端子18.2_1、18.2_2、18.2_3は、例えば三相負荷MのU,V,W相に各々接続されている。
【0038】
また、第1の交流出力端子(18.1_1、18.1_2、18.1_3)に三相負荷Mを、第2の交流出力端子(18.2_1、18.2_2、18.2_3)に三相電圧源Vsを接続してもよく、また三相負荷Mの代わりに第2の三相電圧源を接続してもよい。
【0039】
図1のように構成された回路は、2つの異なる三相交流電源もしくは負荷と、ひとつの直流電圧源の間で、交流-直流電力変換を行う機能を有する交流-直流電力変換器である。またそれは同時に、二つの交流電源もしくは負荷間において、交流-交流電力変換を行う機能を有する交流-交流電力変換器である。」
C 「【図1】
[図:0001394373000001.jpg]
」
D 「【図4】
[図:0001394373000002.jpg]
」
E 「【図7】
[図:0001394373000003.jpg]
」
F 上記Aの段落【0023】,【0024】,【図1】によれば,引用文献には,“直流電圧源である直流キャパシタ1に対して三相分の3つの交直変換回路4を並列に接続し,あるいは,1つの直流キャパシタ1と2つの交直変換回路4によって構成される単相の構成であってもよいマルチレベル電力変換装置”が記載されている。
G 上記Bの段落【0025】には,「直流キャパシタ1は第1および第2のキャパシタCDC1,CDC2の直列体により構成され、該直列体の共通接続点を中性点端子NPとし、正極側を正極端子Pとし、負極側を負極端子Nとしている」ことが記載されている。
H 上記Bの段落【0026】,【図4】によれば,引用文献には,“交直変換回路4は,共通回路2,電圧選択回路3.1(第1の電圧選択回路)および電圧選択回路3.2(第2の電圧選択回路)を備え,三相の場合は,この交直変換回路4が三相分(4-1,4-2,4-3)直流キャパシタ1に並列に接続されて”いることが記載されている。
I 上記Bの段落【0027】には,「共通回路2は、第1のスイッチング素子S1、第1のフライングキャパシタCFC1、第2のスイッチング素子S2、第3のスイッチング素子S3、第2のフライングキャパシタCFC2および第4のスイッチング素子S4を順次直列接続した回路であって、スイッチング素子S1の非接続側端は端子15を介して前記直流キャパシタ1の正極端子Pに接続され、スイッチング素子S4の非接続側端は端子11を介して前記負極端子Nに接続され、スイッチング素子S2,S3の共通接続点は端子13を介して前記中性点端子NPに接続されている」ことが記載されている。
J 上記Bの段落【0030】,【図4】によれば,引用文献には,“電圧選択回路3は,1つの共通回路2に対して,同様に構成された2つの電圧選択回路3.1(第1の電圧選択回路)および電圧選択回路3.2(第2の電圧選択回路)が並列に接続されるものであ”ることが記載されている。
K 上記Bの段落【0031】,【図4】によれば,引用文献には,“電圧選択回路3.1は,前記第1のフライングキャパシタCFC1の両端間に第5および第6のスイッチング素子S5.1,S6.1を直列に接続し,前記第2のフライングキャパシタCFC2の両端間に第7および第8のスイッチング素子S7.1,S8.1を直列に接続し,前記第5および第6のスイッチング素子S5.1,S6.1の共通接続点(16.1)と前記第7および第8のスイッチング素子S7.1,S8.1の共通接続点(17.1)との間に第9および第10のスイッチング素子S9.1,S10.1を直列に接続して構成され”ることが記載されている。
L 上記Bの段落【0033】,【図4】によれば,引用文献には,“電圧選択回路3.2は,前記第1のフライングキャパシタCFC1の両端間に第11および第12のスイッチング素子S5.2,S6.2を直列に接続し,前記第2のフライングキャパシタCFC2の両端間に第13および第14のスイッチング素子S7.2,S8.2を直列に接続し,前記第11および第12のスイッチング素子S5.2,S6.2の共通接続点(16.2)と前記第13および第14のスイッチング素子S7.2,S8.2の共通接続点(17.2)との間に第15および第16のスイッチング素子S9.2,S10.2を直列に接続して構成され”ることが記載されている。
M 上記Bの段落【0032】には,「前記スイッチング素子S9.1,S10.1の共通接続点を第1の交流出力端子18.1としている」ことが,さらに,段落【0034】には,「前記スイッチング素子S9.2,S10.2の共通接続点を第2の交流出力端子18.2としている」ことが記載されている。
N 上記Bの段落【0037】には,「前記第1の交流出力端子18.1_1、18.1_2、18.1_3は、後述する図7のように、例えば三相電圧源VsのR,S,T相に各々リアクトルLを介して接続され、第2の交流出力端子18.2_1、18.2_2、18.2_3は、例えば三相負荷MのU,V,W相に各々接続されている」ことが,さらに,段落【0039】には,「図1のように構成された回路は、2つの異なる三相交流電源もしくは負荷と、ひとつの直流電圧源の間で、交流-直流電力変換を行う機能を有する交流-直流電力変換器である」ことが記載されている。
そして,【図1】,【図7】も参照すると,引用文献には,“三相の場合に,各第1の交流出力端子18.1は,三相電圧源VsのR,S,T相に各々リアクトルLを介して接続され,各第2の交流出力端子18.2は,三相負荷MのU,V,W相に各々接続され,2つの異なる三相交流電源もしくは負荷と,ひとつの直流電圧源の間で,交流-直流電力変換を行う機能を有する交流-直流電力変換器であるマルチレベル電力変換装置”が記載されているといえる。
(2)上記AないしNの記載内容(特に,下線部を参照)からすると,引用文献には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。
「直流電圧源である直流キャパシタ1に対して三相分の3つの交直変換回路4を並列に接続し,あるいは,1つの直流キャパシタ1と2つの交直変換回路4によって構成される単相の構成であってもよいマルチレベル電力変換装置において,
直流キャパシタ1は第1および第2のキャパシタCDC1,CDC2の直列体により構成され,該直列体の共通接続点を中性点端子NPとし,正極側を正極端子Pとし,負極側を負極端子Nとして,
交直変換回路4は,共通回路2,電圧選択回路3.1(第1の電圧選択回路)および電圧選択回路3.2(第2の電圧選択回路)を備え,三相の場合は,この交直変換回路4が三相分(4-1,4-2,4-3)直流キャパシタ1に並列に接続されており,
共通回路2は,第1のスイッチング素子S1,第1のフライングキャパシタCFC1,第2のスイッチング素子S2,第3のスイッチング素子S3,第2のフライングキャパシタCFC2および第4のスイッチング素子S4を順次直列接続した回路であって,スイッチング素子S1の非接続側端は端子15を介して前記直流キャパシタ1の正極端子Pに接続され,スイッチング素子S4の非接続側端は端子11を介して前記負極端子Nに接続され,スイッチング素子S2,S3の共通接続点は端子13を介して前記中性点端子NPに接続されており,
電圧選択回路3は,1つの共通回路2に対して,同様に構成された2つの電圧選択回路3.1(第1の電圧選択回路)および電圧選択回路3.2(第2の電圧選択回路)が並列に接続されるものであって,
電圧選択回路3.1は,前記第1のフライングキャパシタCFC1の両端間に第5および第6のスイッチング素子S5.1,S6.1を直列に接続し,前記第2のフライングキャパシタCFC2の両端間に第7および第8のスイッチング素子S7.1,S8.1を直列に接続し,前記第5および第6のスイッチング素子S5.1,S6.1の共通接続点(16.1)と前記第7および第8のスイッチング素子S7.1,S8.1の共通接続点(17.1)との間に第9および第10のスイッチング素子S9.1,S10.1を直列に接続して構成されており,
電圧選択回路3.2は,前記第1のフライングキャパシタCFC1の両端間に第11および第12のスイッチング素子S5.2,S6.2を直列に接続し,前記第2のフライングキャパシタCFC2の両端間に第13および第14のスイッチング素子S7.2,S8.2を直列に接続し,前記第11および第12のスイッチング素子S5.2,S6.2の共通接続点(16.2)と前記第13および第14のスイッチング素子S7.2,S8.2の共通接続点(17.2)との間に第15および第16のスイッチング素子S9.2,S10.2を直列に接続して構成されており,
前記スイッチング素子S9.1,S10.1の共通接続点を第1の交流出力端子18.1として,前記スイッチング素子S9.2,S10.2の共通接続点を第2の交流出力端子18.2として,
三相の場合に,各第1の交流出力端子18.1は,三相電圧源VsのR,S,T相に各々リアクトルLを介して接続され,各第2の交流出力端子18.2は,三相負荷MのU,V,W相に各々接続され,2つの異なる三相交流電源もしくは負荷と,ひとつの直流電圧源の間で,交流-直流電力変換を行う機能を有する交流-直流電力変換器であるマルチレベル電力変換装置。」
第5 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
1 引用発明の「直流キャパシタ1」は,「直流電圧源である」から,本願発明の「直流電源」に相当する。
また,引用発明では,「交直変換回路4」の「共通回路2」が,「第1のスイッチング素子S1,第1のフライングキャパシタCFC1,第2のスイッチング素子S2,第3のスイッチング素子S3,第2のフライングキャパシタCFC2および第4のスイッチング素子S4を順次直列接続」したものであって,さらに,「電圧選択回路3.2(第2の電圧選択回路)」が,「前記第1のフライングキャパシタCFC1の両端間に第11および第12のスイッチング素子S5.2,S6.2を直列に接続し,前記第2のフライングキャパシタCFC2の両端間に第13および第14のスイッチング素子S7.2,S8.2を直列に接続」したものである。
してみると,引用発明の「交直変換回路4」においては,「第1のスイッチング素子S1」,「第11のスイッチング素子S5.2」,「第12のスイッチング素子S6.2」,「第2のスイッチング素子S2」が順次直列接続され,「第1のスイッチング素子S1」と「第11のスイッチング素子S5.2」との接続点と,「第12のスイッチング素子S6.2」と「第2のスイッチング素子S2」との接続点との間に「第1のフライングキャパシタCFC1」が接続される回路を有しているといえ,そして,この回路は,いわゆる,フライングキャパシタ回路と認められる。
同様に,引用発明の「交直変換回路4」においては,「第3のスイッチング素子S3」,「第13のスイッチング素子S7.2」,「第14のスイッチング素子S8.2」,「第4のスイッチング素子S4」が順次直列接続され,「第3のスイッチング素子S3」と「第13のスイッチング素子S7.2」との接続点と,「第14のスイッチング素子S8.2」と「第4のスイッチング素子S4」との接続点との間に「第2のフライングキャパシタCFC2」が接続される回路を有しているといえ,そして,この回路は,いわゆる,フライングキャパシタ回路と認められる。
ここで,引用発明では,「スイッチング素子S1の非接続側端は端子15を介して前記直流キャパシタ1の正極端子Pに接続され,スイッチング素子S4の非接続側端は端子11を介して前記負極端子Nに接続され」,また,「正極端子P」及び「負極端子N」は,「直流電圧源である直流キャパシタ1」を構成する「直列体」の「正極側」及び「正極側」の端子であって,さらに,「第2のスイッチング素子S2,第3のスイッチング素子S3」は「順次直列接続」されるものであるから,引用発明の2つの上記フライングキャパシタ回路は,「直流電圧源」と並列に直列接続されているといえる。
したがって,引用発明の「交直変換回路4」の「第1のスイッチング素子S1」,「第11のスイッチング素子S5.2」,「第12のスイッチング素子S6.2」,「第2のスイッチング素子S2」,「第1のフライングキャパシタCFC1」からなるフライングキャパシタ回路,及び,「第3のスイッチング素子S3」,「第13のスイッチング素子S7.2」,「第14のスイッチング素子S8.2」,「第4のスイッチング素子S4」,「第2のフライングキャパシタCFC2」からなるフライングキャパシタ回路は,本願発明の「直流電源と並列に直列接続された第1のフライングキャパシタ回路及び第2のフライングキャパシタ回路」に相当する。
さらに,引用発明の「交直変換回路4」の「第1のスイッチング素子S1」,「第11のスイッチング素子S5.2」,「第12のスイッチング素子S6.2」,「第2のスイッチング素子S2」,「第1のフライングキャパシタCFC1」は,各々,本願発明の「第S5aスイッチング素子」,「第S5bスイッチング素子」,「第S5cスイッチング素子」,「第S5dスイッチング素子」,「第1キャパシタFC1」に相当し,引用発明は,本願発明の「前記第1のフライングキャパシタ回路は、直列接続された第S5aスイッチング素子、第S5bスイッチング素子、第S5cスイッチング素子、及び第S5dスイッチング素子と、前記第S5aスイッチング素子と第S5bスイッチング素子との接続点と、第S5cスイッチング素子と第S5dスイッチング素子との接続点との間に接続された第1キャパシタFC1と、を含」むに相当する構成を有するものといえる。
同様に,引用発明の「交直変換回路4」の「第3のスイッチング素子S3」,「第13のスイッチング素子S7.2」,「第14のスイッチング素子S8.2」,「第4のスイッチング素子S4」,「第2のフライングキャパシタCFC2」は,各々,本願発明の「第S6aスイッチング素子」,「第S6bスイッチング素子」,「第S6cスイッチング素子」,「第S6dスイッチング素子」,「第2キャパシタFC2」に相当し,引用発明は,本願発明の「前記第2のフライングキャパシタ回路は、直列接続された第S6aスイッチング素子、第S6bスイッチング素子、第S6cスイッチング素子、及び第S6dスイッチング素子と、前記第S6aスイッチング素子と第S6bスイッチング素子との接続点と、第S6cスイッチング素子と第S6dスイッチング素子との接続点との間に接続された第2キャパシタFC2と、を含」むに相当する構成を有するものといえる。
2 さらに,上記1で検討した,引用発明の「第1のスイッチング素子S1」,「第11のスイッチング素子S5.2」,「第12のスイッチング素子S6.2」,「第2のスイッチング素子S2」,「第1のフライングキャパシタCFC1」からなるフライングキャパシタ回路において,「前記第11および第12のスイッチング素子S5.2,S6.2の共通接続点(16.2)」は,フライングキャパシタ回路の出力端子と認められる。
同様に,引用発明の「第3のスイッチング素子S3」,「第13のスイッチング素子S7.2」,「第14のスイッチング素子S8.2」,「第4のスイッチング素子S4」,「第2のフライングキャパシタCFC2」からなるフライングキャパシタ回路において,「前記第13および第14のスイッチング素子S7.2,S8.2の共通接続点(17.2)」は,フライングキャパシタ回路の出力端子と認められる。
そして,引用発明では,「前記第11および第12のスイッチング素子S5.2,S6.2の共通接続点(16.2)と前記第13および第14のスイッチング素子S7.2,S8.2の共通接続点(17.2)との間に第15および第16のスイッチング素子S9.2,S10.2を直列に接続」されるものであるから,引用発明の「交直変換回路4」の「第15スイッチング素子S9.2」,及び「第16のスイッチング素子S10.2」は,本願発明の「前記第1のフライングキャパシタ回路及び前記第2のフライングキャパシタ回路の出力端子間に直列接続された第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子」に相当する。
3 また,引用発明の「交直変換回路4」の「第2の交流出力端子18.2」は,「前記スイッチング素子S9.2,S10.2の共通接続点」であるから,本願発明の「前記直列接続された第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子の中点に設けられた第1の出力端子」に相当する。
4 引用発明は,「三相分の3つの交直変換回路4」,「あるいは」,「単相の構成」の際は「2つの交直変換回路4」を有するものであるから,引用発明は,上記1-3で検討したものと同じ「交直変換回路4」を少なくとももう1つ有するものである。
そして,引用発明のこのもう1つの「交直変換回路4」は,上記1-3で検討した「交直変換回路4」と「並列に接続」されるものである。
してみると,引用発明のもう1つの「交直変換回路4」における「第1のスイッチング素子S1」,「第11のスイッチング素子S5.2」,「第12のスイッチング素子S6.2」,「第2のスイッチング素子S2」,「第1のフライングキャパシタCFC1」からなるフライングキャパシタ回路,及び,「第3のスイッチング素子S3」,「第13のスイッチング素子S7.2」,「第14のスイッチング素子S8.2」,「第4のスイッチング素子S4」,「第2のフライングキャパシタCFC2」からなるフライングキャパシタ回路は,本願発明の「前記直流電源及び前記直列接続された第1のフライングキャパシタ回路及び第2のフライングキャパシタ回路と並列に直列接続された第3のフライングキャパシタ回路及び第4のフライングキャパシタ回路」に相当する。
そして,引用発明のもう1つの「交直変換回路4」における,「第1のスイッチング素子S1」,「第11のスイッチング素子S5.2」,「第12のスイッチング素子S6.2」,「第2のスイッチング素子S2」,「第1のフライングキャパシタCFC1」は,各々,本願発明の「第S7aスイッチング素子」,「第S7bスイッチング素子」,「第S7cスイッチング素子」,「第S7dスイッチング素子」,「第3キャパシタFC3」に相当し,引用発明は,本願発明の「前記第3のフライングキャパシタ回路は、直列接続された第S7aスイッチング素子、第S7bスイッチング素子、第S7cスイッチング素子、及び第S7dスイッチング素子と、前記第S7aスイッチング素子と第S7bスイッチング素子との接続点と、第S7cスイッチング素子と第S7dスイッチング素子との接続点との間に接続された第3キャパシタFC3と、を含」むに相当する構成を有するものといえる。
また,引用発明のもう1つの「交直変換回路4」における,「第3のスイッチング素子S3」,「第13のスイッチング素子S7.2」,「第14のスイッチング素子S8.2」,「第4のスイッチング素子S4」,「第2のフライングキャパシタCFC2」は,各々,本願発明の「第S8aスイッチング素子」,「第S8bスイッチング素子」,「第S8cスイッチング素子」,「第S8dスイッチング素子」,「第4キャパシタFC4」に相当し,引用発明は,本願発明の「前記第4のフライングキャパシタ回路は、直列接続された第S8aスイッチング素子、第S8bスイッチング素子、第S8cスイッチング素子、及び第S8dスイッチング素子と、前記第S8aスイッチング素子と第S8bスイッチング素子との接続点と、第S8cスイッチング素子と第S8dスイッチング素子との接続点との間に接続された第4キャパシタFC4と、を含」むに相当する構成を有するものといえる。
5 また,上記2と同様に,引用発明のもう1つの「交直変換回路4」において,「前記第11および第12のスイッチング素子S5.2,S6.2の共通接続点(16.2)と前記第13および第14のスイッチング素子S7.2,S8.2の共通接続点(17.2)との間に第15および第16のスイッチング素子S9.2,S10.2を直列に接続」されるものであるから,引用発明のもう1つの「交直変換回路4」の「第15スイッチング素子S9.2」,及び「第16のスイッチング素子S10.2」は,本願発明の「前記第3のフライングキャパシタ回路及び前記第4のフライングキャパシタ回路の出力端子間に直列接続された第3のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子」に相当する。
6 そして,引用発明のもう1つの「交直変換回路4」における,「第2の交流出力端子18.2」は,「前記スイッチング素子S9.2,S10.2の共通接続点」であるから,引用発明のもう1つの「交直変換回路4」の「第2の交流出力端子18.2」は,本願発明の「前記直列接続された第3のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子の中点に設けられた第2の出力端子」に相当する。
7 さらに,引用発明の「交直変換回路4」及びもう1つの「交直変換回路4」においては,「スイッチング素子S2,S3の共通接続点は端子13を介して前記中性点端子NPに接続され」るものであって,「中性点端子NP」は,「直流電圧源である直流キャパシタ1」を構成する「第1および第2のキャパシタCDC1,CDC2の直列体」の「共通接続点」であって,「直流電圧源」の中点といえる。
してみると,上記1及び4の点も踏まえると,引用発明の「交直変換回路4」及びもう1つの「交直変換回路4」において,「スイッチング素子S2,S3の共通接続点は端子13を介して前記中性点端子NPに接続され」ることは,本願発明の「前記第1のフライングキャパシタ回路と第2のフライングキャパシタ回路の接続点、及び前記第3のフライングキャパシタ回路と第4のフライングキャパシタ回路の接続点は、直流電源電圧の中点に接続され」ることに相当する。
8 そして,引用発明の「マルチレベル電力変換装置」は,「各第2の交流出力端子18.2は,三相負荷MのU,V,W相に各々接続され」,「ひとつの直流電圧源の間で,交流-直流電力変換を行う」ものであって,また,「単相」の場合では「2つの交直変換回路4」の2つの「第2の交流出力端子18.2」が負荷に接続され「ひとつの直流電圧源の間で,交流-直流電力変換を行う」ものと認められ,いずれにしろ,引用発明の「交直変換回路4」及びもう1つの「交直変換回路4」の各「第2の交流出力端子18.2」は交流電力を出力するものであるから,引用発明の「マルチレベル電力変換装置」は,本願発明の「前記第1の出力端子と前記第2の出力端子から交流電力を出力する」「電力変換装置」に相当する。
したがって,引用発明は,本願発明の発明特定事項の全てを備えているから,本願発明と引用発明との間に相違点は無く,本願発明は,引用文献に記載された発明である。
なお,審判請求人は,審判請求書で,
「審査官殿は、引用文献1の図1における共通回路2-1、電圧選択回路3.2-1、共通回路2-2、電圧選択回路3.2-2が本願発明の電力変換装置に相当すると認定されていますが、共通回路2-1と電圧選択回路3.2-1は交直変換回路4-1の一部であり、共通回路2-2と電圧選択回路3.2-2は交直回路4-2の一部なので、これらの回路が1つの電力変換装置を構成するものではないことは当業者には明らかです。また、引用文献1には、交流出力端子18.1と交流出力端子18.2から交流電力が出力される例が示されていますが、交流出力端子18.2_1と交流出力端子18.2_2から交流電力が出力される例は示されていません。したがって、引用文献1のマルチレベル電力変換回路の構成は、本願発明の電力変換装置の構成とは異なります。」と主張している。
確かに,引用文献の図1において,共通回路2-1と電圧選択回路3.2-1は交直変換回路4-1の一部であり、共通回路2-2と電圧選択回路3.2-2は交直回路4-2の一部であるが,引用文献のマルチレベル電力変換装置においては,交直変換回路4-1の共通回路2-1と電圧選択回路3.2-1からなる部分,交直回路4-2の共通回路2-2と電圧選択回路3.2-2からなる部分のみで,直流電圧源と負荷の間で交流-直流電力変換を行い,交直変換回路4-1の交流出力端子18.2_1と交直回路4-2の交流出力端子18.2_2から交流を出力する電力変換装置を構成していることは,上記第4の1(1)Bの記載からも,当業者に明らかであるといえる。
したがって,上記主張を採用することはできない。
第6 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用文献に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
したがって,本願は,その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2021-004300