特許拒絶査定不服審判
2021-003289
麻雀卓
- 審判番号
- 2021-003289
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-223501外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年03月11日
- 審決日
- 2022年06月14日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (A63F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2016-223501「麻雀卓」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月24日出願公開、特開2018- 79089〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は,平成28年11月16日の出願であって,令和2年4月16日付けで拒絶理由が通知され,同年4月28日に意見書が提出され,同年7月31日付けで拒絶理由が通知され,同年9月11日に意見書及び手続補正書が提出され,同年12月22日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ,これに対し,令和3年3月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,令和2年9月11日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるつぎのとおりのものである。
「【請求項1】
ディスプレイを備える携帯通信端末が当該ディスプレイの設置面が斜め上向きとなる態様で傾けて載置される載置部と、
麻雀ゲームの進行に伴う画像を前記ディスプレイに表示させるように前記携帯通信端末に指示する制御手段とを備え、
前記載置部は、本体の側面に設けられている麻雀卓。」
第3 原査定の拒絶の理由
拒絶査定の理由である,令和2年7月31日付け拒絶理由通知の理由は,次の理由を含むものである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記(引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1
・引用文献等 1-3
<引用文献等一覧>
1.特開2015-27366号公報
2.実願昭56-22132号(実開昭57-136393号)のマイクロフィルム
3.特開平11-290548号公報
第4 当審の判断
1 引用例
本願の出願日前の平成27年2月12日に公報が発行され,原査定の拒絶の理由に引用された特開2015-27366号公報(以下「引用例」という。)には,次の事項が記載されている。
(1)「【技術分野】
【0001】
この発明は、麻雀牌の種類を識別する牌種別データ等を取得し、これを基礎として和了点数の計算処理を自動的に行う麻雀システムと麻雀システムの点数計算方法に関するものである。」
(2)「【0004】
また、アガリ点数を自動計算することのできる麻雀卓も提案されている(特許文献2)。この麻雀卓は、非接触型デジタルICチップを内蔵する麻雀牌から出力された牌情報を基にコンピュータ計算したアガリ点数を麻雀卓中央に設置された表示装置(以下、「設置型表示方法」というに表示するように構成されている。)
(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、画像処理方法では、いずれかのプレーヤーがアガリの際に、メンゼン牌、鳴き牌、アガリ牌などを別々に撮影することが求められる。アガリ状況情報の入力も必要である。これでは、麻雀ゲームの迅速性が殺がれるし、中高齢者にとって使い勝手がよいとはいえない、という問題点がある。
【0008】
一方、設置型処理方法は、撮影等の特別な行動を必要とせず簡単なボタン操作によって点数計算が行われるので、麻雀ゲームの迅速性が保たれ中高年齢者にとって使い勝手がよい。ところが、表示装置が必ず必要であるため、その分コスト高になる。また、表示装置が固定設置されている麻雀卓でしかプレーできないので、汎用性に欠ける場合がある。このコストと汎用性に改良の余地があった。
【0009】
最後の携帯ゲーム機方法では、麻雀ゲームの臨場感に欠けるし、特に老人にとって操作が難しいという欠点がある。麻雀ゲームは、美麗な牌を並べたり積み上げたり、自分のメンゼン牌の牌順を変えたりすることを自身の手で行うからこそ脳が活性されるのであるところ、携帯ゲーム機方法では、それが不可能に近い。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、上述した問題点、改良の余地そして欠点を解消・改善することにある。すなわち、若年層はもとより中高年層にとっても使い勝手がよく、廉価で汎用性に富む麻雀システム及び麻雀システムの点数計算方法を提供することが、本発明の目的である。」
(4)「【0040】
以下、各図に基づいて、本発明を実施するための形態(以下、適宜「本実施形態」という)を説明する。図1に示すように、本実施形態に係る麻雀システム1は、天板3aを有する麻雀卓3と、天板上3aに置かれた麻雀牌5(実際のゲームでは136牌使用する)と、麻雀牌各々から牌識別データを取得する牌データ取得手段9と、後述するデータ処理手段を備える携帯情報端末7と、牌データ取得手段9と携帯情報端末7(データ処理手段)とを、有線(無線でもよい)で接続する接続手段11と、を備えている。本実施形態では、点棒13も麻雀システム1の構成要素にしているが、これは任意であって実物の点棒の代わりにデータ(デジタル点棒)を用いてもよい。」
(5)「【0044】
(携帯情報端末の構造)
携帯情報端末7は、点数計算プログラムその他のプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)7aと、OS(Operating System)、プログラム命令あるいはデータ等を格納するためのRAM(Random Access Memory)7cと、一時的な作業用データを格納するためのRAM7bと、操作入力手段及び表示手段として機能するタッチパネル7eと、撮像手段であるカメラ7fのほか、無線通信部7dと外部インターフェースであるコネクタ11aと、と備えている。CPU7aは、データ処理手段として機能し、牌データ取得手段9と、後述する補充データとから点数計算等を行うようになっている。符号7pは、各部位を電気的に接続するポートを示す。なお、カメラ7fは、本実施形態での直接使用はないので、これを省略することもできる。
【0045】
RAM7bには、各麻雀牌の牌識別データ等の情報が格納される。無線通信部7dは、図外の他の情報端末やゲーム機と通信したり、所望のソフトウェアをダウンロードしたりするためのものである。コネクタ11aは、先に述べたコネクタ11c及びケーブル11bとともに接続手段11の一部を構成しており、携帯情報端末7(端末側データ処理手段、CPU7a)とデータ取得手段9(制御通信部10)とを電気的に接続する。タッチパネル7eは、表面を指でなぞることでマウスポインタやキー入力を可能とするタッチパッド機能を有し、後述する点数計算に必要な補充データの入力や、計算された点数を表示するためのものである。タッチパッド機能以外の機能、たとえば、プッシュボタン機能等を排除する趣旨ではない。すなわち、昨今においてはタッチパッド機能の利便性は中高齢者を含め広く認知されているので、この機能を応用することにより麻雀の点数計算をより簡便なものとすることができる。」
(6)「【0060】
次に、図3及び11を参照しながら、携帯情報端末7と麻雀卓3が行う点数計算の処理手順を説明する。このとき、携帯情報端末7は、端末設置エリア31内に設置され、データ取得手段9と接続手段11を介して電気的に接続されている。ここで、点数計算プログラムがスタートすると、CPU7aは、図6に示す「場・局・持ち点」をタッチパネル7eに表示させる(S1)。この状態のCPU7aは、アガリ牌センサー27sからのアガリ牌信号を待っている。アガリ牌信号は、アガリ牌がアガリ牌置場27の上に置かれ、これをアガリ牌センサー27sが検知したときに出力する信号である。
【0061】
アガリ牌信号を受信したCPU7aは、アガリ牌置場27に置かれたアガリ牌の牌識別データをアガリ牌センサー27sから入手し、その牌識別データをRAM7bに一時記憶させる(S5)。次にCPU7aは、図7に示すロン・ツモ操作画面をタッチパネル7eに表示させ(S7)、それと前後して手牌センサー21sからは手牌群から送信された牌識別データを、鳴き牌センサー23sからは鳴き牌の有無及び有の場合に鳴き牌から送信された牌識別データを、さらに、ドラ牌センサー25sからメクリ牌(裏メクリ牌も同じ)の有無及び有の場合にメクリ牌から送信された牌識別データを、それぞれ入手する。これらの牌識別データは、アガリ牌の牌識別データとともにRAM7bに一時的に一時記憶させる(S9~13)。さらに、図6に示すリーチボタン51a~51dのいずれかが操作されたかを判定する(S15)。さらに、場風・自風や親か子かの判定を行う(S17,19)。
【0062】
ここで、CPU7aは、上記したデータや判定結果に基づき役の判定及び符の計算を行い(S21,23)、これらから点数計算を行い、その結果をタッチパネル7eに、図8に示す点数表示を行わせる(S25,27)。点数計算は、CPU7aが行うことになっているが、データ取得手段9との協働によって行わせてもよい。ここで、図8の役追加ボタンが操作されたときは(S29)、操作回数に応じた役数を追加して点数の再計算を行う(S33)。再計算の結果は、タッチパネル7eに表示される(S35)。S29で役追加がなかった場合、もしくは、S35で点数が再表示された場合において、OKボタン55aが操作されれば点数が確定され、その点数に応じた点棒清算が行われる(S37,S39)。点数計算の結果は、更新された場・局・持ち点の表示の中に表示される(S41)。一方、S37において、OKボタン55aが操作されず、キャンセルボタン55cが操作されたときはすべてをキャンセルしてプログラムのスタートに戻り点数計算をやり直す。」
(7)「【0068】
(本実施形態の第3変形例)
図16を基に、本実施形態の第3変形例(以下、単に「第3変形例」という)を説明する。第3変形例では、プレーヤー各々に対応する合計4台の携帯情報端末107a~107dを使用する。ただし、携帯情報端末107cは、天板3aの下に隠れて見えない。麻雀卓3は、端末設置手段として4人のプレーヤー各々に対応して設けられた引き出し41a~41dを備えている。各引き出しは、麻雀卓3の本体に対し出没自在であり、突出させたときにその中にプレーヤー各々に対応する携帯情報端末の表示画面を上に向け自分だけが見えるように載置できるようになっており、さらに、載置した状態で没入可能に構成されている。」
(8)上記(7)より、プレーヤー各々は、引き出し41a~41dを突出させた状態で携帯情報端末の表示画面を見ることとなるのであるから、引き出し41a~41dを突出させた状態の麻雀卓3が観念できる。
そうすると,上記事項(1)乃至(8)より,引用例には,次の発明(以下「引用発明」という。)が示されているものと認められる。
「天板上3aに置かれた麻雀牌5と、麻雀牌各々から牌識別データを取得する牌データ取得手段9を備える麻雀卓3であって、
牌データ取得手段9はデータ処理手段を備える携帯情報端末7と接続され、
携帯情報端末7は、点数計算プログラムその他のプログラムを実行するCPU7aと、操作入力手段及び、計算された点数を表示する表示手段として機能するタッチパネル7eとを備え、
CPU7aは、データや判定結果に基づき役の判定及び符の計算を行い、牌データ取得手段9との協働によって点数計算を行い、その結果をタッチパネル7eに、点数表示を行わせ、
その中にプレーヤー各々に対応する携帯情報端末の表示画面を上に向け自分だけが見えるように載置できる突出させた状態の引き出し41a~41dを備えている麻雀卓3。」
2 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)後者の「タッチパネル7e」、「携帯情報端末7」、「引き出し41a~41d」及び「麻雀卓3」は、それぞれ、前者の「ディスプレイ」、「携帯通信端末」、「載置部」及び「麻雀卓」に相当する。
(2)後者の「引き出し41a~41d」には、携帯情報端末を表示画面を上に向け載置できるものであるから、後者の「引き出し41a~41d」は、携帯情報端末7がタッチパネル7eの載置面が上向きとなる態様で載置される「載置部」といえる。
そして、「突出させた状態の引き出し41a~41d」は「麻雀卓3」の側面に設けられていることは明らかである。
(3)後者の「点数計算」の「結果」である「点数表示」は、「麻雀卓3」の「牌データ取得手段9」から取得したデータから計算したものを「タッチパネル7e」に表示させたものであるから、前者の「麻雀ゲームの進行に伴う画像」に相当する。
本願発明と引用発明とは,以下の一致点で一致し,以下の各相違点で相違する。
[一致点]
「ディスプレイを備える携帯通信端末が当該ディスプレイの設置面が上向きとなる態様で載置される載置部と、
麻雀ゲームの進行に伴う画像を前記ディスプレイに表示させるように前記携帯通信端末に指示する制御手段とを備え、
前記載置部は、本体の側面に設けられている麻雀卓。」
[相違点1]
本願発明の「載置部」は、携帯通信端末が当該ディスプレイの設置面が「斜め上向き」となる態様で「傾けて」載置され、本体の「側面」に設けられているものであるのに対し,引用発明の「引き出し41a~41d」は携帯通信端末が当該ディスプレイの設置面が「上向き」となる態様で載置され、「麻雀卓3から突出させる」ものである点。
[相違点2]
麻雀ゲームの進行に伴う画像を前記ディスプレイに表示させるように前記携帯通信端末に指示する「制御手段」を、本願発明は、「麻雀卓」が備えているのに対し、引用発明は、「携帯情報端末7」が備えている点。
3 判断
上記各前記相違点について,以下検討する。
(1)[相違点1]について
麻雀卓の技術分野において、ディスプレイを斜め上向きとなるように設置されることは周知の技術手段(例えば、実願昭56-22132号(実開昭57-136393号)のマイクロフィルムの図1、特開平11-290548号公報の図1の符号104等を参照。以下「周知技術」という。)であるところ、ディスプレイを見やすい向きに設置することは、ディスプレイに求められる潜在的な課題といえるから、引用発明に前記周知技術を適用する動機付けがあるといえる。
そして、引用発明の引き出し41a~41dが麻雀卓3から突出させた状態のものであることからすれば、携帯情報端末を引き出し41a~41dに載置するに際し、前記周知技術を適用し、携帯情報端末の載置面が斜め上向きとなるようにし、上記相違点1に係る構成とすることに何ら困難性はない。
(2)[相違点2]について
引用発明の携帯情報端末7のCPU7aは、麻雀卓3の牌データ取得手段9との協働によって点数計算を行っていることからすれば、点数表示に係る制御は、携帯情報端末7のCPU7aは、麻雀卓3の牌データ取得手段9との協働によるものといえるのであるから、当該制御を麻雀卓3で行うようにし、以て、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が適宜なし得る程度のことである。
してみると,引用発明に,上記周知技術を適用し,上記相違点に係る本願発明とすることは当業者が容易に想到し得るものである。
そして,本願発明の効果も,引用発明及び上記周知技術から,当業者が予測し得る程度のものといえる。
(3)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、以下のとおり主張する。
ア 引用文献1には携帯情報端末の載置部を麻雀卓本体の側面とすることを動機付ける記載がないこと
本願出願人が、上記のように引用文献1に記載された発明の認定をした根拠を述べると、拒絶理由通知にて「載置部」に相当すると認定された「引き出し41」について記載された[0068]に「各引き出しは、麻雀卓3 の本体に対し出没自在であり、突出させたときにその中にプレーヤー各々に対応する携帯情報端末の表示画面を上に向け自分だけが見えるように載置できるようになっており、さらに、載置した状態で没入可能に構成されている。」という記載があることによる。
さらに、引用文献1の図16を見ると、引き出し41cは没入されていて、その把持部だけが麻雀卓本体の側面から突出していると認められる一方で、引き出し41a,41dはそれらが全て引き出された状態であると認められ、また、引き出し41bはそれが半分ほど引き出された状態であると認められる。ただ、引き出すか否かを問わず、引き出しは引き出しであって麻雀卓本体の側面ではない。
普通に考えて、麻雀卓に設けた引き出しに携帯通信端末を載置するという技術思想と、麻雀卓の側面に携帯通信端末を載置するという技術思想とは全く異なり、これらは埋めることのできない相違点である。
すなわち、引用文献1に記載された発明の場合には、当該載置部が麻雀卓「本体の側面」自体にあるのではなく「引き出しの中」にあることは動かしようのない事実であり、携帯通信端末の載置場所を、「引き出しの中」とすることに代えて「麻雀卓本体の側面」にすることを採用することの動機付けとなる記載は引用文献1に存在しない。
イ 本願請求項1に係る発明が有用な効果を有すること
引用文献1には、携帯情報端末を載置した引き出し41を引き出した状態で麻雀ゲームを進行することが排除されてはいないものの、そのような場合には、麻雀ゲームのプレーの邪魔になることが、[0029]に示唆されている。なお、同段落の記載は、[0068]に関連する引用文献1の請求項9についてのものである。
つまり、[0029]の記載をニュートラルに見れば、引用文献1に記載された発明の場合には、引き出しを引き出した状態で麻雀ゲームをすると邪魔になることを承知で、その状態でプレーをするか、或いは、それを回避するために麻雀ゲーム中の大半は引き出しを引き出した状態とせずに、点数を確認したいときにだけ引き出すことが、引用文献1に開示されているといえる。
そして、普通に考えると、同段落には「収納若しくは載置したまま引き出しを押し込めるように構成すればばプレーの邪魔にならない」と記載されていることから、引用文献1に記載された発明の場合には、後者のように、点数を確認したいときにだけ引き出しを引き出すことを典型的なものと位置付けていると考えられる。このため、本願出願人はこのことを前提として、引用文献1に記載された発明の場合には、点数を確認するためにディスプレイの表示内容を確認する際に、引き出しを突出させることをユーザに強いるという不都合がある趣旨の主張をしたのである。
しかし、上記のように、拒絶査定ではこの点について何ら検討されておらず、看過が認められる点は冒頭のとおりである。
なお、前者のように、引き出しを引き出した状態で麻雀ゲームをすると邪魔になることを承知で、その状態でプレーをするとなれば、そのこと自体に不都合が認められるから、この場合にも、そのような不都合がない本願請求項1に係る発明には有用な効果が認められる。
つぎに、拒絶査定には「引き出しを突出させた際に椅子とともに移動しなければならないかは、引き出しがどれくらい突出する構造とされているか、及び、ユーザが麻雀卓に対して椅子をどのような位置に配置して麻雀を行うか等に依存するものである。」との記載があるが、この記載も妥当でないので、以下のように反論する。
確かに、この記載内容は一般論としてはそのとおりであるが、引用文献1に記載された発明の場合には、ユーザが椅子とともに移動することがあり得るということは紛れもない事実である。これに対して、本願請求項1に係る発明の場合には、このようなことが一切ないということに優位性、つまり優位な効果を有する。(以下省略)
ウ 引用文献1に記載された発明に、引用文献2乃至引用文献3に記載された技術事項を適用することには阻害要因があること
「上記『視認性の低下』や移動等を強いられるかについては、ユーザが麻雀卓に対してどのような位置に座っているかといったことや、携帯端末をどの程度傾けて載置かに依存する。」との評価は、ユーザと麻雀卓の側面との間隔は20cm程度となることが多いこと、また、引用文献2の第1図、引用文献3の図1を見ると、表示部の角度はともに水平面に対して30度程度傾いていることを考慮してなされていない。
現在市場に流通しているスマートフォンは小さいものでも約15cmの長さであるから、「30度」の角度で「斜め上向き」に傾けると、引き出しは約13cmを引き出すことが最低限必要である。実際には、引き出しの把持部の幅も考慮すべきであるから、引き出しの突出量は14cmを下らない。
この突出量は、ユーザと麻雀卓の側面との間隔は20cm程度あるので、確かに、ユーザが引き出しを引き出す際に、椅子とともに移動をしなくてもディスプレイを視認することは可能である。
しかし、ユーザは麻雀卓の側面から20cm程度しか離れていない位置から椅子とともに移動せずに、麻雀卓の側面から14cmしか突出していない引き出しに例えば30度傾いて載置されたディスプレイに表示されている点数を視認するためには、単に目線を下げるだけでは足りず、上半身を丸めるか前方に移動させたり首を下向きに曲げたりして覗き込むことが必要であろう。このことは、仮に、携帯通信端末がそのディスプレイをほぼ真上にする態様で載置されていたとしても当てはまる。
実際には、引用文献2乃至引用文献3に記載された表示部の角度はともに水平面に対して30度程度傾いているから、ユーザが椅子とともに移動したり、上半身を仰け反らせたりするといった何らかの行動を強いられると考えることが合理的である。
このように、30度という相対的に大きな載置角としないまでも、拒絶理由通知及び拒絶査定の論理によれば、携帯端末は程度の差こそあれ、引用文献2乃至引用文献3に記載のように傾けて載置される必要があるところ、そもそも、傾けて配置すること自体が視認性を低下させることになることから、この点のみをもってしても、拒絶査定の記載は採用されるものではない。
もちろん、拒絶査定に記載されているように、このような事態を回避するためには、傾ける角度を小さくすることも考えられるが、載置角を小さくするくらいならば、引用文献1のようにディスプレイが真上に向く態様を採用すればよいのである。このことは、引用文献1に記載された発明に、引用文献2乃至引用文献3の表示部を傾けて配置するという技術事項を適用することに阻害要因があることの何よりの証拠である。
エ 視認性の低下や移動等を強いられることのないような対応は単なる設計事項でもないし、当業者の通常の創作能力の発揮でもないこと
オ 拒絶査定における判断が、当業者を基準にされていないこと
しかし、以下の理由で、上記請求人の主張は採用できない。
「ア 引用文献1には携帯情報端末の載置部を麻雀卓本体の側面とすることを動機付ける記載がないこと」について
上記「1」のとおり、引用発明の「引き出し41a~41d」は、プレーヤー各々が、引き出し41a~41dを突出させた状態で携帯情報端末の表示画面を見ることとなるのであるから、引き出し41a~41dを突出させた状態の麻雀卓3が観念できる。
そして、上記「2(2)」のとおり、「突出させた状態の引き出し41a~41d」は「麻雀卓3」の側面に設けられていることは明らかである。
「イ 本願請求項1に係る発明が有用な効果を有すること」について
上記「1(7)」のとおり、引用文献には「突出させたときにその中にプレーヤー各々に対応する携帯情報端末の表示画面を上に向け自分だけが見えるように載置できるようになっており」と記載されているのであるから、引き出し41a~41dを突出させた状態でプレイすることを何ら妨げるものではない。
したがって、本願発明に、引用発明以上の有利な効果を有するとは認められない。
「ウ 引用文献1に記載された発明に、引用文献2乃至引用文献3に記載された技術事項を適用することには阻害要因があること」について
上記「1」のとおり、引用発明の「引き出し41a~41d」は、プレーヤー各々が、引き出し41a~41dを突出させた状態で携帯情報端末の表示画面を見ることとなるのであるから、引き出し41a~41dを突出させた状態の麻雀卓3が観念できる。
してみると、引き出し41a~41dが麻雀卓3から突出させた状態のものであることからすれば、携帯情報端末を引き出し41a~41dに載置するに際し、前記周知技術を適用することに何ら阻害要因があるとはいえない。
「エ」及び「オ」について
請求人が主張する上記「エ」及び「オ」の効果は、本願明細書の記載に基づくものではないのであるから、そもそも採用するに値しない。
第5 むすび
以上のとおりであるから,本願発明は,本願出願の出願日前に出願公開された引用文献に記載された発明及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2021-003289