2021-000552
ポリオレフィン樹脂層を備える積層体およびそれを備える包装製品
- 審判番号
- 2021-000552
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-131893外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年01月14日
- 審決日
- 2023年03月28日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 14項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成28年7月1日の出願であって、その手続の経緯の概略は次のとおりである。
(令和3年12月1日:原査定の謄本の送達)
第2 本願発明
本願の請求項1~9係る発明は、令和4年7月20日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】少なくとも、基材層と、ポリオレフィン樹脂層と、熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層体であって、前記基材層が、ポリプロピレンおよびポリアミドからなる群から選択される樹脂材料を含み、前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)のみで構成されるか、または、バイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)と化石燃料由来の低密度ポリエチレン(LDPE)との混合樹脂で構成され、前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、前記基材層が、最外層を構成しており、前記熱可塑性樹脂層は、前記ポリオレフィン樹脂層に接するポリエチレンフィルムからなり、前記熱可塑性樹脂層が、最内層を構成している、積層体(但し、前記基材層が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなるバイオマスポリエステル樹脂組成物からなるバイオマスポリエステル樹脂層であって、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるバイオマスポリエステル樹脂層からなるものを除く)。」
第3 当審で通知した拒絶の理由
当審において、令和4年11月8日付けで通知した拒絶の理由のうち、特許法第29条第2項について通知した、本願発明についての理由は、以下のとおりである。
(進歩性)本願発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例1に記載された発明、引用例3に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用例等一覧>
1.特許第4894177号公報
3.特開2014-133337号公報
第4 引用文献
1 引用例1について
(1) 引用例1の記載
引用例1には、「積層体」に関し、次の記載がある(なお、下線は理解の一助として当審において付したものである。「・・・」は、文の省略を意味する。以下同様。)。
「【技術分野】【0001】本発明は、ポリエステル、ポリアミドまたはポリプロピレンのいずれかからなる基材にシーラント層を設けた積層体に関し、さらに詳しくは、揮発性成分や揮発性成分を含む各種強浸透性内容物を収容する包装材料に利用して、高いヒートシール強度とラミネート強度を有し、しかも、これら揮発性成分が作用しても前記シール強度やラミネート強度が低下しない積層体に関するものである。」
「【背景技術】【0002】従来、食品や医薬品などを包装する包装材料として、例えば、紙層/ポリエチレン層/アルミ箔層/ポリエステル層/シーラント層のような各層が積層されてなる積層体が広く用いられてきた。この積層体のポリエステル層とシーラント層との貼り合わせは、通常はポリエステルフィルムからなるポリエステル層に二液硬化型ポリウレタン系などのアンカーコート剤を塗布してから、シーラント層を押出ラミネートすることにより行っていた。そして、このような積層体は適度のラミネート強度やガスバリア性などを有しており、食品や医薬品などを包装するための包装材料として広く使用されている。」
「【0010】本発明は、このような事情によってなされたもので、基材とシーラント層との高いラミネート強度を維持したまま、さらにそのヒートシール強度を改善した積層材料を提供することを目的とするものである。」
「【0018】以下、本発明の実施の形態を図面を参照にして詳細に説明する。図1は本発明に係る積層体の概略の断面構成を示している。【0019】この積層体1は、基材2上に、接着層3、オレフィン系押し出し樹脂層4、最内層シーラント層5がこの順序で積層されてなるものである。【0020】本発明の積層体を構成する基材2は、ポリエステル、ポリアミドまたはポリプロピレンのいずれかからなるものである。さらに具体的には、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムまたはポリプロピレンフィルムのいずれかからなるものである。」
「【0028】また、接着層3上に設けられるオレフィン系押し出し樹脂層4は、接着層3とシーラント層5との間に介在し、シーラント層5の肉厚を補完して、そのヒートシール強度を向上させるものである。このようなオレフィン系押し出し樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、又はオレフィンと他のモノマーとの共重合樹脂から成る。ポリオレフィン樹脂としては、高密度ポリエチレン,低密度ポリエチレン,中密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン等のポリエチレン樹脂;ホモ・ブロック・ランダムの各ポリプロピレン樹脂;エチレン-αオレフィン共重合体などのエチレン系共重合ポリオレフィン樹脂;プロピレン-αオレフィン共重合体などのプロピレン系共重合ポリオレフィン樹脂が使用できる。・・・【0029】ポリオレフィン系押し出し樹脂層4は、これらポリオレフィン系樹脂を、シーラント層5を構成するシーラントフィルム上に、溶融状態で押し出し製膜して形成することができる。【0030】シーラント層5は、積層体を包装袋に製袋する際に、互いに重ね合わされ、熱によりヒートシールされるもので、ヒートシール強度の高いものが望ましい。シーラント層5に適用されるシーラントフィルムとしては、例えば、直鎖低密度ポリエチレンフィルム、エチレン-メタクリル酸共重合体フィルムなどが利用できる。中でも、直鎖低密度ポリエチレンフィルムが好ましく利用できる。」
「【0036】<実施例1>基材として、厚みが15μmの両面コロナ処理のポリアミドフィルム(含水率0.5%以上)を使用した。他方、ポリオールを含有せず、トリレンジイソシアネートのアダクトタイプを固形分割合が1wt%になるように塗工液を調製した。そして、前記ポリアミドフィルムのコロナ処理面に、前記塗工液を塗工して接着層を形成した。そして、押し出し機から低密度ポリエチレンを溶融状態で押し出して前記接着層上に積層し、同時にシーラント層として直鎖低密度ポリエチレンフィルム(厚み40μm)を前記押し出し樹脂上に貼り合わせて、実施例1に係る積層体を得た。なお、接着層の乾燥後の厚みは0.1μmであった。また、前記押し出し樹脂の厚みは25μm、押し出し加工速度は80m/minであった。」
「【符号の説明】【0057】1・・・積層体2・・・基材3・・・接着層4・・・ポリオレフィン系押し出し樹脂層5・・・シーラント層」
「【図1】[図:0001397393000001.jpg]」
(2) 引用発明
上記(1)を総合すると、引用例1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「基材として、ポリアミドフィルムを使用し、前記ポリアミドフィルムに、塗工液を塗工して接着層を形成し、低密度ポリエチレンを溶融状態で押し出して前記接着層上の樹脂層を積層し、同時に最内層シーラント層として直鎖低密度ポリエチレンフィルムを貼り合わせた、積層体。」
2 引用例3について
(1)引用例3の記載
引用例3には、「バイオマス由来の樹脂層を備えた積層体」に関し、次の記載がある(なお、【0032】の「バイオマスポリオレフィン樹脂層」、【0033】の「第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層」、【0038】
の「第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層」、【0060】の「バイオマスポリオレフィン」における下線は、公報において、付与されていたものである。)
「【技術分野】【0001】本発明は、バイオマス由来の樹脂層を備えた積層体に関し、より詳細には、板紙基材と、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリオレフィンを含んでなるバイオマスポリオレフィン樹脂組成物からなるバイオマスポリオレフィン樹脂層とを有してなる、積層体に関する。【0002】近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラルな再生可能エネルギーである。昨今、これらバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックの実用化が急速に進んでおり、各種の樹脂をバイオマス原料から製造する試みも行われている。・・・【0004】ここで、汎用プラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等、様々な種類が用いられている。特に、ポリエチレンは、フィルム、シート、ボトル等に成形され、包装材等の種々の用途に供されており、世界中での使用量が多い。そのため、従来の化石燃料由来のポリエチレンを用いることは環境負荷が大きい。【0005】そのため、ポリエチレンの製造にバイオマス由来の原料を用いて、化石燃料の使用量を削減することが望まれている。例えば、現在までに、ポリオレフィン樹脂の原料となるエチレンやブチレンを、再生可能な天然原料から製造することが研究されてきた(例えば、特許文献1を参照)。」
「【0015】本発明の態様においては、前記バイオマスポリオレフィン樹脂組成物が、化石燃料由来のエチレンと、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα-オレフィンとを含むモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリオレフィンをさらに含んでもよい。【0016】本発明の態様においては、前記バイオマスポリオレフィン樹脂組成物が、5~90質量%の前記バイオマス由来のポリオレフィンと、10~95質量%の前記化石燃料由来のポリオレフィンとを含んでもよい。」
「【0025】本発明による積層体は、板紙基材と、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリオレフィンを含んでなるバイオマスポリオレフィン樹脂組成物からなるバイオマスポリオレフィン樹脂層とを有することで、カーボンニュートラルなポリオレフィン樹脂の積層体を実現できる。したがって、従来に比べて化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。また、本発明による積層体は、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリオレフィン積層体と比べて、機械的特性等の物性面で遜色がないため、従来のポリオレフィン積層体を代替することができる。」
「【0029】本発明による積層体の一例の模式断面図を図1および図2に示す。図1に示される積層体10は、板紙基材11と、板紙基材11上に形成されたバイオマスポリオレフィン樹脂層12とを有してなるものである。図2に示される積層体20は、板紙基材21と、板紙基材21上に形成された第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層22と、第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層22上に形成された第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層23とをこの順に有してなるものである。以下、積層体を構成する各層について説明する。」
「【0032】バイオマスポリオレフィン樹脂層本発明において、バイオマスポリオレフィン樹脂層は、下記のバイオマス由来のエチレンをバイオマスポリオレフィン樹脂層全体に対して好ましくは5質量%以上、より好ましくは5~95質量%、さらに好ましくは25~75質量%含んでなるものである。バイオマスポリオレフィン樹脂層は、少なくとも2層以上からなるものであってもよく、例えば、板紙基材側から順に第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層と第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層とを有してなる。積層体のシール層およびコア層は、両者がバイオマスポリオレフィン樹脂層であってもよく、いずれか一方のみがバイオマスポリオレフィン樹脂層であってもよい。【0033】第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層本発明において、第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層は、積層体のコア層としての機能を果たすものであってもよい。積層体はコア層を有することで、破断せず、優れた屈曲性を示すことができる。【0034】第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層は、バイオマス由来のエチレンを第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層全体に対して好ましくは5質量%以上、より好ましくは5~95質量%、さらに好ましくは25~75質量%、最も好ましくは40~75%含んでなるものである。第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層中のバイオマス由来のエチレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルなポリオレフィン樹脂の積層体を実現できる。」
「【0038】第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層本発明において、第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層は、積層体のシール層としての機能を果たすものであってもよい。積層体はヒートシール層を有することで、他の樹脂フィルム上に積層する際に接着剤等を用いなくとも、強固に接着させることができる。」
「【0060】バイオマスポリオレフィン本発明において、バイオマス由来のポリオレフィンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるものである。バイオマス由来のエチレンには、上記の製造方法により得られたものを用いることが好ましい。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いているため、重合されてなるポリオレフィンはバイオマス由来となる。なお、ポリオレフィンの原料モノマーは、バイオマス由来のエチレンを100質量%含むものでなくてもよい。」
「【0066】本発明において、バイオマス由来のポリオレフィンやバイオマス由来の樹脂層は、バイオマス度が100%である必要はない。積層体の一部にでもバイオマス由来の原料が用いられていれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減するという本発明の趣旨に沿うからである。【0067】本発明において、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。重合温度や重合圧力は、重合方法や重合装置に応じて、適宜調節するのがよい。重合装置についても特に限定されず、従来公知の装置を用いることができる。以下、エチレンを含むモノマーの重合方法の一例を説明する。【0068】ポリオレフィン、特に、エチレン重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体の重合方法は、目的とするポリエチレンの種類、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の密度や分岐の違いにより、適宜選択することができる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒等のシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段または2段以上の多段で行うことが好ましい。」
「【0122】10 積層体11 紙基材12 バイオマスポリオレフィン樹脂層20 積層体21 板紙基材22 第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層23 第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層」
「【図2】[図:0001397393000002.jpg]」
(2) 引用例3に記載された事項
上記(1)を総合すると、以下の事項が記載されている。
「循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目され、積層体に、バイオマス由来のポリオレフィンを含んでなるバイオマスポリオレフィン樹脂組成物からなるバイオマスポリオレフィン樹脂層を有することで、カーボンニュートラルを実現できること。」(【0002】、【0025】参照。以下「引用例3記載事項A」という。)
「バイオマスポリオレフィンとして、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーを重合して、適宜、低密度ポリエチレン(LDPE)を選択でき、シール層(第2のバイオマスポリオレフィン樹脂層23)の内側のコア層(第1のバイオマスポリオレフィン樹脂層22)に用いることができること。」(【0032】、【0033】、【0038】、【0067】、【0068】、【図2】参照。以下「引用例3記載事項B」という。)
「バイオマスポリオレフィン樹脂層は、バイオマス由来のエチレンをバイオマスポリオレフィン樹脂層全体に対して好ましくは5質量%以上、より好ましくは5~95質量%、さらに好ましくは25~75質量%含んでなり、バイオマスポリオレフィン樹脂組成物が、5~90質量%のバイオマス由来のポリオレフィンと、10~95質量%の化石燃料由来のポリオレフィンとを含んでもよいこと。」(【0032】参照。以下「引用例3記載事項C」という。)
第5 対比
本願発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・引用発明の「基材」は、本願発明の「基材層」に相当し、
以下同様に、
「低密度ポリエチレンを溶融状態で押し出」される「樹脂層」は、「ポリオレフィン樹脂層」に、
「最内層シーラント層として直鎖低密度ポリエチレンフィルム」は、「熱可塑性樹脂層」及び「ポリエチレンフィルム」に、
「積層体」は、「積層体」に、
それぞれ相当する。
・そして、引用例1の図1の各層の配置をみると、引用発明の「積層体」は、少なくとも「基材」、「樹脂層」、「熱可塑性樹脂層」を、この順に備えていることが分かるので、引用発明は、本願発明の「少なくとも、基材層と、ポリオレフィン樹脂層と、熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層体であ」る態様を備えるものである。
・引用発明の「基材として、ポリアミドフィルムを使用し」ていることは、本願発明の「前記基材層が、ポリプロピレンおよびポリアミドからなる群から選択される樹脂材料を含」んでいることに相当する。
・引用発明の「最内層シーラント層」は、最内層をなすものであり、引用例1の図1を併せてみると、引用発明の「基材」が最外層をなすものといえる。そうすると、引用発明は、本願発明の「前記熱可塑性樹脂層が、最内層を構成している」態様及び「前記基材層が、最外層を構成して」いる態様を備えるものである。
・引用発明の「低密度ポリエチレンを溶融状態で押し出して前記接着層上に樹脂層を積層し、同時に最内層シーラント層として直鎖低密度ポリエチレンフィルムを貼り合わせた」態様は、本願発明の「前記熱可塑性樹脂層は、前記ポリオレフィン樹脂層に接するポリエチレンフィルムからな」る態様に相当する。
・引用発明の「基材として、ポリアミドフィルムを使用」していることは、本願発明の「(但し、前記基材層が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなるバイオマスポリエステル樹脂組成物からなるバイオマスポリエステル樹脂層であって、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるバイオマスポリエステル樹脂層からなるものを除く)。」ことを満たす。
したがって、両者の間に次の一致点及び相違点が認められる。
[一致点]
「少なくとも、基材層と、ポリオレフィン樹脂層と、熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層体であって、前記基材層が、ポリプロピレンおよびポリアミドからなる群から選択される樹脂材料を含み、前記基材層が、最外層を構成しており、前記熱可塑性樹脂層は、前記ポリオレフィン樹脂層に接するポリエチレンフィルムからなり、前記熱可塑性樹脂層が、最内層を構成している、積層体(但し、前記基材層が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなるバイオマスポリエステル樹脂組成物からなるバイオマスポリエステル樹脂層であって、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるバイオマスポリエステル樹脂層からなるものを除く)。」
[相違点]
ポリオレフィン樹脂層について、本願発明は、「前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)のみで構成されるか、または、バイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)と化石燃料由来の低密度ポリエチレン(LDPE)との混合樹脂で構成され」、「前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であ」るのに対して、引用発明は、「低密度ポリエチレンを溶融状態で押し出して前記接着層上の樹脂層を積層」したものである点。
第6 判断
1 相違点についての判断
地球温暖化防止等の観点から、プラスチックや樹脂製品等の原料としてバイオマスを使用するようにすることは、一般的な課題であり、積層体に係るる引用例3記載事項Aも、この課題に沿ったものといえる。
引用例3記載事項Aは、「循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目され」、「積層体に、バイオマス由来のポリオレフィンを含んでなるバイオマスポリオレフィン樹脂組成物からなるバイオマスポリオレフィン樹脂層を有することで、カーボンニュートラルなポリオレフィン樹脂の積層体を実現できる」とするものであり、上記の地球温暖化防止等の観点からバイオマスを使用するようにするという一般的な課題の解決のため、積層体に係る引用発明においても、包装材等に用いられるポリエチレンの原料として、化石燃料由来のものからバイオマス由来のものに置換する動機があるといえる。
そして、引用例3記載事項Bによると、シール層の内側の層に、バイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)を用いることが記載されているから、同様に、引用発明の「最内層シーラント層」の内側の「低密度ポリエチレンを溶融状態で押し出して前記接着層上の樹脂層」を、バイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)で構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、引用例3記載事項Cの「バイオマスポリオレフィン樹脂層は、バイオマス由来のエチレンをバイオマスポリオレフィン樹脂層全体に対して好ましくは5質量%以上、より好ましくは5~95質量%、さらに好ましくは25~75質量%含」むものであり、さらに、「バイオマスポリオレフィン樹脂組成物が、5~90質量%のバイオマス由来のポリオレフィンと、10~95質量%の化石燃料由来のポリオレフィンとを含んでもよいこと」を参酌するに、ポリオレフィン樹脂層において、バイオマス由来のエチレンの含有割合は適宜調整できるものであるから、引用発明の「低密度ポリエチレン」をバイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)で構成する際に、引用発明において、上記相違点に係る「前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)のみで構成されるか、または、バイオマス由来の低密度ポリエチレン(LDPE)と化石燃料由来の低密度ポリエチレン(LDPE)との混合樹脂で構成され」、「前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上」とすることも、当業者が適宜なし得たことである。
2 効果について
そして、本願発明を全体としてみても、その奏する効果は、引用発明及び引用例3記載事項A~Cから、当業者が予測し得る範囲のものである。
3 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び引用例3記載事項A~Cに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-000552