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特許拒絶査定不服審判

2020-013062

少なくとも2つの充電ポイントを備える車両充電用の充電ステーションのための変圧器デバイス

審判番号
2020-013062
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-235252外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年09月17日
審決日
2021年09月29日
公報発行日
2022年03月25日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (H01F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-235252「少なくとも2つの充電ポイントを備える車両充電用の充電ステーションのための変圧器デバイス」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月 4日出願公開、特開2019-110300〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 14項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、平成30年12月17日(パリ条約による優先権主張、2017年12月19日、独国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 1年 6月27日付け:拒絶理由通知
令和 1年 9月 9日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 1月 8日付け:拒絶理由通知
令和 2年 4月14日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 5月14日付け:拒絶査定
令和 2年 9月17日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 3年 4月27日付け:拒絶理由通知(当審)
令和 3年 7月 8日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の特許請求の範囲の請求項1ないし10に係る発明は、令和3年7月8日の手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載されたものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「少なくとも2つの充電ポイント(110)を備える車両充電用の充電ステーション(100)のための変圧器デバイス(10)であって、
電源への電気接続のための入力接続部(20)と、
前記入力接続部(20)に接続された1次巻線(30)と、
各々の充電ポイント(110)が有する少なくとも1つの2次巻線(40)と、を備え、
前記充電ポイント(110)の各々の前記2次巻線(40)に出力接続部(60)が備え付けられ、対応する個々の前記充電ポイント(110)に電力を提供し、
前記充電ポイント(110)の各々の前記2次巻線(40)は、互いにDC絶縁され、かつ、前記2次巻線(40)のそれぞれが少なくとも2つの巻線区域を有し、
さらに、前記2次巻線(40)の前記巻線区域のうち、隣接する巻線区域は、少なくとも部分的に軸方向(AR)に互いに重畳し、
径方向(RR)での隣接する前記2次巻線(40)の重畳の順序は、前記2次巻線(40)の各々の層が前記軸方向(AR)の周りでの一回転中に軸方向オフセットが行われ、内側から外側へまたは外側から内側へ移動することによって、前記軸方向(AR)において変化する、
変圧器デバイス(10)。」

第3 令和3年4月27日付け拒絶理由の概略

この出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記

<引 用 文 献 等 一 覧>

1.実願昭55-67269号(実開昭56-169525号)のマイクロフィルム

2.米国特許出願公開第2016/0375781号公報

また、請求項1に対する拒絶理由において、巻線を構成する導体自体の位置を入れ替えるように移動させ転位させる技術が周知技術であることを示す文献(以下、「引用文献A」という。)として、実願平4-73705号(実開平6-38218号)のCD-ROMを引用している。

第4 引用文献の記載事項、引用発明等

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1 引用文献1

ア 令和3年4月27日付け拒絶理由通知で引用した引用文献1(実願昭55-67269号(実開昭56-169525号)のマイクロフィルム)には、次の記載がある。なお、下線は当審で付与した。

「本考案は2回路の同一仕様の巻線をもつた変圧器に関し、特に巻線の導体としてその断面の幅が厚さに比して、例えば20倍以上あるいわゆる幅広導体を使用した巻線の構造に係わる。
この種の変圧器は負荷条件により前記2回路がそれぞれ別々に負荷をとつたり、又は並列接続して負荷をとつたりされる。このため各回路のリアクタンス、直流抵抗、インピーダンス等の電気的特性を合わせることが望まれる。これに対して第1図および第2図に示す結線図が知られている。すなわち、二次巻線はそれぞれu1,v1およびu2,v2なる端子を有する独立した、電気的特性の等しい巻線よりなり、第1図においては前記独立した二次巻線1,2に対してそれぞれU,Vなる端子を有する一次巻線3,4が配され、該巻線3,4は並列接続され、各巻線は鉄心5に巻回されている。また第2図においては独立した二次巻線21,22をその中間において転位させ、U,Vなる端子を有する一次巻線23に対し完全な対称配置としたものである。
第3図および第4図はそれぞれ第1図および第2図に対する巻線の配置図で同一符号は前出と同一物を示す。第3図および第4図のものは図からも明らかなように対称配置のためその電気的特性を合わせることができるが、特に巻線構造自体としては単純な幅広導体を使用したときリードの接続が複雑で製作に時間と費用がかかる欠点があった。」(明細書第1頁第9行-第2頁16行)

[図:0001382019000001.jpg]

[図:0001382019000002.jpg]

引用文献1の上記記載からは、以下のことがいえる。

(ア)引用文献1には、「2回路の同一仕様の巻線をもった変圧器」が記載されている。

ここで、引用文献1の「この種の変圧器は」「前記2回路がそれぞれ別々に負荷」をとるものであるから、上記「2回路の同一仕様の巻線」は、「二次巻線」である。

(イ)引用文献1の上記記載によれば、「巻線」は「幅広導体を使用した巻線」である。

(ウ)引用文献1の上記記載によれば、「二次巻線はそれぞれu1,v1およびu2,v2なる端子を有する独立した、電気的特性の等しい巻線」よりなる。

(エ)引用文献1の上記記載によれば、「独立した二次巻線21,22をその中間において転移させ、U,Vなる端子を有する一次巻線23に対し完全な対称配置とし」、「対称配置のためその電気的特性を合わせる」ことができる。

(オ)引用文献1の第4図によれば、「二次巻線21,22の配置は、転移により二次巻線21は、軸方向上側径方向内側の部位から軸方向下側径方向外側の部位に、二次巻線22は、軸方向上側径方向外側の部位から軸方向下側径方向内側の部位に変化」することがみてとれる。また、「二次巻線21の軸方向上側径方向内側の部位は二次巻線22の軸方向下側径方向内側の部位と、二次巻線22の軸方向上側径方向外側の部位は二次巻線21の軸方向下側径方向外側の部位とそれぞれ軸方向に重畳し、二次巻線21の軸方向上側径方向内側の部位は二次巻線22の軸方向上側径方向外側の部位と、二次巻線22の軸方向下側径方向内側の部位は二次巻線21の軸方向下側径方向外側の部位とそれぞれ径方向に重畳する」ことがみてとれる。

イ 上記(ア)ないし(オ)によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「2回路の同一仕様の二次巻線をもった変圧器において、
巻線は幅広導体を使用した巻線であり、
この変圧器は前記2回路がそれぞれ別々に負荷をとり、
二次巻線はそれぞれu1,v1およびu2,v2なる端子を有する独立した、電気的特性の等しい巻線よりなり、
独立した二次巻線21,22をその中間において転移させ、U,Vなる端子を有する一次巻線23に対し完全な対称配置とし、対称配置のためその電気的特性を合わせることができ、
二次巻線21,22の配置は、転移により二次巻線21は、軸方向上側径方向内側の部位から軸方向下側径方向外側の部位に、二次巻線22は、軸方向上側径方向外側の部位から軸方向下側径方向内側の部位に変化し、二次巻線21の軸方向上側径方向内側の部位は二次巻線22の軸方向下側径方向内側の部位と、二次巻線22の軸方向上側径方向外側の部位は二次巻線21の軸方向下側径方向外側の部位とそれぞれ軸方向に重畳し、二次巻線21の軸方向上側径方向内側の部位は二次巻線22の軸方向上側径方向外側の部位と、二次巻線22の軸方向下側径方向内側の部位は二次巻線21の軸方向下側径方向外側の部位とそれぞれ径方向に重畳する、
変圧器。」

2 引用文献2

ア 令和3年4月27日付け拒絶理由通知で引用した引用文献2(米国特許出願公開第2016/0375781号公報)には、次の記載がある。なお、下線は当審で付与した。

「[0022] FIG. 1 illustrates the simplified structure of a charging station 10 for charging a plug-in motor vehicle 24 at one of three charging posts 12 according to a first embodiment of the invention. The charging station 10 comprises a power transformer 14 having an insulation monitor and safety measures. The power transformer 14 is fed with a medium voltage of 20 kV, for example, by an upstream transformer 32 of the medium-voltage network. The transformer is in turn fed from a power plant 28 via an extra-high-voltage and high-voltage network 30 operated with voltages of between 110 and 380 kV.
[0023] The charging station 10 provided as the central high-power AC/DC converter 26 also comprises three rectifier modules 16 that are connected to three DC-isolated terminal leads 18 of the power transformer 14 and are combined to form a multi-pole busbar to provide an intermediate network having a total power of 600 kW. A fourth rectifier module 16 is connected to a buffer store 20 with feedback capability in the charging station 10 . In this case, a power factor correction filter of the rectifier modules 16 acts as the mains filter of the charging station 10 .
[0024] The power transformer 14 and the rectifier modules 16 are configured so that the rectifier modules 16 emit a low DC voltage of between 950 V and 2000 V, preferably 1000 V, if the power transformer 14 is fed with a medium voltage of 20 kV. This as yet unregulated low DC voltage is adapted to the charging voltage of the motor vehicle 24 , that is between 200 and 1000 V, but preferably 800 V, by means of one of three simple step-down DC/DC converters 26 in the infrastructure. The charging post 12 delivers this stabilized charging voltage to the motor vehicle 24 under the control of a switch 22 and with a charging power of 150 kW to charge the motor vehicle.」

(当審訳:[0022] 図1は、本発明の第1の実施の形態に係る、3つの充電ポスト12のうちの1つでプラグイン自動車24を充電するための充電ステーション10の簡略化した構造を示す図である。充電ステーション10は、絶縁監視装置及び安全手段を有する電力変圧器14を備えている。電力変圧器14は、例えば、中電圧ネットワークの上流変圧器32によって、20kVの中電圧が供給される。変圧器は、発電所28から110kVと380kVとの間の電圧で動作する特別高圧と高電圧ネットワーク30を介して供給される。

[0023] 中央高電力AC/DCコンバータ26として提供される充電ステーション10は、電力変圧器14の3つの直流絶縁端子リード18に接続された3つの整流器モジュール16も備えており、合計電力600kWの中間ネットワークを提供する多極のバスバーを形成するために結合される。第4の整流器モジュール16は、充電ステーション10のフィードバック機能と共にバッファストア20に接続される。この場合には、整流器モジュール16の力率補正フィルタは、充電ステーション10の主フィルタとして作用する。

[0024] 電力変圧器14及び整流器16は、電力変換器14に20kVの中間電圧が供給された場合、整流器モジュール16が950Vから2000Vの間、好ましくは1000Vの低い直流電圧を出力するように、調整される。このまだ調節されていない低い直流電圧は、インフラストラクチャー中の3つの単純なステップダウンDC/DC変換器26の1つによって、200Vから1000Vの間、好ましくは800Vの間である自動車24の充電電圧に適合される。充電ポスト12は、スイッチ22の制御の下で、この安定した充電電圧を自動車24に供給し、充電電力150kWで自動車を充電する。)

[図:0001382019000003.jpg]

引用文献2の上記記載からは、以下のことがいえる。

(ア)引用文献2の段落[0022]及び図1には、「3つの充電ポスト12のうちの1つでプラグイン自動車24を充電する充電ステーション10」が記載されている。

(イ)引用文献2の段落[0022]の記載によれば、「充電ステーション10は、」「電力変圧器14」を備える。

(ウ)引用文献2の段落[0023]の記載によれば、「充電ステーション10は、電力変圧器14の3つの直流絶縁端子リード18に接続された3つの整流器モジュール16」を備える。

(エ)引用文献2の段落[0024]の記載および図1によれば、「3つの整流器モジュール16の出力はそれぞれ、DC/DC変換器26、スイッチ22を介して充電ポスト12に接続」されることがみてとれる。

イ 上記(ア)ないし(エ)によれば、引用文献2には、次の技術事項(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されている。

「3つの充電ポスト12のうちの1つでプラグイン自動車24を充電する充電ステーション10において、
充電ステーション10は、電力変圧器14と、電力変圧器14の3つの直流絶縁端子リード18に接続された3つの整流器モジュール16を備え、
3つの整流器モジュール16の出力はそれぞれ、DC/DC変換器26、スイッチ22を介して充電ポスト12に接続する」技術。

3 引用文献A

ア 令和3年4月27日付け拒絶理由通知で引用した引用文献A(実願平4-73705号(実開平6-38218号)のCD-ROM)には、次の記載がある。なお、下線は当審で付与した。

「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、変圧器の並列巻き円筒巻線の導体の転位構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄心の外周に複数本の導体を半径(内外)方向に並列に重ねてソレノイド状に複数レヤー巻回して構成される変圧器の円筒巻線においては、各並列導体は内側と外側とで磁束鎖交量が異なり、これを並列とした場合に、循環電流が流れる。この循環電流を抑制するため、各レヤー毎に巻線の軸方向の中央部で、内外側の導体の位置を入れ替え転位して同一鎖交量とし、内外側の導体の誘起電圧を均等(導体間の誘起電圧の差を零)になるようにしている。」
「【0006】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、複数の各レヤー毎に内外の入れ替えの転位を行う必要があり、レヤー数が多い場合、転位作業が多く加工工数がかかる。また、構造上も転位のためにスペースが必要であり、占積率が低下する。すなわち、図4において、矢印(→)に示すように、上から導体Aを内側に、導体Bを外側にして巻回してきて、巻線の軸方向の高さの中央部の転位位置で導体Aを外側に出し、導体Bを内側に入れるためには、斜線で示す転位のための空間{導体幅のほぼ(1+α)ターン分}の詰め物6(絶縁物)が必要となり、巻線内の導体の占積率が低下し、このため巻線全体、変圧器本体が大きくなる。」

[図:0001382019000004.jpg]

イ 上記記載によれば、引用文献Aには、次の技術事項(以下、「引用文献A記載の技術」という。)が記載されている。

「変圧器の巻線の導体の転位構造において、
上から導体Aを内側に、導体Bを外側にして巻回してきて、巻線の軸方向の高さの中央部の転位位置で導体Aを外側に出し、導体Bを内側に入れることにより、巻線の軸方向の中央部で、内外側の導体の位置を入れ替え転位して、内外側の導体の誘起電圧を均等にする」技術。

第5 対比

1 本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「変圧器」の「2回路の同一仕様の二次巻線」は、「前記2回路がそれぞれ別々に負荷をと」るものであるから、「二次巻線」の「u1,v1およびu2,v2なる端子」は負荷に対し電力を出力する出力ポイントである。

してみると、引用発明の「変圧器」の「二次巻線」の「u1,v1およびu2,v2なる端子」と本願発明の「少なくとも2つの充電ポイント」とは、電力を出力する少なくとも2つの出力ポイントである点で共通し、引用発明の「変圧器」と本願発明の「少なくとも2つの充電ポイント(110)を備える車両充電用の充電ステーションのための変圧器デバイス(10)」とは、「少なくとも2つの出力ポイントを備える変圧器デバイス」である点で共通する。

ただし、本願発明は、出力ポイントが「充電ポイント」であり、変圧器デバイスが「充電ポイントを備える車両充電用の充電ステーションのための」変圧器デバイスであるのに対して、引用発明は、その旨特定されていない点で相違する。

(2)変圧器の一次側巻線が、変圧器に電力を供給する「電源」に接続されることは明らかであるから、引用発明の「一次巻線23」の「U,Vなる端子」は、本願発明の「電源への電気接続のための入力接続部」に相当する。

(3)引用発明の「U,Vなる端子を有する一次巻線23」は、本願発明の「前記入力接続部に接続された1次巻線」に相当する。

(4)上記(1)で検討したように、引用発明の「二次巻線」の「u1,v1およびu2,v2なる端子」は出力ポイントである。

してみると、引用発明の「2回路の同一仕様の二次巻線」と本願発明の「2次巻線」とは、「各々の出力ポイントが有する少なくとも1つの2次巻線」である点で共通する。

ただし、本願発明は出力ポイントが「充電ポイント」であるのに対して、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。

(5)引用発明の「2回路の同一仕様の二次巻線」は「それぞれ別々に負荷をとり」、「それぞれu1,v1およびu2,v2なる端子を有する独立した、電気的特性の等しい巻線よりな」るから、二次巻線の「u1,v1およびu2,v2なる端子」は、負荷が接続される接続部を有し、負荷に電力を提供していることは明らかである。

そして、上記(1)で検討したように、「u1,v1およびu2,v2なる端子」は出力ポイントであることを考慮すると、引用発明と本願発明とは、「前記出力ポイントの各々の前記2次巻線に出力接続部が備え付けられ、対応する個々の前記出力ポイントに電力を提供」する点で共通する。

ただし、本願発明は出力ポイントが「充電ポイント」であるのに対して、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。

(6)引用文献の「2回路の同一仕様の二次巻線」は「それぞれ別々に負荷をとり」、「それぞれu1,v1およびu2,v2なる端子を有する独立した」巻線であるから、独立した二次巻線同士であってDC絶縁されていることは明らかである。

してみると、引用発明と本願発明とは、「前記出力ポイントの各々の前記2次巻線は、互いにDC絶縁され」る点で共通する。

ただし、本願発明は出力ポイントが「充電ポイント」であるのに対して、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。

(7)引用発明の「二次巻線21」が「軸方向上側径方向内側の部位」と「軸方向下側径方向外側の部位」とを有すること、「二次巻線22」が「軸方向上側径方向外側の部位」と「軸方向下側径方向内側の部位」とを有することは、本願発明の「前記2次巻線のそれぞれが少なくとも2つの巻線区域を有」することに相当する。

(8)引用発明の「二次巻線21の軸方向上側径方向内側の部位は二次巻線22の軸方向下側径方向内側の部位と、二次巻線22の軸方向上側径方向外側の部位は二次巻線21の軸方向下側径方向外側の部位とそれぞれ軸方向に重畳すること」は、本願発明の「前記2次巻線の前記巻線区域のうち、隣接する巻線区域は、少なくとも部分的に軸方向に互いに重畳」することに相当する。

(9)引用発明は、「二次巻線21の軸方向上側径方向内側の部位は二次巻線22の軸方向上側径方向外側の部位と、二次巻線22の軸方向下側径方向内側の部位は二次巻線21の軸方向下側径方向外側の部位とそれぞれ径方向に重畳する」ものであるから、径方向での隣接する2つの二次巻線21,22の重畳の順序は、二次巻線21は内側から外側に移動することによって軸方向(上側から下側)において変化し、二次巻線22は外側から内側に移動することによって軸方向(上側から下側)において変化している。

してみると、引用発明は、本願発明の「径方向での隣接する前記2次巻線の重畳の順序は、前記2次巻線の各々の層が」「内側から外側へまたは外側から内側へ移動することによって、前記軸方向において変化する」ことと共通する構成を有する。

ただし、本願発明は「2次巻線の各々の層が前記軸方向の周りでの一回転中に軸方向オフセットが行われる」ものであるのに対して、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。

2 そうすると、本願発明と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉

「少なくとも2つの出力ポイントを備える変圧器デバイスであって、
電源への電気接続のための入力接続部と、
前記入力接続部に接続された1次巻線と、
各々の出力ポイントが有する少なくとも1つの2次巻線と、を備え、
前記出力ポイントの各々の前記2次巻線に出力接続部が備え付けられ、対応する個々の前記出力ポイントに電力を提供し、
前記出力ポイントの各々の前記2次巻線は、互いにDC絶縁され、かつ、前記2次巻線のそれぞれが少なくとも2つの巻線区域を有し、
さらに、前記2次巻線の前記巻線区域のうち、隣接する巻線区域は、少なくとも部分的に軸方向に互いに重畳し、
径方向での隣接する前記2次巻線の重畳の順序は、前記2次巻線の各々の層が、内側から外側へまたは外側から内側へ移動することによって、前記軸方向において変化する、
変圧器デバイス。」

〈相違点1〉

本願発明は、出力ポイントが「充電ポイント」であり、変圧器デバイスが「充電ポイントを備える車両充電用の充電ステーションのための」変圧器デバイスであるのに対して、引用発明は、その旨特定されていない点

〈相違点2〉

本願発明は「2次巻線の各々の層が前記軸方向の周りでの一回転中に軸方向オフセットが行われる」ものであるのに対して、引用発明はその旨特定されていない点

第6 判断

1 相違点1について

まず、引用文献2記載の技術について整理する。

引用文献2記載の技術(上記「第4」の「2」参照)において、「直流絶縁端子リード18」は「電力変圧器14」の2次巻線の出力端子部と接続される「出力ポイント」であることは明らかであり、「直流絶縁端子リード18」を介して自動車24は充電されるから、出力ポイントである「直流絶縁端子リード18」は、「充電ポイント」である。

してみると、引用文献2記載の技術は、「3つの充電ポスト12のうちの1つでプラグイン自動車24を充電する充電ステーション10において、充電ステーション10は、電力変圧器14と、電力変圧器14の3つの充電ポイントに接続された3つの整流器モジュール16を備え、3つの整流器モジュール16の出力はそれぞれ、DC/DC変換器26、スイッチ22を介して充電ポスト12に接続する」技術である。

次に、引用発明への引用発明2記載の技術の適用について検討する。

引用発明と引用文献2記載の技術とはいずれも、DC絶縁された複数の二次巻線端子を有する変圧器に関するものであるから、引用発明に引用文献2記載の技術を適用し、引用発明の二次巻線端子の端子を「充電ポイント」として車両を充電し、変圧器を「充電ポイントを備える車両充電用の充電ステーションのための」変圧器デバイスとして、相違点1に係る構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

2 相違点2について

引用文献A記載の技術(上記「第4」の「3」参照)のように、巻線の導体の転位構造において、転位位置で導体Aを外側に出し、導体Bを内側に入れ、内外側の導体の位置を入れ替え転位することは、本願の優先日前周知技術であり、引用発明の「二次巻線21,22」の転位を、転位位置において各二次巻線を構成する巻線導体自体の位置を入れ替えて転位することは、当業者が適宜なし得る設計事項である。

そしてこの場合、「転位位置において」各二次巻線を構成する巻線導体自体の位置は入れ替えられるのであるから、「軸方向の周りでの一回転中に軸方向オフセットが行われ」たものとなる。

してみると、引用発明において、相違点2に係る構成とすることは、当業者が適宜なし得る設計事項である。

そして、本願発明の奏する効果は、引用発明に引用文献2記載の技術及び周知技術を適用したことにより得られる効果に対して、当業者が想起し得ないものとも認められない。

3 令和3年7月8日の意見書での請求人の主張について

(1)請求人の主張

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請求人は令和3年7月8日の意見書において、概略次のように主張している。

ア 「このことから、追加文献(当審注:「追加文献」は「引用文献A」に相当。)に記載された技術では、転位のための軸方向における空間(詰め物6で充填された部分)として導体幅のほぼ(1+α)ターン分必要であり、つまり、導体A、Bを転位させるためには、1ターンを超える(1+α)のターン数が必要であることが明示されていると理解することができます。したがって、追加文献の図4に記載の技術を引用文献1の記載の発明に適用しても、本願補正後の請求項1に係る発明の「径方向での隣接する2次巻線の重畳の順序は、2次巻線の各々の層が軸方向の周りでの一回転中(すなわち、1ターン以内で)に軸方向オフセットが行われ、内側から外側へまたは外側から内側へ移動することによって、軸方向(AR)において変化する」という特徴を実現することは実質的に不可能であると考えます。」(第3頁第23-31行)

イ 「そして、二次巻線21、22の転位は、引用文献1の図4に記載されている通り、二次巻線を巻回しながら行うものではなく、巻回しないリード線を用いて、リード線同士をその場で交差させて転位を達成する技術を開示します。このように、引用文献1が開示する技術では、追加文献に記載されている技術のように、転位をさせるために、軸方向において導体幅のほぼ(1+α)ターン分にも達する大きな空間を確保する必要がなく、巻線内の導体の占有率を向上させ、巻線全体、変圧器本体を(軸方向において)小さくできる点で、追加文献の図4に記載の巻回構造より優れています。そして、その効果は、より幅が広い導体を用いるほど、より大きくなります。したがって、幅広導体を用いる引用文献1の発明に追加文献の図4に記載の技術を適用することは、変圧器の軸方向の大きさを無駄に大きくする点で明らかな改悪であり、当業者が引用文献1と追加文献の両方を参照したとしても、追加文献に記載の巻回構造を引用文献1に記載の発明に適用する動機は全くないと考えます。よって、引用発明の「二次巻線21,22」の転位を、各二次巻線を構成する巻線導体自体の位置を入れ替えるように移動することにより行うことは、当業者が適宜なし得る設計事項ではないと考えます。」(第4頁第4-17行)

(2)請求人の主張についての検討

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ア 上記主張アについて検討する。

上記「2」で述べたように、引用発明の「二次巻線21,22」の転位を、転位位置において各二次巻線を構成する巻線導体自体の位置を入れ替えて転位することは、当業者が適宜なし得る設計事項である。

そしてこの場合、転位のための軸方向における空間(詰め物6で充填された部分)として導体幅のほぼ(1+α)ターン分必要であるとしても、内外側の巻線導体の位置の入れ替え自体は転位位置で行われているのであるから、巻線の各層が、軸方向の周りでの一回転中に軸方向オフセットが行われ、内側から外側へまたは外側から内側へ移動するものとなる。

したがって、請求人の主張は採用できない。

イ 上記主張イについて検討する。

引用文献1の記載より、引用発明における二次巻線間の転位は、リード線同士をその場で交差させて転位を達成するものであるとしても、引用発明においても、二次巻線の転位のためには、リード線を接続するための空間、リード線を交差させるための空間が必要である。

このことを考慮すれば、転位をリード線を用いて行うか、巻線自体の位置を入れ替えて行うかは、変圧器に求められる機械的寸法を考慮して、当業者が適宜選択し得る設計事項と認められる。

したがって、請求人の主張は採用できない。

第7 むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2020-013062

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