2021-002565
薄膜光センシングネットワークを用いた触覚センシングシステム及び方法
- 審判番号
- 2021-002565
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-223764外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年02月26日
- 審決日
- 2021年10月11日
- 公報発行日
- 2022年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .575-Z (G01L) / P18 .121-Z (G01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成28年11月17日の外国語書面出願(パリ条約による優先権主張、2015年11月24日、米国)であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
同年 9月16日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 令和3年2月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年2月26日にされた補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の概要
令和3年2月26日にされた特許請求の範囲についての補正(以下「本件補正」という。)は、以下の(1)に示される本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下の(2)に示される本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は、補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「【請求項1】可撓性材料に配置された導光路のアレイから成り、前記導光路の各々は、光学式ひずみゲージとして機能する材料からなり、第1端を入力端とし、第2端を出力端とするものであるセンシングネットワークと、前記導光路の各々に対して1つずつ設けられており、対応する導光路の入力端にそれぞれ結合されており、対応する導光路に所定の第1周波数及び偏光を有する光信号をそれぞれ供給する複数の光源と、前記導光路の各々に対して1つずつ設けられており、対応する導光路の出力端にそれぞれ結合されており、対応する導光路からそれぞれ光信号を受信して、所定の第2周波数で受信した前記光信号の大きさに対応した出力信号を生成する複数の光検出器と、前記複数の光検出器の各々から前記出力信号を受信するように接続されており、前記複数の光検出器から受信した信号に基づいて、前記センシングネットワークに加えられた圧力を特定するよう構成されたプロセッサと、を含む、可撓性薄膜触覚センサ。」
(2) 本件補正後
「【請求項1】可撓性材料に配置された導光路のアレイから成り、前記導光路の各々は、光学式ひずみゲージとして機能する材料からなり、第1端を入力端とし、第2端を出力端とし、かつ前記第1端から前記第2端までにわたって中実であるセンシングネットワークと、前記導光路の各々に対して1つずつ設けられており、対応する導光路の入力端にそれぞれ結合されており、対応する導光路に所定の第1周波数及び偏光を有する光信号をそれぞれ供給する複数の光源と、前記導光路の各々に対して1つずつ設けられており、対応する導光路の出力端にそれぞれ結合されており、対応する導光路からそれぞれ光信号を受信して、所定の第2周波数で受信した前記光信号の大きさおよび偏光に対応した出力信号を生成する複数の光検出器と、前記複数の光検出器の各々から前記出力信号を受信するように接続されており、前記複数の光検出器から受信した信号に基づいて、前記センシングネットワークに加えられた圧力を特定するよう構成されたプロセッサと、を含む、可撓性薄膜触覚センサ。」
2 本件補正についての当審の判断
本件補正は、請求項1において、本件補正前の「可撓性材料に配置された導光路のアレイから成り、前記導光路の各々は、光学式ひずみゲージとして機能する材料からなり、第1端を入力端とし、第2端を出力端とするものであるセンシングネットワーク」が「前記第1端から前記第2端までにわたって中実である」ことに限定したものである。
また、本件補正は、請求項1において、本件補正前の「複数の光検出器」が「生成する」「出力信号」が、「所定の第2周波数で受信した前記光信号の大きさおよび偏光に対応した」ものであることに限定したものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、以下では、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか否か、について検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、次に特定されるとおりのものである。
「可撓性材料に配置された導光路のアレイから成り、前記導光路の各々は、光学式ひずみゲージとして機能する材料からなり、第1端を入力端とし、第2端を出力端とし、かつ前記第1端から前記第2端までにわたって中実であるセンシングネットワークと、前記導光路の各々に対して1つずつ設けられており、対応する導光路の入力端にそれぞれ結合されており、対応する導光路に所定の第1周波数及び偏光を有する光信号をそれぞれ供給する複数の光源と、前記導光路の各々に対して1つずつ設けられており、対応する導光路の出力端にそれぞれ結合されており、対応する導光路からそれぞれ光信号を受信して、所定の第2周波数で受信した前記光信号の大きさおよび偏光に対応した出力信号を生成する複数の光検出器と、前記複数の光検出器の各々から前記出力信号を受信するように接続されており、前記複数の光検出器から受信した信号に基づいて、前記センシングネットワークに加えられた圧力を特定するよう構成されたプロセッサと、を含む、可撓性薄膜触覚センサ。」
(2) 引用文献等
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由において引用された特表昭62-502142号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。下線は当審が付した。
(ア)3頁左上欄9~15行
「本発明の力を計測する光学装置は、配列(アレイ)を形成するように配置された少なくとも1つの光学ファイバと、いくつかのファイバの、入口と呼ばれる一端に配置された発光手段と、いくつかのファイバの、出口と呼ばれる他端に配置された受光手段とを含み、ファイバの配列により伝達された光の強度に関する情報と関連する力の計測を与える。」
(イ)3頁右上欄7~12行
「本発明は、計量装置、歪んだ面に加わる応力の計測装置、中空体(ホローボディー)、貯蔵容器、衣服、圧力により形成される部分を製造する産業あるいは、周期的又は実質的に周期的な力をそれらの内壁がうける中空体を試験する産業、特に、特種靴やロボット工学に用いる機械システムに応用される。」
(ウ)4頁左上欄13行~同頁左下欄6行
「第2a-1、2a-2及び3a図に示すように、横線iが縦線jの上にのせられるか又は逆になるように構成される。第2a、2a-2図において、順序iの横線と順序jの縦線の各断面図を示す。配列2の集合の機械的結合力を確保するため、これはシリコン弾性材の層に埋められる。このシリコン弾性材は、例えば、ローンーポーレンクカンパニーにより製造される商標「Rhodorsil」でよく知られ、商業的に利用される物質から構成される。この実施例では、カーペット形状の表面上に上板20と下板21とが配設され、保護のため、のりによって固定される。上板20と下板21は例えばネオプレン材、合成または自然のファイバ(繊維)により構成される。他の実施例によれば、光学ファイバの配列2を被覆する材料22はポリウレタン発泡型の多孔性(細胞質)の物質から構成することができる。後者の場合、多孔性の物質の密度及び弾性は、その物質により被覆される配列の感度が得られる範囲で選択される。そして、このような密度や弾性が配列に加えられる応力や力の減衰を決定する。上記2つの例では、被覆材はがっしりしたタイプのもので、前記商標「Rhodorsil」のようなものであり、多孔質材はポリウレタンの発泡材であるが、配列の被覆はモールド(塑造)により行なわれる。好適な実施例によれば、編まれたファイバにより配列2は構成される。これらの例は第2b-1、2b-2、2c-1、2c-2及び3b図に示される。第2b-1図に示す如く、各横線iは、各縦線j上に相互に配列の各格子またはピッチを形成するべく載せられる。この載置は、第2b-1、2c-1図のように示すように配列の単一の方向に実行されてもよいし、第2b-2、2c-2及び3b図のように、配列の2つの方向に従ってなされてもよい。さらに、第2c-1、2c-2図では、それ自身の被覆ベッド22と上下両板20、21が示される。光ファイバそれ自身により構成された横線及び縦線の上に力が加わることを許す単独の役割を果たすため、縦及び横の光ファイバをワイヤのような要素により置きかえて構成しても良い。上述の配列の実施例に使用される光ファイバにおいては、単一モードファイバ、またはグレイテッドインデックスもしくはステップインデックスをもっている多モードファイバいずれでもよい。光ファイバは例えば、250分の1ミリメートルから1ミリメートルの間の直径のプラスチック製のファイバであるか、または10分の1ミリメートルの直径のシリカ結晶体ファイバである。配列を構成するための直径250分の1ミリメートルのプラスチック製のファイバを利用して、7-8ミリメートルの厚さを越えない、第2a、2c図に示すごとき最終構造を得ることが可能である。」
(エ)5頁左上欄13行~同頁右上欄3行
「本発明の他の装置は特に試験表面の多くの点に加えられる圧力マップまたは相対的な力のプロッティング(作図)を許容しうるものであり、第6a図を参照しつつ説明する。この図面によれば、本実施例は、第1の方向の多数のm個の縦線と第2の方向の多数のn個の横線から構成された配列2を有する装置である。第6a図において、第1の方向と第2の方向とは垂直方向である。各縦線と横線は独立した光ファイバで構成され、その光ファイバは、発光手段Ei、Ejと、受光及び検出手段Qi、Qjとを備える。ダイナミックメモリ手段62、63は、各第1の方向及び第2の方向の順序i、jの各光ファイバに対応する検出器によって与えられる相対力の値を記憶する。さらに次式のような受光部Qi、Qjにより与えられる計測の直線的結合式に従って、それぞれ配列の第1の方向及び第2の方向の座標i、jの配列の各点に加えられる相対力の計算が、上記記憶手段62、63を読み書きする手段及び計算手段65により行なわれる。」
(オ)5頁右上欄9行~同頁左下欄1行
「第6a図において、上記読み書きする手段と配列に加えられる相対力を計算する手段は、例えば、中央処理装置65で構成される。さらに、メモリ63、62に対応する受光部Qi、Qjの組合わせを確保するため、61で示されるマルチプレクサシステムiと60で示されるマルチプレクサシステムjが備えられる。中央処理装置65により制御されるこれらのマルチプレクサは、受光部Qi、Qjの組み合わせの順序を許可するとともに、上記検出器により与えられる検出結果として表わされる減衰値をメモリi、63、メモリi、62の対応する所定のアドレスの書き込むことを許可する。中央処理装置65はコンピュータ・キーボード型のキーボードを備えるとともに、計測の結果を演算器に従ってディスプレイを表示するテレビジョンモニタと、受光部QiとQjにより付与される計測を扱うためのどのようなプログラムをも中央メモリへの格納を許す補助メモリを備える。」
(カ)6頁左下欄2~5行
「本発明は上記実施例には何等限定されることなく、特に上記にのべたセンシティブ・スキン(感度を有する皮)に用いられる対応の装置は、把持部を有するロボット工学の分野に有効である。」
(キ)第1図~第2図
「[図:0001382938000001.jpg]」
(ク)第6図
「[図:0001382938000002.jpg]」
イ 引用発明の認定
上記アの記載内容を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「配列(アレイ)を形成するように配置された少なくとも1つの光学ファイバと、いくつかのファイバの、入口と呼ばれる一端に配置された発光手段と、いくつかのファイバの、出口と呼ばれる他端に配置された受光手段とを含み、ファイバの配列により伝達された光の強度に関する情報と関連する力の計測を与える光学装置であって、((ア)参照)ロボット工学に用いる機械システムや歪んだ面に加わる応力の計測装置に応用されるものであり、センシティブ・スキン(感度を有する皮)に用いられる対応の装置は、把持部を有するロボット工学の分野に有効であり、((イ)、(カ)参照)第1の方向の多数のm個の縦線と、第1の方向に垂直な第2の方向の多数のn個の横線から構成された配列2を有する装置であり、各縦線と横線は独立した光ファイバで構成され、その光ファイバは、発光手段Ei、Ejと、受光及び検出手段Qi、Qjを備えており、((エ)参照)横線iが縦線jの上にのせられるか又は逆になるように構成され、配列2の集合の機械的結合力を確保するため、シリコン弾性材の層に埋められ、カーペット形状の表面上に上板20と下板21とが配設され、保護のため、のりによって固定され、上板20と下板21は例えばネオプレン材、合成または自然のファイバ(繊維)により構成されるものであり、配列に使用される光ファイバは、単一モードファイバ、またはグレイテッドインデックスもしくはステップインデックスをもっている多モードファイバいずれでもよく、((ウ)参照)各第1の方向及び第2の方向の順序i、jの各光ファイバに対応する検出器によって与えられる相対力の値をダイナミックメモリ手段62、63が記憶し、それぞれ配列の第1の方向及び第2の方向の座標i、jの配列の各点に加えられる相対力の計算が、上記記憶手段62、63を読み書きする手段及び計算手段65により行なわれて、試験表面の多くの点に加えられる圧力マップまたは相対的な力のプロッティングがされ、((エ)参照)上記読み書きする手段と配列に加えられる相対力を計算する手段は、例えば、中央処理装置65で構成される、((オ)参照)光学装置。」
ウ 引用文献2
(ア)原査定の拒絶の理由において引用された特開2008-145315号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。下線は当審が付した。
「【0013】[第1の実施形態]図1(a)は本発明の第1の実施形態に係る光ファイバ温度・歪測定方法を説明する概念図、図1(b)は図1(a)に示す光ファイバの概略断面図、図2は本実施形態に用いる光ファイバの半径方向における屈折率の一例を示す説明図である。【0014】図1(a)に示すように、本実施形態において、光ファイバ温度・歪測定装置は、媒質または空間の温度変化・歪に対応して温度変化・歪を受ける被測定光ファイバとしての空孔付光ファイバ1と、空孔付光ファイバ1に測定光としての光波を入射する光源部2と、空孔付光ファイバ1が出射した光波の偏光面を制御する偏光子3と、偏光子3によって偏光面を制御された光波を電気信号に変換する受光部としての光/電気変換器4と、光/電気変換器4から出力される出力信号の周波数スペクトルを表示するスペクトラムアナライザ5とを備えている。【0015】空孔付光ファイバ1の一端から光波を入射すると、空孔付光ファイバ1中においてブリルアン散乱光が発生する。本実施形態においては、前方ブリルアン散乱光及び伝搬光が偏光子3を通ることで、スペクトラムアナライザ5において伝搬光と前方ブリルアン散乱光のビート信号が得られる。このビート信号から周波数シフトまたは散乱光強度の変化を解析することにより、媒質あるいは空間等の温度や歪を測定することができる。【0016】空孔付光ファイバ1には、図1(b)に示すように3つ以上(図1(b)では6つ)の空孔13が設けられている。これらの空孔13は、クラッド領域12内であってコア領域11の周囲、具体的にはコア領域11を軸とする同軸円上にコア領域11に並行して形成されている。以下、コア領域11の直径を2a、空孔13の直径をd、軸心から空孔13までの距離(以下、空孔位置という)をc/2とする。」
「【0019】以下、本実施形態の作用効果を説明する。図3(a)は被測定光ファイバとして図1及び図2に示した空孔付光ファイバ(Hole-assisted Fiber:HAF)1を用いた場合の前方ブリルアン散乱光の周波数シフトの温度依存性(図中、黒点および実線で示す)及び被測定光ファイバとして1.3μm帯零分散単一モードファイバ(Single-Mode Fiber:SMF)を用いた場合の前方ブリルアン散乱光の周波数シフトの温度依存性(図中、白点及び破線で示す)を示すグラフ、図3(b)は被測定光ファイバとして空孔付光ファイバ1を用いた場合の前方ブリルアン散乱光の散乱光強度の温度依存性(図中、黒点および実線で示す)及び被測定光ファイバとして1.3μm帯零分散単一モードファイバを用いた場合の前方ブリルアン散乱光の散乱光強度の温度依存性(図中、白点及び破線で示す)を示すグラフである。【0020】なお、図3(a),(b)は空孔付光ファイバ1及び1.3μm帯零分散単一モードファイバのクラッド径を125μm、また、空孔付光ファイバ1の空孔間の距離c=18μm、空孔の直径d=13.5μmとして測定した例である。続きを表示(全13行)【0021】空孔付光ファイバ1中に発生する前方ブリルアン散乱光の周波数シフトおよび強度は、それぞれ図3(a)、図3(b)に示す実線の傾きから得られる、温度に対する構造固有の比例係数kfおよび比例係数kIで変化する。したがって温度変化前の空孔付光ファイバ1の温度、前方ブリルアン散乱光の周波数シフト、散乱光強度をそれぞれT0,f0,I0とすると、温度変化後の温度Tは次の(1)式、または(2)式のいずれかで求められる。【0022】T=kf(f-f0)+T0・・・(1)T=kI(I-I0)+T0・・・(2)【0023】ここで、(1)式におけるf、(2)式におけるIはそれぞれ温度変化後に測定した前方ブリルアン散乱光の周波数シフト、散乱光強度を表す。【0024】また前述したように、一般的にブリルアン散乱による周波数シフトおよび散乱光強度は、光ファイバの歪量に対しても線形に変化する。したがって、空孔付光ファイバ1の歪量変化に対する前方ブリルアン散乱光の周波数シフトの比例係数、または散乱光強度の比例係数を予め求めておくことにより、検出した前方ブリルアン散乱光の周波数シフトまたは散乱光強度から、上記(1)式または(2)式と同様の関係式を用いて歪量を算出することができる。」
「【0032】[第2の実施形態]図6に本発明の第2の実施形態における光ファイバ温度・歪測定装置の構成例を示す。本実施形態に係る光ファイバ温度・歪測定装置は、上述した第1の実施形態に係る光ファイバ温度・歪測定装置に、解析部6及び測定結果表示部7を追加して設けたものである。その他の構成は図1に示し上述した第1の実施形態の構成と概ね同様であり、同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。【0033】図6に示すように、本実施形態においてはスペクトラムアナライザ5に解析部6が接続され、更に解析部6には測定結果表示部7が接続されている。解析部6は、スペクトラムアナライザ5によって観測された前方ブリルアン散乱光の周波数シフトまたは散乱光強度の変化を解析して空孔付光ファイバ1の温度・歪を算出する手段である。また、測定結果表示部7は、解析部6によって算出された空孔付光ファイバ1の温度または歪、あるいは双方を表示する手段である。【0034】本実施形態によれば、スペクトラムアナライザ5で観測される前方ブリルアン散乱光の周波数シフトまたは散乱光強度の変化を解析部6で解析することで、所望の媒質または空間の温度または歪量が得られる。なお、図6に示す光ファイバ温度・歪測定装置においては、受光効率を上げるために、光ファイバ1と光源部2の間に偏光子または偏波コントローラがあることが好ましい。」
「【図1】[図:0001382938000003.jpg]」
「【図3】[図:0001382938000004.jpg]」
「【図6】[図:0001382938000005.jpg]」
(イ)上記摘記事項から、引用文献2には、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献2記載事項1」という。)
[引用文献2記載事項1]
「媒質または空間の温度変化・歪に対応して温度変化・歪を受ける被測定光ファイバとしての空孔付光ファイバ1と、空孔付光ファイバ1に測定光としての光波を入射する光源部2と、空孔付光ファイバ1が出射した光波の偏光面を制御する偏光子3と、偏光子3によって偏光面を制御された光波を電気信号に変換する受光部としての光/電気変換器4と、光/電気変換器4から出力される出力信号の周波数スペクトルを表示するスペクトラムアナライザ5とを備えている光ファイバ温度・歪測定装置であって、(【0014】)空孔付光ファイバ1の一端から光波を入射すると、空孔付光ファイバ1中においてブリルアン散乱光が発生し、前方ブリルアン散乱光及び伝搬光が偏光子3を通ることで、スペクトラムアナライザ5において伝搬光と前方ブリルアン散乱光のビート信号が得られ、このビート信号から周波数シフトまたは散乱光強度の変化を解析することにより、媒質あるいは空間等の温度や歪を測定することができるものであり、(【0015】)解析部6及び測定結果表示部7が追加して設けられ、スペクトラムアナライザ5に解析部6が接続され、更に解析部6には測定結果表示部7が接続されており、解析部6は、スペクトラムアナライザ5によって観測された前方ブリルアン散乱光の周波数シフトまたは散乱光強度の変化を解析して空孔付光ファイバ1の温度・歪を算出する手段であり、(【0032】~【0033】、【図6】)受光効率を上げるために、光ファイバ1と光源部2の間に偏光子または偏波コントローラがある、(【0034】)光ファイバ温度・歪測定装置。」
(ウ)上記摘記事項(段落【0019】~【0024】、【図3】)から、引用文献2には、次の技術事項も記載されていると認められる(以下「引用文献2記載事項2」という。)
[引用文献2記載事項2]
「引用文献2記載事項1の光ファイバ温度・歪測定装置において、被測定光ファイバとして単一モードファイバを用いた場合でも、空孔付光ファイバを用いた場合と同様に、ブリルアン散乱による周波数シフト及び散乱光強度は、光ファイバの歪量に対して線形に変化すること。」
エ 引用文献3
当審が新たに引用する特開2012-52999号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。下線は当審が付した。
「【0005】本発明では、被測定光ファイバまたは光ケーブル中で発生する導波音響波型ブリルアン散乱(以下、GAWBS)による散乱光における固有周波数、散乱光強度またはスペクトル幅を、被測定光ファイバまたは光ケーブルの光の伝搬方向(長手方向)全体に亘って取得することにより、前記課題を解決する。」
「【0009】図1にGAWBSによる散乱光を観測するための一般的な測定系の構成および測定結果の一例を示す。【0010】GAWBSは、図1(a)に示すように、光源1から被測定光ファイバ/光ケーブル(以下、単に被測定光ファイバ)2の一端に入射された光波により当該被測定光ファイバ2内に微小な振動が生じ、対応する周波数の偏波変調光(ブリルアン散乱光)を生じる現象である。また、GAWBSによる散乱光は、図1(a)に示すように、被測定光ファイバ2の他端から出射された光より偏光子3を通して任意の偏光成分を切り出し、これを受光器4で電気信号に変換することによって、スペクトルアナライザ5等で観測することができる。続きを表示(全18行)【0011】図1(b)は一般的な単一モード光ファイバ(SMF)で生じたGAWBSによる散乱光の周波数スペクトルを示すもので、数百MHzの比較的低い周波数帯で多数のピークが発生していることが確認できる。各ピークの周波数は、GAWBSに作用する音響モードTR2,mモード(mは自然数)の固有周波数に対応し、この音響モードは光ファイバの材料およびクラッド径によって決定され、コア構造にはほとんど依存しない。なお、これらの現象および理論は、非特許文献1において詳述されている。【0012】図2に光ファイバ中でGAWBSを誘起する音響モード(TR2,mモード)の振動分布の一例、ここでは最も大きな散乱光強度が得られるTR2,7モードの振動分布の例を示す。【0013】図2(a)は光ファイバ中に歪や変形がない状態における振動分布を示しており、例えば直交するx軸とy軸を仮定すると、それぞれの軸上で同じ分布が得られている。ここで、GAWBSによる散乱光の効率は、非特許文献1より、光波の伝搬領域における音響モードの振幅の大きさに比例する。従って、光ファイバが真円の場合、周方向で90°ごとに同じ振幅が得られる(例えば、図2(a)の区間(1)と(2)では同じ分布)ため、受光信号は偏光角に対して90°周期で同じ散乱光強度が得られる。また、このときの固有周波数fmは140.14MHzであった。【0014】図2(b)に示すように、光ファイバに外力(側圧)を加え、光ファイバ中に歪・変形が生じた場合を考える。図2(c)は外力により光ファイバの非円率が5%となったときのTR2,7モードの振動分布を示す。固有周波数は138.76MHzであり、外力によって周波数が変化していることが確認できる。従って、散乱光の固有周波数の変化量より、側方から印加された外力を検出することが可能である。【0015】また、図2(c)より、外力により対称軸が変化し、左右方向の軸上と上下方向の軸上での振幅が異なることが分かる。図2(a)と同様に直交するx軸とy軸を仮定すると、それぞれの軸上でのモード分布が異なり、x軸上の振幅の最大値はy軸上の振幅の最大値より大きい。そのため、受信信号は偏光角に対して散乱光強度が大きい角度帯(区間(1))と、散乱光強度が小さくなる角度帯(区間(2))とが存在する。従って、例えば図1(a)に示したように、光源1と被測定光ファイバ2との間に設置された偏波制御器6を制御して偏光面が90°異なる光波を入力した際のブリルアン散乱光を取得し、それぞれの散乱光強度の比から印加された外力を検出することが可能である。【0016】また、固有周波数の変化量と、偏光状態に対する散乱光強度の変化とを併せて取得することで、より高精度に外力を検出することができ、好ましい。【0017】ここで、図2に示したように、GAWBSを誘起する音響モードの振動成分は光ファイバの断面内(長手方向と垂直な面内)全体に広がっている。そのため、外力によって光ファイバ中に歪や変形を生じたとき、音響モードの分布や固有周波数は外力に対して非常に敏感に変化すると考えられる。一方で前述の通り、コア構造に対する依存性がほとんどないため、主材料が同じ光ファイバ(例えば石英系光ファイバ)であれば光学特性が異なるものであっても、GAWBSに関する特性は同じになる。」
「【図1】[図:0001382938000006.jpg]」
「【図2】[図:0001382938000007.jpg]」
上記摘記事項から、引用文献3には、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献3記載事項」という。)
[引用文献3記載事項]
「光源1から被測定光ファイバ2の一端に入射された光波により当該被測定光ファイバ2内に微小な振動が生じ、対応する周波数の偏波変調光(ブリルアン散乱光)を被測定光ファイバ2の他端から出射された光より偏光子3を通して任意の偏光成分を切り出し、これを受光器4で電気信号に変換することによって、スペクトルアナライザ5等で観測する際に、(【0010】)被測定光ファイバ2としては一般的な単一モード光ファイバが用いられ、(【0011】)光源1と被測定光ファイバ2との間に設置された偏波制御器6を制御して偏光面が90°異なる光波を入力した際のブリルアン散乱光を取得し、固有周波数の変化量と、偏光状態に対する散乱光強度の変化とを併せて取得して、被測定光ファイバ2の側方から印加された外力を検出すること。(【0014】~【0016】)」
オ 周知技術の認定
引用文献2記載事項2及び引用文献3記載事項から、次の技術事項は当業者にとって周知であったと認められる(以下「周知技術」という)。
[周知技術]
「被測定光ファイバとして一般的な単一モード光ファイバが用いられた光ファイバ歪測定装置において、被測定光ファイバの一端に光源から光波を入射する際、光源と被測定光ファイバとの間に設置された偏波制御器を制御して光波を被測定光ファイバに入力し、当該被測定光ファイバ内に生じるブリルアン散乱光が被測定光ファイバの他端から出射され、偏光子を通して偏光成分を切り出し、これを受光器で電気信号に変換することによって、スペクトルアナライザ等で観測し、固有周波数の変化量と、偏光状態に対する散乱光強度の変化とを併せて取得して、被測定光ファイバの側方から印加された外力を検出すること。」
(3) 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
ア(ア) 引用発明の「配列(アレイ)を形成するように配置された少なくとも1つの光学ファイバ」は、本件補正発明の「導光路のアレイ」に相当する。
また、引用発明では、「配列2の集合の機械的結合力を確保するため、シリコン弾性材の層に埋められ、カーペット形状の表面上に上板20と下板21とが配設され、保護のため、のりによって固定され、上板20と下板21は例えばネオプレン材、合成または自然のファイバ(繊維)により構成されるもの」であるから、引用発明の「配列(アレイ)を形成するように配置された少なくとも1つの光学ファイバ」は、可撓性材料に配置されているといえる。
(イ) 引用発明の「いくつかのファイバの、入口と呼ばれる一端」及び「いくつかのファイバの、出口と呼ばれる他端」は、それぞれ本件補正発明の「入力端」(「第1端」)及び「出力端」(「第2端」)に相当する。
また、引用発明は、「入口と呼ばれる一端」に「発光手段」を「配置」し、「出口と呼ばれる他端」に「受光手段」を「配置」して、「ファイバの配列により伝達された光の強度に関する情報と関連する力の計測」が行われ、「試験表面の多くの点に加えられる圧力マップまたは相対的な力のプロッティングがされ」るから、引用発明の「光学ファイバ」の各々は、光学式ひずみゲージとして機能する材料からなるといえる。
(ウ) 引用発明の「配列に使用される光ファイバ」は、「単一モードファイバ、またはグレイテッドインデックスもしくはステップインデックスをもっている多モードファイバいずれでも」よいから、通常は、「入口と呼ばれる一端」から「出口と呼ばれる他端」までにわたって中実であるといえる。
(エ) 引用発明の「配列2」は、「第1の方向の多数のm個の縦線と、第1の方向に垂直な第2の方向の多数のn個の横線から構成され」ており、「各縦線と横線は独立した光ファイバで構成され、その光ファイバは、発光手段Ei、Ejと、受光及び検出手段Qi、Qjを備えており」、「横線iが縦線jの上にのせられるか又は逆になるように構成され」ているから、引用発明の「配列2」は、本件補正発明の「センシングネットワーク」に相当する。
(オ) 上記(ア)~(エ)の検討内容を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「可撓性材料に配置された導光路のアレイから成り、前記導光路の各々は、光学式ひずみゲージとして機能する材料からなり、第1端を入力端とし、第2端を出力端とし、かつ前記第1端から前記第2端までにわたって中実であるセンシングネットワーク」を含んでいる点で一致する。
イ 引用発明の「配列2」を構成する「光ファイバ」は、「発光手段Ei、Ejと、受光及び検出手段Qi、Qjを備えており」、この「発光手段Ei、Ej」は、「入口と呼ばれる一端に配置された」ものであるから、本件補正発明の「前記導光路の各々に対して1つずつ設けられており、対応する導光路の入力端にそれぞれ結合されており、対応する導光路に」「光信号をそれぞれ供給する複数の光源」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記導光路の各々に対して1つずつ設けられており、対応する導光路の入力端にそれぞれ結合されており、対応する導光路に光信号をそれぞれ供給する複数の光源」を備える点で共通する。
ウ 引用発明における「受光及び検出手段Qi、Qj」は、「出口と呼ばれる他端に配置された」ものであるから、「受光及び検出手段Qi、Qj」は、本件補正発明の「前記導光路の各々に対して1つずつ設けられており、対応する導光路の出力端にそれぞれ結合されており、対応する導光路からそれぞれ光信号を受信して」、「出力信号を生成する複数の光検出器」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記導光路の各々に対して1つずつ設けられており、対応する導光路の出力端にそれぞれ結合されており、対応する導光路からそれぞれ光信号を受信して、出力信号を生成する複数の光検出器」を備える点で共通する。
エ 引用発明においては、「各第1の方向及び第2の方向の順序i、jの各光ファイバに対応する検出器によって与えられる相対力の値をダイナミックメモリ手段62、63が記憶し、それぞれ配列の第1の方向及び第2の方向の座標i、jの配列の各点に加えられる相対力の計算が、上記記憶手段62、63を読み書きする手段及び計算手段65により行なわれて、試験表面の多くの点に加えられる圧力マップまたは相対的な力のプロッティングがされ、上記読み書きする手段と配列に加えられる相対力を計算する手段は、例えば、中央処理装置65で構成される」ところ、このような処理を行う「中央処理装置65」は、本件補正発明の「前記複数の光検出器の各々から前記出力信号を受信するように接続されており、前記複数の光検出器から受信した信号に基づいて、前記センシングネットワークに加えられた圧力を特定するよう構成されたプロセッサ」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記複数の光検出器の各々から前記出力信号を受信するように接続されており、前記複数の光検出器から受信した信号に基づいて、前記センシングネットワークに加えられた圧力を特定するよう構成されたプロセッサ」を備える点で一致する。
オ 引用発明の「ファイバの配列により伝達された光の強度に関する情報と関連する力の計測を与える光学装置」は、「ロボット工学に用いる機械システムに応用されるものであり、センシティブ・スキン(感度を有する皮)に用いられる対応の装置は、把持部を有するロボット工学の分野に有効」であるから、本件補正発明と引用発明は「可撓性薄膜触覚センサ」の発明である点で一致する。
(4) 一致点及び相違点
前記(3)の対比分析の検討内容をまとめると、本件補正発明と引用発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点において相違する。
[一致点]
「可撓性材料に配置された導光路のアレイから成り、前記導光路の各々は、光学式ひずみゲージとして機能する材料からなり、第1端を入力端とし、第2端を出力端とし、かつ前記第1端から前記第2端までにわたって中実であるセンシングネットワークと、前記導光路の各々に対して1つずつ設けられており、対応する導光路の入力端にそれぞれ結合されており、対応する導光路に光信号をそれぞれ供給する複数の光源と、前記導光路の各々に対して1つずつ設けられており、対応する導光路の出力端にそれぞれ結合されており、対応する導光路からそれぞれ光信号を受信して、出力信号を生成する複数の光検出器と、前記複数の光検出器の各々から前記出力信号を受信するように接続されており、前記複数の光検出器から受信した信号に基づいて、前記センシングネットワークに加えられた圧力を特定するよう構成されたプロセッサと、を含む、可撓性薄膜触覚センサ。」
[相違点]
本件補正発明では、「複数の光源」に「対応する導光路」に「供給する」「光信号」が、「所定の第1周波数及び偏光を有する」ものであり、「複数の光検出器」が「生成する」「出力信号」が、「所定の第2周波数で受信した前記光信号の大きさおよび偏光に対応した」ものであるのに対して、引用発明では、そのような構成を備えていない点。
(5) 判断
上記相違点について検討する。
ア 前記(2)オにおいて示したとおり、
「被測定光ファイバとして一般的な単一モード光ファイバが用いられた光ファイバ歪測定装置において、被測定光ファイバの一端に光源から光波を入射する際、光源と被測定光ファイバとの間に設置された偏波制御器を制御して光波を被測定光ファイバに入力し、当該被測定光ファイバ内に生じるブリルアン散乱光が被測定光ファイバの他端から出射され、偏光子を通して偏光成分を切り出し、これを受光器で電気信号に変換することによって、スペクトルアナライザ等で観測し、固有周波数の変化量と、偏光状態に対する散乱光強度の変化とを併せて取得して、被測定光ファイバの側方から印加された外力を検出すること。」
は周知技術である。
イ ここで、引用発明は、「配列(アレイ)を形成するように配置された少なくとも1つの光学ファイバと、いくつかのファイバの、入口と呼ばれる一端に配置された発光手段と、いくつかのファイバの、出口と呼ばれる他端に配置された受光手段とを含み、ファイバの配列により伝達された光の強度に関する情報と関連する力の計測を与える光学装置」であり、「配列に使用される光ファイバは、単一モードファイバ、またはグレイテッドインデックスもしくはステップインデックスをもっている多モードファイバいずれでも」よいとしている。
他方、上記周知技術においても、被測定光ファイバとして一般的な単一モード光ファイバが用いられているから、引用発明の「力の計測」において、上記周知技術を適用することは、当業者が適宜選択すべき設計事項にすぎない。
ウ(ア) 上記周知技術において、被測定光ファイバ内に生じるブリルアン散乱光については、固有周波数が変化しているから、被測定光ファイバの一端に光源から入射する光波の周波数は、本件補正発明の「導光路」に「供給」される「光信号」の「所定の第1周波数」に対応し、被測定光ファイバの他端から出射された光の周波数は、本件補正発明の「導光路」から「受信」した「光信号」の「所定の第2周波数」に対応する。
(イ) 上記周知技術において、光源と被測定光ファイバとの間に設置された偏波制御器を制御して被測定光ファイバに入力される光波は、本件補正発明の「導光路」に「供給」される「偏光を有する光信号」に対応し、被測定光ファイバの他端から出射され、偏光子を通して偏光成分を切り出し、これを受光器で変換した電気信号は、本件補正発明の「導光路」から「受信」した「偏光に対応した出力信号」に対応する。
(ウ) 上記(ア)及び(イ)の点を踏まえると、引用発明において周知技術を採用した結果、入力光は所定の周波数及び偏光を有し、出力は、周波数の変化を受け、受光した光信号の大きさ及び偏光に対応した出力をすることとなるから、結果として、「光学ファイバの配列に配置された複数の発光手段及び受光手段について、各光源に対応する導光路に供給される光信号が、所定の第1周波数及び偏光を有するものであり、対応する導光路から光信号を受信する各光検出器が生成する出力信号が、所定の第2周波数で受信した前記光信号の大きさおよび偏光に対応したもの」となる。
したがって、上記相違点に係る本件補正発明の構成は、周知手段を選択するという設計事項にすぎないから、当業者が容易に想到し得たことである。
エ そして、本件補正発明の奏する効果は、引用発明及び周知技術の奏する効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものでもない。
オ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6) 請求人の主張について
ア 請求人の主張
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請求人は、審判請求書において次の主張をしている。
「3.拒絶理由3(法第29条第2項)A.旧請求項1に対する拒絶理由3は、新請求項1(延いては新従属請求項2-10)に記載された発明に関しては妥当せず、当該拒絶理由は解消する。詳細は以下のとおりである。(1)新請求項1は、他の構成要件に加えて、以下の構成要件を備えている。すなわち、(a)前記導光路の各々は、光学式ひずみゲージとして機能する材料からなり、第1端を入力端とし、第2端を出力端とし、かつ前記第1端から前記第2端までにわたって中実である。(強調のため下線を付している。)(b)対応する導光路からそれぞれ光信号を受信して、所定の第2周波数で受信した前記光信号の大きさおよび偏光に対応した出力信号を生成する複数の光検出器。(強調のため下線を付している。)(2)新請求項1に記載された発明によれば、極めてシンプルな構成(各導光路が第1端から第2端まで中実)であることに加えて、受信した光信号の複数の特性(すなわち、大きさおよび偏光)に基づくことにより、「ひずみゲージ技術に基づく従来の触覚センサと比較して、はるかに感度が高く、はるかに小型である(段落[0012])」可撓性薄膜触覚センサが提供される。(3)一方、拒絶の根拠とされた引用文献1(特表昭62-502142号公報)および引用文献2(特開2008-145315号公報)の組み合わせからは、新請求項1に係る発明の上記構成(およびそれに伴う技術的効果)は、たとえ当業者と言えども容易に導かれることはなく、よって、新請求項1に係る発明の進歩性が認められるべきである。(4)実際、今回の拒絶査定において正しく示唆されているように、引用文献1には「偏光」を用いることは開示されていない。一方、引用文献2は、確かに「偏光」に言及しているが、仮にそれを利用するにしても、それはあくまで、光ファイバ1(図1-2等参照)の内部に空孔13を設けることが必須の前提である。したがって、当業者が引用文献2から何らかの教示を得たとしても、その必須の構成(空孔13)を引用文献1に記載された発明に持ち込むことになるので、新請求項1に記載された発明には想到しえない。(5)以上のとおりであるから、新請求項1に記載された発明(延いては新請求項2-10に記載された発明)については、拒絶理由3はもはや妥当ではなく、解消すると思料する。」
イ 請求人の主張に対する当審の判断
折りたたみ中(クリックで表示)
引用文献2に開示された光ファイバ温度・歪測定装置については、被測定光ファイバとして単一モードファイバを用いた場合でも、空孔付光ファイバを用いた場合と同様に、ブリルアン散乱による周波数シフト及び散乱光強度は、光ファイバの歪量に対して線形に変化すると認められるから(前記(2)ウ(ウ)を参照)、いずれの種類の光ファイバを用いても歪測定は可能であるというべきである。
そして、被測定光ファイバとして一般的な単一モード光ファイバが用いられた光ファイバ歪測定装置において、固有周波数の変化量と、偏光状態に対する散乱光強度の変化とを併せて取得して、被測定光ファイバの側方から印加された外力を検出することは周知の技術であり(前記(2)オを参照)、かかる周知技術を引用発明に適用することに当業者ならば格別の困難性はないことは、前記(5)において検討したとおりである。
したがって、請求人の前記主張は、前記(5)の結論を左右するものではない。
(7) 小括
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反する。
したがって、本件補正は、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2において説示したとおり却下されたので、本願の請求項1~13に係る発明は、令和2年9月16日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次に特定されるとおりである。
「可撓性材料に配置された導光路のアレイから成り、前記導光路の各々は、光学式ひずみゲージとして機能する材料からなり、第1端を入力端とし、第2端を出力端とするものであるセンシングネットワークと、前記導光路の各々に対して1つずつ設けられており、対応する導光路の入力端にそれぞれ結合されており、対応する導光路に所定の第1周波数及び偏光を有する光信号をそれぞれ供給する複数の光源と、前記導光路の各々に対して1つずつ設けられており、対応する導光路の出力端にそれぞれ結合されており、対応する導光路からそれぞれ光信号を受信して、所定の第2周波数で受信した前記光信号の大きさに対応した出力信号を生成する複数の光検出器と、前記複数の光検出器の各々から前記出力信号を受信するように接続されており、前記複数の光検出器から受信した信号に基づいて、前記センシングネットワークに加えられた圧力を特定するよう構成されたプロセッサと、を含む、可撓性薄膜触覚センサ。」
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由3は、次のとおりである。
本願発明は、下記の引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
3 引用文献に記載された事項
上記引用文献1には、[引用発明]において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる(第2の2(2)イを参照。)。
上記引用文献2から、[引用文献2記載事項1]及び[引用文献2記載事項2]において認定したとおりの技術事項がそれぞれ認められる(第2の2(2)ウ(イ)及び(ウ)を参照。)。
上記引用文献3から、[引用文献3記載事項]において認定したとおりの技術事項が認められる(第2の2(2)エを参照。)。
そして、上記引用文献2記載事項2及び引用文献3記載事項から、[周知技術]において認定したとおりの周知技術が認められる(第2の2(2)オを参照。)。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明の「可撓性材料に配置された導光路のアレイから成り、前記導光路の各々は、光学式ひずみゲージとして機能する材料からなり、第1端を入力端とし、第2端を出力端とし、かつ前記第1端から前記第2端までにわたって中実であるセンシングネットワーク」において、「前記第1端から前記第2端までにわたって中実である」という限定を省いたものである。
また、本願発明は、本件補正発明の「所定の第2周波数で受信した前記光信号の大きさおよび偏光に対応した出力信号」において、「偏光」に対応したという限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、さらに他の構成を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の2において説示したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
さらに、本願発明は、「前記第1端から前記第2端までにわたって中実である」という限定がないから、引用発明及び引用文献2記載事項1に基づいて当業者が容易に発明することができたものでもある。
第4 むすび
以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-002565