特許異議申立
2020-700152
椅子
- 審判番号
- 2020-700152
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-130763
- 登録番号
- 特許第6572266号(P6572266)
- 請求日
- 2020年03月04日
- 審決日
- 2020年10月20日
- 公報発行日
- 2021年01月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社イトーキ
- 【権利者代理人】西 博幸
- 【権利者代理人】渡辺 隆一
- 【異議申立人】赤松 智信
- 審判長/審判官
- 審判長 島田 信一
- 審判官 氏原 康宏
- 審判官 一ノ瀬 覚
- 分類
- P1651.121-YAA(A47C) / P1651.536-YAA(A47C) / P1651.537-YAA(A47C) / P1651.55 -YAA(A47C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第17条の2第3項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項、特許法第36条第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6572266号発明「椅子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
許第6572266号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2、4~6〕について訂正することを認める。
特許第6572266号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6572266号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、2014年6月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年6月6日 米国(US))を国際出願日とする特願2015-521502号の一部を平成27年12月21日に新たな特許出願(特願2015-248149号)として、さらにその特許出願の一部を平成29年7月4日に新たな特許出願としたものであって、令和1年8月16日に特許権の設定登録がされ、同年9月4日に特許掲載公報が発行された。その後、令和2年3月4日に特許異議申立人赤松智信(以下「申立人」という。)より請求項1~7に対し特許異議の申立てがされ、同年5月19日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年7月22日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年7月30日付けで訂正請求があった旨が通知されたが(特許法第120条の5第5項)、申立人から意見書の提出はなかったものである。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和2年7月22日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2、4~6について訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2に「前記背枠体のうち前記アッパーメンバーとの取付け部と左右サイドメンバーとの取付け部の間の部位は」とあるのを、「前記背枠体のうち前記バックフレームの連結部に対する前記アッパーメンバーの取付け部と前記バックフレームの縦長メンバーに対する左右サイドメンバーの取付け部との間の部位は」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項5、6も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に「前記背枠体のうち前記アッパーメンバーとの取付け部と左右サイドメンバーとの取付け部の間の部位は」とあるのを、「前記背枠体のうち前記バックフレームの連結部に対する前記アッパーメンバーの取付け部と前記バックフレームの縦長メンバーに対する左右サイドメンバーの取付け部との間の部位は」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5、6も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の段落【0022】に「枠体の左右サイドメンバーは」とあるのを、「前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは」に訂正し、さらに、同段落【0022】に「前記背枠体のうち前記アッパーメンバーとの取付け部と左右サイドメンバーとの取付け部の間の部位は」とあるのを、「前記背枠体のうち前記バックフレームの連結部に対する前記アッパーメンバーの取付け部と前記バックフレームの縦長メンバーに対する左右サイドメンバーの取付け部との間の部位は」に訂正する。
(3)訂正事項4
本件明細書の段落【0024】に「前記背枠体のうち前記アッパーメンバーとの取付け部と左右サイドメンバーとの取付け部の間の部位は」とあるのを、「前記背枠体のうち前記バックフレームの連結部に対する前記アッパーメンバーの取付け部と前記バックフレームの縦長メンバーに対する左右サイドメンバーの取付け部との間の部位は」に訂正する。
上記訂正事項1及び2に係る特許請求の範囲の訂正は、一群の請求項〔2、4~6〕に対して請求されたものである。
また、上記訂正事項3及び4に係る明細書の訂正は、一群の請求項〔2、4~6〕に対して請求されたものである。
2 訂正の適否
(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項2の「前記背枠体のうち前記アッパーメンバーとの取付け部と左右サイドメンバーとの取付け部の間の部位」という構成が技術的に不明確であったため、訂正前の請求項2の「前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており」との記載、本件明細書の段落【0090】の「他方、ロッキングによるモーメントは、背もたれ3に上端部に大きく作用するものであるが、アッパー支持装置12はサイド支持装置13に比べて剛性が低くて体圧で撓み変形しやすいため、ロッキングに際して、背もたれ3はその上端部がバックフレーム4の上端部に近づくようにしなり変形し得る。」との記載及び同段落【0091】の「また、ロッキング状態で人が上半身を右又は左に捩じったり、肩を右又は左にずらしたりすると、アッパー支持装置12を構成する左右2本のばね部12aが不均一に曲がり変形することで、身体のねじりやずらしに追従して背もたれ3が捩じられるように変形し得る。」との記載等を根拠に、上記不明確な記載を正すものである。
したがって、訂正事項1は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
イ 訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項4の「前記背枠体のうち前記アッパーメンバーとの取付け部と左右サイドメンバーとの取付け部の間の部位」という構成が技術的に不明確であったため、訂正前の請求項4の「前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており」との記載、本件明細書の段落【0090】の「他方、ロッキングによるモーメントは、背もたれ3に上端部に大きく作用するものであるが、アッパー支持装置12はサイド支持装置13に比べて剛性が低くて体圧で撓み変形しやすいため、ロッキングに際して、背もたれ3はその上端部がバックフレーム4の上端部に近づくようにしなり変形し得る。」との記載及び同段落【0091】の「また、ロッキング状態で人が上半身を右又は左に捩じったり、肩を右又は左にずらしたりすると、アッパー支持装置12を構成する左右2本のばね部12aが不均一に曲がり変形することで、身体のねじりやずらしに追従して背もたれ3が捩じられるように変形し得る。」との記載等を根拠に、上記不明確な記載を正すものである。
したがって、訂正事項2は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ウ 訂正事項3及び4について
訂正事項3及び4は、上記訂正事項1及び2の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔2、4~6〕についての訂正を認める。
第3 本件発明
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1~7」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
座と背もたれ、及び、前記背もたれの後ろに配置された剛体構造のバックフレームとを備えており、
前記背もたれは、その周囲を構成する合成樹脂製の背枠体と、この背枠体で囲われた身体支持部とを備えていて、前記背枠体は、その左右側部を構成する上下長手の左右サイドメンバーと、上端部を構成する左右長手のアッパーメンバーと、下端部を構成するロアメンバーとを有している構成であって、
前記バックフレームは、左右の縦長メンバーと、前記左右の縦長メンバーが繋がった連結部とを有しており、
前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており、従って、前記背枠体は、前記バックフレームに三点支持の状態で支持されていて下端は自由端になっており、
かつ、前記背枠体は、当該背枠体の弾性に抗して前後方向に回動可能な状態で前記バックフレームにて支持されている、
椅子。
【請求項2】
座と背もたれ、及び、前記背もたれの後ろに配置された剛体構造のバックフレームとを備えており、
前記背もたれは、その周囲を構成する合成樹脂製の背枠体と、この背枠体で囲われた身体支持部とを備えていて、前記背枠体は、その左右側部を構成する上下長手の左右サイドメンバーと、上端部を構成する左右長手のアッパーメンバーと、下端部を構成するロアメンバーとを有している構成であって、
前記バックフレームは、左右の縦長メンバーと、前記左右の縦長メンバーが繋がった連結部とを有しており、
前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており、従って、前記背枠体は、前記バックフレームに三点支持の状態で支持されていて下端は自由端になっており、
かつ、前記背枠体のうち前記バックフレームの連結部に対する前記アッパーメンバーの取付け部と前記バックフレームの縦長メンバーに対する左右サイドメンバーの取付け部との間の部位は、着座者の体圧によって曲がり変形可能になっている、
椅子。
【請求項3】
座と背もたれ、及び、前記背もたれの後ろに配置された剛体構造のバックフレームとを備えており、
前記背もたれは、その周囲を構成する合成樹脂製の背枠体と、この背枠体で囲われた身体支持部とを備えていて、前記背枠体は、その左右側部を構成する上下長手の左右サイドメンバーと、上端部を構成する左右長手のアッパーメンバーと、下端部を構成するロアメンバーとを有している構成であって、
前記バックフレームは、左右の縦長メンバーと、前記左右の縦長メンバーが繋がった連結部とを有しており、
前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており、従って、前記背枠体は、前記バックフレームに三点支持の状態で支持されていて下端は自由端になっており、
かつ、前記身体支持部は、着座者の体圧によって後ろ向きに凹むように変形可能である、
椅子。
【請求項4】
座と背もたれ、及び、前記背もたれの後ろに配置された剛体構造のバックフレームとを備えており、
前記背もたれは、その周囲を構成する合成樹脂製の背枠体と、この背枠体で囲われた身体支持部とを備えていて、前記背枠体は、その左右側部を構成する上下長手の左右サイドメンバーと、上端部を構成する左右長手のアッパーメンバーと、下端部を構成するロアメンバーとを有している構成であって、
前記バックフレームは、左右の縦長メンバーと、前記左右の縦長メンバーが繋がった連結部とを有しており、
前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており、従って、前記背枠体は、前記バックフレームに三点支持の状態で支持されていて下端は自由端になっており、
かつ、前記背枠体のうち前記バックフレームの連結部に対する前記アッパーメンバーの取付け部と前記バックフレームの縦長メンバーに対する左右サイドメンバーの取付け部との間の部位は、着座者の体圧によって曲がり変形可能になっている一方、前記身体支持部は、着座者の体圧によって後ろ向きに凹むように変形可能である、
椅子。
【請求項5】
前記身体支持部は、前記背枠体に一体に形成された細いステーの群で構成されており、前記ステーの群は左右横長又は縦長の姿勢であり、隣り合ったステーは連結片で連結されており、更に、隣り合ったステーの間隔よりもステーの幅が小さくなっている、
請求項1~4のうちのいずれかに記載した椅子。
【請求項6】
前記身体支持部は、前記背枠体とは別部材のメッシュ材で構成されており、前記メッシュ材が前記背枠体に取付けられている、
請求項1~4のうちのいずれかに記載した椅子。
【請求項7】
座と背もたれ、及び、前記背もたれの後ろに配置された剛体構造のバックフレームとを備えており、
前記背もたれは、その周囲を構成する合成樹脂製の背枠体と、この背枠体で囲われた身体支持部とを備えていて、前記背枠体は、その左右側部を構成する上下長手の左右サイドメンバーと、上端部を構成する左右長手のアッパーメンバーと、下端部を構成するロアメンバーとを有している構成であって、
前記バックフレームは、左右の縦長メンバーと、前記左右の縦長メンバーが繋がった連結部とを有しており、
前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており、従って、前記背枠体は、前記バックフレームに三点支持の状態で支持されていて下端は自由端になっており、
かつ、前記身体支持部は、前記背枠体に一体成形された左右横長又は縦長の多数本のステーを備えた構成であるか、又は、前記背枠体とは別体のメッシュ材からなる構成であって、着座者の体圧によって後ろ向きに凹み変形することが許容されている、
椅子。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
令和2年5月19日付けで特許権者に通知した取消理由(以下「本件取消理由」という。)の要旨は、次のとおりである。
本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
2 当審の判断
(1)本件取消理由の内容
ア 請求項2及び4について
本件特許の特許請求の範囲の請求項2及び4には、「前記背枠体のうち前記アッパーメンバーとの取付け部と左右サイドメンバーとの取付け部の間の部位は、着座者の体圧によって曲がり変形可能になっている」と記載されているが、「着座者の体圧によって曲がり変形可能になっている」部位として、「前記背枠体のうち前記アッパーメンバーとの取付け部と左右サイドメンバーとの取付け部の間の部位」とされる部分(位置)を技術的に特定することができず、当該請求項2及び4に係る発明が不明確である。
イ 請求項5及び6について
請求項2及び4を引用する請求項5及び6に係る発明も、上記アの理由と同様に不明確である。
(2)判断
上記「第2」で述べたとおり、訂正事項1及び2により、請求項2及び4の「前記背枠体のうち前記アッパーメンバーとの取付け部と左右サイドメンバーとの取付け部の間の部位は」との記載は、「前記背枠体のうち前記バックフレームの連結部に対する前記アッパーメンバーの取付け部と前記バックフレームの縦長メンバーに対する左右サイドメンバーの取付け部との間の部位は」に訂正されることで、その記載は明確となり、上記(1)の理由は解消した。
第5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の要旨
申立人は、証拠として甲第1~9号証(以下「甲1~9」ということもある。)を提出し、概略以下のとおり主張している。
(1)申立理由1(特許法第29条第2項)
ア 請求項1に係る発明は、甲1、4、6に記載された発明及び周知技術1(甲3~6)、または、甲1、4、7に記載された発明及び周知技術1に基いて、
イ 請求項2に係る発明は、甲1、4、8に記載された発明及び周知技術1に基いて、
ウ 請求項3に係る発明は、甲1、4に記載された発明及び周知技術1、または、甲1、4、8に記載された発明及び周知技術1に基いて、
エ 請求項4に係る発明は、甲1、4、8に記載された発明及び周知技術1に基いて、
オ 請求項5に係る発明は、甲1、4、6に記載された発明、甲5に記載された事項及び周知技術1、または、甲1、4、7に記載された発明、甲5に記載された事項及び周知技術1に基いて、
カ 請求項6に係る発明は、甲1、4、6に記載された発明、周知技術1及び周知技術2(甲2、3、9)、または、甲1、4、7に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基いて、
キ 請求項7に係る発明は、甲1、4、5に記載された発明及び周知技術1、または、甲1、4に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基いて、
その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・甲第1号証:特許第4104286号公報
・甲第2号証:特開2010-158335号公報
・甲第3号証:特開2010-99103号公報
・甲第4号証:特開2011-92538号公報
・甲第5号証:特許第5132917号公報
・甲第6号証:特許第4316748号公報
・甲第7号証:特許第5460997号公報
・甲第8号証:特許第4261001号公報
・甲第9号証:特開2009-112359号公報
なお、上記甲第7号証は、本件特許出願の優先日後に発行されたものと認められる。
(2)申立理由2(特許法第36条第6項第1号)
ア 請求項1について
請求項1の「前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており」との記載からは、背枠体のアッパーメンバーがバックフレームの連結部に直接取付けられるもの、及び背枠体の左右サイドメンバーがバックフレームの左右縦長メンバーに直接取付けられるものを包含することになるが、本件明細書には、そのような構成は記載も示唆もない。したがって、本件発明1は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載した範囲を越えるものである。
イ 請求項2~7について
請求項2~7についても、上記アと同様のことがいえるから、本件発明2~7は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載した範囲を越えるものである。
(3)申立理由3(特許法第36条第6項第2号)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ア 請求項1について
請求項1には、「前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており」と記載されているが、その意味を複数解釈できるから、不明瞭である。
イ 請求項2~7について
請求項2~7についても、上記アと同様のことがいえるから、請求項2~7の記載は不明瞭である。
(4)申立理由4(特許法第36条第4項第1号)
請求項6には、「前記背枠体とは別部材のメッシュ材で構成されており」と記載され、請求項7には、「前記背枠体とは別体のメッシュ材からなる構成であって、着座者の体圧によって後ろ向きに凹み変形することが許容されている」と記載されているが、「メッシュ材」に関し、本件明細書の発明の詳細な説明には、何ら記載や示唆がなされておらず、その材料や構造等が明らかでない。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明6及び7を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(5)申立理由5(特許法第17条の2第3項)
ア 請求項1について
請求項1には、「前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており」と記載されているが、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)には、そのような記載も示唆もなく、また、当初明細書等から自明の事項ともいえない。
したがって、請求項1の記載は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
イ 請求項2~7について
請求項2~7についても、上記アと同様のことがいえるから、請求項2~7の記載は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
2 当審の判断
2-1 申立理由1(特許法第29条第2項)について
2-1-1 各甲号証の記載事項等
(1)甲1の記載事項等
(1-1)甲1の記載事項
なお、下線は当審で付した。以下同様。
(1a)「【0001】
(背景)
本発明は、リクライニング式背もたれと、背もたれのリクライニング時に同期移動する前方移動/傾動可能な座部と、リクライニング中に背もたれを支持する調節式エネルギ機構とを有する椅子に関する。
・・・
【0027】
本発明を具現する椅子構造体20(図1および図2)は、キャスター付きベースアセンブリ21と、固定の背もたれ傾動軸線23回りに直立位置およびリクライニング位置間を移動するようにベース21に回動可能に取り付けられたリクライニング式背もたれアセンブリ22とを備えている。座部アセンブリ24(図6)がその後部で座部傾動軸線25回りに移動するように背もたれ22に回動可能に取り付けられている。座部傾動軸線25は背もたれ傾動軸線23から後下方にずれており、座部24がその前部で線形軸受け(linear bearing)によってベース21上に摺動可能に支持されているため、背もたれ22がリクライニングする時に同期傾斜移動して、座部24が前方に摺動し、その後部が前下方に回転する(図6を参照)。同期移動は最初、背もたれ対座部を約2.5:1の角同期比(angular synchronous ratio)で移動させ、完全リクライニング位置に近づいた時、背もたれ対座部を約5:1の角同期比で移動させる。リクライニング中の座部24および背もたれ22の移動によって、腰掛けているユーザに非常にしっかりと安定した感じを与える極めて快適な座り心地が得られる。これは、1つには移動が腰掛けているユーザの重心を比較的一定に保ち、腰掛けているユーザを椅子ベースの上方で比較的釣り合いの取れた位置に保持することによる。また、前方摺動/同期移動はリクライニング中に、腰掛けているユーザを従来の同期傾動椅子構造体の場合よりも作業に近い位置に保持するため、リクライニング後にたびたび前方に滑走させ、直立位置に移動する時に後方に滑走させるという問題が、皆無と言わないまでも大幅に減少する。別の利点として、椅子構造体20を椅子の背後の壁に近い位置や、狭いオフィスで使用しても、リクライニング中にオフィスの家具類にぶつかることによる問題が少なくなる。またさらに、本発明の椅子での腰掛けているユーザの体重の後方移動が小さくなるため、背もたれ22を直立位置の方に押しつけるスプリング28の寸法を小さくすることが潜在的に可能であることが見出された。
【0028】
ベースは制御部ハウジング26を備えている。座部24を後方に押しつけるために、主エネルギ機構27(図8)が制御部ハウジング26内に作動可能に配置されている。背もたれ22および座部24が相互連結されているため、座部24を後方に押しつけると、背もたれ22が直立位置の方に押しつけられる。主エネルギ機構27(図8)は、制御部ハウジング26内に横方向に配置されてトルク部材またはレバー54に作動係合した主スプリング28を含む。主スプリング28によって与えられる張力およびトルクは、やはり実質的に制御部ハウジング26内に配置された調節式モーメント腕シフト(MAS)システム29によって調節可能である。目隠しカバー26’(図1)が制御部ハウジング26と座部24の下側との間の部分を覆っている。背もたれアセンブリ22は、ピボット/軸線23および25を定める構造を有する背中支持部すなわち背もたれフレーム30(図4A)を含む。たわみ/服従(compliant)背もたれシェル構造体31が、非常に快適でなじむ(sympathetic)背中支持を与えるようにして背もたれフレーム30に上部連結部32および底部連結部33で回動可能に取り付けられている。良好な腰部圧迫を与えるように最適化した前方凸状曲線形になるように背もたれシェル31を前方に押しつけるために、ねじり調節可能な腰部支持スプリング機構34が設けられている。垂直方向調節式腰部支持部35(図16)が垂直方向移動可能に背もたれシェル31に作動可能に取り付けられて、背もたれ22上の前支持表面に最適形状および圧力位置を与える。座部24には、座部24に調節可能に係合して背もたれ22のリクライニングを制限する背もたれ停止機構36(図8)などの高等椅子機能を与える様々なオプションが設けられている。また、座部24は能動的(active)および受動的(passive)大腿部支持オプション(図24および図30をそれぞれ参照)や、座部深さ調節部(図28および図25を参照)や以下に記載するような他の座部オプションを含むことができる。
・・・
【0042】
背もたれフレーム30(図12A)は曲線形であり、椅子20の背もたれ領域を横切るアーチを形成している。背もたれフレーム30には様々な構造が考えられ、したがって本発明を不適当に特定のものだけに限定するべきでない。たとえば、背もたれフレーム30は全体的に金属、プラスチックまたはそれらの混合にすることができる。また、後述の剛直な内部補強部材102は管状、山形鋼または打ち抜き加工品にすることができる。図示の背もたれフレーム30はループ状またはアーチ形の内部金属補強部材102と、密着状の外部高分子スキンまたはカバー103とを含む。(説明のため、カバー103が透明であるように図示されている(図12A)ため、補強部材102が見やすい。)金属補強部材102は、円形断面を有するループ状の中間ロッド部分104(その半分だけが図12Aに示されている)を含む。補強部材102はさらに、中間部分104の端部に溶接された特殊形状の端部/ブラケット105を含む。1つまたは2つのT字形上部ピボットコネクタ107が中間部分104の上部分付近に取り付けられている。注意すべき点として、単一の上部コネクタ107を使用した場合、2つの上部コネクタの場合よりも横方向の可撓性が大きくなり、これはユーザが頻繁に胴部をねじったり、椅子の側部に傾くと予想される場合の椅子に望ましいであろう。1対の上部コネクタ107を間隔を置いて配置すると、硬い構造が得られる。各コネクタ107(図12B)は、中間部分104に溶接されたステム108を含むと共に、ステム108を貫通した横方向ロッド部分109を含む。ロッド部分109はスキンまたはシェル103の外側に位置し、後述するように、背もたれシェル31の対応のリセスにスナップ式に摩擦および回動係合して水平軸線回りに回転可能である。本発明は異なった背もたれフレーム形状を有することも考えられる。たとえば、背もたれフレーム30の逆U字形中間部分104の代わりに、ベルトブラケット132にほぼ近接してそれに平行な下部横方向部材と、それから上方に延出した垂直部材とを有する逆T字形中間部分を使用することもできる。好適な形式では、本発明の椅子の各背もたれフレームは、間隔を置いて配置されてピボット点を定める下部コネクタまたは開口113と上部コネクタ107とを設けて、三角形の三脚状の構造を形成している。この構造を半剛性の弾性たわみ可能な背もたれシェル31と組み合わせることによって、たわみ可能な姿勢支持を行うと共に、椅子に腰掛けているユーザの胴部のねじり曲げを可能にする。変更例として、下部コネクタ113を椅子の背もたれではなく座部に設けることができる。
・・・
【0050】
具体的に言うと、本背もたれシェル構造体31(図4A)は、ポリプロピレンなどの高分子材料で形成された弾性的にたわみ可能な成形シートを有し、それに上下クッションが配置されている(図4Aを参照)。背もたれシェル31(図16)は、ほぼ椅子20の腰部領域に位置する下半分に複数の水平方向スロット125’を有する。スロット125’は実質的に背もたれシェル31を横切って延在しているが、側部から間隔を置いた位置で終わっているため、弾性的な垂直材料バンド126が各縁部に沿って形成される。材料バンドまたは側部ストラップ126は自然に前方に突出した形状をなすように構成されているが、腰掛けているユーザに最適の腰部支持および形状を与えるようにたわむ。バンド126によって背もたれシェルは、横方向および垂直方向に形を変えて、ユーザの背中の形状になじむように一致することができる。隆起部分127がシェル31の外周に沿って延在している。間隔を置いた1対のリセス128が背もたれシェル31の後表面のほぼ上方胸部領域に形成されている。各リセス128(図14Aおよび図14B)はT字形入口を備えて、リセス128の細い部分129が背もたれフレーム30の上部コネクタ32のステム108を受け取る幅を有し、リセス128の幅広部分130が上部コネクタ32の横ロッド部分109を受け取る形状の幅を有する。各リセス128は背もたれシェル31内で上方に延在しており、ステム108が細い部分129内へ摺動した時、細い部分129に隣接して形成された対向フランジ131がT字形上部コネクタ107のロッド部分109を回動可能に捕らえる。リセス128の隆起部分132が上部コネクタ107を摩擦で積極的に保持し、背もたれシェル31を背もたれフレーム30に固定するが、背もたれシェル31が水平軸線回りに回動できるようにする。これによって、背もたれシェル31は望ましくない制限を受けないで最適腰部支持を行うようにたわむことができる。
【0051】
ベルトブラケット132(図16)が細長い中央ストリップまたはストラップ133を含み、これは背もたれシェル31の底縁部の形状に一致して背もたれシェル31の底縁部内に成形されている。ストリップ133を背もたれシェルの一体部分にすることもできるが、ねじ、締結具、接着剤、摩擦タブ、インサート成形技術、または当該技術分野で周知の他の取り付け方法で背もたれシェル31に取り付けることもできる。ストリップ133は、ストリップ133の端部から前方に延出した側部アーム/フランジ134を含み、これに開口135が設けられている。ねじり調節腰部機構34がフランジ134に係合して、背もたれシェル31を背もたれフレームに位置113(図4A)で回動可能に取り付ける。ねじり調節腰部スプリング機構34は調節可能であって、背もたれシェル31を前方凸状形に押しつけることによって、腰掛けているユーザに最適の腰部支持を行う。ねじり調節腰部スプリング機構34は背もたれシェル31の弾性たわみ性および垂直方向調節式腰部支持部35の形状変更可能性と協働して、腰掛けているユーザの高度に調節可能で快適な背中支持を行う。」
(1b)甲第1号証には、以下の図が示されている。
(1-2)認定事項
甲1(摘示(1a)(1b))には、「椅子」に関する技術について開示されているところ(段落【0001】)、以下の事項が認定できる。
ア 段落【0027】の記載より
・椅子構造体20は、キャスター付きベースアセンブリ21と、キャスター付きベースアセンブリ21に回動可能に取り付けられたリクライニング式背もたれアセンブリ22とを備えていること
・座部アセンブリ24がその後部で座部傾動軸線25回りに移動するようにリクライニング式背もたれアセンブリ22に回動可能に取り付けられているとともに、その前部で線形軸受けによってキャスター付きベースアセンブリ21上に摺動可能に支持されていること
イ 段落【0028】の記載より
・リクライニング式背もたれアセンブリ22は、背もたれフレーム30を含み、背もたれシェル構造体31が、背もたれフレーム30に上部連結部32および底部連結部33で回動可能に取り付けられていること
・良好な腰部圧迫を与えるように最適化した前方凸状曲線形になるように背もたれシェル構造体31を前方に押しつけるために、ねじり調節可能な腰部支持スプリング機構34が設けられていること
ウ 段落【0042】の記載より
・背もたれフレーム30は曲線形であり、椅子構造体20の背もたれ領域を横切るアーチを形成しているとともに、ループ状またはアーチ形の内部金属補強部材102と、密着状の外部高分子スキンまたはカバー103とを含むこと
・内部金属補強部材102は、円形断面を有するループ状の中間ロッド部分104を含み、1つまたは2つのT字形上部ピボットコネクタ107が中間ロッド部分104の上部分付近に取り付けられていること
・各T字形上部ピボットコネクタ107は、中間ロッド部分104に溶接されたステム108を含むとともに、ステム108を貫通した横方向ロッド部分109を含み、背もたれシェル構造体31の対応のリセスにスナップ式に摩擦および回動係合して水平軸線回りに回転可能であること
エ 段落【0050】の記載より
・背もたれシェル構造体31は、高分子材料で形成された弾性的にたわみ可能な成形シートを有し、それに上下クッションが配置されており、腰部領域に位置する下半分に複数の水平方向スロット125’を有し、水平方向スロット125’は実質的に背もたれシェル構造体31を横切って延在しているが、側部から間隔を置いた位置で終わっているため、弾性的な垂直材料バンド126が各縁部に沿って形成されること
・垂直材料バンド126によって背もたれシェル構造体31は、横方向および垂直方向に形を変えて、ユーザの背中の形状になじむように一致することができること
オ 段落【0051】の記載より
・ベルトブラケット132が中央ストリップ133を含み、これは背もたれシェル構造体31の底縁部の形状に一致して背もたれシェル構造体31の底縁部内に成形されていること
・中央ストリップ133は、中央ストリップ133の端部から前方に延出したフランジ134を含み、これに開口135が設けられていること
・ねじり調節腰部機構34がフランジ134に係合して、背もたれシェル構造体31を背もたれフレーム30に位置113で回動可能に取り付け、ねじり調節腰部スプリング機構34は調節可能であって、背もたれシェル構造体31を前方凸状形に押しつけることによって、腰掛けているユーザに最適の腰部支持を行うとともに、背もたれシェル構造体31の弾性たわみ性の形状変更可能性と協働して、腰掛けているユーザの高度に調節可能で快適な背中支持を行うこと
(1-3)甲1に記載された発明
以上によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「キャスター付きベースアセンブリ21と、キャスター付きベースアセンブリ21に回動可能に取り付けられたリクライニング式背もたれアセンブリ22とを備えている、椅子構造体20であって、
座部アセンブリ24がその後部で座部傾動軸線25回りに移動するようにリクライニング式背もたれアセンブリ22に回動可能に取り付けられているとともに、その前部で線形軸受けによってキャスター付きベースアセンブリ21上に摺動可能に支持されており、
リクライニング式背もたれアセンブリ22は、背もたれフレーム30を含み、背もたれシェル構造体31が、背もたれフレーム30に上部連結部32および底部連結部33で回動可能に取り付けられ、
良好な腰部圧迫を与えるように最適化した前方凸状曲線形になるように背もたれシェル構造体31を前方に押しつけるために、ねじり調節可能な腰部支持スプリング機構34が設けられ、
背もたれフレーム30は曲線形であり、椅子構造体20の背もたれ領域を横切るアーチを形成しているとともに、ループ状またはアーチ形の内部金属補強部材102と、密着状の外部高分子スキンまたはカバー103とを含み、
内部金属補強部材102は、円形断面を有するループ状の中間ロッド部分104を含み、1つまたは2つのT字形上部ピボットコネクタ107が中間ロッド部分104の上部分付近に取り付けられ、
各T字形上部ピボットコネクタ107は、中間ロッド部分104に溶接されたステム108を含むとともに、ステム108を貫通した横方向ロッド部分109を含み、背もたれシェル構造体31の対応のリセスにスナップ式に摩擦および回動係合して水平軸線回りに回転可能であり、
背もたれシェル構造体31は、高分子材料で形成された弾性的にたわみ可能な成形シートを有し、それに上下クッションが配置されており、腰部領域に位置する下半分に複数の水平方向スロット125’を有し、水平方向スロット125’は実質的に背もたれシェル構造体31を横切って延在しているが、側部から間隔を置いた位置で終わっているため、弾性的な垂直材料バンド126が各縁部に沿って形成され、
垂直材料バンド126によって背もたれシェル構造体31は、横方向および垂直方向に形を変えて、ユーザの背中の形状になじむように一致することができ、
ベルトブラケット132が中央ストリップ133を含み、これは背もたれシェル構造体31の底縁部の形状に一致して背もたれシェル構造体31の底縁部内に成形され、
中央ストリップ133は、中央ストリップ133の端部から前方に延出したフランジ134を含み、これに開口135が設けられ、
ねじり調節腰部機構34がフランジ134に係合して、背もたれシェル構造体31を背もたれフレーム30に位置113で回動可能に取り付け、ねじり調節腰部スプリング機構34は調節可能であって、背もたれシェル構造体31を前方凸状形に押しつけることによって、腰掛けているユーザに最適の腰部支持を行うとともに、背もたれシェル構造体31の弾性たわみ性の形状変更可能性と協働して、腰掛けているユーザの高度に調節可能で快適な背中支持を行う、
椅子構造体20。」
(2)甲2の記載事項
甲2には次の事項が記載されている。
(2a)「【0001】
本発明は、椅子における張材の張設構造およびその方法に関する。
・・・
【0025】
図1~図3に示すように、本発明のリクライニング椅子1は、先端部にキャスタ2が設けられた放射状をなす5本の脚杆3を有する脚体4と、この脚体4の中央に立設された、ガススプリング(図示略)を備える伸縮式の脚柱5と、この脚柱5の上端に後部が固着された支基6を介して起立させた背凭れ7とより構成されている。
・・・
【0039】
図4~図6に示すように、背凭れ7は、メッシュ状の張材27と、この張材27が前面に張設され、かつ中央に開口した空間部28を閉塞しうる背凭れフレームである枠体29によって構成されている。この枠体29は、周方向に連続する合成樹脂製の帯板状のフレーム部材からなるとともに、上部横フレーム部30A、所望の後傾状態を有する左右1対の側部縦フレーム部30B,30Bおよび下部横フレーム部30Cにより、周方向に連続する正面視ほぼ方形をなす主フレーム30を備える。」
(3)甲3の記載事項
甲3には次の事項が記載されている。
(3a)「【0001】
本願発明は、背もたれが弾性手段(ばね手段)に抗して後傾するロッキング椅子に関し、特に、背もたれをバックフレームにメッシュ状サポートシートが張られた構成としているタイプのロッキング椅子を好適な対象にしている。
・・・
【0025】
背もたれ5は、正面視略四角形のバックフレーム13にサポートシート14が張られた構成であり、バックフレーム13は揺動フレーム10の支柱10にビスで固定されている(詳細は後述する。)。バックフレーム13は、着座者の腰部に当たる部分が側面視で最も前端となるように側面視で緩く湾曲しており、従って、サポートシート14(或いは背もたれ5)はランバーサポート部14aを有している。サポートシート14におけるランバーサポート部14aの左右両側部には裏側からランバーパッド14が当たっている。なお、サポートシート14は平面視で前向き凹状に凹んでいる。また、本実施形態のサポートシート14は縦長の疎部と密部とが左右方向に交互に配置された縦縞模様の外観を呈しており、疎部では前後に透けて見える。
【0026】
例えば図4に示すように、バックフレーム13は樹脂の成形品であり、上下方向に長く延びる左右サイドメンバー16と、左右サイドメンバー16の上端に繋がったアッパーメンバー17と、左右サイドメンバー16の下端に繋がったロアメンバー18とから成っている。従って、バックフレーム13は正面視で略四角形の形態を成している。アッパーメンバー17及びロアメンバー18は平面視で前向き凹状に緩く湾曲している。」
(4)甲4の記載事項
甲4には次の事項が記載されている。
(4a)「【0001】
本願発明は、椅子用の背板ユニット及び背もたれに関する。
・・・
【0018】
(1).概略
図1,2に示すように、椅子は、脚支柱(ガスシリンダ)1のみを表示した脚装置、脚支柱1の状態に固定したベース2、ベース2の上方に配置した座3、座3の後ろに配置された背もたれ4を有している。
・・・
【0020】
図3に示すように、バックフレーム5は、その左右側部を構成する上下長手の左右サイドフレーム8と、左右サイドフレーム8の上端に繋がった横長のアッパーフレーム9と、左右サイドフレーム8の下端に繋がった左右長手のロアフレーム10とを有しており、全体として略四角形で前後に開口した枠状になっている。更に、左右サイドフレーム8の下端には、ベース2の左右外面に向けて前向きに延びるサイドアーム11が一体に形成されている。
・・・
【0027】
背板6はポリプロピレンやナイロン樹脂のような合成樹脂製を材料にした成形品であり、図3に示すように、上下長手の左右のサイドメンバー16と、サイドメンバー16の上端間に一体に繋がったアッパーメンバー17と、左右サイドメンバー16の下端に一体に繋がったロアメンバー18とで略四角形の外形を構成し、更に、その内部には、左右サイドメンバー16に繋がった横長サポート板19が多段に配置されている。
・・・
【0037】
図4,5に示すように、背板6におけるサイドメンバー16の溝内には、側面視で下向き鉤形の第1係合爪30が上下に離反して2個形成されている一方、バックフレーム5のサイドフレーム8には、第1係合爪30と噛み合う上向き鉤形の第2係合爪31が上下に離反して2個形成されている。これら係合爪30,31 は請求項に記載した係合手段の具体例であり、これらの噛み合いにより、背板6はバックフレーム5に対して前向き移動不能に保持されている。」
(5)甲5の記載事項
甲5には次の事項が記載されている。
(5a)「【0001】
本発明は、座体の後部から上方に延出した背凭れフレームの前面に、合成樹脂等の硬質弾性体からなる背板を支持してなる椅子の背凭れ装置に関する。
・・・
【0017】
図1に示すように、本発明における椅子は、座体1の後部から上方に延出された背凭れフレーム2の前面に、合成樹脂等の硬質弾性体からなる背板3が支持されている。
【0018】
背板3は、図8,図9に示すように、背板3の周縁、すなわち左右側部と上下端部とを高剛性の枠部4とし、このやや縦長のほぼ四角形の枠部4より内方の部位を、着座者の背中による後向きの荷重によって弾性変形する可撓部5としてある。この可撓部5は、前面から後面へ貫通する縦長の開口部6を多数設けることにより弾性変形が容易なように形成されている。」
(6)甲6の記載事項
甲6には次の事項が記載されている。
(6a)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パーソナルコンピュータ等のOA機器の操作に適するリクライニング式の椅子、特にその背凭れの取付構造に関する。
・・・
【0012】
図4から明らかなように、支持枠(1)は、リクライニング機構(5)の左右両側部から延びる縦杆(7)の上端同士を横杆(8)により連結して構成されている。
縦杆(7)の上部すなわち横杆(8)との連結部には、係止頭部(9a)を先端に有する係合突起(9)が、前向きに突設され、かつ縦杆(7)の下部前面には、半円を越える円弧状で、上向きに開口する左右方向の嵌合溝(10a)を有する包持片(10)が突設されている。
【0013】
背凭れ板(2)は、図1及び図5に示すように、周辺部を除いて、エキスパンドメタル状の形状に中抜きされた硬質合成樹脂等の硬質弾性材の成型板であり、その上部の左右側端部には、支持枠(1)の上部の係合突起(9)に対応する位置に、この係合突起(9)が嵌合係止される係合孔(11)が穿設されている。係合孔(11)は、係合突起(9)を通過させる大径孔(11a)と、これに続いて上方に連設した小径長孔(11b)とからなるダルマ孔のものである
【0014】
背凭れ板(2)の下部の左右側端部には、支持枠(1)の下部の包持片(10)と対応する位置に、嵌合溝(10a)に上方より圧嵌される左右方向の短軸形の膨出部(12)が形成されている。膨出部(12)の直下には、支持枠(1)の包持片(10)を後方より嵌合しうる嵌合孔(13)が穿設されている。」
(7)甲7の記載事項(なお、甲7は、本件特許出願の優先日後に発行されたものと認められる。)
甲7には次の事項が記載されている。
(7a)「【0001】
本発明は、ヒンジ構造とそれを用いた椅子の背もたれの支持構造に関する。さらに詳述すると、本発明は、一つの回転方向には回転規制がかけられるも他の回転方向には自由に回転するヒンジ構造とそれを椅子の変形可能な背もたれと背支持部材との連結構造に用いた椅子の背もたれの支持構造に関する。
・・・
【0022】
図1~図10に、本発明のヒンジ構造を椅子の背もたれと背支持部材との連結に適用した実施形態の一例を示す。この椅子の背もたれ支持構造は、変形可能な弾力性を備える背板2によって構成される背もたれをT形の背支持部材3によって少なくとも3点で支えるようにしたものであり、背板2によって構成される背凭れの下端中央を図示していない反力付与機構と連動する背支桿に固定すると共に、背板2の上部の左右の2点をヒンジ機構1を介して背フレーム3で可動的に連結して支持させるようにしたものである。尚、背板2の下端部は取付部2cを介して図示していない背支桿に取り付けられる。また、背フレーム4の下端も図示していない背支桿に取り付けられて支持される。」
(8)甲8の記載事項
甲8には次の事項が記載されている。
(8a)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パーソナルコンピュータ等のOA機器の操作に適するとともに、リクライニング時に安定した姿勢を確保できるようにした椅子に関する。
・・・
【0020】
背凭れ板(26)は、図2に示すように、周辺部を除いて、エキスパンデッドメタル状の形状に中抜きされ、中間部左右両端部に弱体化部分(30)を形成した、硬質合成樹脂等の硬質弾性材の成型板である。
・・・
【0023】
図2において、背凭れフレーム(18)の上部の係合突起(24)を、背凭れ板(26)の上部の係合孔(28)の大径孔に差し込み、この状態で、背凭れ板(26)の下部の水平軸(32)を、背凭れフレーム(18)の下部の水平軸受(22)の開口部に臨ませ、背凭れ板(26)を、そのまま押し下げると、図1に示すように両者は連結される。
(9)甲9の記載事項
甲9には次の事項が記載されている。
(9a)「【0001】
本発明は、背フレームに、可撓性の張り材を張設してなる椅子の背凭れに関する。
・・・
【0017】
背凭れ10は、下部フレーム11と上部フレーム12とからなる背フレーム13と、背フレーム13に張設される張り材14とを備えている。下部フレーム11は、金属パイプを正面視上向きコ字状に折曲することにより、横杆11aの両側端に、短寸の上向側杆11b、11bが連設された形状をなし、両上向側杆11bには、それよりも小径の連結ロッド15、15が、上方に突出するように嵌合され、上向側杆11bの前面の上下の取付孔16より挿入した止めねじ(図示略)により固定されている。
・・・
【0020】
張り材14は、例えばポリアミド繊維またはポリエステル繊維等、引張強度が高く、かつ適度な伸縮性を有する合成繊維を1枚のメッシュ状に編むか、織るなどして長方形状に形成され、背フレーム13に張設する前の左右寸法は、背フレーム13の左右寸法よりも小さく、かつ上下寸法は、背フレーム13のそれよりも長寸とされている。」
2-1-2 検討
(1)本件発明1について
(1-1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「座部アセンブリ24」及び「背もたれシェル構造体31」は、本件発明1の「座」及び「背もたれ」に相当する。
イ 甲1発明の「背もたれフレーム30」は、本件発明1の「バックフレーム」に相当する。
また、甲1発明は、「背もたれシェル構造体31が、背もたれフレーム30に上部連結部32および底部連結部33で回動可能に取り付けられ」るものであるところ、上記「背もたれフレーム30」は、「椅子構造体20の背もたれ領域を横切るアーチを形成しているとともに、ループ状またはアーチ形の内部金属補強部材102と、密着状の外部高分子スキンまたはカバー103とを含み」構成されているから、剛体構造をなし、さらに、背もたれシェル構造体31の後ろに配置されることが明らかである。
したがって、甲1発明の上記「背もたれフレーム30」は、上記アをも踏まえると、本件発明1の「前記背もたれの後ろに配置された剛体構造のバックフレーム」に相当するものといえる。
ウ 引用発明の「椅子構造体20」は、甲1発明の「椅子」に相当する。
そして、甲1発明の「椅子構造体20」は、「座部アセンブリ24」、「背もたれシェル構造体31」及び「背もたれフレーム30」を備えて構成されることから、かかる構成は、本件発明1の「椅子」における、「座と背もたれ、及び、前記背もたれの後ろに配置された剛体構造のバックフレームとを備えており」という構成に相当するものといる。
エ 甲1発明の「背もたれフレーム30」は「曲線形であり、椅子構造体20の背もたれ領域を横切るアーチを形成している」ところ、そのように「曲線形」で「アーチを形成」した形状・構造は、図4A等の図示内容に照らして、左右の縦長メンバーと、左右の縦長メンバーが繋がった連結部とを有した形状・構造ということができるから、かかる「背もたれフレーム30」の構成は、本件発明1の「バックフレーム」における「左右の縦長メンバーと、前記左右の縦長メンバーが繋がった連結部とを有し」という構成に相当するものといえる。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、
「座と背もたれ、及び、前記背もたれの後ろに配置された剛体構造のバックフレームとを備えており、
前記バックフレームは、左右の縦長メンバーと、前記左右の縦長メンバーが繋がった連結部とを有している、椅子。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
「背もたれ」の構成、及び「背もたれ」と「バックフレーム」との取付態様について、
本件発明1は、
「背もたれ」が「その周囲を構成する合成樹脂製の背枠体と、この背枠体で囲われた身体支持部とを備えていて、前記背枠体は、その左右側部を構成する上下長手の左右サイドメンバーと、上端部を構成する左右長手のアッパーメンバーと、下端部を構成するロアメンバーとを有している構成」であり、
「背もたれ」と「バックフレーム」との取付態様が、「前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており、従って、前記背枠体は、前記バックフレームに三点支持の状態で支持されていて下端は自由端になっており、かつ、前記背枠体は、当該背枠体の弾性に抗して前後方向に回動可能な状態で前記バックフレームにて支持されている」のに対し、
甲1発明は、
「背もたれシェル構造体31」が「高分子材料で形成された弾性的にたわみ可能な成形シートを有し、それに上下クッションが配置されており、腰部領域に位置する下半分に複数の水平方向スロット125’を有し、水平方向スロット125’は実質的に背もたれシェル構造体31を横切って延在しているが、側部から間隔を置いた位置で終わっているため、弾性的な垂直材料バンド126が各縁部に沿って形成され」ており、
「背もたれシェル構造体31」と「背もたれフレーム30」との取付態様が、「背もたれシェル構造体31が、背もたれフレーム30に上部連結部32および底部連結部33で回動可能に取り付けられ、良好な腰部圧迫を与えるように最適化した前方凸状曲線形になるように背もたれシェル構造体31を前方に押しつけるために、ねじり調節可能な腰部支持スプリング機構34が設けられ」、「背もたれフレーム30」の「内部金属補強部材102」は、「円形断面を有するループ状の中間ロッド部分104を含み、1つまたは2つのT字形上部ピボットコネクタ107が中間ロッド部分104の上部分付近に取り付けられ、各T字形上部ピボットコネクタ107は、中間ロッド部分104に溶接されたステム108を含むとともに、ステム108を貫通した横方向ロッド部分109を含み、背もたれシェル構造体31の対応のリセスにスナップ式に摩擦および回動係合して水平軸線回りに回転可能であり」、「垂直材料バンド126によって背もたれシェル構造体31は、横方向および垂直方向に形を変えて、ユーザの背中の形状になじむように一致することができ、ベルトブラケット132が中央ストリップ133を含み、これは背もたれシェル構造体31の底縁部の形状に一致して背もたれシェル構造体31の底縁部内に成形され、中央ストリップ133は、中央ストリップ133の端部から前方に延出したフランジ134を含み、これに開口135が設けられ、ねじり調節腰部機構34がフランジ134に係合して、背もたれシェル構造体31を背もたれフレーム30に位置113で回動可能に取り付け、ねじり調節腰部スプリング機構34は調節可能であって、背もたれシェル構造体31を前方凸状形に押しつけることによって、腰掛けているユーザに最適の腰部支持を行うとともに、背もたれシェル構造体31の弾性たわみ性の形状変更可能性と協働して、腰掛けているユーザの高度に調節可能で快適な背中支持を行う」ように構成されている点。
(1-2)判断
上記相違点について検討する。
ア 本件発明1は、「背もたれ」の「背枠体」が、「その左右側部を構成する上下長手の左右サイドメンバーと、上端部を構成する左右長手のアッパーメンバーと、下端部を構成するロアメンバーとを有している構成」であるところ、「背もたれ」と「バックフレーム」との取付態様は、「前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており、従って、前記背枠体は、前記バックフレームに三点支持の状態で支持されていて下端は自由端になっており」として構成されるものである。
イ 他方、甲1発明は、「背もたれシェル構造体31が、背もたれフレーム30に上部連結部32および底部連結部33で回動可能に取り付けられ」るものであって、「背もたれシェル構造体31」には「垂直材料バンド126が各縁部に沿って形成され」るものであるところ、上記「背もたれシェル構造体31」と「背もたれフレーム30」との取付態様は、少なくとも、「ねじり調節可能な腰部支持スプリング機構34」をも含めて、「垂直材料バンド126によって背もたれシェル構造体31は、・・・ベルトブラケット132が中央ストリップ133を含み、これは背もたれシェル構造体31の底縁部の形状に一致して背もたれシェル構造体31の底縁部内に成形され、中央ストリップ133は、中央ストリップ133の端部から前方に延出したフランジ134を含み、これに開口135が設けられ、ねじり調節腰部機構34がフランジ134に係合して、背もたれシェル構造体31を背もたれフレーム30に位置113で回動可能に取り付け」られるように構成されるものである。
ウ そこで、甲1発明において、上記「底部連結部33」の構成、より具体的には、上記「ねじり調節腰部機構34がフランジ134に係合して、背もたれシェル構造体31を背もたれフレーム30に位置113で回動可能に取り付け」た構成(以下「構成A」ということもある。)を、本件発明1の「前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており」という構成に変更することが可能であるのか否か、検討する。
エ 上記構成Aの「位置113」は、図4Aにも示されているとおり、「背もたれシェル構造体31」及び「背もたれフレーム30」に対する下側の端部の位置ということができる。
また、甲1発明は、「背もたれシェル構造体31を背もたれフレーム30に位置113で回動可能に取り付け、ねじり調節腰部スプリング機構34は調節可能であって、背もたれシェル構造体31を前方凸状形に押しつけることによって、腰掛けているユーザに最適の腰部支持を行うとともに、背もたれシェル構造体31の弾性たわみ性の形状変更可能性と協働して、腰掛けているユーザの高度に調節可能で快適な背中支持を行う」ものである。
したがって、甲1発明は、少なくとも、背もたれシェル構造体31を背もたれフレーム30に位置113である「下側の端部の位置」で回動可能に取り付けることを前提として、「背もたれシェル構造体31を前方凸状形に押しつけることによって、腰掛けているユーザに最適の腰部支持を行うとともに、背もたれシェル構造体31の弾性たわみ性の形状変更可能性と協働して、腰掛けているユーザの高度に調節可能で快適な背中支持を行う」(以下「構成B」ということもある。)ものということができる。
そうすると、甲1発明において、上記構成Aは、上記構成Bの「腰掛けているユーザの高度に調節可能で快適な背中支持を行う」ために必要な前提構造として位置づけられるものというべきであるから、そのような前提構造として技術的意義のある上記構成Aの「位置113」を変更することの動機付けはなく、むしろ阻害要因が存在するというべきである。
オ 申立人は、本件発明1は、甲1、4、6に記載された発明及び周知技術1(甲3~6)、または、甲1、4、7に記載された発明及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである、と主張するので検討する。
(ア)甲4(摘示(4a))には、椅子用の背板ユニット及び背もたれに関し(段落【0001】)、バックフレーム5を、その左右側部を構成する上下長手の左右サイドフレーム8と、左右サイドフレーム8の上端に繋がった横長のアッパーフレーム9と、左右サイドフレーム8の下端に繋がった左右長手のロアフレーム10とを有し、全体として略四角形で前後に開口した枠状に構成すること(段落【0020】)、背板6を、下長手の左右のサイドメンバー16と、サイドメンバー16の上端間に一体に繋がったアッパーメンバー17と、左右サイドメンバー16の下端に一体に繋がったロアメンバー18とで略四角形の外形に構成すること(段落【0027】)、及び、背板6におけるサイドメンバー16の溝内に、側面視で下向き鉤形の第1係合爪30が上下に離反して2個形成し、バックフレーム5のサイドフレーム8に、第1係合爪30と噛み合う上向き鉤形の第2係合爪31が上下に離反して2個形成し、これら係合爪30,31の噛み合いにより、背板6をバックフレーム5に対して前向き移動不能に保持すること(段落【0037】)が記載されている(以下「甲4記載の技術事項」という。)。
(イ)甲6(摘示(6a))には、リクライニング式の椅子の背凭れの取付構造に関し(段落【0001】)、支持枠(1)は、リクライニング機構(5)の左右両側部から延びる縦杆(7)の上端同士を横杆(8)により連結して構成されており、縦杆(7)の上部すなわち横杆(8)との連結部には、係合突起(9)が、前向きに突設され、かつ縦杆(7)の下部前面には、嵌合溝(10a)を有する包持片(10)が突設されていること(段落【0012】)、背凭れ板(2)は、支持枠(1)の上部の係合突起(9)に対応する位置に、この係合突起(9)が嵌合係止される係合孔(11)が穿設されていること(段落【0013】)、及び、背凭れ板(2)の下部の左右側端部には、支持枠(1)の下部の包持片(10)と対応する位置に、嵌合溝(10a)に上方より圧嵌される左右方向の短軸形の膨出部(12)が形成されていること(段落【0014】)が記載されている(以下「甲6記載の技術事項」という。)。
(ウ)甲7は、本件特許出願の優先日後に発行されたものであるから、上記相違点を検討するための公知文献ということはできないが、仮に、申立人が、甲7の特許公報に対応する公開特許公報である特開2010-94449号公報(平成22年4月30日出願公開)を証拠として提出したと仮定して、念のため検討すると、甲7(摘示(7a)なお、上記公開特許公報にも同様に記載されている。)には、ヒンジ構造とそれを用いた椅子の背もたれの支持構造に関し(段落【0001】)、椅子の背もたれ支持構造として、変形可能な弾力性を備える背板2によって構成される背もたれをT形の背支持部材3によって少なくとも3点で支えるようにしたものであって、背板2の上部の左右の2点をヒンジ機構1を介して背フレーム3で可動的に連結して支持させるようにし、背板2の下端部を取付部2cを介して背支桿に取り付けるとともに、背フレーム4の下端も背支桿に取り付け支持すること(段落【0022】)が記載されている(以下「甲7記載の技術事項」という。)。
(エ)以上を踏まえて検討すると、上記エで述べたとおり、甲1発明において、「ねじり調節腰部機構34がフランジ134に係合して、背もたれシェル構造体31を背もたれフレーム30に位置113で回動可能に取り付け」た構成(構成A)は、上記構成Bの「腰掛けているユーザの高度に調節可能で快適な背中支持を行う」ために必要な前提構造として位置づけられるものであるところ、上記甲4、6及び7の技術事項は、その構造からして、甲1発明における上記構成Aの「ねじり調節腰部機構34」を設けた状態で採用できる構成ということはできないから、それら技術事項を適用する動機付けはないし、仮に、甲1発明に上記甲4、6及び7の技術事項を適用すると、上記構成Aの「ねじり調節腰部機構34」が除去されることになるから、その適用には阻害要因が存在する。
また、甲3(摘示(3a))には「背もたれ5」に係る構成が記載され(段落【0025】、【0026】)、甲4(摘示(4a))には「背板6」に係る構成が記載され(段落【0027】)、甲5(摘示(5a))には「背板3」に係る構成が記載され(段落【0017】)、及び甲6(摘示(6a))には「背凭れ板(2)」に係る構成が記載され(段落【0013】)、それら「背もたれ」の構成が申立人が主張するとおり周知技術1であるとしても、かかる構成は、上記相違点に係る本件発明1の構成ということはできない。したがって、上記周知技術1を考慮しても、上記相違点に係る本件発明1の構成には至らない。
カ 以上のとおりであるから、本件発明1は、申立人が主張するように、甲1、4、6に記載された発明及び周知技術1(甲3~6)、または、甲1、4、7に記載された発明及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、上記相違点に係る本件発明1の構成と同様に、「背もたれ」が「その周囲を構成する合成樹脂製の背枠体と、この背枠体で囲われた身体支持部とを備えていて、前記背枠体は、その左右側部を構成する上下長手の左右サイドメンバーと、上端部を構成する左右長手のアッパーメンバーと、下端部を構成するロアメンバーとを有している構成」、及び「背もたれ」と「バックフレーム」との取付態様が、「前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており、従って、前記背枠体は、前記バックフレームに三点支持の状態で支持されていて下端は自由端になっており」との構成を含んで発明を構成するものである。
してみると、上記「(1)(1-2)」で述べたとおり、少なくとも、背もたれシェル構造体31を背もたれフレーム30に位置113である「下側の端部の位置」で回動可能に取り付けることを前提として、「背もたれシェル構造体31を前方凸状形に押しつけることによって、腰掛けているユーザに最適の腰部支持を行うとともに、背もたれシェル構造体31の弾性たわみ性の形状変更可能性と協働して、腰掛けているユーザの高度に調節可能で快適な背中支持を行う」甲1発明において、上記「位置113」を変更することの動機付けはなく、むしろ阻害要因が存在するというべきである。
申立人は、本件発明2は、甲1、4、8に記載された発明及び周知技術1(甲3~6)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである、と主張する。甲4記載の技術事項及び周知技術1についての検討は、上記「(1)(1-2)」で述べたとおりであるので、以下甲8について検討する。
甲8(摘示(8a))には、リクライニング時に安定した姿勢を確保できるようにした椅子に関し(段落【0001】)、背凭れ板(26)は、周辺部を除いて、エキスパンデッドメタル状の形状に中抜きされ、中間部左右両端部に弱体化部分(30)を形成した、硬質合成樹脂等の硬質弾性材の成型板であること(段落【0020】)、及び、背凭れフレーム(18)の上部の係合突起(24)を、背凭れ板(26)の上部の係合孔(28)の大径孔に差し込み、背凭れ板(26)の下部の水平軸(32)を、背凭れフレーム(18)の下部の水平軸受(22)の開口部に臨ませ、背凭れ板(26)を、そのまま押し下げると両者は連結されること(段落【0023】)が記載されている(以下「甲8記載の技術事項」という。)。
しかし、上記「上記「(1)(1-2)」で述べたとおり、甲1発明における上記構成Aは、上記構成Bの「腰掛けているユーザの高度に調節可能で快適な背中支持を行う」ために必要な前提構造として位置づけられるものであるところ、上記甲8記載の技術事項は、その構造からして、甲1発明における上記構成Aの「ねじり調節腰部機構34」を設けた状態で採用できる構成ということはできないから、かかる技術事項を適用する動機付けはないし、仮に、甲1発明に上記甲8記載の技術事項を適用すると、上記構成Aの「ねじり調節腰部機構34」が除去されることになるから、その適用には阻害要因が存在する。
また、上記「(1)(1-2)」」で述べた理由と同様に、甲1発明に、周知技術1を適用しても、本件発明2の構成には至らない。
以上のとおりであるから、本件発明2は、申立人が主張するように、甲1、4、8に記載された発明及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(3)本件発明3及び4について
本件発明3及び4は、上記相違点に係る本件発明1の構成と同様に、「背もたれ」が「その周囲を構成する合成樹脂製の背枠体と、この背枠体で囲われた身体支持部とを備えていて、前記背枠体は、その左右側部を構成する上下長手の左右サイドメンバーと、上端部を構成する左右長手のアッパーメンバーと、下端部を構成するロアメンバーとを有している構成」、及び「背もたれ」と「バックフレーム」との取付態様が、「前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており、従って、前記背枠体は、前記バックフレームに三点支持の状態で支持されていて下端は自由端になっており」との構成を含んで発明を構成するものである。
してみると、上記「(1)(1-2)」で述べたとおり、少なくとも、背もたれシェル構造体31を背もたれフレーム30に位置113である「下側の端部の位置」で回動可能に取り付けることを前提として、「背もたれシェル構造体31を前方凸状形に押しつけることによって、腰掛けているユーザに最適の腰部支持を行うとともに、背もたれシェル構造体31の弾性たわみ性の形状変更可能性と協働して、腰掛けているユーザの高度に調節可能で快適な背中支持を行う」甲1発明において、上記「位置113」を変更することの動機付けはなく、むしろ阻害要因が存在するというべきである。
申立人は、本件発明3は、甲1、4に記載された発明及び周知技術1に基いて、または、甲1、4、8に記載された発明及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである、本件発明4は、甲1、4、8に記載された発明及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである、と主張する。
甲4、8記載の技術事項及び周知技術1についての検討は、上記「(1)(1-2)」及び「(2)」で述べたとおりであり、同様の理由により、本件発明3は、、申立人が主張するように、甲1、4に記載された発明及び周知技術1に基いて、または、甲1、4、8に記載された発明及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないし、本件発明4は、甲1、4、8に記載された発明及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(4)本件発明5について
本件発明5は、上記相違点に係る本件発明1の構成と同様に、「背もたれ」が「その周囲を構成する合成樹脂製の背枠体と、この背枠体で囲われた身体支持部とを備えていて、前記背枠体は、その左右側部を構成する上下長手の左右サイドメンバーと、上端部を構成する左右長手のアッパーメンバーと、下端部を構成するロアメンバーとを有している構成」、及び「背もたれ」と「バックフレーム」との取付態様が、「前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており、従って、前記背枠体は、前記バックフレームに三点支持の状態で支持されていて下端は自由端になっており」との構成を含んで発明を構成するものである。
してみると、上記「(1)(1-2)」で述べたとおり、少なくとも、背もたれシェル構造体31を背もたれフレーム30に位置113である「下側の端部の位置」で回動可能に取り付けることを前提として、「背もたれシェル構造体31を前方凸状形に押しつけることによって、腰掛けているユーザに最適の腰部支持を行うとともに、背もたれシェル構造体31の弾性たわみ性の形状変更可能性と協働して、腰掛けているユーザの高度に調節可能で快適な背中支持を行う」甲1発明において、上記「位置113」を変更することの動機付けはなく、むしろ阻害要因が存在するというべきである。
申立人は、本件発明5は、甲1、4、6に記載された発明、甲5に記載された事項及び周知技術1に基いて、または、甲1、4、7に記載された発明、甲5に記載された事項及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである、と主張する。甲4、6、7記載の技術事項及び周知技術1についての検討は、上記「(1)(1-2)」で述べたとおりであるので、以下甲5について検討する。
甲5(摘示(5a))には、座体の後部から上方に延出した背凭れフレームの前面に、合成樹脂等の硬質弾性体からなる背板を支持してなる椅子の背凭れ装置に関し(段落【0001】)、背板3は、背板3の周縁、すなわち左右側部と上下端部とを高剛性の枠部4とし、このやや縦長のほぼ四角形の枠部4より内方の部位を、着座者の背中による後向きの荷重によって弾性変形する可撓部5としてあり、この可撓部5は、前面から後面へ貫通する縦長の開口部6を多数設けることにより弾性変形が容易なように形成されていること(段落【0018】)が記載されている(以下「甲5記載の技術事項」という。)。
しかし、上記「上記「(1)(1-2)」で述べたとおり、甲1発明における上記構成Aは、上記構成Bの「腰掛けているユーザの高度に調節可能で快適な背中支持を行う」ために必要な前提構造として位置づけられるものであるところ、上記甲8記載の技術事項は、その構造からして、甲1発明における上記構成Aの「ねじり調節腰部機構34」を設けた状態で採用できる構成ということはできないから、かかる技術事項を適用する動機付けはない。
また、甲5には、そもそも上記相違点にかかる本件発明5の「背もたれ」と「バックフレーム」との取付態様を開示するものではないから、甲1発明に、甲5記載の技術事項を適用しても、本件発明5の構成には至らない。
以上のとおりであるから、本件発明5は、申立人が主張するように、甲1、4、6に記載された発明、甲5に記載された事項及び周知技術1に基いて、または、甲1、4、7に記載された発明、甲5に記載された事項及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(5)本件発明6について
本件発明6は、上記相違点に係る本件発明1の構成と同様に、「背もたれ」が「その周囲を構成する合成樹脂製の背枠体と、この背枠体で囲われた身体支持部とを備えていて、前記背枠体は、その左右側部を構成する上下長手の左右サイドメンバーと、上端部を構成する左右長手のアッパーメンバーと、下端部を構成するロアメンバーとを有している構成」、及び「背もたれ」と「バックフレーム」との取付態様が、「前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており、従って、前記背枠体は、前記バックフレームに三点支持の状態で支持されていて下端は自由端になっており」との構成を含んで発明を構成するものである。
してみると、上記「(1)(1-2)」で述べたとおり、少なくとも、背もたれシェル構造体31を背もたれフレーム30に位置113である「下側の端部の位置」で回動可能に取り付けることを前提として、「背もたれシェル構造体31を前方凸状形に押しつけることによって、腰掛けているユーザに最適の腰部支持を行うとともに、背もたれシェル構造体31の弾性たわみ性の形状変更可能性と協働して、腰掛けているユーザの高度に調節可能で快適な背中支持を行う」甲1発明において、上記「位置113」を変更することの動機付けはなく、むしろ阻害要因が存在するというべきである。
申立人は、本件発明6は、甲1、4、6に記載された発明、周知技術1及び周知技術2(甲2、3、9)、または、甲1、4、7に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである、と主張する。甲4、6、7記載の技術事項及び周知技術1についての検討は、上記「(1)(1-2)」で述べたとおりであるので、以下甲2、3、9について検討する。
甲2(摘示(2a))には、「メッシュ状の張材27」を有する「背凭れ7」が記載され(段落【0039】)、甲3(摘示(3a))には
「縦長の疎部と密部とが左右方向に交互に配置された縦縞模様の外観を呈して」構成された「サポートシート14」を有する「背もたれ5」が記載され(段落【0025】、【0026】)、甲9(摘示(9a))には、「合成繊維を1枚のメッシュ状に編むか、織るなどして長方形状に形成され」た「張り材14」を有する「背凭れ10」が記載されているように(段落【0017】、【0020】)、「メッシュ材」を含めて「背もたれ」を構成することが周知技術2であるとしても、かかる構成は、上記相違点に係る本件発明6の構成ということはできない。したがって、上記周知技術2を考慮しても、上記相違点に係る本件発明6の構成には至らない。
以上のとおりであるから、本件発明6は、申立人が主張するように、甲1、4、6に記載された発明、周知技術1及び周知技術2、または、甲1、4、7に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(6)本件発明7について
本件発明7は、上記相違点に係る本件発明1の構成と同様に、「背もたれ」が「その周囲を構成する合成樹脂製の背枠体と、この背枠体で囲われた身体支持部とを備えていて、前記背枠体は、その左右側部を構成する上下長手の左右サイドメンバーと、上端部を構成する左右長手のアッパーメンバーと、下端部を構成するロアメンバーとを有している構成」、及び「背もたれ」と「バックフレーム」との取付態様が、「前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており、従って、前記背枠体は、前記バックフレームに三点支持の状態で支持されていて下端は自由端になっており」との構成を含んで発明を構成するものである。
してみると、上記「(1)(1-2)」で述べたとおり、少なくとも、背もたれシェル構造体31を背もたれフレーム30に位置113である「下側の端部の位置」で回動可能に取り付けることを前提として、「背もたれシェル構造体31を前方凸状形に押しつけることによって、腰掛けているユーザに最適の腰部支持を行うとともに、背もたれシェル構造体31の弾性たわみ性の形状変更可能性と協働して、腰掛けているユーザの高度に調節可能で快適な背中支持を行う」甲1発明において、上記「位置113」を変更することの動機付けはなく、むしろ阻害要因が存在するというべきである。
申立人は、本件発明7は、甲1、4、5に記載された発明及び周知技術1、または、甲1、4に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである、と主張する。
甲4記載の技術事項及び周知技術1についての検討は、上記「(1)(1-2)」で述べたとおりであり、甲5記載の技術事項についての検討は、上記「(4)」で述べたとおりであり、周知技術2についての検討は、上記「(5)」で述べたとおりであり、同様の理由により、本件発明7は、申立人が主張するように、甲1、4、5に記載された発明及び周知技術1、または、甲1、4に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
2-2 申立理由2(特許法第36条第6項第1号)について
(1)特許法第36条第6項は、「第2項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高裁特別部判決平成17年(行ケ)第10042号参照)。
以下、この観点に立って検討する。
(2)特許請求の範囲の記載
特許請求の範囲の記載は、上記「第3」のとおりであり、本件発明1は、少なくとも「前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており、従って、前記背枠体は、前記バックフレームに三点支持の状態で支持されていて下端は自由端になっており」という事項(以下「事項A」という。)を発明特定事項とするものである。
(3)発明の詳細な説明の記載
本件明細書の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
本願発明は椅子に関し、特に、オフィスで使用される椅子を好適な対象にしている。
【背景技術】
・・・
【0006】
そこで、身体の動きへの背もたれの追従性を高めるための工夫が行われている。その例として特許文献1~4には、背もたれを着座者の体圧で変形し得る構造として、背もたれを、上端部の左右2カ所と下端部の左右中間部との3カ所においてバックフレームで支持することが記載されている。
【0007】
背もたれが着座者の体圧によって自由自在に変形すると、身体の安定性が損なわれるため却って快適さが劣る。すなわち、背もたれには、身体をしっかりと支える機能が求められる。特に、人が椅子に腰掛けて各種のデスクワークを行う場合、前屈みになっていると内蔵を圧迫して身体への負担が高くなるため、ロッキングしていない状態でも、人の身体(特に腰部)を支えて背筋を伸ばした状態に保持する必要性が高いと云える。
【0008】
このような身体の安定的支持機能という点から各特許文献を見ると、各特許文献の背もたれは上端の左右2カ所と下端部の左右中間部との三点支持になっているため、過度に変形することはないと云える。しかし、背もたれの下部は変形しやすいため、非ロッキング状態に身体をしっかりとサポートして背筋を伸ばした状態に保持する機能は高いと云えない。すなわち、各特許文献は、非ロッキング状態での身体の安定的支持機能が十分でない可能性がある。
【0009】
また、椅子の使用態様としてロッキングした状態で身体を右や左に捩じったり肩を左右にずらしたりすることはよくあり、この場合、背もたれの上部の左側又は右側に荷重が集中するが、各特許文献では背もたれの上部は変形し難いため、身体の姿勢変化に対する追従性が高いとは云えず、この面でも快適性に改善の余地がみられる。
【0010】
また椅子の背もたれは樹脂製の背板を備えていることが多いが、圧迫感を和らげてクッション性・フィット性を高める手段として、背板を柔軟な構造にすることが行われている。例えば本願の出願人は、特許文献5において、背板に左右横長の長溝を多段に設けることで身体支持部を多段の帯板群で構成することを開示した。この特許文献5において、各帯板は、変形を容易化するため、左右端部に細いトリミング溝が設けられている。
【0011】
他方、特許文献6には、ハニカム構造に類似した形態の背板が開示されており、特許文献7には、十字形状の穴と一直線状の穴とを規則正しく配置することで網のような構造と成した背もたれが開示されている。
【0012】
特許文献6と特許文献7は背もたれの身体支持部を網目構造と成したものであり、身体支持部を構成する細い条線の群はそれぞれ曲がっているため、条線の群は体圧によって伸び変形することが許容されており、このため、身体支持部全体としては後ろ側に凹むように変形し得る。
【0013】
さて、背もたれによる身体の支持機能を考察すると、柔軟性が高ければ足りるというわけではなく、身体を安定的に支持する機能も重要である。例えば、ロッキング状態で身体が揺れる傾向を呈すると、却って快適さが損なわれる場合がある。
【0014】
また、着座者が非ロッキング状態でパソコン操作のようなデスクワークを行う場合、腰部がしっかりと支持されていると、背筋を伸ばした適切な姿勢に保持されるため好ましいが、背もたれの柔軟性が高すぎると身体を安定的に支持することができない。
【0015】
そして、特許文献6,7は一種の網目構造であって全体的に変形し易い構造になっているため、クッション性は高いものの、身体の安定的な支持という面では改善の余地があると云える。他方、特許文献5の帯板は過度に伸び変形することはないため身体の支持安定性に優れているが、各帯板の伸びには限度があるため柔軟性の点では改善の余地があると云える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】 日本国特許公開2002-119366号公報
【特許文献2】 日本国特許公開2004-129966号公報
【特許文献3】 日本国特許公開2010-063831号公報
【特許文献4】 米国特許明細書第7249802号
【特許文献5】 日本国特許公開2011-041615号公報
【特許文献6】 日本国特許第4015673号公報
【特許文献7】 米国特許明細書第5934758号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本願発明はこのような現状を背景に成されたもので、使用価値が高められて改善された椅子を提供せんとするものである。また、本願は改良された多くの構成を含んでおり、これらを提供することも目的たり得る。
【0018】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願発明は、各請求項で特定している。
【0020】
本願発明は、
「座と背もたれ、及び、前記背もたれの後ろに配置された剛体構造のバックフレームとを備えており、
前記背もたれは、その周囲を構成する合成樹脂製の背枠体と、この背枠体で囲われた身体支持部とを備えていて、前記背枠体は、その左右側部を構成する上下長手の左右サイドメンバーと、上端部を構成する左右長手のアッパーメンバーと、下端部を構成するロアメンバーとを有している」
という基本構成である。
【0021】
そして、請求項1の発明は、上記基本構成において、
「前記バックフレームは、左右の縦長メンバーと、前記左右の縦長メンバーが繋がった連結部とを有しており、
前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており、従って、前記背枠体は、前記バックフレームに三点支持の状態で支持されていて下端は自由端になっており、
かつ、前記背枠体は、当該背枠体の弾性に抗して前後方向に回動可能な状態で前記バックフレームにて支持されている」
という構成が付加されている。
・・・
【0051】
本願各発明では、背もたれは、上端部と左右2カ所との三点支持になっている。そして、パソコン操作のようなデスクワークを行うために使用者が背もたれに凭れ掛からずに着座している状態では、背もたれのうち左右の二点で支持された部分で腰部等を安定的に支えることができる。従って、背筋を伸ばした状態を的確に保持できて、使用者に適切な執務姿勢を採らせることができる。
本発明により、椅子への凭れ掛かり状態での快適性が向上する。」
(4)検討
ア 本件明細書の発明の詳細な説明の記載(上記(3))によれば、本件発明1は、特許文献1~4に記載された従来技術(段落【0006】)では、非ロッキング状態での身体の安定的支持機能が十分でない可能性があること(段落【0008】、背もたれの上部は変形し難いため、身体の姿勢変化に対する追従性が高いとは云えず、この面でも快適性に改善の余地がみられること(段落【0009】)、特許文献5に記載された従来技術(段落【0010】)では、帯板は過度に伸び変形することはないため身体の支持安定性に優れているが、各帯板の伸びには限度があるため柔軟性の点では改善の余地があること(段落【0015】)、特許文献6、7に記載された従来技術(段落【0011】~【0012】)では、一種の網目構造であって全体的に変形し易い構造になっているため、クッション性は高いものの、身体の安定的な支持という面では改善の余地があること(段落【0015】)に鑑み、「使用価値が高められて改善された椅子を提供」すること(段落【0017】)を課題するものである。
そして、かかる課題を解決するために、本件発明1は、上記事項Aを発明特定事項として特定したものといえ(段落【0021】)、さらに、上記事項Aの「三点支持」によって、背もたれのうち左右の二点で支持された部分で腰部等を安定的に支えることができ、背筋を伸ばした状態を的確に保持できて、使用者に適切な執務姿勢を採らせることができる効果を奏するものと理解することができる(段落【0051】)。
イ したがって、背枠体のアッパーメンバーがバックフレームの連結部に直接取付けられるものか否か、また、背枠体の左右サイドメンバーがバックフレームの左右縦長メンバーに直接取付けられるものか否か、特定されていないとしても、上記事項Aの「三点支持」の構造を有する本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといわざるを得ない。
また、上記事項Aと同様の構成を有する本件発明2~7も、本件発明1と同様に、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといわざるを得ない。
(5)小括
以上のとおりであるから、申立人の主張する申立理由2によっては、本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。
2-3 申立理由3(特許法第36条第6項第2号)について
申立人は、請求項1には、「前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており」と記載されているが、その意味を複数解釈できるから、不明瞭であり、また、請求項2~7の記載も請求項1と同様に不明確である旨主張する(上記「第5 1(3)」)。
しかし、上記事項Aの「前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており」との記載は、「前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて」ていること、及び、「前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられて」いることを特定するものであって、その記載内容は明確である。
そして、上記「2-2」で述べたとおり、上記請求項1に係る本件発明1は、少なくとも、上記事項Aの「前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており」とする構成を具備することで、本件発明1の課題を解決し、使用者に適切な執務姿勢を採らせることができる効果を奏するものと理解することができ、その技術的意義も明確である。
したがって、上記事項Aに係る記載を不明瞭であるということはできないし、同様の構成を特定する請求項2~7の記載も、請求項1の記載と同様に不明瞭であるということはできない。
以上のとおりであるから、申立人の主張する申立理由3によっては、本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。
2-4 申立理由4(特許法第36条第4項第1号)について
申立人は、請求項6及び請求項7に記載されている「メッシュ材」に関し、本件明細書の発明の詳細な説明には、何ら記載や示唆がなされておらず、その材料や構造等が明らかでないから、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明6及び7を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでない旨主張する(上記「第5 1(4)」)。
特許法第36条第4項は、「前項第3号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。」と規定しているところ、「メッシュ」の字義は「網の目。網目織。」(広辞苑6版)であるから、技術常識を有する当業者は、請求項6及び請求項7に記載された「メッシュ材」を、網の目状の部材として理解し得るものといえる。
また、上記請求項6及び請求項7には「メッシュ材」の具体的な材料や構造についてまで特定するものではなく、単に「メッシュ材」として特定しているのであるから、本件明細書の発明の詳細な説明に、その材料や構造について具体的な記載がなくても、「メッシュ材」、要するに、網の目状の部材、として構成すれば足りるのであるから、その実施をすることができないというものでもない。
以上のとおりであるから、申立人の主張する申立理由4によっては、本件発明6、7に係る特許を取り消すことはできない。
2-5 申立理由5(特許法第17条の2第3項)について
申立人は、請求項1の「前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており」との記載は、当初明細書等に記載も示唆もなく、また、当初明細書等から自明の事項ともいえない旨、及び請求項2~7の記載も請求項1と同様に記載も示唆もなく自明の事項といえない主張する(上記「第5 1(5)」)。
しかし、当初明細書には、「そして、例えば図3のとおり、背もたれ3のうちアッパーメンバー9bの左右中間部は第1支持装置12を介してバックフレーム4の上端の連結部4bに取り付けられる。そして、左右サイドメンバー9aは、ランバーサポート部材11の取付部の上の部位において、第2支持装置13を介してバックフレーム4の縦長メンバー4aに取付けられている。」(段落【0064】)と記載され、また、図3には、上記「ランバーサポート部材11の取付部の上の部位」が、上記「左右サイドメンバー9a」の中途高さ位置であることも図示されている。
したがって、請求項1の「前記背枠体のアッパーメンバーは前記バックフレームの連結部に取付けられて、前記背枠体の左右サイドメンバーは、それぞれ中途高さ位置が前記バックフレームの左右縦長メンバーに取付けられており」との記載は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。
また、請求項1と同様に、請求項2~7の記載も当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。
以上のとおりであるから、申立人の主張する申立理由5によっては、本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700152