特許拒絶査定不服審判
2021-000556
映像復号方法および電子装置
- 審判番号
- 2021-000556
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-118837外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年01月14日
- 審決日
- 2022年04月28日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .537-Z (H04N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-118837「映像復号方法および電子装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月31日出願公開、特開2019-193295〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件に係る出願は、2014年4月4日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2013年4月7日 米国(US)、2013年7月9日 米国、2013年7月11日 米国(US)、2013年7月19日 米国(US))を国際出願日とする特願2016-505939号の一部が平成30年6月8日に出願された特願2018-110525号の一部が令和1年6月26日に特願2019-118837号としてなされたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 5月 8日付け:拒絶理由通知
令和2年 8月26日 :意見書提出および手続補正
令和2年 9月14日付け:拒絶査定
令和3年 1月14日 :拒絶査定不服審判請求
第2 本件発明
本件の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、本件発明という)は、令和2年8月26日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものである(符号A~Hは請求項の記載を分説するため当審で付したものであり、請求項の記載を、符号A~Hを用いて、以下、「発明特定事項A」~「発明特定事項H」と称する)。
「【請求項1】
A 映像を復号化する方法であって、
B 現在の画像を示す映像パラメータセット及びビットを含むビットストリームを受信する工程と、
C 上記現在の画像のスライスヘッダーの少なくとも一部を解析する工程と、
D 上記映像パラメータセット中の1つ以上のシンタックス要素に基づき、復号化画像バッファ(DPB)からの削除の動作が画像ごとに実行されるべきであるか又はアクセスユニット(AU)ごとに実行されるべきであるかの第1の決定を実行する工程であって、
D1 アクセスユニットは、少なくともベースレイヤ及びエンハンスメントレイヤを含み、各レイヤは、画像を示す、工程と、
E 上記DPBからの画像出力の動作が画像ごとに実行されるべきであるか又はAUごとに実行されるべきであるかの、上記第1の決定とは別の第2の決定を実行する工程と、
F 上記削除の動作が画像ごとに実行されるべきであるか又はAUごとに実行されるべきであるかの上記第1の決定に従って、上記DPBからの上記削除の動作を実行する工程と、
G 上記画像出力の動作が画像ごとに実行されるべきであるか又はAUごとに実行されるべきであるかの上記第2の決定に従って、上記DPBからの上記画像出力の動作を実行する工程と、
H 上記DPB中の現在の復号化画像の復号及び保存を実行する工程と、
A を含むことを特徴とする、方法。」
第3 原査定の理由
原査定の拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。
「1.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(中略)
記
●理由1(サポート要件)について
(1)請求項1、13の「上記映像パラメータセット中の1つ以上のシンタックス要素に基づき、・・・第1の決定を実行する」という記載が、実施例の何に対応するのか明確でなく、請求項1、13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。また、請求項1、13を引用する請求項2-12、14-24も、発明の詳細な説明に記載したものでない。
(中略)
よって、請求項1-24に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。」
第4 当審の判断
本件発明の発明特定事項D、すなわち、「上記映像パラメータセット中の1つ以上のシンタックス要素に基づき、復号化画像バッファ(DPB)からの削除の動作が画像ごとに実行されるべきであるか又はアクセスユニット(AU)ごとに実行されるべきであるかの第1の決定を実行する」ことが本件出願の明細書に記載されているかどうかについて、本件発明のその他の発明特定事項が記載されているかどうかと併せて、以下に検討する。
1 本件の優先権主張の基礎となる出願について
本件は、以下の4つの出願を優先権主張の基礎としている。
第1出願:米国特許出願 13/858076号(2013年4月 7日出願)
第2出願:米国特許仮出願 61/844272号(2013年7月 9日出願)
第3出願:米国特許仮出願 61/845309号(2013年7月11日出願)
第4出願:米国特許仮出願 61/856575号(2013年7月19日出願)
そして、
・上記第1出願は、本件明細書【0001】から【0005】の【技術分野】及び【背景技術】、【0009】から【0414】のうち「さらに他の実施形態において、本発明において定義される、出力レイヤセットに関する概念は、すべてJCTVC-L0452およびJCTVC-L0453で定義される出力動作点、ならびに/またはJCTVC-L1003で定義される動作点に適用し得る。」までの記載、及び【図1】~【図37】に示される実施形態1を裏付けるものであり、
・上記第2出願は、本件明細書【0414】の「〔実施形態2〕」という記載から【0691】の「さらに他の実施形態において、本発明において出力レイヤセットに関して定義したすべての概念は、出力動作点[2,3] および/または動作点[1]に適用できる。」までの記載、及び【図38】~【図62】に示される実施形態2を裏付けるものであり、
一方、
・上記第3出願は、上記第1出願に基づく【技術分野】及び【背景技術】には記載されていない、本件明細書【0006】から【0007】の【発明の概要】及び【課題を解決するための手段】、本件明細書【0691】の「〔実施形態3〕」という記載から【0718】までの記載と、【0767】から【0830】の<付記事項>の前までの記載、及び【図63】から【図70】に示される実施形態3の一部を裏付けるものであり、
・上記第4出願は、上記第3出願と同様に、上記第1出願に基づく【技術分野】及び【背景技術】には記載されていない、本件明細書【0006】から【0007】の【発明の概要】及び【課題を解決するための手段】、本件明細書【0691】の「〔実施形態3〕」という記載から【0830】の記載の<付記事項>の前までの記載、及び【図63】から【図70】に示される実施形態3の全体を裏付けるものである、
と認められる。
2 本件明細書に記載された事項
本件発明の発明特定事項DからGに関連する事項、特に、”復号化画像バッファ(DPB)からの画像出力ないし削除の動作を画像ごとないしアクセスユニット(AU)ごとのいずれかについて行う”ことに関連する事項は、本件明細書【0691】の〔実施形態3〕という記載から【0830】の<付記事項>の前までの記載、及び【図63】から【図70】に示される実施形態3において示されている。
一方、上記事項は、本件明細書【0691】の「さらに他の実施形態において、本発明において出力レイヤセットに関して定義したすべての概念は、出力動作点[2,3] および/または動作点[1]に適用できる。」以前の記載である、実施形態1、2に関する記載には見当たらない。
そこで、まず【0691】の〔実施形態3〕以降の記載及び【図63】から【図70】に示される、実施形態3について検討する。
本件の実施形態3に関して、以下の記載がある。(下線は、強調のため当審で付したものである。以下同様。)
ア 「【0691】
(中略)
〔実施形態3〕
映像符号化の方法を開示する。当該方法は現在の画像の第一スライスヘッダーの解析を開始する工程を含む。復号化画像バッファ(DPB)によって行われる工程のうち、どの工程が画像に基づくものであり、どの工程がアクセスユニット(AU)に基づくものかを決定する。上記DPBからの削除を行う。上記DPBからの画像出力を行う。上記DPB内での現在の復号化画像の復号化および保存を行う。上記DPB内での上記現在の復号化画像をマーキングする。上記DPBからの追加画像出力を行う。
【0692】
いくつかの構成では、上記DPBからの上記削除および出力は、AU出力フラグ、AUによるRASL不出力フラグ、および/またはAUによる先行画像不出力フラグなどの少なくとも一つのAU出力フラグに基づいていてもよい。当該AU出力フラグはビットストリームおよび他の条件において信号化されたシンタックス要素に基づいて得られたものであってよい。これらAUフラグはアクセスユニット(AU)レベルで得られ、用いられるフラグを表す。いくつかの構成では、これらは、画像出力フラグ(例えば、pic_output_flag)、画像RASL不出力フラグ(picture no rasl output flag)(例えば、NoRaslOutputFlag)、および/または画像の先行画像不出力フラグ(picture no output of priorpictures flag)(例えば、no_output_of_prior_pics flag)などの画像レベルで信号化される、または、得られる同様のフラグとは異なるフラグである。」
イ 「【0701】
図63は、複数の電子装置2102a-b間における映像符号化を示すブロック図である。第1の電子装置2102aおよび第2の電子装置2102bが示されている。しかしながら、いくつかの構成では、第1の電子装置2102aおよび第2の電子装置2102bに関して説明される特徴および機能性のうち、ひとつまたは複数の特徴および機能性を組み合わせてひとつの電子装置102としてもよい。各電子装置102は映像を符号化および/または複号化するよう構成されていてもよい。電子装置102はハイブリッド復号化画像バッファ(DPB)動作を利用するように構成されていてもよい。ハイブリッド復号化画像バッファ(DPB)動作では、復号化画像バッファ(DPB)116で行われる削除、出力(バンピング)、保存、マーキング、追加出力(バンピング)の各種工程が画像単位またはアクセスユニット(AU)単位で発生するシナリオを参照する。これら工程の特定の組み合わせは画像単位またはアクセスユニット(AU)単位で行われていると見なされるが、画像単位またはアクセスユニット(AU)単位でこれらの工程それぞれを独立して行うことのすべてのあり得る組み合わせがサポートされている。
【0702】
ここでは、アクセスユニット(AU)とは、規定された分類規則に従って互いに関連付けられたネットワーク抽象化レイヤ(NAL)ユニットのセットである。ネットワーク抽象化レイヤ(NAL)ユニットのセットは、復号化順に連続するものであって、同じ出力時間に関連付けられたすべての符号化画像の映像符号化レイヤ(VCL)NALユニットおよびそれらの関連付けられた非VCL NALユニットとを含むものである。ベースレイヤはすべてのVCL NALユニットが0に等しいnuh_layer_idを有するレイヤである。符号化画像は、nuh_layer_idが特定の値であるVCL NALユニットを含む画像であって、その画像のすべての符号化ツリーユニットを含む画像のコード化表現である。符号化画像はレイヤ成分と呼ばれることもある。画像もしくはアクセスユニット(AU)に基づく工程の更なる詳細については、図69、70に関連して説明する。
【0703】
ある構成では、各電子装置102は高効率映像符号化(HEVC)方式、スケーラブル高効率映像符号化(SHVC)方式、またはマルチビュー高効率映像符号化(MV-HWVC)方式に適合していてもよい。HEVC方式はH.264/MPEG・4 AVC(Advanced Video coding)にとって代わる映像圧縮技術であり、映像画質が改良され、圧縮率が高くなっている。ここでは、モノクロフォーマットの輝度サンプル(luma samples)のアレイ、もしくは、4:2:0、4:2:2、4:4:4のカラーフォーマット、または他のカラーフォーマットの輝度サンプルのアレイと2つの対応するクロマサンプルの配列である。仮想参照復号装置(HRD)の動作および出力順復号化画像バッファ(DPB)116の動作は、JCTVC‐M1008,JCTVC‐L1008,JCTVC‐D1004,JCT3V‐C1004、JCTVC‐L0453およびJCTVC‐L0452におけるSHVCおよびMV‐HEVCについて説明されている。
【0704】
第1の電子装置2102aは符号化装置2108およびオーバーヘッドシグナリングモジュール2112を備えるていてもよい。第1の電子装置2102aは入力画像2106を得てもよい。いくつかの構成では、入力画像2106は、第1の電子装置2102aにおいてイメージセンサを用いてキャプチャされてもよく、メモリから検索されてもよく、そして/または他の電子装置102によって受信されてもよい。符号化装置2108は入力画像2106を符号化して符号化データ2110を作製してもよい。例えば、符号化装置2108は一連の入力画像2106(例えば、映像)を符号化してもよい。符号化データ2110はデジタルデータ(例えば、ビットストリーム)であってもよい。
【0705】
オーバーヘッドシグナリングモジュール2112は符号化データ2110に基づいてオーバーヘッドシグナリングを生成してもよい。例えば、オーバーヘッドシグナリングモジュール2112は、スライスヘッダー情報、映像パラメータセット(VPS)情報、シーケンスパラメータセット(SPS)情報、画像パラメータセット(PPS)情報、ピクチャオーダーカウント(picture order count)(POC)、参照画像指示(reference picture designation)などの符号化データ2110にオーバーヘッドデータを加えてもよい。いくつかの構成では、オーバーヘッドシグナリングモジュール2112は、2つの画像セットの間の移行(transition)を示すラップインジケータ(wrap indicator)を作製してもよい。
【0706】
符号化装置2108(および、例えば、オーバーヘッドシグナリングモジュール2112)はビットストリーム2114を作製してもよい。ビットストリーム2114は入力画像2106に基づく符号化画像データを含んでいてもよい。いくつかの構成では、ビットストリーム2114は、スライスヘッダー情報、VPS情報、SPS情報、PPS情報などのオーバーヘッドデータも含んでいてもよい。追加入力画像2106が符号化されるとき、ビットストリーム2114はひとつまたは複数の符号化データを含んでいてもよい。例えば、ビットストリーム2114はひとつまたは複数の符号化参照画像および/または他の画像を含んでいてもよい。
・・・
【0708】
復号装置2104はビットストリーム2114を受信(例えば、取得)してもよい。復号装置2104はビットストリーム2114に基づいて復号化画像2118(例えば、ひとつまたは複数の復号化画像2118)を生成してもよい。復号化画像2118は表示され、再生され、メモリに保存されて、そして/または他の装置などに送信されてもよい。
【0709】
復号装置2104は復号化画像バッファ(DPB)116を備えていてもよい。復号化画像バッファ(DPB)116は、仮想参照復号装置(HRD)に対して規定された、参照用、出力再順序付け、出力遅延用の復号化画像を保持するバッファであってもよい。
・・・
【0711】
復号装置2104はハイブリッド復号化画像バッファ(DPB)動作モジュール2120を備えていてもよい。ハイブリッド復号化画像バッファ(DPB)動作モジュール2120は、画像に基づく工程2122による復号化画像バッファ(DPB)116管理アプローチ、および/または、アクセスユニット(AU)に基づく工程2124による復号化画像バッファ(DPB)116管理アプローチを可能にする。例えば、削除、保存、参照マーキングのために画像に基づく工程2124を用いることの利点のひとつは、最適な復号化画像バッファ(DPB)116メモリが様々なレイヤによって用いられるということである。したがって、画像に基づく工程を用いる際の全体で要求されるメモリは低くてもよい。出力(出力、出力マーキング、追加出力を含む)のためにアクセスユニット(AU)に基づく工程2124を用いることの利点のひとつは、出力プロセスが単純になるということである。
【0712】
図64はハイブリッド復号化画像バッファ(DPB)116動作の方法2200を示すフローチャートである。当該方法2200は、第2の電子装置102における復号装置2104の一部としての復号化画像バッファ(DPB)116によって行われてもよい。ある構成では、当該方法2200はハイブリッド復号化画像バッファ(DPB)動作モジュール2120によって行われてもよい。復号化画像バッファ(DPB)116は現在の画像の第一スライスヘッダーの解析を始める(2202)。復号化画像バッファ(DPB)116は、ハイブリッド復号化画像バッファ(DPB)動作のどの工程が画像に基づくか、どの工程がアクセスユニット(AU)に基づくかを決定する(2204)。
【0713】
復号化画像バッファ(DPB)116は、復号化画像バッファ(DPB)116から、(出力せずに)削除する(2206)。上記削除によって、現在の画像を復号化する前に復号化画像バッファ(DPB)116から画像を削除する。復号化画像バッファ(DPB)116は、復号化画像バッファ(DPB)116から画像出力(バンピング)する(2208)。画像出力(バンピング)は、符号化画像バッファ(CPB)削除時間(coded picture buffer (CPB) removal time)に復号化画像バッファ(DPB)116から画像を出力することをいう。いくつかの構成では、「バンピング」は復号化画像バッファ(DPB)116からひとつ以上の画像を出力することを指すために用いてもよい。したがって、「バンピング」と「出力」は同じように用いられる。
・・・
【0715】
図65はハイブリッド復号化画像バッファ(DPB)116の動作の他の方法2300を示すフローチャートである。例えば、図65の上記方法2300は、ハイブリッド復号化画像バッファ(DPB)116の好ましい動作方法である。上記方法2300は、電子装置102上の復号装置2104の一部としての復号化画像バッファ(DPB)116によって行われてもよい。一構成において、上記方法2300は、ハイブリッド復号化画像バッファ(DPB)動作モジュール2120によって行われてもよい。上記復号化画像バッファ(DPB)116は、現在の画像の第1スライスヘッダーの解析を開始してもよい(2302)。「ハイブリッド」という語は、上記復号化画像バッファ(DPB)116のいくつかの動作工程が画像に基づいて行われ、上記復号化画像バッファ(DPB)116のいくつかの動作工程がアクセスユニット(AU)に基づいて行われることを指す。上記復号化画像バッファ(DPB)116は、上記復号化画像バッファ(DPB)116から、(出力せずに)画像に基づく削除をしてもよい(2304)。上記復号化画像バッファ(DPB)116は、上記復号化画像バッファ(DPB)116から、アクセスユニット(AU)に基づく画像出力(バンピング)を行ってもよい(2306)。上記復号化画像バッファ(DPB)116は、上記復号化画像バッファ(DPB)において、画像に基づいて現在の画像を復号化し保存してもよい(2308)。」
ウ 「【0823】
図69は、第二エンハンスメントレイヤ(EL2)942bが、ベースレイヤ(BL)944および第一エンハンスメントレイヤ(EL1)942aより低い画像率を有する場合の、符号化画像およびアクセスユニット(AU)用のレイヤのネットワーク抽象化レイヤ(NAL)ユニットのための構造およびタイミングを示すブロック図である。EL1符号化画像953aの各NALユニットを、第一エンハンスメントレイヤ(EL1)942aに沿って図示する。EL2符号化画像953bの各NALユニットを、第二エンハンスメントレイヤ(EL2)942bに沿って図示する。ベースレイヤ符号化画像953cの各NALユニットを、ベースレイヤ(BL)944に沿って図示する。
【0824】
時間t1において、EL1符号化画像953aの各NALユニット、EL2符号化画像953bの各NALユニット、ベースレイヤ符号化画像953cの各NALユニットは、アクセスユニット(AU)955aの一部である。時間t2において、EL1符号化画像953aの各NALユニットとベースレイヤ符号化画像953cの各NALユニットは、アクセスユニット(AU)955bの一部である。時間t3において、EL1符号化画像953aの各NALユニット、EL2符号化画像953bの各NALユニット、ベースレイヤ符号化画像953cの各NALユニットは、アクセスユニット(AU)955cの一部である。時間t4において、EL1符号化画像953aの各NALユニットとベースレイヤ符号化画像953cの各NALユニットは、アクセスユニット(AU)955dの一部である。」
3 本件発明特定事項に関する検討
(1) 上記2のアから、本件明細書には次の事項が記載されているといえる。
(ア)映像符号化の方法に関して、現在の画像の第一スライスヘッダーの解析を開始し、復号化画像バッファ(DPB)によって行われる工程のうち、どの工程が画像に基づくものであり、どの工程がアクセスユニット(AU)に基づくものであるかを決定し、DPBからの削除、画像出力、DPB内での現在の復号化画像の復号化及び保存を行うこと(【0691】)。
(イ)上記DPBからの上記削除および出力は、少なくとも一つのAU出力フラグに基づいており、当該AU出力フラグはビットストリーム及びその他の条件において信号化されたシンタックス要素に基づいて得られたものであってよいこと(【0692】)。
また、上記2のイ、ウから、当初明細書等には次の事項が記載されているといえる。
(ウ)電子装置は符号化装置2108およびオーバーヘッドシグナリングモジュール2112を備え、符号化装置2108は入力画像2106を符号化して符号化データ2110を作成し、オーバーヘッドシグナリングモジュール2112は符号化データ2110に基づいてオーバーヘッドシグナリングを生成し、スライスヘッダー情報、映像パラメータセット(VPS)情報などのオーバーヘッドデータを符号化データ2110に加えるものであり、符号化装置2108はビットストリーム2114を作製するものであり、ビットストリーム2114は入力画像2106に基づく符号化画像データを含んでおり、スライスヘッダー情報、VPS情報などのオーバーヘッドデータも含んでいてもよいこと(【0704】、【0705】、【0706】)。
(エ)復号装置2104は復号化画像バッファ(DPB)116とハイブリッド復号化画像バッファ(DPB)動作モジュール2120を備え、ハイブリッド復号化画像バッファ(DPB)動作モジュール2120は、画像に基づく工程2122による復号化画像バッファ(DPB)116管理アプローチ、および/または、アクセスユニット(AU)に基づく工程2124による復号化画像バッファ(DPB)116管理アプローチを可能にするものであって(【0709】、【0711】)、
ビットストリーム2114を受信するものであり(【0708】)、
符号化画像はレイヤ成分と呼ばれ(【0702】)、
第一エンハンスメントレイヤ(EL1)符号化画像、第二エンハンスメントレイヤ(EL2)符号化画像、ベースレイヤ符号化画像はアクセスユニット(AU)の一部であること(【0823】、【0824】)。
(オ)ハイブリッド復号画像バッファ(DPB)モジュール2120によって、ハイブリッド復号化画像バッファ(DPB)116動作の方法2200が行われ(【0712】)、
「ハイブリッド」という語は、上記復号化画像バッファ(DPB)116のいくつかの動作工程が画像に基づいて行われ、上記復号化画像バッファ(DPB)116のいくつかの動作工程がアクセスユニット(AU)に基づいて行われることを指すものであり(【0715】)、
復号化画像バッファ(DPB)116は現在の画像の第一スライスヘッダーの解析を始め(2202)、復号化画像バッファ(DPB)116は、ハイブリッド復号化画像バッファ(DPB)動作のどの工程が画像に基づくか、どの工程がアクセスユニット(AU)に基づくかを決定し(2204)、復号化画像バッファ(DPB)116は、復号化画像バッファ(DPB)116から、(出力せずに)削除し(2206)、復号化画像バッファ(DPB)116から画像出力(バンピング)し(2208)(【0712】、【0713】)、
ハイブリッド復号化画像バッファ(DPB)116の動作の他の方法2300が行われ、復号化画像バッファ(DPB)116は、現在の画像の第1スライスヘッダーの解析を開始し(2302)、復号化画像バッファ(DPB)116は、上記復号化画像バッファ(DPB)116から、(出力せずに)画像に基づく削除をしてもよく(2304)、アクセスユニット(AU)に基づく画像出力(バンピング)を行ってもよく(2306)、画像に基づいて現在の画像を復号化し保存してもよい(2308)こと(【0715】)。
(2) 上記(1)の記載事項と本件発明の発明特定事項とを対応付ける。
(ア) (1)の(ア)(ウ)(エ)から、復号装置2104はビットストリーム2114を受信するものであり、ビットストリーム2114には符号化画像データと映像パラメータセット(VPS)情報などのオーバーヘッドデータが含まれており、復号化画像バッファDPB116内での現在の復号化画像の復号化及び保存を行うことがいえ、これは、発明特定事項A、B、Hを裏付けるものといえる。
(イ) (1)の(オ)から、現在の画像のスライスヘッダの少なくとも一部を解析することを行うことがいえ、これは、発明特定事項Cを裏付けるものといえる。
(ウ) (1)の(ア)(オ)から、ハイブリッド復号化画像バッファ(DPB)動作のどの工程が画像に基づくか、アクセスユニット(AU)に基づくかを決定するものであって、この工程とは削除や出力であること、決定に基づいて画像ごとあるいはアクセスユニットごとに削除や出力を行うことがいえる。
これは発明特定事項Dのうち、「復号化画像バッファ(DPB)からの削除の動作が画像ごとに実行されるべきであるか又はアクセスユニット(AU)ごとに実行されるべきであるかの第1の決定を実行する工程」、及び発明特定事項E、F、Gを裏付けるものといえる。
(エ) (1)の(エ)から、符号化画像はレイヤ成分と呼ばれ、エンハンスメントレイヤ符号化画像及びベースレイヤ符号化画像がアクセスユニットに含まれることがいえ、これは、発明特定事項D1を裏付けるものといえる。
(オ) しかしながら、本件発明の発明特定事項Dに関して、「復号化画像バッファ(DPB)からの削除の動作が画像ごとに実行されるべきであるか又はアクセスユニット(AU)ごとに実行されるべきであるかの第1の決定を実行する」ことが、「上記映像パラメータセット中の1つ以上のシンタックス要素に基づ」くことは、上記(1)からは裏付けられているとはいえない。
(3) さらに、明細書の発明の詳細な説明のその他の記載を見ても、本件発明の発明特定事項Dに関して、「復号化画像バッファ(DPB)からの削除の動作が画像ごとに実行されるべきであるか又はアクセスユニット(AU)ごとに実行されるべきであるかの第1の決定を実行する」ことが、「上記映像パラメータセット中の1つ以上のシンタックス要素に基づ」くことを裏付ける記載は見いだせない。
4 小括
以上のとおりであるから,本件発明の発明特定事項D、すなわち、「復号化画像バッファ(DPB)からの削除の動作が画像ごとに実行されるべきであるか又はアクセスユニット(AU)ごとに実行されるべきであるかの第1の決定を実行する」ことが「上記映像パラメータセット中の1つ以上のシンタックス要素に基づ」くこと、については、発明の詳細な説明には記載されているとはいえない。
5 請求人の主張について
請求人は、令和2年8月26日付け意見書の「2.拒絶理由に対する意見」の「2.1.理由1(特許法第36条第1項違反)に対する意見」において、以下の(1)のとおり主張している。
(1) 「2.拒絶理由に対する意見
2.1.理由1(特許法第36条第6項第1号違反)に対する意見
(1)本願明細書の実施形態3、特に段落0691及び0692等には、請求項1、13における「上記映像パラメータセット中の1つ以上のシンタックス要素に基づき、・・・第1の決定を実行する」構成に対応する構成が記載されています。具体的には、上記段落には「映像符号化の方法を開示する。当該方法は現在の画像の第一スライスヘッダーの解析を開始する工程を含む。復号化画像バッファ(DPB)によって行われる工程のうち、どの工程が画像に基づくものであり、どの工程がアクセスユニット(AU)に基づくものかを決定する」こと、及び「上記DPBからの上記削除および出力は、~少なくとも一つのAU出力フラグに基づいていてもよい。当該AU出力フラグはビットストリームおよび他の条件において信号化されたシンタックス要素に基づいて得られたものであってよい」ことが記載されています。
(中略)
したがいまして、本願請求項1~24に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしています。」
また、請求人は、令和3年1月14日付け審判請求書の「3.本願発明が特許査定されるべき理由」において、以下の(2)のとおり主張している。
(2)「本願明細書の段落0690には「さらに他の実施形態において、種々のシンタックス要素は、上記ビットストリーム中の任意の箇所で、画像ごとに信号化してもよい。例えば、スライスセグメントヘッダー、pps/sps/VPSもしくはその他のパラメータセット、または上記ビットストリーム中の規準を定める他の部分において信号化してもよい」ことが記載されています。
また、段落0691には「当該AU出力フラグはビットストリームおよび他の条件において信号化されたシンタックス要素に基づいて得られたものであってよい」ことが記載されています。
また、段落0318等の記載に鑑みれば、映像パラメータセットは、本開示におけるパラメータセットの一種であることがご理解いただけると考えます。即ち、上述しました「その他のパラメータセット」に、映像パラメータセットが含まれることは明らかです。
したがいまして、拒絶査定における「「上記映像パラメータセット中の」に対応する構成は、本願明細書の他の部分にも記載されていない」という認定は誤りであり、映像パラメータセットにおいて信号化されたシンタックス要素に基づいてAU出力フラグが得られる態様は本願明細書に記載されております。
よって、本願の請求項1及び13における「上記映像パラメータセット中の1つ以上のシンタックス要素に基づき、・・・第1の決定を実行する」に対応する構成は、本願明細書に記載されており、本願の請求項1~24に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていると考えます。」
(3) そこで、上記(1)(2)の主張について検討する。
(3-1) 【0691】には「映像符号化の方法を開示する。当該方法は現在の画像の第一スライスヘッダーの解析を開始する工程を含む。復号化画像バッファ(DPB)によって行われる工程のうち、どの工程が画像に基づくものであり、どの工程がアクセスユニット(AU)に基づくものかを決定する」こと、及び【0692】には「上記DPBからの上記削除および出力は、~少なくとも一つのAU出力フラグに基づいていてもよい。当該AU出力フラグはビットストリームおよび他の条件において信号化されたシンタックス要素に基づいて得られたものであってよい」ことが記載されているにすぎず、本件発明の発明特定事項D、すなわち、「復号化画像バッファ(DPB)からの削除の動作が画像ごとに実行されるべきであるか又はアクセスユニット(AU)ごとに実行されるべきであるかの第1の決定を実行する」ことが「映像パラメータセット中の1つ以上のシンタックス要素に基づ」くことが記載されているわけではない。
(3-2) 【0690】には、「さらに他の実施形態において、種々のシンタックス要素は、上記ビットストリーム中の任意の箇所で、画像ごとに信号化してもよい。例えば、スライスセグメントヘッダー、pps/sps/vpsもしくはその他のパラメータセット、または上記ビットストリーム中の規準を定める他の部分において信号化してもよい。」という記載が、【0318】には、「さらに他の実施形態において、scalability_maskは、ビットストリーム中の任意の箇所で、画像ごとに信号化してもよい。例えば、scalability_maskは、スライスヘッダー、ピクチャパラメータセット、映像パラメータセット、もしくはその他のパラメータセット、または上記ビットストリーム中の規準を定める他の部分において信号化してもよい。」という記載がある。
さらに、これに類する記載として、【0351】には「他の実施形態において、layer_dependency_information_pattern、layer_dependency_map、layer_dependency_flag[i]などの種々のシンタックス要素は、上記ビットストリーム中の任意の箇所で、画像ごとに信号化してもよい。例えば、スライスヘッダー、pps/sps/vps/apsもしくはその他のパラメータセット、または上記ビットストリーム中の規準を定める他の部分において信号化してもよい。」という記載が、【0412】には「さらに他の実施形態において、出力レイヤセットSEIメッセージに含まれる種々のシンタックス要素は、ビットストリーム中の任意の箇所で、画像ごとに、または、他の周波数で、信号化してもよい。例えば、上記シンタックス要素は、スライスヘッダー、pps/sps/vps/適応パラメータセットもしくはその他のパラメータセット、または上記ビットストリーム中の規準を定める他の部分において信号化してもよい。」という記載が、【0413】には「さらに他の実施形態において、種々のシンタックス要素は、ビットストリーム中の任意の箇所で、画像ごとに、または、他の周波数で、信号化してもよい。例えば、上記シンタックス要素は、スライスヘッダー、pps/sps/vps/適応パラメータセットもしくはその他のパラメータセット、または上記ビットストリーム中の規準を定める他の部分において信号化してもよい。」という記載がある。
しかしながら、【0318】、【0351】、【0412】、【0413】は本件発明とは関係のない実施形態1における記載、【0690】は同じく本件発明とは関係のない実施形態2における記載にすぎない。
次に、【0691】のうち、実施形態3における部分には、「当該AU出力フラグはビットストリームおよび他の条件において信号化されたシンタックス要素に基づいて得られたものであってよい」ことが記載されているにすぎない。
すなわち、”上記の種々のシンタックス要素は、上記ビットストリーム中のvps(映像パラメータセット)において信号化してもよい”という事項は、実施形態1、2には記載されているのに、実施形態3については記載されていないことから、あくまでも実施形態1、2に関するものにすぎず、実施形態3に関するものではない。
(3-3) 上記1~3と、上記(1)~(3-2)を総合すると、本件発明の発明特定事項Dのうちの「復号化画像バッファ(DPB)からの削除の動作が画像ごとに実行されるべきであるか又はアクセスユニット(AU)ごとに実行されるべきであるかの第1の決定を実行する」ことは実施形態3にしか裏付けられていない以上、”上記の種々のシンタックス要素は、上記ビットストリーム中のvps(映像パラメータセット)において信号化してもよい”という事項が本件明細書のうちの実施形態1、2に関する部分に記載されているからといって、発明特定事項Dの全体、すなわち、「復号化画像バッファ(DPB)からの削除の動作が画像ごとに実行されるべきであるか又はアクセスユニット(AU)ごとに実行されるべきであるかの第1の決定を実行する」ことが「映像パラメータセット中の1つ以上のシンタックス要素に基づ」くこと、が本件明細書中に裏付けられていることが導き出せるわけではない。
(3-4) なお、上記1のとおり、本件の優先権主張の基礎となる、本件発明とは関係ない実施形態1を裏付ける第1出願、実施形態2を裏付ける第2出願と、本件発明の裏付けとなる実施形態3を裏付ける第3出願及び第4出願は別個の米国特許(仮)出願であって、本件はこれら複数の優先権主張の基礎となる出願を単純に合わせ、本件明細書の【技術分野】及び【背景技術】については、第1出願の一部を、【発明の概要】【発明が解決しようとする手段】については、第3ないし第4出願の一部を、それぞれ記載したにすぎない。
そして、本件明細書中には、実施形態1~3のすべてについて共通に開示されている事項には、”上記の種々のシンタックス要素は、上記ビットストリーム中のvps(映像パラメータセット)において信号化してもよい”ことが含まれているわけではないことから、実施形態1~3のすべてについて共通に開示されている事項からは導き出せない事項であって、実施形態1、2にのみ含まれており、実施形態3には含まれていない事項は、実施形態3に関するとはいえない。
(4) さらに、”上記の種々のシンタックス要素は、上記ビットストリーム中のvpsにおいて信号化してもよい”という事項は、【0703】において例示される映像符号化技術である、高効率映像符号化(HEVC)方式、スケーラブル高効率映像符号化(SHVC)方式、またはマルチビュー高効率映像符号化(MV-HWVC)方式やH.264/MPEG・4 AVC、MV-HEVCにおける当業者にとって、自明の技術的前提や技術常識ではない。
そうすると、本件明細書の実施形態3に関する記載、及び映像符号化方式に関する自明の技術的前提や技術常識を基にして、本件発明の発明特定事項D、すなわち、「復号化画像バッファ(DPB)からの削除の動作が画像ごとに実行されるべきであるか又はアクセスユニット(AU)ごとに実行されるべきであるかの第1の決定を実行する」ことが「映像パラメータセット中の1つ以上のシンタックス要素に基づ」くこと、が本件明細書中に裏付けられていることが導き出せるわけでもない。
(5) 以上のとおり、本件発明の発明特定事項D、すなわち、「復号化画像バッファ(DPB)からの削除の動作が画像ごとに実行されるべきであるか又はアクセスユニット(AU)ごとに実行されるべきであるかの第1の決定を実行する」ことが「映像パラメータセット中の1つ以上のシンタックス要素に基づ」くこと、が本件明細書中に裏付けられているということはできず、審判請求人の主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、本件出願は依然として特許請求の範囲の請求項1の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとの理由は解消していない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本件は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-000556