2020-700239
銅フィリングされた銅めっき層のエッチング方法
- 審判番号
- 2020-700239
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-004871外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年04月06日
- 審決日
- 2020年08月12日
- 公報発行日
- 2020年10月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社JCU
- 【権利者代理人】特許業務法人 小野国際特許事務所
- 【異議申立人】山内 博明
- 分類
- P1651.121-Y (C23F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
特許第6600564号の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成28年1月14日に出願されたものであって、令和1年10月11日に特許の設定登録(特許掲載公報発行日 令和1年10月30日)がされ、令和2年4月6日に、全請求項に対して、特許異議申立人 山内博明(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。
第2 本件発明
特許第6600564号の請求項1~5の特許に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、それぞれその特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
【請求項1】
銅フィリングされた銅めっき層を、過酸化水素、酸および低級アルコールを含有するエッチング液であって、
酸が、硫酸または硫酸水素ナトリウムであり、
液中の水素イオンと過酸化水素のモル濃度比が0.250以下であるエッチング液でエッチングすることを特徴とする銅フィリングされた銅めっき層のエッチング方法。
【請求項2】
低級アルコールが1-プロパノール、2-プロパノール、2-メチル-2-プロパノールから選ばれる1種または2種以上である請求項1記載の銅フィリングされた銅めっき層のエッチング方法。
【請求項3】
銅フィリングされた銅めっき層のエッチングを含むプリント配線板の製造方法において、請求項1または2に記載の銅フィリングされた銅めっき層のエッチング方法で、銅フィリングされた銅めっき層をエッチングすることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
過酸化水素、酸および低級アルコールを含有するエッチング液であって、
酸が、硫酸または硫酸水素ナトリウムであり、
液中の水素イオンと過酸化水素のモル濃度比が0.250以下であることを特徴とする銅フィリング用エッチング液。
【請求項5】
低級アルコールが1-プロパノール、2-プロパノール、2-メチル-2-プロパノールから選ばれる1種または2種以上である請求項4記載の銅フィリング用エッチング液。
第3 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠方法として、後記する甲第1号証~甲第6号証(以下、「甲1」等という。)を提出し、以下の異議申立理由により、本件発明1~5に係る特許を取り消すべきものである旨、主張した。
1 異議申立理由1(進歩性)
本件発明1~5は、甲1に記載された発明、甲2、甲3に記載された事項及び甲4~6に記載された周知慣用技術に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。
2 証拠方法
(1)甲第1号証:「銅めっきハーフエッチング時に発生する孔食に関する 研究」、松原寿恵、他3名、第127回表面技術協会講 演大会講演要旨集、155-156頁
(甲第1の2号証より、甲第1号証の発行日は「201 3年3月6日」であると認められる。)
(2)甲第2号証:特公昭43-2761号公報
(3)甲第3号証:特公昭47-16961号公報
(4)甲第4号証:「最新表面処理技術総覧」、昭和62年12月21日、 株式会社産業技術サービスセンター、1094-109 5頁
(5)甲第5号証:「最新表面処理技術総覧」、昭和62年12月21日、 株式会社産業技術サービスセンター、136-141頁
(6)甲第6号証:「東大阪市技術交流プラザ 技術用語集 エッチング」 、[online]、2017年3月10日、http://www.techp laza.city.higashiosaka.osaka.jp/help/word/surface_ treatment/etching.html
第4 当審の判断
1 甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
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(1)甲1の記載事項
ア 甲1には、以下の記載がある。なお、下線は当審が付与したものであって、「・・・」は記載の省略を表す(以下同様)。
「1.緒言近年、電子機器の小型化、軽量化が進み、プリント配線板の更なる微細化へ要求が高まっている。よって回路形成に用いられる銅めっきには、高い品質の皮膜形成技術が要求される為、・・・そこで、本研究ではビアフィルめっき浴および、コンフォーマルめっき浴による銅めっきに対してハーフエッチングを行い、孔食発生メカニズムの検討を目的とする。」(1頁「1.緒言」の第1~7行)
「2.実験方法・・・2.1 QCM測定・・・めっき浴は表1に示す組成のblankめっき浴、ビアフィルめっき浴、コンフォーマルめっき浴の3種類を使用し、基板へ約1μmめっきを行った。その後、めっき膜に対し35℃、撹拌1220rpmに設定した硫酸-過酸化水素系エッチング液を用いてエッチングを行い、エッチング時のQCM測定を行った。」(1頁「2.実験方法 2.1 QCM測定」の第5~8行)
「」
イ 上記アの記載によれば、甲1には、以下の事項が記載されている。
(ア)甲1に記載された研究の内容は、プリント配線板の回路形成に用いられる銅めっき膜に対するハーフエッチングに関するものであること
(イ)上記「銅めっき」について、「ビアフィルめっき浴」によるものが挙げられていること
(ウ)また、上記「ハーフエッチング」について、「硫酸-過酸化水素系エッチング液」を用いること
(2)引用発明
前記(1)イによれば、甲1には、以下の「甲1A発明」~「甲1C発明」が記載されていると認められる。
(甲1A発明)
「ビアフィルめっき浴による銅めっき膜を硫酸-過酸化水素系エッチング液でエッチングする方法。」
(甲1B発明)
「ビアフィルめっき浴による銅めっき膜のエッチングを含むプリント配線板の回路形成方法において、硫酸-過酸化水素系エッチング液でエッチングするプリント配線板の回路形成方法。」
(甲1C発明)
「ビアフィルめっき浴による銅めっき膜のエッチングに使用する硫酸-過酸化水素系エッチング液。」
2 甲2~6の記載事項
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(1)甲2の記載事項
ア 甲2には、以下の記載がある。
「発明の詳細な説明本発明は銅及び銅合金の化学研磨法に関するもので、その目的とする所は容易且安全な操作による均一な光沢面を得るところにある。さらに詳細には銅及び銅合金を硫酸、過酸化水素、飽和脂肪族アルコールを含む水溶液で処理し表面に酸化膜を生成せしめた後この酸化膜を酸の稀薄水溶液で溶解除去して光輝ある表面を得る化学研磨法に関するものである。・・・本発明に於て硫酸と過酸化水素のモル比はH2SO4/H2O2で0.23以下である。何故ならばこのモル比が本発明の範囲を超える時は酸化皮膜の生成が充分でない。・・・本発明の如く、アルコール添加下に処理を行う時は研磨時における研磨液中の過酸化水素の分解は抑制され均一な酸化被膜の生成が可能である。・・・」(1頁「発明の詳細な説明」の左欄第1行~同頁右欄第27行)
「特許請求の範囲1 硫酸と過酸化水素のモル比(H2SO4/H2O2)が0.23以下の水溶液に更に飽和脂肪族アルコールの一種又は数種を添加した溶液で銅又は銅合金製の被研磨物を処理した後酸の稀薄水溶液で処理することを特徴とする銅又は銅合金の化学研磨法。」
イ 上記アの記載によれば、甲2には、以下の事項が記載されている。
(ア)甲2に記載の銅又は銅合金の化学研磨法は、容易且安全な操作による均一な光沢面を得ることを目的とすること
(イ)上記目的は、銅及び銅合金を硫酸、過酸化水素、飽和脂肪族アルコールを含む水溶液で処理し表面に酸化膜を生成せしめた後この酸化膜を酸の稀薄水溶液で溶解除去することにより達成できること
(ウ)そして、上記「硫酸、過酸化水素、飽和脂肪族アルコールを含む水溶液」について、硫酸と過酸化水素のモル比(H2SO4/H2O2)は「0.23以下」とし、この範囲を超える時は酸化皮膜の生成が充分でないこと
(エ)また、「飽和脂肪族アルコール」の添加により、研磨液中の過酸化水素の分解は抑制され均一な酸化被膜の生成が可能となること
(2)甲3の記載事項
ア 甲3には、以下の記載がある。なお、甲3の記載中で引用されている「特公昭43-2761号」は、甲2である。
「発明の詳細な説明本発明は銅及び銅合金の化学研磨法に関するもので、先に提出せる特許第586368号(特公昭43-2761号)の追加に関するものである。・・・即ち、本発明は硫酸過酸化水素と飽和脂肪族アルコールを含む溶液で銅又は銅合金製の被研磨物を処理した後、アンモニア、青化ソーダの如きアルカリ又はEDTAの如き錯塩生成物質の溶液で酸化被膜を溶解除去して均一な光沢面を得るものである。」(1頁「発明の詳細な説明」の左欄第1~17行)
「追加の関係・・・原発明特許第586368号(特公昭43-2761号)は「硫酸と過酸化水素のモル比(H2SO4/H2O2)が0.23以下の水溶液に更に飽和脂肪族アルコールの一種又は数種を添加した溶液で銅又は銅合金の被研磨物を処理した後酸の稀薄水溶液で処理することを特徴とする銅又は銅合金の化学研磨法。」であるから、本発明は原発明の化学研磨法に於て後処理をアルカリ溶液又は金属と錯塩を形成する物質の溶液で処理する点が異なるだけで両発明の主要部は同一であって、同一の目的の達成するものであるから本発明は原発明と追加の関係を有するものである。」(2頁「追加の関係」の右欄第1~13行)
「特許請求の範囲1 硫酸と過酸化水素のモル比が0.23以下の水溶液に更に飽和脂肪族アルコールの1種又は数種を添加した溶液で銅又は銅合金製の被研磨物を処理した後アルカリ溶液又は金属と錯塩を作って、これを溶解する物質の溶液で処理することを特徴とする、銅又は銅合金の化学研磨法。」
イ 上記アの記載によれば、甲3には、以下の事項が記載されている。
(ア)甲3に記載の銅又は銅合金の化学研磨法は、甲2に記載の銅又は銅合金の化学研磨法とその目的が同一であること
(イ)また、甲3に記載の銅又は銅合金の化学研磨法は、後処理をアルカリ溶液又は金属と錯塩を形成する物質の溶液で処理する点のみが、甲2に記載の銅又は銅合金の化学研磨法と異なること
(3)甲4の記載事項
甲4には、以下の記載がある。
「6.1.10 腐食(エッチング)エッチングは被加工材料のレジスト膜のない箇所を化学的に溶解除去してパターンを形成させる工程を云う。・・・」(1094頁左欄第9~12行)
(4)甲5の記載事項
甲5には、以下の記載がある。
「1.2.3 電解研磨と化学研磨研磨とは、表面上に存在する比較的大きな凹凸(うねり)を除去し,平滑化させると同時に,微視的凹凸を除いて光沢化させることを云うのである。・・・電解および化学研磨法では、凸部の優先溶解によって平滑,光沢化させるのである。・・・」(137頁右欄第14~22行)
(5)甲6の記載事項
甲6には、以下の記載がある。
「エッチングエッチングとは、金属の表面や形状を、化学的あるいは電気化学的に溶解除去し、それを表面処理を含めた広義の加工技術とすることである。・・・材料表面の微細な凹凸を凸部のみ選択的に溶解して表面を滑らかにする場合、化学研磨(chemical polishing)と称するが、技術的にはエッチングと同様である。・・・」(第1~14行)
3 異議申立理由1(進歩性)についての判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1A発明とを対比する。
(ア)甲1A発明における「ビアフィルめっき浴による銅めっき膜」は、本件発明1における「銅フィリングされた銅めっき層」に相当する。
(イ)甲1A発明における「硫酸-過酸化水素系エッチング液」と、本件発明1における「過酸化水素、酸および低級アルコールを含有するエッチング液」とは、「過酸化水素、酸・・・を含有するエッチング液」であって、「酸が、硫酸」である点で一致する。
(ウ)以上によれば、本件発明1と甲1A発明とは、
「銅フィリングされた銅めっき層を、過酸化水素、酸を含有するエッチング液であって、酸が、硫酸であるエッチング液でエッチングすることを特徴とする銅フィリングされた銅めっき層のエッチング方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
エッチング液について、本件発明1では、「低級アルコール」を含有するのに対し、甲1A発明では、含有しない点。
(相違点2)
エッチング液中の水素イオンと過酸化水素のモル濃度比について、本件発明1では、「0.250以下」であるのに対し、甲1A発明では、その値が不明である点。
イ 相違点1及び相違点2についての判断
相違点1及び相違点2について併せて検討する。
(ア)本件特許明細書の記載(【0011】、【0012】)によれば、本件発明1は、銅フィリングされた銅めっき層をエッチングするエッチング液において、(A)「低級アルコールを含有」し、(B)「液中の水素イオンと過酸化水素のモル濃度比」を「0.250以下」としたことにより、熱処理を行わずとも、フィリングめっきにより充填された箇所が局部的に過剰な腐食をすることを抑制できると解される。
そして、本件特許明細書の実施例2~4には、上記のような異常腐食の発生について、調製したエッチング液を用いてサンプル基板を浸漬し、評価したことが記載され、その評価結果が、以下のとおり、表2~4に示されている。
表2
表3
表4
上記表2のNo.18は、上記(A)を充足しない例であり、また、同表のNo.12~17及び表3のNo.20は、上記(B)を充足しない例であるところ、これら例では、異常腐食が発生していることが示されている。
他方、(A)及び(B)を充足した例では、異常腐食が発生していない。
したがって、本件発明1は、上記(A)及び(B)を充足することにより、異常腐食の発生を抑制できるものと認められる。
(イ)ここで、甲1には、硫酸-過酸化水素系エッチング液において、異常腐食の発生を抑制するために低級アルコールを含有させること、及び、液中の水素イオンと過酸化水素のモル濃度比を0.250以下とすることは記載も示唆もされていない。
(ウ)さらに、前記2(1)~(5)によれば、甲2及び甲3には、硫酸、過酸化水素、飽和脂肪族アルコールを含む水溶液により、銅及び銅合金の表面に酸化被膜を生成させることについて記載されており、また、甲4~6には、エッチング及び研磨の一般的な説明が記載されているものの、これら記載を参酌しても、甲1A発明において、異常腐食の発生を抑制するために、低級アルコールを含有させること、及び、液中の水素イオンと過酸化水素のモル濃度比を0.250以下とすることの指針となる記載を見いだすことはできない。
また、甲4~6の記載から、仮に、甲1に記載の「エッチング」と、甲2及び甲3に記載の「化学研磨」とを同一視したとしても、甲2及び甲3の記載された事項は、銅及び銅合金の表面に酸化被膜を生成する工程において、その酸化被膜を充分にかつ均一に生成するために、水溶液中の硫酸と過酸化水素のモル比を規定し、かつ、その水溶液に飽和脂肪族アルコールを添加することであり、そのような工程を含まない甲1A発明において、上記甲2及び甲3の記載された事項を採用できるとは認められない。
(エ)したがって、甲1A発明において、低級アルコールを含有させること、及び、液中の水素イオンと過酸化水素のモル濃度比を0.250以下とすることは、当業者であっても容易になし得たことであるとはいえない。
(オ)よって、本件発明1は、甲1に記載された発明、甲2、甲3に記載された事項及び甲4~6に記載された周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、引用により本件発明1の発明特定事項を全て備えているから、本件発明1と同様の理由により、甲1に記載された発明、甲2、甲3に記載された事項及び甲4~6に記載された周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明3について
本件発明3と甲1B発明とを対比すると、前記相違点1及び相違点2と同様の相違点が認定され、その判断において、前記(1)イの判断は、同様に妥当する。
したがって、本件発明3は、甲1に記載された発明、甲2、甲3に記載された事項及び甲4~6に記載された周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件発明4について
本件発明4と甲1C発明とを対比すると、前記相違点1及び相違点2と同様の相違点が認定され、その判断において、前記(1)イの判断は、同様に妥当する。
したがって、本件発明4は、甲1に記載された発明、甲2、甲3に記載された事項及び甲4~6に記載された周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件発明5について
本件発明5は、引用により本件発明4の発明特定事項を全て備えているから、本件発明4と同様の理由により、甲1に記載された発明、甲2、甲3に記載された事項及び甲4~6に記載された周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(6)小括
したがって、本件発明1~5は、同発明が、甲1に記載された発明、甲2、甲3に記載された事項及び甲4~6に記載された周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては、請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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