2020-014538
プリプレグ
- 審判番号
- 2020-014538
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-202907外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年10月16日
- 審決日
- 2022年02月17日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】三菱瓦斯化学株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
- 分類
- P18 .121-Z (C08J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
本願は、平成27年10月14日の出願であって、平成31年3月8日付けで拒絶理由が通知され、令和1年6月5日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月17日付けで拒絶理由が通知され、令和2年2月21日に意見書が提出され、同年同月25日に手続補足書が提出され、同年7月14日付けで拒絶査定がされたところ、同年10月16日に拒絶査定不服審判が請求され、同年同月19日に手続補足書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、令和1年6月5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「数平均分子量が1000以下で、一分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有し、ハロゲン原子を含有しないエポキシ化合物、数平均分子量5000以下のポリフェニレンエーテル、シアン酸エステル化合物、前記エポキシ化合物及び前記ポリフェニレンエーテルと硬化剤である前記シアン酸エステル化合物との反応を促進させる硬化触媒、及びリンを含有するリン系化合物を含有する樹脂ワニスを有するポリフェニレンエーテル樹脂組成物と、基材と、を含み、前記ポリフェニレンエーテルは一般式(1)【化1】[図:0001383606000001.jpg]によって表され、且つ数平均分子量が1000以上であり、前記一般式(1)において、Xはアリール基を示し、(Y)mはポリフェニレンエーテル部分を示し、R1、R2、R3はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を示し、mは1~100の整数を示し、nは1~6の整数を示し、qは1~4の整数を示すことを特徴とするプリプレグ。」
第3 原査定の概要
原査定の拒絶の理由はおおむね次に示す理由である。
(進歩性)
この出願の請求項1ないし3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献3に記載された発明及び引用文献1、2に記載の事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 当審の判断
1 本願発明
本願発明は、上記第2で認定のとおりのものである。
2 引用文献の記載事項
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(1)引用文献3の記載及び引用文献3に記載された発明
ア 引用文献3の記載
引用文献3には、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付した。以下、同様。)
・「【請求項1】
(A)数平均分子量が1000以下で、一分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する、ハロゲン原子を含有しないエポキシ化合物、(B)数平均分子量5000以下のポリフェニレンエーテル、(C)シアネートエステル化合物、(D)有機金属塩、及び(E)リン系難燃剤を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記(E)リン系難燃剤がフォスファゼン系化合物である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記エポキシ化合物がジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、及びビフェニル型エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物である請求項1又は請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリフェニレンエーテル(B)が、数平均分子量10000~30000のポリフェニレンエーテルを溶媒中でフェノール系化合物とラジカル開始剤との存在下で再分配反応させて得られたものである請求項1~3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を繊維質基材に含浸させ、硬化させて得られることを特徴とするプリプレグ。」
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の絶縁材料として好ましく用いられるエポキシ樹脂組成物に関し、詳しくは耐熱性に優れたプリント配線板を製造するために好ましく用いられるエポキシ樹脂組成物、そのエポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグ及び金属張積層板に関するものである。」
・「【0007】
本発明は、エポキシ化合物と低分子量化されたフェノール変性ポリフェニレンエーテルと、シアネート化合物を必須成分として含むエポキシ樹脂組成物において、難燃性を維持しながら高い耐熱性を備えることができる、誘電特性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。」
・「【0008】
本発明者らは、エポキシ化合物と低分子量化されたフェノール変性ポリフェニレンエーテルと、シアネート化合物を必須成分として含むエポキシ樹脂組成物において、耐熱性を改良するための検討を行った結果、エポキシ樹脂組成物の難燃化に一般的に用いられている臭素化エポキシ化合物とシアネート化合物とを併用した場合には、耐熱性が低下するが、臭素化エポキシ化合物を用いない場合には耐熱性が大幅に向上することを見出した。そして、さらに検討を進めた結果、エポキシ樹脂組成物の難燃化を目的として、臭素化エポキシ化合物のようなハロゲン化エポキシ化合物や、ハロゲン系難燃剤を用いた場合には、高温時において、ハロゲンが脱離することにより生じるハロゲンイオン(またはハロゲンラジカル)がシアネート骨格を分解することにより樹脂が熱劣化していると思われる幾つかの知見を得た。かかる知見から、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)数平均分子量が1000以下で、一分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する、ハロゲン原子を含有しないエポキシ化合物、(B)数平均分子量5000以下のポリフェニレンエーテル、(C)シアネートエステル化合物、(D)有機金属塩、及び(E)リン系難燃剤を含有することを特徴とするものである。エポキシ樹脂組成物の難燃化を目的として、臭素化エポキシ化合物のようなハロゲン化エポキシ化合物を用いた場合には、難燃性を維持することができるものの脱離したハロゲンにより硬化物が分解されて耐熱性が低下するが、本発明のように、ハロゲン化エポキシ化合物を用いる代わりに、リン系難燃剤(E)を用いることにより、高温時におけるハロゲンの脱離による硬化物の分解が抑制されるために、難燃性及び高い耐熱性を維持することができる。」
・「【0021】
前記ポリフェニレンエーテル(B)の数平均分子量は、5000以下であり、好ましくは2000~4000である。前記数平均分子量が5000を超える場合には、流動性が悪くなり、またエポキシ化合物のエポキシ基との反応性も低下して、硬化反応に長い時間を要したり、硬化系に取り込まれず未反応のものが増加してガラス転移温度が低下し、十分な耐熱性の改善が望めなくなる。」
・「【0025】
本発明に用いられる、(C)シアネートエステル化合物は、1分子中に2個以上のシアネート基を有する化合物であれば特に限定なく用いられる。その具体例としては、例えば、2,2-ビス(4-シアナートフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-シアナートフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアナートフェニル)エタン等またはこれらの誘導体等、芳香族系シアネートエステル化合物等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
前記シアネートエステル化合物(C)は、エポキシ樹脂の硬化剤として作用し、剛直な骨格を形成する成分である。このために、高いガラス転移点(Tg)を与える。また、低粘度であるために得られる樹脂ワニスの高流動性を維持することができる。」
・「【0029】
本発明に用いられる、(D)有機金属塩は、前記エポキシ化合物(A)及びポリフェニレンエーテル(B)と、硬化剤であるシアネートエステル化合物(C)との反応を促進させる触媒であり、具体的には、例えば、オクタン酸,ステアリン酸,アセチルアセトネート,ナフテン酸,サリチル酸等の有機酸のZn,Cu,Fe等の有機金属塩等が挙げられる。これらは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、オクタン酸亜鉛がより高い耐熱性が得られる点から、特に好ましく用いられる。」
・「【0032】
本発明に用いられるリン系難燃剤(E)は、リン原子を含有する公知のリン系難燃剤であれば、特に限定されず用いられうる。エポキシ樹脂組成物を難燃化する処方としては、従来から、臭素化エポキシ化合物を配合したり、臭素化ポリスチレン等のハロゲン系難燃剤を配合する方法が一般的に用いられてきたが、このような含ハロゲン化合物を配合した場合には、高温時にハロゲンが脱離してハロゲンイオン(またはハロゲンラジカル)が発生する。このように発生するハロゲンイオン等は、シアネートエステル化合物(C)で硬化した硬化物の樹脂骨格を分解する作用をしていると思われる。従って、本発明のエポキシ樹脂組成物においては、難燃剤として、ハロゲン原子を含有しないリン系難燃剤を用いることにより、樹脂骨格の分解を抑制して、得られる硬化物の耐熱性が維持されると考えられる。
【0033】
このようなリン系難燃剤(E)の具体例としては、例えば、トリフェニルフォスフェイト,トリクレジルフォスフェイト,キシレニルジフェニルフォスフェイト,クレジルジフェニルフォスフェイト等のフォスフェイト系化合物、環状又は鎖状のフォスファゼン系化合物、縮合リン酸エステル系化合物、環状リン酸エステル系化合物及び、これらの誘導体等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、フォスファゼン系化合物が電気的特性及び耐熱性に優れている点から好ましく用いられる。」
・「【実施例】
【0051】
(製造例1:重合で得られた数平均分子量2500のポリフェニレンエーテル(PPE1)の溶液の製造)
日本ジーイープラスチック(株)製のSA120(数平均分子量2500のPPE)をトルエンに90℃で溶解させて、数平均分子量2500のポリフェニレンエーテル(PPE1)の溶液(固形分濃度28質量%)を調製した。
【0052】
(製造例2:再分配反応による、数平均分子量2500のポリフェニレンエーテル(PPE2)の溶液の製造)
トルエン250gを攪拌装置及び攪拌羽根を装備した2000mlのフラスコに入れた。前記フラスコを内温90℃に制御しながら、高分子量PPE(数平均分子量25000のPPE(日本ジーイープラスチックス(株)製の「ノリル640-111」)90g、ビスフェノールA 7g、過酸化ベンゾイル7gを入れ、2時間撹拌を続けて反応させることにより、数平均分子量2500のポリフェニレンエーテル(PPE2)の溶液(固形分濃度28質量%)を調製した。なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定したスチレン換算の値である。
【0053】
(製造例3:数平均分子量4000のポリフェニレンエーテル(PPE3)の溶液の製造)
ビスフェノールA 3.6g、過酸化ベンゾイル3.6gにした以外は、製造例2と同様にして反応させることにより、数平均分子量4000のポリフェニレンエーテル(PPE3)の溶液(固形分濃度は28質量%)を調製した。
【0054】
(製造例4:重合で得られた数平均分子量25000のポリフェニレンエーテル(PPE4)の溶液の製造)
高分子量PPE(数平均分子量25000のPPE(日本ジーイープラスチックス(株)製の「ノリル640-111」)をトルエンに90℃で溶解させて、数平均分子量25000のポリフェニレンエーテル(PPE4)の溶液(固形分濃度28質量%)を調製した。
【0055】
(実施例1~11、比較例1~5)
はじめに、本実施例で用いた原材料をまとめて示す。
〈エポキシ化合物〉
・ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物であり、数平均分子量(MW)550のエピクロンHP7200(大日本インキ化学工業(株)製)
・ビスフェノールF型エポキシ化合物であり、MW350のエピクロン830S(大日本インキ化学工業(株)製)
・テトラブロモビスフェノールA型エポキシ化合物であり、MW800のエピクロン153(大日本インキ化学工業(株)製)
・ビスフェノールA型エポキシ化合物であり、MW1500のエピクロン3050(大日本インキ化学工業(株)製)
〈シアネートエステル化合物〉
・2,2-ビス(4-シアナートフェニル)プロパン(ロンザジャパン社製のBandy)
・下式(1)で示されるシアネートエステル化合物(ハンツマンジャパン社製のXU366)
【0056】
【化1】
[図:0001383606000002.jpg]
【0057】
〈難燃剤〉
・リン含有率13質量%のフォスファゼン系難燃剤(大塚化学(株)製のSPB-100)
・リン含有率9質量%の芳香族縮合リン酸エステル系難燃剤(大八化学(株)製のPX-200)
・リン含有率17質量%のリン酸エステル系難燃剤(ロンザジャパン社製のFR-500)
・リン含有率10質量%のフォスファゼン系難燃剤((株)伏見製薬所製のFPC-3033)
・臭素化ポリスチレン(アルベマール日本社製のSAYTEX HP-7010)
〈硬化触媒〉
・オクタン酸亜鉛(大日本インキ化学工業(株)製、亜鉛濃度18%)
・2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ)(四国化成(株)製)
〈無機フィラー〉
・球状シリカ(SiO2) SO25R (アドマテックス製)
【0058】
[樹脂ワニスの調製]
ポリフェニレンエーテルのトルエン溶液を90℃にまで加熱し、表1に記載の配合割合になるように、エポキシ化合物、及びシアネートエステル化合物を添加した後、30分間撹拌して完全に溶解させた。そして、さらに硬化触媒、難燃剤、及び無機フィラーを添加して、ボールミルで分散させることにより樹脂ワニスを得た。
次に得られた樹脂ワニスをガラスクロス(日東紡績(株)製の「WEA116E」)に含浸させた後、150℃で3~5分間加熱乾燥することによりプリプレグを得た。
次に、得られた各プリプレグを6枚重ねて積層し、さらに、その両外層にそれぞれ銅箔(古河サーキットフォイル社製のF2-WS 18μm)を配し、温度220℃、圧力3MPaの条件で2時間加熱加圧することにより、厚み0.75mmの銅張積層板を得た。」
・「【0064】
【表1】
[図:0001383606000003.jpg]
」
イ 引用文献3に記載された発明
上記(1)の記載、特に、実施例10の記載によれば、引用文献3には、プリプレグとして、以下の発明が記載されていると認める(以下、「引用発明」という。)。
「日本ジーイープラスチック(株)製のSA120(数平均分子量2500のPPE)をトルエンに90℃で溶解させた、数平均分子量2500のポリフェニレンエーテル(PPE1)の溶液(固形分濃度28質量%)を30質量%、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物であり、数平均分子量(MW)550のエピクロンHP7200(大日本インキ化学工業(株)製)を45質量%、2,2-ビス(4-シアナートフェニル)プロパン(ロンザジャパン社製のBandy)を25質量%、オクタン酸亜鉛(大日本インキ化学工業(株)製、亜鉛濃度18%)を0.01質量%、リン含有率13質量%のフォスファゼン系難燃剤(大塚化学(株)製のSPB-100)を20質量%、球状シリカ(SiO2) SO25R (アドマテックス製)を30質量%からなる樹脂ワニスをガラスクロス(日東紡績(株)製の「WEA116E」)に含浸させた後、150℃で3~5分間熱乾燥することにより得られたプリプレグ。」
(2)引用文献2の記載
引用文献2には、以下の記載がある。
・「【請求項1】
(A)下記一般式(I):
【化1】
[図:0001383606000004.jpg]
[式中、Xはアリール基を示し、(Y)mはポリフェニレンエーテル部分を示し、R1~R3は独立して水素原子,アルキル基,アルケニル基またはアルキニル基を示し、nは1~6の整数を示し、qは1~4の整数を示す。]
によって表され、且つ数平均分子量が500~7000であるポリフェニレンエーテル樹脂、(B)架橋型硬化剤、(C)ホスフィン酸塩系難燃剤、及び(E)硬化触媒が配合されたことを特徴とするポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
【請求項2】
前記架橋型硬化剤がトリアルケニルイソシアヌレートである請求項1に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物を繊維質基材に含浸させて得られることを特徴とするプリプレグ。
【請求項4】
請求項3に記載のプリプレグに金属箔を積層して、加熱加圧成形して得られることを特徴とする金属張積層板。
【請求項5】
請求項4に記載された金属張積層板の表面の金属箔を部分的に除去することにより回路形成して得られたことを特徴とするプリント配線板。」
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の絶縁材料として好ましく用いられるポリフェニレンエーテル樹脂組成物、プリプレグ、金属張積層板、及びプリント配線板に関する。」
・「【0019】
本発明におけるポリフェニレンエーテル樹脂(A)は、下記一般式(I):
【0020】
【化2】
[図:0001383606000005.jpg]
【0021】
[式中、Xはアリール基を示し、(Y)mはポリフェニレンエーテル部分を示し、R1~R3は独立して水素原子,アルキル基,アルケニル基またはアルキニル基を示し、nは1~6の整数を示し、qは1~4の整数を示す。]によって表され、且つ数平均分子量が500~7000のポリフェニレンエーテル樹脂である。
【0022】
上記「アリール基」は芳香族炭化水素基を意味する。斯かる「アリール基」としては、例えば、フェニル基,ビフェニル基,インデニル基,ナフチル基を挙げることができ、好適にはフェニル基である。また、これらアリール基が酸素原子で結合されているジフェニルエーテル基等や、カルボニル基で結合されたベンゾフェノン基等、アルキレン基により結合された2,2-ジフェニルプロパン基等も含まれる。また、これらアリール基は、アルキル基(好適にはC1-C6アルキル基、特にメチル基),アルケニル基,アルキニル基やハロゲン原子など、一般的な置換基によって置換されていてもよい。但し、当該「アリール基」は、酸素原子を介してポリフェニレンエーテル部分に置換されているので、一般的置換基の数の限界は、ポリフェニレンエーテル部分の数に依存する。
【0023】
「ポリフェニレンエーテル部分」は、フェニルオキシ繰返し単位からなり、このフェニル基も、一般的な置換基によって置換されていてもよい。斯かる「ポリフェニレンエーテル部分」としては、例えば、下記一般式(II)で表されるものを挙げることができる。
【0024】
【化3】
[図:0001383606000006.jpg]
【0025】
[式中、R4~R7は独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアルケニルカルボニル基を示し、mは1~100の整数を表す。].
ここで、当該ポリフェニレンエーテル部分の側鎖にビニル基、2-プロピレン基(アリル基)、メタクリロイル基、アクリロイル基、2-プロピン基(プロパルギル基)などの不飽和炭化水素含有基が存在すれば、架橋型硬化剤の作用効果を一層有効に利用でき得る。
【0026】
ここでmは、上記ポリフェニレンエーテル(I)の数平均分子量が1000~7000の範囲内となる様に調整されている。
【0027】
「アルキル基」は飽和炭化水素基を意味し、好適にはC1-C10アルキル基、更に好適にはC1-C6アルキル基,更に好適にはC1-C4アルキル基,特に好適にはC1-C2アルキル基である。斯かるアルキル基としては、例えば、メチル基,エチル基,プロピル基,イソプロピル基,ブチル基,イソブチル基,sec-ブチル基,tert-ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基を挙げることができる。
【0028】
「アルケニル基」は、構造中に少なくとも一つの炭素-炭素二重結合を有する不飽和炭化水素基を意味し、好適にはC2-C10アルケニル基、更に好適にはC2-C6アルケニル基,特に好適にはC2-C4アルケニル基である。斯かるアルケニル基としては、例えば、エチレン,1-プロピレン,2-プロピレン,イソプロピレン,ブチレン,イソブチレン,ペンチレン,ヘキシレンを挙げることができる。
【0029】
「アルキニル基」は、構造中に少なくとも一つの炭素-炭素三重結合を有する不飽和炭化水素基を意味し、好適にはC2-C10アルキニル基、更に好適にはC2-C6アルキニル基,特に好適にはC2-C4アルキニル基である。斯かるアルキニル基としては、例えば、エチン,1-プロピン,2-プロピン,イソプロピン,ブチン,イソブチン,ペンチン,ヘキシンを挙げることができる。
【0030】
「アルケニルカルボニル基」は、上記アルケニル基により置換されたカルボニル基をいい、例えばアクリロイル基,メタクリロイル基を挙げることができる。
【0031】
PPE(I)中、nの好適値は1~4の整数であり、更に好ましくは1または2であり、最適には1である。また、qとしては1~3の整数が好適であり、更に好ましくは1または2であり、最適には1である。尚、mの値は1~100の整数であるが、本発明ではPPE(I)の数平均分子量を少なくとも1000~7000にする必要があるので、目的とするPPE(I)の数平均分子量に応じて、mの値を調整する必要がある。つまり、mの値によってはPPE(I)の分子量は1000未満となったり7000を超えることがあるが、PPE樹脂組成物に含まれるPPE(I)全体の数平均分子量が1000~7000であればよく、この点で、mは固定値ではなくある一定の範囲内の変数である場合がある。
【0032】
PPE(I)中の下記部分構造:
【0033】
【化4】
[図:0001383606000007.jpg]
【0034】
において、n=1であり、R1~R3が水素原子であるp-エテニルベンジル基,またはm-エテニルベンジル基であることが架橋型硬化剤との相互作用が特に良好であり、架橋型硬化剤を多量に添加しなくても耐熱性が低減することなく、低誘電率化が可能となる点から好ましい。特に、末端にp-エテニルベンジル基のみを有するPPEは高融点、高軟化点であるのに対し、末端にp-エテニルベンジル基とm-エテニルベンジル基の両方を有するPPEは低融点、低軟化点となる。従って、p-エテニルベンジル基とm-エテニルベンジル基の割合を調整することによって、PPEの融点や軟化点を任意に変化させることも可能となる。
【0035】
ポリフェニレンエーテル樹脂(A)の数平均分子量は、1000~7000である。7000を超えると、成形時の流動性が低下して多層成形が困難になるからであり、また、1000未満であると、PPE樹脂の本来の優れた誘電特性と耐熱性が一定して発現しない可能性があるからである。斯かる優れた流動性,耐熱性および誘電特性を更に発揮させるには、数平均分子量を1200以上,5000以下にすることが好ましく、更に1500以上,4500以下が好ましい。」
「【0042】本発明における、ホスフィン酸塩系難燃剤(C)は、下記一般式(IV)または(V)【0043】[図:0001383606000008.jpg]続きを表示(全15行)【0044】(式中、R1およびR2は互いに同じであっても異っていてもよい、水素原子、炭素数1~16のアルキル基、炭素数1~16のエーテル結合を含むアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びシクロアルキル基から選ばれるものであり、R3は2価の有機基を示し、nは1~4の整数を示し、Mは1~4個のMg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、Kから選ばれる原子の陽イオンおよび/またはプロトン化窒素塩基を示す。)。で表されるものが好ましい。【0045】ホスフィン酸塩系難燃剤(C)の平均粒子径としては、0.5~10μmの範囲であることが基板の表面平滑性や絶縁性に優れる点から好ましい。なお、この平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定法により、液中に分散させて測定した値である。【0046】また、ホスフィン酸塩のリン含有割合としては5~40質量%であることが絶縁樹脂設計の点から好ましい。前記リン含有割合が少なすぎる場合には、充分な難燃性を付与するためには大量に配合する必要がある。この場合にはPPE樹脂の特性が充分に発揮されなくなる。また、前記リン含有割合が多すぎる場合には、反応性が阻害されたり、信頼性が低下することがある。【0047】ホスフィン酸塩系難燃剤(C)の配合量としては、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の有機成分の全量中にリン濃度が0.5~5質量%、さらには1~3質量%になるような割合で含有させることが好ましい。【0048】また、本発明の効果を損なわない限り、難燃剤としてホスフィン酸塩系難燃剤(C)とともに、その他のリン酸エステル系難燃剤等のリン系化合物を配合してもよい。このようなリン系化合物の具体例としては、例えば、ホスファゼン系難燃剤、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、リン酸エステル、フェノール化合物との縮合リン酸エステル、縮合リン酸エステル系難燃剤、モノリン酸エステル系難燃剤等が挙げられる。この場合においては、その他のリン系化合物はホスフィン酸塩系難燃剤(C)との合計量中60%以下であることが好ましい。」
4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物であり、数平均分子量(MW)550のエピクロンHP7200(大日本インキ化学工業(株)製)」は、本願発明の「数平均分子量が1000以下で、一分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有し、ハロゲン原子を含有しないエポキシ化合物」に、同じく「日本ジーイープラスチック(株)製のSA120(数平均分子量2500のPPE)」は「数平均分子量5000以下のポリフェニレンエーテル」に、同じく「2,2-ビス(4-シアナートフェニル)プロパン(ロンザジャパン社製のBandy)」は、「シアン酸エステル化合物」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「オクタン酸亜鉛(大日本インキ化学工業(株)製、亜鉛濃度18%)」は、引用文献3の【0029】に記載される「(D)有機金属塩」であり、「(D)有機金属塩」は、「エポキシ化合物(A)」(引用発明で特定するところの「ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物であり、数平均分子量(MW)550のエピクロンHP7200(大日本インキ化学工業(株)製)」)及び「ポリフェニレンエーテル(B)」(同じく「日本ジーイープラスチック(株)製のSA120(数平均分子量2500のPPE)」)と、硬化剤である「シアネートエステル化合物(C)」(同じく「2,2-ビス(4-シアナートフェニル)プロパン(ロンザジャパン社製のBandy)」)との反応を促進させる触媒であるから(引用文献3の【0029】)、「(D)有機金属塩」である引用発明の「オクタン酸亜鉛(大日本インキ化学工業(株)製、亜鉛濃度18%)」は、本願発明の「前記エポキシ化合物及び前記ポリフェニレンエーテルと硬化剤である前記シアン酸エステル化合物との反応を促進させる硬化触媒」に相当する。
そして、引用発明の「リン含有率13質量%のフォスファゼン系難燃剤(大塚化学(株)製のSPB-100)」は、本願発明の「リンを含有するリン系化合物」に、同じく「樹脂ワニス」は、「樹脂ワニスを有するポリフェニレンエーテル樹脂組成物」に、同じく「ガラスクロス(日東紡績(株)製の「WEA116E」)」は、「基材」にそれぞれ相当する。
そうすると、両者は、以下の点で一致しており、以下の点で相違する。
<一致点>
数平均分子量が1000以下で、一分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有し、ハロゲン原子を含有しないエポキシ化合物、数平均分子量が1000以上で5000以下のポリフェニレンエーテル、シアン酸エステル化合物、前記エポキシ化合物及び前記ポリフェニレンエーテルと硬化剤である前記シアン酸エステル化合物との反応を促進させる硬化触媒、及びリンを含有するリン系化合物を含有する樹脂ワニスを有するポリフェニレンエーテル樹脂組成物と、基材と、を含んでなるプリプレグ。
<相違点>
ポリフェニレンエーテルについて、本願発明は「一般式(1)
[図:0001383606000009.jpg]
によって表され、
前記一般式(1)において、Xはアリール基を示し、(Y)mはポリフェニレンエーテル部分を示し、R1、R2、R3はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を示し、mは1~100の整数を示し、nは1~6の整数を示し、qは1~4の整数を示す。」と特定するのに対し、引用発明は、「日本ジーイープラスチック(株)製のSA120」である点。
5 判断
上記相違点について検討する。
引用文献2は、プリント配線板の絶縁材料として、ホスファゼン系難燃剤とともに用いられるポリフェニレンエーテル樹脂組成物及びそれを用いたプリプレグに関するものであって、ポリフェニレンエーテル樹脂として、一般式(I):
[図:0001383606000010.jpg]
[式中、Xはアリール基を示し、(Y)mはポリフェニレンエーテル部分を示し、R1~R3は独立して水素原子,アルキル基,アルケニル基またはアルキニル基を示し、nは1~6の整数を示し、qは1~4の整数を示す。]
によって表され、且つ数平均分子量が500~7000であるポリフェニレンエーテル樹脂を用いることで、優れた流動性、耐熱性および誘電特性が発揮されることが記載されている。
ここで、引用文献2の「ホスファゼン系難燃剤」は、引用発明の「フォスファゼン系難燃剤」と同義であるところ、引用発明と引用文献2は、ともにホスファゼン系難燃剤を含むプリプレグという同じ技術分野に属するものであり、さらに、引用発明に特定される「日本ジーイープラスチック(株)製のSA120」は、流動性及び耐熱性が求められるポリフェニレンエーテルだから(引用文献3の【0021】、【0051】参照。)、このような引用発明に特定される「日本ジーイープラスチック(株)製のSA120」に代えて、流動性及び耐熱性に優れる引用文献2に記載のポリフェニレンエーテルを採用し、相違点に係る本願発明の特定事項を満たすものとすることに、特段の困難性はなく、当業者が容易に想到し得たことである。
また、その効果を検討しても、引用文献3及び引用文献2はともに、ハロゲン系材料を用いないという点で、本願発明と同じ効果を有するものであり、また、本願明細書全体を通じてみても、引用文献3及び2に比して、本願発明が、当業者が予測し得ない格別顕著な効果を有するものであるともいえない。
6 請求人の主張について
請求人は、令和2年10月16日に提出した審判請求書において、原査定に対する意見として、「引用文献3には、ポリフェニレンエーテルとして上記相違点にかかる特徴を備えたポリフェニレンエーテルを用いることについての記載はなく、その示唆もありません。したがって、引用発明3(当審注:審決における「引用発明」)に接した当業者が、引用発明3のポリフェニレンエーテルを上記相違点に係る構成を備えたポリフェニレンエーテルに変更することについての動機付けはない」旨主張する。
しかし、引用発明のポリフェニレンエーテルとして引用文献2に記載されるポリフェニレンエーテルを採用する動機付けがあることは、上記5において述べたとおりであるから、請求人のこの点の主張は採用できない。
さらに、請求人は、上記審判請求書に添付して提出した実験成績証明書を参照し、「本願発明1のエポキシ化合物とともに用いるポリフェニレンエーテル材料としてポリフェニレンエーテル(1)又はポリフェニレンエーテル(2)が用いられることで、耐薬品性を改善することができるという、引用文献1~3に記載された発明によって奏される効果とは異質な効果を奏します。このような効果は、引用文献1~3には一切記載はなく、引用文献1~3に基づいて出願当時の技術水準から当業者が予測できたものではありません。」と主張する。
しかしながら、「ポリフェニレンエーテル(1)又はポリフェニレンエーテル(2)が用いられることで、耐薬品性を改善する」との効果は、本願明細書全体を通じてみても、何ら記載も示唆もされるものではない。ましてや、上記実験成績証明書に示された実施例5ないし7、比較例3は、本願明細書において記載された実施例・比較例とは別に、新たに実験したものであり、新たな「耐薬品性」の改善効果は、本願出願時において認識されていたものということもできないし、「耐薬品性」の改善との効果が、当該技術分野において自明のことであったともいうこともできない。
よって、請求人のこの点の主張も採用できない。
7 まとめ
以上のとおりであるから、本願発明、すなわち、請求項1に係る発明は、引用発明、すなわち、引用文献3に記載された発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
上記第4において検討したとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-014538