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特許拒絶査定不服審判

2020-015819

予測動きベクトル誘導方法及びその方法を使用する装置

審判番号
2020-015819
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-103674
請求日
2020年11月16日
審決日
2021年12月13日
公報発行日
2022年06月24日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】エレクトロニクス アンド テレコミュニケーションズ リサーチ インスチチュート
  • 【請求人代理人】中村 行孝
  • 【請求人代理人】朝倉 悟
  • 【請求人代理人】関根 毅
  • 【請求人代理人】吉元 弘
  • 【請求人】インダストリー-ユニバーシティー コーポレーション ファウンデーション オブ コリア エアロスペース ユニバーシティー
  • 【請求人代理人】中村 行孝
  • 【請求人代理人】朝倉 悟
  • 【請求人代理人】関根 毅
  • 【請求人代理人】吉元 弘
審判長/審判官
  • 審判長 五十嵐 努
  • 審判官 川崎 優
  • 審判官 樫本 剛
分類
P18 .55 -Z (H04N) / P18 .537-Z (H04N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法17条の2第3項特許法36条6項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-103674「予測動きベクトル誘導方法及びその方法を使用する装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 9月27日出願公開、特開2018-152901〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2012年9月14日(優先権主張日 2011年9月16日 韓国(KR)、2011年10月17日 韓国、 2012年1月18日 韓国、 2012年9月14日 韓国)を国際出願日とする特願2014-530596号の一部を平成28年7月4日に出願した特願2016-132662号の一部を平成30年5月30日に出願したものものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和1年 8月 1日付け:拒絶理由通知 令和1年11月 6日 :意見書提出および手続補正 令和1年11月29日付け:拒絶理由通知 令和2年 3月 3日 :意見書提出および手続補正 令和2年 7月 3日付け:拒絶査定 令和2年11月16日 :拒絶査定不服審判請求 第2 本件発明 まず、令和1年11月6日付け手続補正(以下、当該手続補正を「最初の補正」という)は、本件出願時の特許請求の範囲1ないし17を、最初の補正による特許請求の範囲の請求項1ないし4に補正するものである。 そして、令和1年11月6日付け意見書の「(3)補正について」の記載によれば、本件出願時の請求項11に、請求項2、3の内容を合体させるという最初の補正により補正された特許請求の範囲の請求項3に係る発明は、請求項3により特定される次の事項を含むものである(最初の補正により補正された個所を下線で示す)。 次に、令和2年3月3日付け手続補正(以下、当該手続を「本件補正」という)は、最初の補正による特許請求の範囲の請求項1ないし4を、本件補正による特許請求の範囲の請求項1ないし4に補正するものであるところ、請求項3、4は本件補正によって補正されていない。 そうすると、本件補正後の特許請求の範囲の請求項3に係る発明は、最初の補正後の特許請求の範囲の請求項3に係る発明と同じ発明であって、最初の補正後の請求項3により特定される以下の事項を含むものである。 なお、本件発明の各構成の符号A~Fは、説明のために当審において付与したものであり、以下、発明特定事項A~発明特定事項Fと称する。 (本件出願時の請求項11) 「【請求項11】 コンピュータが実行可能なプログラムは、実行されると、以下のステップをデコーダに実行させる、コンピュータが実行可能なプログラムを格納するデジタル格納媒体であって、 候補予測動きベクトルリストに含まれている候補予測動きベクトルのうち予測対象ブロックに対する画面間予測を実行するために使われる予測動きベクトルに関する情報を復号化するステップと、 前記予測対象ブロックの周辺予測ブロックから複数個の空間的候補予測動きベクトル関連情報を決定すること、及び、前記複数個の空間的候補予測動きベクトル関連情報に基づいて時間的候補予測動きベクトル関連情報を決定することにより、前記候補予測動きベクトルリストを生成するステップと、 を備え、 前記予測動きベクトルに関する情報は、前記コンピュータが実行可能なプログラム内にある、デジタル格納媒体。」 (本件出願時の請求項2、3およびこれらの請求項が引用する本件出願時の請求項1) 「【請求項1】 予測対象ブロックの周辺予測ブロックから複数個の空間的候補予測動きベクトル関連情報を決定すること、及び、前記複数個の空間的候補予測動きベクトル関連情報に基づいて時間的候補予測動きベクトル関連情報を決定することにより、候補予測動きベクトルリストを生成する予測部と、 前記候補予測動きベクトルリストに含まれている候補予測動きベクトルのうち前記予測対象ブロックに対する画面間予測を実行するために使われる予測動きベクトルに関する情報を符号化するエントロピー符号化部と、 を備える映像符号化装置。 【請求項2】 前記複数個の空間的候補予測動きベクトル関連情報は、第1の空間的候補予測動きベクトル可用性情報及び第1の空間的候補予測動きベクトルのうちの少なくとも一つと、第2の空間的候補予測動きベクトル可用性情報及び第2の空間的候補予測動きベクトルのうちの少なくとも一つとを備え、前記時間的候補予測動きベクトル関連情報は、時間的候補予測動きベクトル可用性情報及び前記時間的候補予測動きベクトルのうちの少なくとも一つを備える請求項1に記載の映像符号化装置。 【請求項3】 前記第1の空間的候補予測動きベクトル及び前記第2の空間的候補予測動きベクトルの両方が可用であり、かつ、前記第1の空間的候補予測動きベクトル及び前記第2の空間的候補予測動きベクトルが相互に異なるとき、前記予測部は、前記時間的候補予測動きベクトルは可用でないというように前記時間的候補予測動きベクトル可用性情報を決定する請求項2に記載の映像符号化装置。」 (最初の補正後の請求項3であり、本件補正後の請求項3) 「【請求項3】 A コンピュータが実行可能なコードは、実行されると、以下のステップをデコーダに実行させる、コンピュータが実行可能なコードを含むビットストリームを格納するデジタル格納媒体であって、 B 候補予測動きベクトルリストに含まれている候補予測動きベクトルのうち予測対象ブロックに対する画面間予測を実行するために使われる予測動きベクトルに関する情報を復号化するステップと、 C 複数個の空間的候補予測動きベクトル関連情報を用いること、及び、前記複数個の空間的候補予測動きベクトル関連情報に基づいて決定された時間的候補予測動きベクトル関連情報を用いることにより、前記候補予測動きベクトルリストを生成するステップと、 を備え、 D 前記予測動きベクトルに関する情報は、前記コンピュータが実行可能なコード内にあり、 E 前記複数個の空間的候補予測動きベクトル関連情報は、第1の空間的候補予測動きベクトル可用性情報及び第1の空間的候補予測動きベクトルのうちの少なくとも一つと、第2の空間的候補予測動きベクトル可用性情報及び第2の空間的候補予測動きベクトルのうちの少なくとも一つとを備え、前記時間的候補予測動きベクトル関連情報は、時間的候補予測動きベクトル可用性情報及び前記時間的候補予測動きベクトルのうちの少なくとも一つを備え、 F 前記第1の空間的候補予測動きベクトル及び前記第2の空間的候補予測動きベクトルの両方が可用であり、かつ、前記第1の空間的候補予測動きベクトル及び前記第2の空間的候補予測動きベクトルが相互に異なるとき、前記時間的候補予測動きベクトルは可用でないというように前記時間的候補予測動きベクトル可用性情報が決定される、 A デジタル格納媒体。」 第3 原査定の理由 原査定の拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。 「●理由1(特許法第17条の2第3項)について ・請求項 3、4 令和1年11月6日付け手続補正書、及び、令和2年3月3日付け手続補正書による補正後の請求項3には、「コンピュータが実行可能なコードを含むビットストリームを格納するデジタル格納媒体」と記載されているが、「ビットストリーム」が、「コンピュータが実行可能なコード」を含む、ということは、当初明細書等には記載されていない。 また、以上の点は、請求項4についても同様である。 ●理由2(特許法第36条第6項第1号)について (1)請求項 3、4 請求項3には、「コンピュータが実行可能なコードを含むビットストリームを格納するデジタル格納媒体」と記載されているが、「ビットストリーム」が、「コンピュータが実行可能なコード」を含む、ということは、発明の詳細な説明には記載されていない。 また、以上の点は、請求項4についても同様である。 (2)請求項 3、4 請求項3には、「前記予測動きベクトルに関する情報は、前記コンピュータが実行可能なコード内にあり」と記載されているが、「予測動きベクトルに関する情報」が、「コンピュータが実行可能なコード内」にある、ということは、発明の詳細な説明には記載されていない。 また、以上の点は、請求項4についても同様である。」 ここで、令和1年11月29日付け拒絶理由通知において通知された拒絶理由は、以下の理由を含むものである。 「1.(新規事項)令和1年11月6日付け手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 2.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 ●理由1(新規事項)について ・請求項 3、4 請求項3には、「コンピュータが実行可能なコードを含むビットストリームを格納するデジタル格納媒体」と記載されているが、「ビットストリーム」が、「コンピュータが実行可能なコード」を含む、ということは、当初明細書等には記載されていない。 また、以上の点は、請求項4についても同様である。 ●理由2(サポート要件)について (1)請求項 3、4 請求項3には、「コンピュータが実行可能なコードを含むビットストリームを格納するデジタル格納媒体」と記載されているが、「ビットストリーム」が、「コンピュータが実行可能なコード」を含む、ということは、発明の詳細な説明には記載されていない。 また、以上の点は、請求項4についても同様である。 (2)請求項 3、4 請求項3には、「前記予測動きベクトルに関する情報は、前記コンピュータが実行可能なコード内にあり」と記載されているが、「予測動きベクトルに関する情報」が、「コンピュータが実行可能なコード内」にある、ということは、発明の詳細な説明には記載されていない。 また、以上の点は、請求項4についても同様である。」 以上によると、原査定の理由は、換言すれば、本件発明において、 (1) 発明特定事項Aの「コンピュータが実行可能なコードは、実行されると、以下のステップをデコーダに実行させる、コンピュータが実行可能なコードを含むビットストリームを格納するデジタル格納媒体」に関して、 「ビットストリーム」が「コンピュータ実行可能なコード」すなわち「実行されると、以下のステップ」である発明特定事項B、Cのステップ「をデコーダに実行させる」「コンピュータが実行可能なコード」を含むことは、当初明細書等には記載されておらず、発明の詳細な説明には記載されていない、 (2) 発明特定事項Dの「前記予測動きベクトルに関する情報は、前記コンピュータが実行可能なコード内にあり」という事項に関して、発明特定事項Bにおいて特定される「予測動きベクトルに関する情報」が、発明特定事項Aの「ビットストリーム」に含まれる「コンピュータが実行可能なコード」内にある、ということは、発明の詳細な説明には記載されていない、 というものである。 第4 当審の判断 そこで、本件発明において、ビットストリームがコンピュータ実行可能なコード、すなわち、実行させると、発明特定事項B、Cのステップをデコーダに実行させるコンピュータ実行可能なコード(発明特定事項Aの「コンピュータ実行可能なコード」)がビットストリームに含まれることが、本願出願当初の明細書若しくは図面(以下、「当初明細書等」という)に記載された事項の範囲内であるかどうかについて、以下に検討する。 1 当初明細書等に記載された事項 当初明細書等には、ビットストリームについて以下の記載がある。(下線は、強調のため当審で付したものである。) ア 「【0017】 映像符号化装置100は、入力映像に対してイントラ(intra)モード又はインター(inter)モードに符号化を実行し、ビットストリームを出力することができる。 【0018】 イントラモードの場合、イントラ予測部120は、現在ブロック周辺の既に符号化されたブロックのピクセル値を利用して空間的予測を実行することで、予測ブロックを算出することができる。 【0019】 インターモードの場合、動き予測部111は、動き予測過程で参照ピクチャバッファ190に格納されている参照映像で入力ブロックと最もよくマッチされる領域を探して動きベクトルを求めることができる。動き補償部112は、動きベクトルを利用して動き補償を実行することによって予測ブロックを算出することができる。 【0020】 動き予測部111では予測対象ブロックの周辺予測ブロックから誘導された複数個の空間的候補予測動きベクトル関連情報及び複数個の空間的候補予測動きベクトル関連情報に基づいて決定された時間的候補予測動きベクトル関連情報に基づいて前記候補予測動きベクトルリストを生成することができる。詳細な候補予測動きベクトルリスト生成方法に対しては、以下、本発明の実施例で後述し、このような動作を実行する予測部は、本発明の実施例に含まれる。 【0021】 減算器125は、入力ブロックと算出された予測ブロックとの差分により残差ブロック(residualblock)を算出することができる。変換部130は、残差ブロックに対して変換(transform)を実行することで、変換係数(transformcoefficient)を出力することができる。ここで、変換係数は、残差ブロック及び/又は残差信号に対する変換を実行することによって算出された係数値を意味することができる。以下、本明細書では変換係数に量子化が適用されて算出された、量子化された変換係数レベル(transformcoefficientlevel)も変換係数と呼ばれることができる。 【0022】 量子化部140は、入力された変換係数を量子化パラメータによって量子化し、量子化された変換係数レベル(quantizedtransformcoefficientlevel)を出力することができる。 【0023】 エントロピー符号化部150は、量子化部140で算出された値又は符号化過程で算出された符号化パラメータ値等に基づいてエントロピー符号化を実行することで、ビットストリーム(bitstream)を出力することができる。 ・・・ 【0030】 映像復号化装置200は、符号化器で出力されたビットストリームの入力を受けてイントラモード又はインターモードに復号化を実行することで、再構成された映像、即ち、復元映像を出力することができる。 ・・・ 【0031】 エントロピー復号化部210は、入力されたビットストリームを確率分布によってエントロピー復号化し、量子化された係数(quantizedcoefficient)形態のシンボルを含むシンボルを算出することができる。」 イ 「【0154】 このとき、符号化/復号化対象ピクチャ又はスライスで符号化/復号化されたピクチャ又はスライスの動きベクトルを参照することは、ビットストリームでエラーが発生する場合、正常に参照することができないため、発生頻度数が高い動きベクトルのうち少なくとも一つ以上をビットストリーム内の上位レベルシンタックス要素(picture parameter set、adaptive parameter set、slice header等)で符号化/復号化することができる。」 2 技術水準を踏まえたビットストリームの定義 令和2年11月16日付け審判請求書によれば、【請求の理由】の「(3)本願発明が特許されるべき理由」において、「H.264等の映像規格では、ビットストリーム内の情報、即ち構文要素が映像復号化エンジンのコンピュータで実行可能なコードであることは明らかである。」と主張されているので、本件出願の最先の優先権主張日における映像規格に関する技術水準を踏まえたビットストリームの定義について検討する。 H.264に関して、 https://www.itu.int/rec/T-REC-H.264-201106-S/en よりダウンロード可能な、 ITU-T TELECOMMUNICATION STANDARDIZATION SECTOR OF ITU H.264(06/2011) SERIES H:AUDIOVISUAL AND MULTIMEDIA SYSTEMS Infrastructure of audiovisual services-Coding of moving video Advanced video coding for generic audiovisual services、2011年6月、p.6には、3 Definitionsの3.14 bitstreamにおいて、ビットストリームの定義が以下のとおりなされている。 「3.14 bitstream: A sequence of bits that forms the representation of coded pictures and associated data forming one or more coded video sequences. Bitstream is a collective term used to refer either to a NAL unit stream or a byte stream.」 (仮訳: 3.14 ビットストリーム:符号化されたピクチャの表現、および1または多数の符号化されたビデオシーケンスから形成される関連データを形成するビット列。ビットストリームはNALユニットストリームとバイトストリームの何れかを参照する集合的な用語である。) 次に、上記文献のp.39には7 Syntax and semanticsにおいて、シンタックスとビットストリームに関して以下の記載がある。 「7 Syntax and semantics 7.1 Method of specifying syntax in tabular form The syntax tables specify a superset of the syntax of all allowed bitstreams. Additional constraints on the syntax may be specified, either directly or indirectly, in other clauses. NOTE - An actual decoder should implement means for identifying entry points into the bitstream and means to identify and handle non-conforming bitstreams. The methods for identifying and handling errors and other such situations are not specified here. The following table lists examples of pseudo code used to describe the syntax. When syntax_element appears, it specifies that a syntax element is parsed from the bitstream and the bitstream pointer is advanced to the next position beyond the syntax element in the bitstream parsing process. [図:0001384680000001.jpg] 」 (仮訳: 7 シンタックスとセマンティクス 7.1 シンタックスを表形式で指定する方法 シンタックステーブルは、許可されているすべてのビットストリームのシンタックスのスーパーセットを指定する。シンタックスに対する追加の制約は、他の節で直接または間接的に指定することができる。 注-実際のデコーダでは、ビットストリームへのエントリポイントを識別する手段、および適合しないビットストリームを識別および処理する手段を実装する必要がある。エラーなどを識別して処理するための手段はここでは規定しない。 次の表は、シンタックスを記述するために使用される疑似コードの例である。syntax_elementが出現すると、ビットストリームからシンタックスエレメントが解析され、ビットストリームの解析処理において、ビットストリームポインタが当該シンタックスエレメントの後の次の位置に進められることが指定される。 [図:0001384680000002.jpg] ) また、HEVCのワーキングドラフトに関して、 http://phenix.int-evry.fr/jct/doc_end_user/documents/6_Torino/wg11/JCTVC-F803-v3.zip よりダウンロード可能な、 Benjamin Bross, et al ,“ WD4:Working Draft 4 of High-Efficiency Video Coding”, Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 6th Meeting:Torino,IT,14-22 July,2011,Document:JCTVC-F803_d1,2011年9月 にも、p.13には3.Definitionsの3.11 bitstreamにおいて、上記H.264におけるビットストリームの定義と全く同じ定義がなされており、pp.29-30には、7 Syntax and semanticsにおいて、上記H.264におけるビットストリームに関する記載と全く同じ記載がある。 3 発明特定事項Aに関する検討 上記1のアのとおり、当初明細書等には、【0017】~【0023】、【0030】、【0031】に次の事項が記載されているといえる。 (ア)映像符号化装置は、入力映像に対して符号化を実行するものであり、イントラ予測部は予測ブロックを算出するものであり、動き予測部は動きベクトルを求め、動き補償部は、動きベクトルを利用して予想ブロックを算出するものであり、減算器は、入力ブロックと算出された予想ブロックとの差分により残差ブロックを算出するものであり、変換部は、残差ブロックに対して変換を実行することで、変換係数を出力するものであり、量子化部は、入力された変換係数を量子化し、量子化された変換係数レベルを出力するものであり、エントロピー符号化部は、量子化部で算出された値に基づいてエントロピー符号化を実行することで、ビットストリームを出力するものであり、映像復号化装置は、符号化器で出力されたビットストリームの入力を受けて復号化を実行することで、復元映像を出力し、エントロピー復号化部は、入力されたビットストリームをエントロピー復号化し、シンボルを算出すること。 また、上記1のイのとおり、当初明細書等には、【0154】に次の事項が記載されているといえる。 (イ)符号化/復号化された動きベクトルを参照することは、ビットストリームでエラーが発生する場合、正常に参照することができないため、動きベクトルをビットストリーム内の上位レベルシンタックス要素で符号化/復号化することができること。 (ア)(イ)から、当初明細書等の上記箇所には、ビットストリーム中に、コンピュータ実行可能なコードが含まれることについては記載も示唆もなく、発明特定事項B、Cのステップをデコーダに実行させるコンピュータ実行可能なコード(発明特定事項Aの「コンピュータ実行可能なコード」)が含まれることについても、記載も示唆もない。 また、当初明細書等には他にビットストリームに関して記載されている箇所は見当たらない。 さらに、上記2のとおり、本件出願の最先の優先権主張日における映像規格に関する技術水準を踏まえたビットストリームの定義は、符号化されたピクチャの表現、および1または多数の符号化されたビデオシーケンスから形成される関連データを形成するビット列、すなわち単なるデータ列であることを示すにとどまり、「コンピュータ実行可能なコードを含む」旨の記載はない。 加えて、本件出願の最先の優先権主張日における映像規格に関する技術水準を踏まえたビットストリームに関して、シンタックスを記述するために使用される疑似コードが用いられるものの、この疑似コードがコンピュータ実行可能なコードであるという記載はなく、syntax_elementが出現すると、ビットストリームからシンタックスエレメントが解析され、ビットストリームの解析処理において、ビットストリームポインタがシンタックスエレメントの後の次の位置に進められることが指定されることが記載されているのみである。 そうすると、当該技術水準からは、ビットストリームからシンタックスエレメントを解析する解析処理において、解析処理を行うハードウェアまたはソフトウェア(プログラム)が、シンタックスを記述するために使用される疑似コードが意味するようにビットストリームを解析し、ビットストリームからシンタックスエレメントが取り出されて、当該シンタックスエレメントが処理に利用されうることがいえるにすぎず、ビットストリームから取り出されたシンタックスエレメントそのものを実行するわけでない、すなわち、ビットストリーム中のシンタックスエレメントがコンピュータ実行可能なコードとして実行されて処理を行うものではない。 そうすると、当初明細書等の記載を本件出願の最先の優先権主張日の技術水準を踏まえても、ビットストリーム中に、コンピュータ実行可能なコードが含まれることについては記載も示唆もなく、発明特定事項B、Cのステップをデコーダに実行させるコンピュータ実行可能なコード(発明特定事項Aの「コンピュータ実行可能なコード」)が含まれることについても記載や示唆があるということはできない。 したがって、本件の当初明細書等には、ビットストリーム中に、コンピュータ実行可能なコードが含まれることについては記載も示唆もないことから、 発明特定事項B、Cのステップをデコーダに実行させるという、発明特定事項Aの「コンピュータが実行可能なコード」に関して、発明特定事項Aの「コンピュータ実行可能なコードを含むビットストリーム」 は、本件の当初明細書等には記載も示唆もなく、また当初明細書等の記載から自明に導き出せる事項であるともいえず、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものであり、また、発明の詳細な説明には記載されていないといえる。 4 まとめ 以上のとおりであるから,本件発明は、上記原査定の理由1のとおり、 「ビットストリーム」が、「コンピュータが実行可能なコード」を含む、ということ、換言すれば、発明特定事項Aの「コンピュータが実行可能なコードは、実行されると、以下のステップをデコーダに実行させる、コンピュータが実行可能なコードを含むビットストリームを格納するデジタル格納媒体」に関して、 ビットストリーム中に、コンピュータ実行可能なコードが含まれることについて当初明細書等に記載も示唆もなく、発明特定事項B、Cのステップをデコーダに実行させるという、発明特定事項Aの「コンピュータが実行可能なコード」に関して、発明特定事項Aの「コンピュータ実行可能なコードを含むビットストリーム」についても、本願出願時の明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、 また、当該事項は発明の詳細な説明には記載されていないことから、上記原査定の理由2(1)のとおり、本件出願は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 5 請求人の主張について 請求人は、令和2年11月16日付け審判請求書の「(3)本願発明が特許査定されるべき理由」の「(b)理由1(補正の要件)及び理由2(サポート要件)について」において、以下のとおり主張している。(下線は審判請求人が付したものである。また、当審で括弧付き数字により分説した。) (1)「請求項3、4には、「コンピュータが実行可能なコードを含むビットストリームを格納するデジタル格納媒体」と記載されているが、「ビットストリーム」が「コンピュータが実行可能なコード」を含む、ということは、当初明細書等には記載されていないため補正の要件を満たしておらず、また発明の詳細な説明に記載されていないためサポート要件を満たしていないと認定された。 また、請求項3、4には、「前記予測動きベクトルに関する情報は、前記コンピュータが実行可能なコード内にあり」と記載されているが、「前記予測動きベクトルに関する情報」が「コンピュータが実行可能なコード内」にあるということは、発明の詳細な説明には記載されていないためサポート要件を満たしていないと認定された。 本願明細書の実施の形態に記載されているビットストリームに含まれる情報、例えば予測動きベクトルの情報等は、単なるデータとみなすべきではなく、命令コード又はコンピュータが実行可能な(プログラム)コードとみなすべきであると思量する。 ここで、「コンピュータが実行可能なコード」は、原始的な機械語のみに限定されるものではない。 たとえば、JAVA言語の中間バイトコードや、スクリプト言語のテキストもコンピュータで実行可能なコードである。 Java仮想マシンがJava言語のテキストコードをコンパイルすることによって生成されたバイトコードを翻訳し、これに対応するアクションを実行することによってバイトコードを実行するとき、本願明細書の実施の形態によって導出された映像解釈エンジンは、ビットストリームからの情報をパッチして、この情報に対応する実行を行う。」 (2)「また本願明細書の段落[0023]には、以下のように明示的に記載されている。 「エントロピー符号化部150は、量子化部140で算出された値又は符号化過程で算出された符号化パラメータ値等に基づいてエントロピー符号化を実行することで、ビットストリーム(bit stream)を出力することができる。」 即ち、本願明細書の実施の形態に記載されている値及び情報は、ビットストリームとして出力されることが明示的に記載されている。 したがって、ビットストリームは、本願明細書に記載されている値及び情報を含むものである。 請求項3及び4の「予測動きベクトルに関する情報」が、段落[0023]に記載されている符号化パラメータの1つであることは明らかである。 一般に、映像を復号化するためのビットストリームは、映像データと構文要素で構成される。 コーデック等の映像復号化エンジンは、ビットストリームから構文要素をフェッチし、構文要素の値にしたがって特定のアクションを実行する。 たとえば、H.264等の周知のコーデックの定義によれば、条件分岐("if"句等)の制御は、ビットストリームから抽出された構文要素の値を使用して実行される。 即ち、ビットストリーム内の構文要素は、コーデックのコンピュータ実行可能(プログラム)コードとして単に機能し使用される。」 (3)「また、本願の明細書では、段落[0154]において以下のように明示的に記載されている。 「このとき、符号化/復号化対象ピクチャ又はスライスで符号化/復号化されたピクチャ又はスライスの動きベクトルを参照することは、ビットストリームでエラーが発生する場合、正常に参照することができないため、発生頻度数が高い動きベクトルのうち少なくとも一つ以上をビットストリーム内の上位レベルシンタックス要素(picture parameter set、adaptive parameter set、slice header等)で符号化/復号化することができる。」 即ち、本願明細書では、動作情報等、実施の形態に記載されている情報が、構文要素あるいは構文要素の少なくとも一部として使用されることが明示的に記載されている。 したがって、本願明細書の実施の形態では、ビットストリームに含まれる情報、例えば予測動きベクトルに関する情報等は、コンピュータで実行可能なコードであることが明確に説明されている。 即ち、本願発明のビットストリームは、1)映像データと、2)映像データを使用して映像を提供するために使用されるコンピュータが実行可能なコード、即ち、構文要素との組み合わせである。 したがって本願明細書には、ビットストリームがコンピュータで実行可能なコードを含むことが明示的に記載されている。」 (4)「そして、本願明細書に記載されているように、映像データのビットストリームが、通信媒体及び/又は記憶媒体を使用して、符号化ユニット100から復号化ユニット200に送信される。 したがって本願明細書では、記憶媒体は、映像データと、予測動きベクトルに関する情報等のコンピュータが実行可能なコードとを含むビットストリームを含むことが記載されている。 さらに本願明細書の実施の形態では、装置(画像符号化装置100及び画像復号化装置200等)は、複数の(ハードウェア)ユニットを含むことが記載されている。 そして、ビットストリームは、入力によって定義されたアクションを実行するために(即ち、映像を提供するために)画像デコーダ200を駆動するための入力として使用される。 画像デコーダ200は一種のコンピュータであるため、ビットストリームは(少なくとも部分的に)コンピュータのためのコンピュータが実行可能なコードと見なされるべきである。」 (5)「さらに、多くのハードウェアを実装した映像復号化装置(H.264圧縮映像のハードウェア復号化をサポートするVGAカード等)が存在することが当業者には明らかである。 このようなハードウェア実装の映像復号化装置の場合、ビットストリームからの情報が、ハードウェア実装の映像復号化装置によって直接実行されるプログラムコード(即ち、機械語コード)として使用されることは明らかである。 また、本出願の明細書の段落[0030]では、以下のように明示的に記載されている。 「映像復号化装置200は、符号化器で出力されたビットストリームの入力を受けてイントラモード又はインターモードに復号化を実行することで、再構成された映像、即ち、復元映像を出力することができる。イントラモードの場合、スイッチがイントラに転換され、インターモードの場合、スイッチがインターに転換されることができる。映像復号化装置200は、入力を受けたビットストリームから復元された残差ブロック(reconstructed residual block)を得て予測ブロックを算出した後、復元された残差ブロックと予測ブロックとを加えて再構成されたブロック、即ち、復元ブロックを算出することができる。」 段落[0030]によれば、画像復号化装置200は、画像復号化装置200に入力されたビットストリームとして、再構成された画像を出力する動作を実行することが明示的に記載されている。 特に、段落[0030]には、ビットストリームは、画像復号化装置200の(ハードウェア)コンポーネントであるスイッチを、イントラモード又はインターモードに転換することがと(注:「転換することが」の誤記であると考えられる)明示的に記載されている。 即ち、本発明の実施の形態では、ビットストリームが画像復号化装置200を駆動するためのプログラムコードとして使用されることが明示的に記載されている。 したがって、請求項3~4に記載された技術的特徴は、本願明細書の実施の形態によって明確にサポートされている。」 (6)「さらに、請求項3~4の少なくとも一部は、本願明細書の段落の記載あるいは実施の形態の記載によって直接的にサポートされていないと仮定されたとした場合であっても、サポートされていない部分は、本願の出願日において当業者において周知技術に過ぎない。 即ち、H.264等の映像規格では、ビットストリーム内の情報、即ち構文要素が映像復号化エンジンのコンピュータで実行可能なコードであることは明らかである。 以上より、理由1及び理由2は解消したものと思量する。」 そこで、上記(1)~(6)の主張について検討する。 (1)は、結局のところ、「ビットストリームは、単なるデータとみなすべきではなく、命令コード又はコンピュータが実行すべきコードとみなすべきである」という主張が記載されているにすぎず、その主張の技術的な根拠は(1)の記載からは不明である。 本願明細書の実施の形態によって導出された映像解釈エンジンは、ビットストリームからの情報をパッチして、この情報に対応する実行を行うことは、ビットストリームが命令コード又はコンピュータが実行すべきコードであるか、単なるデータであるかによらず成り立つことであって、ビットストリームが単なるデータとみなすべきではなく、命令コード又はコンピュータが実行すべきコードとみなすべきであるという根拠にはならない。 したがって、JAVA言語の中間バイトコードやスクリプト言語のテキストがコンピュータで実行可能なコードであることを根拠として、本件補正発明におけるビットストリームが単なるデータとみなすべきではなく、命令コード又はコンピュータが実行すべきコードとみなすべきであるという主張を採用することはできない。 (2)は、結局のところ、「ビットストリームは、映像データと構文要素で構成され」、「映像復号化エンジンは、ビットストリームから構文要素をフェッチし、構文要素の値にしたがって特定のアクションを実行する」というだけである。 そして、ビットストリームから構文要素をフェッチし、構文要素の値に従って映像復号化エンジンが特定のアクションを実行することは、ビットストリーム内の構文要素が命令コード又はコンピュータが実行すべきコードであるか、単なるデータであるかによらず成り立つことである。 したがって、ビットストリームからフェッチされた構文要素の値に従って映像復号化エンジンが特定のアクションを実行することだけをもって、ビットストリーム内の構文要素が単なるデータとみなすべきではなく、命令コード又はコンピュータが実行すべきコードとみなすべきであるという根拠にはならない。 (3)は、結局のところ、発生頻度数が高い動きベクトルのうち少なくとも一つ以上をビットストリーム内の上位レベルシンタックス要素で符号化/復号化できるということであって、動作情報等、実施の形態に記載されている情報が、構文要素あるいは構文要素の少なくとも一部として使用されることが明示的に記載されているのではなく、動きベクトルが構文要素として使用されることが記載されているにすぎない。 そして、本願明細書の実施の形態を見ても、ビットストリームに含まれる情報、例えば予測動きベクトルに関する情報等は、コンピュータで実行可能なコードであることが明確に説明されているわけではなく、当該主張の具体的かつ説得的な根拠は示されていない。 (4)は、結局のところ、ビットストリームは、入力によって定義されたアクションを実行するために、映像デコーダを駆動するための入力として使用され、映像デコーダがコンピュータの一種であることを説明しているにすぎない。 そして、ビットストリームは命令コード又はコンピュータが実行すべきコードであるか、単なるデータであるかによらず、映像デコーダを駆動するための入力として使用される。 したがって、ビットストリームが映像デコーダを駆動するための入力として使用されることだけをもって、ビットストリーム内の構文要素が単なるデータとみなすべきではなく、命令コード又はコンピュータが実行すべきコードとみなすべきであるという根拠にはならない。 (5)は、結局のところ、ビットストリームからの情報がハードウェアとしての映像復号化装置ないし画像復号化装置のコンポーネントである、イントラモード又はインターモードスイッチを転換すること、すなわちビットストリームが画像復号化装置を駆動するために使用されていることが記載されているにすぎない。 そして、(4)と同様に、ビットストリームは命令コード又はコンピュータが実行すべきコードであるか、単なるデータであるかによらず、映像復号化装置または画像復号化装置を駆動するための入力として使用される。 したがって、ビットストリームが映像復号化装置または画像復号化装置を駆動するための入力として使用されることだけをもって、ビットストリーム内の構文要素が単なるデータとみなすべきではなく、命令コード又はコンピュータが実行すべきコードとみなすべきであるという根拠にはならない。 (6)は、請求項3~4のサポートされていない部分は、本願の出願日において当業者において周知技術にすぎないと主張しているものの、当該主張が根拠のないものであることは、上記3のとおりであり、ビットストリーム内の情報、即ち構文要素が映像復号化エンジンのコンピュータで実行可能なコードであることの具体的根拠は結局示されていない。 また、上記3のとおり、本件出願の最先の優先権主張日における映像規格に関する技術水準を踏まえたビットストリームの定義は、符号化されたピクチャの表現、および1または多数の符号化されたビデオシーケンスから形成される関連データを形成するビット列、すなわち単なるデータ列であることを示すにとどまり、「コンピュータ実行可能なコードを含む」旨の記載はなく、当初明細書等の記載を本件出願の最先の優先権主張日の技術水準を踏まえて検討しても、本件の当初明細書等にビットストリーム中に、コンピュータ実行可能なコードが含まれることについては記載も示唆もないことから、発明特定事項B、Cのステップをデコーダに実行させるコンピュータ実行可能なコード(発明特定事項Aの「コンピュータ実行可能なコード」)が含まれることについての記載や示唆が含まれることを立証するものではない。 以上のとおり、審判請求人の主張は、採用できない。 第5 むすび 以上のとおり、令和1年11月6日付けでした手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないとの理由は解消していない。 また、令和2年3月3日付けで行った手続補正を踏まえても、本件出願は依然として特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとの理由は解消していない。 よって、結論のとおり審決する。

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2020-015819

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