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特許拒絶査定不服審判

2020-015793

グリセリン配合によるミノキシジル含有育毛剤の連用塗布に伴う炎症及び刺激の低減方法並びに炎症抑制のための育毛外用剤

審判番号
2020-015793
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-032317外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年11月16日
審決日
2022年05月24日
公報発行日
2022年08月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A61K) / P18 .14 -WZ (A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020- 32317「グリセリン配合によるミノキシジル含有育毛剤の連用塗布に伴う炎症及び刺激の低減方法並びに炎症抑制のための育毛外用剤」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 9月13日出願公開、特開2021-134178〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 22項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、令和2年2月27日の特許出願であって、出願後の主な手続の経緯は以下のとおりである。

令和 2年 4月 6日付け:拒絶理由通知
令和 2年 7月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 8月 6日付け:拒絶査定
令和 2年11月16日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年12月24日 :手続補正書(方式)の提出
令和 3年 2月18日付け:前置報告
令和 3年12月 9日付け:拒絶理由通知(当審)
令和 4年 2月 8日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1、2に係る発明は、令和4年2月8日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「ミノキシジル、エタノール、及び水に加えて、グリセリン及び1,3-ブチレングリコールをさらに配合させることを特徴とし、前記1,3-ブチレングリコールの含有量に対する前記グリセリンの含有量が質量比で1/25以上1未満であり、炎症抑制のメカニズムが育毛外用剤の適用部である頭皮細胞中におけるサイトカイン濃度の低下を含み、かつ、前記サイトカインが、TNF-α、IL-1β、及びIL-6の3種を含む、頭皮への継続的適用に伴う炎症を抑制するための育毛外用剤。」

第3 当審の拒絶理由

令和3年12月9日付けで当審が通知した拒絶理由のうち、請求項3に係る発明(本願発明に相当する。)に対する、引用文献12を主引用文献とする理由2(進歩性)は、次のとおりである。

令和 2年11月16日提出の手続補正書に記載された請求項3に係る発明は、本願の出願前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献12に記載された発明及び引用文献12、13に記載された事項並びに技術常識に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等>

引用文献12.国際公開第01/78662号

引用文献13.特開2014-162737号公報

引用文献14.特開2005-263645号公報

引用文献15.特開2009-203167号公報

引用文献16.“接触皮膚炎(かぶれ)”、薬局新聞、[online]、2017年7月、[2021年11月25日検索]、<URL:https://www.pharmarise.com/paper/list/201707.pdf>

引用文献17.男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版、日本皮膚科学会円形脱毛症ガイドライン作成委員会、日本皮膚科学会雑誌、2017年、127巻13号、p.2763-2777

引用文献19.篠力ら、皮膚、第23巻第4号、昭和56年8月、496-505頁

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献12の記載及び引用発明12

1-1 引用文献12の記載

引用文献12には、以下の記載がある。

12ア

「本発明は、ミノキシジルを有効成分とする持続性育毛組成物に関し、更に詳細には、ミノキシジルが頭皮の真皮内に長時間維持されることにより、その効果が長く維持される持続性育毛組成物に関する。」(1頁6~8行)

12イ

「かくして得られる本発明の持続性育毛組成物は、ローション剤、エアゾール剤、トニック剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤などの適当な外用製剤とし、使用することができる。」(5頁4~6行)

12ウ

「実施例2
実施例1と同様にして、表1から表9に示す組成で、製剤2から38のローション剤(本発明品)を調製した。・・・これらの本発明品及び比較品のローション剤について、下記試験方法でミノキシジル血中濃度を測定した結果、本発明品の方がミノキシジルの移行がゆっくりであること、および真皮内に長く維持されることがわかった。」(5頁18~24行)

12エ

「
[図:0001386617000001.jpg]
」(7頁・表4)

1-2 引用発明12

引用文献12の記載(摘記12エの製剤15)によれば、引用文献12には、次の発明が記載されていると認められる。

「ミノキシジル 5g
1,3-ブチレングリコール 13g
グリセリン 7g
エタノール 60.05g
乳酸 適量
精製水(全量) 100mlからなる、ローション剤。」(以下「引用発明12」という。)

2 引用文献13の記載

引用文献13には、以下の記載がある(下線は合議体による。)。

13ア

「【0015】
<ジアミノピリミジン誘導体>
ジアミノピリミジン誘導体は、ジアミノピリミジン骨格を有する化合物であれば特に制限はなく、・・・なかでも、2,4-ジアミノ-6-ピペリジノピリミジン-3-オキシド(ミノキシジル)、2,4-ジアミノ-6-ピロリジノピリミジン-3-オキシドであることが育毛活性の点で好ましく、ミノキシジルであることが特に好ましい。」(【0015】)

13イ

「【0030】
<多価アルコール>
ジアミノピリジン誘導体含有組成物は、ジアミノピリジン誘導体の溶解性の向上、防腐性、皮膚等へのジアミン誘導体含有組成物を適用した場合の保湿性の観点から、更に多価アルコールを含有することが好ましい。多価アルコールは、1種単独で、又は複数種の混合物の形態で用いることができる。
・・・
【0032】
ジアミノピリミジン誘導体含有組成物は、多価アルコールとして、ジアミノピリミジン誘導体の溶解性を向上する点、皮膚等へジアミノピリミジン誘導体含有組成物を適用した場合の皮膚刺激性が低い点、及び保湿性が高い点から、ブチレングリコール及びグリセリンから選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。」(【0032】)

3 引用文献14の記載

引用文献14には、以下の記載がある(下線は合議体による。)。

14ア

「【0002】
紫外線照射、乾燥、化学薬剤暴露をはじめとする外部刺激は皮膚にさまざまなダメージを与える。特に紫外線照射による炎症を伴って肌が赤くなる状態(サンバーン)は、痛みやほてりを生じるだけでなく、重度の場合には、やけどと同じような火ぶくれを起こすこともある。
【0003】
紫外線をはじめとする様々な外部刺激による炎症の原因の一つに、活性酸素やフリーラジカルの産生が挙げられる。活性酸素やフリーラジカルが皮膚で発生すると、細胞にダメージを与え、サンバーンセル(日やけ細胞)が形成されたり、遺伝子が傷ついたりし(DNAの損傷)、また長期間にわたってDNAの損傷が蓄積されると、皮膚がんを発生させることもある。そのため、抗酸化作用を有する薬剤、生薬などが肌炎症を抑えるのによく利用されている。その他、抗炎症作用を有するステロイドや保湿効果を発揮する各種保湿剤、動物・植物エキスも炎症を鎮めるのに使用されている。」(【0002】、【0003】)

14イ

「【0013】
本発明でいう炎症とは、好ましくは外部刺激、例えば紫外線照射刺激、乾燥刺激、熱刺激(加熱及び冷却)、化学薬剤刺激、浸透圧刺激、酸化刺激等のストレスを原因とする皮膚炎症を意味する。より好ましくは、炎症は紫外線照射又は乾燥刺激による皮膚炎症である。」(【0013】)

4 引用文献15の記載

引用文献15には、以下の記載がある(下線は合議体による。)。

15ア

「【0002】
紫外線照射、乾燥、化学薬剤暴露をはじめとする外部刺激は皮膚にさまざまなダメージを与える。特に紫外線照射による炎症を伴って肌が赤くなる状態(サンバーン)は、痛みやほてりを生じるだけでなく、重度の場合には、やけどと同じような火ぶくれを起こすこともある。
【0003】
紫外線をはじめとする様々な外部刺激による炎症の原因の一つに、活性酸素やフリーラジカルの産生が挙げられる。活性酸素やフリーラジカルが皮膚で発生すると、細胞にダメージを与え、サンバーンセル(日やけ細胞)が形成されたり、遺伝子が傷ついたりし(DNAの損傷)、また長期間にわたってDNAの損傷が蓄積されると、皮膚がんを発生させることもある。そのため、抗酸化作用を有する薬剤、生薬などが肌の炎症を抑える目的でよく利用されている。その他、抗炎症作用を有するステロイドや保湿効果を発揮する各種保湿剤、動物・植物エキスも炎症を鎮める目的で使用されている。」(【0002】、【0003】)

5 引用文献16の記載

引用文献16には、以下の記載がある(下線は合議体による。)。

16ア

「接触皮膚炎(かぶれ)とは
接触皮膚炎は一般的には「かぶれ」とも呼ばれるもので、刺激やアレルギーを起こす物に触れることによって起こる皮膚の炎症です1)。原因となる物質が接触した部分が、赤くなる(紅斑(こうはん))、膨れ上がる(丘疹(きゅうしん))、水ぶくれ(水疱(すいほう))ができるなどして、かゆみや痛みを生じることもあります1、2)。」(「接触皮膚炎(かぶれ)とは」の項)

16イ

「かぶれてしまった際の対処法
まずは、かぶれの原因物質を特定し、それを取り除いたり、回避したりします。もし原因となりそうなものに触った場合は、石鹸できれいに洗ってから水でよく洗い流してください。「いつ」、「どんな時に」、「どこに」症状があらわれるのかをメモしておくと、原因の特定や受診した際の診断、今後の予防などに役立ちます。
原因が良く分からない場合は、皮膚科を受診し、原因が何であるのかの検査を受けるとよいでしょう。
かぶれた部分は掻くとさらに悪化する場合もあるので、なるべくかかないように気をつけましょう。患部を清潔にして、氷嚢などで冷やすとかゆみなどが和らぎます。
かぶれの症状が軽い場合は、1~2日で自然に治ることもありますが、症状が軽くなかったり続いたりする場合は、薬を使います。」(「かぶれてしまった際の対処法」の項)

6 引用文献17の記載

引用文献17には、以下の記載がある(下線は合議体による。)。

17ア

「ミノキシジルの有用性に関して,男性型脱毛症に対する14件のランダム化比較試験41)~54)と1件のシステマティック・レビュー55),女性型脱毛症に対する10件のランダム化比較試験56)~65)と1件のシステマティック・レビュー66)が実施されている.」(2769頁左欄29~33行)

17イ

「ミノキシジルの有害事象として,男女を通して痰痒,紅斑,落屑,毛包炎,接触皮膚炎,顔面の多毛などが報告されている.2%および5%ミノキシジル液を比較した,393名の男性被験者を対象とした,観察期間48週までのランダム化比較試験では50), 掻(合議体注:原文ではやまいだれに蚤)痒,接触皮膚炎といった皮膚症状の出現率は5%ミノキシジル群で6%と,2%ミノキシジル群(2%),プラセボ群(3%)より高かった.」(2770頁左欄6~13行)

17ウ

「また,2%ミノキシジル(1日2回)および5%ミノキシジル(1日2回)を用いた,381名の女性被験者を対象とした観察期間48週までのランダム化比較試験において,皮膚症状の出現率は5%ミノキシジル群で14%と,2%ミノキシジル群(6%),プラセボ群(4%)より高かった62).一方,2%ミノキシジル(1日2回)および5%ミノキシジル(1日1回)を用いた,113名の女性被験者を対象とした観察期間24週までのランダム化比較試験では,皮膚症状の出現率は5%ミノキシジル群の方が2%ミノキシジル群より有意に(p=0.046)低かった65).そのため,両者の有害事象については,まだ見解が一致していない.」(2770頁左欄14~25行)

7 引用文献19の記載

引用文献19には、以下の記載がある(下線は合議体による。)。

19ア

「・・・
"乾性肌"は角層表層の角質片が剥離しやすく,角層を形成する角質片が薄く,NMF等の量も"脂性肌""普通肌"と比較すると相対的に少なく,角層含水能力も低いのではないかと想像する。このような角層の素質,または状態に加えて皮表皮脂量も少なく,必然的に環境に対する抵抗が弱く,容易に炎症をおこし,不全角化をともない,角層表層の剥離現象である落屑性変化を来し,角層水分量が減少する。」(496頁・要旨)

19イ

「
[図:0001386617000002.jpg]
」(496頁・第1表)

19ウ

「
[図:0001386617000003.jpg]
」(497頁・第2表)

第5 対比、判断

1 対比

本願発明と引用発明12とを対比する。

引用発明12のローション剤は、「ミノキシジルを有効成分とする持続性育毛組成物」(摘記12ア)及び「本発明の持続性育毛組成物は、ローション剤・・・などの適当な外用製剤とし、使用することができる」(摘記12イ)という記載から、「持続性育毛組成物」として使用されるものである。

そして、通常、育毛組成物は頭皮に継続的に適用するものであることは当業者に明らかであるから、引用発明12のローション剤は、「頭皮への継続的適用のための育毛外用剤」である点で、本願発明と一致する。

また、引用発明12における1,3-ブチレングリコールの含有量に対するグリセリン含有量の質量比は7/13=1/1.9であって、本願発明の「前記1,3-ブチレングリコールの含有量に対する前記グリセリンの含有量が質量比で1/25以上1未満」の範囲に包含されるものであるから、この点は相違点とはならない。

そうすると、本願発明と引用発明12との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>

「(A)ミノキシジル、エタノール、及び水に加えて、グリセリン及び1,3ブチレングリコールをさらに配合させることを特徴とし、
(B)前記1,3-ブチレングリコールの含有量に対する前記グリセリンの含有量が質量比で1/25以上1未満であり、
頭皮への継続的適用のための育毛外用剤。」

<相違点1>

本願発明の育毛外用剤は、「頭皮への継続的適用に伴う炎症を抑制するため」のものであって、「炎症を抑制するメカニズムが育毛外用剤の適用部である頭皮細胞中におけるサイトカイン濃度の低下を含み、かつ、前記サイトカインが、TNF-α、IL-1β、及びIL-6の3種を含む」ものであるのに対し、引用発明12の育毛外用剤は、「頭皮への継続的適用に伴う炎症を抑制するため」のものであって、「炎症を抑制するメカニズムが育毛外用剤の適用部である頭皮細胞中におけるサイトカイン濃度の低下を含み、かつ、前記サイトカインが、TNF-α、IL-1β、及びIL-6の3種を含む」ものであることについては特定されていない点。

2 本願出願時の技術常識について

(1)本願明細書【0004】にも引用される引用文献17には、脱毛症の診療に用いられるミノキシジル(摘記17ア)の有害事象として、掻痒、接触皮膚炎といった皮膚症状が出現することが記載されている(摘記17イ)。

ここで、接触皮膚炎は、「かぶれ」とも呼ばれる、乾燥や化学薬剤暴露をはじめとする、外部からの刺激(以下「外部刺激」という。)と接触した部位で生じる皮膚炎症であるから(摘記14アの【0002】、摘記14イ、摘記15アの【0002】、摘記16ア、摘記19ア~ウ)、ミノキシジルによって接触皮膚炎などの有害事象を出現することが当業者によく知られている以上、ミノキシジルを頭部に継続的に適用すれば、ミノキシジルと接触する頭皮において接触皮膚炎などの皮膚症状が生じ得ることは、本願出願時の技術常識であったといえる。

(2)そして、上記(1)で説示した、乾燥や化学薬剤暴露をはじめとする外部刺激と接触した部位で生じる皮膚炎症を、乾燥を防ぐ保湿剤による保湿や、接触皮膚炎(かぶれ)の原因物質を取り除いたり回避したりすることによって鎮めることができることは、本願出願時の技術常識であったといえる(摘記14アの【0003】、イ、摘記15アの【0003】、摘記16イ)。

(3)また、炎症のメディエーター(伝達物質)として、TNF-α、IL-1(IL-1βを含む。)、IL-6などの各種サイトカインが関与しており、TNF-α、IL-1(IL-1βを含む。)及びIL-6は、炎症反応に深く関与する「炎症性サイトカイン」の代表例であることは、本願出願時の技術常識であったといえる(要すれば、生化学辞典(第3版)、株式会社東京化学同人発行、2000年3月 第3版第4刷発行、233頁左欄「炎症」及び「炎症性サイトカイン」の項、並びに154頁「インターロイキン1」の項(IL-1βについての記載がある。)を参照。)

さらに、TNF-α、IL-1(IL-1βを含む。)及びIL-6が炎症を惹起する作用(炎症を引き起こす作用)を有することも、本願出願時の技術常識であったといえる(要すれば、上記「生化学辞典(第3版)」の「炎症性サイトカイン」の項、引用文献14の【0012】における「・・・炎症性サイトカインは、・・・炎症を引き起こすことで知られるサイトカイン、好ましくはインターロイキン6(IL-6)・・・その他の炎症性サイトカインとしては、例えばインターロイキン-1α,β・・・、腫瘍壊死因子(TNF)」という記載、引用文献15の【0004】における「IL-6・・・炎症発生に直接的に関与している」及び【0006】における「IL-6・・・炎症発生に直接的な作用を及ぼしている」という記載を参照。)」

3 相違点1についての当審の判断

(1)引用文献13には、ミノキシジルのようなジアミノピリミジン誘導体を含む組成物は、多価アルコールとして、ジアミノピリミジン誘導体の溶解性を向上する点、皮膚等へジアミノピリミジン誘導体含有組成物を適用した場合の皮膚刺激性が低い点、及び保湿性が高い点から、ブチレングリコール及びグリセリンから選択される少なくとも1つを含むことが好ましいことが記載されている(摘記13ア、イ)。

上記記載から、引用文献13には、ミノキシジルを含む組成物に、ブチレングリコール及びグリセリンから選択される少なくとも1つを配合することによって、皮膚刺激性が低くなり、保湿性が高くなることが示唆されているといえる。

ここで、皮膚刺激性が低くなることは、組成物を適用した部位の皮膚に対する外部刺激が回避されることを意味するものであり、保湿性が高くなることは、組成物を適用した部位の乾燥が回避されることを意味するものである。

そして、接触皮膚炎のように外部刺激によって引き起こされる皮膚炎症は、乾燥を防ぐ保湿剤による保湿や、接触皮膚炎(かぶれ)の原因物質を取り除いたり回避したりすることによって鎮めることができるという本願出願時の技術常識(上記2(2))を踏まえれば、外部刺激や乾燥が回避されることによって、上記のような皮膚炎症が抑制されることを、当業者は当然に期待するといえる。

そうすると、引用文献13には、ブチレングリコール及びグリセリンが配合されたミノキシジル含有組成物は、これらが配合されていないミノキシジル含有組成物よりも、接触皮膚炎のように外部刺激によって引き起こされる皮膚炎症を抑制することができることが示唆されているといえるので、このような示唆を参酌した当業者は、ミノキシジルを含み、ブチレングリコール及びグリセリンが配合された引用発明12のローション剤を「頭皮への継続的適用に伴う炎症を抑制するため」のものとすることを、自然に想起し得たといえる。

(2)また、本願発明における「炎症を抑制するメカニズムが育毛外用剤の適用部である頭皮細胞中におけるサイトカイン濃度の低下を含み、かつ、前記サイトカインが、TNF-α、IL-1β、及びIL-6の3種を含む」という特定事項は、本願発明の育毛外用剤を頭皮へ継続的に適用した際に「頭皮への継続的適用に伴う炎症」が抑制されると、「適用部である頭皮細胞中のTNF-α、IL-1β、及びIL-6を含むサイトカイン濃度の低下」の状態を伴うものと解されるから、「適用部である頭皮細胞中のTNF-α、IL-1β、及びIL-6を含むサイトカイン濃度の低下」は「頭皮への継続的適用に伴う炎症」が抑制された状態を示す目安であるといえる。

ここで、上記2(3)で説示したように、炎症の伝達物質として、TNF-α、IL-1(IL-1βを含む。)、IL-6などの各種サイトカインが関与しており、特に、TNF-α、IL-1(IL-1βを含む。)及びIL-6は、炎症反応に深く関与する「炎症性サイトカイン」の代表例であって、これらが炎症を引き起こす作用を有することは、本願出願時の技術常識であったのであるから、当該技術常識を参酌した当業者は、炎症が抑制されることにより、TNF-α、IL-1β及びIL-6を含む各種のサイトカイン濃度が低下することを期待するといえる。

そうすると、「頭皮への継続的適用に伴う炎症」が抑制された状態を示す目安である「適用部である頭皮細胞中のTNF-α、IL-1β、及びIL-6を含むサイトカイン濃度の低下」を指標として、「炎症を抑制するメカニズムが育毛外用剤の適用部である頭皮細胞中におけるサイトカイン濃度の低下を含み、かつ、前記サイトカインが、TNF-α、IL-1β、及びIL-6の3種を含む」ことを特定することを、当業者は自然に想起し得たといえる。

(3)上記(1)及び(2)から、当業者は、ミノキシジルを含み、ブチレングリコール及びグリセリンが配合された引用発明12のローション剤を「頭皮への継続的適用に伴う炎症を抑制するため」のものとし、その際に、「頭皮への継続的適用に伴う炎症」が抑制された状態を示す目安である「適用部である頭皮細胞中のTNF-α、IL-1β、及びIL-6を含むサイトカイン濃度の低下」を指標とすること、すなわち「炎症を抑制するメカニズムが育毛外用剤の適用部である頭皮細胞中におけるサイトカイン濃度の低下を含み、かつ、前記サイトカインが、TNF-α、IL-1β、及びIL-6の3種を含む」ことを特定することにより、引用発明12を相違点1に係る特定事項を備えたものとすることを、当業者は容易に想到し得たといえる。

4 効果について

(1)本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、「当初明細書等」という。)には、ミノキシジル、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、乳酸、シクロデキストリン、エタノール、精製水を含む100mlのサンプル4が、ミノキシジル、1,3-ブチレングリコール、乳酸、シクロデキストリン、エタノール、精製水を含む100mlのサンプル3と比較して、マウス皮膚に継続的に適用した後のサイトカイン3種(TNF-α、IL-1β、IL-6)の発現量がいずれも低下したことを示す実験結果が記載されている(【0037】~【0047】、図2~4)。

そして、サンプル4(本願発明の組成物)はグリセリン及び1,3-ブチレングリコールの両方を含むが、サンプル3(比較例)は1,3-ブチレングリコールを含むがグリセリンを含まない、という点で相違している。

(2)しかし、ミノキシジルを頭部に継続的に適用すれば、ミノキシジルと接触する頭皮において接触皮膚炎などの皮膚症状が生じ得ることは及び本願出願時の技術常識であり(上記2(1))、引用文献13には、ブチレングリコール及びグリセリンが配合されたミノキシジル含有組成物は、これらが配合されていないミノキシジル含有組成物よりも、接触皮膚炎のように外部刺激によって引き起こされる皮膚炎症を抑制することができる組成物であることが示唆されている(上記3(1))のであるから、ミノキシジルを含み、グリセリン及び1,3-ブチレングリコールの両方が配合された本願発明の組成物をマウス皮膚に継続的に適用した場合に、適用部の炎症を抑制することができるという効果は、当業者が予測できるものである。

そして、「頭皮への継続的適用に伴う炎症」が抑制された状態を示す目安である「適用部である頭皮細胞中のTNF-α、IL-1β、及びIL-6を含むサイトカイン濃度の低下」を指標することは当業者が自然に想起することである(上記3(2))から、上記(1)の実験結果で「マウス皮膚に継続的に適用した後のサイトカイン3種(TNF-α、IL-1β、IL-6)の発現量がいずれも低下した」ことは、単に、「適用部の炎症を抑制することができるという効果」を、上記サイトカイン3種の発現量を測定することにより確認したものにすぎず、当業者が予測し得ない格別顕著な効果を示すものではない。

(3)したがって、本願発明により、引用発明12及び引用文献12、13に記載された事項並びに本願出願時の技術常識から、当業者が予測できない格別顕著な効果が奏されたとはいえない。

第6 審判請求人の主張について

1 令和4年2月8日提出の意見書(以下「意見書」という。)における審判請求人の主張

審判請求人は、意見書において、以下のように主張する。

(1)主張1

「まず、上記議論の大前提となる「ウ 本願出願時の技術常識について」の項に関し、審判官殿は、引用文献17の2770頁左欄6~13行を引用の上、ミノキシジルの有害事象として、観察期間48週までのランダム化比較試験では、掻痒、接触皮膚炎といった皮膚症状が出現することが記載されている旨述べられております。しかしながら、同頁左欄19~25行において、「一方、2%ミノキシジル(1日2回)および5%ミノキシジル(1日1回)を用いた、113名の女性被験者を対象とした観察機関24週までのランダム化比較試験では、皮膚症状の出現率は5%ミノキシジル群の方が2%ミノキシジル群よりも優位に(p=0.046)低かった。そのため、両者の有害事象については、まだ見解が一致していない」と述べられているように、ミノキシジルが炎症などの皮膚症状の原因物質であるとすれば矛盾することになる結果も示されており、この点に関し、確定した技術常識は存在しておりません。・・・このように、前記炎症の原因物質がミノキシジルであるという技術常識が存在しない以上、それに伴う炎症を抑制する目的でグリセリン及び1,3-ブチレングリコールを用いるという発想に容易に想到し得ないことは明らかと言えます。」(意見書3頁下から13行~4頁7行)

(2)主張2

「さらに、・・・審判官殿は、引用文献13の段落【0032】を引用の上、ミノキシジルを含むジアミノピリミジン誘導体含有組成物にブチレングリコール及びグリセリンを含ませると、皮膚刺激性が低く保湿性が高いため好ましく用いられることが記載されているから、ブチレングリコール及びグリセリンを含むミノキシジル含有組成物は、ブチレングリコール及びグリセリンを含まないミノキシジル含有組成物と比較して、接触皮膚炎などの皮膚の炎症を抑制することができることが示唆されていると判断されております。しかしながら、そもそも上記のとおり、接触皮膚炎などの皮膚の炎症の原因がミノキシジルであるという技術常識は存在しませんので、これを参酌したところで、ミノキシジルによる頭皮への継続的適用に伴う炎症を抑制するためにブチレングリコール及びグリセリンを用いるという発想に至ることはありません。さらに、引用文献13の段落【0032】では、「皮膚等へジアミノピリミジン誘導体含有組成物を適用した場合の皮膚刺激性が低い点」(下線は請求人による)と記載されており、これは単に薬剤の頭皮への適用時に生ずる可能性のある一時的な皮膚刺激を示しているに過ぎず、本願発明に規定する「頭皮への継続的適用に伴う炎症」とは明らかに異なります。増してや、そのような適用時の一時的な皮膚刺激において、TNF-α、IL-1β、及びIL-6といった炎症性サイトカインが関与していると考えるべき根拠も存在しません。さらに言えば、「ブチレングリコール及びグリセリンから選択される少なくとも1つを含むことが好ましい」(下線は請求人による)と記載されており、ブチレングリコールのグリセリンどちらか一方を含んでいれば良いと読み取れ、これらを併用することに関する積極的な示唆は存在しません。・・・」(意見書4頁8行~4頁32行)

(3)主張3

「以上のことから、相違点1につき本願発明1が引用発明に対して進歩性を有することは既に明らかと言えますが、「オ 効果について」に関しても、以下に請求人の意見を述べます。・・・「炎症が抑制されていればTNF-α、IL-1β、及びIL-6に代表される各種炎症性サイトカインの濃度が低下することも当業者が予測できるものであるといえる」という点に関し、そもそも炎症抑制効果を読み取ることが出来ないことは上述のとおりですが、仮にその点をさて置き、何らかの炎症抑制効果が読み取れるとしても、その原因は様々であり、必ずしも炎症性サイトカインの過剰放出によって齎されるとは限りません。また、仮に炎症性サイトカインの過剰放出が関与する炎症であったとしても、特定の化学物質により抗炎症効果が生ずるメカニズムは様々であり、必ずしもそういったサイトカインの抑制によって齎されるものでもありません。上述のとおり、グリセリンと1,3-ブチレングリコールを所定の割合で併用することにより、TNF-α、IL-1β、及びIL-6といった炎症性サイトカインの全てを抑制することは、引用文献10,13その他いずれの引用文献からも読み取ることは出来ません。・・・」(意見書4頁33行~5頁6行)

2 審判請求人の主張に対する当審の判断(下線は当審が付した。)

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(1)主張1について

ア 本願明細書【0004】にも引用される引用文献17に、脱毛症の診療に用いられるミノキシジル(摘記17ア)の有害事象として、掻痒、接触皮膚炎といった皮膚症状が出現することが記載されている(摘記17イ)ことは、上記「第5 2(1)」で説示したとおりである。

上記摘記17イには、2%ミノキシジル投与と5%ミノキシジル投与とを比較した観察期間48週までの男性被験者(393名)からなるランダム化比較試験では、掻痒、接触皮膚炎といった皮膚症状の出現率が、5%ミノキシジル投与群では6%であり、2%ミノキシジル投与群では2%であったことが記載されており、5%ミノキシジル投与群の方が、2%ミノキシジル投与群よりも上記皮膚症状の出現率が高かったのであるから、当業者は、ミノキシジルが上記皮膚症状の主な原因であることを理解できるといえる。

イ 一方、審判請求人が「ミノキシジルが炎症などの皮膚症状の原因物質であるとすれば矛盾する」と主張する根拠として指摘している、引用文献17の摘記17ウには、ミノキシジルの有害事象について、

「2%ミノキシジル(1日2回)および5%ミノキシジル(1日2回)を用いた,381名の女性被験者を対象とした観察期間48週までのランダム化比較試験」において「皮膚症状の出現率は5%ミノキシジル群で14%と,2%ミノキシジル群(6%),プラセボ群(4%)より高かった」という結果となったのに対し、「2%ミノキシジル(1日2回)および5%ミノキシジル(1日1回)を用いた,113名の女性被験者を対象とした観察期間24週までのランダム化比較試験」では、「皮膚症状の出現率は5%ミノキシジル群の方が2%ミノキシジル群より有意に(p=0.046)低かった65)」という結果になったことが記載され、その後に「そのため,両者の有害事象については,まだ見解が一致していない」と記載されている。

ここで、上記「そのため,両者の有害事象については,まだ見解が一致していない」という記載は、

(i)2%ミノキシジル(1日2回)投与群と5%ミノキシジル(1日2回)投与群とを比較した観察期間48週までの女性被験者(381名)からなるランダム化比較試験では、5%ミノキシジル(1日2回)投与群での皮膚症状の出現率(14%)が、2%ミノキシジル(1日2回)投与群での皮膚症状の出現率(6%)よりも高かったという見解が得られたのに対し、

(ii)2%ミノキシジル(1日2回)投与群と5%ミノキシジル(1日1回)投与群とを比較した観察期間24週までの女性被験者(113名)からなるランダム化比較試験では、5%ミノキシジル(1日1回)投与群での皮膚症状の出現率が、2%ミノキシジル(1日2回)投与群での皮膚症状の出現率よりも有意に低かったという見解が得られたので、

上記(i)で得られた見解と上記(ii)で得られた見解とが一致していない、ということを意味するものと解される。

しかし、上記(i)と(ii)では、5%ミノキシジルの投与頻度(1日2回又は1日1回)と観察期間(48週まで又は24週まで)が異なるのであるから、上記(ア)と(イ)とで見解が一致していないことが、請求人が主張するように「ミノキシジルが炎症などの皮膚症状の原因物質であるとすれば矛盾する」といえる根拠になるとはいえない。

そして、上記(i)及び(ii)の見解は、観察期間(48週まで又は24週まで)が異なるので定量的な比較はできないものの、5%ミノキシジルの投与頻度が高い(1日2回)投与群(上記(ア))の皮膚症状の出現率が、5%ミノキシジルの投与頻度が低い(1日1回)投与群(上記(イ))の皮膚症状の出現率よりも高い傾向にあることを示唆するものであり、このような傾向は、上記アにおける「当業者は、ミノキシジルが上記皮膚症状の主な原因であることを理解できるといえる」という説示に矛盾するものではない。

ウ したがって、審判請求人の上記主張1は採用することができない。

(2)主張2について

ア 引用文献13に記載されたジアミノピリミジン誘導体含有組成物の用途は、「・・・育毛活性の点で好ましく・・・」(摘記13ア)及び「皮膚等へジアミノピリジン誘導体含有組成物を適用した場合の」(摘記13イ)と記載されるように、育毛のために皮膚に適用するという用途も含むといえるところ、通常、育毛組成物は頭皮に継続的に適用するものであることは当業者に明らかであることは、上記「第5 1」で説示したとおりである。

そして、引用文献13における「皮膚刺激が低い」(摘記13イ)という記載ついて、当該「皮膚刺激」が、審判請求人が主張するように「一時的な皮膚刺激を示している」と限定的に解する根拠は見いだせない。

したがって、引用文献13に記載された皮膚刺激が「一時的な皮膚刺激」を示しているに過ぎないとする審判請求人の上記主張は採用することができない。

イ また、審判請求人は、引用文献13には、ブチレングリコール及びグリセリンを併用することに積極的な示唆は存在しない旨を主張しているが、「ブチレングリコール及びグリセリンから選択される少なくとも1つ」(摘記13イの【0032】)という記載は、ブチレングリコール及びグリセリンを併用する場合も含む記載であるし、引用文献13には「多価アルコールは、1種単独で、又は複数種の混合物の形態で用いることができる」こと(摘記13イの【0030】)も記載されているので、引用文献13にはブチレングリコール及びグリセリンを併用することが記載されているといえる。

そして、そもそも、引用発明12では、ブチレングリコール及びグリセリンを併用しており、ブチレングリコール及びグリセリンを併用している点は、本願発明と引用発明12とを対比した場合の相違点ではないのであるから、引用文献13に、ブチレングリコール及びグリセリンを併用することに積極的な示唆が存在しないとしても、上記「第5 3(1)」で説示した「ミノキシジルを含み、ブチレングリコール及びグリセリンが配合された引用発明12のローション剤を「頭皮への継続的適用に伴う炎症を抑制するため」のものとすることを、自然に想起し得たといえる」という判断に誤りはない。

ウ さらに、上記「第5 2(1)」で説示したように、ミノキシジルを頭部に継続的に適用すれば、ミノキシジルと接触する頭皮において接触皮膚炎が生じ得ることは、本願出願時の技術常識であるから、審判請求人による「そもそも上記のとおり、接触皮膚炎などの皮膚の炎症の原因がミノキシジルであるという技術常識は存在しません」という主張も採用すすることはできない。

エ したがって、審判請求人の上記主張2は採用することができない。

(3)主張3について

ア 接触皮膚炎のように外部刺激によって引き起こされる皮膚炎症は、乾燥を防ぐ保湿剤による保湿や、接触皮膚炎(かぶれ)の原因物質を取り除いたり回避したりすることによって鎮めることができるという本願出願時の技術常識(上記「第5 2(2)」)、及び、ブチレングリコール及びグリセリンが配合されたミノキシジル含有組成物は、これらが配合されていないミノキシジル含有組成物よりも、接触皮膚炎のように外部刺激によって引き起こされる皮膚炎症を抑制することができるという示唆(上記「第5 3(1)」)を踏まえた当業者であれば、ミノキシジルを含み、ブチレングリコール及びグリセリンが配合された引用発明12のローション剤を「頭皮への継続的適用に伴う炎症を抑制するため」のものとすることを、自然に想起し得たといえる。

イ そして、炎症性サイトカインの過剰放出を抑制することによって炎症抑制効果が齎されるとは限らず、また、特定の化学物質により炎症抑制効果が生ずるメカニズムが必ずしもそういったサイトカインの抑制によって齎されるものでもないとしても、上記「第5 2(3)」で説示したように、炎症の伝達物質として、TNF-α、IL-1(IL-1βを含む。) 、IL-6などの各種サイトカインが関与しており、TNF-α、IL-1(IL-1βを含む。)及びIL-6は、炎症反応に深く関与する「炎症性サイトカイン」の代表例であることは本願出願時の技術常識であるから、当該技術常識を参酌した当業者が、「頭皮への継続的適用に伴う炎症」が抑制された状態を示す目安である「適用部である頭皮細胞中のTNF-α、IL-1β、及びIL-6を含むサイトカイン濃度の低下」を指標とすること、すなわち「炎症を抑制するメカニズムが育毛外用剤の適用部である頭皮細胞中におけるサイトカイン濃度の低下を含み、かつ、前記サイトカインが、TNF-α、IL-1β、及びIL-6の3種を含む」ことを特定することは、自然に想起し得たことである。さらに、実際にTNF-α、IL-1β及びIL-6が抑制されたこと、すなわち上記「第5 4」で説示した「マウス皮膚に継続的に適用した後のサイトカイン3種(TNF-α、IL-1β及びIL-6)の発現量がいずれも低下した」ことは、上記技術常識を参酌した当業者が予測し得た程度のものにすぎない。

ウ したがって、審判請求人の上記主張3は採用することができない。

(4)小括

以上のとおりであるから、審判請求人の上記主張1~3は、いずれも採用することができない。

第7 むすび

以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用文献12に記載された発明及び引用文献12、13に記載された事項並びに本願出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2020-015793

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