特許異議申立
2020-701009
眼科撮影装置
- 審判番号
- 2020-701009
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-073730
- 登録番号
- 6720653
- 請求日
- 2020年12月24日
- 審決日
- 2021年10月11日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】株式会社ニデック
- 【権利者代理人】水越 邦仁
- 【権利者代理人】武藤 広晃
- 【異議申立人】天笠 勝
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 博之
- 審判官 ▲高▼見 重雄
- 審判官 渡戸 正義
- 分類
- P1651.113-ZC (A61B) / P1651.121-ZC (A61B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6720653号発明「眼科撮影装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6720653号の請求項1ないし3及び5に係る特許を取り消す。
同請求項4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6720653号の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成28年3月31日に出願され、令和2年6月22日にその特許権の設定登録がされ、同年7月8日に特許掲載公報が発行された。その後、全請求項に係る特許に対し、同年12月24日に特許異議申立人 天笠勝(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされ、当審は、請求項1ないし3及び5に係る特許について令和3年4月19日付けで取消理由を通知したが、特許権者からの応答はなかったものである。
第2 本件発明
特許第6720653号の請求項1~5の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明5」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
少なくとも1つのレンズを含む対物レンズ系と、光源から発せられた照明光を前記対物レンズ系を介して被検眼に照射する照射光学系と、前記被検眼による前記照明光の反射光を前記対物レンズ系を介して受光する受光素子を備える受光光学系と、を含む撮影光学系と、を備え、前記受光素子からの信号に基づいて撮影画像を生成する眼科撮影装置であって、
被検眼の正面画像を前記撮影画像として得る正面画像撮影手段と、
前記正面画像撮影手段で取得される前記被検眼の正面画像に対する背景画像であって,少なくとも前記対物レンズ系による反射像を含む背景画像を取得する背景画像取得手段と、
前記被検眼の正面画像と前記背景画像とに基づく背景差分を行い、差分画像として、前記被検眼の正面画像において前記反射像の影響が抑制された画像を生成する画像処理手段と、を備え、
前記正面画像撮影手段は、第1波長の照明光である第1照明光,および,前記第1波長とは異なる第2波長を持つ第2照明光,のそれぞれを前記照射光学系から前記被検眼に照射させて、前記第1照明光の反射光に基づく被検眼の第1正面画像と、前記第2照明光の反射光に基づく被検眼の第2正面画像と、を撮影し、
前記背景画像取得手段は、前記第1照明光に基づく背景画像である第1背景画像と、前記第2照明光に基づく背景画像である第2背景画像と、を取得し、
前記画像処理手段は、前記第1正面画像と前記第1背景画像とに基づく第1差分画像,および,前記第2正面画像と前記第2背景画像とに基づく第2差分画像,とを合成して合成差分画像を得る眼科撮影装置。
【請求項2】
少なくとも1つのレンズを含む対物レンズ系と、光源から発せられた照明光を前記対物レンズ系を介して被検眼に照射する照射光学系と、前記被検眼による前記照明光の反射光を前記対物レンズ系を介して受光する受光素子を備える受光光学系と、を含む撮影光学系と、を備え、前記受光素子からの信号に基づいて撮影画像を生成する眼科撮影装置であって、
被検眼の正面画像を前記撮影画像として得る正面画像撮影手段と、
前記正面画像撮影手段で取得される前記被検眼の正面画像に対する背景画像であって,少なくとも前記対物レンズ系による反射像を含む背景画像を取得する背景画像取得手段と、
前記被検眼の正面画像と前記背景画像とに基づく背景差分を行い、差分画像として、前記被検眼の正面画像において前記反射像の影響が抑制された画像を生成する画像処理手段と、を備え、
前記正面画像撮影手段は、第1波長の照明光である第1照明光,および,前記第1波長とは異なる第2波長を持つ第2照明光,のそれぞれを前記照射光学系から前記被検眼に照射させて、前記第1照明光の反射光に基づく第1正面画像と、前記第2照明光の反射光に基づく第2正面画像と、を撮影し、
前記背景画像取得手段は、前記第1照明光に基づく背景画像である第1背景画像と、前記第2照明光に基づく背景画像である第2背景画像と、を取得し、
前記画像処理手段は、前記第1正面画像と前記第2正面画像との第1合成画像と、前記第1背景画像と前記第2背景画像との合成画像と、に基づく背景差分によって合成差分画像を得る眼科撮影装置。
【請求項3】
少なくとも1つのレンズを含む対物レンズ系と、光源から発せられた照明光を前記対物レンズ系を介して被検眼に照射する照射光学系と、前記被検眼による前記照明光の反射光を前記対物レンズ系を介して受光する受光素子を備える受光光学系と、を含む撮影光学系と、を備え、前記受光素子からの信号に基づいて撮影画像を生成する眼科撮影装置であって、
被検眼の眼底の正面画像である眼底画像を前記撮影画像として得る眼底画像撮影手段と、
前記眼底画像撮影手段で取得される前記被検眼の眼底画像に対する背景画像であって,少なくとも前記対物レンズ系による反射像を含む背景画像を取得する背景画像取得手段と、
前記被検眼の眼底画像と前記背景画像とに基づく背景差分を行い、差分画像として、前記被検眼の眼底画像において前記反射像の影響が抑制された画像を生成する画像処理手段と、
眼底反射光による眼底画像を撮影するための第1撮影モードと、眼底から発せられた蛍光による眼底画像を撮影するための第2撮影モードと、に少なくとも前記光源を制御して切替える切換制御手段と、を備え、
前記画像処理手段は、前記第1撮影モードにおいて撮影された前記眼底画像に対しては前記背景差分を行い、前記第2撮影モードにおいて撮影された前記眼底画像に対しては前記背景差分を行わない眼科撮影装置。
【請求項4】
少なくとも1つのレンズを含む対物レンズ系と、光源から発せられた照明光を前記対物レンズ系を介して被検眼に照射する照射光学系と、前記被検眼による前記照明光の反射光を前記対物レンズ系を介して受光する受光素子を備える受光光学系と、を含む撮影光学系と、を備え、前記受光素子からの信号に基づいて撮影画像を生成する眼科撮影装置であって、
被検眼の正面画像を前記撮影画像として得る正面画像撮影手段と、
前記正面画像撮影手段で取得される前記被検眼の正面画像に対する背景画像であって,少なくとも前記対物レンズ系による反射像を含む背景画像を取得する背景画像取得手段と、
前記被検眼の正面画像と前記背景画像とに基づく背景差分を行い、差分画像として、前記被検眼の正面画像において前記反射像の影響が抑制された画像を生成する画像処理手段と、を備え、
前記撮影光学系は、前記撮影画像を第1の画角で撮影するための第1撮影モードと、前記撮影画像を前記第1の画角よりも狭い画角で撮影するための第2撮影モードとに、切り替え可能であり、
前記画像処理手段は、前記第1撮影モードにおいて撮影された前記被検眼の正面画像に対しては前記背景差分を行い、前記第2撮影モードにおいて撮影された前記被検眼の正面画像に対しては前記背景差分を行わない眼科撮影装置。
【請求項5】
少なくとも1つのレンズを含む対物レンズ系と、光源から発せられた照明光を前記対物レンズ系を介して被検眼に照射する照射光学系と、前記被検眼による前記照明光の反射光を前記対物レンズ系を介して受光する受光素子を備える受光光学系と、を含む撮影光学系と、を備え、前記受光素子からの信号に基づいて撮影画像を生成する眼科撮影装置であって、
被検眼の正面画像を前記撮影画像として得る正面画像撮影手段と、
前記正面画像撮影手段で取得される前記被検眼の正面画像に対する背景画像であって,少なくとも前記対物レンズ系による反射像を含む背景画像を取得する背景画像取得手段と、
前記被検眼の正面画像と前記背景画像とに基づく背景差分を行い、差分画像として、前記被検眼の正面画像において前記反射像の影響が抑制された画像を生成する画像処理手段と、を備え、
前記正面画像撮影手段と前記背景画像取得手段とは、第1の階調数で表現される前記被検眼の正面画像と前記背景画像とをそれぞれ取得し、
前記画像処理手段は、前記第1の階調数で表現される前記被検眼の正面画像と前記背景画像との背景差分を行い、前記第1の階調数よりも少ない第2の階調数で表現される差分画像を生成する眼科撮影装置。」
第3 申立理由の概要
1 申立人が主張する申立理由の要旨は、次のとおりである。甲第1号証~甲第10号証は、以下、それぞれ「甲1」~「甲10」という。
(1)本件発明1は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。また、本件発明1は、甲1に記載された発明、出願時の技術常識、及び周知技術(甲2、甲3)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)本件発明2は、甲1に記載された発明、出願時の技術常識、及び周知技術(甲2、甲3)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)本件発明3は、甲1に記載された発明、甲4に記載された技術事項、及び出願時の技術常識(甲5)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(4)本件発明4は、甲1に記載された発明、甲6に記載された技術事項、甲7に記載された技術事項、及び出願時の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(5)本件発明5は、甲1に記載された発明、甲8に記載された技術事項、及び周知技術(甲9、甲10)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 申立人が提出した証拠は、次のとおりである。
甲1:特開2004-16486号公報
甲2:特開平6-90906号公報
甲3:特開平8-71045号公報
甲4:特開2003-10129号公報
甲5:特開昭64-34324号公報
甲6:特開2015-144731号公報
甲7:特開2015-91309号公報
甲8:特開2010-194161号公報
甲9:特開2003-52639号公報
甲10:特開2005-270152号公報
第4 令和3年4月19日付け取消理由通知の概要
請求項1ないし3及び5に係る特許に対して、当審が令和3年4月19日付けの取消理由通知において特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(進歩性)請求項1ないし3及び5に係る発明は、次の引用文献に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし3及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
引用文献1:特開2004-16486号公報(甲1)
引用文献2:特開平6-90906号公報(甲2)
引用文献3:特開平8-71045号公報(甲3)
引用文献4:特開2006-101943号公報
引用文献5:特開2010-194161号公報(甲8)
第5 本件請求項1ないし3及び5に係る特許について
当審は、請求項1ないし3及び5に係る特許について令和3年4月19日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からの応答はなかった。
そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件請求項1ないし3及び5に係る特許は、この取消理由によって取り消すべきものである。
第6 本件請求項4に係る特許について
1 各甲号証等の記載
(1)甲1(引用文献1)について
ア 甲1の記載
甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下、同様。)。
(甲1ア)
「【0016】
【発明の実施の形態】
本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明を実施した眼底カメラの構成図である。被検眼Eの前方に、対物レンズ1、孔あきミラー2、この孔あきミラー2の孔中に配置した撮像絞り3、フォーカスレンズ4、交換により変倍可能な撮像レンズ5a、5b、撮像機構6が配列されている。
【0017】
孔あきミラー2の入射方向の眼底照明系としては、孔あきミラー2側から、角膜付近に投影するリング状開口を有する絞りである角膜絞り7、リレーレンズ8、光路に挿脱自在で赤外光をカットする赤外光カットフィルタ9、被検眼Eの水晶体後面付近に投影するリング状開口を有する絞りである水晶体絞り10、被検眼Eの瞳孔付近に投影するリング状の開口を有する絞りであるリング絞り11、ストロボ管から成る撮像光源12、コンデンサレンズ13、定常光を発するハロゲンランプ等の観察光源14が配列されている。
【0018】
撮像機構6は色分解プリズム15、撮像素子16r、16g、16bから成り、撮像素子16r、16g、16bのそれぞれの出力は、信号増幅回路17r、17g、17bを経て、画像ボード18r、18g、18bに接続されている。画像ボード18r、18g、18bは、赤、緑、青信号用のA/D変換部19r、19g、19b、画像メモリ20r、20g、20bから構成され、画像ボード18r、18g、18bの出力は画像制御手段21に接続されている。
【0019】
画像制御手段21には制御手段22、画像記録手段23、テレビモニタ24が接続されており、画像記録手段23はMO、MD、DVD?RAM、VTRテープ、ハードディスク等の不揮発性の記録媒体Dへの書き込み又は読み出しを行うドライブ装置とされている。
【0020】
制御手段22には、撮像スイッチ25、ストロボ発光制御回路26を介して撮像光源12、フォーカスレンズ4の位置を検知するフォーカスレンズ位置検知手段27が接続されており、制御手段22内にはメモリ22a、ストロボ発光制御回路26内には発光光量を制御するコンデンサ26aが内蔵されている。
【0021】
この眼底カメラを用いて被検眼Eの眼底Erを撮像する場合に、撮像者は被検者を正面に着座させ、被検眼Eの眼底Erを赤外光で観察しながら、被検眼Eと眼底カメラとの位置合わせを行う。また、図示しない変倍スイッチによって低倍撮像が選択された場合には低倍撮像用レンズ5aが光路内に配置され、また拡大撮像が選択された場合には、拡大撮像レンズ5bが光路内に配置される。この観察状態において、赤外光カットフィルタ9は光路から離脱されている。
【0022】
観察時に観察光源14を発した赤外光は、コンデンサレンズ13により集光され、撮像光源12、絞り11の開口を通過し、レンズ8、角膜絞り7の開口を通り、孔あきミラー2の周辺のミラー部により左方に反射され、対物レンズ1、瞳孔Epを通して眼底Erを照明する。赤外光で照明された眼底Erの像は、再び対物レンズ1、撮像絞り3、フォーカスレンズ4、撮像レンズ5a(5b)を通り、撮像機構6の色分解プリズム15に入射する。
【0023】
色分解プリズム15は赤外光と赤色光を撮像素子16rに、青色の光を撮像素子16bに、緑色の光を撮像素子16gに導くが、観察光は赤外光であるために撮像素子16rに結像し、電気信号に変換される。この信号は信号増幅回路17rで観察用に予め決められた増幅率で増幅され、画像制御手段21に入力されテレビモニタ24に表示される。
【0024】
この画像を観察し、撮像準備が整ったことを確認した撮像者は、撮像スイッチ25を操作する。撮像スイッチ25からの入力を検知した制御手段22は、赤外光カットフィルタ9を光路内に挿入し、ストロボ発光制御回路26によりコンデンサ26aの電荷を放電し撮像光源12を発光する。撮像光源12を発した光は絞り11のリング状開口、絞り10のリング状開口を通過し、赤外光カットフィルタ9により可視光のみが透過し、リレーレンズ8を通り孔あきミラー2の周辺のミラー部により左方に反射され、対物レンズ1、瞳孔Epを通して眼底Erを照明する。
【0025】
このように照明された眼底Erの像は、再び対物レンズ1、撮像絞り3、フォーカスレンズ4、撮像レンズ5a(5b)を通り、色分解プリズム15に入射して各色に分解され、撮像素子16r、16g、16bに結像し電気信号に変換される。これらの信号は信号増幅回路17r、17g、17bで予め決められた増幅率で増幅され、更にA/D変換部19r、19g、19bにおいてデジタル画像データに変換され、画像メモリ20r、20g、20bに一旦記憶される。同時に、フォーカスレンズ位置検知手段27は撮像時のフォーカスレンズ4の位置を検知し、検知した位置情報を制御手段22中のメモリ22aに記録する。メモリ22aにはフォーカスレンズ4の位置に対応して、照明光学系又は撮像光学系の内部の反射により生ずるパターン画像である補正パターン画像が、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色毎に記憶されている。
【0026】
図2(a)は例えば?12D(ディオプタ)に相当する補正パターン画像のG画像であり、中央部に対物レンズ1の反射像P1、及び周辺部に対物レンズ1の傷、泡、汚れ等による反射像P2がある。図2(b)は例えば?6Dに相当する補正パターンのG画像であり、撮像視度の違いにより反射像P3、P4は反射像P1、P2よりもコントラストが低くなっている。図2(c)は例えば0Dに相当する補正パターンのG画像であり、反射像P5、P6は更にコントラストが低く、また面積も広がっている。
【0027】
制御手段22は検知した視度情報及び補正パターン画像を基に、補正すべき画像を作成する。検知した視度情報をDk(D)とし、Dm(D)、dn(D)(Dm<Dk<Dn)の補正パターン画像が記憶されているとすると、アドレス(i,j)の補正パターン画像の画像データKr(Dk,i,j)、Kg(Dk,i,j)、Kb(Dk,i,j)を、以下の式から演算することができる。
Kr(Dk,i,j)={Kr(Dm,i,j)・(Dm-Dk)+Kr(dn,i,j)・(dn-Dk)}/(dn-Dm)
Kg(Dk,i,j)={Kg(Dm,i,j)・(Dm-Dk)+Kg(dn,i,j)・(dn-Dk)}/(dn-Dm)
Kr(Dk,i,j)={Kb(Dm,i,j)・(Dm-Dk)+Kb(dn,i,j)・(dn-Dk)}/(dn-Dm)(当審注:「Kr(Dk,i,j)」は、「Kb(Dk,i,j)」の誤記と認める。)
【0028】
このようにして求まった補正パターン画像には、テレビカメラのγ特性がかかっているため、γの逆変換を行う。逆変換後の補正画像データをKr’(Dk,i,j)、Kg’(Dk,i,j)、Kb’(Dk,i,j)とし、この画像を8ビット画像とすると、画像の最大値は255までの値をとり、更に撮像したテレビカメラのγ=0.45とすると、次式となる。
Kr’(Dk,i,j)=255・{Kr(Dk,i,j)/255}(1/0.45)
Kg’(Dk,i,j)=255・{Kr(Dk,i,j)/255}(1/0.45)
Kb’(Dk,i,j)=255・{Kr(Dk,i,j)/255}(1/0.45)
【0029】
また、補正パターン画像を撮像したときの照明光量をFoとし、被検眼Eを撮像したときの照明光量をFkとすると、補正後の補正画像データは以下のように演算することができる。
Kr”(Dk,i,j)=Kr’(Dk,i,j)・2(Fk-Fo)
Kg”(Dk,i,j)=Kg’(Dk,i,j)・2(Fk-Fo)
Kb”(Dk,i,j)=Kb’(Dk,i,j)・2(Fk-Fo)
【0030】
次に、撮像した眼底像もテレビカメラによりγ変換が行われているため、逆変換を行う。撮像された眼底像の(i,j)番地の画像データをFr(i,j)、Fg(i,j)、Fb(i,j)とし、γ逆変換後の画像データをFr”(i,j)、Fg”(i,j)、Fb”(i,j)とすると次式となる。
Fr”(i,j)=255・{(Fr(i,j)/255}(1/0.45)
Fg”(i,j)=255・{(Fg(i,j)/255}(1/0.45)
Fb”(i,j)=255・{(Fb(i,j)/255}(1/0.45)
【0031】
これらの画像データから補正パターン画像を減算し、再びγ変換を行って補正眼底画像を得る。即ち、補正後の眼底画像データをFcor_r(i,j)、Fcor_g(i,j)、Fcor_b(i,j)とすると、以下のように表すことができる。
Fcor_r(i,j)=255・{(Fr”(i,j)-Kr”(Dk,i,j))/255}(0.45)
Fcor_g(i,j)=255・{(Fg”(i,j)-Kg”(Dk,i,j))/255}(0.45)
Fcor_b(i,j)=255・{(Fb”(i,j)-Kb”(Dk,i,j))/255}(0.45)
図3のフローチャート図はこの撮像の流れを示している。
【0032】
このような画像の補正方法の考え方は、撮像レンズ5aを用いた低倍撮像の場合にも、撮影レンズ5bを用いた拡大撮像の場合にも同様である。そのとき、補正パターン画像を低倍、拡大それぞれ独立に記憶しておいてもよいし、低倍又は拡大の補正パターン画像の倍率を補正して用いてもよい。そのとき、低倍と拡大の撮像レンズの光軸が偏心している可能性があるので、この偏心量も記憶しておく必要がある。
【0033】
このように撮像した原画像には、図4(a)に示すように、中心部及び周辺部に眼底カメラ内部の光学系の反射により生じた反射像P7、P8が重なって映っているが、上記の演算により、図4(b)に示すようにこれらの反射像を取り除いた画像を得ることができ、この画像データを記録手段23により記録媒体Dに記録し、テレビモニタ27に表示して撮像を終了する。」
(甲1イ)
「【0050】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る眼科撮像装置は、照明光学系及び撮像光学系の内部反射により生ずる反射像を、撮像視度毎に補正パターン画像として記憶し、それらの画像を撮像視度、撮像光量により補正して眼底画像から除くことにより、撮像画像から余分な映り込みをなくすことができるため、画質を向上することができ、更には診断の精度を向上することができる。」
(甲1ウ)図1
[図:0001380940000001.jpg]
(甲1エ)図3
[図:0001380940000002.jpg]
(甲1オ)図4
[図:0001380940000003.jpg]
イ 甲1に記載された発明
上記アの記載及び図面から、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「 被検眼Eの前方に、対物レンズ1、孔あきミラー2、この孔あきミラー2の孔中に配置した撮像絞り3、フォーカスレンズ4、交換により変倍可能な撮像レンズ5a、5b、撮像機構6が配列されている、眼底カメラであって、
孔あきミラー2の入射方向の照明光学系としては、孔あきミラー2側から、光路に挿脱自在で赤外光をカットする赤外光カットフィルタ9、撮像光源12、観察光源14が配列されており、
撮像機構6は色分解プリズム15、撮像素子16r、16g、16bから成り、撮像素子16r、16g、16bのそれぞれの出力は、画像ボード18r、18g、18bに接続され、画像ボード18r、18g、18bは、赤、緑、青信号用のA/D変換部19r、19g、19b、画像メモリ20r、20g、20bから構成され、
制御手段22には、撮像スイッチ25、ストロボ発光制御回路26を介して撮像光源12、フォーカスレンズ4の位置を検知するフォーカスレンズ位置検知手段27が接続されており、制御手段22内にはメモリ22a、ストロボ発光制御回路26内には発光光量を制御するコンデンサ26aが内蔵されており、
変倍スイッチによって低倍撮像が選択された場合には低倍撮像用レンズ5aが光路内に配置され、また拡大撮像が選択された場合には、拡大撮像レンズ5bが光路内に配置され、
撮像準備が整ったことを確認した撮像者は、撮像スイッチ25を操作し、撮像スイッチ25からの入力を検知した制御手段22は、赤外光カットフィルタ9を光路内に挿入し、ストロボ発光制御回路26によりコンデンサ26aの電荷を放電し撮像光源12が発光し、撮像光源12が発した光は、赤外光カットフィルタ9により可視光のみが透過し、対物レンズ1、瞳孔Epを通して眼底Erを照明し、
このように照明された眼底Erの像は、再び対物レンズ1、撮像絞り3、フォーカスレンズ4、撮像レンズ5a(5b)を通り、色分解プリズム15に入射して各色に分解され、撮像素子16r、16g、16bに結像し電気信号に変換され、これらの信号は、更にA/D変換部19r、19g、19bにおいてデジタル画像データに変換され、画像メモリ20r、20g、20bに一旦記憶され、同時に、フォーカスレンズ位置検知手段27は撮像時のフォーカスレンズ4の位置を検知し、検知した位置情報を制御手段22中のメモリ22aに記録し、メモリ22aにはフォーカスレンズ4の位置に対応して、中央部に対物レンズ1の反射像、及び周辺部に対物レンズ1の傷、泡、汚れ等による反射像がある照明光学系又は撮像光学系の内部の反射により生ずるパターン画像である補正パターン画像が、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色毎に記憶されており、
制御手段22は、検知した視度情報をDk(D)とし、Dm(D)、dn(D)(Dm<Dk<Dn)の補正パターン画像が記憶されているとすると、アドレス(i,j)の補正パターン画像の画像データKr(Dk,i,j)、Kg(Dk,i,j)、Kb(Dk,i,j)を、以下の式から演算し、
Kr(Dk,i,j)={Kr(Dm,i,j)・(Dm-Dk)+Kr(dn,i,j)・(dn-Dk)}/(dn-Dm)
Kg(Dk,i,j)={Kg(Dm,i,j)・(Dm-Dk)+Kg(dn,i,j)・(dn-Dk)}/(dn-Dm)
Kb(Dk,i,j)={Kb(Dm,i,j)・(Dm-Dk)+Kb(dn,i,j)・(dn-Dk)}/(dn-Dm)
このようにして求まった補正パターン画像には、テレビカメラのγ特性がかかっているため、γの逆変換を行い、逆変換後の補正画像データをKr’(Dk,i,j)、Kg’(Dk,i,j)、Kb’(Dk,i,j)とし、この画像を8ビット画像とすると、画像の最大値は255までの値をとり、更に撮像したテレビカメラのγ=0.45とすると、次式となり、
Kr’(Dk,i,j)=255・{Kr(Dk,i,j)/255}(1/0.45)
Kg’(Dk,i,j)=255・{Kr(Dk,i,j)/255}(1/0.45)
Kb’(Dk,i,j)=255・{Kr(Dk,i,j)/255}(1/0.45)
また、補正パターン画像を撮像したときの照明光量をFoとし、被検眼Eを撮像したときの照明光量をFkとすると、補正後の補正画像データは以下のように演算し、
Kr”(Dk,i,j)=Kr’(Dk,i,j)・2(Fk-Fo)
Kg”(Dk,i,j)=Kg’(Dk,i,j)・2(Fk-Fo)
Kb”(Dk,i,j)=Kb’(Dk,i,j)・2(Fk-Fo)
次に、撮像した眼底像もテレビカメラによりγ変換が行われているため、逆変換を行い、撮像された眼底像の(i,j)番地の画像データをFr(i,j)、Fg(i,j)、Fb(i,j)とし、γ逆変換後の画像データをFr”(i,j)、Fg”(i,j)、Fb”(i,j)とすると次式となり、
Fr”(i,j)=255・{(Fr(i,j)/255}(1/0.45)
Fg”(i,j)=255・{(Fg(i,j)/255}(1/0.45)
Fb”(i,j)=255・{(Fb(i,j)/255}(1/0.45)
これらの画像データから補正パターン画像を減算し、再びγ変換を行って補正眼底画像を得、即ち、補正後の眼底画像データをFcor_r(i,j)、Fcor_g(i,j)、Fcor_b(i,j)とすると、以下のように表すことができ、
Fcor_r(i,j)=255・{(Fr”(i,j)-Kr”(Dk,i,j))/255}(0.45)
Fcor_g(i,j)=255・{(Fg”(i,j)-Kg”(Dk,i,j))/255}(0.45)
Fcor_b(i,j)=255・{(Fb”(i,j)-Kb”(Dk,i,j))/255}(0.45)
このような画像の補正は、撮像レンズ5aを用いた低倍撮像の場合にも、撮影レンズ5bを用いた拡大撮像の場合にも同様であり、
照明光学系及び撮像光学系の内部反射により生ずる反射像を、撮像視度毎に補正パターン画像として記憶し、それらの画像を撮像視度、撮像光量により補正して眼底画像から除くことにより、撮像画像から余分な映り込みをなくすことができるため、画質を向上することができ、更には診断の精度を向上することができる、
眼底カメラ。」
(2)甲2(引用文献2)について
甲2には、以下の事項が記載されている。
(甲2ア)
「【0003】(2) また従来、眼底カラー画像を赤、緑、青の3色に分解して、所謂カラー画像の画像処理を行う場合に、赤、緑、青に分解したバンド画像にそれぞれ画像処理を行っている。図16はその概要を示し、赤、緑、青に色分解してR1、G1、B1にデジタル化された原画像に対し、例えばエッジ強調等のデジタルフィルタ処理をし、R2、G2、B2というデジタル画像を作成する。この画像をD/A変換器を介し、モニタ上で重畳表示しカラー画像として出力している。」
(甲2イ)
「【0038】図4は眼底撮影装置を対象とした第2の実施例に係る画像処理の説明図である。眼底像Piは入力装置16において、赤、緑、青に色分解された後に、A/D変換され赤、緑、青色の各バンドごとにデジタル化された原画画像データPaを生成する。ここで、原画像データPaは原画バンド画像R1、G1、B1を有することになる。この原画バンド画像R1、G1、B1は線型結合回路17において、明度画像L1=r(R1)+g(G1)+b(B1)に変換される。画像間の演算式は、各画像において対応する画素ごとに表記の演算を行い、その結果として1つの画像データを生成することを意味するものとし、r、g、bは各画像の係数である。例えば、R1、G1、B1がNTSC系に色分解されている場合は、r=0.30、g=0.59、b=0.11である。
【0039】この明度画像L1に対して、画像処理回路18においてフィルタ処理、例えばエッジ強調処理であれば明度画像L1にラプラシアンを加算し、この結果を明度画像L2とする。次いで、除算器19において、明度画像L1と明度画像L2との各画素の比である明度比画像MをM=L2/L1により演算する。最後に乗算器20において、明度比画像Mを原画バンド画像R1、G1、B1に乗じて、処理バンド画像によりアナログ信号としR2、G2、B2を得るが、このR2、G2、B2が処理画像データPbとなる。処理バンド画像R2、G2、B2をD/A変換器21r、21g、21bを経て、RGBテレビモニタ22上に入力することにより処理結果眼底像Poが表示される。」
(甲2ウ)
「【0051】図13はRGB出力を有するカラーテレビカメラ28を用いた第4の実施例を示し、先の図6において3原色信号を処理するようになっている。この例において、輝度信号YはR、G、Bの各信号に信号固有の係数を乗じて重み付けをしたものの和、
Y=rR+gG+bB
として表される。一方、色信号は2種の色差信号S1、S2として表される。
【0052】この場合には、色信号選択装置29において輝度信号Yのみを出力するか、或いは輝度信号Y及び色差信号S1、S2を出力するかを選択をする。また、カラー画像を記録する際には、R、G、Bの信号を出力してもよい。更に、テレビカメラの代りに他の二次元光学変換素子を用いてもよく、この場合には各素子からの画素信号を読み出して画像を合成すればよい。」
(甲2エ)図4
[図:0001380940000004.jpg]
(3)甲3(引用文献3)について
甲3には、以下の事項が記載されている。
(甲3ア)
「【0022】また、図7~図9はそれぞれバンドパスフィルタ11a、11b、11cの分光透過特性のグラフ図であり、横軸は波長(nm)、縦軸は透過率T(%)を示している。バンドパスフィルタ11a、11b、11cはそれぞれ800~900nm、700~800nm、600~700nmの波長領域の光束を透過するようになっている。
【0023】バンドパスフィルタ11aを挿入したとき、光源1からの光束はリング絞り2の開口部、赤外光透過バンドパスフィルタ11aを通って、800~900nmの波長の光束以外は遮光され、リレーレンズ4を通り孔あきミラー5の周辺部で反射され、対物レンズ6を経て被検眼Eの瞳孔Epより入射して、被検眼Eの網膜Er及び脈絡膜Ecを照明する。このように、800~900nmの波長の光束により照明された網膜Er及び脈絡膜Ecでの反射光束は同じ光路を戻り、孔あきミラー5の開口部、結像レンズ7を通り、撮像手段12上に結像し映像信号に変換され、制御手段13により画像メモリ14に記憶される。
【0024】次に、撮影者はフィルタ11aをフィルタ11bに交換し同様に撮影を行う。この撮影により、700~800nmの波長の光束で照明された眼底像が、画像メモリ15に記憶される。更に、撮影者はフィルタ11bをフィルタ11cに交換し同様に撮影を行う。この撮影により、600~700nmの波長の光束で照明された眼底像が画像メモリ16に記憶される。
【0025】これら画像メモリ14~16の画像は、制御手段13に入力されて位置合わせが行われ、それぞれ青色画像、緑色画像、赤色画像として1枚のカラー画像に合成して、カラーテレビモニタ10に入力され静止画として映出される。」
(4)甲4について
甲4には、以下の事項が記載されている。
(甲4ア)
「【請求項1】 選択可能な複数の撮影モードを有する眼科撮影装置であって、被検眼を照明する照明系と、該照明系により照明した被検眼を撮像する撮像系と、該撮像系で撮像した画像をデジタルデータとして記憶するメモリと、該メモリのデータを設定に従って変換する変換部と、選択した前記撮影モードに応じて前記変換部の設定を変更する制御部とを有することを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項2】 前記複数の撮影モードは、カラー撮影と蛍光撮影を含む請求項1に記載の眼科撮影装置。」
(甲4イ)
「【0023】ここで、カラー撮影の場合には、バリアフィルタ4及びエキサイタフィルタ15を光路外に退避させ、蛍光撮影の場合には、バリアフィルタ4及びエキサイタフィルタ15を光路内に挿入するようにしておく。これらの選択は選択スイッチ29により行う。」
(5)甲5について
甲5には、以下の事項が記載されている。
(甲5ア)
「 本発明は、通常の撮影の際には、照明系にリング状絞りを配置し、被検眼前眼部からの有害な反射光を除去しなければならないのに対し、赤外螢光の撮影の際には、螢光剤が注入された血管から発する照明光の波長とはずれた赤外螢光の特定波長域の光のみを取り出すため、被検眼前眼部から直接反射された光束は有害光として撮影部に混入するおそれがないことに着目し、赤外螢光の撮影の際にはリング状絞りで光束を制限せずに広い断面積の光束で被検眼眼底を照明するように構成したことを特徴とするものである。」(第2頁左上欄第17行~右上欄第7行)
(6)甲6について
甲6には、以下の事項が記載されている。
(甲6ア)
「【請求項1】
光源から発せられた測定光を眼底上で走査するために測定光の進行方向を変える走査部と、被検眼と前記走査部との間に配置され、前記走査部から導かれた測定光が前記走査部の動作に伴って旋回される第1旋回点を形成する第1対物光学系と、を含み、前記第1旋回点を通過して被検眼眼底に導かれた測定光による眼底からの光を用いて被検眼の眼底の画像を撮像する眼底撮影装置において、
検査窓を有する前記眼底撮影装置の被検者側筐体面に装着されることによって、前記眼底の画像の撮像画角を広角化させる広角レンズアタッチメントを有し、
前記広角レンズアタッチメントには、該アタッチメントが前記筐体面に装着された装着状態において、前記第1旋回点を通過した測定光が前記走査部の動作に伴って更に旋回される第2旋回点を形成する第2対物光学系が設けられており、
前記第2対物光学系は、前記装着状態において、前記検査窓における測定光の主光線高さよりも高い位置にて前記第2対物光学系の光軸に向けて測定光を折り曲げるために配置されたレンズを少なくとも含むことを特徴とする眼底撮影装置。」
(7)甲7について
甲7には、以下の事項が記載されている。
(甲7ア)
「【0014】
図1は、第1実施形態の眼科撮影装置1が有する光学系を示している。本第1実施形態において、眼科撮影装置1は、走査型レーザー検眼鏡(Scanning Laser Opthalmoscope:SLO)を基本構成とする。なお、眼科撮影装置1は、光干渉断層計(OCT:Optical Coherence Tomography)、視野計などの他の眼科装置と一体化された装置であってもよい。
・・・
【0027】
また、本第1実施形態の眼科撮影装置1は、対物レンズ光学系16の各レンズを移動するレンズ移動機構(画角切換機構、撮影画角調節機構)17を有している。レンズ移動機構17は、対物レンズ光学系16の各レンズを、それぞれ任意の移動量で移動することができる。なお、説明の便宜上、本第1実施形態では、レンズ移動機構17は、単体のデバイスとして説明される。しかし、レンズ移動機構17の構成は、これに限定されない。例えば、レンズ移動機構17として、「それぞれが一枚のレンズを移動する、複数個のデバイス」が用いられてもよい。
【0028】
本第1実施形態では、「対物レンズ光学系16における各レンズの配置が、レンズ移動機構17によって変更されること」で、「投光光学系3から投光されるレーザー光の照射範囲、即ち、眼科撮影装置1(又は撮影光学系2)における撮影画角」が変更される。本第1実施形態の眼科撮影装置1は、撮影画角を、「第1画角と、第1画角よりも広い第2画角との、少なくとも2種類」の間で切り換えることができる。「本第1実施形態における、撮影画角が第1画角であるときの、各レンズ16aおよび16bの配置」を図2Aに示す。「本第1実施形態における、撮影画角が第2画角であるときの、各レンズ16aおよび16bの配置」を、図2Bに示す。以下、「撮影画角が第1画角であるときの、眼科撮影装置1の状態」を、狭角撮影モードと称する。「撮影画角が第2画角であるときの、眼科撮影装置1の状態」を、広角撮影モードと称する。」
(8)甲8(引用文献5)について
甲8には、以下の事項が記載されている。
(甲8ア)
「【0010】
本発明に係る眼科撮影装置によれば、被検眼の基画像データの空間分解能と階調分解能とを撮影モードに応じた最適なものとすることにより、その後の画像処理の最適化を行うことができ、読影の精度向上を達成できる。また、撮影モードにより不要となる冗長なデータを適度に圧縮することにより、装置の使い勝手を損うことがない。更に、最終の診断用画像としては、撮影モードの基画像データは後段の画像処理により取り扱いが容易で、かつモニタの階調表現に適した階調分解能に変換されるため、撮影モードに拘らず、統一的な扱いが可能となる。」
(甲8イ)
「【0020】
先ず、カラー撮影モードにおいては、検者は撮影モード選択手段13によりカラー撮影モードを選択する。この操作により、眼底カメラ制御部14はフィルタをカラー撮影用に変更する。撮影が行われると、デジタルカメラ11内の基画像データ生成部19は、撮像された原画像を階調分解能は原画像の例えば12bit・3(RGB)のまま、空間分解能を減ずる画素加算等の処理を実行する。更に、必要に応じて可逆圧縮を施した基画像データS1を生成する。
【0021】
その後に、基画像データS1は通信経路3を通ってパーソナルコンピュータ2の画像処理部22に転送される。転送された基画像データS1に対して各撮影モードに従った階調変換が施され、最終的には画像表示部21に適した階調分解能、例えば一般的には8bit・3のカラー診断用画像を生成し、画像表示部21に表示する。なお、ここで行われる画像処理プロセスを第1の処理とする。」
(9)甲9について
甲9には、以下の事項が記載されている。
(甲9ア)
「【請求項1】 被検眼を撮影する撮像手段と、該撮像手段からの出力を保存する画像メモリと、該画像メモリの画像を表示する表示手段とを有する眼科撮影装置において、前記画像メモリのデータを予め設定した設定値に従って変換する変換手段と、該変換手段の設定値を変更する制御手段とを有し、前記変換手段により前記画像メモリの同一画像データを複数の設定値で変換して、それぞれの画像ファイルを生成することを特徴とする眼科撮影装置。
・・・
【請求項3】 前記変換手段は入力の階調数を出力の階調数よりも多くする請求項1に記載の眼科撮影装置。」
(甲9イ)
「【0034】図6は輝度範囲Iの部分を強調するよう設定したルックアップテーブル21を示し、D、Eはそれぞれ図5のD、Eに相当する。ここで、ルックアップテーブル21の入力ビット数を、出力ビット数よりも多くするように、例えばA/D変換時のビット数である10ビット入力に対して、8ビットを出力するように構成することによって、ビット数変換による関心領域の情報の損失を少なくすることができる。」
(10)甲10について
甲10には、以下の事項が記載されている。
(甲10ア)
「【0003】
具体的には、撮影用センサーユニットで光電変換された眼底画像を画像メモリに格納した後、視神経乳頭部と黄斑部の最大輝度、最小輝度より決定した、視神経乳頭部と黄斑部のコントラストを上げるルックアップテーブル(LUT)により階調変換して画像を保存している。撮影用センサーユニットで光電変換された眼底画像とLUTにより階調変換された眼底画像の階調数を同じにすることもできるが、撮影用センサーユニットで光電変換された眼底画像の階調数の方を多くすることにより、視神経乳頭部と黄斑部の有効な情報が多く得られる。例えば、撮影用センサーユニットで光電変換された眼底画像の階調数をR、G、Bそれぞれ各画素10ビット、LUTにより階調変換された眼底画像の階調数をR、G、Bそれぞれ各画素8ビットとすることが多い。」
(11)引用文献4について
引用文献4には、以下の事項が記載されている。
(引4ア)
「【0013】
図3は、波長分離光学系(ダイクロイックミラー34及び35)によって3つの撮像素子36a~36cに受光される光の波長成分の特性を説明する図である。ダイクロイックミラー34は、380nm~520nmの波長域で450nmをピークとする可視光を反射し、それ以外の波長成分の光を透過する特性を持つ。よって、ダイクロイックミラー34の反射側の波長分離光路に配置された撮像素子36aには、青色成分をピークに持つ光が受光される。ダイクロイックミラー35は、520nm~600nmの波長域で570nmをピークとする可視光と、さらに800nm~900nmの波長域で850nmをピークとする赤外光とを選択的に透過し、560nm~750nmの波長域で600nmをピークとする可視光を選択的に反射する特性を持つ。よって、ダイクロイックミラー35の反射側の波長分離光路に配置された撮像素子36bには、赤色成分をピークに持つ光が受光される。また、ダイクロイックミラー35の透過側の波長分離光路に配置された撮像素子36cには、緑色成分をピークに持つ光と、ICG蛍光の赤外光が受光される。すなわち、撮像素子36cは、FAG撮影時にはフルオレセインの蛍光波長である緑色成分が受光され、ICG撮影時にはイントシアニングリーンの蛍光波長である赤外成分が受光されるように構成されている。このような構成とすれば、可視蛍光撮影と赤外蛍光撮影を一つの撮像素子36cにより行うことができるため、装置制御が容易となる。なお、ICG蛍光撮影用の800nm~900nmの分離光路は、3つの撮像素子36a~36cの何れかの一つの光路であれば良い。
・・・
【0017】
撮像素子36a~36cの出力は画像処理部80に接続されている。画像処理部80は、カラー照明光学系10aを用いたカラー撮影・観察時においては、撮像素子36a~36cから検出される撮像信号に基づいてカラー画像をモニタ8に表示するとともに、制御部81へ撮像素子36a~36cから検出される撮像データを送信する。また、制御部81は、静止画撮影を行った時の撮像素子36a~36cの撮像データをメモリ82に記憶する。なお、動画画像をメモリ82に記憶するような構成としてもよい。
・・・
【0020】
以上のような構成を備える眼底カメラにおいて、その動作を説明する。
モード選択スイッチ83により、カラー撮影モードが選択されている時は、カラー照明光学系10aの観察光源11aの発光によりモニタ8による動画観察が行われ、撮影開始スイッチ85の入力により撮影光源13aが発光してカラー静止画撮影が行われる。すなわち、カラー撮影時には、撮影開始スイッチ85のトリガ信号により、制御部81は撮影光源13aを発光し、3つの撮像素子36a~36cからの画像信号が画像処理部80により処理されて得られたカラー画像をメモリ82に記憶する。また、ICG撮影モードもしくはFAG撮影モードが選択されている時は、励起照明光学系10bの観察光源11bの発光によりモニタ8による動画観察が行われ、撮影開始スイッチ85の入力により撮影光源13bが発光して静止画撮影が行われる。すなわち、FAG時には、撮影開始スイッチ85のトリガ信号により、制御部81は撮影光源13bを発光し、撮像素子36cからの画像信号が画像処理部80により処理されて得られた可視蛍光画像をメモリ82に記憶する。同じく、ICG撮影時には、撮影開始スイッチ85のトリガ信号により、制御部81は撮影光源13bを発光し、撮像素子36cからの画像信号が画像処理部80により処理されて得られ赤外た蛍光画像をメモリ82に記憶する。」
2 当審の判断
(1)対比
本件発明4と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「対物レンズ1」は、本件発明4の「少なくとも1つのレンズを含む対物レンズ系」に相当する。
イ 甲1発明の「撮像光源12が発した光」により「対物レンズ1、瞳孔Epを通して眼底Erを照明」する「照明光学系」は、本件発明4の「光源から発せられた照明光を前記対物レンズ系を介して被検眼に照射する照射光学系」に相当する。
ウ 甲1発明の「照明された眼底Erの像は、再び対物レンズ1」「を通り、」「撮像素子16r、16g、16bに結像」する「撮像光学系」は、本件発明4の「前記被検眼による前記照明光の反射光を前記対物レンズ系を介して受光する受光素子を備える受光光学系」に相当する。
エ 上記ア~ウを踏まえると、甲1発明の「対物レンズ1」と、「撮像光源12が発した光」により「対物レンズ1、瞳孔Epを通して眼底Erを照明」する「照明光学系」と、「照明された眼底Erの像は、再び対物レンズ1」「を通り、」「撮像素子16r、16g、16bに結像」する「撮像光学系」と、を含む系は、「眼底カメラ」の「光学系」であるから、本件発明4の「少なくとも1つのレンズを含む対物レンズ系と、光源から発せられた照明光を前記対物レンズ系を介して被検眼に照射する照射光学系と、前記被検眼による前記照明光の反射光を前記対物レンズ系を介して受光する受光素子を備える受光光学系と、を含む撮影光学系」に相当する。
オ 甲1発明の「眼底Erの像は、」「撮像素子16r、16g、16bに結像し電気信号に変換され、これらの信号は、」「画像データに変換され」ることは、「眼底画像」を得ることであるから、本件発明4の「前記受光素子からの信号に基づいて撮影画像を生成する」ことに相当する。
カ 甲1発明の「眼底カメラ」は、本件発明4の「眼科撮影装置」に相当する。
キ 上記オのとおり、甲1発明では「眼底画像」を得ることから、甲1発明の「眼底画像」は、本件発明4の「正面画像」に相当するところ、甲1発明は、本件発明4の「被検眼の正面画像を前記撮影画像として得る正面画像撮影手段」に相当する構成を備えているといえる。
ク 甲1発明では、「中央部に対物レンズ1の反射像、及び周辺部に対物レンズ1の傷、泡、汚れ等による反射像がある」「照明光学系及び撮像光学系の内部反射により生ずる反射像を、撮像視度毎に補正パターン画像として記憶し、それらの画像を」、「眼底画像」を得ると「同時に」「検知した」「撮像視度、撮像光量により補正」するところ、甲1発明の「撮像視度、撮像光量により補正」した「補正パターン画像」は、本件発明4の「背景画像」に相当するから、甲1発明は、本件発明4の「前記正面画像撮影手段で取得される前記被検眼の正面画像に対する背景画像であって,少なくとも前記対物レンズ系による反射像を含む背景画像を取得する背景画像取得手段」に相当する構成を備えているといえる。
ケ 甲1発明では、「中央部に対物レンズ1の反射像、及び周辺部に対物レンズ1の傷、泡、汚れ等による反射像がある」「照明光学系及び撮像光学系の内部反射により生ずる反射像を、撮像視度毎に補正パターン画像として記憶し、それらの画像を」、「眼底画像」を得ると「同時に」「検知した」「撮像視度、撮像光量により補正して眼底画像から除くことにより、撮像画像から余分な映り込みをなく」した「補正眼底画像を得」るところ、甲1発明の「補正眼底画像」は、本件発明4の「差分画像」に相当するから、甲1発明は、本件発明4の「前記被検眼の正面画像と前記背景画像とに基づく背景差分を行い、差分画像として、前記被検眼の正面画像において前記反射像の影響が抑制された画像を生成する画像処理手段」に相当する構成を備えているといえる。
コ 広角の「低倍撮像」と狭角の「拡大撮像」とは、撮影画角が異なるところ、甲1発明の「低倍撮像が選択された場合」及び「拡大撮像が選択された場合」は、それぞれ、本件発明4の「前記撮影画像を第1の画角で撮影するための第1撮影モード」及び「前記撮影画像を前記第1の画角よりも狭い画角で撮影するための第2撮影モード」に相当するから、甲1発明の「変倍スイッチによって低倍撮像が選択された場合には」、「撮像光学系」の「低倍撮像用レンズ5aが光路内に配置され、また拡大撮像が選択された場合には、」「撮像光学系」の「拡大撮像レンズ5bが光路内に配置され」ることは、本件発明4の「前記撮影光学系は、前記撮影画像を第1の画角で撮影するための第1撮影モードと、前記撮影画像を前記第1の画角よりも狭い画角で撮影するための第2撮影モードとに、切り替え可能であ」ることに相当する。
サ 甲1発明では、「眼底」「画像の補正は、撮像レンズ5aを用いた低倍撮像の場合にも、撮影レンズ5bを用いた拡大撮像の場合にも同様」に行うことから、甲1発明は、本件発明4の「前記画像処理手段は、前記第1撮影モードにおいて撮影された前記被検眼の正面画像に対しては前記背景差分を行い、前記第2撮影モードにおいて撮影された前記被検眼の正面画像に対しては前記背景差分を行わない」こととは、「前記画像処理手段は、前記第1撮影モードにおいて撮影された前記被検眼の正面画像に対しては前記背景差分を行」う点に相当する構成を備えているといえる。
よって、本件発明4と甲1発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。
(一致点)
「 少なくとも1つのレンズを含む対物レンズ系と、光源から発せられた照明光を前記対物レンズ系を介して被検眼に照射する照射光学系と、前記被検眼による前記照明光の反射光を前記対物レンズ系を介して受光する受光素子を備える受光光学系と、を含む撮影光学系と、を備え、前記受光素子からの信号に基づいて撮影画像を生成する眼科撮影装置であって、
被検眼の正面画像を前記撮影画像として得る正面画像撮影手段と、
前記正面画像撮影手段で取得される前記被検眼の正面画像に対する背景画像であって,少なくとも前記対物レンズ系による反射像を含む背景画像を取得する背景画像取得手段と、
前記被検眼の正面画像と前記背景画像とに基づく背景差分を行い、差分画像として、前記被検眼の正面画像において前記反射像の影響が抑制された画像を生成する画像処理手段と、を備え、
前記撮影光学系は、前記撮影画像を第1の画角で撮影するための第1撮影モードと、前記撮影画像を前記第1の画角よりも狭い画角で撮影するための第2撮影モードとに、切り替え可能であり、
前記画像処理手段は、前記第1撮影モードにおいて撮影された前記被検眼の正面画像に対して前記背景差分を行う、眼科撮影装置。」
(相違点)
画像処理手段において、本件発明4では、第1の画角で撮影するための第1撮影モードにおいて 撮影された被検眼の正面画像に対しては背景差分を行い、「第1の画角よりも狭い画角で撮影するための」「第2撮影モードにおいて撮影された前記被検眼の正面画像に対しては前記背景差分を行わない」のに対し、甲1発明では、「撮像レンズ5aを用いた低倍撮像の場合にも、撮影レンズ5bを用いた拡大撮像の場合にも」「眼底」「画像の補正」を行う点。
(2)判断
上記相違点について検討する。
上記相違点に係る本件発明4の構成のように、広い画角で撮影した正面画像については背景差分を行い、狭い画角で撮影した正面画像については背景差分を行わない点について、上記甲2~10及び引用文献4に記載も示唆もなく、当該構成が周知技術であるという証拠も見当たらない。
さらに、甲1発明は、そもそも場合分けをしないで、画像の補正を行う(背景差分を行う)ことが前提となっているから、画像の補正を行わない場合を設ける動機付けはないというべきである。
したがって、上記相違点に係る本件発明4の構成は、甲1発明、及び甲2~甲10、引用文献4に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
ここで、申立人は、異議申立書において「一般に広角で眼底を撮影した場合には対物レンズの反射光の映り込みが問題になりやすく、狭角で眼底を撮影した場合には対物レンズの反射光の映り込みが問題になりにくい。また、二つの撮影モードが用意されている眼科撮影装置において、どちらか一方の撮影モードで撮影した眼底画像にのみ背景差分を行うのは単なる設計事項に過ぎない。」と主張する(第36頁下から2行目~第37頁第5行)。
しかしながら、広角と比べて狭角で眼底を撮影した場合には対物レンズの反射光の映り込みが問題になりにくいことを示す証拠は提示されていない。仮に、申立人が上記で主張するように「狭角で眼底を撮影した場合には対物レンズの反射光の映り込みが問題になりにくい」ことが、よく知られた事実であったとしても、甲1発明は、上記したように「撮像画像から余分な映り込みをなくす」ために、「撮像レンズ5aを用いた低倍撮像の場合にも、撮影レンズ5bを用いた拡大撮像の場合にも」「眼底」「画像の補正」を行うことが前提となっているから、甲1発明において、狭い画角(拡大撮像)の場合に眼底画像の補正を行わないようにすることは、上記した動機付けの欠如のみならず、甲1発明の「撮像画像から余分な映り込みをなくす」という課題が解決できないことになり、阻害要因もあるというべきである。
よって、請求人の主張は採用できない。
(3)小括
したがって、本件発明4は、当業者であっても、甲1発明、及び甲2~甲10、引用文献4に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
第7 むすび
以上のとおり、令和3年4月19日付けの取消理由は妥当なものと認められるので、本件請求項1ないし3及び5に係る特許は、この取消理由によって取り消すべきものである。
また、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項4に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に本件請求項4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-701009