特許異議申立
2020-700717
成形用不織布及び自動車用表皮材
- 審判番号
- 2020-700717
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-025475外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6672003
- 請求日
- 2020年09月18日
- 審決日
- 2022年06月14日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本バイリーン株式会社
- 【異議申立人】平居 博美
- 分類
- P1651.121-YAA(D04H) / P1651.536-YAA(D04H) / P1651.537-YAA(D04H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6672003号発明「成形用不織布及び自動車用表皮材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6672003号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1及び2〕について訂正することを認める。
特許第6672003号の請求項1及び2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6672003号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成28年2月15日(優先権主張 平成27年2月19日)に出願され、令和2年3月6日にその特許権の設定登録がされ、令和2年3月25日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和2年 9月18日 : 特許異議申立人平居博美(以下「申立人」という。)による請求項1及び2に係る特許に対する特許異議の申立て
令和2年12月 4日付け: 取消理由通知書
令和3年 2月 5日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和3年 4月13日 : 申立人による意見書の提出
令和3年11月24日付け: 取消理由通知書(決定の予告)
令和4年 1月31日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
なお、令和3年2月5日の訂正請求書による訂正請求は、特許法第120の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求は、特許第6672003号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「繊維ウエブに、繊維結合用バインダが付与された成形用不織布であって」とあるのを、「繊維ウエブに、繊維結合用バインダ及びプリントが付与された成形用不織布であって」に訂正する。
(2)訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「前記成形用不織布のよこ方向における、20%伸長時応力が24~36N/3cm幅であることを特徴とする」とあるのを、「前記成形用不織布のよこ方向における、20%伸長時応力が24~36N/3cm幅であり、前記成形用不織布のたて方向における、20%伸長時応力が45~75N/3cm幅であることを特徴とする」に訂正する。(請求項1を引用する請求項2についても同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「成形用不織布。」とあるのを、「成形用不織布(但し、成形用不織布中の繊維結合用バインダの含浸層の厚さが成形用不織布の厚さの1/2以下のものを除く)。」に訂正する。(請求項1を引用する請求項2についても同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
訂正前の明細書の段落【0006】に、「繊維ウエブに、繊維結合用バインダが付与された成形用不織布であって、前記繊維ウエブの目付が150~200g/m2であり、前記繊維結合用バインダ量が7g/m2以下であり、前記繊維結合用バインダのガラス転移温度が-15℃以下であり、前記成形用不織布のよこ方向における、20%伸長時応力が24~36N/3cm幅であり、前記成形用不織布のたて方向における、20%伸長時応力が45~75N/3cm幅であることを特徴とする、成形用不織布。」とあるのを、「繊維ウエブに、繊維結合用バインダ及びプリントが付与された成形用不織布であって、前記繊維ウエブの目付が150~200g/m2であり、前記繊維結合用バインダ量が7g/m2以下であり、前記繊維結合用バインダのガラス転移温度が-15℃以下であり、前記成形用不織布のよこ方向における、20%伸長時応力が24~36N/3cm幅であり、前記成形用不織布のたて方向における、20%伸長時応力が45~75N/3cm幅であることを特徴とする、成形用不織布(但し、成形用不織布中の繊維結合用バインダの含浸層の厚さが成形用不織布の厚さの1/2以下のものを除く)。」に訂正する。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の繊維結合用バインダが付与された成形用不織布について、本件明細書の【0027】、【0062】~【0068】、【0077】~【0084】及び【0093】の記載に基づき、繊維結合用バインダ及びプリントが付与された成形用不織布と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載された事項の範囲内においてするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1の成形用不織布のたて方向における20%伸長時応力を追加して限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
本件特許明細書の段落【0039】の記載から、訂正事項2の上記訂正は、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。また、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項1の成形用不織布について、引用文献に記載された事項との重複範囲を除くことで、発明特定事項を限定するものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項1乃至3の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載の整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明に該当するものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
なお、本件訂正請求は、一群の請求項〔1及び2〕に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1及び2〕について請求されたものである。
3 小括
したがって、訂正事項1乃至4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1及び2〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1」等といい、総称して「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
繊維ウエブに、繊維結合用バインダ及びプリントが付与された成形用不織布であって、
前記繊維ウエブの目付が150~200g/m2であり、
前記繊維結合用バインダ量が7g/m2以下であり、
前記繊維結合用バインダのガラス転移温度が-15℃以下であり、
前記成形用不織布のよこ方向における、20%伸長時応力が24~36N/3cm幅であり、前記成形用不織布のたて方向における、20%伸長時応力が45~75N/3cm幅であることを特徴とする、成形用不織布(但し、成形用不織布中の繊維結合用バインダの含浸層の厚さが成形用不織布の厚さの1/2以下のものを除く)。
【請求項2】
請求項1に記載の成形用不織布からなることを特徴とする自動車用表皮材。」
第4 取消理由の概要
取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由の概要は次のとおりである。
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
甲1:特開平9-137372号公報
甲2:特開2014-214395号公報(周知例)
甲3:特開2016-35127号公報
甲4:特開昭62-202731号公報
甲5:特開昭62-282056号公報
第5 取消理由についての判断
1 理由(特許法第29条第2項)について
(1)甲1に記載された発明
ア 甲1の記載
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ニードルパンチ不織布の一方表面の起毛がおさえられ、該起毛がおさえられた表面に樹脂が含浸されてなる自動車内装材用表皮材。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車内装材用表皮材およびそれを用いてなる自動車内装材に関する。さらに詳しくは、たとえば天井材、ピラー材、ドアトリム材、リアパッケージ材などとして好適に用いることができる自動車内装材およびそれに用いられる表皮材に関する。」
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、空気中に含まれている粒子の付着による汚れが生じにくい自動車内装材およびそれに用いられる表皮材を提供することを目的とする。」
「【0028】また、表皮材中の樹脂の含浸層の厚さは、防汚性を充分に向上させるためには、表皮材の厚さの1/30以上であることが好ましく、また成形性、ソフトな風合および意匠性が損われないようにするためには、表皮材の厚さの1/2以下、なかんづく1/3以下であることが好ましい。」
「【0035】実施例1~6
ポリエステル繊維(繊維長51mm、繊度3デニール、融点250~270℃)と、熱接着性繊維として低融点ポリエステル繊維(繊維長51mm、繊度4デニール、融点110~150℃)とを表1に示す割合で混合した繊維ウェブにニードルパンチ処理を施し、ニードルパンチ不織布をえた。
【0036】えられたニードルパンチ不織布を、ロール間のスリットが0.5mmである加熱ロール(温度165℃)と非加熱ロールとからなる一対のカレンダーロール間に導入し、一方表面の起毛をおさえた。その結果、ニードルパンチ不織布の一方表面の起毛は、実質的に目視によっては認められなくなり、表面は平滑な状態となった。
【0037】つぎに、ニードルパンチ不織布の起毛がおさえられた面に、泡立て含浸法によりアクリル酸エステル系樹脂エマルジョン(樹脂のガラス転移温度-30~-20℃)を含浸させ、乾燥させて自動車内装材用表皮材をえた。
【0038】えられた自動車内装材用表皮材の樹脂の含浸量(固形分量)、樹脂量を調べた。その結果を表1に示す。」
「【0052】
【表1】
[図:0001388328000001.jpg]
【0053】表1に示された結果から、実施例1~6でえられた表皮材は、いずれも空気中に含まれている粒子の付着による汚れが生じにくいことがわかる。
【0054】実施例7~12
実施例1~6でえられた表皮材の樹脂が含浸されていない面にホットメルトフィルムを貼りつけ、このフィルム面が接するように、基材として加熱されたレジンフェルトに積層し、ついでこの積層物を金型によりコールドプレス成形して一体化することにより、自動車内装材をえた。
【0055】えられた自動車内装材は、いずれもニードルパンチ不織布にもとづくソフトな風合を有し、軽量で耐熱性があり、金型に合わせて忠実に成形されており、成形形状の保持性も高く、さらには表面に汚れが付着しにくい防汚性にすぐれたものであった。」
イ 甲1に記載された発明
甲1には、特に実施例3~6に注目すると、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「目付が195g/m2のニードルパンチ不織布に、樹脂を含浸量5g/m2で含浸させ、乾燥させた自動車内装材用表皮材であって、樹脂は、アクリル酸エステル系樹脂エマルジョン(樹脂のガラス転移温度-30~-20℃)である、自動車内装材用表皮材。」
(2)本件発明1
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「ニードルパンチ不織布」は本件発明1の「繊維ウエブ」に相当し、以下同様に、「樹脂」は「繊維結合用バインダ」に、「自動車内装材用表皮材」は「成形用不織布」に、それぞれ相当する。
甲1発明の「ニードルパンチ不織布」の「目付が195g/m2」であることは、本件発明1の「前記繊維ウエブの目付が150~200g/m2」であることの範囲内である。
甲1発明の「樹脂」の「含浸量」が「5g/m2」であることは、本件発明1の「前記繊維結合用バインダ量が7g/m2以下」であることの範囲内である。
甲1発明の「樹脂」が「アクリル酸エステル系樹脂エマルジョン(樹脂のガラス転移温度-30~-20℃)」であることは、本件発明1の「前記繊維結合用バインダのガラス転移温度が-15℃以下であ」ることの範囲内である。
甲1発明の「樹脂」を「含浸」、「乾燥」させる態様は、本件発明1の「繊維結合用バインダが付与され」る態様に相当する。
よって、本件発明1と甲1発明は、以下の点で一致し、相違する。
(一致点)
「繊維ウエブに、繊維結合用バインダが付与された成形用不織布であって、
前記繊維ウエブの目付が150~200g/m2であり、
前記繊維結合用バインダ量が7g/m2以下であり、
前記繊維結合用バインダのガラス転移温度が-15℃以下である、
成形用不織布。」
(相違点1)
繊維結合用バインダが付与された成形用不織布について、本件発明1は、プリントも付与された成形用不織布であるのに対し、甲1発明は、プリントの付与について不明である点。
(相違点2)
本件発明1は、「前記成形用不織布のよこ方向における、20%伸長時応力が24~36N/3cm幅であり、前記成形用不織布のたて方向における、20%伸長時応力が45~75N/3cm幅であることを特徴とする、成形用不織布(但し、成形用不織布中の繊維結合用バインダの含浸層の厚さが成形用不織布の厚さの1/2以下のものを除く)。」であるのに対して、甲1発明は、そのように特定されてない点。
イ 判断
事案に鑑み、先に相違点2について検討する。
甲1の記載を参照すると、「【0028】また、表皮材中の樹脂の含浸層の厚さは、…成形性…が損われないようにするためには、表皮材の厚さの1/2以下、なかんづく1/3以下であることが好ましい。」とされており、甲1発明は、含浸層の厚さを、表皮材の厚さの1/2以下の小さな値を採用することで成形性を保つものであるから、含浸層の厚さを表皮材の厚さの1/2を超える値とすることの動機付けはない。
この点、甲2、甲3、甲4及び甲5は、たて方向及びよこ方向の伸長時応力に係る技術文献であり、甲1発明における含浸層の厚さを、表皮材の厚さの1/2を超える値とすることの記載ないし示唆はない。
そうすると、相違点1を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明並びに甲2、甲3、甲4及び甲5の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、上記述べた理由と同様に、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第6 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 サポート要件(特許法第36条第6項第1号)及び実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)について
本件発明の課題は「【0005】…バインダで接着及び/又はプリントした不織布であっても成形性に優れる成形用不織布、及び自動車用表皮材を提供すること」である。
本件明細書の発明の詳細な説明には、次の事項が記載されている。
「【0037】…本発明の成形用不織布は前述のような繊維ウエブに、繊維結合用バインダ及び/又はプリントが付与されたものであるが、よこ方向における、20%伸長時応力が24~36N/3cm幅であると、成形性に優れていることを見出したのである。」
「【0039】…成形用不織布のたて方向における、20%伸長時応力は成形性に優れているように、40~80N/3cm幅であるのが好ましく、45~75N/3cm幅であるのがより好ましく、50~70N/3cm幅であるのが更に好ましい。」
「【0091】…(成形性の評価)…各成形用不織布をウレタン基材と重ねて積層体とした後、約120~140℃に加熱された上下一対の金型により、数十秒間、加圧して積層体を成形した。その後、金型から成形した積層体を取り出し、各成形用不織布面における外観を、目視により、次の基準で評価した。この結果は表1に示す通りであった。
【0092】
○:皺や凹凸がなく、成形性に優れる
×:皺及び/又は凹凸があり、成形性が悪い
【0093】
[図:0001388328000002.jpg]
」
他方、本件発明には、「前記成形用不織布のよこ方向における、20%伸長時応力が24~36N/3cm幅であり、前記成形用不織布のたて方向における、20%伸長時応力が45~75N/3cm幅であること」が特定されており、特に上記【表1】によれば、当該発明特定事項に係る両方向における数値範囲を満たす成形用不織布において、成形性が優れると評価されている。そうすると、本件発明は、発明の詳細な説明の記載により課題を解決できると認識できる範囲のものである。
また、実施例1ないし実施例3の記載(【0061】~【0084】)からみて、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
2 申立人の主張
(1)申立人は、繊維ウェブ構成繊維の配向方向が規定されてない本件発明は、サポート要件(特許法第36条第6項第1号)及び実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)を満足しない旨、また、規定するとしても配向方向は不明確である旨(特許法第36条第6項第2号違反)について主張しているが、上記1で述べたとおり、本件発明は課題解決手段を備えるものであり、且つ、発明の詳細な説明に基づき、本件発明を実施できるものであるから、申立人の主張は採用できない。
(2)申立人は、プリント樹脂量が規定されていない本件発明は、サポート要件(特許法第36条第6項第1号)及び実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)を満足しない旨の主張をしている。
しかしながら、本件発明は、訂正により「プリント」を備えるものとして特定され、当該「プリント」を含めた「成形用不織布」全体で、「よこ方向」及び「たて方向」それぞれの「20%伸長時応力」を規定するものとなった。そうすると、本件発明は、課題解決手段を備えるものであり、且つ、発明の詳細な説明に基づき、本件発明を実施できるものであるから、申立人の主張は採用できない。
(3)申立人は、繊維結合用バインダの付与方法が規定されてないことに加えて、繊維結合用バインダの付与面が規定されてない、すなわち、ニードリング面に繊維結合用バインダの樹脂溶液を塗布することで課題を解決できるかは不明であることから、本件発明は、サポート要件(特許法第36条第6項第1号)及び実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)を満足しない旨の主張をしているが、申立人も述べるとおり、本件発明は泡立てた繊維結合用バインダの樹脂溶液を用いて全面塗布とする記載により製造が可能であるし、全面塗布に係る他の適宜手段を用いることも自ずと理解できるものである。そして、本件発明は上記述べたとおり、課題解決手段を備えるものであり、発明の詳細な説明に基づき、本件発明を実施できるものであるから、申立人の主張は採用できない。
(4)申立人は、甲3の同様の評価に係る記載の存在により、本件発明の構成要件を満たすのみでは、効果を奏するとは考え難く、本件発明は、サポート要件(特許法第36条第6項第1号)及び実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)を満足しない旨の主張をしているが、甲3は、成形性の評価ではなく、成形後の表面意匠性の評価を行うものであり、両者は評価が異なり、申立人の主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700717