2020-013338
樹脂フィルム
- 審判番号
- 2020-013338
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-009809外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年09月24日
- 審決日
- 2023年07月06日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (C08L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 13項目
第1 手続の経緯
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本願は、2010年(平成22年)10月29日に出願された特願2010-244731号の一部を、2015年(平成27年)9月8日に新たな出願とした特願2015-176303号の一部を、2018年(平成30年)1月24日に新たな出願としたもの(特願2018-9809号)である。
そして、本願は、平成30年1月25日に上申書が提出され、平成31年1月15日付けで拒絶理由が通知され、同年3月14日に意見書及び手続補正書が提出され、令和1年8月27日付けで拒絶理由が通知され、同年12月5日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和2年6月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月24日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、令和3年4月6日に上申書が提出され、令和4年11月30日付けで拒絶理由が通知され、令和5年1月23日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
請求項1~9に係る発明は、令和5年1月23日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1及び2に係る発明は、以下のとおりのものである(以下、請求項1及び2に係る発明を、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。また、請求項1~9に係る発明を、まとめて「本願発明」ということがある。なお、下線部は上記手続補正書により補正された箇所を表し、当審が付した。)。
「【請求項1】樹脂組成物からなる包装製品用樹脂フィルムであって、前記樹脂組成物が、ジオール単位がさとうきび由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステルと、ジオール単位が化石燃料由来のジオールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のリサイクルポリエステルと、を含んでなり、前記樹脂組成物が、前記樹脂組成物全体に対して、前記バイオマス由来のポリエステルを50~90質量%、および、前記化石燃料由来のリサイクルポリエステルを5~45質量%含み、前記包装製品用樹脂フィルムが2軸延伸フィルムであり、前記包装製品用樹脂フィルムの破断伸度が、MD方向で50~350%、TD方向で50~300%であり、前記包装製品用樹脂フィルム中の全炭素に対して、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が、10~14%である、包装製品用樹脂フィルム。」
「【請求項2】樹脂組成物からなる包装製品用樹脂フィルムであって、前記樹脂組成物が、ジオール単位がさとうきび由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステルと、ジオール単位が化石燃料由来のジオールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のリサイクルポリエステルと、を含んでなり、前記樹脂組成物が、前記樹脂組成物全体に対して、前記バイオマス由来のポリエステルを50~90質量%、および、前記化石燃料由来のリサイクルポリエステルを5~45質量%含み、前記包装製品用樹脂フィルムが2軸延伸フィルムであり、前記包装製品用樹脂フィルムの破断強度が、MD方向で5~40kgf/mm2、TD方向で5~35kgf/mm2であり、前記包装製品用樹脂フィルム中の全炭素に対して、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が、10~14%である、包装製品用樹脂フィルム。」
第3 当審が通知した拒絶理由の概要
当審が令和4年11月30日付けで通知した拒絶理由は、以下のとおりである。
(進歩性)この出願の請求項1~10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1又は引用文献6に記載された発明、並びに引用文献1~5及び参考文献1に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(以下、引用文献1を主引用文献とする理由を「理由1」、引用文献6を主引用文献とする理由を「理由2」という。)
引用文献等
1.特開2007-197654号公報
2.特開2006-16617号公報(周知技術を示す文献)
3.特公昭63-46089号公報(周知技術を示す文献)
4.宮坂啓象、「プラスチック事典」、株式会社朝倉書店、1997年9月20日発行、p.860-873(周知技術を示す文献)
5.特開2009-91694号公報(周知技術を示す文献)
6.特開平9-324057号公報
参考文献1:松本喜代一、高嶋英雄、竹谷恪、今村力造、繊維学会誌、「ポリエチレンテレフタレート二軸延伸フィルムの機械的性質のバランス性」、1970年、26巻、9号、p.417-425、インターネット <URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/fiber1944/26/9/26_9_417/_pdf>
第4 当審の判断
以下に述べるように、本願発明1は、令和4年11月30日付け拒絶理由通知書に記載した理由1により、引用文献1に記載された発明、引用文献1~5並びに参考文献1及び2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願発明2は、上記拒絶理由通知書に記載した理由2により、引用文献6に記載された発明、引用文献1~5並びに参考文献1及び2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1 本願発明について
(1)本願明細書に記載された事項
本願明細書には、以下の記載がある(下線は、当審が付与した。)。
ア 「【0005】また、トウモロコシやサトウキビ等の植物から得られるデンプンや糖類を微生物で発酵させて得られたバイオマスエタノールが実用化されており、このバイオマスエタノールからエチレンを経由して工業的にエチレングリコールを製造することにも成功している。・・・【0007】本発明者らは、ポリエステルの原料であるエチレングリコールに着目し、従来の化石燃料から得られるエチレングリコールに代えて、植物由来のエチレングリコールをその原料としたポリエステルは、従来の化石燃料から得られるエチレングリコールを用いて製造されたポリエステルと、機械的特性等の物性面で遜色ないものが得られるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。【0008】したがって、本発明の目的は、バイオマスエチレングリコールを用いたカーボンニュートラルなポリエステルを含む樹脂組成物を提供することであって、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリエステルと機械的特性等の物性面で遜色ないポリエステルが得られるバイオマス由来の樹脂組成物を提供することである。」
イ 「【0046】ポリエチレンテレフタレートを例にとると、ポリエチレンテレフタレートは、2炭素原子を含むエチレングリコールと8炭素原子を含むテレフタル酸とがモル比1:1で重合したものであるため、エチレングリコールとしてバイオマス由来のもののみを使用した場合、ポリエステル中のバイオマス由来の炭素の含有量Pbioは20%となる。本発明においては、樹脂組成物中の全炭素に対して、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が、10~19%であることが好ましい。樹脂組成物中のバイオマス由来の炭素含有量が10%未満であると、カーボンオフセット材料としての効果が乏しくなる。一方、上記したように、樹脂組成物中のバイオマス由来の炭素含有量は20%に近いほど好ましいが、フィルムの製造工程上の問題や物性面から、樹脂中には上記したようなリサイクルポリエステルや添加剤を含む方が好ましいため、実際の上限は18%となる。」
ウ 「【0051】上記のようにして得られる樹脂フィルムは、延伸フィルムの厚さは、その用途に応じて任意であるが、通常、5~500μm程度である。このような樹脂フィルムの破断強度は、MD方向で5~40kg/mm2、TD方向で5~35kg/mm2であり、また、破断伸度は、MD方向で50~350%、TD方向で50~300%である。また、150℃の温度環境下に30分放置した時の収縮率は、0.1~5%である。このように、本発明による樹脂組成物からなるフィルムは、従来の化石燃料由来の材料のみから製造されるポリエステルフィルムの物性と同等である。」
エ 「【実施例】【0054】以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。【0055】続きを表示(全35行)実施例1<バイオマス由来のポリエステルの合成>テレフタル酸83質量部とバイオマスエチレングリコール(インディアグライコール社製)62質量部とをスラリーとして反応槽に供給し、常法の直重方法で、エステル化反応を240℃で5時間行った。その後、トリメチルフォスフェート(アルドリッチ社製)を0.013質量部添加(酸成分に対して15mmol%)してから高温真空条件下の重合反応に移行させた。まず、40分間で、真空度を4000Pa、重合温度280℃にまで昇温し、ついでその重合温度280℃のまま、真空度を200Paまで下げて溶融重合反応を行った。反応時間は3時間であった。合成したポリマーは、ストランドの形で流水中に吐出し、ペレタイザによってペレット化した。そのペレットを160℃において5時間乾燥後、窒素雰囲気下50Paの真空下205℃で固相重合して固有粘度0.8dl/gのポリマーを得た。なお、固有粘度はフェノール/テトラクロロエタン(成分比:3/2)溶媒を用い、35℃で測定した溶融粘度から算出した。得られたポリマーの示差熱分析(装置:島津製作所DSC-60、測定条件:ヘリウムガス中、6℃/分で昇温)を行ったところ、ガラス転移温度は69℃を示し、化石燃料由来の原料から得られる既知のポリエチレンテレフタレートと同等であった。また、得られたバイオマス由来のポリエチレンテレフタレートの放射製炭素測定を行ったところ、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量は16%であった。【0056】<フィルムの作製>上記のようにして得られたポリエチレンテレフタレートペレット90質量部と、滑剤として平均粒子径0.9μmの多孔性シリカを200ppm含む化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートマスターバッチ10質量部とを乾燥した後押出機に供給し、285℃で溶融し、Tダイよりシート状に押し出し、冷却ロールにて冷却固化させて未延伸シートを得た。次いでこの未延伸シートを、低速側駆動ロールの速度を6.5m/min、高速側駆動ロールの速度を22m/minとして、縦方向に3.5倍の倍率で延伸し、さらに、テンターにて横方向に3.5倍の倍率で延伸して厚みが12.02μmである二軸延伸ポリエステルフィルム1を得た。【0057】実施例2実施例1で得られたポリエチレンテレフタレートを60質量部と、リサイクルPET(フィルム製膜時の耳ロス等の製造工程内ロス部分をリペレットしたもの)30質量部と、上記で使用したポリエチレンテレフタレートマスターバッチ10質量部とを乾燥した後押出機に供給し、285℃で溶融し、Tダイよりシート状に押し出し、冷却ロールにて冷却固化させて未延伸シートを得た。次いでこの未延伸シートを、低速側駆動ロールの速度を6.5m/min、高速側駆動ロールの速度を22m/minとして、縦方向に3.5倍の倍率で延伸し、さらに、テンターにて横方向に3.5倍の倍率で延伸して厚みが12.13μmである二軸延伸ポリエステルフィルム2を得た。【0058】比較例1従来の化石燃料由来の原料から製造されているポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.83dl/g)60質量部と、リサイクルPET(フィルム製膜時の耳ロス等の製造工程内ロス部分をリペレットしたもの)30質量部と、上記で使用したポリエチレンテレフタレートマスターバッチ10質量部とを乾燥した後押出機に供給し、285℃で溶融し、Tダイよりシート状に押し出し、冷却ロールにて冷却固化させて未延伸シートを得た。次いでこの未延伸シートを、低速側駆動ロールの速度を6.5m/min、高速側駆動ロールの速度を22m/minとして、縦方向に3.5倍の倍率で延伸し、さらに、テンターにて横方向に3.5倍の倍率で延伸して厚みが12.06μmである二軸延伸ポリエステルフィルム3を得た。【0059】<放射製炭素測定>得られたフィルム1の放射製炭素測定を行ったところ、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量は14%であった。また、フィルム2および3についても同様に放射製炭素測定を行ったところ、バイオマス由来の炭素の含有量はそれぞれ、10%および0%であった。【0060】<フィルムの評価>得られた各フィルムのMD方向(巻き取り方向)とTD方向(MD方向と90度の角度のなす方向)のそれぞれから、幅15mm、長さ200mmに切り出して試験片とし、引張試験機(テンシロンRTC-125A、オリエンテック社製)を用いて、温度23℃、湿度50RH%の環境下において、試験片の強伸度測定を行った。また、MD方向およびTD方向のF5値(フィルムが5%伸張したときの引張強度)を測定した。MD方向およびTD方向それぞれの引張強度(kg/mm2)および破断伸度(%)、ならびにF5値(kg/mm2)は、表1に示される通りであった。【0061】また、MD方向とTD方向のそれぞれから切り出した試験片を150℃の加熱オーブンに入れ、JIS/C-2318に準拠した150℃で30分熱処理したときの熱収縮率を測定した。結果は、表1に示される通りであった。【0062】また、上記で得られた各フィルムを、幅50mm、長さ50mmに切り出して試験片とし、この試験片を用いてヘイズメーター(NDH4000、日本電色工業社製)により、23℃、湿度50RH%の環境下でのフィルムのヘイズ測定を行った。測定は、JIS K7136:2000に準拠して行った。測定結果は、下記の表1に示される通りであった。【0063】また、各フィルムの表面にコロナ処理を行ったものと、行わないもののそれぞれについて、幅50mm、長さ50mmに切り出した試験片に、ぬれ張力試験用混合液(和光純薬工業社製)を使用して、23℃、湿度50RH%の環境下での、ぬれ張力を測定した。測定はJIS K6768:1999に準拠して行った。測定結果は、下記の表1に示される通りであった。【0064】また、上記で得られた表面にコロナ処理を施した試験片どうしの摩擦係数、およびコロナ処理を行わなかった試験片どうしの摩擦係数を、摩擦係数測定器(AFT-200、大栄科学精器製作所製)を用いて、23℃、湿度50RH%の環境下で測定した。測定はJIS K7125:1999に準拠して行った。測定結果は、下記の表1に示される通りであった。【0065】【表1】[図:0001400862000001.jpg]【0066】表1からも明らかなように、バイオマス由来のエチレングリコールを用いて合成されたポリエチレンテレフタレートフィルム(実施例1及び2)は、既存のポリエステルフィルム(比較例1)と比較しても遜色ない物性を有することがわかる。」
(2)本願発明の技術的意義
本願明細書の上記ア及びウの記載によると、本願発明は、さとうきび等の植物から得られるデンプンや糖類から、バイオマスエタノール及びエチレンを経由して製造されるバイオマス由来のエチレングリコールを原料とするポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルは、化石燃料を原料とするポリエステルと比べて、機械的特性で遜色ないものが得られるとの知見を得たことに基づくものであり、上記エに示されるとおり、本願発明の二軸延伸ポリエステルフィルム(リサイクルPETを使用した実施例2)は、化石燃料を原料とする二軸延伸ポリエステルフィルム(比較例1)と遜色ない物性を有することを具体的に確認している。
なお、本願発明は「ジオール単位がさとうきび由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステル」を有するものであるが、本願明細書には、さとうきび由来のエチレングリコール以外のバイオマス由来のジオール単位であるバイオマス由来のポリエステルを使用した具体例は記載されておらず、本願発明の「ジオール単位がさとうきび由来のエチレングリコール」である「バイオマス由来のポリエステル」を使用した場合と、それ以外のバイオマス由来のポリエステルを使用した場合との物性面での比較は行われていない。
2 本願発明1に対する理由1(引用文献1を主引用文献とする進歩性)について
(1)引用文献1に記載された事項及び引用文献1に記載された発明
ア 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】主たる繰り返し単位がジカルボン酸単位及びジオール単位であるポリエステルにおいて、該ポリエステルの原料であるジカルボン酸及びジオールの少なくとも一方がバイオマス資源から得られたものであって、該ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)が0.5以上であることを特徴とするバイオマス資源由来ポリエステル。【請求項2】ポリエステルの分子内に共有結合されている官能基に含まれる窒素原子を除いたポリエステル中の窒素原子含有量が、該ポリエステルに対して質量比で0.01ppm以上1000ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル。続きを表示(全11行)【請求項3】バイオマス資源が植物資源であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル。・・・【請求項9】請求項1~8いずれか1項に記載のポリエステル99.9~0.1重量%に対して熱可塑性樹脂、生分解性樹脂、天然樹脂、または多糖類を0.1~99.9重量%配合したことを特徴とするバイオマス資源由来ポリエステル樹脂組成物。【請求項10】請求項1~9に記載のいずれか1項に記載のポリエステルを成形してなる成形体。」
(イ)「【背景技術】【0002】従来ポリエステルは、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、全芳香族ポリエステル、半芳香族ポリエステル、ポリ炭酸エステルのいずれのポリエステルも石油由来の原料を重縮合することにより製造されている。しかし、近年環境問題が重視されてきており、化石燃料枯渇問題、大気中の二酸化炭素増加という地球規模での環境負荷の問題に対する対策が必要となっている。これに対しポリエステルの原料として植物から誘導された原料を用いることにより、これらの原料が毎年再生可能な原料であるため原料供給が化石燃料枯渇とは無関係になり、植物の育成により二酸化炭素が吸収されるため二酸化炭素削減に大きく貢献することができる。・・・【0004】ジオールの1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、エチレングリコールなどは直接植物由来の原料から発酵法により得る方法と、相当するジカルボン酸を発酵法により製造した後、これを還元触媒により水添して得る方法がある(非特許文献3)。【特許文献1】特開2005-27533号公報【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society No.116 (1994) 399-400頁【非特許文献2 】Appl.Microbiol Biotechnol No.51 (1999) 545-552頁【非特許文献3】Biotechnology and Bioengineering Symp. No.17 (1986) 355-363頁」
(ウ)「【発明が解決しようとする課題】【0005】従来の技術で製造されるバイオマス資源由来のジカルボン酸やジオールを用いてポリエステルの製造を行おうとすると、通常、原料中に不純物として含有されるアンモニア塩や金属カチオンなどにより重合反応が阻害されて十分な分子量のポリエステルが得られなかったり、得られたポリエステルが着色したりするという問題が生じていることが、本発明者の研究により明らかとなった。【0006】そこで、本発明の目的は、発酵法による原料を用いて高分子量で着色の少ない実用可能なバイオマス資源由来のポリエステルおよびその製造する方法を提供することにある。さらに本発明の特定の窒素原子含有量を有するバイオマス資源から製造されるポリエステルは生分解性に優れるという事実を究明したものである。」
(エ)「【0012】
本発明は環境問題、化石資源の問題等の解決に貢献し、実用的な物性を有する樹脂を提供することが出来、産業上の利用価値は極めて大である。また、バイオマス資源から製造される本発明のポリエステルは、驚くべきことに同一構造の石油由来の原料から製造したポリエステルとくらべ生分解性が良好であるため、特定の窒素原子含有量とすることにより、生分解性に優れ、着色が少なく、機械的物性に優れた様々な用途展開可能な高分子量ポリエステルを提供することができる。
また、現在の大気圏の地球環境下で植生した天然材料から発酵等の手法により入手した、いわゆるジオールまたはジカルボン酸をポリエステルのモノマーとして使用するために、原料が非常に安価に入手できる。植物原料生産が各地に分散して多様化できるので、原料供給が非常に安定していること、および大気圏の地球環境下において為されるために、二酸化炭素の吸収および放出の物質収支の較差が比較的均衡している。しかも環境に非常に優しい、安全なポリエステルと認識できる。このような本発明のポリエステルは、材料の物性、構造および機能において評価できるばかりでなく、化石燃料由来のポリエステルには全く期待できない、リサイクルを含めた循環型社会の実現性を潜在的に保有する利点を有する。これは、従来型の化石燃料依存型の指向とは異なる、あらたな視点のポリエステル製造プロセスを提供するものであるから、新たな第2ステージのプラスチックという、全く新たな視点から、プラスチック材料の利用および発展に著しく寄与するものである。本発明のポリエステルは、土壌投棄をやめて仮に焼却処分しても、有害物、悪臭を発生することが少ない。
・・・
【0014】
・ジカルボン酸
ジカルボン酸単位を構成するジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸或いはこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも脂肪族ジカルボン酸を主成分とするものが好ましい。本発明でいう主成分とは、全ジカルボン酸単位に対して、通常50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特に好ましくは90%モル以上を示す。
【0015】
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸及びイソフタル酸等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、具体的には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等が挙げられる。この内、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸が好ましく、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、ジメチルテレフタレートが好ましい。本件明細書に開示の芳香族ジカルボン酸を使用した場合にも、例えばジメチルテレフタレートと1,4-ブタンジオールのポリエステルのように任意の芳香族ジカルボン酸を使用することにより所望の芳香族ポリエステルが製造できる。
・・・
【0017】
これらのジカルボン酸は単独でも2種以上混合して使用することもできる。
本発明において、これらのジカルボン酸は、バイオマス資源から誘導されるものが好ましい。
本発明でいうバイオマス資源とは、植物の光合成作用で太陽の光エネルギーがデンプンやセルロースなどの形に変換されて蓄えられたもの、植物体を食べて成育する動物の体や、植物体や動物体を加工してできる製品等が含まれる。この中でも、より好ましいバイオマス資源としては、例えば、木材、稲わら、籾殻、米ぬか、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、おから、コーンコブ、タピオカカス、バガス、植物油カス、芋、そば、大豆、油脂、古紙、製紙残渣、水産物残渣、家畜排泄物、下水汚泥、食品廃棄物等が挙げられる。この中でも木材、稲わら、籾殻、米ぬか、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、おから、コーンコブ、タピオカカス、バガス、植物油カス、芋、そば、大豆、油脂、古紙、製紙残渣等の植物資源が好ましく、より好ましくは、木材、稲わら、籾殻、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、芋、油脂、古紙、製紙残渣であり、最も好ましくはとうもろこし、さとうきび、キャッサバ、サゴヤシである。これらのバイオマス資源は、一般に、窒素原子やNa、K、Mg、Ca等の多くのアルカリ金属、アルカリ土類金属を含有する。
(オ)「【0036】・ジオール本発明においてジオール単位とは、芳香族ジオール及び/又は脂肪族ジオールから誘導されるものであり、公知の化合物を用いることができるが、脂肪族ジオールを使用するのが好ましい。脂肪族ジオールとは、2個のOH基を有する脂肪族及び脂環式化合物であれば特に制限はされないが、炭素数の下限値が2以上であり、上限値が通常10以下、好ましくは6以下の脂肪族ジオールが挙げられる。これらの中では、より融点の高いポリマーが得られる理由から偶数のジオール又はそれらの混合物が好ましい。続きを表示(全11行)【0037】脂肪族ジオールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、1,4-ブタンジオール及び1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上の混合物として使用してもよい。この内、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-プロピレングリコール及び1,4-シクロヘキサンジメタノールが好ましく、その中でも、エチレングリコール及び1,4-ブタンジオールが好ましく、更には、1,4-ブタンジオ-ルが特に好ましい。本発明においては、1,4-ブタンジオールを主成分として使用する場合のその含有量は、特には限定されないが、全ジオール単位に対して、通常50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。・・・【0040】本発明において、これらのジオールは、バイオマス資源から誘導されたものを用いてもよい。具体的には、ジオール化合物はグルコース等の炭素源から発酵法により直接製造してもよいし、発酵法により得られたジカルボン酸、ジカルボン酸無水物、環状エーテルを化学反応によりジオール化合物に変換しても良い。例えば、発酵法により得られたコハク酸、コハク酸無水物、コハク酸エステル、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸エステル、テトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン等から化学合成により1,4-ブタンジオールを製造しても良いし、発酵法により得られた1,3-ブタジエンから1,4-ブタンジオールを製造してもよい。この中でもコハク酸を還元触媒により水添して1,4-ブタンジオールを得る方法が効率的で好ましい。」
(カ)「【0114】さらに重要なことは、本発明のポリエステルを嗜好品、飲料のような食品のボトル、容器、食品包装材などに使用した場合に、窒素原子を多量に含むポリエステルは、味覚、不快感、毒性などの影響に対する信頼も考慮していなければならない。グリーンプラとしての信頼性を確保することは、環境への影響ばかりでなく、人体、動植物への食品としての影響も高度に配慮したものでなければならない。勿論窒素原子を含む化合物は、微量では、人体への毒性として作用するようなものではないが、味覚、悪臭、不快感、といような感覚に影響することも懸念されるので、消費者に対する信頼を最大限に配慮しなければならない。本発明のポリエステルは、材料学的な挙動の解析.ばかりでなく、その製造から、成形、流通および成形品の安全、生分解、回収、焼却というようなあらゆる場合を想定して、消費者にその信頼性を担保するために工夫された材料である。そのような諸事情を考慮すれば、ポリエステルの、重合、成形、成形品の使用、生分解、および焼却などのそのような総合的な事情を勘案すれば、窒素原子含有量の許容できる最高は1000ppm程度といえる。」
(キ)「【0118】上述の方法で得られたポリエステルは、従来公知の各種の樹脂とブレンド(混練)することにより、ポリエステル組成物が得られる。このような樹脂としては、従来公知の各種の汎用の熱可塑性樹脂、生分解性樹脂、天然樹脂を用いることができ、好ましくは生分解性高分子や汎用の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらを単独で用いても、2種類以上ブレンドして用いてもよい。各種樹脂はバイオマス資源から得られる樹脂であってもよい。本発明のポリエステルは公知の各種の樹脂とブレンド(混練)により、任意の広範囲の特性を保有するポリエステル組成物とすることができる。例えば、ブレンド比によりその物性値は大きく変動するため特には限定されないが、後述するポリブチレンサクシネートとポリ乳酸とをブレンドさせた系では、引張強度30~60Mpa、極限伸び3~400%、引張弾性率500~3000Mpa、引張降伏点強度30~50Mpa、曲げ強度30~100Mpa、曲げ弾性率600~4000Mpa、衝撃試験強度5~20kJ/m2程度というような汎用のポリマーが有する特性を保有できる。同様に、軟質系の芳香族系ポリエステルとのブレンド系では、引張強度30~70Mpa、極限伸び400~800%、引張降伏点強度10~30Mpaというような汎用のポリマーが有する特性を保有できる。更には、ナイロン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ABS、PET、ポリスチレン等の汎用樹脂との組み合わせにより密度が1~1.4g/cm3、融点は150~270℃、引張強度30~80Mpa、極限伸び100~600%、ガラス転移点-85~150℃というような汎用のポリマーが有する特性を保有できる。これらの特性は、使用目的に応じて、ポリエステル原料や各種樹脂の種類、ブレンド量比や成形条件等を変えることにより任意に調整することができる。【0119】本発明のバイオマス由来のポリエステルへ配合する汎用の熱可塑性樹脂としては、後述の石油由来のポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドの汎用の熱可塑性樹脂を任意に選択できる。この場合には、バイオマス由来のポリエステルとの相溶性を考慮する必要がある。さらに、本発明のバイオマス由来のポリエステルの性質を適正に維持するためには、配合量も重要になる。通常は、バイオマス由来のポリエステルが99.9~20重量%であり、汎用の可塑性樹脂が0.1~80重量%程度のブレンドが可能である。しかし、バイオマス由来のポリエステルの生分解性の特性などを維持することを目的とする場合には、汎用の熱可塑性樹脂のブレンド量を50~1重量%、目的にもよるが、好ましくは30~3重量%程度とすると生分解性特性を維持しながら所定の物性が得られる。」
(ク)「【0134】本発明に係るポリエステルおよびその組成物は、汎用プラスチックに適用される各種成形法に供することが出来る。例えば、圧縮成形(圧縮成形、積層成形、スタンパブル成形)、射出成形、押し出し成形や共押し出し成形(インフレ法やTダイ法によるフィルム成形、ラミネート成形、シート成形、パイプ成形、電線/ケーブル成形、異形材の成形)、中空成形(各種ブロー成形)、カレンダー成形、発泡成形(溶融発泡成形、固相発泡成形)、固体成形(一軸延伸成形、二軸延伸成形、ロール圧延成形、延伸配向不織布成形、熱成形[真空成形、圧空成形]、塑性加工)、粉末成形(回転成形)、各種不織布成形(乾式法、接着法、絡合法、スパンボンド法、等)等が挙げられる。【0135】また、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、各種合目的的二次加工を施すことも可能である。二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング、等)等が挙げられる。このような成形法により、単層フィルム、多層フィルム、延伸フィルム、収縮フィルム、ラミネートフィルム、単層シート、多層シート、延伸シート、パイプ、電線/ケーブル、モノフィラメント、マルチフィラメント、各種不織布、フラットヤーン、ステープル、捲縮繊維、延伸テープやバンド、筋付きテープ、スプリットヤーン、複合繊維、ブローボトル、発泡体などの各種成形品が得られる。また得られる成形品は、ショッピングバッグ、ゴミ袋、農業用フィルム等の各種フィルム、化粧品容器、洗剤容器、食品容器、漂白剤容器等の各種容器類、釣り糸、漁網、ロープ、結束材、手術糸、衛生用カバーストック材、保冷箱、緩衝材、医療材料、電気機器材料、家電筐体、自動車材料などの用途への使用が期待される。」
(ケ)「【0220】<フィルム成形>表6に示すサンプルを用いてインフレ成形を行った。成形温度160℃、ブロー比2.5、フィルムの厚みは20μmとした。物性評価結果も併せて表6に示す。評価はいずれも23℃、50%RH環境下で実施した。【0221】【表6】[図:0001400862000002.jpg]」
イ 引用文献1に記載された発明
引用文献1には、請求項1、請求項9及び請求項10の記載からみて、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
[引用発明1]
「主たる繰り返し単位がジカルボン酸単位及びジオール単位であるポリエステルにおいて、該ポリエステルの原料であるジカルボン酸及びジオールの少なくとも一方がバイオマス資源から得られたものであって、該ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)が0.5以上であるバイオマス資源由来ポリエステル99.9~0.1重量%に対して熱可塑性樹脂、生分解性樹脂、天然樹脂、または多糖類を0.1~99.9重量%配合したバイオマス資源由来ポリエステル樹脂組成物を成形してなる成形体。」
(当審注:請求項10には、「請求項1~9のいずれか1項に記載のポリエステルを成形してなる成形体」と記載されているが、請求項9は「ポリエステル樹脂組成物」であるから、このように認定した。)
(2)引用文献2~5及び参考文献1~2に記載された事項
ア 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、次の事項が記載されている。
(ア)「【特許請求の範囲】【請求項1】少なくとも1種の結晶性熱可塑性ポリエステルを主成分とし、当該ポリエステルの重量を基準として500ppm以上の少なくとも1種の粒子を含有する二軸延伸フィルムの製造方法であって、重縮合工程によって分子量が増加させられた上記ポリエステルの再生原料をフィルムの重量に対して20重量%以上使用することを特徴とする二軸延伸フィルムの製造方法。」
(イ)「【背景技術】【0002】ポリエステル等の結晶性熱可塑性樹脂を主成分とする二軸延伸フィルムは公知である。これらの二軸延伸フィルムの製造において、通常、フィルム製造工程などで生じるフィルム端材を再生原料として種々の割合で使用する。例えば、フィルムの厚さが4μm未満の場合や、300μmを超える場合は、製造安定性に欠けるために、上記の再生原料の添加には限度がある。フィルムの厚さが5~300μmの場合、上記の再生原料の添加量は、使用する樹脂の総量に対して、通常20~40%である。【0003】フィルムの厚さが薄い場合および厚い場合は、上記の再生原料の添加量の割合が低いため、フィルム端材が余剰となり、原料に対するフィルムの生産量が低くなり、フィルムの製造がコスト高となる。【0004】溶融重縮合法により、使用済ポリエステルの分子量を増加させ、種々の分子量および構成を有するポリエステルに再生する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、二軸延伸フィルムのような特定化された高次構造を有するフィルムの製造において、この方法を適用することは困難であると言われている。【0005】また、回収ボトルを再生原料として使用する方法も知られている(例えば特許文献2参照)。このような回収ボトルからの再生原料を使用する場合、原料の由来が不明なために医薬などへの応用は出来ず、白色フィルム等への応用に限られる。さらに、このような回収ボトルからの再生原料を使用する場合、国によっては、食品や飲料に対して使用するフィルムとして適応できない。さらに、PETボトルなどの再生原料やチップは、通常、フィルムの機械的特性を低下させるイソフタル酸などの添加剤を含有している。したがって、このような再生原料の使用は、通常50重量%が限界である。」
イ 引用文献3に記載された事項
引用文献3には、次の事項が記載されている。
(ア)「特許請求の範囲1 (a) (i) 重合流の初めにおいて低粘度、低分子量のポリエステル予備重合体をこれに導入し、(ii) 重合流中の条件を高温減圧下に保ち、(iii) 重合流から水及び他の縮重合副生物を除去し重合流の端において高粘度、高分子量の新しいポリエステルをつくる、続きを表示(全14行)ことから成る縮重合反応により、閉じた流動している定常状態重合流中においてポリエステルを連続的に重合させ、(b) 重合流の端においてスクラツプのポリエステルを新しいポリエステルに加えてポリエステル材料の配合物をつくり、(c) 重合流からポリエステル材料配合物を取出し、(d) ポリエステル材料の配合物をダイス型に押込む工程から成ることを特徴とするポリエステル材料成形品の製造法。・・・5 (e) フイルムのウエツブからスクラツプのポリエステルを切取り、(f) 重合流の端にスクラツプのポリエステルを移動させて戻す工程から成る成形品がポリエステル・フイルム・ウエツブである特許請求の範囲第1項記載の方法。6 スクラツプのポリエステルを乾燥し工程(b)の前に水分含量を0.05重量%にする特許請求の範囲第1又は5項記載の方法。7 ポリエステル材料がポリエチレンテレフタレートである特許請求の範囲第1項記載の方法。」
(イ)「高分子量のポリエステルから成形品をつくる時には、大量のスクラツプが生じることは良く知られており、これらのスクラツプは何らかの方法で処分しなければならない。経済的な理由のために、スクラツプのポリエステル材料を処分する最も満足すべき方法はこの屑又はその成分をポリエステル製造工程流中に戻して再使用する方法である。」(2頁3欄24-31行)
(ウ)「本発明の利点はスクラツプのポリエステルを循還する時にはいつも実現される。即ち本発明の実施においてスクラツプの使用量に下限はない。本発明方法はポリエステル材料配合物の約20~50重量%がスクラツプであるようなスクラツプ循還速度で通常操作される。しかし重合装置を修膳しなければならない場合、及び押出ダイス型中に重合体を流していなければならない場合のように、新しいポリエステルの供給を完全に遮断し、スクラツプのポリエステルだけで操作することもできる。仕上器に加えるスクラツプのポリエステルの量は容易に且つ迅速にコントロールすることができ、新しいポリエステルの供給を変化させ、ポリエステル材料配合物の供給を一定に保つように迅速に調節することができる。スクラツプのポリエステルは直接成形品製造ラインから供給することができ、スクラツプは本発明方法で使用することが必要になるまで貯蔵又は保持容器中に保持することができる。」(4頁8欄2-20行)
ウ 引用文献4に記載された事項
引用文献4には、次の事項が記載されている。
(ア)「[図:0001400862000003.jpg]」(P.866の図7.2.23)
(イ)「(5)再生システム すべての製膜工程において発生するスクラップの再生は,収率,コストを支配する大きな要因である.図7.2.23は,2軸延伸フィルム工程で発生するスクラップの再生システムを示している.延伸クリップ部のトリミングロス,その他で発生するロスは,製品の10~40%に及ぶといわれている.」(p.867の15-18行)
エ 引用文献5に記載された事項
引用文献5には、次の事項が記載されている。
(ア)「【特許請求の範囲】【請求項1】バイオマス由来成分を共重合してなるポリエステルであって、放射性炭素(炭素14)測定によるところのバイオマス由来炭素の含有割合が、ポリマー中の全炭素に対して10%以上であり、極限粘度が0.5以上であることを特徴とするポリエチレンテレフタレート。【請求項2】請求項1記載のポリエチレンテレフタレートからなることを特徴とするポリエチレンテレフタレート繊維。【請求項3】請求項2記載のポリエチレンテレフタレート繊維を用いてなることを特徴とする自動車内装材。」
(イ)「【背景技術】【0002】ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記することがある。)は、機械的強度、化学的安定性、透明性等に優れ、かつ、安価であり、各種の繊維、シート、フィルム、容器等として世界中で最も多く使用されている合成樹脂素材のひとつである。【0003】続きを表示(全19行)ところで、PETは従来、石油から得られるナフサを接触改質、熱分解して得られるキシレン、エチレンを粗原料とし、キシレン→パラキシレン→テレフタル酸、およびエチレン→エチレンオキシド→エチレングリコールといった経路で得られたテレフタル酸( 以下、TPAと略記することがある。) とエチレングリコール (以下、EGと略記することがある。) をエステル化反応後、重縮合反応させて製造されている。このように、従来のPETは、限りある貴重な化石資源である石油を原材料としたものである。さらに、従来のPETは、焼却廃棄された場合、本来化石資源中に封じ込められていた炭素が二酸化炭素となって空気中に放出されるため、新たに発生する二酸化炭素により温室効果が増長されることとなり、地球温暖化の一因となっている。【0004】これに対し、バイオマスの起源である植物は、太陽エネルギーと二酸化炭素および水から光合成により澱粉やセルロースなどの植物バイオマスを作ることができる。こういったバイオマスを出発原料として活用すれば石油資源の使用量を抑制することができ、例えばバイオマス由来の炭素をPETの原料として利用すれば、これが使用後焼却処理して炭酸ガスと水に分解されたとしても、それらは再び光合成によって植物に取り込まれることになり、究極のリサイクルシステムが構築できることになる。すなわち、バイオマス原料を用いた分、温室効果ガスである二酸化炭素の新たな増加を抑制できることになる。このことは最近「カーボンニュートラル」と称されているものであり、将来の望ましい姿であるとされている。【0005】現在、バイオマス由来の化学物質としては、トウモロコシ、サトウキビ、サツマイモなどから得られる澱粉や糖分を微生物で発酵させて得られたバイオマスエタノールが知られている。ポリエステル原料として使用可能なバイオマス由来物質としては、バイオマスエタノールを原料としたエチレングリコールやバイオマス由来の1,3-プロパンジオール(例えば、特許文献1参照)などがある。【0006】また、バイオマス由来物質を原料としてなるポリエステルは、化学構造的には従来の石油材料起源のポリエステルとなんら変わらないため、ポリエステルとしての優れた物性はそのまま維持されている。【特許文献1】特表2001-505041号公報【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】【0007】本発明は、石油資源の枯渇を抑制し、地球温暖化の原因物質である大気中の二酸化炭素の増加を抑制する手段として、従来のような石油系由来の原料のみからなるPETに替えて、生物産生のバイオマス素材を原料としたPETを提供しようとするものである。【課題を解決するための手段】【0008】本発明者らは、上記の課題を解決するために検討を行った結果、PETの原料成分の一部にバイオマス由来素材から製造されたモノマーを使用することで、上記課題が達成されることに想到した。」
(ウ)「【0011】本発明のPETは、ポリマー物性としては従来の化石資源由来のPETに比べて何ら遜色を有するものではないため、繊維、不織布、シート、フィルムや成型物などの用途に使用することができ、自動車内装材用途においても好適に使用することができる。【発明を実施するための最良の形態】【0012】以下、本願発明について詳細に説明する。本発明のPETとしては、エチレングリコールとテレフタル酸を主たる構成成分としてなるものであり、得られたポリエステルの物性が損なわれない範囲において、他のモノマー成分を共重合させることができるが、エチレンテレフタレートの繰り返し単位が80モル%以上であることが好ましい。共重合可能な酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸などがあり、具体的には、芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、5-スルホイソフタル酸など:脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、アジピン酸、コハク酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸など:脂環族ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸:ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸などが挙げられる。また、共重合可能なアルコール成分としては、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体などの二価アルコール:ペンタエリスリトールなどの多価アルコールが挙げられる。【0013】本発明のPETとしては、放射性炭素(炭素14)測定によるところのバイオマス由来炭素を、ポリマー中の全炭素に対して10.0%以上含有していることが必要である。また、上限としては、25.0%以下であることが好ましく、より好ましくは24.0%以下であり、さらに好ましくは23.4%以下である。【0014】本発明のPETとしては、既述のとおり、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするものであるが、例えば、エチレンテレフタレートのみからなる場合、ポリマーを構成する炭素は、テレフタル酸モノマーで8原子、エチレングリコールモノマーで2原子存在し、テレフタル酸とエチレングリコールが1:1のモル比で反応したものとなる。ここで、テレフタル酸をバイオマス原料から誘導することは、現状では技術的な確立はなされていない。したがって、バイオマス由来のPETとしては、石油由来のテレフタル酸とバイオマス由来のエチレングリコールの組み合わせとなり、バイオマス由来のエチレングリコールのみを使用したPETでは、計算上バイオマス由来の炭素の含有割合は20.0%となる。また、上記エチレングリコールのうち、50モル%をバイオマス由来、残り50モル%を石油由来のエチレングリコールとした場合、得られるPET中のバイオマス由来炭素の含有割合は10%となる。或は、100%バイオマス由来のエチレングリコールからなるPETと100%化石資源由来からなるPETとのブレンド又は共重合体についても、バイオマス由来炭素の含有割合は10.0%となる。」
(エ)「【0021】本発明のPETの製造にあたって使用できる重縮合触媒としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、スルホン酸化合物といった通常のPET用の重縮合触媒を使用することができる。触媒の添加量としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、スルホン酸化合物の場合では、ポリエステルを構成する酸成分1モルに対して1×10-4~5×10-4モル、好ましくは1.5×10-4~ 2.5×10-4モルである。また、チタン化合物の場合では、同じく0.1×10-4~2×10-4とするのが適当である。この添加量があまり少ないと溶融重合速度が遅く、逆に多すぎると触媒効果が飽和するばかりでなく、成形時にポリエステルが熱分解等を起こして物性が低下したり、着色したりして好ましくない。これらの触媒以外に、色調改良剤としてコバルト化合物、熱安定化剤としてリン化合物を必要に応じて配合してもよい。色調改良剤としてコバルト化合物の添加量は、ポリエステルを構成する酸成分1モルに対して0.1×10-4~1×10-4モルとするのが適当である。また熱安定剤としてのリン化合物の添加量は、ポリエステルを構成する酸成分1モルに対して0.1×10-4~10×10-4モルとするのが適当である。」
(オ)「【0023】また、本発明のPETとしては、求められる物性を損なわない範囲で、酸化チタン粉末のようなダル化剤、蛍光増白剤、その他の染料、顔料、難燃化剤、紫外線吸収剤、吸湿剤、熱安定化剤、抗菌剤、防カビ剤、消臭剤などの配合剤を含んでいてもよい。」
(カ)「【0024】次に、本発明のPETの加工法について説明する。本発明のPETを用いて繊維を製造する場合、300℃近い高温で溶融したPETをノズル孔から押し出し、冷却した糸条を延伸し、必要に応じて切断し、あるいはそのまま巻き取って製品とする。シート、フィルムの場合も繊維製造に準じて、細長いノズル孔から溶融PETを押し出し、必要に応じて延伸して製品とする。」
(キ)「【0030】(実施例1)ビス(β-ヒドロキシエチル)テレフタレート及びその低重合体の存在するエステル化反応器に、テレフタル酸およびバイオマス由来エチレングリコールである、インディアグライコール社(インド)製のエチレングリコールとのモル比1/1.6のスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力50hPaGの条件で反応させ、滞留時間を8時間として平均重合度7の低重合体を連続的に得た。この低重合体60kgを重合反応器に仕込み、酸成分1モルに対して、重合触媒として1.7×10-4モルの三酸化アンチモン、熱安定剤として1.5×10-4モルのリン酸トリエチルを加え、重合反応器中を減圧にして、最終的に圧力0.67hPa、温度280℃で、2時間溶融重合を行い、[η]0.62のPETを得た。」
(ク)「【0032】(実施例2)実施例1において、エチレングリコールとして、バイオマス由来のエチレングリコールと石油由来のエチレングリコールを重量にして半分半分に混合したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして実施した。できあがった短繊維のバイオマスバイオマス由来炭素の混合割合を測定したところ10.0%であった。」
オ 参考文献1に記載された事項
参考文献1には、次の事項が記載されている。
「[図:0001400862000004.jpg]」(p.420)
上記記載によると、Table1はポリエチレンテレフタレートフィルムの機械的特性を例示されている。そして、逐次二軸延伸フィルム(熱固定後)(Two-way successively biaxially stretched, heat-set)の破断伸度(Elongation at beak(当審注:「break」の誤記と認める。))は、MD方向で130~210%、TD方向で77~280%の範囲内であり、同時二軸延伸フィルム(熱固定後)(Simultaneously biaxially stretched, heat-set)の破断伸度は、MD方向で130~270%、TD方向で130~290%の範囲内であることが示されている。
また、逐次二軸延伸フィルムの引張強度(Tensile strength)は、MD方向で5.1~7.1kg/mm2、TD方向で8.8~15.1の範囲内であり、同時二軸延伸フィルムの引張強度は、MD方向で8.2~20.0kg/mm2の範囲内であり、TD方向で8.1~20.0kg/mm2の範囲内であることが示されている。
カ 国際公開第2009/072462号(以下、「参考文献2」という。)に記載された事項
参考文献2には、次の事項が記載されている。
(ア)「[0001] 本発明は、ジオール成分としてバイオ化率80%以上のエチレングリコールが使用されたポリエステルであり、優れた耐熱性を有するポリエステルに関する。背景技術[0002] ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートは多くの優れた特性を有しているため、特に繊維、フィルムなど様々な用途に広く利用されている。また、一般には溶融成形にて繊維、フィルムが製造されている。」
(イ)「[0003] また従来のポリエステルは主に石油由来の原料を重縮合することにより製造されているが近年、化石燃料の減少、大気中の二酸化炭素含有量の増加という環境問題が深刻になってきており、この問題に対する対策が必要となっている。そこで、ポリエステルの原料として、化石燃料由来ではなく植物から誘導された原料を用いた環境負荷の軽減されたポリエステルが求められている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1:特開2006-321995号公報」
(ウ)「[0011] 本発明にバイオマス資源はその発生形態から廃棄物系、未利用系、資源作物系の3種に分類される。バイオマス資源は具体的には、セルロース系作物(パルプ、ケナフ、麦わら、稲わら、古紙、製紙残渣など)、リグニン、木炭、堆肥、天然ゴム、綿花、サトウキビ、油脂(菜種油、綿実油、大豆油、ココナッツ油など)、グリセロール、炭水化物系作物(トウモロコシ、イモ類、小麦、米、キャッサバなど)、バガス、テルペン系化合物、パルプ黒液、生ごみ、排水汚泥などが挙げられる。また、バイオマス資源からグリコール化合物を製造する方法は、特に限定はされないが、菌類や細菌などの微生物などの働きを利用した生物学的処理方法、酸、アルカリ、触媒、熱エネルギー若しくは光エネルギーなどを利用した化学的処理方法、又は微細化、圧縮、マイクロ波処理若しくは電磁波処理など物理的処理方法など既知の方法が挙げられる。[0012] バイオマス資源からエチレングリコールに変換する方法としては、種々の方法をあげることができる。その製造方法は特に限定されないが、まずバイオマス資源から菌類や細菌などの微生物などの働きを利用した生物学的処理方法、酸、アルカリ、触媒、熱エネルギー若しくは光エネルギーなどを利用した化学的処理方法、微細化、圧縮、マイクロ波処理若しくは電磁波処理など物理的処理方法など既知の方法を行う。これらの方法により得られた生成物に対して、さらに触媒を用いて水素加熱分解反応を行い精製する方法が挙げられる。[0013] また別の方法の1つとして、サトウキビ、バガス、その他の炭水化物系作物などから生物学処理方法によりエタノールを製造し、更にこのエタノールからエチレンオキサイドを経て、精製する方法も挙げられる。このような手法により製造され、更に蒸留操作等により精製する方法も採用する事ができる。或いはバイオマス資源からエチレングリコールを得る別の方法として、以下の方法も挙げることができる。すなわちバイオマス資源からグリセロール、ソルビトール、キシリトール、グルコール、フルクトース又はセルロースなどに変換し、さらに触媒を用いて水素加熱分解反応により、それらの化合物からエチレングリコールと1,2-プロパンジオールの混合物を生成する方法である。又更なる別の方法として、サトウキビ、バガス、炭水化物系作物などから生物学処理方法によりエタノールを製造し、更に、エチレンオキサイドを経て、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールの混合物を生成する方法などが挙げられる。」
(エ)「[0014] 本発明においてバイオ化率とはエチレングリコール、ポリエステル構成全炭素原子中、1950年時点の循環炭素中の放射性炭素である14C濃度を基準(この値を100%と設定する)とした場合の14C濃度の比率を表す。その放射性炭素である14Cの濃度は以下の測定方法(放射性炭素濃度測定)により測定する事ができる。すなわち14Cの濃度測定は、タンデム加速器と質量分析計を組み合わせた加速器質量分析法(AMS:Accelerator Mass Spectrometry)によって、分析する試料に含まれる炭素の同位体(具体的には12C、13C、14Cが挙げられる。)を加速器により原子の重量差を利用して物理的に分離し、同位体の原子一つ一つの存在量を計測する方法である。[0015] 炭素原子1モル(6.02×1023個)中には、通常の炭素原子の約一兆分の一である約6.02×1011個の14Cが存在する。14Cは放射性同位体と呼ばれ、その半減期は5730年で規則的に減少している。これらが全て崩壊するには22.6万年を要する。従って大気中の二酸化炭素等が植物等に取り込まれて固定化された後、22.6万年以上が経過したと考えられる石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料においては、固定化当初はこれらの中にも含まれていた14C元素は全てが崩壊している。故に21世紀である現在は石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料においては14C元素は全く含まれていない。故にこれらの化石燃料を原料として生産された化学物質にも14C元素は全く含まれていない。一方、14Cは宇宙線が大気中で原子核反応を行い、絶え間なく生成され、放射壊変による減少とがバランスし、地球の大気環境中では、14Cの量は一定量となっている。[0016] 一方、大気中の二酸化炭素が植物やそれを食する動物などに取り込まれて固定化された場合には、その取り込まれた状態では14Cは新たに補充されることなく、14Cの半減期に従って時間の経過とともに14C濃度は一定の割合で低下する。このため、グリコール化合物中の14C濃度を分析することにより、化石燃料などの化石資源を原料としたものか、或いはバイオマス資源を原料にしたグリコール化合物か簡易に判別することが可能となる。またこの14C濃度は1950年時点の自然界における循環炭素中の14C濃度をmodern standard referenceとし、この14C濃度を100%とする基準を用いる事が通常行われる。現在のこのようにして測定される14C濃度は約110pMC(percent Modern Carbon)前後の値であり、仮に試料として用いられているプラスチック等が100%天然系(生物系)由来の物質で製造されたものであれば、110pMC程度の値を示すことが知られている。この値が上述で言うバイオ化率100%に相当する。一方石油等の化石燃料由来の化学物質を用いてこの14C濃度を測定した場合、ほぼ0pMCを示すことも知られている。この値が上述で言うバイオ化率0%に相当する。これらの値を利用して天然資源由来の化合物(バイオマス資源由来の化合物)-化石資源由来の化合物の混合比を算出する事が出来る様になる。[0017] 更にこの14C濃度の基準となるmodern standard referenceとしてはNIST(National Institute of Standards and Technology:米国国立標準・技術研究所)が発行した蓚酸標準体を用いる事が好ましく採用する事が出来る。この蓚酸中の炭素の比放射能(炭素1g当たりの14Cの放射能強度)を炭素同位体毎に分別し、13Cについて一定値に補正して、西暦1950年から測定日までの減衰補正を施した値を標準の14C濃度濃度の値として用いている。続きを表示(全11行)[0018] ・・・[0019] 本発明において、重合して生成されるポリ(エチレン芳香族ジカルボキシレートエステル)樹脂は芳香族ジカルボン酸ジメチルエステルを主たる原料として用い、バイオ化率80%以上のエチレングリコールをジオール成分として用いた製造方法により得ることができる。その芳香族ジカルボン酸ジメチルエステルとしてテレフタル酸ジメチル又はナフタレンジカルボン酸ジメチルを用いる事は、好ましく採用する事が出来る。他の種類の芳香族ジカルボン酸ジメチルエステルより入手が比較的容易なので工業的に実施しやすいからである。ナフタレンジカルボン酸ジメチルは多数の構造異性体が存在するが、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル、又は2,7-ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルがより好ましい。・・・[0024] 上記のポリエステルはバイオマスエチレングリコールを用いる事以外はポリエステルの製造方法として知られている任意の方法によって製造することができる。具体的には、テレフタル酸とバイオマスエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルのようなテレフタル酸の低級アルキルエステルとバイオマスエチレングリコールとをエステル交換反応させることにより、テレフタル酸のエチレングリコールエステル及び/又はその低重合体を生成させる第一段階の反応を最初に行う。次いで、その第一段階の反応生成物を重縮合反応触媒の存在下で減圧加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第二段階の反応によって製造することができる。[0025] 本発明のポリ(エチレン芳香族ジカルボキシレートエステル)樹脂の中で、酸成分としてテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸等を原料に用いて得られたポリエチレンテレフタレートを構成する繰り返し単位中の全炭素に対する割合は、テレフタル酸ジメチル等由来の炭素原子が80%(8個)、エチレングリコール由来の炭素原子が20%(2個)で構成されている。ジオール成分としてバイオ化率80%以上のエチレングリコールを用いるということは、ポリエチレンテレフタレートを構成する全炭素原子のうち、エチレングリコール由来の全炭素原子、即ちポリエチレンテレフタレートの繰り返し単位を構成する全炭素原子のうち20%の炭素原子であるが、その80%以上がバイオマス由来の14Cを含む炭素原子であることを表す。故に、理論計算上、この場合のポリエチレンテレフタレートのバイオ化率は16%以上となる。・・・[0027] 驚くべき事に上記のようにバイオ化率80%以上のエチレングリコールを用いてバイオ化率が11%以上であるポリ(エチレン芳香族ジカルボキシレートエステル)樹脂を製造すると、耐熱性の向上、すなわち溶融時の固有粘度低下幅が小さいことを我々は見出した。このとき芳香族ジカルボン酸等の選択によって得られるポリエステルの融点が変わるので、耐熱性の評価を行うのに適切な溶融時の温度としては、得られるポリエステルの融点+10~40℃、好ましくは融点+30℃を選択することができる。」
(オ)「ポリ(エチレン芳香族ジカルボキシレートエステル)樹脂中に含まれる全炭素原子中、1950年時点の循環炭素中の14C濃度を100%の基準とした14C濃度の比率が11%以上であるポリ(エチレン芳香族ジカルボキシレートエステル)樹脂。」(請求の範囲の請求項1)
(3)対比
本願発明1と引用発明1を対比する。
ア 引用発明1の「バイオマス資源由来ポリエステル樹脂組成物を成形してなる成形体」は、本願発明1の「樹脂組成物からなる包装製品用樹脂フィルム」と、「樹脂組成物からなる成形体」である点で共通するといえる。
イ 引用発明1の「主たる繰り返し単位がジカルボン酸単位及びジオール単位であるポリエステルにおいて、該ポリエステルの原料であるジカルボン酸及びジオールの少なくとも一方がバイオマス資源から得られたものであ」る、「バイオマス資源由来ポリエステル」は、本願発明1の「ジオール単位がさとうきび由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステル」と、「バイオマス由来のポリエステル」である点で共通するといえる。
ウ 引用発明1の「熱可塑性樹脂」を含む「熱可塑性樹脂、生分解性樹脂、天然樹脂、または多糖類」は、本願発明1の「ジオール単位が化石燃料由来のジオールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のリサイクルポリエステル」と、「樹脂」である点で共通するといえる。
エ そうすると、本願発明1と引用発明1とは、
「樹脂組成物からなる成形体であって、前記樹脂組成物がバイオマス由来のポリエステルと、樹脂とを含んでなる、成形体。」の点で一致し、次の点で一応相違する。
相違点1d:本願発明1では、「樹脂組成物全体に対して、前記バイオマス由来のポリエステルを50~90質量%、および、前記化石燃料由来のリサイクルポリエステルを5~45質量%含み、」「前記包装製品用樹脂フィルム中の全炭素に対して、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が、10~14%である」のに対して、引用発明1では、そのようなものであるか不明である点
(4)判断
ア 相違点1aについて
(ア)引用文献1の段落【0134】には、引用発明1に係るポリエステルおよびその組成物を、二軸延伸成形等の汎用プラスチックに適用される各種成形法に供することができることが記載され、段落【0135】には、前記成形法により、延伸フィルム等の各種成形品が得られることが記載されており、これらの記載から、引用発明1に係る成形体として二軸延伸フィルムが例示されているといえる。
また、引用文献1の段落【0118】には、PET等の汎用樹脂との組み合わせにより、極限伸び100~600%のような汎用のポリマーが有する特性を保持でき、使用目的に応じて、ポリエステル原料や各種樹脂の種類、ブレンド量比や成形条件等を変えることにより前記特性を任意に調整することができることが記載されている。ここで、前記PETは化石燃料由来のジオールとテレフタル酸から得られたものであり、また、前記極限伸びは、本願発明1の「破断伸度」と同旨であることは明らかである。そうすると、引用文献1には、引用発明1において、前記熱可塑性樹脂として化石燃料由来のPETを配合し、極限伸び100~600%という汎用ポリマーが有する特性を保有できることが示されているといえる。
そして、参考文献1のTable1(p.420)には、二軸延伸PETフィルムの破断伸度は、逐次二軸延伸フィルム(熱固定後)では、MD方向で130~210%、TD方向で77~280%の範囲内であり、同時二軸延伸フィルム(熱固定後)では、MD方向で130~270%、TD方向で130~290%の範囲内であることが示されており、これは本願出願日時点の技術常識であるといえる。
そうすると、引用文献1の上記記載及び本願出願時の技術常識から、引用発明1に係る成形体を、2軸延伸フィルムであって、その破断伸度を、本願発明1の「MD方向で50~350%、TD方向で50~300%」の範囲内のものとすることが動機付けられるといえる。
(イ)さらに、引用文献1の【0114】には、引用発明1のポリエステルを食品包装材に使用することが記載され、また、このことは本願出願前に周知の事項でもあるから、引用発明1の成形体を「包装製品用樹脂フィルム」とすることが動機付けられるといえる。
(ウ)これらのことから、引用文献1の前記記載及び本願出願時の技術常識に基づいて、引用発明1に係る成形体を、包装製品用樹脂フィルムであって、2軸延伸フィルムであり、その破断伸度が、MD方向で50~350%、TD方向で50~300%であるものとすることは、当業者が容易に想到し得たことであるといえる。
イ 相違点1bについて
引用発明1では、ポリエステルの原料であるジカルボン酸及びジオールの少なくとも一方がバイオマス資源から得られたものであるから、ジオール単位がバイオマス由来であり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のポリエステルとすることが示されていると解される。また、引用文献1の段落【0004】には、ジオールであるエチレングリコールが植物由来の原料から得られることが示されており、このことは本願出願前に周知の事項である。さらに、引用文献1の段落【0037】には、ジオール単位の具体例として、エチレングリコールが好ましいことが記載され、同段落【0040】には、ジオールはバイオマス資源から誘導されたものを用いることが記載されている。そして、引用文献1の段落【0017】には、最も好ましいバイオマス資源はさとうきびであることが記載されている。
また、引用文献5には、石油由来のテレフタル酸とバイオマス由来のエチレングリコールからなるバイオマス由来のPET(【0014】)、サトウキビ由来のエチレングリコール(【0005】)が記載されている。
そうすると、引用文献1及び5の前記記載及び周知の事項から、引用発明1において、ジオール単位がさとうきび由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のポリエステルとすることが動機付けられ、本願発明1の相違点1bに係る「ジオール単位がさとうきび由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステル」を含む構成は、当業者が容易に想到し得たことである。
ウ 相違点1cについて
引用文献1には、バイオマス由来のポリエステルに配合する汎用の熱可塑性樹脂が石油由来のポリエステルであることが記載されており(【0119】)、上記汎用の熱可塑性樹脂はジオール単位及びジカルボン酸単位がともに石油由来であると解される。
また、リサイクルポリエステルを重合直後(バージン)のポリエステルと混合して用いること(必要があれば、引用文献2(特に、段落【0002】~【0003】)、引用文献3(特に、特許請求の範囲、2頁3欄24~31行、4頁8欄2~20行)、引用文献4(特に、図7.2.23(p.866)、「(5) 再生システム」(p.867の15~18行))を参照。)は、本願出願日前に周知の事項である。上記リサイクルポリエステルは、ジオール単位及びジカルボン酸単位がともに石油由来であることは明らかである。
これらのことから、引用発明1において、バイオマス由来のポリエステルに、石油由来のリサイクルポリエステルを含むものとすることが動機付けられ、本願発明1の相違点1cに係る構成は、当業者が容易に想到し得たことであるといえる。
エ 相違点1dについて
(ア)引用文献1には、石油由来のポリエステル等の汎用の熱可塑性樹脂のブレンド量を50~1重量%程度とすることが記載されており(【0119】)、上記ウで検討したとおり、石油由来のリサイクルポリエステルをバージンのポリエステルと混合して用いることも本願出願日前に周知であるから、樹脂組成物全体に対して1~50重量%の範囲内で、ジオール単位及びジカルボン酸単位がともに石油由来であるポリエステルを用いることが動機付けられるといえる。
(イ)また、ポリエチレンテレフタレート(PET)は、テレフタル酸(C8H6O4)由来の炭素原子が80%、エチレングリコール(C2H6O2)由来の炭素原子が20%で構成されており、参考文献2の[0025]に記載されるように、バイオ化率80%以上のエチレングリコールと石油由来のテレフタル酸を原料にして得られたポリエチレンテレフタレートのバイオ化率(本願発明1の「放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量」に相当する。)は16%以上となることが本願出願時の技術常識である。このように、エチレングリコールのバイオ化率を調節することにより、ポリエチレンテレフタレートのバイオ化率を調節できることは、当業者に自明なことである。
そうすると、引用発明1において、成形体中の全炭素に対する、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量は、当業者の通常の創作能力を発揮することにより、バイオマス由来のエチレングリコールの含有量、リサイクルポリエステルの含有量に応じて、当業者が適宜設定し得ることであるといえる。
したがって、引用発明1において、バイオマス由来のポリエステルを主成分とし、石油由来のリサイクルポリエステルを5~45質量%含むこと、及び、成形体中の全炭素に対して、「放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が、10~14%である」とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるといえる。
オ 本願発明の効果について
本願発明によって奏される「ジオール成分単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり・・・カーボンニュートラルなポリエステル樹脂を実現できる。また、本発明の樹脂組成物からなるフィルムは、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリエステルフィルムと機械的特性等の物性面で遜色がなく、従来のポリエステルフィルムを代替することができる」(【0017】)という効果は、引用文献1の「本発明は環境問題、化石燃料の問題等の解決に貢献し、実用的な物性を有する樹脂を提供することが出来、産業上の利用価値は極めて大である」(【0012】)、「二酸化炭素の吸収および放出の物質収支の較差が比較的均衡している。しかも 環境に非常に優しい、安全なポリエステルと認識できる。このような本発明のポリエステルは、材料の物性、構造および機能において評価できるばかりでなく、化石燃料由来のポリエステルには全く期待できない、リサイクルを含めた循環型社会の実現性を潜在的に保有する利点を有する。」(【0012】)及び「…PET…等の汎用樹脂との組み合わせにより密度が…引張強度30~80MPa、極限伸び100~600%…というような汎用のポリマーが有する特性を保有できる」(【0118】)の記載(上記(1)ア)、引用文献5の【0004】及び【0006】(上記(2)エ(イ))、並びに参考文献2の[0003](上記(2)カ(イ))の記載から当業者が予測し得ることである。
カ 審判請求人の主張について
(ア)審判請求人は、次の主張をする。
「引用発明1から本願発明に到達するためには、ジオール単位の数多くの候補の中からエチレングリコールを選択し(ステップ1)、ポリエステルのバイオマス化のための3つの候補の中から形態(II)を選択し(ステップ2)、バイオマス由来のエチレングリコールの材料としてさとうきびを選択し(ステップ3)、さらに、包装製品用樹脂フィルム中の全炭素に対して、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が、10~14%になるよう、バイオマス由来のエチレングリコールの含有量を調整する必要があります。仮に、ステップ1~4のそれぞれは当業者にとって容易だとしても、ステップ1~4の組合せは、いわゆる「容易の容易」になり、当業者が容易になし得ることではないと考えます。」(令和5年1月23日提出の意見書3頁19~27行)
上記主張(ア)について検討する。
引用発明1は「ポリエステルの原料であるジカルボン酸及びジオールの少なくとも一方がバイオマス資源から得られたもの」であって、引用文献1に「本発明は環境問題、化石資源の問題等の解決に貢献し、実用的な物性を有する樹脂を提供することが出来」(【0012】)と記載されるように、ポリエステルの原料にバイオマス資源から得られたものを用いることにより、環境問題や化石資源の問題を解決しようとするものである。
引用文献1には、ジオールとしてエチレングリコールが例示され(【0037】)、ジオールにバイオマス資源から誘導されたものを用いることが記載され(【0040】)、最も好ましいバイオマス資源としてさとうきびが例示されており(【0017】)、また、引用文献5には、具体的に、石油由来のテレフタル酸とバイオマス由来のエチレングリコールからなるバイオマス由来のPETが記載されているから(【0014】)、引用文献1及び引用文献5の上記記載に従って選択すれば、本願発明における樹脂組成物が「ジオール単位がさとうきび由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステル」を含むものとすることができ、当業者が、バイオマス由来のエチレングリコールやリサイクルポリエステルの含有量を調節することにより、「バイオマス由来の炭素の含有量が、10~14%である」ものとすることができるといえる。
そして、本願発明1における「放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が、10~14%である」との特定事項に関して、本願明細書には「樹脂組成物中のバイオマス由来の炭素含有量が10%未満であると、カーボンオフセット材料としての効果が乏しくなる。・・・樹脂組成物中のバイオマス由来の炭素含有量は20%に近いほど好ましいが、フィルムの製造工程上の問題や物性面から、樹脂中には上記したようなリサイクルポリエステルや添加剤を含む方が好ましいため、実際の上限は18%となる」と記載され(【0046】)、下限の10%はカーボンオフセットというバイオマス由来のポリエステルを用いる本来の目的を達成するために当業者が適宜設定する値であるし、上限の14%はフィルムの製造工程や物性面でリサイクルポリエステルや添加剤を用いた結果の値であって、リサイクルポリエステルの使用やフィルムの破断伸度は、ポリエステルフィルムの製造における周知の事項にすぎないから(上記ア及びウを参照)、本願明細書(特に【0045】、【0046】及び表1)を見ても、「バイオマス由来の炭素の含有量を、10~14%」とすることに臨界的意義は見当たらない。
したがって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。
(イ)審判請求人は、次の主張をする。
「引用文献1の段落【0005】では、従来のバイオマス由来のジカルボン酸やジオールを用いてポリエステルの製造を行う場合の問題点が説明されています。…しかしながら、実施例1~15のいずれも、ジオール単位がさとうきび由来のエチレングリコールを用いて還元粘度(ηsp/c)が0.5以上になるように製造されたポリエステルの例を開示するものではありません。この点でも、当業者が、ジオール単位の数多くの選択肢の中からさとうきび由来のエチレングリコールを採用して本願発明に到達しようとする動機はないと考えます。」(同意見書3頁28~37行)
上記主張(イ)について検討する。
さとうきび由来のエチレングリコールは、化石燃料由来のエチレングリコールと同じ化学式で表されるものであり、バイオマス原料として周知のものであるし(引用文献5の【0005】)、さとうきび由来のエチレングリコールと化石燃料由来のテレフタル酸から得られるポリエステルは、さとうきび以外のバイオマス由来のエチレングリコール又は化石燃料由来のエチレングリコールとテレフタル酸から得られるポリエステルと同じ化学構造を有し、同じ物性を示すことは、本願出願日時点の技術常識であると解される(引用文献5の【0006】)。この技術常識に基づき、ジオール単位がさとうきび由来のエチレングリコールであるバイオマス由来のポリエステルを用いることは、当業者にとって動機付けられるといえる。
なお、審判請求人は、引用文献1にさとうきび由来のエチレングリコールを用いた具体例が開示されていないことを述べるのみであり、さとうきび由来のエチレングリコールが、さとうきび以外のバイオマス由来のエチレングリコールと比べて、化学構造や性能等の面で化合物としてどのように異なるのかについて何ら具体的な証拠を示していないし、技術的な説明もしていない。
したがって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。
(ウ)審判請求人は、次の主張をする。
「引用文献5において、フィルムの樹脂を従来の化石資源由来のPETからバイオマス由来の炭素を含有したPETに置き換えた場合に、従来の化石資源由来のPETに比べて遜色のない特性がフィルムとして得られるか否かは、引用文献5においては何ら検証されておりません。」(同意見書4頁1~4行)
上記主張(ウ)について検討する。
引用文献5に記載されるとおり(上記(2)エ(イ)の【0006】)、従来の化石資源由来のPETと、バイオマス由来の炭素を含有したPETとは、エチレングリコールとテレフタル酸によって構成される化学構造が同じであり、このような化学構造が同じである限り、同じ物性を示すというのが、本願出願日時点の技術常識である。そして、本願発明1の「ジオール単位がさとうきび由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステル」と、引用文献5に記載の「石油由来のテレフタル酸とバイオマス由来のエチレングリコールの組み合わせとな」る「バイオマス由来のPET」(【0014】)とは、化学構造において異なるものではなく、上記技術常識を参酌すれば、同じ物性を示すものであると解すべきである。
また、審判請求人は、引用文献5において、バイオマス由来のPETを用いたフィルムが化石燃料由来のPETを用いたフィルムと遜色のない特性が得られることが何ら検証されていないことを主張するのみであり、引用文献5に記載のバイオマス由来のPETをフィルムに使用する場合に、化石燃料由来のPETと遜色のない特性が得られないことについて具体的な証拠を示していないし、技術的な説明もしていない。
したがって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。
(5)まとめ
本願発明1は、引用文献1に記載された発明、引用文献1~5並びに参考文献1及び2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 本願発明2に対する理由2(引用文献6を主引用文献とする進歩性)について
(1)引用文献6に記載された事項及び引用文献6に記載された発明
ア 引用文献6に記載された事項
引用文献6には、次の事項が記載されている。
(ア)「【特許請求の範囲】【請求項1】ポリエチレンテレフタレート(PET)に、分子量1,000~13,000のポリエチレングリコールを10~40重量%含有した変性PET(A)を、PET/A=50/50~80/20(重量比)の割合で混合した原料を用いて製造したフィルムであって、引張強度20~35kgf/mm2、乾熱収縮率3%以下(160℃×15分)、ヘイズ5%以下の特性を有することを特徴とする少なくとも長手方向に引裂直線性を有する二軸延伸ポリエステルフィルム。」
(イ)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、フィルムの少なくとも長手方向の引裂直線性に優れ、かつ、優れた強度、耐熱性、寸法安定性を有し、菓子、漬物、味噌、スープ、ジャム、冷凍、冷蔵、レトルトパウチなどの食品をはじめ、医薬品、日用品、コスメティックスなどの包装材料として有用な二軸延伸ポリエステルフィルムに関するものである。【0002】【従来の技術】食品、医薬品、雑貨の包装には、各種のプラスチックフィルムを用いた包装袋が多く使用されており、二軸延伸プラスチックフィルムとヒートシール可能な無配向プラスチックフィルムを2層あるいは3層以上ラミネートした包装袋が広く使用されている。二軸延伸ポリエステルフィルムは耐久性、防湿性、力学的強度、耐熱性、耐油性が優れており、チューブラー法、フラット式同時二軸延伸法、フラット式逐次二軸延伸法などを用いて製造した二軸延伸ポリエステルフィルムが食品包装分野などにおいて幅広く使用されている。」
(ウ)「【0008】【発明の実施の形態】本発明におけるPETは、公知の製法、すなわち、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールからのエステル交換反応法、あるいは、テレフタル酸とエチレングリコールからの直接エステル化法によりオリゴマーを得た後、溶融重合、あるいはさらに固相重合して得られるが、本発明の効果を損ねない範囲であれば他の成分を共重合することができる。」
(エ)「【0014】本発明における変性PET(A)は、PETとPEGを押出機で溶融混練することによって得られるが、他の方法としては、PETの重合工程においてPEGを添加して重縮合して得ることもできる。」
(オ)「【0018】本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは引張強度が 20 ~35kgf/mm2の範囲にあることが好ましく、引張強度がこの範囲の値より小さいと実用強度が不足し、この範囲を超えても過剰品質となるばかりか、かえってフィルム製造時の操業性が低下し経済的に好ましくない。また、引張伸度は、通常80~160%(長手方向と幅方向の平均値)の範囲にあることが好ましい。」
(カ)「【0027】実施例1PETと分子量 6,000のPEGを、PET/PEG=75/25(重量比)の割合でチップ混合したものを2軸押出機で溶融混合して、チップ化して変性PET(A)(相対粘度 1.33dl/g)を調製した。次に、変性PET(A)とPETを35/65(重量比)の割合でチップ混合したものを、コートハンガータイプのTダイを具備した50mmφ押出機を使用して、滞留時間5分、樹脂温度 270℃で溶融押出しし、20℃に温調されたキャストロールにピニングワイヤーに7kVの印加電圧をかけて密着急冷し、厚さ約 210μm の未延伸シートを得た。得られた未延伸シートをロール縦延伸機で90℃で3.8倍、テンター横延伸機で120℃で4.6倍延伸した後、横方向の弛緩処理を5%として、230℃で熱処理を施し、室温まで除冷し、厚さ12μmの二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの引裂直線性を測定し、結果を表1に示した。」
(キ)「【0031】【表1】[図:0001400862000005.jpg]」
イ 引用文献6に記載された発明
引用文献6には、請求項1、段落【0001】-【0002】、【0008】、【0018】、及び【表1】の記載があり、請求項1に係る発明の具体例である実施例1に着目すると、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。
[引用発明2]
「PETと分子量6,000のPEGを、PET/PEG=75/25(重量比)の割合でチップ混合したものを2軸押出機で溶融混合して、チップ化して変性PET(A)(相対粘度1.33dl/g)を調製し、次に、変性PET(A)とPETを35/65(重量比)の割合でチップ混合したものを、コートハンガータイプのTダイを具備した50mmφ押出機を使用して、滞留時間5分、樹脂温度270℃で溶融押出しし、20℃に温調されたキャストロールにピニングワイヤーに7kVの印加電圧をかけて密着急冷し、厚さ約210μmの未延伸シートを得て、当該未延伸シートをロール縦延伸機で90℃で3.8倍、テンター横延伸機で120℃で4.6倍延伸した後、横方向の弛緩処理を5%として、230℃で熱処理を施し、室温まで除冷して得た、厚さ12μmの二軸延伸フィルムであって、その引張強度がMD方向で22kgf/mm2、TD方向で23kgf/mm2である前記フィルム。」
(2)対比
本願発明2と引用発明2を対比する。
ア 引用発明2の「変性PET(A)とPETを35/65(重量比)の割合でチップ混合したもの」からなる「厚さ12μmの二軸延伸フィルム」は、本願発明2の「樹脂組成物からなる包装製品用樹脂フィルム」と、「樹脂組成物からなる樹脂フィルム」である点で共通するといえる。
イ 引用発明2の「PET」は、公知の製法、すなわち、テレフタル酸とエチレングリコールからの直接エステル化法等により得られるから(【0008】)、引用発明2が「PET」を含むことは、本願発明2が「ジオール単位がさとうきび由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステル」「を含んでな」ることと、「ジオール単位がエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位がテレフタル酸であるポリエステル」(以下、「第1のポリエステル」という。)「を含んでな」る点で共通するといえる。
ウ 引用発明2が「PETと分子量6,000のPEGを、PET/PEG=75/25(重量比)の割合でチップ混合したもの」からなる「変性PET(A)」中の「PET」を含むことは、本願発明2が「ジオール単位が化石燃料由来のジオールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のリサイクルポリエステル」「を含んでな」ることと、「ジオール単位がジオールであり、ジカルボン酸単位がテレフタル酸であるポリエステル」(以下、「第2のポリエステル」という。)「を含んでな」る点で共通するといえる。
エ 引用発明2の「PET/PEG=75/25(重量比)の割合でチップ混合した」「変性PET(A)…を調製し」、「変性PET(A)とPETを35/65(重量比)の割合でチップ混合したもの」は、本願発明2の「前記樹脂組成物が、前記樹脂組成物全体に対して、前記バイオマス由来のポリエステルを50~90質量%、および、前記化石燃料由来のリサイクルポリエステルを5~45質量%含」むことと、「前記樹脂組成物が、前記樹脂組成物全体に対して、前記第1のポリエステルを50~90質量%、および、前記第2のポリエステルを5~45質量%含」む点で共通するといえる。
オ 引用発明2の「二軸延伸ポリエステルフィルム」は、本願発明2の「前記包装製品用樹脂フィルムが2軸延伸フィルムであ」ることと、「前記樹脂フィルムが2軸延伸フィルムであ」る点で共通するといえる。
カ 引用発明2の「二軸延伸ポリエステルフィルム」が「その引張強度がMD方向で22kgf/mm2、TD方向で23kgf/mm2である」ことは、本願発明2の「前記包装製品用樹脂フィルム破断強度が、MD方向で5~40kgf/mm2、TD方向で5~35kgf/mm2である」ことと、「前記樹脂フィルムの破断強度が、MD方向で5~40kgf/mm2、TD方向で5~35kgf/mm2である」点で共通するといえる。
そうすると、本願発明2と引用発明2とは、
「樹脂組成物からなる樹脂フィルムであって、前記樹脂組成物が、ジオール単位がエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位がテレフタル酸である第1のポリエステルと、ジオール単位がジオールであり、ジカルボン酸単位がテレフタル酸である第2のポリエステルと、を含んでなり、前記樹脂組成物が、前記樹脂組成物全体に対して、前記第1のポリエステルを50~90質量%、および、前記第2のポリエステルを50質量%以下含み、前記樹脂フィルムが2軸延伸フィルムであり、前記樹脂フィルムの破断強度が、MD方向で5~40kgf/mm2、TD方向で5~35kgf/mm2である、樹脂フィルム。」の点で一致し、次の点で一応相違する。
相違点2a:本願発明2は、「ジオール単位がさとうきび由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステル」「を含んでなり、」「樹脂組成物全体に対して、前記バイオマス由来のポリエステルを50~90質量%」「含み」、「前記包装製品用樹脂フィルム中の全炭素に対して、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が、10~14%である」るのに対して、引用発明2はそのようなものでない点
相違点2b:本願発明2は「ジオール単位が化石燃料由来のジオールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のリサイクルポリエステル」「を含んでなり」、「樹脂組成物全体に対して、」「前記化石燃料由来のリサイクルポリエステル5~45質量%含」むのに対して、引用発明2は、化石燃料由来のリサイクルポリエステルを含むことが特定されていない点
(3)判断
ア 相違点2aについて
引用文献5の特許請求の範囲、段落【0002】~【0008】、【0011】~【0014】、【0024】、【0030】、【0032】を参照すると、石油資源の枯渇を抑制して、地球温暖化の原因物質である大気中の二酸化炭素の増加を抑制する手段として、従来のような石油系由来の原料のみからなるPETに替えて、生物産生のバイオマス素材(例えば「サトウキビ」等、【0005】)を原料としたPETを用いることが望ましい旨が開示されており(【0007】)、その手段として、ジオール単位が「インディアグライコール社(インド)製のエチレングリコール」(本願発明2の「さとうきび由来のエチレングリコール」に相当。)であり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のPETを用いることが開示され(【0030】)、さらに、バイオマス由来のPETと石油由来のPETとをブレンドして用いることが開示されている(【0014】、【0020】、【0032】)。
そして、上記のように、環境や資源等に対する配慮から、化石燃料由来のPETに代えてバイオマス由来のPETを用いようとすることは、本願出願日前に一般的な課題であるといえる。
そうすると、環境や資源等に対する配慮から、引用発明2のPETについて、ジオール単位がさとうきび由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステルに置き換えることが動機付けられるといえる。
また、上記バイオマス由来のポリエステルに置き換えることにより、樹脂組成物全体に対して、バイオマス由来のポリエステルが所定の割合で含有されることになるが、上記2(4)エで述べたように、バイオ化率80%以上のエチレングリコールと石油由来のテレフタル酸を原料にして得られたポリエチレンテレフタレートの「放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量」は16%以上となることから、エチレングリコールの一部分をバイオマス由来とすることにより、バイオマス由来の炭素の含有量を「10~14%」とすることは、当業者の通常の創作能力の発揮により行う設計事項であり、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点2bについて
引用発明2は、「変性PET(A)とPETを35/65(重量比)の割合でチップ混合したもの」を原料とするものであり、上記変性PET(A)は、PETとPEGを押出機で溶融混練することによって得られるものである(引用文献6の【0014】)。
リサイクルポリエステルをバージンのポリエステルと混合して用いること(必要があれば、引用文献2(特に、段落【0002】~【0003】)、引用文献3(特に、特許請求の範囲、2頁3欄24~31行、4頁8欄2~20行)、引用文献4(特に、図7.2.23(p.866)、「(5) 再生システム」(p.867の15~18行))を参照。)は、本願出願前に周知の事項である。
これらのことから、引用発明2において、変性PET中のPETについて、化石燃料由来のリサイクルポリエステルを含むことが動機付けられ、本願発明2の相違点2bに係る構成は、当業者が容易に想到し得たことであるといえる。
ウ 相違点2cについて
引用文献6の【0001】には、引用発明2の二軸延伸ポリエステルフィルムを食品包装材に使用することが記載され、また、このことは本願出願前に周知の事項でもあるから、引用発明2の二軸延伸ポリエステルフィルムを「包装製品用」とすることが動機付けられ、本願発明2の相違点2cに係る構成は、当業者が容易に想到し得たことである。
エ 本願発明2の効果について
本願発明2によって奏される「ジオール成分単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり・・・カーボンニュートラルなポリエステル樹脂を実現できる。また、本発明の樹脂組成物からなるフィルムは、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリエステルフィルムと機械的特性等の物性面で遜色がなく、従来のポリエステルフィルムを代替することができる」(【0017】)という効果は、引用文献5の【0004】及び【0006】(上記(2)エ(イ))、並びに参考文献2の[0003](上記(2)カ(イ))の記載から、当業者が予測し得ることである。
オ 請求人の主張について
(ア)審判請求人は、次の主張をする。
「引用文献1(当審注:特開2009-91694号公報。本審決の引用文献5)の実施例1~3及び比較例1において検証されたのは、短繊維及びボトルの形態であり、フィルムの形態でありません。…すなわち、引用文献1において、フィルムの樹脂を従来の化石資源由来のPETからバイオマス由来の炭素を含有したPETに置き換えた場合に、従来の化石資源由来のPETに比べて遜色のない特性がフィルムとして得られるか否かは、引用文献1においては何ら検証されておりません。」(令和3年4月6日提出の上申書4頁7~16行、審判請求書6頁11~26行)
上記主張(ア)について検討する。
上記2(4)カ(イ)で述べたとおり、従来の化石資源由来のPETと、バイオマス由来の炭素を含有したPETとは、エチレングリコールとテレフタル酸によって構成される化学構造が同じであり、このような化学構造が同じである限り、同じ物性を示すというのが、本願出願日時点の技術常識である。そして、本願発明2の「ジオール単位がさとうきび由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステル」と引用発明2の「PET」とは、化学構造において異なるものではなく、上記技術常識を参酌すれば、同じ物性を示すと解すべきである。
また、審判請求人は、引用文献5に関して、バイオマス由来のPETを用いたフィルムは、化石燃料由来のPETを用いたフィルムと遜色のない特性が得られることが何ら検証されていないことを主張するのみであり、引用文献5に記載のバイオマス由来のPETをフィルムに使用する場合に、化石燃料由来のPETと遜色のない特性が得られないことについて具体的な証拠を示していないし、技術的な説明もしていない。
したがって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。
(イ)審判請求人は、次の主張をする。
「環境や資源等に対する配慮するのであれば、当業者は、PETの全部をバイオマス由来のPETに代えると考えるのが妥当であり、環境や資源等に対する配慮したにも関わらず、PETの一部のみをバイオマス由来のPETに置き換えるとは考えられません。」(審判請求書7頁2~5行)
上記主張(イ)について検討する。
従来の化石燃料由来のポリエステルを、その一部分であってもバイオマス由来のポリエステルに置き換えることにより、環境や資源等に対する配慮となることは明らかであるから、当業者は化石燃料由来のPETの全部をバイオマス由来のPETに置き換えるとの主張は当を得たものであるとは解せない。
したがって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。
(ウ)審判請求人は、次の主張をする。
「引用文献8(当審注:本審決の引用文献6),9には、カーボンニュートラルやバイオマス原料に関する記載も示唆もなく、仮に引用文献8,9に記載の発明に関して「カーボンニュートラル」という課題を認識できたとしても、引用文献8,9に記載の発明の課題である引裂直線性、引張強度、ヘーズなどの課題にどのように影響を及ぼすか不明であり、且つ、そもそもフィルムに適切に加工できるかどうかも不明である以上、それらの課題をなおざりにして引用文献1のバイオマス由来の炭素を含有したPETを引用文献8,9に記載の発明に適用する動機は存在しません。」(同上申書4頁34~40行)
上記主張(ウ)について検討する。
引用発明2のフィルムが示す引裂直線性、引張強度及びヘーズは、分子量1000~13000のPEGを10~40重量%含有した変性PETを、PET/変性PET=50/50~80/20(重量比)の割合で混合した原を用いることによって達成されるものであると解される(引用文献6の【0011】~【0013】)。
そして、上記2(4)カ(イ)で述べたとおり、本願出願日時点の技術常識から、本願発明の「バイオマス由来のポリエステル」と引用発明2の「PET」とは同じ物性を示すと解され、引用発明2のPETの一部をバイオマス由来に置き換えても、引用発明2に係るフィルムが上記引裂直線性等の物性を満たすと解するのが合理的である。そうすると、引用文献5のバイオマス由来の炭素を含有したPETを適用することの阻害要因にはならないといえる。
したがって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。
(エ)審判請求人は、次の主張をする。
「熱履歴の蓄積が多いリサイクルポリエステルは、強度等の物性が低下しています。このように、物性が低下したリサイクルポリエステルを、上記した種々の物性を保持することを目的とした引用発明8および9に適用することは考えられず、このような事項は、引用発明8および9に、リサイクルポリエステルを使用することを阻害する要因となり得ます。」(同上申書45~49行、審判請求書5頁12行~6頁10行)
上記主張(エ)について検討する。
引用文献2~4に記載されるように、フィルム等の製造工程で生じたスクラップをリサイクルすることは、本願出願日前に周知又は慣用の事項であり、リサイクルポリエステルが熱履歴により、バージンのポリエステルに比べて物性が多少低下していたとしても、上記周知又は慣用の事項は、そのことを踏まえてリサイクルしていると理解するのが自然である。そして、他に、引用発明2において、上記周知又は慣用の事項を適用する阻害要因となる事情は見当たらない。
なお、破断強度を特定する本願発明2において、「リサイクルポリエステル」は「ジオール単位が化石燃料由来のジオールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のリサイクルポリエステル」と特定されるのみであり、リサイクルポリエステルが熱履歴により物性が低下した程度は任意であり、本願明細書にも、熱履歴により物性が低下したリサイクルポリエステルを用いる場合に上記破断強度を達成する手段については何ら記載されていない。
したがって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。
(4)まとめ
本願発明2は、引用文献6に記載された発明、引用文献1~5並びに参考文献1及び2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用文献1に記載された発明、引用文献1~5並びに参考文献1及び2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、本願発明2は、引用文献6に記載された発明、引用文献1~5並びに参考文献1及び2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-013338