特許異議申立
2020-700932
断熱方法と、固定及びキルトされた断熱材を含む衣服
- 審判番号
- 2020-700932
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-505237
- 登録番号
- 6702937
- 請求日
- 2020年12月01日
- 審決日
- 2022年01月19日
- 公報発行日
- 2022年04月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】パタゴニア・インコーポレイテッド
- 【権利者代理人】冨所 剛
- 【権利者代理人】水野 勝文
- 【権利者代理人】井出 真
- 【権利者代理人】須澤 洋
- 【権利者代理人】久松 洋輔
- 【異議申立人】柏木 里実
- 審判長/審判官
- 審判長 久保 克彦
- 審判官 平野 崇
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P1651.113-YAA(A41D) / P1651.121-YAA(A41D) / P1651.161-YAA(A41D) / P1651.537-YAA(A41D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第29条の2、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第41条第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6702937号発明「断熱方法と、固定及びキルトされた断熱材を含む衣服」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6702937号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~18〕について訂正することを認める。
特許第6702937号の請求項1ないし18に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6702937号の請求項1~18に係る特許についての出願は、平成27年7月28日(パリ条約による優先権主張2014年(平成26年)7月29日 米国)を国際出願日とする出願であって、令和2年5月11日にその特許権の設定登録がされ、同年6月3日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、同年12月1日に特許異議申立人柏木里実(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされ、令和3年4月9日付けで当審より期間を指定して取消理由が通知され、その指定期間内である同年7月12日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)がされたものである。
なお、本件訂正請求について、期間を指定して申立人に意見書を提出する機会を与えたが、当該期間内に申立人からは何ら応答がなかった。
第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
本件訂正請求は、特許第6702937号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~18について訂正することを求める、というものであって、その内容は以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1の「前記複数の繊維の一部と、第一のバンドル構造物及び第二のバンドル構造物の長手方向軸に概ね沿って延びる繊維の長手方向軸と、をそれぞれ含むように前記第一のバンドル構造物(230;330)及び前記第二のバンドル構造物(230;330)を形成するために、前記複数の繊維の少なくとも一部(220)を配置すること」との記載を、「第一のバンドル構造物(230;330)及び第二のバンドル構造物(230;330)を形成するために、前記複数の繊維の少なくとも一部(220)を配置すること」との記載に訂正する。
また、特許請求の範囲の請求項1に「前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物はそれぞれ、前記複数の繊維の一部と、前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物の長手方向軸に概ね沿って延びる繊維の長手方向軸と、を含み、」との記載を追加する訂正を行う。
(2)訂正事項2
訂正前の請求項3の「前記複数のバンドルチャネルキルティングステッチ線(102,302)は、前記第一の生地層(340)と第二の生地層(350)を結び付け」との記載を、「前記複数のバンドルチャネルキルティングステッチ線は、前記第一の生地層(340)と第二の生地層(350)を結び付け」との記載に訂正する。
(3)訂正事項3
訂正前の請求項7の「少なくとも30の糸(220)を含む」との記載を、「少なくとも30本の糸(220)を含む」との記載に訂正する。
(4)訂正事項4
訂正前の請求項13の「前記キルティングステッチ線(102,302)は、前記第一及び前記第二のバンドル構造物(230,330)の双方を横断して延びる」との記載を、「前記第一のキルティングステッチ線(102,302)は、前記第一及び前記第二のバンドル構造物(230,330)の双方を横断して延びる」との記載に訂正する。
(5)一群の請求項
訂正前の請求項1~18について、請求項2~18は、請求項1を直接的または間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1の記載に連動して訂正されるものであるから、本件訂正請求による訂正は、一群の請求項ごとにされたものである。
2 訂正要件の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1において、「第一のバンドル構造物及び第二のバンドル構造物」を主語とすることにより、「複数の繊維の一部」と、「第一のバンドル構造物及び第二のバンドル構造物の長手方向軸に概ね沿って延びる繊維の長手方向軸」は「第一のバンドル構造物及び第二のバンドル構造物」に含まれる構成であること、「複数の繊維の少なくとも一部(220)」は、「第一のバンドル構造物(230;330)及び第二のバンドル構造物(230;330)を形成するため」に配置されることが、不明確な記載であったのを、明確となるように訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項1のうち、バンドル構造物が「複数の繊維の一部と、バンドル構造物内に含まれている繊維の各々の長手方向軸と概ね平行な長手方向軸と、を含む」ことは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の【0007】に記載されており、また、「複数の繊維の少なくとも一部」を「バンドル構造物内に配置する」ことも同段落に記載されているから、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項1は、上記ア及びイで検討したとおり、本件明細書等に記載された事項の範囲内で特許請求の範囲の明瞭でない記載が明瞭となるように訂正するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項3において、「前記複数のバンドルチャネルキルティングステッチ線(102,302)は」と記載された結果、「前記」が指す内容が、符号「102,302」が一致する請求項1に記載の「第一のキルティングステッチ線(102,302)」であるか、名称が一致する請求項3に記載の「複数のバンドルキルティングステッチ線」であるかが明確でなかったところ、請求項3に記載の「複数のバンドルキルティングステッチ線」と整合するように、請求項3の記載から部材番号を削除して「前記複数のバンドルチャネルキルティングステッチ線は」と訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
本件明細書等には、「バンドルチャネル長手方向軸と概ね平行な複数のバンドルチャネルキルティングステッチ線」について「バンドルチャネルは、第一の素材層940及び第二の素材層950の中にキルティングステッチ線902を縫うことで形成される。バンドルはバンドルチャネル内に整列し、キルティングステッチ線はバンドルと概ね平行である。」(【0073】)ことが記載されているから、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項2は、上記ア及びイで検討したとおり、本件明細書等に記載された事項の範囲内で特許請求の範囲の明瞭でない記載が明瞭となるように訂正するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項7において、「少なくとも30の糸(220)」と記載され、数値の単位が明らかにされていない結果、「糸」についてどのような量を特定しているかが明確でなかったところ、以下のイに示すように、本件特許明細書にて少なくとも示唆される本数であることを明確にするために、「本」を「少なくとも30」に後続させる訂正をするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
本件明細書等には、「バンドル330は、2以上の撚糸を有してよく、好ましくは、少なくとも20の撚糸を有してよい。多かれ少なかれ、撚糸は、特定の衣服に所望される断熱特性に依存して、各バンドルに用いられている。」(【0035】)、「好ましい実施形態では、およそ30の撚糸が一つのバンドルを形成する。各バンドルチャネルは、30の撚糸を含む一つのバンドルを保持する。しかしながら、他の実施形態ではそれほどに制限しておらず、バンドル当たりの撚糸の密度は、バンドルチャネル当たりのバンドル密度と同様に、衣服での要求に応じて変更してよい。」(【0048】)、「バンドルチャネル380を含む各バンドルチャネルが、適切な数の束ねられた撚糸を保持した後、キルティングステッチ線302は、バンドルチャネルを横断して縫われて、チャネル326を形成してよい。」(【0050】)ことが記載されており、単位までは明示されていないものの、「30」等の当該数量がバンドルを形成する撚糸の数量、撚糸の密度、束ねられた撚糸の数を表すものであることが少なくとも理解できるから、当該数量の単位は、本数あることは当業者にとって自明であるから、訂正事項3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項3は、上記ア及びイで検討したとおり、本件明細書等に記載された事項の範囲内で特許請求の範囲の明瞭でない記載が明瞭となるように訂正するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4は、訂正前の請求項13において、「前記キルティングステッチ線(102,302)は、前記第一及び前記第二のバンドル構造物(230,330)の双方を横断して延びる」と記載された結果、「前記」が指す内容が、符号が一致する請求項1に記載の「第一のキルティングステッチ線(102,302)」であるか、名称が部分的に一致する請求項3に記載の「複数のバンドルキルティングステッチ線」であるかが明確でなかったところ、請求項1に記載の「第一のキルティングステッチ線」と整合するように、「第一の」の記載を追加するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
本件明細書等には、「様々な実施形態において、第一のキルティングステッチ線は、撚糸及び/又はバンドルの長手方向軸を横断する。好ましい実施形態では、第一のキルティングステッチ線は、図3B及び図3Cに示すように、撚糸の長手方向軸に対して直交する。」(【0053】)ことが記載されているから、訂正事項4は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項4は、上記ア及びイで検討したとおり、本件明細書等に記載された事項の範囲内で特許請求の範囲の明瞭でない記載が明瞭となるように訂正するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 小括
以上のとおりであるから、訂正事項1~4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第4項、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
第3 訂正後の本件発明
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~18に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~18を「本件発明」と総称することもある。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~18に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
複数の繊維を含む断熱材を固定する方法であって、前記方法は、
第一のバンドル構造物(230;330)及び第二のバンドル構造物(230;330)を形成するために、前記複数の繊維の少なくとも一部(220)を配置することと、
前記第一のバンドル構造物の長手方向軸及び前記第二のバンドル構造物の長手方向軸が概ね同じ方向に延び、前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物は第一の生地層(340)と第二の生地層(350)の中間に配置され、前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物の短手方向において前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物が交互に連続して並ぶように、互いに並びかつ互いに孤立していない各バンドルチャネルに、前記第一のバンドル構造物または前記第二のバンドル構造物を保持することと、
前記第一のバンドル構造物の前記長手方向軸及び前記第二のバンドル構造物の前記長手方向軸に対して概ね横断する第一のキルティングステッチ線(102,302)を形成することと、を備え、
前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物はそれぞれ、前記複数の繊維の一部と、前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物の長手方向軸に概ね沿って延びる繊維の長手方向軸と、を含み、
前記第一のキルティングステッチ線は、前記第一のキルティングステッチ線と平行な方向において前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物の少なくとも1つを前記第一のキルティングステッチ線によって固定するために、前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物の少なくとも一つを、前記第一の生地層及び前記第二の生地層の少なくとも一つに結びつけることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記方法はさらに、
第一の生地層の一部(340)と第二の生地層の一部(350)とによって定義され、バンドルチャネル長手方向軸を含む、少なくとも1つのバンドルチャネル(380)を形成することと、
前記第一のバンドル構造物が前記第一の生地層と前記第二の生地層の中間に配置されて、前記第一のバンドル構造物の長手方向軸が前記バンドルチャネル長手方向軸と概ね平行となるように、前記第一のバンドル構造物(330)を前記少なくとも1つのバンドルチャネル内で少なくとも部分的に保持することと、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのバンドルチャネル(380)は、バンドルチャネル長手方向軸と概ね平行な複数のバンドルチャネルキルティングステッチ線によって形成され、前記複数のバンドルチャネルキルティングステッチ線は、前記第一の生地層(340)と前記第二の生地層(350)を結びつけ、前記バンドルチャネルキルティングステッチ線の長さは、少なくとも1つの前記バンドルチャネルの側の長さに達しないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法はさらに、前記複数の繊維のロフト又は、前記第一の生地層と前記第二の生地層から構成される衣服の耐久性のうち、少なくとも1つに基づく所定の距離だけ、前記第一のキルティングステッチ線(102,302)から離隔して設けられる第二のキルティングステッチ線を形成することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記所定の距離は、2インチから4インチであることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記方法はさらに、前記第一の生地層(340)の第一の縁部に並んで配置される第一の複数のタック(360,362)と、前記第一の生地層の第二の縁部に並んで配置される、対応する第二の複数のタック(370,372)と、によって複数のバンドルチャネル(380)を形成することを含み、
前記第一の複数のタックにおいて、連続するタックは、所定の距離だけ離隔し、
前記第二の複数のタックの各々は、前記第一の複数のタックにおいて対応するタックと位置合わせをされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第一及び前記第二のバンドル構造物(230,330)の各々は、少なくとも30本の糸(220)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第一のキルティングステッチ線(102,302)の形成前に、複数のバンドルチャネル(380)が保持する複数のバンドル構造物の配置を少なくとも部分的に固定するように、前記複数のバンドルチャネル(380)が構成されて配置されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第一の生地層及び前記第二の生地層から構成される衣服は、パーカー(100)、ズボン(110)、又は寝袋(116)のうちの少なくとも一つであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第一の生地層及び前記第二の生地層から構成される衣服を着用したとき、前記第一のキルティングステッチ線(102,302)は概ね水平であり、前記バンドル構造物(230,330)の前記長手方向軸は概ね垂直であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記方法はさらに、前記第一の生地層(1040)と前記第二の生地層(1050)の中間の停滞空気の体積を増やすために、前記第一及び前記第二のバンドル構造物(1030)の各々を束ねることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記方法はさらに、
第一の生地層の一部(340,1040)と第二の生地層の一部(350,1050)とによって定義され、バンドルチャネル長手方向軸を含む、少なくとも1つの第一のバンドルチャネル(380)及び第二のバンドルチャネル(380)を形成することと、
前記第一のバンドル構造物が前記第一の生地層と前記第二の生地層の中間に配置されて、前記第一のバンドル構造物を前記第一のバンドルチャネル内で束ねるために、前記第一のバンドル構造物(230,330,1030)を前記第一のバンドルチャネル内で少なくとも部分的に保持することと、
前記第二のバンドル構造物が前記第一の生地層と前記第二の生地層の中間に配置されて、前記第二のバンドル構造物を前記第二のバンドルチャネル内で束ねるために、前記第二のバンドル構造物を前記第二のバンドルチャネル内で少なくとも部分的に保持することと、を含み、
前記第一のバンドル構造物の前記長手方向軸の少なくとも一部は、概ね前記第一のバンドルチャネル内で概ね蛇行しており、
前記第二のバンドル構造物の前記長手方向軸の少なくとも一部は、概ね前記第二のバンドルチャネル内で概ね蛇行していることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第一のキルティングステッチ線(102,302)は、前記第一のバンドル構造物の長手方向軸及び前記第二のバンドル構造物の長手方向軸を横断して延びるキルティングステッチ線(102,302)であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第一のキルティングステッチ線(102,302)は、前記第一及び前記第二のバンドル構造物(230,330)の双方を横断して延びることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第一のキルティングステッチ線からオフセットした第二のキルティングステッチ線(102,302)が、前記第一及び前記第二のバンドル構造物(230,330)の少なくとも一つと、前記第一及び前記第二の生地層(340,350)の少なくとも一つとを結びつけていることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記繊維(220)は、合成繊維であって、撚糸のコア(222)から延びる巻糸(224)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第一のキルティングステッチ線(102,302)は、前記第一及び第二のバンドル構造物(230,330)の双方を横断して延びることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法を用いて製造された衣服であって、
前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物における少なくともいくつかの繊維(220)の各々は、核糸(222)及び前記核糸から延びる巻糸(224)を含み、前記繊維(220)の前記巻糸(224)の一部は、前記第一のバンドル構造物の核糸(222)と、前記第二のバンドル構造物の核糸(222)と、の間の隙間を少なくとも部分的になくすことを特徴とする衣服。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~18に係る特許に対して、当審が令和3年4月9日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)(サポート要件)請求項1~18に係る発明は、次の点で発明の詳細な説明に記載したものでないため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
ア 第一のバンドル構造物及び第二のバンドル構造物について
請求項1に記載された「前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物が交互に連続して並ぶ」という特定事項は、発明の詳細な説明中に記載も示唆もされていない。
イ バンドルチャネルが互いに孤立していない点について
本件明細書等に記載された課題は「十分に固定されていないダウンの断熱層は移動する可能性がある。このような移動は、衣服内に、「冷たい」スポットだけでなく、過度に「膨らんだ」スポットをもたらす可能性がある。」(【0006】)ことであり、バンドルチャネルの側の長さに達しないタックによりバンドルを保持し、バンドルが均等に配置されるように、内層と外層とを結びつける第一のキルティングステッチ線が縫われることで、上記課題を解決するものと考えられるところ、請求項1に記載された「互いに並びかつ互いに孤立していない各バンドルチャネル」との特定では、一切の物理的隔たりが存在しないバンドルチャネルをも包含するが、そのものは、キルティングステッチ線が縫われる前にバンドルが保持されておらず、バンドルが移動する可能性があるため、上記課題を解決することができない。すなわち、請求項1は、本件特許が解決しようとする課題を解決しないものを包含するものである。
(2)(明確性)請求項1~18に係る発明は、次の点で不明確なため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
ア 繊維の配置について
請求項1の「・・・複数の繊維の一部と、・・・繊維の長手方向軸と、をそれぞれ含むように・・・複数の繊維の少なくとも一部(220)を配置する」との記載では、当該配置が如何なる配置を特定しようとするのかが明確でない。また、「第一のバンドル構造物」と「第二のバンドル構造物」との間に、如何なる技術的差異があるのか明確でない。
イ 前記複数のバンドルチャネルキルティングステッチ線(102,302)について
請求項3における「前記複数のバンドルチャネルキルティングステッチ線(102,302)」という記載について、請求項1において、部材番号(102,302)として記載されている部材は「第一のキルティングステッチ線(102,302)」であるから、請求項の記載が整合しない。
ウ ロフトについて
請求項4における「ロフト」という用語について、如何なる技術的事項を特定するのか明確でない。また、請求項4の「複数の繊維のロフト」又は「衣服の耐久性」に基づく「所定の距離」だけ「離隔して設けられる」という技術的事項の技術的意味を理解することができない。
エ 「30の糸」の単位について
請求項7における「少なくとも30の糸」との記載では、「糸」についてどのような量を特定しようとしているのか明確でない。
オ 前記キルティングステッチ線(102,302)について
請求項13における「前記キルティングステッチ線(102,302)」という記載について、請求項1において、部材番号(102,302)として記載されている部材は「第一のキルティングステッチ線(102,302)」であるから、請求項の記載が整合しない。
2 当審の判断
(1)サポート要件について
ア 第一のバンドル構造物及び第二のバンドル構造物について
本件明細書等には、次の記載がある。
「図3Cに示すように、タックのステッチ線は、バンドルチャネルの側の長さの一部においてのみ、連続するバンドルチャネルを孤立させる。」(【0046】)
「【図3C】
[図:0001383260000001.jpg]
」
「バンドルチャネル380のような、これらのバンドルチャネルのそれぞれが、バンドル330のような複数のバンドルを保持してよい。」(【0047】)
「連続するバンドル間の短手方向の間隔は、衣服に要求される特性に応じて変更してよい。」(【0060】)
そして、構造とは「いくつかの材料を組み合わせてこしらえられたもの。また、そのしくみ。くみたて。(広辞苑第六版)」という意味を有する。そうすると、上記の記載と「構造」の一般的な意味を踏まえると、本件明細書等に記載された連続するチャンネルのそれぞれに「複数のバンドルが連続して保持される」ものも、いくつかの材料を組み合わせてこしらえられた物といえるから「第一のバンドル構造物(230;330)」及び「第二のバンドル構造物(230;330)」に相当する構成は、「バンドル」である。
そして、本件発明1において「前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物が交互に連続して並ぶ」点を除いて、両者を区別する記載はなく、符号(230;330)も同一である。そうすると、本件発明1に係る「第一のバンドル構造物」と「第二のバンドル構造物」とは、連続して並ぶ「バンドル」を交互に別の名称で規定したにすぎないものと解される。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
イ 各バンドルチャネルが互いに孤立していない点について
当該取消理由は、請求項1に記載された「互いに並びかつ互いに孤立していない各バンドルチャネル」との記載では、バンドルチャネルに“一切の物理的隔たりが存在しない構成”という本件特許の課題を解決しないものを包含するとして通知されたものであるところ、本件訂正によって、本件発明1は「前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物が交互に連続して並ぶように、互いに並びかつ互いに孤立していない各バンドルチャネルに、前記第一のバンドル構造物または前記第二のバンドル構造物を保持する」ものであって、仮にバンドルチャネル間に“一切の物理的隔たりが存在しない構成”であるとすれば、「第一のバンドル構造物と第二のバンドル構造物が交互に連続して並ぶように、」「前記第一のバンドル構造物または前記第二のバンドル構造物を保持する」ことはできないから、各バンドルチャネルは、第一のバンドル構造物または第二のバンドル構造物を保持する前から“一切の物理的隔たりが存在しない構成”を包含しないことは明らかである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。
(2)明確性について
ア 繊維の配置について
当該取消理由は、訂正前の請求項1において、文言の係り受けが不明りょうであることに起因して“繊維が如何なる配置であるか”が明確でなかったところ、本件訂正によって「第一のバンドル構造物及び第二のバンドル構造物」を主語とすることにより、「複数の繊維の一部」と、「第一のバンドル構造物及び第二のバンドル構造物の長手方向軸に概ね沿って延びる繊維の長手方向軸」は「第一のバンドル構造物及び第二のバンドル構造物」に含まれる構成であること、「複数の繊維の少なくとも一部(220)」は、「第一のバンドル構造物(230;330)及び第二のバンドル構造物(230;330)を形成するため」に配置されることが明確となった。
また、「第一のバンドル構造物」及び「第二のバンドル構造物」は、上記(1)アで検討したとおり、連続して並ぶ「バンドル」を交互に別の名称で規定したにすぎないものと解される。
したがって、本件発明1は、明確である。
イ 前記複数のバンドルチャネルキルティングステッチ線(102,302)について
本件訂正により、本件発明3は、符号が削除されて「前記複数のバンドルチャネルキルティングステッチ線は」に訂正されたことで、「前記」が指す内容が「複数のバンドルキルティングステッチ線」であることが明確となった。
したがって、本件発明3は、明確である。
ウ ロフトについて
「ロフト」という用語は、衣服や繊維等を取り扱う技術分野において「嵩高」を意味するものとして周知された用語であり、技術的事項は明確である。また、本件明細書等には、
「【0067】
図8は、好ましい断熱密度を、キルティングステッチ線の間隔の関数として示すグラフである。一般的に、キルティングステッチ線の間隔(キルト間隔)が広くなるほど、衣服のロフトが効果的に増大する。しかしながら、衣服の洗濯耐久性は、キルト間隔の増加に伴って減少する。
【0068】
また、断熱素材の密度の増加は、衣服の耐久性を向上させ、密度の低い断熱バンドルに類似した能力を達成するためにキルティングの頻度を低下させる。好ましい実施形態では、図8のグラフは、衣服のロフトを向上させる、許容可能な洗濯耐久性を保持するための断熱材の異なる密度に対して、推奨するキルト間隔を示す。」
と記載されており、「複数の繊維のロフト」又は「衣服の耐久性」とキルティングステッチ線を設ける「間隔」との間に関連性があることは明らかである。
したがって、本件発明4は、明確である。
エ 「30の糸」の単位について
本件訂正により、本件発明7は、「30本の糸」であることが明確となった。
したがって、本件発明7は、明確である。
オ 前記キルティングステッチ線(102,302)について
本件訂正により、本件発明13は、「第一の」が追加されて「前記第一のキルティングステッチ線(102,302)」と訂正されたことで、「前記」が指す内容が「第一のキルティングステッチ線(102,302)」であることが明確となった。
したがって、本件発明13は、明確である。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立の理由中、取消理由に採用しなかったものは、概略以下のとおりである。
(1)(新規性)請求項1、2、4、7、9、11~18は、甲第1号証(以下、各甲号証を「甲1」等ともいう。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。
(2)(進歩性)
ア 請求項1~4、6~9、11~18は、甲第1号証に記載された発明から当業者が容易になし得た発明であるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
イ 請求項5、10は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明から当業者が容易になし得た発明であるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
(3)(拡大先願)
ア 請求項1、4、9~11、13~15、17、18は、その出願の日前の特許出願であって、特許法第41条第3項の規定により本件特許の出願後に出願公開がされたとみなされる下記の特許出願(以下「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者が先願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一でもないから、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものである。
イ 請求項2、7は、先願の先願明細書等に記載された発明と実質同一であり、しかも、本件特許の発明者が先願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一でもないから、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものである。
(4)(サポート要件)請求項8に係る発明は、本件明細書等にはバンドル構造物を部分的に「固定」可能とするバンドルチャネルが開示されておらず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(5)(明確性)請求項11、12に係る発明は、次の点で不明確なため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ア 請求項11には、「前記第一及び前記第二のバンドル構造物(1030)の各々を束ねること」とあるが、既に束ねられたものを「束ねること」とは、如何なることを意味するかが不明である。
イ 請求項12には、「前記第一のバンドル構造物を前記第一のバンドルチャネル内で束ねるために、前記第一のバンドル構造物(230,330,1030)を前記第一のバンドルチャネル内で少なくとも部分的に保持すること」及び「前記第二のバンドル構造物を前記第二のバンドルチャネル内で束ねるために、前記第二のバンドル構造物を前記第二のバンドルチャネル内で少なくとも部分的に保持すること」とあるが、既に束ねられたものを「束ねるために」「バンドルチャネル内で少なくとも部分的に保持する」とは、如何なることを意味するかが不明である。
甲第1号証:特開2012-67430号公報
甲第2号証:特開2012-172276号公報
先願:国内優先権の主張を伴う特願2015-95741号の優先権の主張の基礎とされた特願2014-136869号(甲4)(特開2016-27215号として出願公開(甲3))
2 当審の判断
(1)新規性について
ア 甲1を主引用文献とする新規性について
甲1には、次の事項が記載されている。また、下線は理解の便宜のため、当審が付した。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、長繊維で構成される詰め物用交絡糸及びこれを用いた詰め物体に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、特許文献1,4のように短繊維を花糸に使用した例では、洗濯により詰め物の片寄りが生じ、嵩はへたり易く、嵩の耐久性に問題があった。特許文献2のように単に空気交絡をさせ融着する方法では十分な嵩高性が得られず、特許文献3のように繊維自体の捲縮だけで嵩高性を発現させた例でも、やはり洗濯により詰め物の片寄りが生じ、へたり易く、嵩の耐久性に問題があり、そのため、現在に至るまで実用化されているのはカード開繊綿であるという問題があった。特許文献5に提案の詰め綿は柔らかいが、耐洗濯性に問題があり、洗濯により詰め綿が片寄ってしまう問題と、花糸をウエストゲージに回転又は糸振りさせて供給する必要があり、いずれの場合も糸の落下速度が遅く、これが障害となって糸の巻き取り速度を上げることができず、生産性はあまり高くないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するため、嵩高で耐洗濯性に優れ、生産性も高くて製造コストの安い詰め物用交絡糸及びこれを用いた詰め物体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の詰め物用交絡糸は、長繊維で構成される詰め物用交絡糸であって、前記交絡糸は、芯糸と前記芯糸よりも長い花糸を含み、前記芯糸と花糸は交絡により一体化しており、前記花糸は開繊されてループ状繊維を形成していることを特徴とする。
【0009】
本発明の詰め物体は、前記の詰め物用交絡糸を側地内に充填した詰め物体であって、前記交絡糸は前記詰め物の長さ方向に配列され、前記交絡糸は前記詰め物の幅方向に縫製された複数本のキルト糸により固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、長繊維(フィラメント)をエアー交絡させているため、嵩は高く、耐洗濯性に優れ、生産性も高くて製造コストの安い詰め物用交絡糸を提供できる。また本発明の詰め物体は、固定箇所の間で長繊維エアー交絡糸の長さは変化することはなく、花糸と芯糸は一体化しているので、洗濯を繰り返しても長繊維エアー交絡糸の動きは制限され、詰め綿の片寄りが少なく、嵩も高い詰め物製品を提供できる。さらに、ドレープ性が良好で保温性も高い詰め物体を提供できる。」
「【0016】
交絡糸は無撚りでも良いし、実撚りを加えても良い。無撚りの場合の糸の巻き取り速度は50~1500m/分とすることができる。実撚りを加えると、芯糸と花糸との一体化固定がさらに高まる。実撚りを加える場合の糸の巻き取り速度は10~100m/分とすることができる。」
「【0020】
交絡糸は複数本束ねられ、その長さ方向の周囲にフィルムが円筒状にラッピングされているのが好ましい。このような包装体を使用すると、梱包及び輸送に便利なだけでなく、詰め物を製造する際に、側地内に交絡糸を充填する際にも便利である。すなわち、筒状体のフィルムの端から交絡糸束を露出させ、この露出部を側地の端に配置して抑え、フィルムを抜くだけで側地内に交絡糸束を収納できる。
【0021】
花糸及び/又は芯糸は通常の合成繊維(非融着繊維)を使用できる。非融着繊維としては、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン等の合成繊維が好ましい。非融着繊維と融着繊維を使用することもできる。花糸及び/又は芯糸が融着繊維を含む場合、花糸及び芯糸の融着繊維は、融点が異なる2以上のポリマーで構成される複合繊維とするのが好ましい。この複合繊維としては、高融点ポリマーが芯、低融点ポリマーが鞘である芯鞘構造の繊維が好ましい。低融点ポリマーを融着させるためである。このような芯鞘構造の複合繊維は、例えばKBセーレン社製“ベルカップル”、ユニチカ社製“メルセット”、ウンジンケミカル社製“EZBON”などがある。これらの複合繊維は、芯がポリエチレンテレフタレート(PET)であり、鞘が低融点ポリエステル共重合体で構成されている。花糸及び芯糸の融着繊維は、ポリエステルマルチフィラメント融着繊維であることが好ましい。ポリエステルはへたりにくいからである。また、融着繊維の融着温度が160~200℃であることが好ましい。この範囲であれば、加工しやすい。前記芯糸の融着繊維と非融着繊維の割合は、前記芯糸を100重量%としたとき融着繊維が10~100重量%、非融着繊維が0~90重量%であることが好ましい。」
「【0027】
本発明の詰め物体は、長繊維エアー交絡糸を詰め物の長さ方向に配列して充填され、詰め物の幅方向に縫製された複数本のキルト糸により側地と固定されている。これにより、固定箇所の間で交絡糸の長さは変化することはなく、花糸と芯糸は一体化しているので、洗濯を繰り返しても交絡糸の動きは制限され、詰め綿の片寄りが少なく、嵩も高い詰め物製品となる。前記においてキルト糸複数本とは好ましくは2本~10本であり、さらに好ましくは3本~5本である。前記の範囲であれば、嵩高性を保持できて暖かく、かつ洗濯などによる長繊維エアー交絡糸の動きを抑制することができる。なお、本発明の詰め物体は、長繊維交絡糸とともに、その他長繊維詰め物を用いてもよく、その他長繊維詰め物と本発明の長繊維交絡糸とを混合して、複数本のキルト糸により側地と固定してもよい。また、他の羽毛や人工羽毛と併用してもよい。」
「【0030】
本発明における詰め物体は、布団、毛布、寝袋、枕、クッション、マット、ぬいぐるみ、ひざ掛け、ジャケット、パンツ、ベスト、コート、防寒服又はネックウォーマーに好適である。洗濯ができるウォッシャブル性があることから、寝具類はホテル用、レンタル用、災害用、病院用、老人施設用などに好適であり、衣類はスポーツ用に好適である。
【0031】
以下図面を用いて説明する。各図面において、同一符号は同一部分を示す。図1は本発明の一実施例における長繊維交絡糸の側面図である。この長繊維交絡糸1は、芯糸2と花糸3の構成繊維が互いに絡まっており、花糸3が開繊されて部分的にループ状繊維を形成する。なお、芯糸及び/又は花糸が融着繊維を含む場合は、キュアリング時に芯糸及び花糸を融着固定することもできる。この場合は、開繊されて部分的にループ状繊維を形成した花糸3及び/又は芯糸2は融着された部分を有する。」
「【図1】
[図:0001383260000002.jpg]
」
「【0032】
(中略)リング撚糸機は、モーター15、ベルト16を介してパーン17が回転され、この周りのリング18にトラベラー19が組み込まれ、パーン17の回転より遅れて回転することにより、トラベラー19を通過する交絡糸14には実撚りが掛けられる。好ましい撚り数は1~400回/mである。」
「【0038】
図5Aは本発明の一実施例の掛け布団の斜視図、図5Bは同I-I線の断面図である。掛け布団30は側地31と、側地内に充填されている長繊維エアー交絡糸33aと、布団の幅方向に縫製したキルト線32で構成されている。この例では、幅方向のキルト線32は、5本のキルト線32a-32eとしている。キルト線は連続した縫製線でも良いし、和とじのように点縫いでつなげても良い。長繊維エアー交絡糸33aの両端部33bは折り返され、固定せずフリー状態にしておくと、掛け布団30の隅々まで詰め綿を充填でき、ボリューム感も出せて暖かい状態を保てる。折り返し長さは任意のものとすることができる。好ましくは2~20cmである。」
「【図5】
[図:0001383260000003.jpg]
」
「【0040】
図7は本発明の一実施例における長繊維エアー交絡糸41を複数本束ねてその長さ方向の周囲にフィルム42を円筒状にラッピングした包装体40の斜視図である。43はシール部である。このような包装体40は、梱包及び輸送に便利なだけでなく、詰め物製造時、側地内に交絡糸を充填する際にも便利である。すなわち、筒状体のフィルム42の端から交絡糸41の束を露出させ、この露出部を側地の端に配置して抑え、フィルムを抜くだけで側地内に交絡糸41の束を収納できる。包装フィルムはポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなど任意のフィルムを使用できる。」
「【図7】
[図:0001383260000004.jpg]
」
以上を製造方法に着目して総合すると、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「長繊維をエアー交絡させて得られる芯糸と花糸の構成繊維が互いに絡まった長繊維交絡糸を複数本束ね、その長さ方向の周囲にフィルムが円筒状にラッピングされた包装体を使用して、筒状体のフィルムの端から交絡糸束を露出させ、この露出部を側地の端に配置して抑え、フィルムを抜くだけで側地内に交絡糸束を収納させることで側地内に交絡糸を充填し、詰め物の幅方向に縫製された複数本のキルト糸により側地と固定する詰め物体の製造方法。」
イ 本件発明1について
(ア)一致点・相違点
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「長繊維をエアー交絡させて得られる芯糸と花糸の構成繊維が互いに絡まった長繊維交絡糸を複数本束ね」た「交絡糸束」は、繊維からなる断熱材料であって、本件発明1の「バンドル構造物」に相当し、甲1発明の「側地」及び「キルト線」は、本件発明1の「第一の生地層及び第二の生地層」及び「第一のキルティングステッチ線(102,302)」に相当する。
甲1発明の「長繊維をエアー交絡させて得られる芯糸と花糸の構成繊維が互いに絡まった長繊維交絡糸を複数本束ね、その長さ方向の周囲にフィルムが円筒状にラッピングされた包装体を使用して、筒状体のフィルムの端から交絡糸束を露出させ、この露出部を側地の端に配置して抑え、フィルムを抜くだけで側地内に交絡糸束を収納させることで側地内に交絡糸を充填」することと、本件発明1の「第一のバンドル構造物(230;330)及び第二のバンドル構造物(230;330)を形成するために、前記複数の繊維の少なくとも一部(220)を配置することと、
前記第一のバンドル構造物の長手方向軸及び前記第二のバンドル構造物の長手方向軸が概ね同じ方向に延び、前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物は第一の生地層(340)と第二の生地層(350)の中間に配置され、前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物の短手方向において前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物が交互に連続して並ぶように、互いに並びかつ互いに孤立していない各バンドルチャネルに、前記第一のバンドル構造物または前記第二のバンドル構造物を保持すること」を備え、「前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物はそれぞれ、前記複数の繊維の一部と、前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物の長手方向軸に概ね沿って延びる繊維の長手方向軸と、を含」むことは、「複数の繊維からなる断熱材を生地層に収納する」という限りで一致する。
また、甲1発明の「詰め物の幅方向に縫製された複数本のキルト糸により側地と固定する」ことと、本件発明1の「前記第一のバンドル構造物の前記長手方向軸及び前記第二のバンドル構造物の前記長手方向軸に対して概ね横断する第一のキルティングステッチ線(102,302)を形成すること」を備え、「前記第一のキルティングステッチ線は、前記第一のキルティングステッチ線と平行な方向において前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物の少なくとも1つを前記第一のキルティングステッチ線によって固定するために、前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物の少なくとも一つを、前記第一の生地層及び前記第二の生地層の少なくとも一つに結びつける」ことは、「収納された断熱材の長手方向軸に対して概ね横断するキルティングステッチ線を形成することを含み、キルティングステッチ線によって、収納された断熱材が生地層に固定される」という限りで一致する。
そうすると、本件発明1と甲1発明は、以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「複数の繊維からなる断熱材を生地層に収納することと、
収納された断熱材の長手方向軸に対して概ね横断するキルティングステッチ線を形成することを含み、キルティングステッチ線によって、収納された断熱材が生地層に固定される方法。」
<相違点1>
「複数の繊維からなる断熱材を生地層に収納する」に関して、本件発明1は、第一のバンドル構造物(230;330)及び第二のバンドル構造物(230;330)を形成するために、前記複数の繊維の少なくとも一部(220)を配置することと、
前記第一のバンドル構造物の長手方向軸及び前記第二のバンドル構造物の長手方向軸が概ね同じ方向に延び、前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物は第一の生地層(340)と第二の生地層(350)の中間に配置され、前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物の短手方向において前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物が交互に連続して並ぶように、互いに並びかつ互いに孤立していない各バンドルチャネルに、前記第一のバンドル構造物または前記第二のバンドル構造物を保持すること」を備え、「前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物はそれぞれ、前記複数の繊維の一部と、前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物の長手方向軸に概ね沿って延びる繊維の長手方向軸と、を含」むのに対して、甲1発明は、「長繊維をエアー交絡させて得られる芯糸と花糸の構成繊維が互いに絡まった長繊維交絡糸を複数本束ね、その長さ方向の周囲にフィルムが円筒状にラッピングされた包装体を使用して、筒状体のフィルムの端から交絡糸束を露出させ、この露出部を側地の端に配置して抑え、フィルムを抜くだけで側地内に交絡糸束を収納させることで側地内に交絡糸を充填」するものである点。
<相違点2>
「収納された断熱材の長手方向軸に対して概ね横断するキルティングステッチ線を形成することを含み、キルティングステッチ線によって、収納された断熱材が生地層に固定される」に関して、本件発明1は、前記第一のバンドル構造物の前記長手方向軸及び前記第二のバンドル構造物の前記長手方向軸に対して概ね横断する第一のキルティングステッチ線(102,302)を形成すること」を備え、「前記第一のキルティングステッチ線は、前記第一のキルティングステッチ線と平行な方向において前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物の少なくとも1つを前記第一のキルティングステッチ線によって固定するために、前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物の少なくとも一つを、前記第一の生地層及び前記第二の生地層の少なくとも一つに結びつける」のに対して、甲1発明は、「詰め物の幅方向に縫製された複数本のキルト糸により側地と固定する」点。
(イ)相違点についての判断
上記相違点1について検討する。
甲1発明は、「洗濯により詰め物の片寄りが生じ」ることを課題とし、「嵩高で耐洗濯性に優れ、生産性も高くて製造コストの安い詰め物用交絡糸及びこれを用いた詰め物体を提供する」ものであって(【0006】~【0007】)、詰め物体の製造時ではなく、出来上がった詰め物体を洗濯することによって生じる詰め物の片寄りの解消を目的とするものである。
これに対し、本件発明1は、「前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物の短手方向において前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物が交互に連続して並ぶように、互いに並びかつ互いに孤立していない各バンドルチャネルに、前記第一のバンドル構造物または前記第二のバンドル構造物を保持する」ことを特徴とするものであって、上記記載により特定される「バンドルチャネル」は、上記第4 2(1)イで判断したとおり、第一のバンドル構造物または第二のバンドル構造物を保持する前から“一切の物理的隔たりが存在しない構成”を包含しないことは明らかであって、物理的隔たりが存在し、“連続する各バンドルチャネルは互いに完全に孤立しているわけではない”ものと解される。そして、当該特徴は、「キルティングのために、所定の位置にバンドルを保持することである。そのキルティングは、好ましい長期安定をもたらす。」(本件明細書等【0046】)というキルティング加工前のバンドル(すなわち、甲1発明における「詰め物」)の位置を保持するという物体の製造時における新たな効果を奏するものであるから、相違点1は形式的な相違点ではなく、実質的な相違点であるから、他の相違点について判断するまでもなく、本件発明1は甲1発明ではない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、甲1発明では、包装体40を、側地内に充填し、筒状体のフィルム42の端から交絡糸41の束を露出させ、この露出部を側地の端に配置して抑え、フィルムを抜くことにより側地内に交絡糸41の束を収納しているから、これを繰り返せば、交絡糸41の束は、短手方向において交互に連続して並ぶように、側地31内の、互いに並び互いに孤立していない各バンドルチャネル(交絡糸41の束の通り道)に保持(収納)されることが、相違点1に対応する構成である旨、主張する(特許異議申立書の第24頁)。
しかし、当該主張は、上記(イ)に示した相違点1が実質的な相違点であることを左右するものではない。
なお、申立人は本件発明2との対比において、複数の交絡糸41の束を、均一配置することは当然行われていることであり、均一配置するために、仮想のバンドルチャネルを形成することは当業者であれば当然に行うことである旨、主張しているが、本件発明2が引用する本件発明1は、甲1発明ではないのであるから、本件発明2も甲1発明ではない。
ウ 本件発明2、4、7、9、11~18について
本件発明2、4、7、9、11~17は、本件発明1に対して、さらに技術的事項を追加したものである。また、本件発明18は、「請求項1に記載の方法を用いて製造された衣服」であって、本件発明1の技術的事項に加え、その衣服に関する技術的事項を追加したものである。
よって、上記イに示した理由と同様の理由により、本件発明2、4、7、9、11~18は、甲第1発明ではない。
(2)進歩性について
上記(1)イ(イ)及び(ウ)に示したとおり、上記相違点1は実質的な相違点であり、「キルティングのために、所定の位置にバンドルを保持することである。そのキルティングは、好ましい長期安定をもたらす。」という新たな効果をもたらすものであるから、本件発明1は、当業者であっても甲1発明に基いて、当業者が容易に着想し得るものではない。
また、甲2には、「キルト線同士の間隔は、5cm~15cmの範囲」が好ましいことは記載されているものの、断熱材に当たる充填物2の充填に関しては「身生地1を2枚重ねて袋状に縫製した後、身生地1同士の間の空間に充填物2を充填し」(【0012】)としか記載されておらず、本件発明1の「バンドルチャネル」に対応する構成は記載されていない。
したがって、本件発明1は、甲1発明又は、甲1発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明できたものではない。
また、本件発明2~18は、本件発明1に対して、さらに技術的事項を追加したものであり、本件発明18は、「請求項1に記載の方法を用いて製造された衣服」であって、本件発明1の技術的事項に加え、その衣服に関する技術的事項を追加したものであるから、同様の理由により、本件発明2~18は、甲1発明又は、甲1発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明できたものではない。
(3)拡大先願について
ア 先願明細書等について
先願明細書等には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
ポリエステル系の原糸を用いた軸糸・浮糸のフィラメント同士がエアーの散乱雰囲気中でのエアー交絡により結束して絡み合い繋がってダウンボール状の塊を有しつつ一体化されて、一列に連なった形態で、前記ダウンボール状の塊が所定の直径を有し、このダウンボール状の塊が軸糸の長さ方向に関して所定間隔をもって連続的に配列されて綿状の長繊維として形成したことを特徴とする羽毛状綿素材を、複数本所定の長さとして束ねて、その両端部を各々布材により縫着固定したことを特徴とする羽毛状綿素材束。
(中略)
【請求項30】
衣料品用の表生地と裏生地との間に、前記請求項1乃至5のいずれか1項に記載の羽毛状綿素材束を収納し、縫製して仕上げていることを特徴とする羽毛状綿素材束を収納した衣料品。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、従来における例えば布団充填用の天然羽毛が有するような後記諸種問題が生じないとともに、動物特有の臭気を伴うことがなく、洗濯性に優れ、ボリューム感、嵩高があり、保温性、断熱性にも優れ、更に軽量に形成できる羽毛に模した形態に人工製造した羽毛状綿素材束、羽毛状綿素材束を収納した布団及びその製造方法、並びに羽毛状綿素材束を収納した衣料品に関するものである。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする問題点は、従来の羽毛布団用の羽毛のような前記問題が生ずることなく、動物特有の臭気を伴うことがなく、洗濯性に優れ、ボリューム感、嵩高があり、保温性、断熱性にも優れ、更に軽量に形成できる羽毛に模した形態に人工製造した新規な羽毛状綿素材束、かかる羽毛状綿素材束を用い優れた保温性を有し、例えば掛け布団等として好適な羽毛状綿素材束を収納した布団及びその製造方法が従来存在しない点である。」
「【0019】
(中略)
【図3】図3は本実施例1に係る羽毛状綿素材束を模式的、概念的に示す概略平面図である。」
「【図3】
[図:0001383260000005.jpg]
」
「【0071】
この際、より一層ダウンボール形状が開繊するように手で揉んでも良い。このようにすることにより、開繊綿を並べた際、隣り同士の浮糸3が絡み合い、網状になるため、綿間の隙間がなくなり保温性向上が期待できる。
【0072】
以上説明した本実施例1に係る羽毛状綿素材によれば、羽毛材ではないポリマーで構成した軸糸、浮糸を原料とし、当該軸糸と、浮糸とがエアー交絡により綿状に一体化されて、前記軸糸と浮糸とが絡み合い繋がって、ダウンボール状、かつ、綿状の長繊維として形成しているので、従来の羽毛布団用の羽毛のような前記問題が生ずることなく、動物特有の臭気を伴うことがなく、洗濯性に優れ、ボリューム感、嵩高があり、保温性、断熱性にも優れ、更に軽量に形成できる羽毛に模した形態に人工製造した新規な綿素材を実現することができる。」
「【0078】
前記羽毛状綿素材束21によれば、羽毛状綿素材1を複数本束ねて両端を、布材22を用いて固定したものであるから、後述する羽毛状綿素材束を収納した布団31の内装物とした場合に、羽毛状綿素材束1による保温効果を確実に発揮させることができる。」
「【0217】図33は、本発明の実施例1又はその変形例に係る羽毛状綿素材束を収納した羽毛状綿素材束を収納した衣料品の一例であるダウンジャケット91を示すものであり、このダウンジャケット91は、同図に概略的に示すように、このダウンジャケット91を構成する衣料品用の表生地92と、裏生地93との間に、既述した場合と同様にして前記羽毛状綿素材束21(又は羽毛状綿素材束21A)を所要数収納し、キルト形態に縫製して仕上げたものである。
なお、図33(a)は本発明の実施例1又は変形例に係る羽毛状綿素材束を収納し縦横にキルトを施した状態の衣料品を示す概略図であり、図33(b)は本発明の実施例1又は変形例に係る羽毛状綿素材束を収納し縦にキルトを施した状態の衣料品を示す概略図である。」
「【図33】
[図:0001383260000006.jpg]
」
以上の記載からみて、先願明細書等には、以下の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。
「軸糸、浮糸を原糸とする綿状の長繊維からなる羽毛状綿素材1を複数本束ねて両端を、固定した羽毛状綿素材束21を、衣料品用の表生地92と、裏生地93との間に、羽毛状綿素材束21を所要数収納し、キルト形態に縫製して仕上げる方法。」
イ 本件発明1について
(ア)一致点・相違点
本件発明1と先願発明とを対比する。
先願発明の「軸糸2、浮糸3を原糸とする綿状の長繊維からなる羽毛状綿素材1を複数本束ねて両端を、固定した羽毛状綿素材束21」は、繊維からなる断熱材料であって、本件発明1の「バンドル構造物」に相当し、先願発明の「表生地92と、裏生地93」は、本件発明1の「第一の生地層及び第二の生地層」に相当する。
先願発明の「軸糸2、浮糸3を原糸とする綿状の長繊維からなる羽毛状綿素材1を複数本束ねて両端を、固定した羽毛状綿素材束21を、衣料品用の表生地92と、裏生地93との間に、羽毛状綿素材束21を所要数収納」することと、本件発明1の「第一のバンドル構造物(230;330)及び第二のバンドル構造物(230;330)を形成するために、前記複数の繊維の少なくとも一部(220)を配置することと、
前記第一のバンドル構造物の長手方向軸及び前記第二のバンドル構造物の長手方向軸が概ね同じ方向に延び、前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物は第一の生地層(340)と第二の生地層(350)の中間に配置され、前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物の短手方向において前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物が交互に連続して並ぶように、互いに並びかつ互いに孤立していない各バンドルチャネルに、前記第一のバンドル構造物または前記第二のバンドル構造物を保持すること」を備え、「前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物はそれぞれ、前記複数の繊維の一部と、前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物の長手方向軸に概ね沿って延びる繊維の長手方向軸と、を含」むことは、「複数の繊維からなる断熱材を生地層に収納する」という限りで一致する。
また、先願発明の「キルト形態に縫製して仕上げる」ことと、本件発明1の「前記第一のバンドル構造物の前記長手方向軸及び前記第二のバンドル構造物の前記長手方向軸に対して概ね横断する第一のキルティングステッチ線(102,302)を形成すること」を備え、「前記第一のキルティングステッチ線は、前記第一のキルティングステッチ線と平行な方向において前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物の少なくとも1つを前記第一のキルティングステッチ線によって固定するために、前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物の少なくとも一つを、前記第一の生地層及び前記第二の生地層の少なくとも一つに結びつける」ことは、「キルティングステッチ線を形成する」という限りで一致する。
そうすると、本件発明1と先願発明とは、以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「複数の繊維からなる断熱材を生地層に収納することと、
キルティングステッチ線を形成することを含む方法。」
<相違点3>
「複数の繊維からなる断熱材を生地層に収納する」に関して、本件発明1は、第一のバンドル構造物(230;330)及び第二のバンドル構造物(230;330)を形成するために、前記複数の繊維の少なくとも一部(220)を配置することと、
前記第一のバンドル構造物の長手方向軸及び前記第二のバンドル構造物の長手方向軸が概ね同じ方向に延び、前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物は第一の生地層(340)と第二の生地層(350)の中間に配置され、前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物の短手方向において前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物が交互に連続して並ぶように、互いに並びかつ互いに孤立していない各バンドルチャネルに、前記第一のバンドル構造物または前記第二のバンドル構造物を保持すること」を備え、「前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物はそれぞれ、前記複数の繊維の一部と、前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物の長手方向軸に概ね沿って延びる繊維の長手方向軸と、を含」むのに対して、先願発明は、「軸糸2、浮糸3を原糸とする綿状の長繊維からなる羽毛状綿素材1を複数本束ねて両端を、固定した羽毛状綿素材束21を、衣料品用の表生地92と、裏生地93との間に、羽毛状綿素材束21を所要数収納」するものである点。
<相違点4>
「キルティングステッチ線を形成する」に関して、本件発明1は、前記第一のバンドル構造物の前記長手方向軸及び前記第二のバンドル構造物の前記長手方向軸に対して概ね横断する第一のキルティングステッチ線(102,302)を形成すること」を備え、「前記第一のキルティングステッチ線は、前記第一のキルティングステッチ線と平行な方向において前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物の少なくとも1つを前記第一のキルティングステッチ線によって固定するために、前記第一のバンドル構造物及び前記第二のバンドル構造物の少なくとも一つを、前記第一の生地層及び前記第二の生地層の少なくとも一つに結びつける」のに対して、先願発明は、「キルト形態に縫製して仕上げる」ものである点。
(イ)相違点についての判断
上記相違点3について検討する。
先願発明には「羽毛状綿素材1を複数本束ねて両端を、固定した羽毛状綿素材束21」を収納する際、「互いに並びかつ互いに孤立していない各バンドルチャネル」に保持される点が記載されておらず、当該特徴は、上記第5 2(1)イ(イ)で検討したとおり、キルティングのために、所定の位置にバンドルを保持することである。そのキルティングは、好ましい長期安定をもたらす。」(本件明細書等【0046】)というキルティング加工前のバンドル(すなわち、先願発明における「羽毛状綿素材束21」)の位置を保持するという物体の製造時における新たな効果を有するものであるから、相違点3は、課題解決のための具体化手段における微差であるとはいえず、本件発明1と先願発明は同一であるとはいえない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、先願発明では、複数の羽毛状綿素材束21が、羽毛状面素材束21の短手方向において、羽毛状綿素材束21が連続して並ぶように、互いに並びかつ互いに孤立しないように、表生地92と、裏生地93との間に配置(保持)されている(【0217】、【図33(a)】)ことが、相違点3に対応する構成である旨、主張する(特許異議申立書の第30頁)。
当該主張について検討する。
先願発明には、羽毛状綿素材束21が連続して並ぶ様が明らかでなく、仮に「互いに並び互いに孤立しないように保持されている」としても、それは両端が固定されていることによるものであって、本件発明1のように「バンドルチャネル」を設けることは一切記載されていないから、係る申立人の主張には理由がない。
ウ 本件発明4、9~11、13~15、17、18について
本件発明4、9~11、13~15、17は、本件発明1に対して、さらに技術的事項を追加したものである。また、本件発明18は、「請求項1に記載の方法を用いて製造された衣服」であって、本件発明1の技術的事項に加え、その衣服に関する技術的事項を追加したものである。
よって、上記イに示した理由と同様の理由により、本件発明4、9~11、13~15、17、18は、先願明細書等に記載された発明と同一ではない。
(4)サポート要件について
バンドル構造物を部分的に「固定」可能とするバンドルチャネルに関して、本件明細書等には、「バンドルチャネル380を含む各バンドルチャネルが、適切な数の束ねられた撚糸を保持した後、キルティングステッチ線302は、バンドルチャネルを横断して縫われて、チャネル326を形成してよい。タックやステッチによって、少なくとも部分的にバンドルチャネルをとどめて移動させないようにするため、及び、内生地層340と外生地層350を少なくとも部分的に結びつけるため、バンドルの短手方向の配置は、キルティングステッチ線302を縫う前及びキルティングステッチ線302を縫う間に、少なくとも部分的に固定される。タック及びバンドルチャネルによる、このような固定は、キルティングステッチ線を縫う前のバンドルの均一な密度を大幅に乱すことなく、衣服の素材を取り扱うこと及び/又は輸送することを許容する。」(【0050】)ことが記載されており、本件発明において、タックやステッチにより、部分的にバンドルチャネルをとどめて移動させないこと、内生地層340と外生地層350を部分的に結びつけることを「部分的に固定」と称している。してみると、本件明細書等には、部分的に「固定」可能とするバンドルチャネルが記載されているから、申立人の主張には理由がない。
(5)明確性について
ア 請求項11について
本件明細書等には、バンドルを“束ね”ることに関して以下の記載がある。
「【0076】
図10Bは、バンドルチャネルによって保持されたバンドル1070の代替的実施形態1010の半概略側面図を示す。図10Aの実施形態1000に類似して、実施形態1010のバンドルチャネルは、内生地層1040、外生地層1050、及び複数のタック(不図示)によって、形成される。
【0077】
実施形態1010のバンドル1070は、バンドルチャネル内に“束ね”られており、実施形態1000に示すように平坦には配置されていない。むしろ、束ねた効果を形成するために、図10Bのバンドル1070をバンドルチャネル内に押し込み、又は供給する。ここで、“束ねられた”場合には、バンドル1070の長手方向軸は、多少蛇行して、バンドルチャネルの軸と平行でないことには留意すべきである。
【0078】
この束は、より長いバンドル1070がバンドルチャネルで保持されることを許容し、このような実施形態から構成された衣服の断熱値を増加させる。いくつかの実施形態において、束ねることは、バンドルチャネル内にバンドル1070を手送りすることで達成される。他の実施形態では、バンドルを、対応するバンドルチャネル内に送ることが自動化されている。束ねることは、固定用のキルティングステッチ線を縫う前、又はその間に、達成され得る。バンドル1070を束ねることによって、各バンドルチャネル内の停滞空気が増加し、したがって、完成した衣服の断熱能力がさらに向上する。バンドルを束ねることで、衣服の“ふわふわ感”も増加する。」
「【図10B】
[図:0001383260000007.jpg]
」
以上の記載からみて、本件発明は“撚糸”が束ねられてなるバンドルをさらに束ねることによって、より長いバンドルを形成し、衣服の断熱能力の向上や、衣服の“ふわふわ感”の増加を図るものであって、その技術的意味は明確であるから、申立人の主張には理由がない。
イ 請求項12について
バンドルの束は、バンドルチャネル内にバンドルを手送りすることで達成されるものであって(【0078】)、“撚糸”が束ねられてなるバンドルをバンドルチャネル内で束ねることを意味することは明らかであるから、申立人の主張は理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件請求項1~18に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-700932