2020-016855
ぱちんこ遊技機
- 審判番号
- 2020-016855
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-060079外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年12月08日
- 審決日
- 2021年10月20日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (A63F) / P18 .575-Z (A63F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯の概要
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本願は、平成29年3月24日の特許出願であって、令和2年1月20日付けで拒絶の理由が通知され、同年3月18日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年4月28日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年7月27日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年9月2日付け(謄本送達日:同年同月15日)で、同年7月27日付け手続補正書による手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年12月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
第2 令和2年12月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年12月8日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、令和2年3月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における
「【請求項1】遊技球が流下可能な遊技領域と、遊技球が入球可能であり、遊技球が入球することにより賞球が払い出される複数の入賞口と、情報を表示可能な情報表示部と続きを表示(全14行)を備え、前記複数の入賞口への遊技球の入球を検出し得る入球判定手段と、遊技領域から排出されるすべての遊技球を検出し得る排出数計測手段と、入球判定手段及び排出数計測手段による検出結果に基づき、前記複数の入賞口への遊技球の入球に基づく情報である入球状態情報を生成する入球状態情報生成手段とを有しており、前記生成した入球状態情報を情報表示部にて表示し得るよう構成されており、プログラムによる処理結果データを記憶する情報格納領域として、第1情報格納領域と、第1情報格納領域とは異なる領域である第2情報格納領域と、を有しており、前記第2情報格納領域には、少なくとも、入球状態情報が記憶され、情報格納領域の初期化を実行する場合において、遊技機の電源投入時に情報格納領域のデータを確認し、正常の場合には、前記第2情報格納領域に記憶された入球状態情報を除く所定の範囲を設定して初期化し、異常の場合には、前記第2情報格納領域に記憶された入球状態情報を含む所定の範囲を設定して初期化する一方、情報格納領域の初期化を実行しない場合においても、遊技機の電源投入時に情報格納領域のデータを確認し、異常の場合には、前記第2情報格納領域に記憶された入球状態情報を含む所定の範囲を設定して初期化するよう構成されていることを特徴とするぱちんこ遊技機。」を、
審判請求時に提出された手続補正書(令和2年12月8日付け)の特許請求の範囲の請求項1における
「【請求項1】遊技球が流下可能な遊技領域と、遊技球が入球可能であり、遊技球が入球することにより賞球が払い出される複数の入賞口と、情報を表示可能な情報表示部と、続きを表示(全18行)RAMクリアスイッチとを備え、RAMクリアスイッチが操作された状態で電源が投入された場合に、情報格納領域を初期化可能なRAMクリア手段と、前記複数の入賞口への遊技球の入球を検出し得る入球判定手段と、遊技領域から排出されるすべての遊技球を検出し得る排出数計測手段と、入球判定手段及び排出数計測手段による検出結果に基づき、前記複数の入賞口への遊技球の入球に基づく情報である入球状態情報を生成する入球状態情報生成手段とを有しており、前記生成した入球状態情報を情報表示部にて表示し得るよう構成されており、前記情報格納領域として、第1情報格納領域と、第1情報格納領域とは異なる領域である第2情報格納領域と、を有しており、前記第2情報格納領域には、少なくとも、入球状態情報が記憶され、RAMクリアスイッチが操作された状態で電源が投入され、前記RAMクリア手段により前記情報格納領域の初期化が実行される場合において、電源投入時に前記情報格納領域のデータを確認し、正常の場合には、前記入球状態情報を含まない所定の範囲を設定して初期化し、異常の場合には、前記入球状態情報を含む特定の範囲を設定して初期化する一方、RAMクリアスイッチが操作されていない状態で電源が投入され、前記RAMクリア手段により前記情報格納領域の初期化が実行されない場合においても、電源投入時に前記情報格納領域のデータを確認し、異常の場合には、前記特定の範囲を設定して初期化するよう構成され、前記所定の範囲には、遊技に使用されない未使用領域が含まれるよう構成され、前記特定の範囲には、遊技に使用されない未使用領域が含まれるよう構成されていることを特徴とするぱちんこ遊技機。」
にする補正を含むものである(下線は、補正箇所を明示するために当審判合議体にて付した。)。
2 補正の適否
2-1 補正の目的及び新規事項について
本件補正は、(1)補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「情報格納領域の初期化を実行する」ための手段として「RAMクリアスイッチ」を備えることを限定し、さらに、初期化を実行するものが「RAMクリアスイッチが操作された状態で電源が投入された場合に、情報格納領域を初期化可能なRAMクリア手段」であることを限定する補正、(2)補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「異常の場合」であって「情報格納領域の初期化を実行しない場合」について、「情報格納領域の初期化が実行されない場合においても、電源投入時に前記情報格納領域のデータを確認」するのは「RAMクリアスイッチが操作されていない状態で電源が投入され」た「前記RAMクリア手段」であることを限定する補正、(3)補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「正常の場合には、前記第2情報格納領域に記憶された入球状態情報を除く所定の範囲を設定して初期化し、異常の場合には、前記第2情報格納領域に記憶された入球状態情報を含む所定の範囲を」との記載を、「正常の場合には、前記入球状態情報を含まない所定の範囲を設定して初期化し、異常の場合には、前記特定の範囲を」というように、重ねて特定され冗長となっていた「第2情報格納領域」を削除するとともに、「異常の場合」に初期化する「前記入球状態情報を含まない所定の範囲」を、「正常の場合」に初期化する「前記入球状態情報を含まない所定の範囲」と区別するために「特定の範囲」と表現を形式的を変更し、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「所定の範囲」及び上記表現を形式的に変更した「特定の範囲」は、ともに「遊技に使用されない未使用領域が含まれるよう構成」されることを限定する補正、(4)その他形式的な補正を含むものである。
そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正の補正事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書」という。)の段落【0276】、【0277】、【0483】、図67、図136の記載に基づくものであり、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
2-2 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かについて、以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、次のとおりのものであると認める(記号A~Oは、分説するため当審判合議体にて付した。)。
「【請求項1】A 遊技球が流下可能な遊技領域と、B 遊技球が入球可能であり、遊技球が入球することにより賞球が払い出される複数の入賞口と、C 情報を表示可能な情報表示部と、続きを表示(全20行)D RAMクリアスイッチとを備え、E RAMクリアスイッチが操作された状態で電源が投入された場合に、情報格納領域を初期化可能なRAMクリア手段と、F 前記複数の入賞口への遊技球の入球を検出し得る入球判定手段と、G 遊技領域から排出されるすべての遊技球を検出し得る排出数計測手段と、H 入球判定手段及び排出数計測手段による検出結果に基づき、前記複数の入賞口への遊技球の入球に基づく情報である入球状態情報を生成する入球状態情報生成手段とを有しており、I 前記生成した入球状態情報を情報表示部にて表示し得るよう構成されており、J 前記情報格納領域として、第1情報格納領域と、第1情報格納領域とは異なる領域である第2情報格納領域と、を有しており、K 前記第2情報格納領域には、少なくとも、入球状態情報が記憶され、L RAMクリアスイッチが操作された状態で電源が投入され、前記RAMクリア手段により前記情報格納領域の初期化が実行される場合において、電源投入時に前記情報格納領域のデータを確認し、L1 正常の場合には、前記入球状態情報を含まない所定の範囲を設定して初期化し、L2 異常の場合には、前記入球状態情報を含む特定の範囲を設定して初期化する一方、RAMクリアスイッチが操作されていない状態で電源が投入され、前記RAMクリア手段により前記情報格納領域の初期化が実行されない場合においても、電源投入時に前記情報格納領域のデータを確認し、異常の場合には、前記特定の範囲を設定して初期化するよう構成され、M 前記所定の範囲には、遊技に使用されない未使用領域が含まれるよう構成され、N 前記特定の範囲には、遊技に使用されない未使用領域が含まれるよう構成されているO ことを特徴とするぱちんこ遊技機。」
(2)引用発明
原査定の拒絶の理由に引用文献として引用された、本願の出願前に公知となった、(案)性能表示モニタの搭載要件(Ver.016),日本遊技機工業組合提供資料(「性能表示モニタ」に関する技術資料),2017年 3月23日(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア 記載事項
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(ア)1頁
「[図:0001380619000001.jpg]」
(イ)2頁(2.実装条件(ソフト)内)
「[図:0001380619000002.jpg]」
(ウ)3頁(2.実装条件(ソフト)内)
「[図:0001380619000003.jpg]」
(エ)5頁(2.実装条件(ソフト)内)
「[図:0001380619000004.jpg]」
(オ)5頁(2.実装条件(ソフト)内)
「[図:0001380619000005.jpg]」
イ 認定事項
(ア)引用文献1は、そのタイトルが「(案)性能表示モニタの搭載要件(Ver.016)」であり、上記ア(ア)の「(2)表示部は、遊技機裏面の見やすい場所に設置し、シールや構造物等で隠れないこと。」との記載から、引用文献1には「性能表示モニタ」を「遊技機裏面」に設置することが記載されているといえる。
(イ)上記ア(ア)には「(6)正確なアウト個数または発射球数を計測するために、主基板に接続されたスイッチ等を設けること。・・・」、上記ア(イ)には「(2)計測方法 ア.初回電源投入から『低確時短無時の払出個数(以下、「低確時短無払出個数」)』、『すべての状態のアウト個数(以下、「総アウト個数」)』および『低確時短無時のアウト個数(以下、低時短無アウト個数」)』を計測し、ベース値をリアルタイムに計算して比率セグに表示する。 イ.初回電源投入から総アウト個数が60,000個に達するまでは、識別セグを点滅させる。 ウ.総アウト個数が60,000個に達した時点で、識別セグが点灯となる。・・・」と記載されており、「アウト個数」、「発射球数」、「低確時短無時」、「ベース値」という文言が用いられていることから、引用文献1に記載の「性能表示モニタ」を設置する「遊技機」は、いわゆるパチンコ機であるといえ、ベース値を計算して表示する遊技機が、遊技球が流下可能な遊技領域、遊技球が入球可能で、遊技球が入球することにより賞球が払い出される複数の入賞口、複数の入賞口への遊技球の入賞を検出可能な入賞検出手段と、遊技領域から排出されるアウト球を検出し得るアウト球検出手段と、を備えることは、パチンコ機の分野において技術常識(必要であれば、特開2006-149680号公報の【0038】、【0090】、【0116】を参照)である。
(ウ)上記ア(ア)を参酌すると、上記ア(イ)には「数字の下に」「ドットポイントを設けた」「7セグLED等を使用して、4桁の数字を表示することが可能である」「表示器」の表示例として、「識別セグ」を「bL.」、「比率セグ」を「35」とするものが図示されており、その下部に、「bL.=初回電源投入(RWMオール初期化)からの低確時短無時の累計ベース」と記載され、上記ア(イ)には「ア.初回電源投入から『低確時短無時の払出個数(以下、「低確時短無払出個数」)』、『すべての状態のアウト個数(以下、「総アウト個数」)』および『低確時短無時のアウト個数(以下、低時短無アウト個数」)』を計測し、ベース値をリアルタイムに計算して比率セグに表示する。」と記載されていることから、引用文献1には、数字の下にドットポイントを設けた7セグLED等を使用して、数字の下にドットポイントを設けた4桁の数字を表示することが可能であって、初回電源投入(RWMオール初期化)からの低確時短無時の累計ベースを意味するbL.を表示する識別セグ及びベース値をリアルタイムに計算して表示する比率セグからなる表示器が記載されているといえる。
(エ)上記ア(ウ)には「(4)RWMクリア条件」として「RMWクリア時(RWM消去スイッチを押して電源投入)および電源再投入では、計測に必要なRWMは0クリアしないこと。(ただし、RWM異常時は除く。)」と記載されていることから、引用文献1には、RMWが異常ではないときには、RWM消去スイッチを押して電源投入したときおよび電源再投入で、RWMクリア時に計測に必要なRWMは0クリアせず、RMWが異常時には、RWM消去スイッチを押して電源投入したときおよび電源再投入で、計測に必要なRWMは0クリアすることが記載されているといえる。
そうすると、「異常ではないとき」は、「RWM消去スイッチを押して電源投入したときおよび電源再投入で」、計測に必要なRWMを0クリアせず、「異常時」には、「RWM消去スイッチを押して電源投入したときおよび電源再投入で」、それを0クリアすることから、「異常ではないとき」と「異常時」とで「0クリア」される領域が異なる(「異常ではないとき」に「0クリア」される領域を、以下「所定の領域」、「異常時」に「0クリア」される領域を「特定の領域」という。)ことが記載されているといえる。
(オ)上記ア(エ)には「(7)領域外のROM、RWMの配置について」として「ア.領域内と領域外の境界には16バイト以上の空き領域(未使用領域)を設けること。(16バイト=ダンプリストの1行分)」と記載されており、RWMの配置例の図示内容とから、引用文献1には、RWMは領域内RWMと領域外RWMを有し、領域内と領域外の境界には未使用領域を有することが記載されているといえる。
(カ)上記ア(オ)には「(9)領域外プログラムのモジュール化について」として「領域外プログラムは機能毎にモジュール化すること。」、「(例)・・・試験信号出力処理、性能表示モニタ処理を分ける。」と記載されていることから、領域外RMWには性能表示モニタ処理に関するプログラム、データが記憶されていることが明らかであり、上記ア(イ)には「ア.初回電源投入から『低確時短無時の払出個数(以下、「低確時短無払出個数」)』、『すべての状態のアウト個数(以下、「総アウト個数」)』および『低確時短無時のアウト個数(以下、低時短無アウト個数」)』を計測し、ベース値をリアルタイムに計算して比率セグに表示する。」と記載されていることから、引用文献1には、低確時短無時の払出個数、すべての状態のアウト個数、低確時短無時のアウト個数とからベース値をリアルタイムに計算して比率セグに表示することが記載されているといえる。
ウ 引用発明
上記アの記載事項及び上記イの認定事項から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める((記号a~o等は、本願発明の記号A~Oに概ね対応させて付した。)。
「a 遊技球が流下可能な遊技領域と(認定事項(イ))、b、f、g 遊技球が入球可能で、遊技球が入球することにより賞球が払い出される複数の入賞口と、複数の入賞口への遊技球の入賞を検出可能な入賞検出手段、遊技領域から排出されるアウト球を検出し得るアウト球検出手段と、を備え(認定事項(イ))、c 遊技機裏面に設置する性能表示モニタは、数字の下にドットポイントを設けた7セグLED等を使用して、数字の下にドットポイントを設けた4桁の数字を表示することが可能であって、初回電源投入(RWMオール初期化)からの低確時短無時の累計ベースを意味するbL.を表示する識別セグ及びベース値をリアルタイムに計算して表示する比率セグからなる表示器(認定事項(ア)、認定事項(ウ))と、d RWM消去スイッチ(記載事項(ウ)(3頁の(4)))と、を備え、e、l、l1、l2 RMWが異常ではないときには、RWM消去スイッチを押して電源投入したときおよび電源再投入で、RWMクリア時に計測に必要なRWMは0クリアせず、RMWが異常時には、RWM消去スイッチを押して電源投入したときおよび電源再投入で、計測に必要なRWMは0クリアし、異常ではないときと異常時とで0クリアされる領域が異なり(「異常ではないとき」に「0クリア」される領域を、以下「所定の領域」、「異常時」に「0クリア」される領域を「特定の領域」という。)(認定事項(エ))、h、i 低確時短無時の払出個数、すべての状態のアウト個数、低確時短無時のアウト個数とからベース値をリアルタイムに計算して比率セグに表示し(認定事項(カ))、e、j、m、n RWMは領域内RWMと領域外RWMを有し、領域内と領域外の境界には未使用領域を有し(認定事項(オ))、k 領域外RWMには性能表示モニタ処理に関するプログラム、データが記憶されている(認定事項(カ))o 遊技機(記載事項(ア)(1頁(2)))。」
(3)引用文献2記載の技術事項
原査定の拒絶の理由に引用文献として引用された、本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2017-56140号公報(平成29年3月23日公開)(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審判合議体にて付した。以下同じ。)。
ア 記載事項
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(ア)「【0011】(本実施形態)ここで、各構成要素について説明する前に、本実施形態に係る回胴式遊技機Pの特徴(概略)を説明する。以下、図面を参照しながら、各要素について詳述する。」
(イ)「【0109】・・・尚、不図示であるが、電源断及び電源復帰が正常である場合における設定変更処理に伴うRAMクリア実行後には、RAMクリア前のRT番号に復帰(RT番号を記憶するアドレスを、RAMクリア時にクリアするアドレス範囲に含めない)しても良いし、「RT0」にしても良い。尚、特定のRT状態(例えば「RT5」)である状況下において電源断が行なわれ、電源断及び電源復帰が正常である場合における設定変更処理に伴うRAMクリア実行後には、「RT0」にしても良い。尚、「RT3」が最も再遊技役に当選する確率が高いRT状態となっている。・・・」
イ 認定事項
上記アの【0109】には、RAMクリアの実行時は、RAMクリア後に復帰するRAMクリア前のRT番号を記憶するアドレスを、RAMクリア時にクリアするアドレス範囲に含めないことが記載されていることから、クリアするアドレス範囲をRAMクリア前のRT番号を記憶するアドレスを含めないで設定していることは明らかである。
よって、引用文献2には、RAMクリア実行時は、クリアするアドレス範囲を設定してRAMクリアを実行することが記載されているといえる。
ウ 引用文献2記載の技術事項
上記アの記載事項及びイの認定事項から、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2記載の技術事項)が記載されているものと認める。
「RAMクリア実行時は、クリアするアドレス範囲を設定してRAMクリアを実行する回胴式遊技機P。」
(4)周知技術
ア 周知例1
新たに提示する本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2017-29593号公報(平成29年2月9日公開)(以下「周知例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【実施例】【0019】本発明が適用されたスロットマシンの実施例について図面を用いて説明すると、本実施例のスロットマシン1は、図1に示すように、前面が開口する筐体1aと、この筐体1aの側端に回動自在に枢支された前面扉1bと、から構成されている。」
(イ)「【0242】次に、メイン制御部41が実行する非遊技領域初期化処理について説明する。尚、本実施例において非遊技領域初期化処理は、非遊技プログラムに含まれる。【0243】図14に示すように、メイン制御部41は、初期化対象RAMの先頭アドレスとして未使用領域4の先頭アドレスを設定する(Sg1)。そして、RAM41cの使用可能領域の最終アドレス値から初期化対象RAMの先頭アドレス値(未使用領域4の先頭アドレス値)を減算して、初期化対象RAMの容量を算出し(Sg2)、算出した初期化対象RAMの容量をレジスタに設定する(Sg3)。また、初期化対象RAMの先頭アドレス値(未使用領域4の先頭アドレス値)を指定アドレスとして設定して(Sg4)、指定アドレスに記憶されている1バイトのデータを0で上書きしてクリアする(Sg5)。その後、当該1バイトのデータの論理和を算出して、算出結果が0か否かを判定し(Sf6)、算出結果が0でない場合には、Sg5のステップに戻り、再度、1バイトのデータを0で上書きしてクリアする。そして、Sg6のステップにおいて計算結果が0であると判定された場合は、指定アドレスを、当該指定アドレスとして現在設定されているアドレスの次のアドレスに更新し(Sg7)、レジスタを1減算して(Sg8)、レジスタが0か否かを判定する(Sg9)。」
(ウ)「【0245】このように、本実施例の非遊技領域初期化処理では、初期化対象RAMの容量分のRAM領域を初期化対象RAMの先頭アドレス(未使用領域4の先頭アドレス)から順次クリアすることで、初期化対象RAMの先頭アドレスから終了アドレスまでの領域、すなわち、未使用領域4及び非遊技RAM領域を初期化する。」
(エ)「【0247】また、本実施例の非遊技領域初期化処理では、初期化対象RAMの先頭アドレスとして未使用領域4の先頭アドレスを設定することで、未使用領域4と非遊技RAM領域の全ての領域を初期化する構成であるが、非遊技領域初期化処理は、非遊技RAM領域の少なくとも一部の領域が初期化されるものであれば良く、非遊技RAM領域の一部の領域を初期化するものでも、非遊技RAM領域の一部の領域及び未使用領域4を初期化するものでも良い。」
イ 上記アの記載事項から周知例1には次の事項が記載されている(以下「周知例1の記載事項」という。)
「メイン制御部41が実行する非遊技領域初期化処理は、非遊技RAM領域の少なくとも一部の領域が初期化されるものであれば良く、非遊技RAM領域の一部の領域を初期化するものでも、非遊技RAM領域の一部の領域及び未使用領域4を初期化するものでも良いスロットマシン1。」
ウ 周知例2
新たに提示する本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2017-18286号公報(平成29年1月26日公開)(以下「周知例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】本発明は、回胴式遊技機(「パチスロ機」、「スロットマシン」とも称される。)等の遊技機に関するものである。」
(イ)「【0868】図110は、RAMのデータブロックを説明するための図である。図110には、RAM1114の内部的なイメージが示されており、上端をメモリアドレスの始端とし、下端をメモリアドレスの終端としている。例えば、未使用領域1114zは、データの読み書きが行われていないデータ領域(換言すれば、使用済領域以外のデータ領域)であって、メモリアドレスの終端側にまとまっている。図110に示すように、RAM1114では、格納するデータの種類に応じて複数の「エリア」が予め定められている。また、RAMクリアの対象範囲として、「クリア範囲0」~「クリア範囲4」の5通りが定められている。なお、それぞれのクリア範囲には、未使用領域1114zが含まれるようにしてもよい。」
エ 上記アの記載事項から周知例2には次の事項が記載されている(以下「周知例2の記載事項」という。)
「RAMクリアの対象範囲として、「クリア範囲0」~「クリア範囲4」の5通りが定められ、それぞれのクリア範囲には、未使用領域1114zが含まれるようにしてもよい遊技機。」
オ 周知技術
上記イ及びエの周知例1及び2の記載事項を総合すると、
「遊技機において、RAMクリアの対象範囲として、クリアをする範囲に未使用領域を含めても含めなくてよいこと。」は遊技機の技術分野において、本願出願前に周知(以下「周知技術」という。)であると認められる。
(5)対比
本件補正発明と引用発明とを、分説に従い対比する。
ア 構成Aについて
引用発明の構成aが本件補正発明の構成Aに相当することは明らかである。
イ 構成Bについて
引用発明の構成b、f、gが本件補正発明の構成Bに相当する構成を有することは明らかである。
ウ 構成Cについて
引用発明の構成cの「初回電源投入(RWMオール初期化)からの低確時短無時の累計ベースを意味するbL.」及び「ベース値」、「識別セグ」及び「比率セグからなる表示器」は、それぞれ本件補正発明の「情報」、「情報表示部」に相当する。
よって、引用発明の構成cは、本件補正発明の構成Cに相当する構成を有する。
エ 構成Dについて
引用発明の構成dの「RWM消去スイッチ」は、本件補正発明の「RAMクリアスイッチ」に相当する。
よって、引用発明の構成dは、本件補正発明の構成Dに相当する構成を有する。
オ 構成Eについて
引用発明の構成e、l、l1、l2の「RWM消去スイッチを押して電源投入したとき」、「RWMクリア」は、それぞれ本件補正発明の「RAMクリアスイッチが操作された状態で電源が投入された場合」、「初期化」に相当する。
また、引用発明の構成e、j、m、nでは「RWMは領域内RWMと領域外RWMを有し」ていることから、「RWMクリア時」には、「領域内RWMと領域外RWM」を異常ではないとき、異常時のいずれかに応じてクリアしていることが明らかであり、引用発明の構成e、j、m、nの「領域内RWMと領域外RWM」は、本件補正発明の「情報格納領域」に相当し、引用発明では、「RWM消去スイッチを押して電源投入したときおよび電源再投入で、計測に必要なRWMは0クリアせず、RMWが異常時には、RWM消去スイッチを押して電源投入したときおよび電源再投入で、計測に必要なRWMは0クリア」しており、RWMクリアを実行する手段を備えていることは明らかであるといえることから、引用発明は本件補正発明の「RAMクリア手段」に相当する構成を有しているといえる。
よって、引用発明の構成e、l、l1、l2及び構成e、j、m、nは、本件補正発明の構成Eに相当する構成を有する。
カ 構成Fについて
引用発明の構成b、f、gの「入賞検出手段」は、本件補正発明の「入球判定手段」に相当する。
よって、引用発明の構成b、f、gは、本件補正発明の構成Fに相当する構成を有する。
キ 構成Gについて
引用発明の構成b、f、gの「遊技領域から排出されるアウト球」、「アウト球検出手段」は、それぞれ本件補正発明の「遊技領域から排出されるすべての遊技球」、「排出数計測手段」に相当する。
よって、引用発明の構成b、f、gは、本件補正発明の構成Gに相当する構成を有する。
ク 構成Hについて
引用発明の構成h、iでは「低確時短無時の払出個数、すべての状態のアウト個数、低確時短無時のアウト個数とからベース値をリアルタイムに計算して比率セグに表示し」ており、ベース値とは、通常時の出玉率(払出個数/アウト個数)を意味すること、払出個数は入賞口への遊技球の入賞に基づく情報であることは技術常識であり、上記カ及びキより、引用発明の構成b、f、gの「入賞検出手段」、構成b、f、gの「アウト球検出手段」は、それぞれ本件補正発明の「入球判定手段」、「排出数計測手段」に相当することから、引用発明の「ベース値」は、本件補正発明の「前記複数の入賞口への遊技球の入球に基づく情報である入球状態情報」に相当するといえる。
また、引用発明では「ベース値をリアルタイムに計算して比率セグに表示し」ていることから、ベース値を生成していることは明らかであり、引用発明は本件補正発明の「入球状態情報生成手段」に相当する構成を有しているといえる。
よって、引用発明の構成h、iは、本件補正発明の構成Hに相当する構成を有する。
ケ 構成Iについて
引用発明の構成h、iでは「低確時短無時の払出個数、すべての状態のアウト個数、低確時短無時のアウト個数とからベース値をリアルタイムに計算して比率セグに表示し」ており、上記ウで説示したとおり、引用発明の「識別セグ及び比率セグからなる表示器」は、本件補正発明の「情報表示部」に相当し、上記クで説示したとおり、引用発明の「ベース値」は、本件補正発明の「前記複数の入賞口への遊技球の入球に基づく情報である入球状態情報」に相当するから、引用発明は本件補正発明の構成Iに相当する構成を有する。
コ 構成Jについて
引用発明の構成e、j、m、nの「領域内RWM」、「領域外RWM」は、それぞれ本件補正発明の「第1情報格納領域」、「第1情報格納領域とは異なる領域である第2情報格納領域」に相当する。
よって、引用発明の構成e、j、m、nは、本件補正発明の構成Jに相当する構成を有する。
サ 構成Kについて
引用発明の構成kの「性能表示モニタ処理に関する」「データ」は、本件補正発明の構成Kの「入球状態情報」に相当する。
よって、引用発明の構成kは、本件補正発明の構成Kに相当する構成を有する。
シ 構成L、L1、L2について
引用発明の構成e、l、l1、l2では、「RMWが異常ではないときには、RWM消去スイッチを押して電源投入したときおよび電源再投入で、RWMクリア時に計測に必要なRWMは0クリアせず、RMWが異常時には、RWM消去スイッチを押して電源投入したときおよび電源再投入で、計測に必要なRWMは0クリアし」ており、引用発明では、「RWM消去スイッチを押して電源投入したとき」に「RMWが異常ではないときには」「計測に必要なRWMは0クリアせず」、「RMWが異常時には、」「計測に必要なRWMは0クリアし」ていることから、「RWM消去スイッチを押して電源投入したとき」に、「RMW」が「異常ではない」か「異常」であるかを確認していることは明らかである。そして、上記エで説示したとおり、引用発明の「RWM消去スイッチ」は、本件補正発明の「RAMクリアスイッチ」に相当し、上記オで説示したとおり、引用発明の「領域内RWMと領域外RWM」、「RWMクリア」は、それぞれ本件補正発明の「情報格納領域」、「初期化」に相当するから、引用発明の構成e、l、l1、l2は、本件補正発明の構成Lに相当する構成を有する。
また、引用発明では、「異常ではないとき」は、「RWMクリア時に計測に必要なRWMは0クリア」しておらず、上記(2)ア(イ)の「(2)計測方法」には、「ベース値」を計算するための『低確時短無時の払出個数(以下、「低確時短無払出個数」)』、『すべての状態のアウト個数(以下、「総アウト個数」)』および『低確時短無時のアウト個数(以下、低時短無アウト個数」)』を計測し、ベース値を計算し、RWMのいずれかが上限値になった場合は、すべての記憶するRWMは計測を停止することが記載されていることから、「計測に必要なRWM」とは、RWMにおけるベース値を計算するための「低確時短無時の払出個数(以下、「低確時短無払出個数」)」、「すべての状態のアウト個数(以下、「総アウト個数」)」および「低確時短無時のアウト個数(以下、低時短無アウト個数」)」を含めたベース値に関する情報であることは明らかであり、本件補正発明の「入球状態情報」に相当する情報が含まれているといえる。
よって、引用発明の「所定の領域」、「特定の領域」は、本件補正発明の「所定の範囲」、「特定の範囲」に相当する。
そうすると、引用発明では、0クリアするにあたって、0クリアの対象となる領域を設定して0クリアしているのか否かは不明ではあるものの、引用発明と本件補正発明は「正常の場合には、前記入球状態情報を含まない所定の範囲を初期化し、異常の場合には、前記入球状態情報を含む特定の範囲を初期化する一方、RAMクリアスイッチが操作されていない状態で電源が投入され、前記RAMクリア手段により前記情報格納領域の初期化が実行されない場合においても、電源投入時に前記情報格納領域のデータを確認し、異常の場合には、前記特定の範囲を初期化するよう構成され」ている点で共通する。
ス 構成Oについて
引用発明の構成oの「遊技機」は、本件補正発明の構成Oの「ぱちんこ遊技機」に相当する。
よって、引用発明の構成oは、本件補正発明の構成Oに相当する構成を有する。
上記ア~スによれば、本件補正発明と引用発明は、
<一致点>
「A 遊技球が流下可能な遊技領域と、B 遊技球が入球可能であり、遊技球が入球することにより賞球が払い出される複数の入賞口と、C 情報を表示可能な情報表示部と、D RAMクリアスイッチと続きを表示(全17行)を備え、E RAMクリアスイッチが操作された状態で電源が投入された場合に、情報格納領域を初期化可能なRAMクリア手段と、F 前記複数の入賞口への遊技球の入球を検出し得る入球判定手段と、G 遊技領域から排出されるすべての遊技球を検出し得る排出数計測手段と、H 入球判定手段及び排出数計測手段による検出結果に基づき、前記複数の入賞口への遊技球の入球に基づく情報である入球状態情報を生成する入球状態情報生成手段とを有しており、I 前記生成した入球状態情報を情報表示部にて表示し得るよう構成されており、J 前記情報格納領域として、第1情報格納領域と、第1情報格納領域とは異なる領域である第2情報格納領域と、を有しており、K 前記第2情報格納領域には、少なくとも、入球状態情報が記憶され、L RAMクリアスイッチが操作された状態で電源が投入され、前記RAMクリア手段により前記情報格納領域の初期化が実行される場合において、電源投入時に前記情報格納領域のデータを確認し、L1’正常の場合には、前記入球状態情報を含まない所定の範囲を初期化し、L2’異常の場合には、前記入球状態情報を含む特定の範囲を初期化する一方、RAMクリアスイッチが操作されていない状態で電源が投入され、前記RAMクリア手段により前記情報格納領域の初期化が実行されない場合においても、電源投入時に前記情報格納領域のデータを確認し、異常の場合には、前記特定の範囲を初期化するよう構成されるO ぱちんこ遊技機。」 の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>(構成L1’及びL2’)
「情報格納領域の初期化」を実行する場合において、
本件補正発明では、「範囲を設定」して初期化するのに対して、
引用発明では、「範囲を設定」して初期化しているか否かが不明である点。
<相違点2>(構成M及び構成N)
「正常の場合」に「初期化」する「所定の範囲」及び「異常の場合」に「初期化」する「特定の範囲」について、
本件補正発明では、遊技に使用されない未使用領域が含まれるよう構成されているのに対して、
引用発明では、RWMに遊技に使用されない未使用領域を有しているものの、「所定の領域」及び「特定の領域」に遊技に使用されない未使用領域が含まれるよう構成されているか否かが不明である点。
(6)判断
ア 相違点1について
引用文献2記載の技術事項は、上記(3)ウのとおりである。
ここで、引用文献2記載の技術事項の「クリアするアドレス範囲を設定」すること、「RAMクリアを実行する」ことは、それぞれ本件補正発明の「範囲を設定」すること、「初期化」することに相当する。
そして、引用発明及び引用文献2記載の技術事項は、ともに遊技機のRAMクリア実行時に行う処理であるという点で作用、機能が共通することから、引用発明のRAMクリア実行時の処理として、引用文献2記載の技術事項を適用して、RWMを0クリアする際に、クリアするアドレス範囲を設定して実行するようにして、本件補正発明の相違点1に係る構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
イ 相違点2について
上記(4)オのとおり、「遊技機において、RAMクリアの対象範囲として、クリアをする範囲に未使用領域を含めても含めなくてよいこと。」は遊技機の技術分野において、本願出願前に周知技術である。
そして、引用発明及び周知技術は、ともに遊技機のRAMクリア実行時に行う処理であるという点で作用、機能が共通することから、引用発明を初期化する際の「所定の領域」及び「特定の領域」について、上記周知技術を適用する際に未使用領域を含める方を選択し、遊技に使用されない未使用領域を含めるように構成して、本件補正発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本件補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、引用文献2記載の技術事項の奏する効果及び周知技術の奏する効果から、予測することができた程度のものである。
(7)請求人の主張について
ア 請求人の主張
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請求人は、令和2年12月8日付けの審判請求書において、次の点について主張をする。
「(4-3)引用文献発明に基づく想到困難性(4-3-1)<相違点1>について引用文献1においては、「補正却下の決定」にも記載のように、<相違点1>の構成Bに係る「所定の範囲を設定」している点については不明である。これについては、<相違点1>の構成Cについても同様のことがいえる。これに対し、新たに引用された引用文献2には、「補正却下の決定」における審査官殿のご指摘のように、『クリアスイッチを操作することてRAMの初期化制御を行い得る遊技機であって、該RAMの初期化制御にあっては、予め設定されたクリアするRAMの範囲にしたがって行われる技術』が開示されている。しかしながら、引用文献2においては、段落0076に『ステップS103が肯定判断されるとステップS104に進む。ステップS104ではDIPスイッチ回路678の設定内容によってRAMをクリアするモードを判定する。第5のスイッチがオンの場合には賞球個数の格納領域のみをクリアするモード(第1のRAMクリアモード)と判定し、第1または第3のスイッチがオンの場合にはRAMの全領域をクリアするモード(第2のRAMクリアモード)と判定する。』と記載されているように、クリア範囲(初期化範囲)については、DIPスイッチによる人為的な設定をあらかじめしておく点について記載されているのみであり、<相違点1>に係る構成B及びCについては、記載も示唆もない。また、引用文献2においては、概して、「RAMクリアスイッチの操作がある場合にも無い場合にも(RAMクリアスイッチの操作の有無にかかわらず)、入球状態情報を含む特定の範囲を設定して初期化する」という旨の<相違点1>に係る構成C及びEについても、一切の記載も示唆もない。さらに、引用文献2においては、初期化範囲については、段落0083に『賞球個数の格納領域のみをクリアするモード(第1のRAMクリアモード)』、『遊技状態の格納領域のみをクリアするモード(第2のRAMクリアモード)と』、『RAMの全領域をクリアするモード(第3のRAMクリアモード)』という旨についての記載はあるものの、<相違点1>に係る構成B(特に、入球状態情報を除く初期化範囲である所定の範囲)、又は<相違点1>に係る構成C(特に、入球状態情報を含む初期化範囲である特定の範囲」については、一切の記載も示唆もない。
すなわち、引用文献2においては、上述のように、『クリアスイッチを操作することてRAMの初期化制御を行い得る遊技機であって、該RAMの初期化制御にあっては、予め設定されたクリアするRAMの範囲にしたがって行われる技術』という漠然としたことしか記載されておらず、この引用文献2を引用文献1に適用したとしても、以下の補完事項1乃至3が依然として足りず、本願発明に想到しえない。また、下記の補完事項1乃至3の記載も示唆もない引用文献2からは、下記の補完事項1乃至3に想到するには、相当の困難性を伴うし、下記の補完事項1乃至3を有する<相違点1>に起因した上記効果1を奏することもできない。
補完事項1:「RAMクリア手段による初期化時において、正常/異常を判定し、正常なのか異常なのかによって初期化範囲を所定の範囲又は特定の範囲に設定して初期化するという制御を行う」という旨の<相違点1>に係る構成B及びC補完事項2:「RAMクリアスイッチの操作がある場合にも無い場合にも(RAMクリアスイッチの操作の有無にかかわらず)、入球状態情報を含む特定の範囲を設定して初期化する」という旨の<相違点1>に係る構成C及びE補完事項3:<相違点1>に係る構成B及びCに係る「入球状態情報を除く初期化範囲である所定の範囲、又は入球状態情報を含む初期化範囲である特定の範囲」
(4-3-2)<相違点2>について
引用文献1及び2には<相違点2>について記載も示唆もないし、引用文献1及び2には<相違点2>に想到するための動機づけとなる記載すら見当たらない。
また、上述のように、<相違点2>は、引用文献1及び2からは想到するに困難性を伴う<相違点1>を前提として、さらに、構成F及びGにまで掘り下げたものであるため、引用文献1及び2からは、<相違点2>に想到するには、より一層の相当の困難性を伴うし、引用文献1及び2では<相違点2>に起因した上記効果2、3を奏することもできない。
特に、<相違点2>の構成Gに係る「未使用領域をあえて初期化する」という概念については、そのような概念やこの概念に想到するに足りる動機づけのない引用文献1及び2からは、この概念を有する構成Gに想到することは到底できず、この構成Gに起因した効果も、引用文献1及び2からは到底奏することができないものと思料する。
(4-4)小括
以上のように、引用文献1及び2に基づき、<相違点1>及び<相違点2>を有する本願発明が想到容易であった旨の論理付けはできないため、本願発明は、引用文献1及び2から想到容易であるとはいえない。」
イ 当審判合議体の判断
請求人の上記主張について検討する。
<相違点1>について
上記(5)対比において説示したとおり、本件補正発明と引用発明との相違点1は、「情報格納領域の初期化」を実行する場合において、本件補正発明では、「範囲を設定」して初期化するのに対して、引用発明では、「範囲を設定」して初期化しているか否かが不明である点であり、その相違点については、(6)アにおいて説示したとおり、引用発明に引用文献2記載の技術事項を適用することで当業者が容易に発明をできたものである。
また、請求人が主張する「初期化範囲として入球状態情報を含む特定の範囲又は含まない所定の範囲を設定しているため、1回の初期化処理のみで適切に初期化処理を行うことができる(構成A乃至D)。また、電源投入時のRAMクリアスイッチの操作の有無にかかわらず、異常の場合には、入球状態情報を含む特定の範囲を設定して初期化するため(構成C及びE)、情報格納領域の情報の整合性を保つことができる。」という効果1((4-2)本願発明の特徴の項目)についても、範囲を設定しているか否かが不明な引用発明でも奏する効果であり、「範囲を設定」することにより奏するものとはいえないことから、上記請求人の主張は採用することができない。
<相違点2>について
上記(5)対比において説示したとおり、本件補正発明と引用発明との相違点2は、「正常の場合」に「初期化」する「所定の範囲」及び「異常の場合」に「初期化」する「特定の範囲」について、本件補正発明では、遊技に使用されない未使用領域が含まれるよう構成されているのに対して、引用発明では、RWMに遊技に使用されない未使用領域を有しているものの、「所定の範囲」及び「特定の範囲」に遊技に使用されない未使用領域が含まれるよう構成されているか否かが不明である点であり、その相違点については、(6)イにおいて説示したとおり、引用発明に周知技術を適用することで当業者が容易に発明をできたものである。
また、請求人は、「<相違点2>の構成Gに係る「未使用領域をあえて初期化する」という概念については・・・」と主張をしているが、「遊技機において、RAMクリアの対象範囲として、クリアをする範囲に未使用領域を含めても含めなくてよいこと。」は、上記(4)ウで説示したとおり、遊技機の技術分野において周知技術であり、そのいずれを選択することも当業者にとって格別の困難性はない。
さらに、請求人は、「<相違点2>は、引用文献1及び2からは想到するに困難性を伴う<相違点1>を前提として、さらに、構成F及びGにまで掘り下げたものである・・・」と主張しているが、相違点1及び2を併せみても、公知技術、周知技術の寄せ集めに過ぎず、上記請求人の主張は採用できない。
よって、上記請求人の主張を採用することができない。
(8)まとめ
以上のように、本件補正発明は、当業者が、引用発明、引用文献2記載の技術事項及び周知技術から容易に発明できたものである。
したがって、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和2年3月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】遊技球が流下可能な遊技領域と、遊技球が入球可能であり、遊技球が入球することにより賞球が払い出される複数の入賞口と、情報を表示可能な情報表示部と続きを表示(全14行)を備え、前記複数の入賞口への遊技球の入球を検出し得る入球判定手段と、遊技領域から排出されるすべての遊技球を検出し得る排出数計測手段と、入球判定手段及び排出数計測手段による検出結果に基づき、前記複数の入賞口への遊技球の入球に基づく情報である入球状態情報を生成する入球状態情報生成手段とを有しており、前記生成した入球状態情報を情報表示部にて表示し得るよう構成されており、プログラムによる処理結果データを記憶する情報格納領域として、第1情報格納領域と、第1情報格納領域とは異なる領域である第2情報格納領域と、を有しており、前記第2情報格納領域には、少なくとも、入球状態情報が記憶され、情報格納領域の初期化を実行する場合において、遊技機の電源投入時に情報格納領域のデータを確認し、正常の場合には、前記第2情報格納領域に記憶された入球状態情報を除く所定の範囲を設定して初期化し、異常の場合には、前記第2情報格納領域に記憶された入球状態情報を含む所定の範囲を設定して初期化する一方、情報格納領域の初期化を実行しない場合においても、遊技機の電源投入時に情報格納領域のデータを確認し、異常の場合には、前記第2情報格納領域に記憶された入球状態情報を含む所定の範囲を設定して初期化するよう構成されていることを特徴とするぱちんこ遊技機。」
2 拒絶の理由(令和2年4月28日付け)
原査定の拒絶の理由は、この出願の令和2年3月18日提出の手続補正書により補正された請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものを含むものである。
3 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1である(案)性能表示モニタの搭載要件(Ver.016),日本遊技機工業組合提供資料(「性能表示モニタ」に関する技術資料),2017年 3月23日,特に第4、5、7頁の記載事項及び引用発明の認定については、前記「第2 2 2-2(2)引用発明」に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明(上記第2〔理由〕1)は、本件補正発明(上記第2〔理由〕2の2-2(1))から、上記「第2〔理由〕2の2-1」において検討したとおり、本件補正発明において、「情報格納領域の初期化を実行する」ための手段として「RAMクリアスイッチ」を備えることを省き、さらに、初期化を実行するものが「RAMクリアスイッチが操作された状態で電源が投入された場合に、情報格納領域を初期化可能なRAMクリア手段」であることを省き、「異常の場合」の「情報格納領域の初期化を実行しない場合」について、「情報格納領域の初期化が実行されない場合においても、電源投入時に前記情報格納領域のデータを確認」するのは「RAMクリアスイッチが操作されていない状態で電源が投入され、前記RAMクリア手段」であることを省き、重ねて特定されることにより冗長となっていたため削除した「第2情報格納領域」が特定され、「異常の場合」に初期化する「前記入球状態情報を含まない所定の範囲」を、「正常の場合」に初期化する「前記入球状態情報を含まない所定の範囲」と区別するため「特定の範囲」と表現の形式を変更したものを「所定の範囲」に表現の形式を変更した上で、それが「遊技に使用されない未使用領域が含まれるよう構成」されることを省き、「所定の範囲」が「遊技に使用されない未使用領域が含まれるよう構成」されることを省き、その他形式的な補正を元に戻すことを含むものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、上記「第2〔理由〕2の2-2(5)」において検討した、上記相違点1のみで相違するから、本願発明も上記第2〔理由〕2の2-2(6)で示した理由と同様の理由により、当業者が、引用発明及び引用文献2記載の技術事項に基いて、容易に発明をすることができたものである。
5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-016855