特許訂正審判
2020-390037
蓄光材の製造方法
- 審判番号
- 2020-390037
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2020-014280
- 登録番号
- 特許第6685635号(P6685635)
- 請求日
- 2020年05月18日
- 審決日
- 2020年08月18日
- 公報発行日
- 2020年11月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】株式会社 ティーオーカンパニー
- 【請求人代理人】小山 有
- 審判長/審判官
- 審判長 天野 斉
- 審判官 瀬下 浩一
- 審判官 木村 敏康
- 分類
- P141 .851-Y (C09K) / P141 .852-Y (C09K) / P141 .853-Y (C09K) / P141 .854-Y (C09K) / P141 .855-Y (C09K) / P141 .856-Y (C09K) / P141 .841-Y (C09K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第3項、特許法第134条、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6685635号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第6685635号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第6685635号(以下「本件特許」という。)は、令和2年1月31日を出願日とする特願2020-14280号の請求項1~4に係る発明について令和2年4月3日に特許権の設定登録がなされたものである。
そして、令和2年5月18日に本件訂正審判の請求(以下「本件請求」という。)がされたものである。
第2 本件審判請求の趣旨及び内容
1 審判請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、「特許第6685635号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1乃至請求項4について訂正することを認める、との審決を求める。」というものである。
2 訂正の内容
訂正の内容は次のとおりである。
[訂正事項]
特許請求の範囲の請求項1に「発光中心となる賦活剤として前記Eu2O3、或いはEu金属材料、或いは前記Eu金属材料とカーボン粉末の混合材料、或いは前記Eu金属材料とカーボン粉末とEuO材料の混合材料の混合材料を使用し、」とあるのを「発光中心となる賦活剤として前記EuO材料、或いはEu金属材料、或いは前記Eu金属材料とカーボン粉末の混合材料、或いは前記Eu金属材料とカーボン粉末とEuO材料の混合材料の混合材料を使用し、」に訂正する。
第3 当審の判断
1 一群の請求項ごとに訂正を請求することについて
本件訂正請求は、二以上の請求項が記載された特許請求の範囲の訂正を請求し、また、明細書の訂正を請求するものであるので、本件訂正請求が、特許法第126条第3項及び第4項に規定する要件を満たすものであるかを検討する。
訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は請求項1を直接的に引用しているものであって、訂正事項によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4は、特許法第126条第3項に記載する一群の請求項である。
2 目的要件について
(1)訂正事項について
審判請求人は、訂正事項について令和2年7月3日の手続補正により補正された審判請求書第2ページ(3)aにおいて、誤記の訂正を目的とするものである旨主張しているので、特許法第126条第1項ただし書第2号を目的とするか否かについて検討する。
(2)判断の前提
特許請求の範囲又は明細書の誤記の訂正を目的とする訂正が認められるためには、特許がされた特許請求の範囲又は明細書の記載に誤記が存在し、それ自体で特許請求の範囲、明細書又は図面の他の記載との関係で、誤りであることが明らかであり、かつ正しい記載が願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面から自明な事項として定まる必要がある。
(例えば、参考判決としては、「旧特許法第134条2項ただし書2号は、「誤記の訂正」を目的とする場合には明細書又は図面を訂正することを認めている。ここでいう「誤記」というためには,訂正前の記載が誤りで訂正後の記載が正しいことが,当該明細書及び図面の記載や当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)の技術常識などから明らかで,当業者であればそのことに気付いて訂正後の趣旨に理解するのが当然であるという場合でなければならないものと解される。」(知財高判平18(行ケ)10204号)参照)。
(3)目的要件の判断
訂正前の請求項1の記載は、次のとおり、
「【請求項1】
Eu2O3を加熱還元してEuO材料、或いはEu金属材料、或いは前記Eu金属材料とカーボン粉末の混合材料、或いは前記Eu金属材料とカーボン粉末とEuO材料の混合材料を作製する工程、
SrCO3とAl2O3の混合材料を事前加熱してSrAl2O4材料を作製する工程、
発光中心となる賦活剤として前記Eu2O3、或いはEu金属材料、或いは前記Eu金属材料とカーボン粉末の混合材料、或いは前記Eu金属材料とカーボン粉末とEuO材料の混合材料を使用し、賦活助剤としてDy2O3を使用し、母材としてSrCO3とAl2O3の混合材料を事前加熱する事で作製したSrAl2O4材料を使用し、フラックス剤としてB2O3、或いはH3BO3を使用し加熱処理する工程を含む蓄光材の製造方法において、
加熱処理を2回に分け、1回目の加熱処理工程で賦活剤としてのEu添加モル量をAl2O3の添加モル量を100とした時に1.0以上にした混合材料を真空加熱炉で加熱処理する事で発光材を一旦作製し、2回目の加熱処理工程で前記発光材を粉砕すると共に、前記粉砕発光材中のEu添加モル濃度を薄める目的で母材を追加添加し、真空加熱炉で加熱処理する事で蓄光材にする事を特徴とする蓄光材の製造方法。」であり、発光中心となる賦活剤として(A)Eu2O3、(B)Eu金属材料、(C)Eu金属材料とカーボン粉末の混合材料、または、(D)Eu金属材料とカーボン粉末とEuO材料の混合材料という、(A)~(D)の4つの材料を使用する工程を含む蓄光材の製造方法の発明と理解し得る。
そして、前記訂正事項1は、要するに、「前記Eu2O3」を「前記EuO材料」と訂正するものであるところ、誤記の訂正を目的としたものとして認められるためには、上述のとおり訂正前の「前記Eu2O3」の記載がそれ自体で、特許された明細書、特許請求の範囲又は図面の記載との関係で誤りであることが明らかであり、かつ、特許がされた明細書、特許請求の範囲又は図面の記載全体から、正しい記載が「前記EuO材料」であると自明な事項として定まることが必要である。
ア 訂正前の請求項の「前記Eu2O3」との記載がそれ自体で、特許された明細書、特許請求の範囲又は図面の記載との関係で誤りであることが明らかであるについて検討する。
(ア)請求項1の記載において、「Eu2O3」の記載は、技術用語としては存在するものであり、「Eu2O3」との技術内容にも不明な点はなく、「前記Eu2O3」はそれ自体で誤りであるとはいえない。
(イ)しかしながら、請求項1の記載において「Eu2O3を加熱還元してEuO材料、或いはEu金属材料、或いは前記Eu金属材料とカーボン粉末の混合材料、或いは前記Eu金属材料とカーボン粉末とEuO材料の混合材料」(下線は当審にて追加。以下同様。)とあり、その後の記載において「前記Eu2O3、或いはEu金属材料、或いは前記Eu金属材料とカーボン粉末の混合材料、或いは前記Eu金属材料とカーボン粉末とEuO材料の混合材料」とあり、前記(A)~(D)の材料のうち(A)の場合にのみ整合しなくなる記載が存在する。
(ウ)また、明細書において、前記発光中心となる賦活剤として(A)~(D)に対応した唯一の記載である段落0037には、「【0037】
上記課題を解決するための本発明に係る蓄光材の製造方法を説明する。
まず、母材としてSrCO3とAl2O3の混合材料を使用せず、SrCO3とAl2O3の混合材料を事前加熱する事で作製したSrAl2O4材料を使用した。
次に発光中心となる賦活剤としてEu2O3を使用せず、Eu2O3を加熱還元して作製したEuO材料、或いはEu金属材料、或いは 前記Eu金属とカーボン粉末の混合材料、或いは 前記Eu金属とカーボン粉末とEuO材料の混合材料を使用した。Eu2O3の具体的な加熱還元方法としては、カーボンを添加し還元雰囲気中で加熱する事でEu2O3+C→2EuO+CO 或いは Eu2O3+1/2C→2EuO+1/2CO2の反応を起こさせるという広く知られている還元方法を採用した。尚、この時、EuO材料、或いはEu金属材料の収量効率を無視すれば Eu2O3モル量を1とした時に、カーボン添加モル量を2~10と多めに投入すれば還元率の良好なEuO材料、或いはEu金属材料を容易に得る事が出来る。
次に、加熱処理を2回に分け、1回目の加熱処理工程で賦活剤としてのEu添加モル量をAl2O3の添加モル量を100とした時に1.0以上にした混合材料を真空加熱炉で加熱処理する事で、蓄光機能を有さない発光材を一旦作製し、2回目の加熱処理工程で前記発光材を粉砕すると共に、前記粉砕発光材の3倍以上の母材を追加添加し、真空加熱炉で加熱処理する事でEu添加モル量をAl2O3の添加モル量を100とした時に0.3以下の蓄光材にする事にした。
尚、上記の1回目の加熱処理において、蓄光機能を有さない発光材が得られるが、ここにいう蓄光機能を有さないとは、蓄光材として使用できる程度の蓄光機能を有さないの意味であり、1回目の加熱処理において賦活助剤やフラックス剤が不可避的に混入する場合も含む。」との記載があり、前記(A)~(D)の材料のうち、(A)の材料の場合にのみ整合しなくなる記載が存在する。
そうすると、上記(イ)及び(ウ)のことからすれば、当業者であれば、(A)~(D)の4つの材料を使用する工程を含む蓄光材の製造方法において「前記Eu2O3」と特定した(A)の場合の請求項1の箇所には誤りが存在すると気付くといえる。
イ 訂正後の「前記EuO材料」との記載に関して、特許がされた明細書、特許請求の範囲又は図面の記載全体から、正しい記載が「前記EuO材料」であると自明な事項として定まるといえるかについて検討する。
明細書において、前記発光中心となる賦活剤として(A)~(D)に対応した唯一の記載である段落0037には上記ア(ウ)のとおり記載されている。
すなわち、請求項1で使用される材料については、Eu2O3を加熱還元して作製したEuO材料、或いはEu金属材料、或いは 前記Eu金属とカーボン粉末の混合材料、或いは前記Eu金属とカーボン粉末とEuO材料の混合材料が、明細書に記載されているといえる。そして、発光中心となる賦活剤として、「Eu2O3」自体を使用することは何ら記載されていない。
したがって、請求項1の「前記Eu2O3」との記載の箇所に誤りがあると気付いた当業者には、正しい記載が「前記EuO材料」であると自明な事項として定まるといえる。
ウ 小括
以上のとおり、請求項1の訂正前の「前記Eu2O3」という記載は、明細書の他の記載との関係で、誤りであることが明らかであり、かつ正しい記載が願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面から自明な事項として定まるといえる。
よって、訂正前の「前記Eu2O3」を「前記EuO材料」とする訂正事項は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものと認められる。
3 特許請求の範囲の実質上の拡張・変更の存否について
上記1で述べたとおり、訂正事項は、特許請求の範囲の誤記の訂正を目的とするものであり、「前記EuO材料」との記載は登録時に記載されていたといえるものであるから、訂正の前後で実質上特許請求の範囲の拡張又は変更があるとはいえない。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合する。
4 新規事項の追加の有無について
上記2で述べたとおり、段落0037には、Eu2O3を加熱還元して作製したEuO材料が記載されていることから、訂正事項によって、「前記EuO材料」と訂正されることで、新たな技術的事項が導入されているとはいえず、明細書の該当箇所は補正されておらず、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第5項の規定に適合する。
5 訂正後の発明の独立特許要件について
本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とする訂正を含むので、訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が同条第7項に適合するものであるかを検討する。
そこで、この点を検討したところ、本件訂正後における特許請求の範囲の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないとする新たな理由は見当たらない。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項、同条第5項~第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
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