特許異議申立
2018-700043
空調衣服
- 審判番号
- 2018-700043
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-216737
- 登録番号
- 特許第6191028号(P6191028)
- 請求日
- 2018年01月18日
- 審決日
- 2019年02月15日
- 公報発行日
- 2019年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社ブレイン
- 【権利者代理人】仲 晃一
- 【異議申立人】三重野 正博
- 審判長/審判官
- 審判長 渡邊 豊英
- 審判官 西藤 直人
- 審判官 久保 克彦
- 分類
- P1651.113-YAA(A41D) / P1651.121-YAA(A41D) / P1651.537-YAA(A41D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6191028号発明「空調衣服」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6191028号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第6191028号の請求項1~4に係る特許を維持する。
特許第6191028号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6191028号の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成28年11月4日に特許出願され、平成29年8月18日にその特許権の設定登録(特許掲載公報平成29年9月6日発行)がされ、その後、その特許について、平成30年1月18日に特許異議申立人三重野正博(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成30年6月11日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年8月7日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求に係る訂正自体を「本件訂正」という。)がされ、平成30年10月12日に申立人から意見書の提出がされ、平成30年11月8日付けで申立人に対し審尋がなされ、平成30年12月12日に申立人から回答書の提出がされたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正の内容は次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1について、「襟の後方裏面側」という記載があるのを「襟の後方側」という記載とし、「を具備すること、」という記載があるのを「を具備し、前記襟が、前記風道フードを内部に収納可能な構成を有すること、」という記載とすることで、
「衣服用ファンを取り付けて衣服内に空気を送風する空調衣服であって、
衣服外部と内部とを連通するように後身頃の下方の左右に設けられた衣服用ファン取付用孔と、
下方端部において襟の後方側に配設されており、上方端部においてヘルメットに接続される略矩形の風道フードと、
を具備し、
前記襟が、前記風道フードを内部に収納可能な構成を有すること、
を特徴とする空調衣服。」
に訂正する。
(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(3)訂正事項3
本件訂正前の特許明細書の段落【0009】について、「襟の後方裏面側」という記載があるのを「襟の後方側」という記載とし、「を具備すること、」という記載があるのを「具備し、前記襟が、前記風道フードを内部に収納可能な構成を有すること、」という記載とすることで、
「上記の課題を解決すべく、本発明は、
衣服用ファンを取り付けて衣服内に空気を送風する空調衣服であって、
衣服外部と内部とを連通するように後身頃の下方の左右に設けられた衣服用ファン取付用孔と、襟の後方側に配設された風道フードと、を具備し、
前記襟が、前記風道フードを内部に収納可能な構成を有すること、
を特徴とする空調衣服を提供する。」
に訂正する。
(4)訂正事項4
本件訂正前の特許明細書の段落【0016】について、「有すること、」という記載があるのを「有する。」という記載と訂正する。
(5)訂正事項5
本件訂正前の特許明細書の【0023】について、「風道フード9」という記載があるのを「風道フード7」という記載と訂正する。
2.訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア.訂正の目的について
訂正事項1のうち、本件訂正前の「襟の後方裏面側」という記載があるのを「襟の後方側」という記載とする訂正は、「襟の後方裏面側」という記載が襟のどの部位を指すか必ずしも明瞭であるとはいえなかったところ、「襟の後方側」と明瞭にするものである。
また、訂正事項1のうち、本件訂正前の「を具備すること、」という記載があるのを「を具備し、前記襟が、前記風道フードを内部に収納可能な構成を有すること、」という記載とする訂正は、本件訂正前の請求項1の発明特定事項である「襟」について、「前記風道フードを内部に収納可能な構成を有すること」と構成を付加し限定するものである。
ゆえに、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮、及び同第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ.新規事項の有無について
本件訂正前の特許明細書の段落【0025】、図1、図2、図10には、襟の後方側に風道フードが配設されていることの記載あるいは図示がある。
また、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5には、「前記襟が、前記風道フードを内部に収納可能な構成を有すること」が記載されている。
ゆえに、訂正事項1は、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。
ウ.特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項1のうち、「襟の後方裏面側」という記載があるのを「襟の後方側」という記載とする訂正は、上記に示したように、本件特許明細書の記載によれば、「襟の後方側」と記載すべきであったのを「襟の後方裏面側」と記載されて不明瞭なものとなっていた記載から、「裏面」という語句を削除するものである。
また、訂正事項1のうち、「を具備すること、」という記載があるのを「を具備し、前記襟が、前記風道フードを内部に収納可能な構成を有すること、」という記載とする訂正は、前記「襟」の構成を限定するものである。
ゆえに、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項2は、新規事項を追加するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。
さらに、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3について
ア.訂正の目的について
訂正事項3は、上記訂正事項1による訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と本件特許明細書の記載とを整合させるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ.新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項3は、上記訂正事項1と同様の訂正を行うものである。
ゆえに、上記(1)イ.及びウ.で示したとおり、新規事項を追加するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項4について
ア.訂正の目的について
訂正事項4は、本件訂正前の「有すること、」という記載を「有する。」という記載に訂正するものであり、本件訂正前の段落【0016】及び【0017】の記載によれば、内容的に文が区切れて「有する。」と句点を記載すべきであったことは明らかであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号の誤記の訂正を目的とするものに該当する。
イ.新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項4は、語法の誤りを正すものにすぎないから、新規事項を追加するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。
(5)訂正事項5について
ア.訂正の目的について
訂正事項5は、本件訂正前の「風道フード9」という記載を「風道フード7」という記載に訂正するものであり、本件訂正前の本件特許明細書の段落【0024】における「<風道フード7>」との記載や、図面において「風道フード」の付番が「7」である記載と一致せず、この点で不明瞭であった記載を明瞭にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ.新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項5は、「風道フード9」という記載を「風道フード7」という記載に訂正するものであるところ、上記で示したとおり、「風道フード」について、本件訂正前の本件特許明細書の段落【0024】には「<風道フード7>」と記載されており、図面において「風道フード」の付番が「7」である記載があるから、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことが明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。
(6)特許請求の範囲の訂正が、一群の請求項に対してなされたものであるかについて
訂正事項1、2は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1、請求項5についての訂正である。また、本件訂正前の請求項2~5は、請求項1を直接または間接に引用しているから、請求項1~5は一群の請求項である。
ゆえに、訂正事項1、2は、一群の請求項1~5に対して請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
(7)明細書の訂正が、一群の請求項全てに対して行われているかについて
訂正事項3~5は、それぞれ、本件特許明細書の【0009】、【0016】、【0023】についての訂正であるところ、【0009】、【0016】は、それぞれ、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1、5に対応する事項を記載するものであり、【0023】は本件訂正前の請求項1~5に対応する実施例の一部を記載するものであるから、訂正事項3~5は一群の請求項1~5に関連する訂正である。
ゆえに、訂正事項3~5は、一群の請求項1~5の全てに対して行われたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項の規定に適合する。
(8)申立人の主張について
申立人は、意見書において、「訂正前の請求項1においては、「襟の後方裏面側」とされ、風道フードが配設される襟の面に係る限定がなされていたのに対し、訂正後の請求項1においては、「襟の後方側」とされているのみで、風道フードが配設される襟の面に係る限定は一切なされておりません。」、「したがって、本件訂正の訂正事項1が、実質上特許請求の範囲を拡張するものとして、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に違反することは明らかです。」と主張している。
しかしながら、上記(1)イ.及びウ.に示したように、本件訂正前の本件特許明細書における「風道フード7は・・・下方端部を襟15の後部側に縫着している。」(【0025】参照)との記載、及び図1、2、10の図示を踏まえると、「風道フード7」が配設される「襟の後方裏面側」とは、本来「襟の後方側」と記載すべきであったものといえる。そうすると、「襟の後方裏面側」という記載から、「裏面」を削除して、「襟の後方側」という記載とする訂正は、訂正の前後で記載しようとする技術的事項が相違するとはいえないから、当該訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張するものとはいえない。したがって、上記申立人の主張は、当を得たものとはいえず、採用することができない。
3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1~3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4~6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-5〕について、訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1.本件発明
本件訂正請求が認められたことにより、本件特許の請求項1~5に係る発明(以下、「本件発明1~5」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
衣服用ファンを取り付けて衣服内に空気を送風する空調衣服であって、
衣服外部と内部とを連通するように後身頃の下方の左右に設けられた衣服用ファン取付用孔と、
下方端部において襟の後方側に配設されており、上方端部においてヘルメットに接続される略矩形の風道フードと、
を具備し、
前記襟が、前記風道フードを内部に収納可能な構成を有すること、
を特徴とする空調衣服。
【請求項2】
衣服外部と内部とを連通するように前記後身頃の略背筋上方部にハーネス接続環露出用孔を具備すること、
を特徴とする請求項1に記載の空調衣服。
【請求項3】
前記衣服用ファン取付用孔が、縁部にリング状布を具備すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の空調衣服。
【請求項4】
前記リング状布に脱着自在で前記リング状布の孔を閉孔可能な閉孔蓋を有すること、
を特徴とする請求項3に記載の空調衣服。
【請求項5】
(削除)」
2.取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~5に係る特許に対して、平成30年6月11日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
刊行物1:国際公開第2016/016996号
刊行物2:登録実用新案第3198778号公報
刊行物3:特開2015-65998号公報
刊行物4:国際公開第2006/077876号
刊行物5:登録実用新案第3166330号公報
刊行物1~5は、それぞれ、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に添付された甲第1号証~甲第5号証である。
(取消理由1)請求項1に係る発明は、「襟の後方裏面側」という記載が不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないものであり、請求項1に係る特許は、取り消されるべきものである。また、上記請求項1に係る特許を直接又は間接に引用する請求項2~5に係る特許についても同様である。
(取消理由2)請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、請求項1に係る特許は、取り消されるべきものである。
(取消理由3)請求項1~4に係る発明は、刊行物1~5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、請求項1~4に係る特許は、取り消されるべきものである。
3.刊行物の記載及び刊行物発明
(1)刊行物1について
刊行物1の[0001]、[0013]、[0015]、[0022]、[0023]に記載の事項、及び図1~3の図示を踏まえると、刊行物1には次の発明が記載されている(以下、「刊行物1発明」という。)
「ファンを含む送風手段20を取り付けて服本体10内に空気を送風するヘルメット対応空調服1であって、
服本体10外部と内部とを連通するように後身頃の下方の左右に設けられたファンを含む送風手段20用の孔と、
一端において襟後部12に連なっており、先端部においてヘルメット110に取り付けられる略矩形の案内シート70と、
を具備する、
ヘルメット対応空調服1。」
(2)刊行物2について
刊行物2の【0001】、【0010】、【0011】に記載の事項、及び図1~4の図示を踏まえると、刊行物2には次の事項が記載されている。
「空調服10外部と内部とを連通するように後身頃に命綱16を引き出すための取出し筒13を具備すること。」
(3)刊行物3について
刊行物3の【0001】、【0021】に記載の事項、及び図1の図示を踏まえると、刊行物3には次の事項が記載されている。
「ファン90の筒状部911を挿入するための開口部20が、縁部に裏地30を具備すること。」
(4)刊行物4について
刊行物4の[0001]、[0038]に記載の事項、及び図2(a)の図示を踏まえると、刊行物4には次の事項が記載されている。
「送風手段50を取り付けるための孔部11が、周囲部に面状ファスナー12を具備すること。」
(5)刊行物5について
刊行物5の【0001】、【0025】、【0026】に記載の事項、及び図1、2の図示を踏まえると、刊行物5には次の事項が記載されている。
「面ファスナー雌5に脱着自在で前記面ファスナー雌5の衣服側通気孔4を閉孔可能な装飾蓋2を有すること。」
4.判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア.取消理由1について
(ア)本件訂正請求が認められたことにより、本件発明1~4についての特許請求の範囲の記載は、上記1.に示したとおりであり、その記載に用いられている用語や各発明特定事項の関係に不明確な点はなく、その記載のとおり、本件発明1~4を明確に把握することができる。
ゆえに、本件発明1~4は、明確であるといえる。
したがって、本件発明1~4の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしており、取消理由1によって本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。
(イ)また、本件訂正請求が認められたことにより、本件発明5は削除された。
ゆえに、本件発明5を対象とする取消理由1は、理由のないものとなった。
イ.取消理由2について
(ア)本件発明1と刊行物1発明を対比すると、刊行物1発明における「ファンを含む送風手段20」、「服本体10」、「ヘルメット対応空調服1」、「一端」、「先端部」、「ヘルメット110」、「案内シート70」は、それぞれ、本件発明1における「衣服用ファン」、「衣服」、「空調衣服」、「下方端部」、「上方端部」、「ヘルメット」、「風道フード」に相当する。また、刊行物1発明における「ファンを含む送風手段20用の孔」は、本件発明1における「衣服用ファン取付用孔」に相当する。
(イ)そうすると、本件発明1と刊行物1発明とは、少なくとも、次の<相違点1>で相違する。
<相違点1>
本件発明1では、襟が風道フードを内部に収納可能な構成を有しているのに対し、刊行物1発明では、このような構成を有しているかは明らかでない点。
(ウ)本件発明1と刊行物1発明とは、少なくとも、上記<相違点1>で相違する。そして、相違点1は、風道フードを収納するための襟の構成についての相違点であるから、実質的な相違点である。よって、本件発明1は刊行物1発明ではない。
したがって、取消理由2によって本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。
ウ.取消理由3について
(ア)上記イ.(イ)で示したとおり、本件発明1と刊行物1発明とは、少なくとも、上記<相違点1>で相違する。
刊行物1には、<相違点1>の本件発明1に係る構成である、襟を風道フードを内部に収納可能な構成を有する点について、記載ないし示唆されていない。
また、刊行物2~5にも、<相違点1>の本件発明1に係る構成である、襟を風道フードを内部に収納可能な構成を有する点について、記載ないし示唆されていない。
そして、本件発明1は、<相違点1>に係る構成を有することで、ヘルメットを使用しない場合、風道フードを襟内部に収納することができるという、格別な作用効果を奏する。
ゆえに、本件発明1は、刊行物1発明及び刊行物2~5に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、取消理由3によって、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。
(イ)また、本件発明2~4は、上記本件発明1を直接又は間接に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項にさらに技術的限定を加えたものである。ゆえに、本件発明2~4は、上記本件発明1と同様、刊行物1発明及び刊行物2~5に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、取消理由3によって、本件発明2~4に係る特許を取り消すことはできない。
(ウ)また、本件訂正により、本件発明5は削除された。
ゆえに、本件発明5を対象とする取消理由3は、理由のないものとなった。
(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
ア.申立人は、申立書の4(3)オにおいて、「甲第6号証(当審注:特開2003-313706号公報)には、フード41を使用しないときには、中襟12と外襟13との間に収納することができるフード付防水性衣服の襟構造につき記載されている(請求項1及び段落0008)。」、「また、甲第7号証(当審注:特開平7-216605号公報)には、襟部2が貯水袋11を内装し、貯水袋11内にフード12を収納することのできる防水衣料1につき記載されている(請求項1及び段落0021)。」と主張した上で、「甲1発明は空調衣服に係る発明であり、甲6発明及び甲7発明は、防水性を有する衣服に係る発明であるものの、両者はフードを有する上衣であるという点で共通しており、甲1発明に、甲6発明又は甲7発明を適用することが、当業者にとって容易であったことは明らかである。」と主張している。
しかしながら、甲1(刊行物1)の[0045]には、「尚、上記の各実施形態では、主にヘルメットの着用時にヘルメット対応空調服を使用する場合について説明したが、当然、ヘルメットを着用しないときにも本発明のヘルメット対応空調服を使用することができる。この場合には、案内シートや取付手段を襟後部に垂らした状態で本発明のヘルメット対応空調服を使用すればよい。」と記載されており、そもそも、甲1には、「案内シート」(フード)について、襟に収納する発明を適用する動機が示されていない。
また、甲1の[0025]には、「上述したように、噴出部60は、使用者の首後部と服本体10の襟後部12との間に形成された開口部であり、空気流通路内を流通してきた空気は、この噴出部60を介して案内シート70の側に噴出することになる。第一実施形態では、服本体10と案内シート70とが一体化されているため、噴出部60の位置を明確に特定することはできないが、定義上は、使用者の首後部に対応する服本体10の部位を噴出部60として捉えることができる。」と記載されており、[0028]には、「・・・また、案内シート70が服本体10の襟後部12に連なっているので、噴出部60から噴出される大量の空気を案内シート70に沿って効率よくヘルメット110に導いて、ヘルメット110の内縁と使用者の頭部との間に形成される空気導入口114(図4参照)からヘルメット110内に導入することができる。・・・」と記載されている。この記載及び図1~3の図示を踏まえると、甲1発明では、案内シート70を服本体10の襟後部12に連続的に備えることで、服本体10側からヘルメット110側に向けて空気を効率よく導くようにしたものであるといえる。しかしながら、甲6では、フード41と衣服の後身頃の間には襟部があり、フード41と衣服の後身頃とは連続的ではない(【0007】~【0009】、図1~3参照)。また、甲7でも、フード12と防水衣料1の後身頃との間には襟部2があり、フード12と防水衣料1の後身頃とは連続的ではない(【0016】~【0026】、図1~6参照)。甲1発明に、このような甲6事項又は甲7事項を適用すると、服本体側からヘルメット側に向けての空気の流れの効率が低下することは明らかであるから、そのような適用には阻害要因があるといえ、甲1発明に甲6事項又は甲7事項を適用することは、当業者であっても容易であるとはいえない。
したがって、上記申立人の主張を採用することはできない。
(3)申立人の意見について
申立人は、意見書と共に甲第8号証(表紙に「2015」、「空調服」と表記され、裏表紙裏に「株式会社空調服」と表記されたカタログ)及び甲第9号証(表紙に「SUN-S空調服」、「2015」と表記され、裏表紙裏に「SUN-S」と表記されたカタログ」を提出し、同意見書の3.(3)において、「甲第8号証の第11頁の上部に記載された「フード付ポリエステル製長袖ブルゾン」は、明らかに襟内に収納される「収納式フード(ヒモ付き)」を備えており、また、甲第9号証の第12頁に記載された「フード付スタッフジャンパー」は、襟を指して「フード収納」とされており、明らかに襟内にフードが収納されることが予定されております。」、「これらの点に鑑みれば、空調衣服の技術分野において、襟が、フードを内部に収納可能な構成を有することが、周知の技術に過ぎなかったことは明らかです。」と主張した上で、「したがって、訂正発明1は、甲1発明に、上記のような周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであり、進歩性を有しません。」、「また、訂正発明2から4については、・・・訂正発明1が進歩性を有しない場合にこれらが進歩性を有しない」と主張している。
この点、甲第8号証及び甲第9号証について、申立人は、平成30年12月12日に提出した回答書において、甲第10~14号証を提出し、「本件特許の出願日である平成28年11月4日の前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物に該当する」と主張している。しかしながら、甲第10~14号証には、カタログの表紙と内容の一部が開示されているところ、一般に、カタログは商品の仕様変更等によりその内容が変遷することが多いことからすると、甲第10~14号証に示されたカタログが、申立人が意見書と共に提出した甲第8号証及び甲第9号証と同一のものであるとはいえない。ゆえに、甲第10~14号証をもってしても、甲第8号証及び甲第9号証が、本件特許の出願日前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物であるとはいえない。
仮に、申立人の上記主張のとおり、甲第8号証及び甲第9号証が、本件特許の出願日前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物であり、空調衣服の技術分野において、襟が、フードを内部に収納可能な構成を有することが、周知の技術であったとしても、以下に示すように、訂正発明1(本件発明1)は、甲1発明に、上記周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
なぜなら、甲1発明では、上記(2)で示したように、案内シート70を服本体10の襟後部12に連続的に備えることで、服本体10側からヘルメット110側に向けて空気を効率よく導くようにしたものであるところ、甲第8号証及び甲第9号証は、空調服のカタログであって、フードが服本体に連続的に構成されるとの技術的思想が記載されている、あるいは示唆する記載があるとまではいえない。そうすると、甲1発明に甲第8号証及び甲第9号証に例示された周知の技術を適用すると空気の流れの効率性が維持されることは期待できないから、甲1発明に上記周知の技術を適用することは、当業者であっても容易であるとはいえないからである。
したがって、上記申立人の主張を採用することはできない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件特許の請求項5は、本件訂正が認められることにより、削除されたため、本件特許の請求項5について、申立人がした特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなった。
ゆえに、本件特許の請求項5についての特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700043